赤き力の世界にて

 

 

 

 

第10話「旅立ち・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

俺がゼフィーリアに来てから一ヶ月経った。

 

あの後、様々なことはあったものの平穏な日々をおくれ・・・・なかった・・・(詳しくは外伝参照のこと)

リナちゃん達は修行の毎日、俺とルナさんはアルバイトの毎日だった。

 

俺もただバイトの毎日ではなく、リナちゃんから魔術を習ったり、

ブローディアの整備や自己鍛錬などに費やしたりした。

 

 

そんなある日の事、

リナちゃん達の修行が終了した・・・・・・らしい。

 

 

 

 

ゼフィールシティから近いところにある広場に来ていた。

ここに俺達4人は集まっていた。

 

「二人ともよく頑張りましたね。リナもその鉄球を扱えるようになったみたいだし」

 

確かに・・・今じゃほとんど武器代わりになっているようだし。

怒ったときにアレを振り回してレンガの壁を砕いていたからな・・・

いろいろと苦労していたみたいだし・・・

 

 

 

 

修行の一環としてアレを持ったまま浮遊の術で湖を渡れというものがあり、

途中で失敗、30分ほど沈んでいた。

ルナさんが助け出したが、なぜすぐ助けないのか?と聞いたところ、

 

「すぐ助けたのでは修行にもならないし、罰にもなりませんからね」

 

とのことらしい・・・

そのおかげかどうかは知らないが、今ではリナちゃんは20分は潜水できるらしい。

・・・大したモノだ。

 

 

 

「ガウリイさんも無事に2匹のドラゴンを倒したようですし・・・」

 

ただの包丁を使って良くやったものだ。

あの大きなドラゴン相手に最後は急所を一突きだし・・・

 

ちなみに包丁は刃こぼれ一つおこしていない・・・

同じ包丁をホウメイさんのお土産にしようかな?

 

しかしガウリイもタフだよな・・・・

プラズマ・ドラゴンとの戦いの時、一度なんか電撃でかなり焦げてたからな・・・

アレはガイなら1週間。ハーリー君なら五日ほどはかかるほどに重傷だった。

                          リザレクション
まあ、リナちゃんが覚えた 『復活』 ですぐに治ったが・・・この世界の魔法って便利だな〜。

 

 

 

「では、鉄球をはずしましょうか」

「やった〜!!」

 

そう言って喜ぶリナちゃん。

よっぽど嫌だったんだな・・・一度は修行が嫌になったのか、

 

「こんな鉄球つけて!私は姉ちゃんの奴隷か!」

 

等と騒いでいたがその直後、裏庭にある井戸に落とされていた。

 

まあなんとか自力で這い上がってきたのだが・・・

その後、騒ぐことはなくなったみたいだった。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「リナ、今まで魔力を増幅していないと使えなかった魔法を使ってみなさい」

「わかった」

 

                           ブラスト・ボム
私は詠唱を始めた。いきなり『暴爆呪』でも唱えたら面白いかも・・・とは思ったが、

でてきた光球の後始末が困るのでもうちょっと大人しめの呪文にした。

 

  ゼラス・ブリッド
「獣王牙繰弾!!」

 

           カオスワーズ
私が唱えた 呪文 と同時に私の指先から光の帯がのびる。

 

「ちゃんとできた!!」

 

右、上、下、螺旋を描くように動かしてみたり・・・・良し!ちゃんと操作もできる。

それどころか以前より細かい動きが可能になっている!!

 

良かった!!修行の成果が出ている!!

これであの地獄ともお別れだ!!

 

「出来たみたいね、頑張ったわね・・・リナ」

 

再び褒める姉ちゃん・・・ちょっとくすぐったいかもしれない。

 

「では次に・・・」

「げげっ・・・」

 

やっと終わったばかりなのにまだ何かあるの!?

 

「ん?なぁにリナ・・・」

 

そう言ってにっこりと微笑む姉ちゃん・・・危険だ!はてしなく危険だ!!

 

「い、いえ!何でもないでございます!!」

 

緊張の余り自分が何を口走っているかわからない。

声も裏返っているのが自分でもわかる。

 

「そう?なら良いわ。なら家に帰って薪でも割っていてくれる?」

「うん・・・まあそれくらいなら」

                        ラグナ・ブレード
「ただし、前に言っていた 神滅斬 というヤツでね」

「そんな無茶苦茶な!!第一に制御が・・・・」

 

万が一制御を失敗すればその時は・・・・この世の破滅を意味する。

確かにもう一つの呪文と比べれば制御はしやすい方だろうけど・・・

 

「大丈夫よ、もし制御を失敗したら真っ先に核であるリナを消滅させて

混沌の力を私が押さえつけるから。

ギガ・スレイブ
 重破斬 というヤツは難しいかもしれないけどアレなら何とかなるから」

 

ラグナ・ブレード
 神滅斬 ならって・・・アレも半端じゃないんだけど・・・

私は改めて自分が目標としている姉の凄さを感じた・・・

 

「で・・・でも・・・」

「でも、じゃないの。

どうせ強力な魔族との闘いになったら使う事になるでしょう?

それなら最初から練習して制御をして見せなさい」

 

「わかった・・・」

 

姉ちゃんにはかなわないな・・・いつも先を見ている。

私の先を・・・自信を持てるように・・・

 

「とにかく、混沌の力を制御する方法は知らないけど

意志力の時点で負けていたら、できるものもできないわよ」

 

「大丈夫!今度は負けたりなんかしないわ!!

もうあの特訓はこりごりだからね!」

 

「そうそう、その意気よ。ちなみに薪割り終わったら私が戦闘訓練してあげるから」

 

お・・・鬼・・・

私は生涯、何回考えたかわからないことを思った・・・

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「さて・・・ガウリイさん」

「ん?俺の番か?」

「ええ、これを」

 

そう言って差し出したのは一振りの剣だった。

                           ブラスト・ソード
ガウリイがいつも使っている 妖斬剣 ではない、ただの剣だ。

 

「おお!久々に剣が持てるのか!!」

 

ガウリイは嬉しそうにそう言った。

確かに・・・・ここ一ヶ月ほどは武器といえば包丁だったからな・・・・

 

「それを使って狩りでもして下さい」

「・・・・・は?」

 

狩りって・・・・いったい修行に何の関係が・・・

 

「食費が・・・もの凄いことになってるんです」

「「うっ・・・」」

 

そう言って何も言えなくなるガウリイとリナちゃん・・・

確かにこの二人の食事は凄いからな、

この家に来て以来、残飯など見たこともない・・・との話だ。

たまにスポットのご飯まで食べてしまうときがある。スポット泣いてたぞ・・・・

 

その上、食事などはほとんどバトルになっているからな・・・

俺とファン倶楽部との決闘の際の賭事の上がり金ぐらいじゃあ焼け石に水だ・・・・・・・

 

「まあ適当に何かを狩ってきて下さい」

「・・・・わかった」

「ああ、それと・・・ウサギには気を付けて下さいね」

「ウサギ!?ウサギというと・・・耳の長いあれか?」

「ええ、あの森の主です」

「一体どういうウサギなんですか??」

 

ライオンとか熊ではなくウサギ?

この世界は一体どうなっているんだ・・・

 

「体長は約15メートル、身体能力はそれに比例してるわね。

どこかの魔導士協会の実験動物だったらしくてね、多少の対魔能力もあるみたいなの・・・

                                                 フレア・アロー
以前、どこかの野良デーモンが迷い込んできたとき 炎の矢 を叩き落としていたみたいだから」

「もの凄いな・・・」

 

確かに・・・俺もそう思うよ。創った魔導士協会は何考えているのだか・・・・しかし・・・

 

「ガウリイの腕ならばそう心配したモノでもないのでは?」

「確かにそうです。ガウリイさんの腕ならば苦もなく倒せるでしょうが・・・」

「・・・が??」

 

まだ何かあるのか?歯でも伸びるのか?

こうなったら変身したっておかしくないと思えるな・・・・

 

「そのウサギは子供に人気があって、なおかつ懐いているんです。

だから町の人達もウサギを保護する団体のようなものも作って・・・

倒そうものならば指名手配を受けて町から追い出されますよ」

 

気持ちはわからんわけでもないが・・・それでいいのか住民達よ・・・

 

「・・・とりあえず気を付けるよ・・・覚えていたら」

 

それぐらい覚えていろって。

 

「では頑張って下さいね〜。あ〜それと、それが終わったらリナと一緒に戦闘訓練しますから」

 

「どう考えてもウサギに殺されたなんて笑い話にしかならないからな、気をつけろよガウリイ」

 

そう言って見送る俺とルナさん・・・

 

(今晩は肉料理が多くなりそうだな・・・・)

 

俺はそんな事を考えていた・・・

 

その日の晩、やはり肉料理中心の献立になったが・・・

やっぱり残飯はでなかった・・・この二人の胃袋は底なしか!?

 

 

 

 

 

 

多少の騒ぎはあるものの、俺が望んでいたような日常を短いながら過ごすことが出来た。

 

しかし、俺がこの世界に流れ着いたのは何かの理由があってのことだ。

そう遠くない未来に大きな事件が起こるだろう。

 

俺は確信を持ってそう思った。

 

 

そして・・・リナちゃん達の修行が第二段階に入って半月、

 

その日はやってきた・・・

 

 

 

 

 

 

もうそろそろ昼の準備でも・・・そんな時間帯に一人の兵士の来客があった。

 

「すみません!」

「は〜い!何のご用でしょうか?」

 

玄関に出て対応をするレナさん。

ちなみに料理の途中だったらしく(フリルがいっぱいついた)可愛らしいエプロンを着けている。

こうしてみると20代でも通用しそうなほどだった。

否、本当の年齢を言っても誰一人信用をしないだろう。

 

「この家にリナ・インバース殿とガウリイ・ガブリエフ殿はご在宅でしょうか」

「ええ、ちょうど戻ってきていますが・・・」

「では取り次ぎをお願いします。

私はディルス王国のアルス将軍の使いでやってきたマイアスと言います」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひさしぶりね〜、門番その1」

「マイアスです、マイアス」

「冗談よ、冗談」

「そうですか?この前も同じようなこと言っていたような・・・」

「細かいこと言っていると出世できないわよ」

「そうだぞ、これくらいでめげていたらリナの相手はつとまらんぞ」

 

・・・いつもこんな事しているのか?

この二人の旅について行けた二人って一体・・・

 

 

「で・・・家の娘になんか用事とはなんだい?

わざわざディルスの将軍がリナを呼ぶなんて・・・」

「そうそう、それよ。一体いつの間にあのおっちゃん将軍に復帰したの?」

「ええ、あの後人材採用のことで色々ともめまして・・・また不審な人でも入れたら大変ですからね・・・

身元がしっかりしたアルス将軍に無理を言って戻ってもらったと言ってました」

「まあそうでしょうね・・・でもリナを呼ぶなんて何かあったの?

もしかして宮廷魔術師か何かに選ぼうとでも言うのかしら・・・」

「それはないだろう!そんな事したら三日で王国消滅してしまうぞ」

 

ガウリイ・・・後のこと考えて発言しているのか?

骨は拾ってやらんぞ?

 

「まあガウリイのお仕置きは後にしておくとして・・・本当は何があったの?」

 

そう言いつつもガウリイの首を絞めているリナちゃん・・・

極まってるよ・・・ガウリイの顔色も青いし・・・あ、紫になった・・・・

もうすぐ死相が出そうだな・・・

 

俺はのんびりと場違いな感想を抱いていた・・・

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

しかし、あの国も最近ろくな事がないわね〜・・・

私は結構のんきにそんな事を考えてたのだが・・・

マイアスの説明を聞いていく内に、そんな考えは吹き飛んでいった・・・

 

 

 

「・・・実は、またガイリア・シティの近辺にデーモンが大量発生したんです」

「また!?元凶は潰したはずなのに!!?」

「ええ・・・町の方にも押し寄せてきました。その時は王宮にいらっしゃっていた

セイルーンの第二王女様と白ずくめの護衛の剣士に手伝ってもらい、事は済んだのですが・・・」

 

町に押し寄せる?なぜそんな回りくどいことを・・・・・・・

 ・・・ん?セイルーンの第二王女様と白ずくめの剣士?

 ・・・・ってあいつらか!何で二人が一緒なんだろ?

ヘル・マスター
 冥王 フィブリゾの件が終わった後、別れたはずなのに・・・・

 

 

「で、何かその時に気になることでもあったの?」

「はい・・・そのお二人ですが、デーモンを指揮していたと思われる魔族と戦っていたのです。

結果は・・・・・大きな怪我はないものの敗北したらしいです」

 

そんな!?あの二人が負ける!!?

例え中級魔族であろうとも簡単に負けるはず無いのに!!

 

「相手は!魔族は何体だったの!?」

「一体だそうです。私は直接は戦場には出ていませんから詳しくはちょっと・・・ただ・・・」

「ただ?」

「戦場に出ていた騎士の方が言っていました

 

『なぜシェーラがあそこにいるのだ』

 

・・・・・・・と」

 

おいおいおいおい・・・洒落にならんぞ、その台詞。

私は正直いって信じていない。信じたくなかっただけかもしれないが・・・

また戦って勝てる気がしないし、闘いたいとも思わない。

と言うか、今までで戦った奴の中で再戦したくない奴のTOP10に入る奴である。

 

「シェーラと王が魔族だったという事実を知るのは上流騎士か王宮関係者、そして例外として私だけです。

それが今回のリナさんの使いに選ばれた理由の一つです」

「1つって事は他にもあるのか?」

「ええ・・・本当はもっと偉い方が来るはずだったんですが・・・

その・・・皆さん怖がっちゃって・・・係わると不幸になるって言って逃げるんですよ」

「その気持ちは分かりすぎる程に分かる」

「ガウリイ!そんな事を言ったら・・・」

「あんたはいらないことを言わなくてもいいのよ!!」

 

スパパ−ン!!

 

リナちゃんが近くに置いてあった分厚い本の連撃が綺麗にはいる。

 

「ぐあっ!!」

「遅かったか・・・」

 

 

 

「全く・・・で?その逃げた奴ら教えてくれる?

これから行ってとっちめてやる!!」

「まあまあ落ち着いて。まあどちらにしてもリナは行った方が良さそうね」

「うん、確かに真偽はどうあれシェーラがでてきたとなると無視するわけにはいかないからね・・・

しかし大怪我はないっていったけど二人は大丈夫なの?シェーラと戦って・・・」

「はい、一番酷くて骨折だそうです。一カ所だけだと聞きましたけど。

次の日には元気に動いてましたよ」

 

まあ確かに骨折程度だったらアメリアの治療呪文ですぐ治るだろうけど・・・

 

「お二人ともかなり善戦したらしく、闘いの余波だけでデーモンが倒れていたそうです」

 

ん〜・・・そのシェーラもどきが弱かったのか、手加減していたのか・・・・

それともあの二人が強くなったのか・・・想像は色々できるけど本人達に会うまで断定は出来ないわね・・・・

 

「分かったわ、すぐに出発しましょう!」

「有り難うございます!!」

 

そして私はまたあの国に行くこととなった。

しかしまあ・・・あそこまで乱れたのにまだ国の機能はしっかりとしてるんだから大したものかもしれないわね・・・

乱れた理由に間接的に私が係わっているというのが何だか心苦しいんだけどね・・・・

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

(俺はどうしようかな?このままブローディアの自己修復を待つか・・・それとも・・・・)

そう考えていると・・・

 

「アキト君もついていった方がいいかもしれないわね・・・・」

「どういうことですか?ルナさん」

「この世界についたとき、リナの近くだったということは、

アキト君がこの世界でやらなければならない事にリナが係わっているかもしれないからね」

 

なるほど・・・あの場所に着いたのは偶然ではなく必然だったということか・・・

 

「分かりました。リナちゃん達と一緒に行ってみます」

 

こうして・・・・俺は新しい旅に出ることとなった。

遺跡がこの世界で俺に何をしろというのか・・・

その答えを探し出すために・・・・

 

 

 

 

 

 

俺とリナちゃん達はディルス王国が用意したという馬車を止めてある城門近くまで移動した。

必要な者は道々用意すればいいと言うことなので必要最低限な身支度で済んだ。

 

「さて!準備は出来たわね。では出発しましょうか」

「ちょっと待ちなさい、リナ」

 

呼び止めるルナさん。

後ろには何やら荷物を持ったシンヤさんがついてきている。

 

「シンヤさん、どうしたんですか?」

「見送りだよ、み・お・く・り!

何だかしらねえがかなりの厄介ごとに首突っ込むんだろう?」

「相手がもし本人だったら・・・かなり、じゃなくて普通だったら無謀と言った方がいいくらいのね」

「まあな、余り戦いたくない相手ではあるな・・・」

 

この二人がこう言うぐらいの相手なのだ・・・

死んでもおかしくない。いや生き残ることが奇跡みたいだって事か・・・

 

「そんな事言うんじゃねえよ!

いつでも胸張って強気でいきな!そんなんじゃあ勝てるモノも勝てねえぞ!」

「わかってるって!ちゃちゃっと片付けてくるわよ!」

「そうだな。まあリナの場合張る胸がないのが難点かな」

 ディル・ブランド
「炸弾陣!」

 

ド〜〜ン!!

 

「なんでだ〜!!」

 

ガウリイ・・・どう考えても今のはお前が悪いと思うぞ・・・

 

「ま、話を戻して・・・」

「そうだな」

 

心配しないのか?

あ・・・ガウリイが落ちてきた。痙攣しているけど大丈夫なのか?

 

「リナ、気をつけて行きなさいよ」

「わかってるって!伊達に姉ちゃんに鍛えられてないからね」

「そうだね、リナちゃん達頑張ったからね」

「ああ、何度も死にそうな目にあったしな・・・

今までのどの闘いよりも死が身近だったような気がする・・・」

 

お?ガウリイ、いつの間に復活したんだ??

 

でもまあしかし・・・・修行に関しては手加減無しだったからな・・・特に後半にいたっては・・・

どの一撃も必殺の威力があったからな。

はっきり言って端で見ている方が心臓に悪いかもしれないが・・・

 

 

「まあ頑張ってな!それと!頼まれていた物、出来たぞ」

 

そう言ってシンヤさんは荷物の中からブレスト・プレートを取り出す。

          切 ら
ニースに破壊されたブレスト・プレートの修理を頼んでいたらしいのだが・・・

えらく時間がかかっていると思ったら作り直していたとは・・・

 

「修理に出した鎧を見せてもらったが・・・・ありゃあ壊れたと言うよりも切られたというのが適切か?

                                                       こころもと
あんな事ができる奴相手にするんだったら以前の防具じゃ心許ないだろ?

この前、立ち寄ったエルフの嬢ちゃんに教えてもらった金属の製造法で作ってあるからな。

軽いし丈夫だ、二流剣士の腕前じゃあ傷も付かないぞ!

まああんな芸当をする奴にとってはそう大差ないかもしれんがな・・・・」

 

「ヘ?」

「どうかしたのかい?リナちゃん」

「ん、ちょっとね。シンヤのおっちゃん!教えてもらったエルフって変な鎧着てなかった?」

「ああ!着ていたよ、面白そうだから見せてくれって頼んでも

駄目だって見せてくれなかった」

「良く教えてもらいましたね・・・あの偏屈エルフに・・・」

「まあな、教えてももらうときでも、

『人間にこれを教えるのは不安でしょうがないけど仕方ありませんね・・・

これ位の強度でもないとあの人間は噛み切るぐらいはやりそうですものね』

なんて言ってたからな」

 

「噛み切るって・・・シンヤさん、いったい何を作ったんですか?」

「鉄球だよ、鉄球。しかも鎖付きの・・・

ほれ、この間までリナ嬢ちゃんがつけてたヤツだよ」

 

(そうか・・・そうだったのか・・・あのふざけた物を作らせた犯人はあいつだったのか・・・)

 

「なあガウリイ・・・リナちゃん怒ってないか?」

「今近づくと噛まれるから注意しろよ」

「猛犬か?」

「いや、どっちかっていうと狂犬だな」

 

                                                      ドラグ・スレイブ
(お〜の〜れ〜・・・今度会ったらミルガズィアさんもろとも 竜破斬 で吹き飛ばしてくれる!!

二人とも特殊な防具着けてるから平気だろうし・・・・

修行の成果の実験台にでもなってもらおうかしら・・・フッフッフッ)

 

 

 

 

「嬢ちゃん、笑ってるが何かあったのか?」

「まあいつものことだよ。暴れるだけ暴れたら大人しくなるから・・・・

明後日ぐらいには機嫌なおるんじゃないか?気にすることないって」

「そうか、まあいいか」

 

よくないって・・・あんた達その『暴れるだけ暴れたら』の被害を考えてるのか?

明日になったら山一つなくなってるかもしれないんだぞ・・・・・

 

「・・・で、いくらなの?」

「ああ!餞別代わりだ、お代は結構だよ。

試作品でもあるしな、戻ってきたら使い心地でも聞かせてくれや」

「そう?悪いわね」

「軽いし、前よりも動きやすい気がするよ。ありがとよ、おっちゃん!!」

「シンヤ様が作ったんだぜ、それぐらいは当然だ。おっと、これも持っていけ」

 

シンヤさんは袋から取り出した剣を今度はリナちゃんに渡した。

刀身を見たところ先程の鎧と同じ材質の様に感じる。

 

「剣も作ってみたんだ。これも試作品だがな・・・

確か聞いた話だとこの合成金属は魔力と意志の伝導率が高いと言っていたから

魔導士の嬢ちゃんなら使い勝手は良いんじゃないのか?」

「ありがと!遠慮なくもらっておくわ」

「ああ、さて・・・二人に餞別渡したんだ。アキトにもないと不公平だよな」

「別に俺は構いませんけど・・・」

「まあそう言うな。ほれこの鎧なんかどうだ?」

 

そう言ってシンヤさんが取り出したのは胸の所に宝玉がついたやや分厚い鎧だった。

 

「俺は鎧はちょっと・・・それにこの宝玉はなんですか?」

「わ!馬鹿!さわるんなら離れてさわれ!」

 

なるほど・・・またろくでもないもの取り付けてるな・・・・

 

「シンヤさん・・・どういうことですか?」

 

俺はあくまでフレンドリ〜に話しかける。もれ出る殺気はご愛敬だ。

 

「はははははは・・・・・ちょっとばかり・・・自爆装置を・・・・」

 

シンヤさんの話によると、胸の宝玉はさわると中の魔法が発動する特殊な魔法石らしい・・・

まったく・・・この人は・・・・どっちの世界にいても仕事は完璧なのにどうしてこういうことが好きなんだろうな・・・

 

「遠慮しておきます・・・」

「仕方ねぇな・・・自爆は男のロマンの一つだぜ?まあいいや。ならこれ持っていけ」

 

今度は服を取り出してきた。色は俺に合わせてくれたのか黒。

広げてみるとこの世界の旅人が着るらしい服によく似ている。

といってもかなり重武装ができるように改造されてはいるが・・・・まあこれくらいは俺にとって必要だろう。

 

「それはなんの仕掛けもないがな・・・耐火用になってる。一応防刃にもな。

マントの方も似たようなものだ。ミスリル銀の糸を編み込んでるからな、かなり丈夫だ。

矢が飛んできたって防げるぞ。衝撃はもろにくるけどな・・・刺さるよりはましだろ?」

「すみません。こんないい物もらって・・・でもなんで最初から出してくれなかったんです?」

「そこはそれ・・・遊び心だ!男のロマンは幾つになってもいいものだ!」

「別に良いですけどね・・・まあ程々に・・・」

「ああわかってるよ」

「結構いい物もらったわねアキト。」

「戦闘用の服が一着しかないから助かったよ」

 

戦闘用のはこの世界に来たときに着ていた服しかなかったからな・・・

正直言って助かった。鎧は着る気はしないからな・・・重そうだし・・・

 

「そろそろいくわよ。馬車が待ってるし」

「おう、引き止めて悪かったな」

「じゃあ行ってくるわね」

「おう!気をつけてな。ガウリイの兄ちゃんもな」

「ああ!行ってくるよ」

 

 

 

 

 

 

 

「アキト君!!」

 

リナちゃん達が門をくぐった時、俺はルナさんに呼び止められた。

 

「どうかしたんですか?」

「ううん・・・ただね、ちょっと言いたいことがあって・・・」

「??」

 

俺は首を傾げるしかなかった。

何かあったのかな・・・アルバイトのことはちゃんと店長に話をしておいたし・・・

 

「もし・・・この旅の途中で自分の世界に帰れる様になっても一度はこの町に帰ってきて挨拶ぐらいはしてね。

貴方もこの町の立派な住人なんだからね。

女王様やティシア。それにあの四人も・・・・仕事さえなければみんな見送りに来たかったそうよ」

「そうなんですか・・・わざわざ俺なんかに・・・」

「だからちゃんと帰ってきてね・・・みんな待っているから」

「ええ!必ず戻ってきますよ。そうだ!あれは使えるかな?・・・ディア!」

「・・・・・なに?アキト兄」

 

う・・・・しばらく呼んでなかったから機嫌が悪そうだな・・・・

 

しかし自分から言ったじゃないか・・・

「自己修復は私達が寝ていた方が早まる様だから用があるとき以外は寝てるね」って・・・・

 

まあまったく用がなかったからほとんど(半月程)呼んでなかった俺も悪かったけどさ・・・

 

「ブローディアの中にコミュニケの予備はなかったか?」

「あるよ。万が一の時のためにって、セイヤさんが入れたの。

『こんな事もあろうかと〜』なんて歌いながら」

 

・・・まあ、人それぞれだからな。誰がどんな歌を歌おうとも人の勝手だし・・・

 

「この世界でも使えるか?」

「うん。ブローディアを中継にしてね」

「こっちに送ってくれないか?」

「うん!わかった」

 

そう言ったすぐ、俺の目の前に予備のコミュニケが現れる。

俺はそれを手に取り、ルナさんに手渡す。

 

                                                             ヴィジョン
「これを・・・コミュニケといって俺といつでも通信できます。魔法の隔幻話みたいなものです。

何かそちらに異変があったときは連絡して下さい。別になくても良いですけどね」

「有り難う。これ借りておくわね」

「では、行って来ます」

「気をつけてね」

「ええ、きっと帰ってきます」

 

そうして俺は先に行ったリナちゃん達に追いつこうと走ってその場を離れた。

 

 

 

 

 

「いいのかい?ルナちゃん・・・本当は一緒に・・・」

「いいんですよ、シンヤさん。
                    ディープ・シー    グレーター・ビースト
それに私が動けば、 海 王 や   獣 王   までもが動き始める可能性がありますから・・・・

それにこの事件には私の因果は係わってはいません。先まではわかりませんけどね・・・」

 

「魔族に対しての重石に因果律か・・・・強い力っていうのも不便だな・・・」

「ええ・・・仕方ありませんから・・・それにアキト君は戻ってきてくれると言ってくれましたし。

これでいつでも話は出来るみたいですしね」

 

(あ〜あ・・・・嬉しそうに笑っちゃって・・・アキトよ・・・ルナちゃんを泣かす真似なんかしたら承知しねえぞ・・・)

 

 

 

そんな事があったとは知らず、俺達はディルス王国に向かって旅を始めた。

道のりは早めの徒歩で約二週間ほど・・・

俺達はディルス王国が用意した馬車に乗り約1週間ほどで到着予定だ。

 

 

 

しかし全てはある者の思惑通りに進んでいた。

この事を・・・俺はまだ気づきもしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

(第11話に続く)

 

 

 

 

あとがき

 

どうも、ケインです。

やっと書き上がったところ申し訳ありませんが・・・今度の投稿はかなり遅くなります。(今さらですね・・・)

 

私の書き方というのは、まず五話くらいまで先に書き、

つじつまが合わないところを訂正して、足りない言葉などを書き入れます。

そうしないと私は馬鹿ですのでかなり変な文章になるんです・・・・

 

 

ということで(どういうこと何だか)次の話の舞台はディルスに移ります。

そこでリナ達は懐かしい人達に再会します。(もう既にバレバレですね・・・)

 

ちょこっと性格が変になるかも?あまり気にしないでください・・・・

 

では最後に・・・K・Oさん、カルマさん、槍さん、白い鉄さん、和樹さん、川嶋さん、綿貫さん、kondo_sakumaさん。

BENさん、Tear Moon La Tice さん、涼水夢さん、音威さん、感想ありがとうございます!

(名前出してほしくない人は言ってください)

 

では第十一話「懐かしき再会・・・・(仮名)」で会いましょう!!

 

 

代理人の感想

 

食事とは普段の闘争である。(誤字にあらず)

それは(自分が)食うか(他人に)食われるか真剣勝負。

 

例え親兄弟といえども自分以外は全て敵。

そこになまっちょろい情の入る余裕はない。

速く! もっと速く! 風のように箸を繰り出せ!

強く! もっと強く! 敵の箸を弾いて己の獲物を守れ!

 

・・・・そ〜ゆ〜中で育った私は異常なのでしょうか(笑)?