赤き力の世界にて
第3話「魔族の女戦士・・・」
新たにでてきた魔族。
俺達を挟むように立っている・・・
「人の形を取っている、少なくとも中級以上か・・・」
「ええ、彼は中級の中でも上位です。
彼女の方は魔族の中でも少々変わり種で・・・私が特別に頼んで来て貰ったわけです。」
「リナ、どうする・・・一応、形の上では三対三だが・・・」
確かに・・・形的にはそうなるな・・・
しかし、俺にはあの魔族という者達の強さというものがわからない・・・
感じからすると、さっきの悪魔もどきの比ではないことはわかるが・・・
「私のことは気にせずに、今日はただの観戦者のつもりですから。
作戦を練るなら今の内にして下さい、待っててあげますから。」
「どう思う、リナ。」
「どう思うにしても、無視するしかないわ。
逃げるなんて絶対無理だろうし・・・
相手にするにしても、今の私には荷が重い・・・
でも、注意はしておいて!!」
「わかった!!で、作戦は?」
「そうね・・・・アキト、あなた魔族と戦ったことある?」
「いや、さっきの悪魔もどきですら初めてだ。」
何しろ、ここの世界自体初めてだからな・・・
「悪魔もどきって、デーモンのこと?
・・・あいつらを相手にしてどうだった?」
なぜそんなことを聞くんだ?
そう思いつつも俺は答える。
「見た目ほどは強くはなかった、って所かな?」
「ちなみに倒した数の方は?」
「40少々・・・ぐらいかな?」
そう答えると、リナちゃんは何かを考え出した・・・
「そう・・・まあ、詳しいことは後で聞くとして・・・
ガウリイと私は右の奴の相手を・・・
左の奴の相手は・・・アキト、お願い。」
「わかった。出来るだけのことはしよう。」
「無茶は言わないわ、無理だと思ったら逃げて・・・」
「大丈夫、これでも人よりは強いつもりだよ。
リナちゃんは優しい子だな・・・」
本心からそう思い、微笑みかける。
「・・・そんなんじゃないわよ!!」
頬を赤く染め、顔を逸らす。
「奴を相手にするにあたってのアドバイスは?」
魔族相手では俺は初心者だからな・・・
「魔族の攻撃は生身にモロにあたるとシャレにならないわ。気をつけて・・・
その攻撃に関しても、常識では考えられないようなこともするから注意して」
「こちらからの攻撃に関しては?」
「あなた魔法を知っている?」
「いや、この世界に来て初めてみた」
俺の世界には魔法とは想像上にモノだからな〜。
だいたい、俺の世界で「魔法と聞いて思うモノは?」と質問でもしたら、
若い世代のほとんどが「ナチュラルライチ!!」と答えるだろうし・・・
「この世界って・・・まあ良いわ、
その様子だと、魔剣とかの類は持ってないでしょうし・・・」
魔剣ではないが、似たような武器は持っているがな・・・
「奴ら魔族ってのは体があるように見えるけど、実は精神体だから、
物理的な攻撃は効かないのよ・・・
だから何も手段がない人が攻撃しようとしたら、
根性とか気合い入れてどつき回すしかないのよ・・・」
根性って・・・ガイとかなら得意そうだな・・・
「わかった、それなりにやってみるよ。」
「お願い、私とガウリイが早めにこいつを倒して
アキトの方に加勢に行くから!!」
「ああ、そちらも無茶はしないでくれよ」
「それと最後に、詳しいことは後で話してあげるけど、
奴らは、人間を含めた生き物達の負の感情を喰らう生き物よ、
私達のことは餌ぐらいにしか思ってないの、
相手を倒すことに躊躇したら、死ぬのはこっちよ・・・」
生か死か・・・
俺は・・・俺の帰りを待っている人達がいるんだ。
その人達に再び会うため、死ぬわけにはいけない!!
「ま、俺にはリナの言っていることはわからんが、
やられる前にやれって事だけはわかるぞ」
シンプルが故に、物事の本質をついているな・・・
「お決まりのようですね・・・それでは初めてもらいましょうか!!」
あんな事を言ったものの、
何も知らないアキトを、魔族との戦いを任すのは不安だった。
ミリーナみたいな事にでもなったら・・・
「リナ、集中しろよ。一気に倒してアキトの手助けをするんだろう?」
ガウリイが私に声をかける。
「そもそも、アキトの奴、はっきり言って俺よりかなり強い。
あいつらに攻撃する手が無くても、大丈夫さ。
それに妙な術も使っていただろ?」
私は驚いた。
ガウリイのパートナー(本人は保護者と言っている)となってかなり経つ。
その強さは誰よりも知っていると言い切れる自信がある。
対人間の格闘戦でかなうものがない強さに・・・
そのガウリイが、自分よりもはっきりと強いと・・・
「強いことは何となくわかっていたわ・・・
デーモン40体相手に汗一つかいてないもの。でも・・・」
「なら信じろ。アキトを・・・
そして、アキトを信じている俺を・・・」
「そうね・・・私はガウリイを信じる」
そして、ガウリイの信じるアキトを信じる!!
「じゃあ、さっさとこいつを片づけるぞ!!」
「話は終わったか・・・」
「待たせたようね・・・」
「もう良いのか?」
「後がつかえてるんでね、これでも結構忙しいのよ」
「アキトの手助けもしなくちゃならないからな」
「思い通りにならない事もある」
「良いからさっさと始めましょうか!!」
「そうか・・・我が名は『ニース』我の相手をしてもらおうか!!」
このニースと言った魔族、見た目は20歳前後の女性、
黒髪のショ−トカット、目はライトブルー、
服装などは武闘家等が着用するような動きやすい物を着ている。
世間一般では『絶世の美女』と文句無しに言うだろう。
ただし、その雰囲気から声をかけるものはそうはいないだろうが・・・
何しろ真紅の剣をかまえて殺気を放っているし・・・
「リナ、来るぞ!!」
ニースが剣を水平に一振りする。
その軌跡をなぞるように赤い色をした衝撃波が飛んでくる。
「ハッ!!」
ガウリイが持つ魔剣で衝撃波を断ち切る。
その間に私は呪文の詠唱を終えている!!
「覇王雷撃陣(ダイナスト・ブラス)!!」
ニースを中心とした大地に五芳星が描かれる、
魔法陣のそれぞれの頂点から発生する雷光が彼女を襲う!!
「フンッ!!」
ニースは剣を大地に刺し、魔法陣と雷を吹き飛ばす。
そのチャンスをガウリイは逃さず、斬りかかる。
「もらった!!」
「甘いな・・・剣士よ」
ニースは剣から手を離し、ガウリイの一太刀を紙一重でかわす。
そのままガウリイの懐に入り、ゼロ距離から魔力弾を放つ。
「ぐあっ!!」
吹き飛ばされ、木に激突する。
「このような誘いに簡単に乗るとは情けない・・・」
こいつ・・・強い!!
魔族から感じる独特の気配が弱いから実力を見誤った!!
力や魔力を越える、桁外れの戦闘センスを・・・
その上、今までの魔族達にあった人間を見下した感じがない。
「もう終わりか?・・・久々の強者と聞いたが」
「この後のことを考えたら・・・余力を残したかったんだが・・・
ここからは全力で行くぞ!!」
立ち上がったガウリイが再び剣をかまえる。
「それでこそ手加減したかいがある。」
事実、先ほどの魔力弾が本気のモノだったら吹き飛ばされる所か、
腹に風穴が空いていることだろう。
「闘いこそが我の望み。力の限り戦い抜け、戦士達よ!!」
かなり・・・やばい状況かもしれない・・・
すこし前までの私なら、色々な手が打てていたのだが、
この前の魔王との闘いの時、魔力増幅器であった『タリスマン』を失ったのだ。
おかげで魔族に対する奥の手の一つが使えなくなってしまった。
そうしなければ死んでいたとはいえ、
この状況では結構痛い。頼みの綱はガウリイの持つ、魔剣なのだが・・・
「ハアッ!!」
ガウリイが一気に接近し、袈裟切りに斬りかかる。
ニースはそれを剣で受け止めようとしていた・・・
(いける!!)
私とガウリイは同時に思った。
ガウリイの持つ魔剣、『ブラスト・ソード』
この世界に数ある魔剣伝説の中でも最上位に位置する物、
その切れ味は、はっきり言って非常識!!
魔王の五人の腹心と言えどもその攻撃は無視できないモノだった。
並の魔族など剣ごと叩き切れる!!・・・はずだった。
キィィィィィン!!
澄んだ音と共にその剣を難なく止めていた。
「な!!」
「ブラスト・ソードを!!」
ニースは剣を弾き、ガウリイに斬りかかる。
「クッ!!」
紙一重で後ろに飛び避ける。
その剣撃はブレストプレートを紙のように切り裂き、浅く肌を切っていた。
「その程度か・・・つまらんな・・・」
「何!!」
「永き眠りより覚めてみれば・・・嘆かわしい。
人間の戦士の質も落ちたな」
永き眠り?こいつ・・・最近復活したのか?それとも・・・
「なめられてたまるか!!リナ!!」
そうだ、今は奴に集中しないと!!
ガウリイが再びニースと切り結ぶ!!
今度は激しく斬り合う。
「ナルホド・・・やっと本気になったか」
「ああ!!少し剣に頼りすぎたようだ!!」
ガウリイの一方的な攻撃に見える・・・が、
実際に追いつめられているのはガウリイの方だった。
何しろ素人が見たら何が起こっているかわからないスピードの攻撃を全てさばいている。
その場所から一歩も動かずに・・・
急速にガウリイの顔に焦りが見え始めた・・・
この隙に援護のために呪文の詠唱に入る。
今の私の使える呪文で奴を倒せる魔法はない・・・
「大地の底に眠り有る
凍える魂持ちたる覇王
我に与えん 氷結の怒り・・・」
呪文は完成した!後はタイミングを・・・
「ガウリイ!!」
「わかった!!」
ガウリイがニースから間合いを取る、
「今度は何をするつもりだ?」
「覇王氷河烈!!(ダイナスト・ブレス)」
彼女のいる大地に五芳星が描かれ、足下から凍ってゆく!!
これで倒せるとは思わない、一瞬でも動きが止まれば・・・
彼女は下半身まで凍り付いた!!
「ぬるい攻撃だ・・・それ、返すぞ!!」
彼女が持っていた剣が赤く輝くと同時に魔法陣がかき消える。
こちらに向かって一振りしたと思ったら、強い衝撃と共に凍気が私達を襲う!!
剣でダイナスト・ブレスを吸収したの!?
拡散されたため、威力が半分以下であったがかなり効く。
この非常識みたいな強さ・・・郷里の姉ちゃん並かもしれない!!
「考え自体は悪くない・・・
だが残念だったな・・・魔力自体が発想に追いついていない。」
簡単に、覆っていた氷が弾けるようにはがれる。
こいつ!!わざと凍らされて!!
今、ドラグ・スレイブ(竜破斬)を使えばアキトが巻き込まれる・・・
同時に例えドラグ・スレイブ(竜破斬)を使おうとも効果がないような気がするが・・・
くっ・・・タリスマンさえあれば!!
つい、無い物ねだりをしてしまう・・・
「アキトの手助け所じゃないな・・・マジでやばい!」
その時・・・
「グギャァァァァ!!」
戦場に、男の絶叫が響き渡った・・・
(第四話に続く)
あとがき
どうも、ケインです。
アキト君の戦闘は次回になってしまいました。
戦闘ってうまくいきませんね・・・(ただいま猛烈に反省中・・・)
さて・・・前回のクイズの答えは『覇王雷撃陣(ダイナスト・ブラス)』でした。
簡単すぎましたね・・・
ちなみに涼水夢さんの疑問「三人目」とは魔王の腹心の中で、と言う意味です。
さて今回のクイズ、最後にでてきた男の絶叫・・・
これはもちろん魔族のものですが(というかこんなの当たり前でクイズになんないし・・・)
この時、魔族にダメージをあたえた技は何でしょう?
ヒント・・・@DFSではありません
A昂気は使っておりません
B本編でも使いました(北斗に二度ほど)
わかる人には瞬時にわかりますね・・・
わからない人、頑張って下さい。
最後に、八影さん、涼水夢さん(気付かなくてすみません!)
感想どうもありがとうございます!!
代理人の感想
ガァイ!
スゥゥゥゥゥゥゥパァァァァァ
アッパァァァァァァァァァァッ!
・・・・・・え? 違いました?
気合だけは入りそうな技だと思ったんですが・・・・(笑)。
ところで「ニース」って某呪われた島のあの女性神官ですか(笑)?