赤き力の世界にて

 

 

 

 

第19話「命を賭けた試合・・・・・《前半戦》」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

音もない静かな湖畔・・・・・

いつもであれば動物達の生命の賛歌が響いている緑豊かな土地・・・・

しかし今は不自然なまでに静寂が満ちていた。

 

 

まるでそれはこれから起こることを予期して固唾を飲んで静寂しているかのようにも感じられるし、
  森に住む動物達
すべてのものが恐ろしいことから逃げ去った後の静寂のようにも感じられる・・・・・

 

その静寂は前者なのか後者なのか・・・・・・

 

どちらにしろ、その事態を巻き起こしそうな張本人達・・・・いや、張本人達になるであろう一団が湖に到着した。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「姉ちゃん・・・・いきなり全員に集まれって何があったの?」

「今日はあなた達の修行の成果を試そうと思ってね・・・」

 

 

ルナさんの言葉にリナちゃんは驚いたような顔をする。

戸惑いとも・・・歓喜ともとれないような不可思議な顔だ。

 

 

「それって・・・・もし合格だったらもう特訓は無しってこと?」

「とりあえずはね・・・・私の課題をクリアできればの話しだけどね」

「よっしゃぁーー!!これで地獄ともおさらばだ!!」

「喜ぶのはまだ早いぞリナ!ルナさんのことだから一体どんなこといわれるかわからんぞ!」

 

 

ガウリイの一言によって正気を取り戻すリナちゃん。

いつもと立場が逆になっていたりする・・・・・

まあ実戦に近い修行を一ヶ月も続ければそうなるかもしれないけどね・・・・・

 

 

「それは後で言うわ。とりあえず・・・・アメリアさんにゼルガディスさんから始めましょうか」

「私達ですか?」

「俺はてっきりリナ達と四人がかりであんたと戦うものだとばかり思っていたがな・・・・・」

「それでもいいけど・・・・その場合遠慮なく本気でいきますよ」

 

 

その言葉を聞いた途端、リナちゃんは顔色を真っ青にする。

 

 

「げげっ!!二人ずつで結構!さ、早くやりましょうか!!」

「まあ待ちなさい。そもそも二人の相手は私じゃないんだから・・・・」
                        四 騎 士
「へ?ということは・・・・・もしかして・・・・この四人と戦えってこと?」

 

 

そう、今回は何故か連れてこられた四騎士の面々・・・・

ちなみに女王とティシアちゃんも来ていたりする。

この国の重役が六人もこんな所にいて・・・仕事はいいのか?

 

 

「それも面白そうだがな・・・・今回は別件だ」

 

「俺達は審判役兼止め役だ。この国が猛者ぞろいとはいえ、

お前さん達の闘いを止められるのは限られているからな。

仕事ほっぽりだしてまで来たんだから少しは感謝しろよ」

 

「じゃあ女王様やティシアちゃんはどういった用件できたんだい?」

「観客兼審判です」

「婿殿の勇姿を一目見ようと思いまして」

 

 

なるほど・・・・って最後の言葉はいったい何なんだ!!

誰だ婿殿って!!

 

 

「女王様・・・・・その話はあの場限りの約束だったはずでは?」

「はて?そうでしたっけ?この頃とんと物覚えが悪くて・・・・」

「まだ若いのになに言ってるんですか」

「まあ若いだなんて!それはどうも☆」

 

 

それはどうも☆・・・・・・じゃないって!!

ダメだ・・・・のれんに腕押し・・・・都合のいい部分しか聞いていない・・・・・

 

 

「話の流れから察するに・・・・俺達の相手はアキトというわけだな」

「そうなりますね・・・・」

 

「そういうことです。では・・・・・まずは準備を始めましょうか・・・・・」

 

 

ルナさんは両手を胸の前で合わせる。ちょうど、目に見えないボールを持っているような感じだ。

ルナさんは小さな声で何かを呟いている。

すると手の間から光が生まれ、それは徐々に大きくなってゆく・・・・・

 

 

「ハアァァァァッッッッ!!」

 

 

ルナさんが一際大きい声でその光を頭上に抱え上げた。

その次の瞬間、光は爆発したかのように閃光を発した!!

 

 

「なに?結界か何かなの?姉ちゃ・・・・・・・ん!?!」

「リナ、どうしたんだ?何をそんなに驚いて・・・・なんだ!?」

 

 

二人がルナさんを見て驚いている。

その理由はルナさんの体を薄く、赤い光がまとわりついていたからだ。

どちらかというと・・・・・まとわりつくというよりも発しているというのが正解かもしれない。

 

俺にとってはそう驚くような現象ではないのだが・・・・・俺も似たようなものだし・・・・

 

 

「なにそれ!!まさかアキトと同じ昂氣ってやつ?」

「違うわよ。これは赤竜の力の片鱗。零れでる光ってところかな?」

「じゃあルナさん。俺の場合はどういうことなんでしょうか?」

 

 

ルナさんが赤い光を纏っているのが見えたときから、俺の身体もうすい蒼銀の光を纏っていた。

別にいつも通り、昂氣を使うどころかただ単に立っていただけなのに・・・・

 

 

「なんですかそれは?!なんだか変人っぽいですよ!?」

「ホタルみたいだな・・・・・さすが異界の住人」

 

 

好き勝手言ってくる二人・・・・・アメリアちゃんはともかくゼルは後で憶えてろよ・・・・・

 

 

「それもアキト君がいつも纏っているものよ」

「でも・・・・いつもと言っても普段は見えてませんでしたけど?」

 

「まあちょっと待って・・・・最初から説明するわ。

まず私が張ったこの結界・・・・この結界の中では物理攻撃は全く意味がなくなるの」

 

「ということは・・・・ただの剣で切っても意味がないってことなの?姉ちゃん」

「そういう事よ。試しにあそこの岩に精霊魔法で砕いてみたら?」

                                     ブラスト・ボム
「そういうことなら遠慮なく!・・・・・・・・・・暴爆呪!!」

「いきなり大技するか普通!!」

 

 

リナちゃん周りに十数個の光球が発生する。

                                                ファイアー・ボール
俺は初めて見るが、話によるとあの光球一つだけで 火炎球 の十数倍の威力があるらしい。

 

ゼルが焦ったように怒るのも仕方がないだろう。

 

ちなみに俺とエルさんは共同で風の結界を張る準備をしていたりする。

まあ、まさか人に向かってはやらないと思うけど・・・・念のためにね。

なんたってリナちゃんだからね・・・・

 

 

「GO!!」

 

 

リナちゃんはなんの躊躇もなく光球を岩にぶつける。

そして岩があったあたりにもの凄い爆炎が荒れ狂う!

 

この熱量なら岩は溶けるどころか蒸発していたとしても不思議ではない。

 

だが・・・・・爆炎がおさまった後・・・・そこには前となんの変わりもない光景がただ広がっていた・・・・・

 

 

「本当に効かない・・・・」

「いきなり無茶苦茶するな!!万が一巻き込まれたらどうするつもりだ!!」

「大丈夫大丈夫!!葬式ぐらいはちゃんとやってあげるから」

「そういう問題じゃないと思います・・・・リナさん」

「話を続けるわよ・・・」

 

 

いきなりの大技にも動じた様子を見せないルナさん。

結界の効力を知っているから落ち着いているのだろう。

 

 

「この結界内で破壊力を持ち得るのは精神にダメージを与える攻撃のみ。

つまり魔族に対して攻撃するつもりじゃないとダメージは与えられないと言うわけ」

 

 

対魔族戦の戦闘訓練ならば、これ以上はない好条件だろう。

人間相手だとどうしても物理的な攻撃が優先してしまうからな・・・・・

 

 

「ではルナ姉様やアキトさんが光を発して見えるのは何故なんですか?」

 

                               アストラル・サイド
「結界の副作用でね・・・どうやら精神世界面に近くなってるみたいなの。

ただし影響があるのは視覚だけだけどね。

だから普段見えないぐらいの力が見えるというわけ」

 

「ということは・・・・俺の昂氣は」

 

「さっき言ったように普段から身に纏っているものが見えるようになったの。

だからアキト君がこの結界内で本気で昂氣を使えば燦然と輝くわね」

 

「そうなんですか・・・・」

 

 

俺は右手に昂氣を纏わせてみる。

普段なら淡い光を発するぐらいの力しか使っていないのに、今はその倍以上の光を発していた。

 

確かに・・・もし本気で出せばかなり輝くことになるだろう。

 

 

                          アストラル・サイド
「アキト君の昂氣は本来は精神世界面が主なのよ。

でもそのあまりにも高密度なエネルギーなために物質世界にも影響を及ぼすわけ。

人間が魔族に対するにはこれ以上ないくらい最高のものね。

それを身に纏っている状態のアキト君には生半可な精神攻撃は全く効かないわね。」

 

 

そうなのか・・・・確かに昂氣は魂の力だと聞いたことがある。

すなわちそれは意志の強さ。確かに魔族に対するには最適なものかもしれない。

 

 

「じゃあ結界内のルールがわかったのなら始めるわよ。

最初はアキト君対アメリアさんとゼルガディスさんね」

 

「アキト様、頑張って下さいね」

「アキト!あたいが応援してるんだから勝ちなさいよ!」

 

 

「おい、一応弟子にあたる俺にはなんの言葉もないのか」

「何言ってんのよ!あんたは頑張るのが当たり前!負けたら再特訓ね。今までの倍で」

「やれやれ・・・・惚れた男と弟子の差か・・・・」

「な!あんた何言ってんの!」

「ふ〜・・・・・」

「ふ〜・・・じゃない!あんた負けたらおぼえてなさい!今までの修行がお遊びだと思うぐらいしごくからね!!」

「わかったわかった・・・まぁ、そうならないように全力をつくすさ」

 

 

「アメリアさんも頑張って下さいね」

「はい!特訓に付き合ってもらった成果をお見せします」

「期待していますよ」

「私のことよりも・・・いいんですか?万が一アキトさんが怪我でもしたら」

 

「それほどアメリアさんが強くなっているのであれば、私もアキト様も喜びますよ。

その為に修行をしたのですから。

それにアキト様はお強いから大丈夫ですよ。私はアキト様を信じています。」

 

「はい!」

 

「それに万が一に怪我をしても手厚い看護をしてくれる人がいますからね。私を含めて・・・・

だから遠慮なく全力でいってください」

 

「あははははは・・・・・まあ、頑張ってきます」

 

 

二人ともこの一ヶ月の間にアリスちゃんやエルさんと仲良くなったみたいだな。

あの二人が色々と教えたのなら俺も本気で相手しないと失礼だよな・・・・

 

 

 

 

「では・・・アメリアさんとゼルガディスさんはアキト君に全力で昂氣をださせれば勝ち。

アキト君はお二人が気絶するか、もしくは五回以上攻撃があたれば勝ちです。

もちろんアキト君は攻撃に関しては手加減して下さいね。

アメリアさんとゼルガディスさんは遠慮なくどんな強力な呪文でも使って下さい」

 

 

さすがに死闘をするわけにはいかないからな・・・・

攻撃に関してもさわる以上のことはやらない方が無難だろう。

まあやばくなったら吹き飛ばすぐらいはするかもしれないが・・・・・・

 

なにげに俺ってこの世界に来てから最高にやばい状況ではないのだろうか・・・・・

 

 

「審判は先にも言ったとおり、この六名がしますので」

「アキトさん頑張って〜☆」

「婿殿、期待してますよ〜☆」

 

 

俺は思わず腰が砕けそうになる。

目の前の二人より、あの親子の方がよほど難敵なのかもしれない・・・・・

 

 

「では・・・・・始め!!」

 

 

こうして、アメリアちゃんとゼルのペア対俺の闘いが始まった!!

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

ダーク・クロウ
「黒狼刃!!」

 

 

開始と同時に俺は唱えておいた呪文を解き放つ。

輪郭のない魔力弾はあっさりと避けたアキトの後ろにあった岩に穴を開けて消滅した!

 

 

「確かに・・・・魔族相手に効果がある呪文は効きそうだ!」

「そうですね。でもあっさり避けられましたよ」

「これから当てればいい。いくぞアメリア!」

「はい、ゼルガディスさん!」

 

 

俺は剣を抜き、アキトに斬りかかる!

手加減を考えてやるほど甘い相手ではないことはこの一ヶ月で十分わかっているつもりだ!!

 

 

アストラル・ヴァイン
「魔皇霊斬!!」

 

 

剣に魔力を付加する呪文により、俺の剣は擬似的に魔剣と変わった。

これで普段通りに斬りかかることができる!!

 

 

「ハァ!!」

「なかなかいい太刀筋だ!!」

 

 

アキトの奴はすべて紙一重で避けている!

確かに素手のアキトは避けるしか術はない・・・・ように見えるだろう。

 

だがアキトは太刀筋すべてを見切っている。

その気にさえなれば掴んで止めることは容易いのだろう。

 

以前の俺なら頭に血を上らせて余計に剣での攻撃に拘っていたかもしれない。だが・・・・

 

俺は地面に手をつけ、魔法を使う!

 

 

                          ダグ・ハウト
「大地よ、我が意に従え!地撃衝雷!!」

 

 

俺の術により、辺り一面の地面が激しく波打つ!!

本来ならこの後地中より錐が出てくるが、今回は必要がない。

 

そもそもダメージを与えることもできないしな。

 

 

「とおぉぉぉっ!!」

 

 

アキトの後ろに回り込んでいたアメリアが襲いかかる!

手には魔力を纏っているため光っている。

 

アキトは地面が波打っているため身動きがとりづらいはずだ!!

 

 

「目の付け所はいいかもしれないけど・・・・・」

「え!?」

 

 

アメリアの殴りかかった拳をアキトは揺れる大地をものともせず、いとも容易く受け止めそのまま掴む!

そして俺の方に向かってアメリアを投げた!!

 

 

「相手に通じるかどうかもう少し考えるべきだね。

援護の効果を考えて攻撃するのもいいけど、全力でかからないと足下をすくわれることになるよ」

 

 

まだ俺はアキトの実力を見くびっていたということか・・・・・

ここ一ヶ月の間、実際に戦ったところを見たのは最初のアメリアとの組み手以外はあまりないからな・・・・

しかもその時、俺はムチの扱いに集中していてうろ覚えだったしな・・・・・

 

 

                     エルメキア・アロー
「次は俺からだ。・・・・・烈 閃 矢!!」

 

 

アキトから十数本の光の矢が俺達に向かって来た!!

この前は端から見ただけだったが、実際に受ける立場から見てみると結構迫力があるな。

 

 

「アメリア!俺に任せろ」

 

 

キン!

 

俺は剣の柄の先を捻り、刃をムチ状に変え、飛んでくる光の矢を二振りで薙ぎ払う!

 

これくらい捌けないと特訓した意味がない!!

 

 

「さすがゼル!この一ヶ月で大したものだ」

「当たり前だ!思いのほか師匠が厳しかったからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

「と言ってますが?」

 

                      クスリ
「まあね・・・・修行前の激励が効きすぎたのか知んないけど異常な早さで腕を上げたから。

ついついあたいも本気で教えたってわけ・・・・まあ、まだまだなんだけどね」

 

「アリスのまだまだは世間では達人ですからね・・・・」

「そんなこと無いって。世間の奴等が半端なだけさね」

「フフフッ、アリスは厳しいですね」

 

 

 

 

 

 

 

俺は刃をムチ状にしたままアキトにむかって繰り出す!

剣の攻撃とは違い、ムチでの攻撃は読みづらいはず!

 

 

「さすがアリスちゃん仕込みのムチさばきだ!!」

 

 

アキトはほぼ同時攻撃ぐらいに早いムチの攻撃をすべてかわしている!!

俺の目にはアキトが分裂したような錯覚に陥る。

 

あまりの早さに残像しかとらえていないって言うのか!?やつは化け物か!!

 

 

(ゼルガディスさん!!)

 

 

俺の頭の中にアメリアの思念が届く。

俺はアメリアの作戦を瞬時に悟り、剣を元の状態に戻し呪文の詠唱に入る!

 

 

ラファス・シード
「霊縛呪!!」

 

 

アメリアの呪文によってアキトの体に魔力の縄がからみつき、動きを封じる!

俺はこの機を逃さず魔法と解き放つ!

 

 

エルメキア・フレイム
「烈 閃 砲!!」

 

 

俺が放った光の奔流はアキトに向かい飛んでゆく!

 

 

「ハァァァァァ・・・・・ハァッ!!

 

 

アキトの体から蒼銀の光とは違う、別の白い光があふれたと思った瞬間、

アキトは力任せに魔力の縄を解除・・・・いや、引きちぎった!

 

                             エルメキア・フレイム
アキトはそのまま、俺の放った 烈 閃 砲 に向かって光を纏った手のひらをかざし受け止めた!!

受け止められた光の奔流は行き場を求めてアキトの手のひらから辺りに向かって飛び散っていた。

 

 

 

 

 

 

 

「ガイウス。アキト殿が使っているあれはもしかして氣功術じゃないのか?」

「みてぇだな。どうやらこの結界の中じゃあ氣は光って見えるらしい」

 

 

ガイウスの手はぼんやりと光っている。

どうやら自分の氣も光るかどうか試しているらしい。

 

 

「氣功術を教えたのは一ヶ月ぐらいだろう?よくあそこまで教えたものだな」

 

「元から基礎みたいなのは出来てたみたいだからな。

俺が本格的に教えたのは氣の鍛錬と蓄積の仕方・・・・後は氣による身体補強についてぐらいなもんだ。

この前から軟氣功といった技もボチボチと教えてはいるがな・・・」

 

「すぐに師匠を超えそうな勢い・・・・・・か?」

「技の多彩さは今は俺の方に分がある・・・が、単純な力にかんしては既に俺以上だ。まったく凄いもんだ・・・」

「確かに女王様やルナ様が気に入るだけの方はある。ま、それだけじゃないみたいだけどな・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

その話は俺の耳にも届いていた。

実質的な魔力でないのなら、手で掴めない場合はどうするのか?

 

俺は考えたことを即、実行した!

 

 

                  ディス・ファング
「ならこれはどうだ!餓竜哮!!」

 

 

足下から竜の形をした影がアキトに向かって襲いかかる。

 

この呪文は異世界より召還した影の竜で相手の影を食らわせる術。

相手は影の竜が食らった影と同様の所を失う。

普通の人間なら防ぐことはおろか自動的に追いかける竜より逃げることすら不可能だ。

 

だがアキトはなんの躊躇もなく光の纏った掌底を地面につけ・・・・

 

 

「ハッ!!」

 

 

影の竜どころか辺り一面の地面ごと吹き飛ばす!

 

 

ルオォォ・・・・ン

 

 

影の竜の断末魔の叫びが聞こえる。

地面と共に吹き飛ばされてしまったようだ!!

 

しまった!!俺は目の前でおこったことに気を取られてアキトの姿を見失ってしまった!

辺りは先程巻き上げられた土砂や土煙で視界が不鮮明になっている!

 

 

「無茶苦茶しやがる!!」

「そうかな?でもこれぐらいはしないとね」

 

 

そう言っていつの間にかに後ろに回り込んでいたアキトに、

俺とアメリアは肩を叩かれる。

 

俺には動きどころか気配すら感じられなかった!

 

 

(こいつは・・・・・無茶苦茶だ!!)

 

 

俺の脳裏に、かつてこれと似たような戦いの場面がよぎる。

 

                ヘル・マスター
あの時は相手が 冥王 だから渋々納得したが・・・・今回は・・・・

 

俺とアメリアははじかれたように前に跳ぶ。そして同時に!

 

 

     ラ・ティルト
「「崩霊裂!!」」

 

 

 

アキトがいた場所に蒼い光の柱がたつ!!

俺達が声を出したと同時に消えるように場所を移動した!!

 

 

「いい反応だけどね、相手が素早かったら呪文が発動するまでに避けられちゃうよ」

「そういう奴がそうそういてたまるか!!(クソッ!完全に俺達のことを試してやがる!)」

 

 

俺はアキトとの実力差を肌身でいやというほど感じた!!

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「俺達・・・・・本当に人間と戦ってるんだよな・・・・」

「さっきまでそう思っていましたけど・・・・だんだん自身が無くなってきました・・・・・」

 

(失礼だな・・・・・俺はれっきとした人間だ!)

 

 

俺は失礼なことを言ってくる二人の言葉に頭の中で反論した。

 

 

戦いを始めてもうかなりの時間が経った。

 

二人は憶えている限りの呪文を使い攻撃してくる。

俺はそれを氣を使って迎撃したり反らしたりした。

 

俺にとってもなかなか良い特訓になる。

 

 

「アキト・・・これで最後だ!」

「私達の全力で最期の一瞬に賭けます!!」

 

 

・・・・・今の俺って・・・・何だか悪役っぽいな・・・・・

さしずめゲームで言うところの最後のボスキャラか何かか?

 

 

「段取りどおりにいくぞ、アメリア!」

「はい!ゼルガディスさん!」

 

「受けて立つ!」

(俺ってこんなにのりやすい性格だったかな・・・・・・ま、いっか)

 

 

「ハァ!!」

 

 

ゼルが剣を横に薙ぐ!

その軌跡にそって赤い斬撃の衝撃波が俺に襲いかかる!!

 

おそらく刀身に溜めていた魔力を解き放ったのだろう。

 

 

これには俺もいささか驚いた!

隠し手としてはなかなかのものだ!

 

俺は昂氣で迎撃しようと右手を振りかぶる。

 

 

 グレイ・ボム
「爆術法!!」

 

 

俺は真下から何かの気配を感じ、その場を後ろに飛びのく!

 

飛びのいたと同時に俺が先程までいた地面が爆発した!!

その爆発のせいで目の前は煙でおおわれ、視界が不鮮明となる。

 

 

                           物 理 攻 撃
(しまった!!あれはただの精霊魔術だ!)

 

 

俺はまんまと策略に乗ってしまった!

 

立ち上った爆炎を切り裂きながら赤黒い衝撃波は俺に迫る!

 

 

「なかなかやる!!」

 

 

俺はその一撃を飛び上がりながら避ける!

それを見たアメリアちゃんも飛び上がり、俺に接近戦をしかけてくる!

 

最初の時のような油断はない!

後の余力は考えていない、全力でかかってきたようだ!

 

 

俺はアメリアちゃんの攻撃を次々に捌く!

一ヶ月前に比べたらかなり動きが良い!!

 

 

「この一ヶ月で強くなったね!」

 

「そうは言いつつも、私が手や足を使っているのに

アキトさんは手だけで捌いてるのでは説得力がありませんけどね!!」

 

 

そうは言っているがもし特訓の期間が一ヶ月ではなく、半年ほどであれば・・・・・

俺は捌くのではなく、牽制をまじえた攻撃を繰りだしていたかもしれない。

 

 

アメリアちゃんは地面に着地した瞬間、いきなり屈んだと思ったら蹴り上げるような右の逆さ回し蹴りを放つ!

俺はその一撃を上半身をそらして避ける。

が、蹴り上げた右足は頂上で静止したと思ったら、そのままかかと落としに変化する!

 

俺はその一撃を左手で受け止める!

だがアメリアちゃんの攻撃はまだ終わってはいなかった。

 

今度は左足を蹴り上げてきたのだ!

俺はそれを軽く後ろに下がることでかわした。

 

 

後ろに下がった瞬間、ゼルはいつの間にかムチ状にした刃を俺に向かって振るう!

俺はその刃を掴んで止めようとした。

 

が、その刃の切っ先は俺に掴む直前に軌道を変え、大地に突き刺さる!

その場所は・・・・・俺の影か!

 

 

          シャドウ・スナップ
(しまった! 影縛り か!!)

 

俺は理解したと同時に素早く呪文を唱える!

 

 

 ライティング
「明かりよ!!」

  ラ・ティルト
「崩霊裂!!」
「フレイム・ブレス!!」

 

 

俺が影の呪縛を解いたのと、

アメリアちゃんとゼルの合成呪文が発動したのが紙一重・・・・・いや、ほぼ同時だった。

 

 

俺は眩い赤い光の柱に包まれた!!

 

 

「やったか!!」

「これでダメなら打つ手がありません!!」

 

 

「ハァァァァァァアアアッッッッ!!」

 

 

俺は昂氣を全力で使い、赤い柱をうち砕く!!

 

耐えるだけなら全身に昂氣を纏うだけでいいが・・・・まあ負けた八つ当たりみたいなものだ・・・・・

 

 

「アメリアちゃんにゼル・・・・本気で俺を殺そうとしていないか?」

 

 

あの時、全身に昂氣を発動させるのが遅かったらいくら俺でもやばかった・・・・・

 

 

「まさか・・・・あれぐらいで倒せるぐらいだったらゼロスさんが引き下がるはずありませんし・・・・」

「お前が人外的に強いことはルナさんから聞いていたからな」

 

 

すでに手加減無用なことを吹き込まれていたわけか・・・・

道理でやばそうな術をよく使っていると思った・・・・・・

 

 

「とにかく・・・・この勝負は俺達の勝ちだな」

「そうなるのかな・・・・・まったく・・・・こんな事なら最初のうちに倒しておけばよかったかな?」

「そんな事したら最初の数分で片がついてますよ・・・・・」

 

 

「二人ともご苦労様。アキト君も・・・・敵と言うよりは的になってくれてありがとうね」

「なんだが複雑な気分ですけど・・・・色々と試せたので面白かったですよ」

 

 

 

「面白かった・・・・ですって。どう思います?ゼルガディスさん」

「俺達が真面目にやってあの感想だからな・・・・まだまだ強くならんといかんというわけだ」

「そうですね・・・明日からの特訓・・・倍以上にしましょうか」

「それが一番無難だな」

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は今度の戦い・・・リナちゃん達の戦いを見るために特等席に移動した。

それはすなわち・・・・・・・

 

 

「お疲れさまでした。アキトさん」

「ご苦労様です。婿殿」

 

 

この人達の横と言うことになる。

ちなみに俺は当初、ガイウスさんとレニスさんの間に立とうとした。

そうしたら、女王様とティシアちゃんに左右から両腕を抱え込まれ、あいだに座らされた。

 

なんでこういうときの女性の力は俺をはるかに越えているのだろうか・・・・

 

 

「最後のあれは驚きました!寿命が縮まるかと思いましたよ!」

「ええ、次期国王が死んでしまうのかと思いましたが・・・・さすが婿殿」

 

 

何だか聞き流せないような台詞が混じってはいたが、

二人とも俺のことを心配してくれているのはよく分かった。

 

 

「心配してくれてありがとうございます」

「いいのですよ。その代わり今度のパーティーの時は来てくださいね☆」

「謹んで遠慮しておきます」

 

 

女王様は何かとつけて俺を公式な場に連れ出すとする。

 

俺はもうこれ以上地雷を踏みたくはない・・・・俺の正直な本音だ・・・・・

 

 

 

「アキト!お前さんまた氣功術の腕があがったんじゃねえのか?」

 

「そんな事ありませんよ。硬氣功はまだ扱えませんし。

最近ようやく軟氣功が扱えるようになったぐらいですよ」

 

「それはお前さんが軟氣功の会得を優先したからだよ。

そのうち遠距離系の発剄、俺の流派で言うところの竜神掌が扱えるんじゃないのか?」

 

「この前試してみましたけど・・・・せいぜい三十歩が限度ですね・・・・

氣を練るのに時間さえかければかなりいくと思うんですけど・・・・」

 

 

俺自身もまさか使えるとは思っていなかった。

ガイウスさんにこの世界独自の氣功術を学ばなければ、

たとえ一生努力しようとも扱えることはなかっただろう。

 

 

「やっぱおまえさん化けもんだ。まさか・・・・実はお前は仙人じゃないのか?」

「それこそまさかですよ」

 

                              マスター
(よく言うぜ・・・・俺が氣功術を 会得 するのに十数年。

                                                    遠当て
いくら基礎ができていたからといって一ヶ月かそこらで竜神掌を会得できるもんじゃねぇんだぞ・・・・)

 

 

 

 

 

そうこうしている間にリナちゃん達の試合が始まった。

俺達の時より派手で、より死に近い戦いが・・・・・・

 

 

 

 

 

(二十話に続く)

 

 

―――――あとがき―――――

 

どうも、今回も作者はお休み中なので代理に来たアルテイシアです。

相変わらず私は出番が少ないですね・・・・残念です。

 

今回はアキトさんとアメリア・ゼルガディスペアの闘いでした。皆さんどうでしたか?

色々とおかしいな?どうしてこうなるんだ?という質問があればどしどし作者に質問でもしてください。

すちゃらか作者が無い頭を一生懸命に絞って答えますから。

ただし、結界とかルナ姉様の力に関してはそれなりに完全オリジナルですので

 

『ああ、そんな事ができるのか・・・・』

 

とでも思って納得してください。

 

次回はルナ姉様対リナ、ガウリイペアです。

さてはてどうなる事やら・・・・

闘いに関してはどうこう言うつもりはありませんが、街を傷つけないでほしいですね。

せっかく直した所なんですから・・・街の大工さん達が泣きますよ?

 

最後に・・・ほたてさん、高砂子さん、涼水夢さん、T氏さん、K・Oさん。

神威さん、十二式さん、川嶋さん、刹那さん、森乃音さん、Sakanaさん、watanukiさん。

 

ご感想ありがとうございます。

ゼフィーリアの代表としても重ね重ね感謝しております。

 

では皆さま、第二十話『命を賭けた試合・・・・《後半戦》』でまたあいましょう!

 

 

 

 

 

代理人の感想

三十歩神拳・・・妙に強いような弱いような(爆)。

まぁ、常人からすればそれだけでも十分に人外なんですが。

 

 

        ブラスト・ボム
・・・・ところで、暴爆呪が岩に傷ひとつつけられないのに
 ダグ・ハウト  グレイ・ボム
地撃衝雷や爆術法で派手に土煙が立ったりするのはど〜ゆ〜訳でしょうかね(笑)?