赤き力の世界にて

 

 

 

 

第16話「真実への模索」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う・・・うう〜ん・・・・ここ・・・は・・・・・私の部屋?」

「気が付きましたか?」

 

 

ルナさんはゆっくりと上半身を起こすと頭を振る。

どうやら意識がハッキリしないようだ。

 

 

「おはようございます。ルナさん」

「おはようアキト君・・・・私は一体どうしたの?」

「覚えてないんですか?」

 

 

ルナさんは戸惑いながらもしっかりと肯いた。

 

 

「アキト君がティシアの所に向かったまでは覚えてるんだけど・・・・」

「聞いた話では休憩するために応接室に入ったらそのまま寝てしまったらしいですよ」

「ということはもしかして・・・・」

 

「ええ、俺がおぶって帰りました。あの闘いの後だから疲れたんですね・・・

城に泊まらせようとも考えたんですが・・・万が一に倒壊の恐れがあるかもしれないのでとりあえず・・・・」

 

「そう・・・・女王様やティシアは?」

 

「とりあえずこの家にいます。別荘に行くという案もあったらしいんですが

二人ともこっちの方が良いって・・・今は朝食をとっていますけど・・・・ルナさんはどうします?もってきましょうか?」

 

「いいわ、私も一緒に行くから・・・・どうやらリナ達も帰ってきているみたいだし」

「ええ、ゼルガディスにアメリアちゃん。ミルガズィアさんとメフィちゃんも来ています」

 

「みんなそろって好都合ね・・・・ということは居間の方にいるのね・・・

話し合いにはちょうどいいかもしれないわね。じゃあアキト君、いきましょうか」

 

 

 

俺とルナさんは共に居間に移動した。

ルナさんはもう疲れはスッキリとれたのかいつもと変わらない動きだった。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「姉ちゃん!もう起きて大丈夫なの?」

 

「大丈夫よリナ、一晩寝ればスッキリしたわ。

皆さんおはようございます。女王様とティシアも・・・・」

 

「おはようルナちゃん」

「おはようございます。ルナ姉様」

 

「おはようございます。そこのお二人はアメリアさんとゼルガディスさんですね。

初めましてリナの姉でルナといいます。その節はリナが多大な迷惑掛けたようで申し訳ありません」

 

 

ルナさんは二人に頭を下げる。

二人は慌てたようにそろって頭を下げ返した。

 

 

「は、初めまして!アメリアといいます!私の方こそリナさんに色々とお世話になりました」

 

 

アメリアちゃんは何を緊張しているのかガチガチになって返事をしている。

                   スィーフィード
(後に聞いたところ『赤の竜神』の力の一部を受け継ぐルナさんは、アメリアちゃんみたいな

巫女や神官といった神に仕えるものにとって神の代理人とも言うべき存在なんだそうだ・・・)

 

 

「ゼルガディスだ。俺の方こそリナには色々と世話になった方だからな・・・あまり気にしないでほしい」

「それでもです。この子についていくのは色々と大変でしょう?」

「「それは確かに」」

 

 

どキッパリという・・・・そんなに酷かったのか?

 

 

「ね、姉ちゃん!それは良いから朝食でも食べたら?」

「ええ、頂くわ」

「どうぞルナさん。昨日の夕飯も食べてないからお腹が空いているでしょう?」

 

 

俺は朝食にはやや多すぎる分量の食事を持ってくる。

寝起きに良いように消化に良い料理を選んだつもりでいる。

 

 

「ありがとうアキト君」

「どういたしまして」

 

 

ルナさんは嬉しそうに微笑んでくれた。

俺もそれに笑顔で応対した。

 

 

「リナさん・・・あの二人は付き合ってるんですか?」

「それがまだなの・・・・さっさとくっつけばいいのに」

「やけに乗り気だな、リナ」

「そうですね・・・・私は姉が結婚するとか聞いたらちょっと寂しいかもしれませんけど・・・」

「姉ちゃんもね・・・アキトの前ではお仕置きが半減するのよ・・・・」

「井戸に逆さまで突っ込まれたりしてたよな・・・他には夜中寒空の軒先で蓑虫ごっことか・・・・」

 

「そういうことばっかり覚えてんのねガウリイ・・・・まあそれはおいといて・・・

姉ちゃんもアキトの前では機嫌がいいからね・・・自然とお仕置きの対応も半減するのよ」

 

「なんだ・・・・結局は自分事だからか」

「思いっきり納得しました・・・・」

「うっさいよあんた達・・・」

 

 

 

そして朝食も終わり、インバース家の居間は臨時的な会議室へとなった。

 

 

 

 

 

「まず物事の整理からいくわね。まずはリナから。

初めてグロウやニースと会ったのは貴方達が最初だからね・・・」

 

「うん。あの時はまず最初にデーモンを大量にけしかけられたわ・・・

そのときアキトとも初めて会ったわね。最初はデーモンけしかけた犯人かと思ったけど・・・」

         ファイアー・ボール
「いきなり火 炎 球をぶつけられそうになったんだよね・・・・」

「そんな事もあったかしらね〜」

 

 

リナちゃんは遠い目をしながら明後日の方を見る。

 

 

「いきなりリナの洗礼を受けたのか・・・・あれはいっそのこと儀式と言ってもいいな」

「その時点で自分についていけるかどうかのふるいにかけるんですよね・・・」

「そこのラブラブカップル、うっさいよ!」

「「誰がラブラブカップル(ですか)(だ)!!」」

 

 

反論の余地無しだね二人とも・・・・・

 

 

「まああの二人の吊し上げは後においといて・・・・」

 

 

後でキッチリやるつもりなんだねリナちゃん・・・・・

 

 

「とにかくそのすぐ後にグロウが現れてね・・・

今度はあの女魔族のニースと中級魔族の・・・・名前なんだっけ?まあいいや・・・・

その二人をけしかけてきたの・・・

私とガウリイがニースを・・・アキトが中級魔族を引きつけるという作戦にしたんだけど・・・」

 

「会って間もないアキトさんにまかせたんですか?いくらなんでもそれは・・・・」

 

「そうは言ってもねアメリア・・・状況が状況だったし・・・

私達が魔の気配が小さい方をさっさと倒してアキトと交代する気だったから・・・でも・・・・」

 

「俺とリナはニースって奴にあしらわれていた間にアキトは一人で魔族を倒しちまったってわけだ」

 

 

リナちゃんとガウリイはあの時の戦闘を思い出したのか・・・苦い表情をした。

 

 

「結局・・・ニースは自分から退くという形で私達を見逃してくれたわ・・・

グロウもすんなりと退いていったわ・・・・

                                              ルビーアイ・ソルジャー
その時グロウが言っていたニースの二つ名が『赤眼の魔王の戦士』」

 

 

たしかそんな事を言っていたな・・・・

                  スィーフィ−ド・ナイト
たぶんルナさんの『赤竜の騎士』と同じような二つ名か何かなのだろう。

 

 

「その事については最後に話し合うわ。おそらく私が一番ニースについて理解しているでしょうし・・・・」

 

 

確かに・・・・実際に闘ったルナさんが一番理解しているかもしれない。

俺が北斗の・・・・北斗が俺の事を理解しているように・・・・

 

 

「そうかもね・・・・グロウが最後に言っていた時に頭にひっかかった台詞がまだあるの・・・・

『また会いに来ますよ。大きな戦いと共に』ってやつなんだけど・・・・」

 

「おそらく昨日の闘い・・・といいたいの?リナ」

「まだわかんないけど・・・・違うと思う」

「どうしてですか?リナさん」

 

「わざわざ私達を陽動してゼフィーリアから離したりして・・・・魔族のやり方にしては回りくどすぎるのよ・・・

まるで慎重に事を運んでいる感じがするの・・・少なくとも考えた奴は人間を過小評価していないと思うの・・・・」

 

                                              ディルス
「確かにそうだな・・・リナをここから離す為だけに国一つにちょっかいかけるぐらいだからな・・・・」

「それはディルスの事ね・・・詳しく話してくれる?」

「まずは私とゼルガディスさんからお話しします」

「そうだな・・・」

 

「およそ一ヶ月前のことになります。ディルス王国にデーモンの群が初めて襲ってきました」

 

「その時、丁度セイルーンからディルスに大使として来ていたアメリアとその護衛を頼まれていた俺は

ディルスの騎士団と協力して撃退した・・・」

 

「アメリアさん?あなたはそのゼルガディスさん以外の護衛は連れてきていなかったんですか?」

 

 

女王様は素朴な疑問をはさむ。

確かに・・・実力はともかく、一国の王女に護衛が一人というのは不用心なような気がする。

 

 

「親衛隊の皆さんは先のデーモン討伐で疲れていましたから・・・

それに少人数の方がかえって身動きがとりやすかったんです」

 

「なるほど・・・・」

「話を続けて良いか?」

「どうぞ」

 

 

ゼフーリアの女王
 一国の主 相手に態度を変えないゼル。結構大したものかもしれないな・・・・

 

 

「大体二、三日置きにデーモンが再び襲ってきた。

そして最初の戦闘から二週間あたりした頃・・・シェーラという奴に変装したグロウと闘い・・・負けた・・・」

 

「油断していた・・・というのもあるかもしれませんが・・・

それを差し引いても私とゼルガディスさんでは勝てませんでした。

その翌日・・・シェーラと関わりのあったリナさん達を呼びにマイアスさんという方が

リナさんが居るという噂のあったゼフィーリアの実家に訪ねるべく出発しました」

 

 

ここら辺までは大体ディルスでアメリアちゃんに概要を聞いてはいたな・・・・

走りながらだけど・・・・

 

 

「マイアスがリナ達を連れ帰ってくるまでの二週間・・・・その間はなんの襲撃もなかった。

そしてリナ達が来た途端、デーモンの襲撃があったんだ」

 

「つまり・・・リナが元凶な訳ね・・・」

「そんな姉ちゃん、妹を疫病神みたいにいわなくても・・・・」

「違うの?」

「・・・・今回に限っては反論できません・・・・」

 

「まあまあルナさん。つまりはリナちゃんをおびき寄せるために

ディルス王国で騒ぎを起こした・・・・ということで良いのかな?」

 

「そうなります・・・・でもおびき寄せるのであればなにも手出しをせず静観していればいいのに

何故グロウはわざわざ騒ぎを起こしたのか・・・・」

 

「さあ?魔族のメンツってやつじゃない?人間相手に静観したままというのがプライドを傷つけたとか?」

 

「可能性はあるかもしれんな・・・魔族にとって人間を恐れて出てこなかったなどというのは

自分の実力を疑う行為・・・・人間より上位の存在と認識する魔族にとって致命的なものになるかもしれん」

 

「そうですわね・・・おじさまの言う事以外にもあのグロウが言っていたように

念の為に貴方達を始末しようとしたのかもしれませんしね・・・」

 

「ゼフィーリアを襲ったのが同じ日ということは念には念を入れたということでしょうか?」

「おそらくそうだろうな・・・」

 

 

何処の世界に行っても戦術というものは変わらないな・・・・

陽動やおとり、同時決行。基本というか根底に流れる思想は似ているような気がする。

しかし、リナちゃんから聞いた魔族の印象とは遠いような気がするのも確かだ。

 

 

「ディルス王国でのデーモン騒動の裏は大体わかったけど・・・

ゼフィーリアの騒動は?襲撃者達・・・・いや、ニースの狙いは何だったか・・・・」

 

「ニースの狙い・・・か・・・・・一体何が目的だったのか・・・・」

 

 

ルナさんは何やら思案顔になっている。

実際ニースのとった行動といえば城で人質をとり、ルナさんと戦った。それぐらいである。

誰一人の命も奪わず、戦った後はすんなりと退いていった。これでは推測するにも情報が足りない・・・・

 

 

「そもそもニースって何者なの?二つ名から魔王の欠片の一つということは想像がつくんだけど・・・・

もしそうだとするとふに落ちない点がいくつもでてくるのよね・・・」

 

「そうだな・・・・もしそれが本当であると仮定するなら、何故この世界がまだ滅びていないのか・・・・」

 

「それってどういうことなんだ?どうしてニースが魔王の一部だとして

それが世界が滅ぶということに繋がるかよく分からないんだけど・・・・」

 

 

俺はゼルの言葉に疑問を持ち、思っていたことを問いかける。

 

 

「ああ、アキトはこの世界のことを熟知していないんだったな」

「まぁ、おおまかには聞いてはいるんだけど・・・・いまいち分かり辛いかな?」

「アキトさん。カタート山脈というのはご存じですか?」

 

                   アクア・ロード
「ああ・・・・たしか昔、水竜王が住んでいた場所で

今は千年前に目覚めた魔王の一部が封印されている・・・・だったかな?ティシアちゃん」

 

「ええ、その通りです。ではニースが魔王の一部だと仮定して・・・

何故自分の分身を封印から解き放ちこの世界を滅ぼそうとしないのか?ということになるのです」

 

「なるほど・・・・そういう意味だったのか・・・・」

 

 

しかし・・・・直接会ったのは二回、会話も短い間でしかなかったが、

                世界を滅ぼす行為
俺にはニースが そういう事 をしそうな相手には見えない。

ただ純粋に強者との闘いへの渇望はありそうだが・・・・

しかしそれは多かれ少なかれ格闘家としては誰にでもあるものだ。

 

 

                                ル ビ ー ア イ
「その通り。でもニースは確実に『赤眼の魔王』の一欠片をもつ者・・・これは間違いないわ。

私の中に宿る赤竜の記憶がそういっているわ・・・・ただ・・・・」

 

「ただ?何なの、姉ちゃん」

 

              ル ビ ー ア イ
「他の覚醒した赤眼の魔王に会ったことがないから断定はできないんだけど・・・・

何かが違うのよ・・・魔族という感じがしないというか・・・・属性が違うというか・・・・・

人か魔か・・・・そう訪ねられたら人と答えてしまうような・・・・そんな感じだったの」

 

「覚醒する前は人間だったのだからそう感じるんじゃないんですか?」

「そう・・・なるのかな・・・・・・」

 

 

アメリアちゃんの予想になんとなく納得がいかないのか・・・・ルナさんは思案していた。

 

 

「以前に五人の腹心全員に出会ったことがあるんだけど、

                                             ガ ー ヴ
人の中に封印されて、中途半端に人と融合した魔竜王はともかくとして、

他の四人は姿、気配共に完璧に人間に思えたわ・・・・

町中で出会っても魔族とは気づかなかったぐらいにね・・・・」

 

「確かにそれなりの力を持った魔族なら人間とは見分けがつきませんからね」

 

「例えそうだとしても、私のようなエルフ族やおじさまの竜族、

        スィーフィード
ましてや赤き竜神の力を受け継ぐルナ様の目を欺くのは魔族にとっても至難の業ですわ」

 

「・・・結局の所は何も分からず終いという訳か・・・・」

 

「ただ分かるのはアキト君や私はともかくとして、

             レベル
今のリナ達の強さでは決してニースには勝てないということぐらいね・・・・」

 

 

ルナさんはえらく高い評価をしてくれるが、決して楽観できる闘いにはならないことは確かだと思っている。

ルナさんとの戦いを見る限り、力やスピード、技では引けをとっているつもりはないが

力を使う闘いになるともはや未知数だといえる。実際に戦ってみるまで何も分からないと思ってもいいだろう。

 

 

「いつまでも分からないこと考えても仕方がないわね・・・

じゃあ次は襲撃者のことを考えましょうか?

アキト、詳しく話してくれる?直接戦ったんでしょ?」

 

「ああ、奇妙な人間と魔術が全く効かない鎧を着込んだ獣人の二種類。

他には・・・・デーモンの群が大量にって所かな?人間の方はルナさんも出会っているでしょう?」

 

「あいつらね・・・女王様とティシアを人質にしていた人達・・・・」

 

「あの者達はいきなり空間を跳び越えて私達の目の前に現れて・・・

動揺した瞬間に人質に取られてしまいました・・・・

その後、呪文の詠唱も無しに結界を張るなどとおおよそ人間の枠を越えたことをやってのけていました・・・・」

 

「もしかしてそれって・・・・・呪文もあんまり効果がなくて上下真っ二つにしても元気に動く奴等?」

「まさしくその通りなんだけど・・・・」

 

 

やたら生々しい例えをするリナちゃん。もしかしてやったのか?上下真っ二つ・・・・・

かく言う俺もやったんだけどね・・・・・あんまり思い出したくないけど・・・・

 

 

「ガウリイ、もしかして・・・」

「ああ・・・・・」

 

 

二人は何やら真剣な顔をしてうなずきあい・・・・

 

 

「それってなんだっけ?」

 

ガン!!

 

そしてリナちゃんは盛大に目の前にあるテーブルに頭突きをかます。

なかなか面白いリアクションをするね・・・毎度の事ながら・・・・・・

 

 

「あんたは!人魔でしょうが人魔!!それくらいおぼえておきなさい!!

・・・・ミリーナが・・・・死んだ要因の一つじゃないの・・・・・・・」

 

 

リナちゃんは不意にうつむく・・・・何か悲しい思い出でもあるのか・・・・今の顔を見せたくないようだ・・・・

 

 

「すまないなリナ・・・・・呆ければ気でも紛れると思ったんだが・・・・逆効果だったようだ・・・・すまん」

 

 

ガウリイはリナちゃんの頭をなでる。

この二人はこういった行動がもの凄く自然に見える。

 

 

「別に良いのよ・・・・ありがとう」

「悪いけどリナ・・・・辛いかもしれないけどその人魔って奴のことを話してくれる?」

 

「うん・・・あれはその名の通り人と魔の融合したモノ・・・

昔、私がルヴィナガルド王国・・・今は連合国だったわね・・・そこが子供とかさらって研究しててね。

偶然私がそこに寄ったときに巻き込まれてね・・・・胸くそ悪かったから思いっきり潰したんだけど・・・・

今度は別の所で生き残りの王族と研究者達が続きをやっててね。

またその事件に巻き込まれて私とガウリイ、そして他の三人が協力して潰したの・・・・」

 

 

奇妙な縁か・・・・話を聞く限りにはリナちゃんもかなり過激な人生を辿ったみたいだな・・・

 

 

「その残党がいた・・・・ということなの?」

「どうかな?残党がいたという割には襲撃者の数が多すぎる様な気がするし・・・」

「ということは別の場所にまだ研究所があったとか・・・生き残りがまた作り始めたとか?」

「その可能性の方が高いと思うわ」

「そうなの・・・・・じゃあ獣人達の方は?」

「それも知っているわ・・・・・それも全くの別件で・・・・」

「確かに別件だな。まだ俺とアメリアが一緒に旅していたときのことだからな」

「具体的にはあれって何なの?」

 

「あれは正式には封魔装甲・ザナッファーというらしいの。

        アストラルサイド
あれには精神世界系統の魔法は一切効かないという特質をもった生きた鎧といったところかしら?

今メフィが着ている白い鎧も同じ物よ。まあエルフの魔導技術で創った完成された物だけどね」

 

                                              ゼナファアーマー
「私が使っているものの正式名称は半生体甲冑・魔律装甲といいますけどね」

 

 

だから気を感じたとき二つ重なっていたような氣がしたんだ・・・・・

なるほど・・・・確かに今もメフィちゃんの氣に重なるようにもう一つ感じる氣がある

しかし・・・・・

 

 

「完成された物・・・・というからには人間が創るやつには何か欠陥でも?」

 

「あれを創る知識が完全でなかったのか・・・・それとも別の要因があるのかは分からないんですけど、

以前私達が見たのは装着者を食らって成長をする物だったんです」

 

「最後には装着者自身を取り込み大きな獣に変化したらしい。

俺達も変化の過程までは見てはいないが、その関係者がそういっていた。

                                      レーザー・ブレス
おまけに食べた物の知識を取り込むし、閃光の吐息まで使う厄介なモノだ」

 

 

俺はアメリアちゃんとゼルの説明を聞きながら考え込む。

 

 

(ということは・・・・あの白銀の狼が最終形態みたいなモノだったのか・・・・・

早めに獣人達を倒しておいて正解だったみたいだな)

 

「街にも現れたんでしょ?狼だか何だか分からない大きな獣が・・・・しかも二体も」

 

「この街についた時には撤去作業の最中だったからちらっとしか見ていないが、

間違いはないはずだ・・・・・だが・・・・・」

 

「誰が倒したんですか?私達の時は一体だけで四苦八苦したんですよ?」

 

「どうせアキトでしょ?姉ちゃんはニースと闘っていたって言うし・・・

                                武器
家の親でもやってのけそうだけど獲物がいまいちそうだしね」

 

 

ご名答。もしもあの二人がDFS並に威力のある魔法剣をもっていたら

間違いなく倒していたと俺は思う。

 

 

「あれを一人でですか!?」

「強いとは思ってはいたが・・・・理解の範疇をこえてるな・・・・」

「確かにそうですね・・・・本人はいたって平然としてますし・・・・」

 

 

う〜ん・・・・褒められているのか貶されているのか・・・・判断に苦しむな・・・・・

 

 

         人魔とザナッファー
「とにかく、その二つ・・・いえ覇王の件を合わせたら三つね。

唯一つながっているのはリナ・・・・あなたの存在みたいね・・・・もしくは係わってしまった方か・・・・・」

 

 

確かに・・・どの事柄もリナちゃんに係わりがあるものばかり・・・・

一体どんな繋がりがあるのかは分からないがかなり根が深そうなのは漠然として分かる。

 

 

「とにかく今は相手が何かしらの行動を起こしたときのために準備をする以外ないわね」

 

「そうですね・・・・襲撃者の件はアリスに頼んで調査をしてもらってはいますが、

空間を渡って此処に来たのならおそらく手詰まりになる可能性が高いでしょうからね・・・・」

 

 

確かに・・・・空間を渡ることが出来る・・・・これほど厄介で防ぎにくいものはそうはないだろう。

しかしどうにも納得できないことが一つだけある。

 

 

「女王様?一つ質問があるんですが?」

「何ですか?」

「人質にとられたときは四騎士は居なかったんですよね・・・・」

 

「ええ、唯一警備が手薄になる時間帯なのです。しかしすぐ近くに四人が居るうえに

本来なら私達のスケジュール自体、極秘事項なので心配はないはずだったんですけど・・・・・」

 

 

やはりそうか・・・・・

 

 

「どういうことなの?」

 

「いいかいティシアちゃん。

奴等の空間移動の原理は分からないけど、奴等は迷うことなく一回で女王様達の前に現れたんだ。

そうなると襲撃者達はあらかじめこの城内の中を熟知していて、

なおかつ唯一警備が手薄になる時間帯と場所を知っていた」

 

                            手引きした
「―――――!!つまり誰か裏切り者がいる!」

 

「その可能性も確かにあるかもしれませんね・・・

その線から空竜の者に調べてみるように言っておきましょう」

 

「お願いします」

 

 

もし俺がボソンジャンプで同じ事をするなら予め調べておくだろう事を話しておく。

昔の苦い経験でも役立つことがあるものだ・・・・

 

 

                                           いとま
「話はまとまったようだな・・・それでは我々はお暇をさせてもらおう」

「え?もうですかおじさま・・・・・」

「どうしたのだメフィ。いつもなら真っ先に出ていこうとするお前が・・・・珍しいこともあるものだ」

「いや、その・・・・何でもありません!」

 

 

メフィちゃんは俺の方をちらっと見ると顔を真っ赤にしてそっぽを向いた。

あの治療のことでお礼でもいいたいのか??

 

 

「ミルガズィアさん達はこれからどうするつもりなの?」

 

「とりあえずエルフの集落に戻ろうと思っている。

新しい義手を作って貰わねば何かと不便でならんからな。

          ダイナスト
その後は 覇王 の動向をこちらからでも探って見るつもりだ」

 

「そうか・・・じゃあ気をつけてな」

「・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

ミルガズィアさんは無表情な顔でガウリイを見ている。

何だかこれはこれで結構怖いような気がする。

 

 

「な、なんだ!?俺何も悪いこと言ってないぞ!?」

「いや、すまんな・・・・何も言ってこなかったことに対してちょっと寂しかったのでな・・・」

 

「たのしんどったんかい!!」

 

「では私はこれで失礼する」

 

 

リナちゃんの声は聞こえているはずなのにキッチリと無視してミルガズィアさんは部屋から出ていった。

 

 

「うわ・・・・しかもさらりと受け流してるし・・・・何もなかったら何もなかったで寂しがるなんて難儀なおっさんね

「難儀なおっさんで悪かったな」

 

 

いきなり戻ってきたミルガズィアさんは無表情な顔でリナちゃんに迫る。

俺は氣を感じてすぐそこにいたの知っていたが・・・・実はつっこむタイミングをはかっていたのか?

 

 

「ああああ!!すみませんすみません!!」

「何俺みたいなことやってんだ?リナ・・・」

 

 

ということはいつもやっていたのか?ガウリイ・・・・

 

 

「まあいい。では本当にこれで失礼する」

 

 

今度こそ本当に行ったみたいだ・・・・

ミルガズィアさんの氣が遠ざかるのを俺の感覚がとらえていた。

 

 

      わたくし
「では 私 もこれで。アキト・・・さん。この間の治療、ありがとうございました」

「別に気にしなくても良いよ。でも一応気をつけておいてね」

「は、はい!では!!」

 

 

メフィちゃんは顔を真っ赤にして急いでミルガズィアさんの後を追い始めた。

そんなに気にしなくても良いのに・・・・けっこう律儀なんだな。

 

(ん?)

 

俺は妙に圧迫されるような視線を感じて後ろを振り向く。

そこには思わず『ジト〜〜』という擬音でもつけたくなるような視線で俺を見ているティシアちゃんが居た。

 

 

「な、何かなティシアちゃん。そんな目をして・・・・」

「い〜え別に・・・・誰彼構わず優しいんだな〜っておもいまして・・・・」

 

(な、なんなんだ!?俺何か悪いことでもしたのか!??)

 

 

俺は何がどうなっているのかさっぱりと分からずルナさんと女王様に助けを求めようとした・・・・が・・・・

 

女王様は俺とティシアちゃんを見て愉快そうに笑っているし、ルナさんに至っては苦笑をしていた。

 

う〜〜ん・・・・・・さっぱりと分からない。

 

 

「あの〜・・・ティシアちゃん?何怒っているのかな?」

「・・・・・・別に何でもありません。気にしないで下さい」

 

 

そうは言ってもそんな目で見られたら気になって仕方がないんだけど・・・・

                     ト ラ ウ マ     よみがえ
ナデシコにいた頃の精神的外傷が 蘇 りそうだし・・・・

 

 

「はいはい、そこまでにして。ティシアも落ち着きなさい」

「・・・・・・・はい」

「所でアメリアさんとゼルガディスさんはどうするのですか?ディルスに戻りますか?」

 

「いえ、私とゼルガディスさんが居たのはデーモンの対策のためにいただけですので・・・・

都市計画の方についての話し合いは既に終わっています」

 

「俺はできればこの街に居るつもりだ。魔族にリナを呼び出すために利用されたままでは気がすまん。

おそらく次の行動があったときに一番分かりやすいのはリナの側だと思うからな・・・・」

 

「そうですね・・・・また大きな悪事が動いている気がします。お供します」

「それなら二人とも家に泊まると良いわ。街の宿はこの騒ぎだからやってないかもしれないしね」

「そうね。まだ部屋も余っていることだし・・・・宿代も馬鹿にならないしね」

「そうだな・・・・世話になる」

「私もお世話になります」

 

(う〜ん・・・・この家に色々な人が集まってきたな・・・・王族の人間が三名も居るし・・・・

普通の料理を出して良いのかな??)

 

 

とりあえず俺は話が終わったことを感じた。

言い換えるとこれ以上話し合っても答えがでないからとりあえず終わったとも言える。

 

後はアリスちゃんの空竜騎士団が情報を収集するのを待つしかないだろう。

 

 

「それじゃあ俺は街にでてみんなの作業を手伝ってきます」

 

 

俺はそう言い腰を上げる。街の復興作業は昼夜なく行われている。

人手はいくらあっても足りないぐらいだ。

 

 

「ちょ、ちょっと待ちなさいよアキト!あんた夜通しで手伝いに行っていたでしょ!

少しは休まないと倒れるわよ!」

 

「まだ大丈夫だよ。ルナさんやリナちゃん達みたいに強敵と戦ったわけでもないしね。

それに店長が炊き出しをやるみたいだからコックの人手が足りないって言ってたからね」

 

「なら私も手伝うわ。料理もできるし・・・・何より一晩ゆっくり休んだしね」

「そうですか?じゃあ一緒に行きましょうか」

「ええ」

 

俺とルナさんは炊き出しを手伝うためにリアランサーに向かった。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「ザナッファー二体を雑魚呼ばわりか・・・とんでもないな」

「そうですね・・・・」

「俺達けっこう苦労したもんな〜・・・・・」

 

 

確かに・・・あれを倒すのにはかなり苦労したのを憶えている。

私なんかは倒す為に無茶をして危うく両腕を無くすところだったのだ。

 

 

「それでは私達も行きましょうか」

「そうですね、お母様」

 

 

女王様とティシアは二人そろって立ち上がり、何処かへ向かおうとした。

 

 

「お二人とも何処に行くんですか?」

 

「例え城があんな状態でも私の仕事が無くなるわけではありませんからね。

郊外にある別荘に場を移して必要最低限の仕事をするつもりです」

 

「私もそのサポートを。僅かながらお手伝いできますから」

 

 

そう言った二人はいつの間にやら家の前に来ていた馬車で別荘に向かった。

周りには近衛騎士である火竜騎士団の人達が護衛についていた。

 

 

「何だか取り残されましたね・・・・」

「そうだな・・・・何もしないままというのはいささか居心地が悪いな。俺達も街の人達を手伝うか」

「そうですね。私は病院や教会に行って怪我人の治療をしてきます」

「そうか。なら俺は力仕事でも手伝うか・・・あまり人前には出たくはなかったんだがな・・・」

「大丈夫だって!この街は良くも悪くも大らかだから気にしない気にしない」

 

「だと良いがな・・・・まあしばらくこの街にいることになるんだ。

正体がばれるのが早いか遅いかの違いでしかないな」

 

「そーいうこと。何かあったらいいなさいって!誠心誠意な話し合いで片を付けるから」

「リナさんそれって父さんの・・・・」

「じゃあ私も行きましょうか」

 

 

アメリアの言葉はこの際気にしない事にする。

ゼフィーリアでは十分誠心誠意で通用するだろう。たぶん・・・・

 

 

「俺はどうするんだ?」

「あんたに力仕事以外の何ができるって言うのよ!いいからさっさと大きな瓦礫でも動かすの手伝ってきなさい」

「はいはい、分かったよ」

 

「返事は一回でいいの!働かないと姉ちゃんのことだからご飯抜きになるわよ。

『働かざるもの食うべからず』ってね。うちの家訓の一つだし」

 

「何!?それは一大事だ!頑張るぞ〜〜」

 

 

ガウリイはそう言い残すと街の中心地に向かって土煙はたてながら走っていった。

けっこう元気があり余ってんのね・・・・それともご飯抜きが効いたか?

 

 

「さて私達も行きましょうか?」

「そうだな。飯抜きというのは嫌だからな」

 

 

ゼルは冗談をまじえて苦笑しながらガウリイの後を追っていった。

 

 

「リナさん、私も行ってきます」

「私も一緒に行くわ。まだ教会の位置とか知らないでしょ?」

「そうですね」

 

 

私達もそれぞれ街の復興のために働き始めた。

まあご飯抜きは嫌だったというのもあったけど・・・やっぱり自分が生まれ育った街だからね・・・・

何だかんだいってもこの街はそれなりに好きなのだ。

 

一日でも早く復興できたらいい。

私はそう思いつつ自分にできることからやり始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――後書き―――――

 

 

どうも、ケインです。

一つの話が別れないのはけっこう楽な気がします。(というか久しぶりのような・・・)

こんな事を言ってはいますが、次回はどうなるかわかりませんがね・・・

 

前後にすれば約二週間以上かかりますし、わけるのであれば早めに出せるかもしれません。

結局は読者の皆さんの要望次第と言うことで・・・

 

しかし・・・今回はギャグが少なかったです。(あ、元々か・・・・)

目立つシーンもなかったし・・・・本当にただの情報交換会(もしくは反省会)ですね。

 

さて、次回はゼルが中心の話になる・・・かもしれません。

早い話が修行ですね。今現在、リナのパーティーの中では目立ったパワーアップはしてませんからね。

 

 

次回「修行・・・・アメリア、ゼルの場合(仮)」で会いましょう。

もし、前後にわけ、別々に出したりすれば変わりますけどね・・・・

 

では最後に・・・・川嶋さん、Murasimaさん、K・Oさん、蒼夜さん、涼水夢さん、encyclopediaさん。

高橋さん、ヨシノブさん、watanukiさん。天沢悠希さん。感想ありがとうございました!!

 

 

代理人の感想

総集編っぽい話でした。

・・・・・・アニメだとこう言う回は作画の手間を減らす為に八割くらいは回想シーンなんですよね(爆)。