ガウリイとカンヅェルが死闘を繰り広げようとする少し前・・・・
赤髪の二人の美女が対峙していた・・・・
二人から受ける印象はかなり違う・・・・
リナからは生きる活力!というべきか、太陽の如き生命力の輝きが見られるのに対し、
マゼンダからは、全ての生命を凍えさせる絶対零度の風・・・・という感じがする。
その正反対な二人が、真っ向から視線を交えていた!
「こうやって相対するのは三回目かしらね・・・・」
「そうね・・・運命というべきかしら。一度目は偶然、二度目は勧誘、三回目は・・・・・・貴女を殺すわ」
「はいはい・・・・そう言ってくる魔族は掃いて捨てるほどいたけどね。生憎ながら成し遂げた魔族はいないわよ」
「そう?だったら私は記念すべき一人目ね。最初で最後の・・・・・」
「できるもんならやってみなさい・・・今度はゼロスのヤツがいないから思う存分できるわよ」
「フン!それではお言葉に甘えて・・・・・・嬲り殺しにして上げるわ!」
マゼンダはそう言うと、右手を頭上にかかげ、リナに向かって振り下ろした!
それと同時に、マゼンダの手の内より、五本の糸のように細い何かが飛んだ!
リナの動体視力では飛来するソレを見切ることはできなかったが、
過去、マゼンダと相対したときの経験で、ソレがマゼンダの髪の毛だと直感した!
五本の髪の毛は、リナの周囲に突き立った!
それぞれの髪の毛の位置は、リナを中心とした五紡星になるよう投擲されていた!
マゼンダが冷たく笑う・・・・・同時に、リナも『力ある言葉』を口にする!
(また魔力を封じるつもりね・・・・・まったく・・・・・
同じ手が二度も通用するって思っている時点で、あんたは私を舐めてんのよ!!)
「炸弾陣っ!!」
ドゴォォォーーーーン!!!
リナの周囲の大地が爆発したように巻き上がる!
突き立った髪の毛も、巻き上がった土砂に飲み込まれて姿を消した!!
「なっ!?!」
自分の思惑が外れたことに焦るマゼンダ!
驚きを押し隠し、土砂によって姿を見失ったリナに向かって舌打ちすると、
リナの居た方向に右手を突き出し、力任せに巻き上がった土砂を吹き飛ばす!
正に力任せ!リナもろとも吹き飛ばそうという気なのだろうか、土砂はもの凄い勢いで消し飛んだ!!
だが、その消し飛ばした土砂の中には、リナの姿はない!!
「いない!?一体何処に・・・・・・・上!!」
「てりゃぁぁーーー!!」
リナの気配を感じ、上を向いたマゼンダの目に、左足で跳び蹴りしてくるリナの姿が映った!!
迎撃するには時間が無く、マゼンダはリナの跳び蹴りを右手で掴み、
左手に溜めた魔力弾を叩き込もうと、後ろに振りかぶる!
その次の瞬間!マゼンダは左の首筋に衝撃を受け、右に向かって吹き飛ばされる!!
完全に自由だったリナの左足が、マゼンダを横合いから蹴り飛ばしたのだ!
「クッ・・・・魔導士が体術を使うなんて・・・・非常識ね」
「ま、戦士にして魔導士たる私だからこそ何だけどね。(といっても、姉ちゃん仕込みなんだけど・・・・)
それにしても平気そうね・・・・魔皇霊斬じゃ、あんまりダメージがなかったかな?」
リナはそう言うと、ブーツのつま先で、トントンと二度ほど大地を蹴った。
ブーツは、薄く、赤い魔力光を灯している・・・・まぎれもなく、魔皇霊斬をかけた状態にあった。
リナは、ショルダー・ガード等の魔法効果のある物以外の着衣に、魔皇霊斬をかけていたのだ。
これにより、リナの服は下手な鎧より魔法防御力が高くなっている。
もし、マゼンダが魔力弾を零距離で叩きつけたとしても、リナはさしたるダメージを受けることは無かったのだ。
「いいえ、結構効いたわよ・・・・・おかげで目が覚めたわ」
マゼンダは前髪を後ろに流すように掻き上げると、殺気がこもったもの凄い目でリナを睨んだ!
「あっそう。ついでに永遠に眠ったら?裂閃槍!!」
「その程度の呪文・・・・貴女こそ寝ぼけ―――――ッ!!」
リナの手加減もない本気の裂閃槍は中級とて見過ごせるものではない!
それを知らず、裂閃槍を素手ではらったマゼンダは、思わぬ威力に腕を抱え込む!
(さっきの私を舐めた態度、行動、そして今回の不注意から推測すると・・・・・
少なくとも、数ヶ月前までの私の実力しか知らないようね)
リナは早口で呪文の詠唱を済ませながら、マゼンダの自分への認識の低さを確認した・・・・
ならば、そこに付け入る隙は充分にある!そう考えたのだ。
「誰が寝ぼけてるですって?」
「こ、小娘が・・・・いい気になるんじゃないよ!!」
マゼンダの赤い髪がうねり、両手の爪が鋭く伸びた!!
爪が伸びた右手をかかげたマゼンダは、リナに向かって容赦なく振り下ろした!
爪の軌跡にそって赤黒い魔力刃が発生し、リナに向かって飛翔する!!
「ゲゲッ!!」
リナは慌てて四本の魔力刃を避ける!!
リナの居た所を通り過ぎた魔力刃は、進攻先にあった木を縦に斬り裂きながら森の奥へと飛んでいった・・・
縦方向に五つに分断された木の断面を横目で見ながら、リナは背筋を凍らせた。
(あっぶな〜・・・・いくら服に魔皇霊斬かけてても、これじゃあ何の役にもたたないわ。
布地じゃなくて、あの合金なら何とかなるかもしれないけど・・・・ごつい鎧を着るのはちょっとね・・・・・)
そんな事を考えているリナを余所に、マゼンダは再度爪を振るった!
しかも、今度は縦ではなく横方向!
「なんのぉ!!」
リナは咄嗟にしゃがんで、魔力刃をやり過ごす!
しかし、マゼンダの攻撃が速かったためか、髪の先を少し切られたのを、リナは伝わってくる感触で理解した。
「おのれ!人が大切にしている髪を!髪は女の命という言葉を知らんのか!このおばさん魔族!」
「誰がおばさんよ!胸のない小娘が!」
「人のこと小娘呼ばわりするところがおばさんだっていうのよ!!」
次々に襲いかかってくる魔力刃を飛んだりしゃがんだりして避けながら、リナはへらず口をたたく!
なにもリナは本気で言い争いをしているわけではない。
こうやって相手の精神を逆なでし、興奮させて大きな隙を作り出そうとしているのだ・・・・・・たぶん。
「鬱陶しい!!裂閃砲!!」
リナの手より放たれた光線が、真っ直ぐにマゼンダに向かう!!
斬り裂くつもりなのか、飛んでくる光線に向かって爪を振り上げるマゼンダ!
光線がマゼンダの手前まで迫り、今にも爪が振り下ろされようとした次の瞬間!
「ブレイク!!」
リナの合図で光線が弾け、マゼンダの方向に向かって閃光を浴びせる!!
元は強力な精神攻撃の光。閃光となって辺りを無差別に照らすような攻撃に変化したとはいえ、
精神生命体である魔族には、並以上の効果があった!
といっても、さすがに中級魔族の中位・・・・いきなり熱湯をかぶせられた程度でしかない。
が、リナの次の一手につなぐ役割には充分であった!!
「覇王氷河烈!!」
リナの魔術により、マゼンダは分厚い魔性の氷に閉ざされる!!
その魔性の氷は、内包したモノを滅ぼすため、自らも四散する!!
だが、マゼンダとて中級魔族!ダメージを受けつつも、内側から魔性の氷を打ち砕く!!
「クッ!!この程度の魔法で、私がどうにかできると思っているのか!」
「全然!もうすぐ覇王が滅んで使えなくなるからね!使い納めのつもりよ!!覇王雷撃陣!!」
マゼンダの周りに光の五紡星が描かれ、それぞれの頂点より雷が発生し、
中央にいるマゼンダに向かって襲いかかった!!
「アアアアアーーーー!!!」
先のダメージのため、逃げ遅れたマゼンダは、まともに覇王雷撃陣の雷撃を喰らった!!
雷はマゼンダに絡みつき、激しい閃光を発する!!
悲鳴を上げていたマゼンダは歯を食いしばると、赤黒い光を纏わせた爪で、雷ごと魔法陣を断ち切った!!
だが、すでにその時には、リナは次の手・・・・強力な呪文の詠唱に入った!!
「黄昏よりも暗きもの 血の流れよりも赤きもの
時の流れに埋もれし 偉大なる汝の名において 我 此処に闇に誓わん・・・・・・・・」
「竜破斬!?させるものか!!」
さすがのマゼンダも、この状態で竜破斬を受け止める気にはならないらしく、
必死の形相でリナに向かって飛び掛かった!
しかし、リナにとって幸いと言うべきか・・・・・・
度重なるダメージを受けたマゼンダの動きは鈍く、その上、二人の間合いはかなり開いているため、
マゼンダが全力で飛び掛かっても、リナの呪文の完成の方が若干早いだろう・・・・
その事はマゼンダも解っている・・・・だが、その表情は若干余裕があった!
(いくら竜破斬の発動時に、強力な魔力障壁が発生しようとも、
この距離で竜破斬放てば威力の余波でリナ・インバースもただではすむまい!!)
マゼンダはそう予想した・・・・事実、マゼンダの言っていることは嘘偽りはない。
この距離で、リナが全力の竜破斬を放てば、間違いなくリナは巻き添えを喰らうだろう。
いくら魔力障壁・・・・・魔術発動時に発生する、目に見えない魔力の壁・・・が強くなろうとも、
至近距離で放たれた竜破斬の高エネルギーを遮断できるほどのモノではない。
しかし・・・・リナの口調には迷いがない!それこそ、マゼンダ以上に余裕があった!!
「我の前に立ちふさがりし 愚かなる者に 我と汝が力もて 孤独な滅びを与えんことを!!!」
マゼンダの顔が困惑に歪む・・・・それもそうだろう、明らかな詠唱の違いがあったのだから・・・・・
だが、それでも赤眼の魔王の力は反応し、リナに集束している・・・・・従来の竜破斬以上に!!
困惑して立ち止まった一瞬・・・・その一瞬が、マゼンダの運命を決めた!!
リナはその一瞬を見逃さず、魔術を発動させる『力ある言葉』を言い放った!!
「竜滅斬ッ!!!」
マゼンダの足元から、眩いほどの赤い閃光が発生する!!
その赤き閃光は渦巻きながら集束し、一本の光の柱となってマゼンダを包み込んだ!!
見た目的には、赤い色の崩霊斬といったところだろう・・・・が、威力は桁違いらしい。
普通の竜破斬、崩霊斬ではダメージを受けても、そうそう滅びることのない中級魔族が、
竜滅斬の赤い光柱の中で、為す術もなくその身を崩壊させたのだ・・・・
先にダメージを受けていたためか・・・・・それとも、竜滅斬の威力は規格外なのか・・・・
マゼンダは絶叫を上げる暇もなく黒い塵となった・・・・そして、その塵すら赤い光の中で跡形もなく消滅した・・・・
後に残ったのは、赤い光の径と同じ大きさの、底が見えない程の深い穴だけだった・・・・
「うわっ・・・・・中級魔族のマゼンダが一瞬で滅ぶほどの威力・・・・・・またとんでもない魔術ね・・・・」
大きな穴を覗き込んでいるリナの背中に冷や汗が流れた・・・・・・
そんなリナに、戦いを終わらせたガウリイが背中から声をかけた。
「リナ、怪我はないか?」
「ガウリイこそ平気なの?」
「ああ、別にこれといって怪我はない・・・少々疲れたけどな。それにしても・・・・・・」
ガウリイも、リナの横に並んで穴を覗き込む・・・・
「一体全体・・・・今のは何だったんだ?」
「簡単にいえば、竜破斬を個人用に改良したものよ。威力はご覧の通り・・・
名前も変えてね、竜滅斬・・・・つまり、竜を滅ぼす術というわけ」
竜破斬・・・・この世界の魔王『赤眼の魔王・シャブラニグドゥ』の力を借りた魔術・・・
対象となるモノの精神をズタズタに破壊する強力な魔術。
この魔術によって起こる大爆発は、精神世界面で発生したエネルギーが、こちらに漏れ出たにすぎない。
そして、竜破斬を対個人用に改良したという竜滅斬・・・・
これも当然、赤眼の魔王・シャブラニグドゥの力を借りた黒魔術の一つ。
原理、魔術構成、詠唱もほぼ同じ・・・ただ、二つの魔術・・・・唯一に違いにして絶対的な違いとは、
集まったエネルギーを相手にぶつけ、余剰エネルギーを物理的な大爆発として逃がすか、
全てのエネルギーを一点に集束させ、威力の余波を光の柱として逃がす・・・それだけの違いにすぎない。
付け加えるならば、その光の柱自身も精神世界面に干渉するエネルギーのため、
竜滅斬をかけられた対象は、二度に渡って精神に攻撃されることとなる。
高エネルギー攻撃の竜破斬・・・その破壊力を一点に収束させる。こう云えば、至極簡単のように思えるが、
この世界で、魔術というモノを理解し、使用する者にとって・・・それは絶対に信じられないことだろう。
それほど、竜滅斬という魔術は(あらゆる意味で)非常識極まりないのだ。
「お前さん、またとんでもない魔術を考えたな・・・・・・」
「別に私が考えた訳じゃないわよ。考えたのは水竜騎士団の魔導士達。
といっても、開発途中で放棄されてたものを完成させたのはエル先生なんだけどね」
今のリナの言葉に嘘偽りはない・・・・今現在の形に完成させたのはエルネシア本人。
ただ、エルネシア本人が手を出す前までに、研究は八割方完成していたのだ。
完成していなかった理由は二つ・・・・二つとも、至極簡単問題であった・・・・
一つは必要性がなかったから・・・元々、超強力な竜破斬を、改良する意味がなかったのだ。
人にとって、竜破斬の最大の利点は余剰エネルギーでの爆発が主だったのだ。
要するに攻城魔術・・・戦略級魔術と云うべきか・・・どちらにしろ、人一人に対して使うものではない。
ただ単に、人を殺すというのであれば、火炎球の一撃で、おつりが来るくらいなのだから・・・・
そしてもう一つ・・・・それは、先よりももっと単純。
それを扱えるほどの集中力と、魔力許容量を持つ者がほとんどいない・・・という事だった。
竜滅斬は、竜破斬以上に魔力許容量を必要としているのだ。
そもそも、竜破斬を扱うために必要な魔力許容量を持つ者が、ほとんどいない・・・・
魔導士の集まりである水竜騎士団ですら、竜破斬を扱えるのはエルネシアを含めて四人。
ゼフィーリア魔導士協会に登録しているリナを合わせても、五人ほどなのだ。
(余談だが、竜破斬の使い手が五人と云うだけで、他の国にとっては洒落になっていない・・・
ほとんど、核兵器かその類に価するほど危険・・・・・それぐらいの認識がある)
エルメキア帝国といった大きな国ではともかく、弱小の国では、一人もいないというのがほとんど・・・
というか、居ないというのが、至極当然なのだ。
そんな現状の上、完全に構成を理解し、人並み外れた・・・否、人を遙かに越すほどの集中力が必要。
使い手が居ない・・・・というのも、ある意味当然だろう・・・・
かくして・・・竜滅斬は、暴爆呪や烈閃矢と同様、
完成はしているものの、欠陥がある魔術・・・として、扱われる存在になったのだ。
ちなみに・・・精鋭ぞろいの水竜魔導騎士団でも、竜滅斬を使えるのはリナとエルネシアの二人だけ。
竜破斬が使える他の三人は、集中力と魔力許容量が足りなかった。
「・・・・・・・と、まあそんなところだけど・・・・・やっぱり聞いてないわね」
「そんなこと無いぞ〜・・・・ちょっと寝かけたけどな。
要するに・・・・あれだ。爆発しない竜破斬なんだな?」
「途中をもの凄く端折ってるけど・・・・ガウリイの頭で、それだけ理解すりゃ上出来でしょうね」
「ハッハッハッ!任せておけ!」
「褒めたんじゃ無いっつ〜の・・・・」
リナはこめかみを軽く押さえつつ、深い溜息を吐いた・・・・・
「しかしなんだな、使うたびに底が見えない程の大穴が空いてちゃ近所迷惑だな」
「大規模破壊の竜破斬よりはましだと思うけどね。それに、本当なら大穴なんて空かないはずだし」
「どういうことだ?」
「早い話、制御の失敗。上に逃がすはずだったエネルギーを、下にも逃がしちゃっただけよ」
「おいおい・・・」
「ははは、ま、結果オーライと言うことで・・・それよりも・・・」
そこで、ふと思いついたように、かつて『瘴気の森』と呼ばれた森を見た。
「姉ちゃん達遅いわね・・・・もしかして手こずっているとか?」
「いや、それはないな。絶対に」
ガウリイにしては珍しく、即断言する。
リナも、ガウリイの意見を否定することなく、至極当然といわんばかりに頷いた。
「そうよね、あの四人なら、あれ全部が中級の上位魔族でも、あっという間に片づけそうだし・・・・
じゃなんで遅いのか・・・・・もしかして・・・・・姉ちゃん、わざとやられたりしてたりして・・・・」
「おい、リナ・・・・・・」
「そして、『私はもうダメ、アキト君・・・・最後に、私の願い・・・聞いてくれる?』なんていってたりして」
「リナ・・・それ以上は・・・」
「それで、その実はかすり傷程度だったっていうのなら面白いわね!」
「リナ!!」
「何よさっきから。うるさいわね」
「それ以上は言わない方がいいぞ・・・・」
「大丈夫だって。聞いちゃいないわよ。それに、姉ちゃんの気配はしないし」
「そう・・・でもね、気配を消しているという選択肢はあるでしょ?」
リナは、背後から聞こえた声に、身体を硬直させた・・・・・
体中に冷や汗・・・・というか、脂汗が大量に流れ、顔色は真っ青になっている。
ギ・ギ・ギ・・・・・という擬音でも聞こえるようなぎこちない動作で、頭を後ろに向けるリナ・・・・
そこには・・・・・いつになく優しい笑顔を浮かべる、実の姉の姿があった。
「ははははは・・・・・ね、姉ちゃん、いつからそこに・・・・」
「いつから背後に・・・という意味でなら、ガウリイさんが近づいてからすぐに・・・・
この場に・・・という意味でなら、私達が森に入ってすぐによ」
「ルナが気をつけろといっていたのでな、実力を出させる前に片をつけてやった」
「森に入ってきた順に即ね。それにしても、弱すぎるような気もしたけどね」
ニース、メアテナが人魔との戦いを簡潔に説明した。
つまり、自分達の戦いは最初から見られていた・・・・・・という事実に、リナは引きつった笑いを見せた。
戦闘で、無様なところでもあろうものなら、故郷に帰ってから地獄の特訓が待っているだろうから・・・である。
リナは、そんな事を思いつつ、ルナの顔色を気にするように窺った。
「あの〜・・・・・・姉ちゃん?」
「闘い方はまずまずね。駆け引きも上等。ただ、相手を怒らせすぎないように気をつけなさい。
怒った相手の攻撃は単調でも、突拍子もない行動にでる場合もあるからね。
それから、相手が消えたからって油断しないように。擬態かもしれないしね」
「解った。(ほっ・・・・この様子だったら、地獄の特訓はないわ)」
「・・・・・・・・・・・・・・・帰ったらお仕置きね」
「なぜ!?」
「私は姑息な真似をしないから・・・先程の話で、リナが私をどういった目で見ているか、それがよく解ったわ」
「ううう・・・シクシク・・・帰りたくないよぅ・・・・・」
「ま、それはこれからの働きによって軽減するとして・・・・」
「よっしゃぁーーー!!」
俄然やる気を出すリナ!
ルナとガウリイは、そんなリナの様子に苦笑していた・・・・・
「リナちゃんもやる気を出したし・・・そろそろ行きましょう。アリスちゃん達に追いつかれますよ?
後ろが何かもの凄いことになっているようですし・・・・・・」
今まで黙っていたアキトの言葉に、リナ達は後ろに向かって振り向いた。
そこでは、雲霞の如く空を埋め尽くしていた魔族達が、赤い閃光に飲み込まれて消滅しているところだった!
空高くに発生した赤い閃光は、あまりの大きさゆえに地表にまで達し、大地の一部を消滅させる!!
「すっげぇ・・・・・」
「凄く大きい・・・花火か何かみたい」
ガウリイとメアテナが、いまいち緊張しきれていないような口調で呟く・・・・
その隣にいたリナは、今だ空を覆う赤い閃光を見ながら、全身に鳥肌を立てていた。
「なんなのよ・・・・竜破斬の数倍は威力がある・・・・・・
エル先生が使ったんでしょうけど・・・・・人間の使える魔術の枠を越えすぎてるわ・・・・・」
魔術としての破壊規模では、不完全版重破斬を越えている・・・・・リナはそう予測した。
その考えを裏付けるように、空にいた魔族は、その八割以上が消滅していた・・・・
周りにあった雲も無くなっている。消滅したのか吹き飛んだのかは解らないが・・・・・
「エルの隠し手ね。以前に聞いたことがあるけど・・・・見ると聞くとでは大違いね」
「凄まじいな・・・・神魔戦争時でも、あれ程の破壊力があるモノを扱う人間はそうそういなかったぞ・・・」
「・・・・・確かに、あれは凄いな・・・・(時空跳躍門でも、間違いなく消滅するな・・・・・・)」
「早く行きましょう。あの四人が頑張っているのだから・・・私達はさっさと覇王でも倒すことにしましょう」
「そうですね。みんな、行こう」
アキトの言葉に皆は頷くと、覇王の元へと向かうために、森の中へと入っていった・・・・
アキト達が森の中に入ってすぐ・・・森に濃い瘴気が充満した・・・・
覇王・グラウシェラーの元に、アキト達がたどり着くには、まだいくつかの難関があるようだ・・・・
(第四十二話に続く・・・・・)
―――――あとがき―――――
どうも、ディアちゃんで〜す。今回の話はどうだったかな?
題名にある『因縁』というのは、リナさんとガウリイさん絡みのことだったんだけど・・・みんなわかったかな?
感想をくれた中で、一人だけ当てた人がいたけど・・・みんなはどうだったのかな?
さて・・・次回はアキト兄達はお休み。残された四人の奮闘が中心なんだって。
そういや、あの四人がまともに闘うところなんて、今まで無かったよね・・・
ルナ姉やアキト兄が認めてるし・・・かなり強いのかな?
レニスさんはガウリイさんと同等らしいし、エルネシアさんはリナの先生だし・・・なんだか非常識そうだね。
それでは最後に・・・K・Oさん、15さん、一トンさん、NTRC直さん、v&wさん、ナイツさん、ホワイトさん、
やったさん、逢川さん、時の番人さん、絶望さん、大谷さん、浅川さん、谷城さん、遊び人さん、
ノバさん、GPO3さん、零さん、秋さん。
感想、ありがとうね〜!思いっきり感謝してるよ!!
それでは、次回『ゼフィーリアの守護者達』で会いましょうね!!
管理人の感想
ケインさんからの投稿です。
・・・ゼロスの事、言える立場じゃないだろ、アキト君(笑)
彼も十分、便利に使われてると思うけどなぁ
それにしても、今回の因縁はリナとガウリイでしたか。
なるほど、確かに因縁深い相手でしたね。
次回はエルネシア達の戦闘だそうですが、どんな戦いになるのでしょうか?