赤き力の世界にて

 

 

 

 

 

第28話「願い・・・そして、望み・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金色の魔王ロード・オブ・ナイトメア・・・・・

この世界と異世界の魔王の頂点に立つもの・・・・魔族達の真の王・・・・

そして神や人間といった命あるもの達の真の王でもある存在・・・・・

全ての闇の母・・・・・闇より暗きもの・・・夜より深きもの・・・・混沌の海・・・・たゆたいし金色・・・・

全ての混沌を生み出した存在・・・・すなわち、悪夢を統べる存在ロード・オブ・ナイトメア・・・・

 

私が知っているのは、そういった断片的な知識でしかない・・・・

そもそも、あの存在を知識や思考で理解しようとする自体、無理なものなのかもしれない・・・・

異界黙示録クレア・バイブルですら、その全てを知っているわけではない、と語っていた。

 

そして、そんな理解不能な存在の力を使う呪文『重破斬ギガ・スレイブ

この世界に混沌を召還する魔術・・・・一歩間違えば、いや、半歩間違っただけでも、

この世界は無へと回帰するほど危険な代物・・・・

 

これを使う魔導士は、過去、現在あわせて三人のみ・・・・

一人目は、神魔戦争時、稀代の魔導士にして英雄であった人間・・・

二人目は、天才にして、美少女たる私(そこ!細かくつっこまないよーに)こと、リナ・インバース。

そして三人目は・・・目の前にいるこの男、かつて神に仕えし竜の一人、アーウィン・・・・

 

故に、混沌の魔術同士が、ぶつかり合うということは、今まで一度たりとも無かった。

それが、目の前で実現されようとしている!

 

 

 

「久しぶりにこれを着ることになったわね」

 

 

隣にいる姉ちゃんは、私のサポートをするために、その身に纏っていた服を、赤い聖衣に変えた。

輝くような聖衣と容姿があい合わさり、絵から抜け出た女神という印象すらうけるだろう。

(本性を知らない人間にとっては・・・・・)

何でも、この聖衣を纏った方が、精神世界面アストラル・サイドへ干渉しやすくなるということらしい。

早い話が、精神世界面アストラル・サイド専用の戦闘服とでも考えればいいのだろう。

 

 

「では私達も準備をしましょうか。メアテナ、準備を・・・・」

 

 

メアテナと呼ばれた女性が、再び両手に赤い光を作り出す。といっても、やはり色は微妙に違う。

右手の赤は、朝焼けや暁といった、あざやかな光り輝く赤い色。

対して、左手の赤は、夕暮れや血の如き、暗く沈んだ赤い色。

 

まるでこの世界の神と魔の色を象徴しているような・・・・・っておい!!まさか!!

 

 

「姉ちゃん・・・あれってまさか・・・・・」

 

「そのまさかよ。左手の力は、この世界の魔王、赤眼の魔王ルビーアイシャプラニグドゥのもの・・・・

そして右手の力は、赤き竜神フレア・ドラゴンスィーフィードのもの・・・間違いはないわ。

あの後、折れた剣先をニースが持ち帰っていたのね・・・・

それを何らかの手段によって移植した。といったところかしら?

相反する二つの力を受け入れることができる許容量キャパシティ・・・大したものだわ」

 

 

そんな感心している場合じゃないでしょうに・・・・そりゃ、確かに凄いかもしれないけど・・・・

 

そんなこんな言っているうちに、その話題の人物であるメアテナは、両手の力を光の球体に変えた。

そして、本来は相反するはずだったエネルギーは、磁石のようにお互いを引きつけあい、

絡まりあうように融合し、一つ漆黒の球体へと変化した!!!

 

それの意味することは・・・・・

 

 

「人工的に生み出された混沌・・・・」

 

「その通りです。神と魔を融合させることによって生み出された混沌・・・・それが私達の切り札の一つです。

かつて彼女が・・・システィナが操ったこの力で、この世界を滅ぼし、新たなる世界を創り出します!!」

 

 

今のアーウィンの言葉で、今までの事柄が、一本の糸で繋がった。

 

システィナが操ったこの力・・・つまり、彼女が、最初に金色の魔王ロード・オブ・ナイトメアの力を用いて戦った魔導士なのだろう。

そして、ニースの相棒にして、たった二人で獣王グレーター・ビーストを滅ぼす寸前まで追い込んだ英雄。

 

おそらく、獣王グレーター・ビーストは、今回の一件の真相を知っていたのだろう。

それを承知の上で、私達に頼みに来たのだろう。同じ、命ある者同士で決着をつけさせるために・・・・

もしくは、どういった行動を、私達がとるのかを見るために・・・・・・・

 

もちろん、手出ししにくいということもあったのだろうが・・・・変な気遣いというか何というか・・・・

やはり、あの上司にしてあの部下・・・・・というのが、そのまま当てはまるかも知れない。

 

 

「では、いきます!私の全てを賭けて!!」

 

 

アーウィンの手の内より、硝子球が天高くへと放り投げられた!!

 

私とアーウィンは、同時に呪文の詠唱に入る!!

 

 

『闇よりもなお暗きもの 夜よりもなお深きもの!!』

 

 

ここまでは同じ!!問題はこの後に続く『力ある言葉カオス・ワーズ』が問題となってくる!!

 

 

「混沌の海にたゆたいし 金色なりし闇の王!!」

「混沌の海よ たゆたいしもの 金色なりし闇の王!!」

 

 

(―――――そんな!!)

 

 

私は驚き・・・というよりも、恐怖によって詠唱を中断しかける。

傍から詠唱を聞いただけでは、そう大した違いはないように思える。

しかし、結果は雲泥の差になる。それが私にはわかった。

 

私の唱えている『力ある言葉カオス・ワーズ』は不完全なもの・・・

対して、アーウィンの唱えているのは完全な『力ある言葉カオス・ワーズ』・・・・

 

はっきり言って、このまま力をぶつけ合えば、例え姉ちゃんの助力があるという前提をふまえても、

負けるのは火を見るよりも明らかだ。

 

だったら、私も完全なものを使えばいい・・・という意見もあるかもしれないが・・・私には絶対に無理。

かつて、止むに止まれぬ事情があり、完全版の重破斬ギガ・スレイブを使ったことがあるが・・・

結果はもろに失敗・・・危なくこの世界が崩壊するかと思ったが、何とか事無きを得た。

 

はっきり言って、あれに手をだすのは無茶無謀に他ならない。

人であれ、竜であれ、エルフであれ・・・・あれは制御できるというレベルをはるかに越えている。

例え、集中力が桁外れなアキトでも、自殺行為にも等しいだろう。

あれは、手を出すには強大すぎる存在なのだ。制御するなど、傲慢な考えなのかも知れない・・・・・

 

そんな私の思惑を余所に、呪文の詠唱は高らかに続いてゆく!

 

 

 

『我ここに 汝に願う  我ここに 汝に誓う

  我が前に立ちふさがりし  全ての愚かなる者に

    我と汝が力もて  等しく滅びを与えんことを!!』

 

 

 

そして、天高く投げられた硝子球が、自然の理に従い、その身を大地に投げ出し、

澄んだ破砕音を辺りに鳴り響かせる!!

 

私はその音と重なるように、最後の『力ある言葉カオス・ワーズ』を口にした!

 

 

 

重破斬ギガ・スレイブ!!」

混沌の衝撃カオス・インパルス!!」

 

 

 

私とアーウィンの魔法が同時に発動する!!

 

私とアーウィンの掌に生まれた闇の球は、縮み、虚空へと消える。

次の瞬間、両者の中間辺りに、金色の光を放つ、身の丈ほどある漆黒の球体が現れた!!

 

(お互いの術の相互作用!?何にしても、最悪の事態相討ちにならなかっただけめっけもんね)

 

 

ゴウッッ!!

 

 

その漆黒の球体が出現したと同時に、高威力の余波からか、凄まじい衝撃波が吹き荒れる!!

衝撃波は一瞬だけ・・・・・しかし、かなり巨大な空間とはいえ、密閉された場所に吹き荒れた衝撃波は、

辺りの瓦礫などを吹き飛ばし、数少ない逃げ口へと殺到した!!

 

私とガウリイは、姉ちゃんが念のためにと張っていた防御結界に守られ、怪我一つない。

アーウィンの方は、心配する必要もないだろう。どうせ、あの赤い防護結界で身を守っただろうし・・・・

 

もし、あれがなければ、かなりやばいことになっていただろう。

何しろ、私は今だ重破斬ギガ・スレイブを維持し続けているのだから!

 

この勝負・・・・先に制御できなくなった方が負ける。

 

私が制御できなくなれば、アーウィンの混沌が、私の混沌を呑み込み、私達に襲いかかるだろう。

逆に、アーウィンが制御できなくなれば、暴走する前に、私の混沌が相殺するだろう。

はっきりいって・・・・分が悪いってもんじゃない。

私の頬に、冷や汗が流れた感触が、イヤにハッキリと伝わってきた・・・・・・

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

アキトとゼル達は、リナ達に追いつくべく、洞窟を歩いていた。

三人の間に言葉はない・・・・

 

アキトから、今回の事件のあらましを聞き、なにもいえなくなっていたのだ。

アメリアとゼルガディスは、過去に起こった出来事に憤慨、同時に悲しみを覚えていた。

そんな中、アキトが何の前触れも無しに足を止めた。

 

 

「どうかしたんですか?」

「・・・・身を低くして身構えるんだ!」

 

 

アキトはアメリアの問いに答えず、突然に言い放つ。

アメリアとゼルガディスは、一瞬、何のことか理解できなかったが、すぐさま言われたとおりにする。

その次の瞬間、アキトが気をつけろと言った意味を理解した!!

 

 

ドンッッ!!

 

 

家が一軒ぐらいは建ちそうな程の広い通路に、凄まじいほどの強風が吹き荒れる!!

周りの砂や埃はともかく、数センチほどの砂利まで、風の中を飛び交う程の強さだった!!

 

 

「洒落にならんぞ!」

 

 

岩の肌であるために、体重がかなり重いゼルガディスでさえも、この強風では身動きがとれない。

それよりも、一番この場で危ういのは、体重の一番軽いアメリアではなく、

両手が使えないため、完全に踏ん張ることができないアキトだった!

今はまだ何とか耐えているものの、かなり危ない状態には変わりはない。

 

その時!宙を舞っていた十数個の砂利が偶然、アキト達に襲いかかった!!

かなりの加速の上、防御がとれないアキトなら、致命傷にはならずとも、かなりの痛手にはなる!!

ゼルガディスは、すぐさま防御結界を作り出そうと詠唱を始めた。

・・・・が、それよりも先に、横手から聞こえたアメリアの声がそれを遮った。

 

 

封気結界呪ウィンディ・シールド!!」

 

 

アキト達を包むように張られた風の結界により、飛んできた砂利ははじかれ、さらには暴風の影響もなくなった。

アキトは一息つくと、アメリアに向きなおり、礼を言った。

 

 

「ありがとう、アメリアちゃん。助かったよ」

「いえ、気にしないでください。私がやらなかったらゼルガディスさんがしていただけですし・・・」

「そんな事はない。俺じゃ間に合わなかったからな。それにしても・・・・」

 

 

ゼルガディスは、風の結界越しに、周りの状況を見回した。

暴風はほとんど収まり、殺風景だった洞窟の内容を、異質なものへと変えていた。

 

 

「先程の街があったから、薄々は予想してはいたが・・・思ったよりも洗練された技術だったようだな」

 

 

ゼルガディスは、なにもなくなった地面に軽くひざまずき、平らに削られた岩肌をさわった。

その手触りは、思ったよりもかなり平坦であり、風化などで発生した亀裂があってさえも、

今の技術で造られたものより、余程しっかりとしたものだった。

 

 

「ここは、神官やその身の回りの世話をしている人達が住んでいたところらしいよ」

「ヘ〜、そうなんですか・・・・って、何でアキトさんがそんな事を知ってるんですか?」

「ニースから聞いたんだ。もっとも、ニースもアーウィンという人物に聞いたって言っていたけどね」

「アーウィン・・・ですか・・・・」

 

 

アメリアちゃんが、視線を床に落とした。

その為、表情とかはわからないが、どういったものかは、想像に難くない。

 

 

「俺には・・・そいつの気持ちが多少なりとも理解できる。だから止めたかった。だけど・・・・」

「ああ、先程のあの衝撃波・・・もう戦闘は始まっていると見て間違いはないな」

「となると・・・リナさんは重破斬ギガ・スレイブを・・・・」

「だろうな・・・・こうなった以上。アキトには悪いが、もはや穏便に済ますという選択肢はないな」

「・・・・・・・・・わかっているさ」

 

 

わかっている・・・・そういったものの、アキトの表情は暗く、沈んだままだった。

 

愛していた者を殺され、世界を巻き込んでまでも復讐をやり遂げる。

そういった『憎悪』とは無縁ではなく、身近だったアキトには、男の気持ちが痛いほどわかった。

 

だからこそ、何としてでも止めたかったのだ。他人には、自分と同じ過ちをくり返させたくなかったから・・・・

 

 

「先を急ごう。例えどんな結末だろうと・・・・俺は最期まで見届けたい」

「それについては同感だ。だが、あまり急ぐとそれ・・の効果がなくなるぞ?」

 

 

ゼルガディスが、アキトの体を見る。

アキトの体に、薄い黄色・・・・見ようによっては金色にも見える光がまとわりついていた。

 

 

 

「そうですよ!アキトさんの腕は重傷なんてもんじゃないんですから!!」

「でも、アメリアちゃんのおかげで痛みは大分やわらいだし・・・・」

 

「いけません!!その神聖呪文ですら、痛み止め程度にしかなっていないんです!!

もっと自分の体に気を使ってください。下手をすれば二度と使えなくなりますよ!!」

 

 

事実、アキトの腕は重傷というのをはるかに越えている。

アキトは、自分で治癒リカバリィをかけようとしたものの、上手くいかずに断念した。

それならばと、今度はアメリアが復活リザレクションをかけたものの、何の効果も得られなかった。

 

なぜ治療魔法が効かなかったのか・・・・

それはアキトが使用した、昂氣と赤竜の力の混合によって新たに創られた紫銀色の力・・・・

『紫竜』の力の残滓が、アキトの腕にまだ残っているからに他ならない。

その残滓が、魔法の力をはね除け、思ったように効果が得られない状況を造り上げていたのだ。

 

唯一、効果のあったのは、先程アメリアが言っていた神聖呪文のみ・・・・

『アース・リジェネレーション』・・・・神の一人である地竜王アース・ロードランゴートの力を借りた呪文だ。

効果はその名が示すとおり、自然治癒の促進。

こう聞くだけならば、治癒リカバリィと同じ効果と思われるが、こちらは体力を使わず、

代わりに、大地に流れる氣の力をその身に吸収し、怪我や病気といったものを癒すことができる。

 

ただし、難点が三つほど・・・・

一つは、大地の氣を吸収するために、体の一部を地面に接していなければならない。

二つ目に、治癒の促進といっても、その効果が遅々としていること。治癒リカバリィの半分ほどもない。

三つ目は、安静にしていないと効果がかなり薄れるということ。戦闘などはもってのほか。

 

ただ、その難点さえ除けば、その効果は絶大なものがあり、

たとえ死の病に瀕していても、時間さえかければ癒すことができるほど。

 

それほどの力をもってしても、アキトの腕を完治させるどころか、痛み止めぐらいにしかなっていない。

それほど、アキトの紫竜の力は非常識かつ強力だということの証明にもなっている。

 

 

「大丈夫。今までこれ以上の怪我をした時もあったけど、ちゃんと生きているからね。

それに、今できることをやっておかないとね・・・・後悔はしたくないんだ・・・・」

 

 

アキトの決意がくつがえることのない様子を感じたアメリアは、深く溜息を吐いた。

 

 

「わかりました。アキトさんがそこまで言うのなら・・・・でも!両手の使用は厳禁です!」

「わかったよ、アメリアちゃん」

「心配するな、アメリア。アキトの手の代わりは、俺がやる。少々頼りないかもしれないがな」

「そんなこと無いよ。ありがとう。ゼル」

「あまり気にするな」

 

 

アキトの感謝を、ゼルガディスは笑って返した。

 

 

「じゃあ、さっさといくぞ」

「わかった」

「はい」

 

 

そしてアキト達は、一路、最奥までの道を走り始めた。

自分たちにできることを、成すために・・・・・

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

漆黒の球体は、最初の位置から、今だ少しも動いてはいない。

見事に均衡しているのだ。かなり危うい均衡ではあったが・・・・

 

 

(結構きついっ!!でもなぜ?)

 

 

私は不完全版であるのに対し、あちらは完全版・・・

勝負はあっさりとつくと思っていたのに、今だこの均衡は破られていない・・・・

姉ちゃんの後押し助力があるとはいえ、相手が制御できるのであれば、こっちが圧倒的に不利。

 

(そういえば・・・あのメアテナっていうのが創った人造の混沌・・・・あれの意味は何だったの?)

 

私はそれが気になり、意識の大半を術の制御に向けたまま、視線を巡らす。

そこで私が見たものは・・・・金色の光が炎のようにあふれ出る、漆黒の球体を持ったメアテナだった。

 

 

「なるほど・・・・・何であちらが完全版を制御できるか・・・その謎がやっと分かったわ」

「リナも気がついたようね・・・相手があれを創り出した意味が・・・」

 

 

姉ちゃんが、中央にある漆黒の球体に両手をかざしたまま、私に話しかける。

姉ちゃんは、一見、何ともないように振る舞ってはいるが、よく見ると、かなり汗をうかべていた。

 

 

「あれは・・・この世界へと混沌を召還するための呼び水、もしくは、門といった方が適切かな・・・・

あれを介して、この地に混沌を召還しているんでしょうね・・・・

同じ混沌という属性を利用してやっているんでしょうけど・・・・そんな事考えもしなかったわ・・・・・・」

 

「そうね・・・その上、混沌の召還に関してはメアテナあの子が・・・

制御、維持に関してはアーウィンが担当をしているわね・・・

メアテナが、召還する混沌を調整しているから、アーウィンは制御方面にのみ、集中できる。

一人よりでやるよりは格段に余裕ができる訳だから、威力もその分高いはずよね・・・・」

 

 

確かに姉ちゃんの言う通り、相手は二人掛かりで重破斬ギガ・スレイブを使っているのだ。

もし、相対したのが私一人だったら・・・・・それこそ話にもならない、問題外である。

 

もし、そうなったらやぶれかぶれで、呪文を使わせずに終わらせるようにするだろう・・・

それこそ死にものぐるいで・・・・

 

 

「姉ちゃん。このままじゃあ、先に私の方がへばってしまうわ!

まだ余力のあるうちに一気に片づけないと、持久力ではあっちの方が上だと思うんだけど!」

 

「確かに・・・・あっちはまがりなりとも竜族・・・人間よりは魔力許容量キャパシティも上だろうし・・・

なにより、リナの体力が尽きるのが早いだろうしね」

 

 

姉ちゃんが私の方に目をむける。正確には、私の頭・・・・つまり、髪の毛を見ていたのだ。

その理由は私にもわかっていた。私の自慢の一つ、亜麻色の髪の一房が、色を失い、白くなっているのだ。

修行(という名の地獄)により、基礎体力や、魔力はかなり上昇レベルアップしたものの、

重破斬ギガ・スレイブの維持に使う魔力と体力は桁が違う・・・生命力が足りなくなってきている証拠なのだ。

それが一番、目に見える形として現れるのが、髪という訳だ。

 

 

「じゃあ。一気にいくわよ!!」

 

 

姉ちゃんの身体から、暁よりもなお眩いほどの赤い光が、燦然と発せられる!

私は姉ちゃんが輝き始めたと同時に、余力を全部出しきる覚悟で魔術に集中する!!

 

 

『ハァァアアアアーーーーッッ!!!』

 

 

アーウィンと私達の間にあった、身の丈ほどもあった漆黒の球体が、見る見るうちに収縮し始める!

その勢いは止まることなく、すぐさま一抱えできるぐらいの大きさにまでなった!!

 

 

(後一押しで・・・・)

 

 

いける!!・・・・私はそう思った。

その考えは、アーウィンが発した次の言葉によって、微塵にも打ち砕かれた。

 

 

「なかなかやりますね・・・・では私も本腰を入れますか・・・・メアテナ」

「はい・・・・」

 

 

メアテナの作り出していた混沌から発せられていた金色の炎の様なものが、

今までとは倍以上はあろうかというほどの大きさになる!!

 

それと同時に、収縮していた漆黒の球体は、再び大きくなり始めた!!

 

 

「そんな!!ク・・・・ダメ・・・抑えることもできない!!」

 

 

私は何とか、一気に相殺しようとしたが、私の意志を裏切るように、

漆黒の球体が拡大する速度をゆるめることしかできなかった!!

 

漆黒の球体は、さして時間をかけることもなく、元の大きさへと復元し、

あまつさえ、私達に向かって徐々に迫っていた!!

 

 

「クッ・・・・・!!」

 

 

漆黒の球体は私と姉ちゃんの必死の努力をあざ笑うかのように、

その動きに何の淀みもなく私達へと向かっていた!!

 

 

「・・・・・・・・!!」

 

 

私と姉ちゃんは言葉を紡ぐ力さえも、混沌を消滅させることに費やしたが、

それすらも無意味と言われている気さえした。

 

 

「あっ!」

 

 

私の体力が限界を超えたのか、膝から力が抜け、ガクン、と身体が崩れ落ちる。

・・・・はずだった私を、ガウリイが後ろから支えてくれた。

 

 

「俺には何の手伝いも出来ないがな。支えてやることぐらいはできるぞ」

「バカ!!そんな事は良いからさっさと逃げなさい!あたしの傍にいたらあんたまで巻き添え喰うわよ!!」

「だって俺、お前の保護者だし。だったら最後まで傍にいてやらないとな」

 

 

もうすぐ死ぬかもしれないこの状況で・・・・ガウリイは何の狼狽えもみせず、

ただ、私に向かって励ますように・・・・安心させるように微笑んだ。

 

そんなガウリイに・・・私は感謝の言葉も言えず、

 

 

「・・・・・このバカ・・・・・・」

 

 

としかいえなかった。

それでも、ガウリイは表情を変えることなく、私を支える手に力を篭めただけだった。

 

私は、ガウリイに後押しされるように、迫りくる混沌を睨み付ける!

 

 

(最後まで・・・・死ぬ寸前まで足掻き続けてやる!!)

『―――――!!』

 

 

 

その時!!私の後ろで感じたことのある気配が発生した!

この最悪なタイミングで最悪な奴がやってくるとは!!

 

 

「何でお前がここにいるんだ!!」

 

 

ガウリイは納めていた妖斬剣ブラスト・ソードをすぐさま抜き放ち、ニースに突き付けた!!

私と姉ちゃんは、襲いかかってくる混沌を抑えようとしていて、全く身動きがとれない!

 

かといって、術を解けば、戒めを解かれた混沌は、瞬時にして私達を飲み込むだろう!!

 

 

(アキトの奴はなにやっているのよ!!まさか・・・・・アキトの奴、負けたの!?)

 

 

私が予想していた最悪な展開を、横から聞こえた姉ちゃんの言葉が、真っ向から否定した。

 

 

「そんな身体でなにをしに来たのかしら?ニース。

アキト君に手酷くやられた今のあなたなら、リナ達にすら勝てないわよ」

 

「別に・・・戦いに来たわけではない。

それに私は、この戦いにおいて既に敗者だ。戦う資格なぞ残ってはいない」

 

 

ニースは、剣を構えているガウリイには全く注意を示さず、私の隣まで歩いてきた。

ちょうど、私を中心にして、右手に姉ちゃん、左手にニースという陣形になる。

 

私の横に立ったニースは、迫りくる混沌に向かって、仄暗い赤色の光を宿した手を向けた。

すると、私達に迫っていた漆黒の球体が、目に見えてスピードを落とし、停止した!!

 

 

「微々たる程しか力は残ってはいないが・・・・無いよりかはましだろう」

「あんた・・・・一体どういうつもりよ・・・・―――――!!」

 

 

私は顔を向けず、横目でニースを見て・・・・・・驚いた。

今まで、敵としてしか相対したことが無い所為か、戦士としての顔しか見たことがなかった。

しかし、今のニースの表情は・・・・・まるで憑き物が落ちたかのような表情をしていた。

穏やかな・・・・そして悲しみを含めたその瞳・・・・・一体こいつに何があったのか・・・・・

 

 

「私と敵対する道を選びましたか」

「別に敵対するつもりはない・・・・」

 

 

ニースは、アーウィンの言葉に、さらに悲しそうな顔をする。

痛ましげな、それでいて何かを悔やんでいるかのようにも見える。

 

 

「元々、あなたは私の計画には賛成ではなかったようですからね。

封印から解き放った恩で手伝ってくれただけですからね、いずれはこうなっても仕方がなかった・・・・・」

 

「ちがう!!」

 

 

アーウィン言葉を聞き終わる前に、ニースは断固とした声で否定する。

 

 

「私が・・・お前の計画を手伝っていたのは・・・・・友との約束のためだ」

「シス・・・・ティナの?」

 

 

アーウィンは、やや呆然とした声でニースに聞き返した。

ニースは・・・・ただ静かに、一回、頷いて肯定した。

 

 

「あの日・・・システィナが殺された時、私は『眠れる竜の大地激戦区』で戦っていた。

それからしばらく経って、私の元に一通の手紙が届いた」

 

 

アーウィンも、それが誰のか?などということは聞かなかった。

そんな事は分かりきっているのだろう。

 

私達は、今は口出しすべきでないと悟り、ただ静かにニースの言葉を聞いていた。

 

 

「・・・・それはシスティナからだった。

『自分が抜けて、戦況が苦しくなったのではないか?』とか、

『あんまり無茶なことはしていないか?』とかそんな事ばかり書いていた・・・・

そして、今、自分がどこに向かっているのかも書いてあった。

それに書いてあったんだ・・・・『私の身に何かあった場合、アーウィンおまえの事を助けてやってくれ』とな・・・・・」

 

「システィナが・・・・そんな事を・・・・どうして今まで・・・・」

 

「言っても、おまえは信じないだろうが・・・・自分を止めるための嘘だと思いこんでな。

だが、それでも・・・・たとえそうだったとしても、言えば良かったんだ。それが私の失敗だった」

 

 

ニースから、自分の想い人のことを聞かされた所為か、

術の制御が甘くなっているみたいだ。漆黒の球体が、僅かながらも小さくなってゆく。

 

だが、まだだ・・・・まだ、決定的なチャンスではない。後一押し、何かがあれば・・・・・・

 

 

「それでも・・・・私はもう止まれません。動き出した歯車は、止めることはできないんです!!」

「グッ!!!」

 

 

これで最後にするつもりなのか、抑えつけていた混沌が、一気に膨張しはじめる!!

私に、今までの比にならないくらいの重圧がのしかかる!!

 

 

「それでも、私は止めなければならないんだ。この大地を愛していた我が友のためにも・・・・

友との約束を果たすためにもな!」

 

「どうしてですか?私を助けるのであれば、そこを退くのが本筋というものでしょうに・・・

現に、今までだってそうだったじゃありませんか」

 

「約束を履き違えるな・・・・そうテンカワに言われたよ。

助けるといっても、力を貸すだけが助ける訳じゃない。

間違ったことをしているのであれば、殴ってでも正してやれ。とな・・・・」

 

 

アキトもなかなかの事をいう・・・・

 

少ししか聞いてはいないが、アキトは過去に、間違った道を行こうとしたとき、

手を差しのべてくれた人達がいるといっていた。

おそらく、そこがアキトの帰るべき場所なのだろうが・・・・

 

人生の教訓・・・というのではないだろうが、体験者の言葉は、かなり重く聞こえるものだ。

 

 

「それに・・・・おまえは言われたんじゃないのか?システィナに・・・・・

『今までありがとう。私のことはもう良いから、これからは自分の幸せを考えて』・・・・とな」

 

「―――――ッ!!!」

 

 

ニースの言葉に、アーウィンが目を見開き、身体を硬直させた。

その直後、膨張し続けていた混沌が、風船がしぼんでゆくが如く、急速に小さくなってゆく!!

 

ニースの言葉・・・・というよりも、システィナという人物の遺言ともとれる言葉に、

かなり衝撃をうけたのだろう。術の維持が全くの手付かずになったのだ!

 

 

(今を逃したら、絶対に勝てない!!)

 

「リナ!これで最後よ!!」

「分かってる!!」

 

 

アーウィンも、事態を理解したのか、慌てて術の構成を立て直そうとしている。

だが!もう遅い!!

呼び出された混沌は、私と姉ちゃん、そしてニースの意志により、あるべき場所へと回帰しようとしていた!!

 

 

「混沌よ!汝、あるべき所へと帰るがいい!!」

 

 

力ある言葉カオス・ワーズでもなんでもない、ただの言葉。

私がただ、自分の中にある、残った全ての力を奮い起こすために言っただけの叫び。

 

だが、全てを含んだ色をした混沌は、私の意志に従ったかのように、その身をこの世界から消した。

 

 

 

「―――――アッ!!」

 

 

呼び出されていた混沌が相殺された影響なのか、

メアテナが維持していた人造の混沌から発せられていた金色の光が消え去り、

代わりに黒い何かが這い出るようにわき出てきた!

それはまるで、触手のようにメアテナの身体にまとわりついていた!

 

その様子は、まるで黒い何かに捕食されようとしているようにも見える!

人造の混沌開いたままの扉から、今だ混沌が流れ出ようとしているのか!?

 

 

「メアテナっ!!」

 

 

隣にいたアーウィンは、黒い触手が絡みついているメアテナを、無理矢理に引き剥がた!

そして今度は、自分自身が触手に取り付かれようとしたが、それに構わず、

押さえ付けるかのように、両手で混沌を挟み込む!!

 

混沌を消滅させようというのか、小さな人工の混沌は、徐々にその姿を小さくしてゆく!

 

 

「ヌ、オォォ・・・・グッ!!」

「アーウィン!!」

 

 

徐々に小さくなってゆく混沌から、黒い触手が断末魔の叫びのようにあふれ出ていた!!

その量は、小さくなるほどに少なくなっていくが、

逆に、黒い触手は暴れまわり、抑えつけていたアーウィンの右腕を切りとばした!!

 

 

「ガウリイ!!私も混沌を抑えつけるのを手伝うから、あそこに連れていって!!」

「無茶をいうな!!立つことすらままならないのに、そんなんで行ったら死ぬことになるぞ!!」

 

 

確かに・・・ガウリイのいうとおり、私の膝はガクガクと震え、立つことすらままならない状況だった。

もし、ガウリイが支えていてくれなかったら、地面に倒れ、立ち上がることすら出来ないだろう。

 

しかし、そんなことを言っている場合ではない!

姉ちゃんとニースは力の使いすぎで、地面に膝を突いている。

この二人も、私と同様、歩くことはおろか、立つことすらできない状況だった!

 

 

「いいからあそこに連れて行きなさい!!」

「その・・・・必要はありません」

 

 

アーウィンの苦しそうな声が私の耳に入る。

慌てて私はそちらに顔をむけ、そこで見たものは、消え去った混沌の残滓のみだった。

 

 

「これで・・・・この世界に・・・滅びが訪れることは・・・・ありませ・・・・・ん・・・・・・」

 

 

息も絶え絶えに言葉を紡ぐアーウィン。

言い終えると同時に、その身は大地へと倒れていった。

 

 

 

横たわる大地を、紅に染め上げているアーウィン・・・・・

今は、かろうじて息をしてはいるが、横たわる大地に流れ出した血液の量・・・・

そして、切りとばされた腕や、大穴が空く腹部などから見て、

彼の命はもう長くないことが、素人が見ても分かるだろう。

 

私は・・・ガウリイに支えてもらいながら、横たわる男・・・アーウィンの元へと近づいた。

 

 

「何で・・・あんたは混沌を制御したの?あのまま放っておけば、

核もなく具現化した混沌は、世界を崩壊させていたはずよ」

 

「メアテナは・・・・無事ですか?」

 

 

アーウィンは、私の質問に答えず、逆にメアテナの安否を問うた。

私は傍にいたガウリイに、目で頼む。

私の意図がわかったのか、ガウリイは倒れているメアテナに駆け寄った。

 

 

「大丈夫だ。顔色は悪いが、命には異常はないはずだ」

「そうですか・・・・良かった。それが私の答えです」

「娘を・・・・死なせたくなかった。そういうことね」

 

「はい・・・・たとえ世界がどうなろうとも、二度と大切なものは失いたくなかったんです。

それに・・・私が嫌いなのは人や神といったものだけです。

私は、この大地が好きなんです。彼女が愛した、この大地が・・・ね」

 

 

この世界の崩壊を望んだ者に、この大地は救われた。

たとえ、それが自業自得のものだとしても、救われたことには違いはない。

 

その目的が、娘を失いたくないという、意志の元であったにしても・・・・

 

 

「私は・・・助からないでしょう?」

「ええ、人間だったらとっくに死んでるわ。さすが竜族の端くれってところね」

「フフッ・・・・皮肉にも・・・ですけどね・・・・ゲホッ」

 

 

アーウィンが咳き込むと、口から血が吐き出される。

命の灯火が消え去るのも・・・・そう遠くない。

 

 

「一つ・・・頼みがあります」

「なに?できることなら聞くけど?」

「この一件・・・・全ての罪は私にあります。だから・・・・メアテナの事は」

 

 

この時、私はどうしてアーウィンがメアテナの自我を封印していたのか・・・・それがわかった。

自分が敗北した場合を考え、メアテナの自我を封印していたのだ。

そうすれば、『メアテナは自分の意志ではなく、あくまでアーウィンに無理矢理やらされていた』とでもいえば、

メアテナが裁かれることはない・・・・そう考えていたのだろう。

 

この男は・・・悲しいまでに娘を想い続ける男だったのだ・・・・

 

 

「分かったわ」

 

 

後ろから響いた声に、私は驚いて振り向いた。

そこには、多少ふらつきながらも、祭壇の階段を上がってきた姉ちゃんとニースがいた。

 

 

「全ての責任は貴方、アーウィンにあるものとします。故に、その娘であるメアテナには一切の責は負わせない。

この私が、『ルナ・インバース』という名に賭けて、貴方に誓いましょう」

 

 

姉ちゃん・・・・本気だ。

うちの姉ちゃんが本気の時は、赤き竜神の騎士スィーフィード・ナイトではなく、名前で誓う。

人より与えられた地位と称号ではなく、ルナ・インバースのもてる全ての力を賭けて守る誓い。

姉ちゃんにとっては、何事にも侵しがたい、絶対なる誓いという意味合いが含まれているらしい。

 

この誓いは、例え、残りの魔王の欠片が一斉に襲いかかったとしても、破られることはないだろう。

 

 

「ありがとう・・・・ございます。それから・・・ニース・・・・」

「何だ?」

「メアテナの事をお願いします。貴方が・・・あの子のことを忌み嫌っているのは・・・知っています。ですが・・・・」

「一つ聞かせろ。あれは・・・メアテナは彼女の純粋な複製コピーではないのか?」

 

「いいえ、私の衣服に付いていた彼女の髪の毛から採取した遺伝子と、私の遺伝子を組み合わせた、

正真正銘、私とシスティナの子供です」

 

「そうか・・・・私ができる限り、彼女は守る。おまえと彼女の子供をな・・・・」

「あり・・・がとう・・・」

 

 

アーウィンは、メアテナの事を頼み終わると、落ち着いた顔で死を迎えようとしていた。

その顔は、滅びを望んでいたときの狂気は微塵も見えない、殉教者のように落ち着いた顔つきだった。

 

 

「彼女は・・・・システィナは・・・あの日の朝、私に言いました。生きて幸せになってくれ・・・と。

その言葉がなければ、私はとっくの昔に死んでいました。

でも、やっと・・・・彼女の元へゆくことができます」

 

「ルークといいあんたといい、男って奴はどいつもこいつもバカばっかりね・・・・

死んだ彼女達はそんな事を望んでいないことを知っておきながらも、突き進むんだから・・・・・・・

自分の死に場所を求めるのに、人に頼るんじゃないわよ・・・・」

 

 

私の声は・・・自分でも分かるほど、暗く沈んだものだった。

私の脳裏には、この間、死に場所を求めて戦った男を思いだしていた。

 

 

「ルーク君ですか・・・できれば、会って話をしてみたかったですね・・・・」

「あの世で探して話をすれば?もっとも、あの世というのがあれば・・・の話だけどね」

「あの世・・・ですか・・・・そうですね、もしあれば、彼女にも会いたいですね」

 

「会えばいいじゃない。ルークだったら、ミリーナに会うために、

邪魔する奴等、全部蹴散らしてでも会いに行くわよ。絶対にね」

 

「フ、フフフ・・・・・・そうですね。それも・・・いいかも・・・・しれ・・・ませんね・・・・」

 

 

アーウィンの命の灯火が、今まさに消えゆこうとしていた。

もう既に目が見えないのか、その瞳には光が宿ってはいない・・・・・

 

 

「メアテナ・・・・私の愛しい娘・・・・・願わくば、あの子の進む未来に、幸多からん事を・・・・・」

 

 

 

それが・・・・かつて神に仕えし竜族の一人であり、

この世の全ての滅びを望み、新天地を夢見た悲しき男の最後の言葉だった。

 

 

 

 

(二十九話に続く・・・・・)

 

 

 

―――――あとがき―――――

 

どうも、前回に引き続き、エルネシアが後書きを担当させていただきます。

シリアスな場面の後なので、それを考慮した人選なのでしょう。

 

アーウィンの最後・・・・皆さまはご不満が多いかもしれませんね・・・・

世界の崩壊よりも、愛娘を優先させる・・・誰よりもいい親だったのかもしれません。

彼の所業は、決して死んで許されるというものではありません・・・・ですが、今だけは心より冥福を祈ります。

 

さて・・・北での話も、残すところ後二話となりました。

もはや闘いは終わり、物語に大きな動きはありませんが・・・・最後までお付き合いの程をお願いします。

・・・・・ちなみに、北での話が終わり=赤き力の世界にて・・・の最後というわけではありませんので・・・・

一応、好評であれば、ネタがあり続ける限りは書く・・・と、作者は言っておりましたので・・・・

 

 

最後に・・・K・O様、YU−JI様、TAGURO様、下屋敷様、持山様、神威様、鳴臣悠久様、

tj様、ザイン様、森乃音様、D様、watanuki様、ホワイト様、encyclopedia様。

御感想、ありがとうございます。今度は仕事に返り討ちにあった作者に代わって、厚く御礼申し上げます。

 

では、次回もよろしければ、読んでください。エルネシアからでした。

 

 

 

 

代理人の感想

ひとつ、決着がつきました。

まぁくどくど言うのは野暮と言う物でしょう。