「約束の時間ぴったりですね、テンカワさん。ダイアナさんは、そのコンテナの中ですか」
佐世保のドックでアキトたちを出迎えてくれたのは、プロスペクターとアキトにとっては久しぶりに会うミズキ ナツメだった。
「ああ、本当はそのまま乗ってくれば楽だったんだが、ダイアンの荷物が多くてな。そちらにあるもの使わせてもらえればよかったんだが、特殊なものも多くて・・・」
アキトがプロスペクタ―と話していると何時の間にか後ろへ回り込んだのかナツメがアキトの背中から抱きつきアキトの耳へと息を吹きかけた。
「お主。久方ぶりに会う伴侶に挨拶もなしかえ。普通、抱きしめてキスのひとつもするものぞ」
「うふふ、相変わらずね。ナツメ。その口調も性格も」
「そう簡単に性格なんて変わるものではないぞ、ダイアナ。それよりお主も息災のようじゃの。また会えてうれしいぞ」
「ええ、私もよ。アキト、あなたも照れてないでキスとまで言わないけれど声くらいかけてあげなさいよ」
ナツメのとんでもない行動に呆れていたアキトは首を軽く振るとようやく口を開いた。
「あーー、ナツメ君。突っ込みたいところはいろいろあるが、よりにもよって伴侶とはなんだい、伴侶とは」
「幾年か一緒に暮らしておった相手を伴侶といってはまずいのかえ」
「ううむ。そのような事実があったのですか」
「ナツメ、一緒に暮らしていたのはお互いにガキの頃だろう。あんたも本気にするな」
四人がドックへとつながる地下道を下っていると突然、プロスペクタ―の腕の時計のようなものから電子音が鳴り響きだした。
「おや、何ですかな。今日の予定ではすでにクルーは集まっているはずなのですが」
プロスペクタ―は、その後アキトたちから少し離れ時計のようなものに幾言か話した後、アキトたちの元に戻ってきた。
「すみませんが、ナツメさん。テンカワさんたちを先に案内してもらえますか。なにやらゲートで暴れている人がいるらしいんで、私が呼ばれてしまったんですよ。そうそう、テンカワさんこちらをお渡しするのを忘れていたのでこれを。使い方はナツメさんに聞いてください。ひとつはテンカワさんの分、もうひとつはダイアナさんの分です。それでは、また後ほど」
プロスペクタ―は、そう三人に言うと走ってもいないのに相当なスピードできた道を戻っていった。
「行ってしまったのう。まあ、おぬしの世話ぐらい儂一人で充分か」
「ひどい言われようだ。ところでこれは、ただの時計でないだろう」
「これか。これはな、コミュニケと言うものだ。まあ、簡単に言うと携帯用通信機じゃな。こういう機械のことはダイアナにでも聞けばいいじゃろう。さて、そろそろ乗船時刻じゃな。遅れて小言を言われるのはまっぴらじゃからさっさといくぞ」
機動戦艦ナデシコ
星奏曲
第三話
いま、私は椅子に縛りつけられている。
なによ、ちょっと中華なべで頭殴って警備員の人たち三人ほど気絶させたくらいでこんな扱いするなんて。
私の玉のお肌に痣ができちゃったらどうするのよ。
そんなことをぶつぶつ言っていると部屋に誰かが入ってきた。
ちょび髭の人のよさそうな人だった。
「はてさて・・・貴方は何処でユリカさんとお知り合いになったのですかな?」
なんか、やっと話を聞いてくれそうな人が来たよーー。
「私、ユリカとは幼馴染なんです。それでユリカに聞きたいことがあって、ユリカなら私の両親と兄のこと何か知ってるかもって、それで、その・・・」
「そうですか。あ、ちょっと失礼しますよ。今、お名前調べますから。舌出してもらえません」
注射器のような機械を取り出して近づいてくる、なんか痛そうよね。
「それ、腕じゃだめですか。なんかすっごく痛そうでやなんですけど」
「おや、そうでしたか。すみませんね、では」
チクッ
やっぱし痛いじゃないの。こんなの舌だったら私、泣き叫んでるわよ。
「ふむ・・・おや?全滅した火星からどうやって地球に?」
私のDNA判定の結果を見て驚いてるけど、まあ当然か。
私も実際どうやって地球に来たのかわかんないし。
「・・・そこらへんの記憶ないんですよ。気が付いたら地球にいて・・・」
なにやら考え込んでるけど、どうしたんだろ。
見てるのは私の持っていた荷物?
まさか下着とか物色するつもり。
「あいにくとユリカさんは重要人物なんで簡単には部外者とお会いさせるわけにはいかないんですよ。しかし、ネルガルの社員の一員としてならば、不都合はかなり軽減されます。実はわが社のあるプロジェクトでコックが不足していまして。テンカワ ミサさん・・・貴方は今無職らしいですね、どうですこの際ネルガルに就職されませんか?貴方のお兄さんもいることですし」
なんだ、バックから出てる調理道具見てたのね、ホッ
じゃなくて、いまなんていったの、兄さまがいる。ずっと死んでしまったと思っていたのに
「ほんとに兄さまがいるんですか!!なら就職します、ええしますとも。待っていてください、愛しの兄さま。あなたのミサがすぐにお傍に参ります」
ん、なに額に汗なんて書いてそんな目で私を見るんですか、プロスさん。
はやく契約書でも何でも持ってきてください、一刻も早く兄さまの胸に飛び込むんですから、私は。
「ここが、ブリッチじゃ。これから世話になるだろうし挨拶でもしてこい」
そういってナツメはさっさとブリッチへと入っていった。
その頃のブリッチ
「艦長ってどんな人だろう。優しくて、かっこいい人だといいなあ」
「バカねえ、メグちゃん。そんな都合よくいくわけないじゃない。どうせ、ヒヨワなお坊っちゃんか、ワガママなボンボンってところよ」
ミナトが年上らしく大人の意見を述べた。
「そうかなあ」
「そうよ。だいたい、ブリッチにこんなに女ばっかり配置しているなんて、あやしいじゃない」
「あ、そうか。戦艦なんて男の人が多いほうが普通っぽいですもんね」
「ま、会社なんてそんなもんよ。私が前にいた会社もそうだったもん」
「エーッ、そうなんですか。セクハラとかされちゃったらどうしよう」
まるでどこかの会社の昼休みのようだ。
そこへアキトたちが入ってくる。
「わあ、かっこいい」
「ほんと、いい男。これはあたりかも」
「どうしたのじゃ、ミナト、メグミ」
なにやら怪しい気配を出し始めた二人にナツメが聞く。
「ナツメちゃん、もしかしてこの人艦長?」
「ん、こいつか。こいつは儂の伴侶でな、ナデシコではパイロットをやってもらう」
「おまえはまたそんなことを言う。いいかげんにそれ言うのやめろ」
「じゃ、伴侶って言うのはうそ?」
眼を輝かせている二人。
「あら、アキト。もてるじゃないの」
突然、アキトの目の前にコミュニケが開かれる。
「誰ですか?」
「ああ、俺の相棒だ」
アキトたちはブリッチクルーに自己紹介を始めた。
ダイアナはさすがに正体をばらすわけにはいかないのでコミュニケごしだったが。
挨拶が終わりアキトたちがミナトやメグミの質問に答えていると艦内に警報が鳴り響きだした。
「なんなの、これ。避難訓練?」
「敵襲です」
「敵襲って敵がきたってこと?」
「そうです」
ルリが断言するとメグミは黙ってしまった。
そこへプロスが走りこんできた。
「プロスさん、艦長はどうしたの」
「え、確か一緒にきたのですが」
プロスが後ろを振り返るといたのは床に倒れこんでいる見るからに頼りなさそうな青年のアオイ ジュンだけだった。
「まさか、はぐれてしまったとか」
ブリッチに沈黙が降りる。
「ふう、しょうがない。俺がおとりとして出るからその間に艦長を」
そういうとアキトはブリッチから出ていこうとした。
『エステ一機出てます』
モニターの片隅にオモイカネがエレベーター稼動中を表示している。
「いったい。誰が?」
「モニターに出します」
そこに映ったのは十代後半くらいの美少女だった。
「君、所属と名前は?」
フクベ提督が低い声で言った。
「私、テンカワ ミサ。コックです」
「おや、彼女は・・・」
「ミスター、知り合いか」
「先ほど、コックとして雇ったんです、それより何故エステに?」
「私だって乗りたくてのったわけじゃ。さっき格納庫で骨折したやたら暑苦しい男が『IFS持ってるならパイロットだろう、仲間のピンチを助けるヒーロー、俺は怪我をしてしまったから代わりに役目を果たせ』とかいって無理やり」
「・・・それは・・・」
クルーが暑苦しい男といわれたものの顔を思い出す。なるほど彼ならやりそうだ。
「テンカワさん。彼女、貴方の妹さんらしいですけど腕は大丈夫ですか」
「いや俺はもう何年も会っていないから」
「貴方兄さまだったんですか。ああ、あの時きづかなかったなんて。きらわないで兄さま」
画面をこれでもかというくらい拡大しながら叫ぶミキ。
「ブラコン?」
周りはそれを否定できずに沈黙。
「とりあえず、お前は俺が出るまで逃げていろ」
アキトは痛む頭を押さえながらいう。
「はい、兄さま。愛しの兄さまの胸に飛び込むため、ミサがんばります」
彼女が真性のブラコンであるというとこが知れ渡った瞬間だった。
あとがき
シリアスな話のはずなんです、ほんとは(笑)
どうもかずはです
今回、アキトの双子の妹ミサを出しました
あんな性格にするつもりなんて無かったのに
このアキト、どうも進んで行動しそうにないんでTV版の役どころやってもらうはずだったんですよ
それなのに、ギャグキャラに
どこ間違ったんだろう
でも、なんか気に入ってしまったので彼女には活躍してもらいますよ今後
それでは、また次回
プロフィ―ル
テンカワ ミサ 女性
アキトの双子の妹
黒髪セミロング
宇宙港テロ時、家にいたため無事だった
そのためアキトとは別の孤児院へと行き成長
極度のブラコンである(笑)