赤き力の世界にて

 

 

 

 

第14話「それぞれの戦場・・・・《アキト・サイド》」

 

 

 

 

 

 

 

 

「今よ、行って!!」

「すまない!後は頼む!!ディア、ブロス準備は!!」

「何時でも!!」

『OKだよ!!』

 

(イメージは・・・リナちゃんの家、インバース商会!!)

 

「いくぞ!ジャンプ!!」

 

 

 

      ボソン粒子                           ジャンプ
俺は虹色の光を纏い、ゼフィーリアの地に跳躍した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして・・・・ジャンプアウトした先に待っていたのは・・・・・・迫りくる刃の数々だった!!

 

 

「―――――!!」

 

 

俺はそれを認識すると同時に後ろに大きく飛び下がる!

刃は俺が一瞬前までいた空間を無遠慮に貫く!

 

                            エルメキア・アロー
そして体勢を調えると同時に 閃 裂 矢 を放とうとして・・・・・やめた。

 

正確には放つ必要がなかったとも言うが・・・・やっぱり放った方がよかったか?

 

 

「えらく手厚い歓迎だな・・・・ランツにスポット」

 

 

そう、俺に攻撃を仕掛けてきたのはランツとスポットの二人のほか、

      叩きのめした覚えが
以前見かけたことのあるルナさんのファンクラブの面々だった。

 

 

「なんだアキトじゃないか・・・」

「本当にテンカワか?魔族が化けてるんじゃないのか?」

「フンフン・・・・間違いない。これはアキトの匂いだ」

 

(う〜ん・・・ガウリイといいスポットといい・・・この世界の識別の仕方は匂いなのか??)

 

「そうなのか・・・でも一体どうやって?」

「それよりも言うことはあるんじゃないのか」

「ああ!みんなすまん。しとめ損ねた」

 

 

ランツは後ろにいる男達にそう謝った・・・・俺は詫びの言葉一つもない。

 

 

(いい度胸しているな・・・今ならなんとなく黒い昂氣が出せそうな気がするぞ・・・っとそんな事より・・・・)

 

 

俺は現在位置を知るために周りを見回した。

確かにここはルナさんの家であり、俺がゼフィーリアに来てから居候している所だ。

 

 

(どうやらジャンプは正確にできたようだな・・・二人は・・・ディアとブロスは大丈夫なのか!?)

 

「ディア!ブロス!大丈夫か!?」

 

 

ピッ!!

 

 

                         ディアとブロス
俺はコミュニケに向かって 二 人 を呼ぶが返事は返ってこなかった。

代わりに何かの画面がでてくる。

 

 

「なんとまぁ・・・手の込んでいるというかなんというか・・・」

 

 

でてきた画面には四等身ぐらいにディフォルメされ、

道路工事などの看板のように頭を下げている警備員服を着たディアが写っていた。

その脇には『ただいま演算中。大変ご迷惑をお掛けしております』と書かれてあった。

 

俺は苦笑しながら開かれていたウィンドウを閉じた。

 

 

(少なくとも二人は演算に手間をくわれているだけか・・・無事ならそれでいい)

 

 

 

「おいテンカワ。いったい何なんださっきのそれは・・・それにお前いま突然と・・・・」

「詳しい話は後でする。状況を教えてくれ」

 

「あ、ああ・・・昼過ぎぐらいにいきなりデーモンが大量発生したんだ。

俺達はルナさんの手伝いをしようとここに集まったんだが・・・・」

 

「いないんだ。姐さん・・・・デーモンが発生する少し前に急いで出ていったんだ」

 

(出ていった・・・ディアの話し通りだとすると今はニースと対峙しているはず。

しかしこの町にはそういった気配はない。

あの二人が闘うのであればたとえ隣町だろうと感じるだろう。

となると・・まだ戦っていないのか・・・それとも魔族が創る結界とやらの中なのか・・・・)

 

「ロウさんとレナさんはどうしたんだ?」

「二人とも此処を俺達にまかせて住民が避難している所の警備の手伝いに行ったんだ」

「その場所は?」

「魔導士協会にレナさんが・・・警備団の本部にロウさんが。

その二つがこの町で緊急避難場所に指定されているんだ」

「そうか・・・・・」

 

(ルナさんが心配だけど・・・・・今は住民達を助けるのが先決だな・・・・)

 

「引き続いて此処を頼む。俺は町に現れたデーモンを掃討しながら二人に会ってくる!」

「わかった。だが敵はデーモンだけじゃないぞ!奇妙な人間もいるらしいから気をつけろ!」

「わかった」

 

 

俺はその言葉を聞くと同時に警備団の本部に向かって走り出す。

 

理由は至極簡単。警備団の本部に行くためにはリア・ランサーの前を通り、

大通りを走らなければならないから。

メイン・ストリート
大 通 りを確保することで住民は避難しやすくするだろうと思ったからだ。

 

 

 

 

 

走ってすぐにリア・ランサーが見えてきた。

店の前でデーモン五匹と誰かが闘っているのが見える。

 

 

(あれは・・・・店長!)

 

 

店長が槍を構えてデーモンと相対している・・・いや・・・いた。

俺がそれを認識した瞬間、デーモンが店長に殺到した!!

 

 

「かぁぁっ!!」

 

 

店長が気迫のこもった声を上げると同時に前にいた二匹のデーモンの体にそれぞれ二つずつ穴が空く!

瞬時に四撃入れたのだろう。常人には見切ることは不可能な早さだ。

 

店長は槍を手前に突きだしたまま、横薙ぎに攻撃する。

その槍は魔法のかかった武器なのだろうかデーモンの体を易々と切り裂き、

左横手にいた二匹を胴から真っ二つにする。

 

                                    後ろ姿
こうなると店長は右のデーモンに対して隙を見せることになってしまう。

デーモンはその腕を振りかぶり・・・・

 

 

「ハァッ!!」

 

 

振り下ろす前に店長が槍をそのまま引き寄せて石突(槍の刃の反対側)でデーモンの腹を打つ!

 

 

ボンッ!!

 

 

デーモンは腕を振りかぶったまま・・・・・・・腹に大きな穴を開け絶命する・・・・

 

俺の出番まるで無し・・・必要ですらなかった。

店長はその戦闘のあいだ、最初の攻撃に一歩を踏み出したほか、その場を動きもしなかった。

 

 

「お?アキトか。いつの間に戻ってきたんだ?」

「ついさっきです。俺だけ一足早く戻ってきたんです」

「そうか・・・」

「ところで先程の戦闘、見事でしたね」

「はははっ。若い頃はロウの奴と一緒に色々と無茶をしてね・・・いつの間にやらこうなったわけだ。

アキト君やルナちゃんにはとてもじゃないが敵いはしないよ」

 

 

色々と無茶をしたって・・・一体どんな無茶をしたらそんな腕前になるんだか・・・・

 

 

「そんな謙遜しなくても・・・」

「謙遜じゃないさ。それより何処かに急いでいたのではないのかな?」

 

「そうでした。俺は町を襲っているヤツを掃討しながら住民の避難所を回ります。

店長はどうしますか?」

 

「私も手伝おう。私は住民の避難の護衛の方に回る」

「お願いします」

「礼は不要だよ。ここは私が住んでいる町なのだからね。護るのが当たり前だよ」

「そうですか。じゃあ俺は先に行きます。気をつけてください」

「ああ。アキト君も気をつけろよ」

 

 

俺は再び警備団の詰め所に急いだ。

途中デーモンをかなり倒したが・・・・どこからわいているのやら・・・

中には盗賊の類も町に入ってきたらしく、町の人を襲おうとしているところを何度か見た。

むろん例外なく叩き伏せたが・・・・死んでない程度には手加減をしておいた。

 

 

(無用な殺生はしたくないからな・・・だが・・・必要とあらば躊躇はしない。)

 

 

戦いの場において生と死は紙一重・・・・どこでいつ死んでも・・・・殺しても不思議ではないのだ。

もし・・・殺したとしても・・・それを受け止め、一生背負う覚悟はできている。

 偶然の事故により、全てをやり直すチャンスが与えられた
過去に戻り、ナデシコに再び乗ると決めたときから・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

それから間もなくして俺は警備団の本部に着いた。

そこにはかなりの人が集まり、建物の外にまであふれている。

といっても本部は高めの塀に囲まれており、その中には避難できているのでそう心配はないだろう。

 

 

「ライルさん!ロウさん!シンヤさん!」

「おお、テンカワくん」

「アキト、いつ戻ってきたんだ?娘達は?」

「リナちゃんはまだディルスにいます。俺だけちょっと強引な手を使って先に戻ってきました」

「そうか・・・詳しい話は後にしよう。いまの町の状況は?」

「大体・・・・ディアに大体の事情は聞きましたし、ここまで来る間に町の様子を見てきました」

「デーモンの方は?」

「とりあえず会った奴は全て片づけておきました。焼け石に水かもしれませんがね」

「アキト。妙な奴らにはあったか?」

「妙な奴ら?どういう風に妙なんですか?

俺があったのはデーモンと盗賊や山賊みたいな奴らしか会ってませんが?」

 

 

俺はシンヤさんの質問に要領をえず、逆に問い返した。

 

 

「野党じゃねえよ。白い鎧着た獣人やら詠唱も無しに魔法をぶっ放す奴らだ」

「前者はともかく後者は人間ですか?」

 

 

人間である以上、魔法を使うときに詠唱は不可欠。

たとえどんな大魔導士だろうとその枠からはみ出ることはない。

 

俺はその様にリナちゃんから聞いたことがある。

 

 

「とりあえず人間らしい・・・・としか言いようがねえな。俺もまだあってねえし・・・・」

 

「私の部下がそういった奴らに返り討ちにあったそうだ。生き残ったのは二十人中五名のみ・・・

なんとかたどり着いた者もつい先程まで生死の境を彷徨っていたところだ・・・・・

今はもう何ともないが・・・・クッ!」

 

 

そういったライルさんは顔に苦渋が滲み出る。

部下をやられたんだ・・・・悔しいはずがない。

 

 

「そいつらが現れてからこの町にデーモンが大量発生したらしい。

          こ の 事 件 の 元 凶
そうなるとデーモンの召還者はそいつらと思うのが普通だな・・・・」

 

                                                               ダイナスト
「・・・・・おそらくそいつらが元凶じゃないでしょう。この件の後ろには覇 王が絡んでいます」

 

 ダイナスト
「覇王!?!」

 

「ええ。ディルス王国での騒ぎは覇王の部下によるリナちゃん達をこの国から離しておくためらしいんです。

                             ニ ー ス
俺はディアからルナさんが やばい魔族 と戦っていると聞いて一足先に帰ってきたんです。

ロウさん、ルナさんの行方は知りませんか?」

 

「いや、俺はまったくしらん。道理でルナがどこにも見あたらないはずだ」

 

「しかしアキトよ。ルナちゃんなら魔族の一匹や二匹・・・

仮にもダース単位で来ても返り討ちなんじゃあないのか?」

 

「世間一般の魔族がどういったのかは知りませんが・・・ニースは強いですよ」

「ニース??魔族と知り合いなのか?」

「ええ、まあ・・・そんなものです。リナちゃんとガウリイの二人がかりでもまったく相手になりませんでした」

「リナ嬢ちゃんとガウリイの兄ちゃんがか!?」

「ええ」

「悪夢だな・・・」

 

「確かにそうかもしれんな・・・しかしルナ殿が敵わないのであれば私達とて相手にはならんだろう・・・・

その相手はルナ殿に任すしかないだろう」

 

「もしくはルナが対等に戦える相手と言っていたアキト君・・・・だな・・・」

 

                    スィーフィード
「ルナちゃんみたいな赤の竜神の力の一部が宿っているってんならまだしも、

ただの人間がそこまで強くなれるのか?俺は魔族云々よりそっちの方が信じられねぇよ・・・」

 

 

シンヤさん・・・それって褒めてるんですか?それとも貶しているんですか?

俺はただの気の小さい一般市民ですよ?人外みたいに言わないでください。

 

 

「とにかく居場所が分からない今はどうしようもないだろう・・・・

これから我々市街警備団の精鋭部隊は町のデーモンの掃討に向かう予定だ。

テンカワ君。良ければ一緒にきてもらえんかね?」

 

「すみませんが俺は先に魔導士協会の方に行ってきます。その後でよければ・・・」

「ああ、それで結構だ。それまでは別々に・・・・」

 

 

 

ドゴォォン!!

 

 

 

突如、町の方で巨大な火柱が上がる。その端では光の柱なども上がっていたりする。

 

 

                             バースト・フレア                    ラ・ティルト
(炎の方は火力から推測すると烈 火 球・・・それにあの光は崩霊斬!?)

 

「あそこはどの辺りになりますか!?」

「あそこは魔導士協会のある場所だ!」

「奴等あっちをねらってきやがったのか!!」

 

 

ロウさんとシンヤさんが検討で教えてくれる。

俺と二人はそれぞれ武器を構えながら建物を飛び出そうとした。

 

 

「―――――!!」

「こっちにも団体さんが到着って奴か・・・・・くそっ!!」

 

 

そこには白い鎧を着た獣人と、見た目は人間だが気配はかけ離れている連中がいた。

その数それぞれ二十人少々。計四十人そこそこ・・・・

けっして苦戦する相手ではないが・・・どうにも感じる気配が不気味だった。

 

まだかなり遠いからこちらの迎撃には間に合うだろう。

 

 

「ここは我々が!君達は魔導士協会の方に向かってくれ!」

「そう言ってられる状況か!?はっきりいってお前達じゃあやばいぞ」

                    カミさん
「ま、あっちには家の女房がいるんだ。こいつら殲滅しても時間の余裕がある」

 

 

そうは言ってはいるもののやはり心配なのだろう。

さっきは急いで魔導士協会に向かおうとしていたし・・・

 

 

「どうしましょうか!!」

 

 

警備団に人達がライルさんに指示を仰ぎにきたらしい。

 

 

「よし!俺とアキトで中央に切り込む。相手が分断されたら各個撃破!

ただし絶対に一対一でかかるな!卑怯云々よりも生き残ることを優先しろ!!」

『了解しました!!』

 

 

指示を出したロウさんは手元にあった剣を抜き、自然体に構えた。

 

 

「アキト。お前は切り込んだらそのまま走り抜けて魔導士協会の方に行ってくれ」

「・・・・・わかりました。後のことは・・・」

                                                  うち  カミさん
「気にするな。この程度の連中相手に手こずってたら家の女房に合わす顔がない」

「そうですか・・・所でロウさん」

「なんだ??」

「勝手に指示出していいんですか?ライルさんいじけてますよ」

 

 

俺の視線の先には背中に哀愁漂わせいじけているライルさんがいた。

 

 

「あ・・・すっかり忘れていた・・・悪い悪い!お前の仕事とるつもりはなかったんだ」

 

「いいんだよ・・・どうせ私なんか・・・ロウが指示出してもなんの疑問も抱かずにさっさとやっちゃうんだもんな・・・

どうせ私なんか要らない団長なんだよ・・・娘も最近元気がないし・・・その上何を話しかけても上の空・・・

お父さん何か悪い事したのか〜〜!

 

 

まだ仲直りしてなかったんだな・・・というかこの人いじけたら娘のグチ言ってるらしいからな・・・・

部下の人達も大変だ・・・・・

 

 

「団長!しっかりしてください!」

「我々には団長が必要です!!」

 

 

団員の人達が口々に励ます。どうやらああ見えても結構慕われているらしい。

 

 

「よし!それぞれ二班に分かれろ!片方は私が受け持つ。もう一つは・・・・・・・・」

 

 

あっさりと立ち直って指示飛ばしているし・・・実は構ってもらいたいだけじゃないのか??

 

そうこうしている間にも奴等はこちらに近づいてきている。

 

 

                          エルメキア・アロー
「ロウさん。先行きます・・・・裂 閃 矢!!」

 

俺の解き放った光の矢の群は先頭を歩いている獣人達にまともに当たり・・・・砕けた!?

 

 

(魔法が効かない!?呪文を唱えた様子はなかった。一体どういう事だ!?)

 

 

俺は魔法が効かなかったことに疑問は持ったものの、思考を素早く物理攻撃に切り替えようとした・・・・

 

獣人達は俺達が戸惑ったのを見て笑い(獣顔の笑いなんて初めて見たが・・・)

俺達に向かって手をつきだした。

 

それをみた瞬間、俺の直感が警告を発する!!

 

 

「みんな伏せろ!!」

 

 

皆が俺の言葉に従い伏せたのと、獣人達の手よりレーザーのような閃光が飛び出したのが同時だった!

 

ふせるのが遅れたものはその閃光に体を貫かれ、苦悶していることを感じる気配から察した。

不幸中の幸い、死人だけは出なかったが・・・それも時間の問題だ。

 

 

(このままではまずい!!)

 

 

俺はその場から立ち上がり飛んでくる閃光を紙一重で避けながら敵の集団に突っ込む!

DFSを起動させ獣人達を瞬時に切り裂く!

 

 

「アキト!もういい、お前は魔導士協会の方に行ってくれ!

魔法が効かない連中がいるとなればあっちにはかなり不利な状況になる!!」

 

「わかりました!!気をつけてください!」

「まかせな!こいつらの根性叩き直してやる」

 

 

シンヤさんはそう言って手に持った武器(大金槌)を手の上でクルクルと回す。

先端の金属部分が子供の頭ぐらいありそうなのに重くはないのだろうか??

 

 

「頼みます!」

 

 

俺は襲ってくる連中を走りながら切り捨て、魔導士協会に向かった。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

後に残されたのはほぼ無傷に近い警備団+二人と最初の半分以下となった敵だけだった。

 

 

「まったく・・・あの間に半数を倒しただと?しかも全部一撃ときたもんだ・・・」

「腕がいい上にあの武器だぜ・・・・あんな武器俺も作ってみてぇよ」

「私達たちの出番・・・もしかしてなかったのかもな・・・・」

 

 

 ロウ、シンヤ、ライル
 中年三人組 はそう言いつつも敵を倒す手を休めようとはしない。

 

 

「なんにしても見せ場奪われたんだ。後始末ぐらいはしないとな」

「同感だ」

「しかし大した強さだねぇ・・・噂には聞いてはいたが是非とも警備団に入ってもらいたいよ」

「無理なんじゃないのか?女王様のお気に入りみたいだし・・・」

「おもちゃか?」

  わ か ら ん                      第 一 王 女
「否定できんな・・・最近はマジで ティシアちゃん とくっつけたがってるみたいだし・・・」

「おいおいルナちゃんはどうするんだ?」

「レナから聞いたところ重婚制を提案しているそうだ」

 

 

「「「・・・・・・・・・・・・」」」

 

 

三人の脳裏に玉座につくアキトの姿が浮かぶ・・・・その傍らには・・・・

 

シンヤの額がピクピクと引きつる。よく見ると青筋も浮き出ていたりする。

きっと心の中ではアキト抹殺計画を練っているのだろう。

 

 

                                        敵の掃討
「さ・・・・さあ!さっさとこいつら片づけて、町の掃除に行くぞ。

これ以上被害がでたら明日から我が家の修復の日々になるぞ」

 

「もうすでになってるんじゃないのか?」

「かもしれん・・・・・」

 

 

ライルは話を代えようとしたものの、ロウの冷静なつっこみに撃沈した。

 

そんな事は言いつつも立っている敵は確実に減ってきている。

この連中、性格はともかく腕だけは一流らしい。まるで何処かの戦艦みたいに・・・・・

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

(まったく!一体どれだけ倒せばいなくなるんだ!)

 

 

俺は市街警備団本部より少し離れたところでデーモンの群と遭遇した。

そのまま放っておくわけにはいかず、とりあえず倒してはいるのだが・・・

そのせいで魔導士協会までの道のりは思ったより進んではいなかった。

 

 

「後・・・少し・・・・よし!!」

 

 

最後の一体を倒し、魔導士協会が視界の先に見えたのは

俺が警備団本部から離れて20分ぐらい経った頃だった。

 

 

(やはり襲われている!)

 

 

魔導士協会の前では魔導士風の人達が獣人達と戦っていた。

その姿の中にレナさんの姿もあった。やはり魔法が効かないためか戦況は思わしくない様だ!

 

 

警備団の方はその特性上、剣を使う人が多かったが、

魔導士協会の方の専門はやはり魔法。普通の敵なら問題はないが、

                                       あだ
魔法が効きにくい敵のいる今回はそれが仇となってしまったようだ。

 

 

俺はDFSに刃を発生させ魔導士を襲おうとしていた連中を切り倒す!

襲われていたのは女性だったようで幸い怪我などはないようだった。

 

 

「大丈夫か!!」

「すみません」

 

 

その女性はよほど怖かったのか目に涙を溜めて顔を真っ赤にしている。

 

 

「後の事はまかせて魔導士協会の守りの方に回ってくれ」

「はい、ありがとうございます!」

 

 

女性は魔導士協会の建物の入り口を守っている一団に向かって走っていった。

 

 

俺は戦況を知るために周りを見回した。

敵は仲間があっさりとやられたことが信じられないのか動揺しているようだった。

 

 

(隙に付け入るようで悪いが・・・ここまでの事をしたんだ!手加減はしない!!)

 

 

俺は再び敵の中に切り込んだ。

 

 

「レナさん、大丈夫ですか!!」

「アキト君!悪いわね手伝ってもらって・・・本当なら私達だけでも片がつきそうなんだけど・・・」

 

 

魔導士の魔法が効かないのだ・・・はっきり言っては悪いかもしれないがそう戦力になるものではないし、

見たところ剣をもって戦っているの人はそう大した腕ではない。レナさんを除いては・・・・だが。

 

 

                       アストラル
「気をつけて!獣人達は精 神系魔法が効かないわ!精霊魔法も効果が薄いわよ」

                    エルメキア・アロー 
「ええ、知っています。俺の魔法 も完全に防がれました」

 

「あの見た目は人間なのも気をつけてね・・・・あっちも魔法の効果が薄いわ。

フレア・アロー
炎の矢を素手で払っていたからね・・・・どちらも生半可な呪文じゃ効果ないみたいよ・・・

それに結構しぶといみたいだし・・・・」

 

「みたいですね・・・・」

 

 

俺が胴体を真っ二つに切った人間(じゃないな・・・すでに)はまだ息があるらしく、

どういう原理かわからないが空中に浮かんでいた。

さすがにダメージはあるのか、氣は確実に衰えているようだが・・・・

この時点でタフだとかいうレベルを超えているような気がする・・・・・

 

 

「でもレナさんが倒した奴は起きあがってきませんね・・・・」

「さすがに頭を貫いたら死んじゃうみたいね・・・そこまでしないといけないなんてある意味可哀想ね・・・」

 

 

レナさんは悲しそうな顔で呟く・・・・下手な攻撃は苦痛が長引くだけ・・・

せめて一撃で死なせるのがこの人の慈悲なのだろう。

 

 

「早めに片づけましょうか・・・」

「そうね・・・」

 

 

俺とレナさんは襲いかかってくる人間もどきと獣人達を次々倒してゆく。

 

 

「ところでアキト君。ルナ知らない?」

「俺が聞こうと思ってました」

「そうなの?アキト君なら知っていると思ったんだけど・・・そのなんとかっていう奴で通信できないの?」

「今は無理です。ディアとブロスは今ちょっと手が放せないから通信ができないんです」

「そう・・・・一体どこいったのかしらねぇ・・・あの子のことだから大抵は大丈夫と思いたいんだけど・・・」

「魔族と戦っているとは聞いたんですけど・・・・気配が感じられないんです」

「たしかにね・・・・少なくともこの町で戦闘しているのならわかりそうなものよね・・・・・」

 

「魔族が結界というヤツを張っているからかもしれませんけどね・・・・・

―――――っと・・・・これで残るは獣人達だけだな・・・・ん???」

 

 

俺は獣人達の中から妙な気配を感じた。いや、妙というよりも不自然な気の変化だ。

気配が二つ重なるように感じられたと思ったら片一方は減少、もう片方は逆に膨れ上がっている。

 

 

(まるで片方に養分を吸い取られているようだ・・・・)

 

「グ・・・・ガゴ・・・・・・ガ・・・・」

 

 

様子が変に思ったのか近くにいた豹の獣人が突如うずくまった熊の獣人に話しかける。

 

 

「お・・・おい・・・一体どうし・・・ヒッ!!」

 

「ガアァァァァアァァアァッッッッッ!!!」

 

 

熊の獣人はひときわ大きな声で叫ぶと同時に、まとっていた鎧にくわれた!

正確には鎧が変質して獣人を包み込んだというのだろうか・・・・

それは徐々に大きくなり、形が変質してゆく・・・・

 

 

(一体何が起こったんだ!?)

 

 

俺は突如として起こった変貌に驚きを隠せなかった。

それは隣にいるレナさんも同じ様だったらしく驚きに目を見開いている。

 

 

そして・・・・変質が終わった後・・・そこにいたのは熊の獣人などではなく・・・・

白銀色をした狼ともいうべき巨大な生物だった・・・・

 

 

 

 

(後編ヘ・・・・・)