いま、私達はミルガズィアさんの使う移動用の呪文『ロラーザ・ロード』によって
一路、ゼフィーリアに向かっている最中である。
この呪文、周りの大地ごと私達を移動させるというとんでもない魔術だったりする。
とてもじゃないが人間に扱えるレベルのものではない。
その所為か・・・ミルガズィアさんは魔術の維持をしなければならないが(竜族にとって苦にもならないらしいのだが)
側にいるだけの私達は至って暇である。
ガウリイにいたっては大地に敷いたシートの上で寝ている始末・・・・
といってもみんな座ってはいるんだけどね・・・・・
私達はその持て余した暇を利用して情報の交換をしていた。
どうでもいいことなのだが・・・・
この光景を端から見ればかなり異様な気がするが・・・・まあ、気にしないでおこう。
「ところで、なんでメフィとミルガズィアさんはあの場所にいたの?
やっぱりグロウの気配を感じて?」
「その通りだ。私とメフィは強い魔族の気配を再び感じてこの町に来たのだ」
「でもその割にはでてくるのが遅かったですね・・・・
私とゼルガディスさんがあの魔族と闘ってから三週間以上もたってますよ?」
そういやそうよね・・・・この二人なら感じた次の日にでも来そうなものなのに・・・・
「私とおじさまは翌日にはあの町にいましたわ。
でてくるのは遅かったのではなく手を出さなかっただけです。
人間の国の事にいちいち手を出すのは不本意ですからね」
「まあメフィの言い方はきついかもしれんが私としても同意見だ。
我々竜族とエルフはあまり人間のやることには手出しはせん。
人間のことは人間が解決するべきなのだからな・・・・」
「では何故今回は魔族が出てくる前に私達の手伝いをしたんですか?」
「それはそこの娘がいたからだ」
そういったミルガズィアさんが指差したのは・・・・・へっ?私!?!
「貴方が居たということは、あの魔族がでてくる可能性が大ということですからね」
あたしの存在は魔族でも引きつけてるのか!・・・・・って、あんまり否定できないかも・・・・・
「そ、それよりもアメリアにゼル。さっきは聞き忘れたんだけどなんで二人は一緒だったの
確かにあの時別れたはずでしょう??」
私はどうにも気まずい雰囲気を感じ、強引に話を別の方向にずらした。
「それは私からお話しします。実はつい最近、城の図書館に隠し部屋が見つかったんです。
そこにはすでに失われていた神聖魔法について書き記されていた本や
不死の研究についての記述などが少数ながらも見つかったんです。
そのどれも失われた古代文字で書かれた物が多く、いま学者などが解読に勤しんでいる最中なんです」
なるほど・・・・先程のアメリアが使った魔法はそういうことだったのか・・・・
「そんな噂聞いたこと無いけど?」
「それはそうです。極秘に扱っているモノなんですから・・・・
不死の研究について興味がある王侯貴族は大勢いますからね」
確かに・・・・それこそ掃いて捨てるほどいるだろう。
「だが大勢の人が係わるんだ、どうやっても情報は漏れる。
俺は情報屋が噂程度にこんな話があるって聞いてな・・・
クレア・バイブル
異界黙示録の手がかりを求めてダメ元で訪ねてみたわけだ・・・
まあ、収穫は今のところゼロだがな・・・」
「なるほどねぇ・・・・ところでアメリア。神聖魔法ってヤツは私にも使えるの?」
「おそらく使えるんじゃないかと思います・・・・けど・・・・・」
けど?何か教えたらいけない理由でもあるのか?
「魔術の理論とはまったく系統が違うんです。
だから憶えようとしたら一から始めないと・・・・私も丸二ヶ月かけて憶えたのは三つぐらいなんです」
何だか面倒くさそうよね〜・・・理論が違うと言うからには
いざ戦場でって時にはいちいち考え分けなければならないんだし・・・私には却下ね・・・・
「じゃあさっき使った合成についてはいつやったの?」
「あれか?あれはこの間シェーラという奴に化けていたグロウとの戦いでな・・・・偶然できたって訳だ」
なんとまあ行き当たりばったりな・・・・私も人のことは言えないんだけどね・・・・
「今度は私から質問してもいいか?」
「私達に答えられることなら」
「そこの二人に聞きたい。その腕輪はどこで見つけたものだ?」
確かに・・・・アメリアとゼルは以前は身につけていなかった腕輪があった。
しかも二人とも同じデザイン。てっきり私はただのペアリングと思っていたのだが・・・・・
ミルガズィアさんが気にする以上、何か曰くのあるものなのだろうか?
この人なら『いい腕輪だな。私も買いたい』などと真顔で言ってのけるくらいはする。
まったくもって油断のできない人(竜)なのである。
「これはこの間俺が遺跡から見つけたものだ」
「そうなのか・・・・・それが一体どういうものなのか知っていて身につけているのだな」
「まあ大体な・・・ご丁寧なことに遺跡の壁に使い方を書いてあったからな」
話は二人だけでどんどん進んでいった。
私にはなんの事だかさっぱり分からず、二人の話に置いてけぼりをくらっていた・・・・
メフィとアメリアは大方の事を知っているのか疑問をはさもうともしない。
ガウリイにいたっては眠ったままだし・・・・・・・・
「一体その腕輪はなんなんですか?」
「簡単にいうとその腕輪は二つで一組になっている代物でな・・・・
リンク キャパシティ
装着している二人の精神を接続して擬似的に魔力許容量を増大しようとするものだ」
「と言ってもそんなに強くはならないがな」
「普段使うより二割ぐらい強くなるだけです」
「へ〜、結構便利よね・・・でも精神をつないで大丈夫なの?」
「つないでいるといってもそんなに大げさなモノじゃないんです。
ただ・・・・・近くにいると言いたい事とか感情がなんとなく分かる気がしますね」
「まあそんなモノだ」
まあ、よく言う心と心が繋がっているってヤツか?
・・・・・・うわっ、自分で言って鳥肌立っちゃった・・・・・
「しかしよく知ってましたねミルガズィアさん」
「ああ、そこの二人には以前いったことなのだが、
何時かおきるであろう魔族との抗争のために我々竜族とエルフ族が合同で武具を作っていたのだ」
それについては確かに聞いたことがある。
クレア・バイブル
何でも異界黙示録の知識を元にして得た技術だとか・・・・
その技術によって生み出されたのがミルガズィアさんの身に着けているブレスト・プレートであり、
メンフィスが身に着けている生きた鎧『ゼナファ』であることを・・・・
「その時に過去の遺物であったその腕輪も作り出そうとしたのだ」
「作り出そうとした・・・・ということはできなかったんですか?」
「いや、作らなかったのだ。作り出す前に決定的な欠陥が見つかってな」
「欠陥?」
「人間同士が身に着けるのであれば問題はない。
しかしこれが竜族やエルフ族となると話が違ってくるのだ」
アストラル・サイド
「私達エルフ族やおじさまのような竜族は人間よりも精神世界面の干渉率が高いのよ。
だからそんな二人が精神的に繋がろうとすると人格や記憶の混乱。
果ては二人が廃人になったり同一の人格で動いたりするのよ・・・・」
おいおい・・・・んな物騒なもん身に着けてるのか・・・・・・この二人は・・・・
「先程の話しを繰り返すが人間同士が身に着けるのであれば問題はない。
過去にもこれを身に着けていた人間の魔導士が居たらしいからな。
ただ・・・・私が言いたいのは」
「言いたいのは?」
「おめでとうということだ」
「「「はぁ????」」」
私とゼル、そしてアメリアは目を点にしてミルガズィアさんに聞き返す・・・
何がどうなったら『おめでとう』なのかさっぱりと要領を得ない・・・・
「あの〜それって一体どういうことなんですか・・・・・
私とゼルガディスさんがこの腕輪を身に着けていてなんでおめでとうなんですか?」
「知らないのか??男の方はどうなのだ?」
「いや、さっぱり・・・・遺跡の方にも使い方しか書いてなかったからな」
「なんだそうなのか・・・てっきりその腕輪の由来も知ってのことなのかとばかり思っていた」
「なんですか?その由来ってのは・・・・」
「その腕輪・・・・・身に着ける者同士が魔導士であれば効果は倍増する」
「ああ、それは知ってはいるが・・・・」
「この腕輪は魔導士が異性の魔導士をパートナーに選ぶときに送っていたらしいのだが・・・・」
パートナー・・・・贈り物・・・・異性・・・・おめでとう・・・・・この四つから連想できるモノ・・・・まさか・・・・
「まさか・・・・婚約腕輪なんてべたな落ちじゃないでしょうね・・・・」
「「なっ!!」」
「私に言ってもしらん。文句は過去の魔導士達に言ってくれ」
大当たりかい!!
ゼルとアメリアの方は・・・・ダメだ・・・顔真っ赤にして頭がストップしてる・・・・
「まぁ〜!それはそれはおめでたいことですね!
私からもお祝いの言葉をお贈りしますわ」
こらこら!追い込みかけるんじゃない!!
「フム・・・・・期待しておったのだが・・・・残念だ」
あんたは一体何を期待しとる!!
「その話はおいといて・・・・ミルガズィアさんいつ頃着きそうなの?」
「このままの早さだと・・・・早くて日が沈む頃・・・遅くても夜半には着くだろう」
おそらく・・・いや、確実に着く頃には全て終わってるわね・・・・
イレギュラー
やはり頼みの綱はこの筋書きを書いたヤツの予想外たるアキトに期待するしかないか・・・
「すまないな人間よ・・・・私が飛べればもっと早いのだが・・・・」
「仕方ないですよ・・・みんなを乗せたらバランスがとれないんでしょう?」
いま現在、ミルガズィアさんは義手がないため自分一人ならまだしも
みんなを乗せて飛ぶことができなかった・・・・
「フン!人間なんかにかまったりせず私達が飛んでゆけばこんな事にはならないのに」
タメをはる サ シ
「ならあんただけ飛んでゆけば?うちの姉ちゃんと互角の魔族と一対一で戦えるかもよ?」
「そ・・それは・・・・」
「なら黙ってなさい。ただでさえグロウとの戦いで魔術連発したんだから・・・・
疲れた体ひきずって現れても迷惑なのがいい所よ。私達も・・・貴方もね・・・」
「・・・・・・・・」
スィーフィード・ナイト ニ ー ス
たとえ私達が万全の調子であっても、うちの姉ちゃんに匹敵するあの魔族と対等に戦える自信はないけどね・・・
今の私にできることは・・・・疲れをとることと・・・
最悪に事態になってないように神に祈る他なかった・・・・
しっかしこの場合・・・・祈る神って誰にしたらいいんだろうね〜?
フレア・ドラゴン アクア・ロード
赤の竜神・スィーフィードと 水竜王 は滅んじゃってるし・・・他の竜王はまったく動く気配がなし・・・・・
・・・・・ダメじゃんこの世界の神様・・・
いっそのことアキトの世界の神様にでも祈ってみるか?
変なのに当たらなきゃいいけど・・・・
―――――おまけ―――――
「むっ!何処かで我が神を呼ぶ声がするぞ!!」
「ゴートさん。書類整理が嫌だからと言って逃げないでくださいよ」
「しかしだなミスター。我が神の信徒を増やすのは我が使命であって」
「その使命のせいで各部署からの苦情が来ているのですよ?この書類だってそのせいでは・・・」
「待っていろ!我が神の代行としてわれが今参上するぞ!!」
「あ!!逃げないでください!お給料カットしますよ!!」
(第十四話に続く)
―――――あとがき―――――
どうも、ケインです。
やっとの事で十三話が出来ました。
本来は二つにわけるつもりじゃなかったんですけどね〜・・・・知らずの内に別れてしまいました。
ひとまとめで書いていると途中からおかしくなってしまって・・・・
とりあえずリナ達はゼフィーリアに戻ることとなりました。
まあどうやっても間に合いはしないでしょうが・・・・・距離的に無理がありますし・・・・
しかし今回はアキトの台詞が最初の一行のみ!!
なかばスレイヤーズ投稿になってしまっているのでは?と心配しています。(いや、ホントに・・・・)
最後のおまけについては深く考えないでください・・・・(大汗!!)
十四話ではアキトが活躍・・・・というかアキト中心の話になります。当たり前だなこれは・・・・
アキトがゼフィーリアに戻った時、そこで見たものは!?偉そうに書いていますが大したものじゃなかったりして・・・
第十四話「それぞれの戦い・・・アキトパート」(仮)で会いましょう。
ちなみに今回も先着三名様に先行試作型十四話プレゼント。
前回は一名のみ!気づいてない人が多いんでしょうね・・・・
最後に・・・川嶋さん、muuさん、強さん、K・Oさん、綿貫さん。
KOQUさん、卯月妃絽さん、ヨシノブさん、涼水夢さん。感想ありがとうございます!!
代理人の感想
・・・・・・時ナデ世界の神様?
それだけはやめた方がいいと思います(核爆)。
・・・・ひょっとして次回、「アタシは見た! 神の世界を!」
とか叫ぶリナが見られるか(爆笑)!?