赤き力の世界にて
第4話「魔族との闘い・・・」
時は・・・アキトと魔族が対峙した所まで遡る・・・
俺の相手はこいつか・・・
見た目は30歳前半、そこそこの美形といえるかもしれない。
しかし、それをうち消す見下した笑い、
少なくとも、友達になりたいと思う奴はいないだろう・・・
「私の名は『ゲイブ』お相手願おうか、異界の人間よ。
・・・クックックッ・・・」
ゲイブと名のった奴は笑いが押さえきれないといった様子で笑う。
「何が可笑しい・・・」
「いや・・・嬉しいのさ!!異界の人間が出す負の感情、
それを味わうことが出来ることをな!!」
負の感情・・・怒り、恐怖、妬みや嫉妬と言ったところか・・・
「そう簡単にいくかな?」
「今までもそんな事を言った人間はかなりいたね、
でも、簡単な事さ!!」
さも嬉しそうに語り出すゲイブと言う奴・・・
「手足を消しただけで簡単に出てくるよ!!恐怖の感情がね・・・
もっとも味わい深いのは、人間のつがいや子供を殺す時かな?
怒り、絶望、恐怖、そして狂気!!これがまた・・・」
「もういい・・・もう貴様は喋るな・・・」
これが魔族というモノなのか・・・
全てを決めつける様なことはしないが・・・
目の前の此奴は、ゆるせん!!
「いいねぇ!!これが異界の人間の怒りの感情か!!」
「ならば・・・」
DFSに刃を発生させる。
「貴様はそれを味わいながら・・・」
15メートル程あった、ゲイブとの間合いを瞬時につめる!!
「死ね!!」
そしてアキトが通り過ぎる・・・
文字で書けば長いように感じるが、
その間、瞬き一つするのがやっとだろう・・・
ゲイブの体が切り裂かれる!!
「剣技・輝竜八閃」
瞬時に間合いをつめ、相手に八撃くわえる。
いわば死殺技、ただし、人間相手の場合である。
「危ないな・・・それが光の剣だったら消滅したかもな・・・」
ゲイブの体が、時を巻き戻したかのように元の戻る。
「少し・・・貴様を侮っていたようだ・・・」
その顔より笑いが消え、
代わりに俺を睨みながら手を前に出した構えをとる。
リナちゃんに物理的な攻撃は効果がないとは聞いていたが・・・
やはりDFSは効かないか・・・
ディストーションフィールドは物理的なものだしな・・・
「次は、恐怖の感情でも出して貰おうか!!」
ゲイブが50センチ程の魔力弾を放つ、
俺にとっては避けることなど造作もないものだ。
「ハアッ!!」
魔力弾が弾けて無数の小さな魔力弾に分裂する!!
タイミングが遅れた!!さすがに避けきれない!!
俺はすかさずディストーションフィールドを張る。
「面白い術を使うな・・・
周りの空間を歪ませて防御するか・・・これならどうかな?」
殺気を感じる・・・上!!
ディストーションフィールドの内側に闇が生じ
そこから魔力弾が出てくる!!
「いかに結界を張ろうとも、内側からなら意味がない・・・」
アレは防御不可能だな・・・
DFSは通じない、ディストーションフィールドは意味がない・・・
どうする?この様子ならフェザーは効かないだろう。
昂気で・・・いや、その前に試してみるか・・・
考え事をしている間でも、魔力弾は無数に降り注ぐ。
左右前後に移動し避けてはいるが・・・
「さあ!そろそろフィナーレといこうか!!
異界の者の恐怖、とくと味あわせてくれ!!」
好き勝手なこと言っているな・・・
「代わりにこれでも・・・」
俺はゲイブに向けて走り出す。
「無駄だ!!お前に攻撃手段はない!!」
無数に飛んでくる魔力弾をまるで雷のような動きで避けていく!!
そしてゲイブに密着する!!
「喰らえ!!」
零距離からの寸剄!!
これに気の力を上乗せして放つ。
相手が精神体の生き物だとすれば、気の攻撃は効果があるはず・・・
そしてこれが効けば・・・昂気が効くということだ。
パァァァァン!!
熟した果実が破裂したような音がした。
「グギャァァァァ!!」
吹き飛ぶどころか・・・体の半身が消し飛ぶとは、
気の直接攻撃はかなり効くようだな・・・
これはアキトの意志力の強さも関係している、
もし、これがリナ達なら相手の魔族は悶え苦しむだけだったろう・・・
「グオォオォォ!!人間風情ガアァァ!!」
かなりのダメージを受けたためか、発音がおかしくなっているみたいだ・・・
というよりも・・・精神体とはいえ、よく生きているな・・・
ゲイブの体がぶれはじめたと思った時、姿が変わった。
顔には口も鼻もなく、あるのは大きな二つの目、
体は青黒い、攻撃的な鎧に見える。
「モウイイ!!貴様ハ死ネ!!」
俺に向かい30センチぐらいの魔力球を放つ、
・・・しまった、この後ろにはブローディアが!!
避けるわけにはいかない!!
「ハアッ!!」
DFSで魔力弾を切る。
「ディストーションフィールドに当たると爆発するから
切れるとは思っていたが・・・大丈夫なようだな」
飛んでくる魔力弾を切り裂き、
空間を越えた攻撃を避けながらゲイブに接近する!!
「とどめだ!!」
「クッ」
ゲイブが影にのまれるように消える・・・
先程の空間移動みたいなモノか!!
俺の後ろの突如闇が湧き出た、そこからゲイブが姿を現す!!
「モラッタ!!ナニ!?ド、ドコダ!!」
奴が後ろに現れる気配を感じた時に、瞬時に奴の後ろに回り込む!!
「これで・・・終わりだ!!」
昂気を纏った手刀がゲイブを貫く・・・
バサッ・・・・
音もなく、少量の黒い塵となった・・・
それが俺がこの世界に来て初めて戦った魔族の最後だった・・・
「見事だ・・・異界の戦士よ」
リナちゃん達が相手にしていたはずの女魔族がそう言ってきた。
リナちゃんとガウリイは!!
・・・よかった、怪我はしているものの、命に別状はないようだ。
「貴殿と手合わせ願いたい・・・」
「出来れば、次の機会にして貰いたいな・・・」
残りの二人はゲイブなんかとは比べモノにならないくらい強い!!
負けるとは思わないが、相手のことをしらなすぎる。
今のこの状況・・・どう転んでもこちらが不利すぎるな・・・
「あんたの相手は私達よ・・・」
「まだ・・・俺達は戦えるぞ!!」
リナちゃんとガウリイが立ち上がる。
確かに・・・まだ余力はありそうだが・・・
「其処までにしておけ・・・人間の剣士と魔術師よ。
今のままでは私には勝てぬ・・・」
「クッ・・・」
悔しいがニースの言うとおりだ・・・今の私達に打つ手はない・・・
「・・・ここは私が退こう。そなた達・・・名は?」
「リナ、よ・・・」
「ガウリイだ・・・」
「テンカワ・アキト」
「そなた達の名、しかと覚えた・・・
リナとガウリイよ、お主達はまだまだ力が伸びる、
次に戦うまでに強くなれ!!
・・・テンカワ・アキトよ、我が名は『ニース』
次に相まみえたときこそ、手合わせ願おう・・・」
「わかった・・・次に会った時にな」
そう言ってニースはかき消えるように姿を消した・・・
この世界でも、北斗みたいな人物に会えるとはな・・・
しかも魔族で・・・
「おやおや・・・予想外の展開ですね」
まだ此奴が残っていたな・・・
「まさかあの『ルビーアイ・ソルジャー』のニースが退くとは・・・
やはり面白い人達だ!!」
ルビーアイ・ソルジャーか・・・二つ名か何かか?
「私も退くことにしますか、今日は観戦者ですし・・・
大変面白いモノも見せていただきましたし・・・」
リナちゃん達の様子を見るかぎり、手は出さない方がいいだろうな・・・
「私はしばらく忙しいですから当分会えませんが、
また会いに来ますよ。大きな闘いと共に・・・その時を楽しみにして下さい」
そう言った後、背後の闇にその姿が消えた。
気配も完全にない・・・去ったようだ。
「クソッ!!手も足も出なかった!!」
「あのニース・・・ただの魔族じゃない、
根本的なモノが違う感じだった・・・」
ここまで私達が相手にならなかったのは魔王を除けば
フィブリゾとガーブ、そしてグラウシェラー以来だ・・・
しかしそれを認めると・・・あいつは・・・5人の腹心並だと言うことになる・・・
「いいじゃないか・・・生き残ることが出来たんだから・・・
死んでしまえば何にもならない、
生きている限り、またチャンスもあるし・・・強くもなれる」
それが・・・俺がナデシコで学んだ事の一つだ。
「・・・そうね、死ななかっただけ運が良かったかもね・・・」
「そうだな、だが・・・次は勝つ!!」
そう、その意気だ・・・心が負けない限り、何度でも立ち上がれる。
「さて、落ち着いたところで・・・昼食にでもしましょうか?」
えらく切り替えが早いな・・・心配は無用だったか?
「そうだな・・・次の町までどれくらいだ?」
「そうね・・・後もうちょっとって所かしら」
なら・・ここでお別れになってしまうな・・・
「さあ、行きましょうか!!」
「おう!!飯だ飯だ!!」
「アキトも一緒に行かない?
色々と聞きたいこともあるし、何より戦ってもらったしね!
奢るわよ!!」
「そうだぞ、アキト。
リナが奢るなんて天変地異が起こるくらい珍しいんだからな」
「行きたいのはヤマヤマだが・・・」
そう言ってブローディアの方を見てみる・・・
「ほら!!あんたのせいであいつがいなくなっちゃったじゃない!!」
『言いがかりだよ〜』
「なによ、あの時ラグナ・ランチャー発射していればよかったのよ!!」
『だから〜、まったく動かないんだってば!!』
「だったらフェザー出して細切れにしてやる〜」
『それも無理だって・・・そんな事したらアキト兄に嫌われるよ』
「大丈夫よ!!あいつも魔族って奴なんだから、効いたりしないわよ!!
ラグナ・ランチャーじゃないと死なないだろうし!!」
『でもさ〜』
「でも、じゃない!!」
相変わらずエキサイトしたまんまか・・・
話の様子なら闘いの場面はモニターしていたようだな・・・
器用と言うか何というか・・・さすがスーパーAIと言ったところか。
「あの二人を置いて行くわけにはいかないからな」
「ん〜〜・・・どうする?動かないんでしょう?」
「ああ・・・一寸したことがあってね」
本当は一寸所じゃないが・・・
「じゃあこうしましょう、アキトとガウリイが
このゴーレムを担いで移動する・・・」
「「無茶を言うな!!」」
「なによ!!根性入れれば何とかなるわよ!!」
だから無茶だって・・・根性入れたって。
「あの〜・・・」
「どうした?ディア」
先程までエキサイトしていたのに・・・いつこっちに来たんだ?
「何とかなるような気がするんだけど・・・」
「何とかなる?どうやって?」
「うん・・・遺跡と一部融合したって言ったでしょ」
「ああ、言っていたな・・・それが?」
『その時、得た情報・・・これはもう知識だけどね・・・
その中に、ボソンジャンプを利用した技術で、
次元の狭間に収納空間を創るって方法があるんだ・・・』
とんでもない技術だな・・・しかし、
「・・・なんだかご都合主義だな・・・」
「私もそう思う・・・融合して知識を得た・・・と言うよりも、
融合によって必要な知識を与えたって感じだし・・・」
知識を与える、か・・・遺跡はこの世界で何かをやらせたいのか?
「ブローディアのジャンプユニットは不調だが・・・大丈夫か?」
「それは大丈夫!!遺跡自体を利用するから、
それにいつでも出てこれるし、コミュニケで話しも可能だし!!」
「そうか・・・それなら安心だ・・・」
後は・・・どうやって自分の世界に戻るかだな・・・
「ブローディアの修理をどうするかだが・・・
応急修理程度は俺でも出来るが・・・ここ迄のを修理するのは・・・」
『それも大丈夫!!ほんの少しずつだけど自己修復しているんだ!!』
自己修復・・・とんでもないな・・・
まあ、遺跡自体何も分からないブラックボックスだからな・・・
「いつまでかかりそうだ?」
「わからない・・・ほんのちょっとずつだから・・・」
まあいい、帰る方法を確保しただけでも安心できる。
帰れるかどうかは別にしてだけど・・・
「あの〜・・・話は終わった?」
「ああ、ごめんごめん!!話は終わったよ・・・」
リナちゃん達には訳の分からない話だったな・・・
「じゃあアキト兄!!私達あっちに行くから!!」
『何かあったら呼んでね〜』
そう言った後、ブローディアは虹色の輝きに包まれ消えた・・・
「じゃあ行こうか!」
リナちゃんはなにやら吃驚しているような気がするが・・・
「え!?そうね・・・って、ガウリイ、起きなさい!!」
「あっ?難しそうな話聞いている内に眠っちまった・・・」
眠ったって・・・立ったまま寝れるなんて器用だな・・・
「ほら、町行ってお昼ご飯にするわよ!!
あなたの事、色々聞かせてもらうわよアキト」
「ああ、俺も色々と聞きたいことがあるし・・・いいよ」
そうして・・・町についた俺達は遅めの昼食をとりながら、
それぞれの情報を交換した・・・
(第5話に続く)
あとがき
どうも、ケインです。
最近色々と忙しいので遅れてしまいました。
暑いって大変ですね・・・溶けそうですよ・・・
さて正解ですが『零距離の寸剄』でした。
ちょっと難しかったかな?
では次の問題。
次の話でリナがとある武器を使います。それは何でしょう。
ヒント @本編の小説でも出ました。初めては5巻です。
Aミルガズィアとメンフィスも感心する物。
Bあれって武器か?
C最終ヒント・つっこみ用
4番でわかる人にはわかりますね・・・考えてみて下さい。
それと、今後出番があるゼルとアメリアですが、二人の関係をどうしようか困っています。
感想を書いて下さる方は親友と恋人未満、どっちが良いか書いて下さい!
最後に、リンさん、八影さん、犬鳴本線さん、感想どうも有り難うございます!!
これは改訂版です。
鋼の城さんから寸剄のご指摘を受け急遽書き直しました。
「なら、気をまとったパンチでも良いんじゃないのか?」
と思われるのでしょうが、技を使った方が格好良いという偏見で使わせてもらいました。
聞いた感じだと気を使っていると思えますからね。
代理人
・・・・・・・・・・・・・・・・(現在溶けてます)。