赤き力の世界にて・・・

 

 

 

 

 

第42話「ゼフィーリアの守護者達・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

ルナ達がサイラーグに向かって疾走していった後・・・・

その場に残されたエルネシア、アリス、ガイウスにレニスの四人は、本格的に魔族との戦闘に入った!!

 

ルナ達のために、敵中に切り込んでいたガイウスとレニスの二人組は、

そのまま戦闘を乱戦に持ち込みながら、アリス達に声をかける!

 

 

「エルは魔術で攻撃!アリスはエルの護衛を主に、魔族の迎撃!!

私とガイウスはこのまま魔族の大群に切り込む!!」

 

「妥当な案だ!」

「それでは、わたくしは上空の敵を主に迎撃しましょうか・・・・・アリス、お願いしますよ」

「まっかせておいて!」

「では・・・・」

 

 

エルネシアは周りの雑魚ザコをアリスに任せると、呪文の詠唱に入った!!

 

 

「黄昏よりも暗きもの 血の流れよりも赤きもの 時の流れに埋もれし・・・・・・」

「いきなり竜破斬ドラ・スレ!?最初から飛ばしてるね!」

 

 

呪文の詠唱に入っていたエルネシアからの返事はない。

しかし、その表情は、アリスの言葉に応えるように笑っていた。

 

 

竜破斬ドラグ・スレイブ!!」

 

 

上空に赤い光が集束し、その直後、大爆発が起こった!!

その大爆発は、五十近くの下級魔族を巻き込み、この世界から完全に消滅させた!!

 

だが、それほどの魔族を消滅させたにもかかわらず、魔族は怯むことなく、逆に襲いかかってきた!

それこそ、エルネシアの狙いの一つだったのだが・・・・

 

迫ってくる魔族を見たアリスは、さも面倒くさそうな表情をしていた。

 

 

「さすがにこの大群相手だと、竜破斬ドラ・スレ一発程度は焼け石に水か・・・・・」

 

 

二本の短剣ダガーを逆手に構え、魔族を片っ端から斬り裂きながら、アリスはエルネシアを見た。

丁度その時、エルネシアは地表に向かって手をつきだしていた!

 

 

竜破斬ドラグ・スレイブ!!」

 

 

とんでもない早口で詠唱をすませたエルネシアは、躊躇なく魔術を発動させる!!

エルネシアの意志に従い、地表の向かって赤い光が集束し、大地を巻き込みながら大爆発を起こした!!

爆風が、エルネシアとアリスの髪を激しくかき乱す・・・・・・

 

だが、そんな乱れた髪の状態でも、戦う女性特有の美しさというのであろうか・・・・

魅力が衰えることはなく、逆に力強い美しさを際立たせている感じがある。

 

 

「いきなり二連発!かなり本気でやるつもりだね!エル!」

「もちろんです。アキト様とルナ様のため、出し惜しみはしませんよ」

「言うねぇ!でも、魔力は持たないでしょ、ちょっと休んだら?」

「そうですね・・・小技で少し数を減らしましょうか・・・・」

「そうしたらいいよ・・・その間、アタイも少し暴れるからさ」

「そうですか・・・なら、私が補助しますからご存分に」

「頼んだよ・・・・じゃぁ、ひとつ行ってみようか!!」

 

 

そう言うと、アリスは低く腰を落としながら短剣ダガーを握りしめ・・・・エルネシアの前から姿を消した。

そう、姿を消したのだ。忽然と・・・・・

エルネシアは、それが超高速移動のためにそう見えただけと知っているので、驚いた様子はない・・・・

 

 

「いつにも増して、速いですね・・・・わたくしも、負けてはいられませんね・・・・」

 

 

襲いかかろうとしている魔族が引き裂かれ、消滅したのを見て、エルネシアは更にやる気を出した。

その姿を消したアリスはというと・・・・・一陣の風の如く、魔族と魔族の間をすり抜けていた!

 

アリスが通り過ぎるたびに、魔族達は引き裂かれ、次々に消滅してゆく!!

傍目からは、緑と青の疾風かぜが通り過ぎた後、魔族が勝手に消滅してゆくようにしか見えない!!

 

相手にしているのは下級とはいえ、歴とした純魔族・・・・物理攻撃などまったく効果はない。

そんな相手に対して、ほぼ瞬殺できるアリスの技術と、短剣ダガーの威力は凄まじいものがある。

さすが、空竜騎士団長に代々継承されている物の一つ、魔法短剣マジック・ダガーというところか・・・・

 

 

「私も頑張ってフォローしないと・・・・・烈閃砲エルメキア・フレイム!!」

 

 

エルネシアから放たれた一条の光の奔流が、直線上にいた三体の魔族を貫いた!!

他の魔族達は、その光の奔流を避けたため、一筋の道ができる。

その道をアリスが疾風かぜのように駆け抜け、先程よりも大量に魔族を消滅させる!!

 

アリスが攻撃、エルネシアがその援護・・・・・なかなかいい感じの組み合わせだった。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

エルネシアとアリスが、もの凄い勢いで魔族を倒している間、

男性陣二人も、お互いをフォローしつつ、負けず劣らずの勢いで魔族を駆逐していた!!

 

 

「おらおらおら!!」

 

 

拳に氣を集束させたガイウスは、襲いかかってくる魔族を次々に殴り飛ばしてゆく!!

さすがに、一撃で・・・というわけにはいかないが、二撃目で完全に倒している。

 

レニスも、火竜の剣ヴラバザード・ソードを操り、下級魔族を一撃の下に、灰にしていた!

剣より発せられる炎が、瘴気を焼き、魔族の動きを鈍らせる!

その鈍った動きは、レニスにとってもはや止まっているも同然といった感じだった!!

 

 

「ハァァァアッッ!!」

 

 

レニスに一撃が、魔族2体の胴をまとめて薙ぎはらう!!

分断された魔族の身体は、地に落ちる前に燃え上がり、灰となって飛び散る!!

 

 

「熱いねぇ!こりゃ俺も負けてられねぇな!!」

 

 

ガイウスを中心として、風が渦巻き、大きな旋風を形成する!!

それは、ガイウスの身体の氣が大きくなるに従い、強さも規模も大きくなってゆく!!

 

もし、この場にアキトがいれば、大気に満ちる氣の流れを見て、驚いただろう。

自分とは比べ物にならない、ガイウスによって共鳴、増幅された大気中の膨大な氣の総量に・・・・・・・

そして・・・・氣の光が織りなす、壮大な奔流に!

 

下級の魔族は、その力の奔流に動きを無理矢理止められる!!

 

 

「行くぜ!地竜式 氣功闘方術 空破!!

 

 

ガイウスが氣を篭めた左腕を一振りする!!

それによって生じた氣の風は、空破によって増幅され、十数体もの魔族を吹き飛ばす!!

 

 

「もう一丁!!」

 

 

今度は右腕を下から上に・・・アッパーカットのように突き上げる!

すると、大地すれすれより吹き上がった衝撃波が、飛ばされた魔族に襲いかかり、消滅させる!!

1、2体ほど生き残ったが、それもほぼ消滅寸前といった感じがある!

 

 

「ニンゲンゴトキガァァーーー!!」

 

 

最後の足掻きだろうか、消滅寸前の魔族が魔力弾を撃ち出す!!

それと同時に、周りの魔族達も魔力弾を次々に撃ち込み始めた!!

 

かなりでたらめに撃ったのか、それともわざとなのか、最初の魔力弾は大地へと炸裂し、

爆発によって起こった煙と土煙が、ガイウスの姿を覆い隠した!!

 

 

ドドドドドドォンッ!!!

 

 

ガイウスがいた辺りに無数の魔力弾が殺到し、炸裂した!!

普通の人間が、まともに喰らえば肉片一つ残らないほどの攻撃・・・・・・・

 

突如吹いた風が、視界を覆っていた煙をはらった・・・・

そこには・・・・・背中に背負っていた盾を構えた、傷一つないガイウスの姿があった!!

 

 

「おっかねぇ奴等だな、おい・・・・・・地竜の盾こいつが無かったら死んでたぞ」

 

 

よく見ると、ガイウスの周りには半透明な光の膜ができている・・・・・

地竜の盾によって作られたそれが、魔族の魔力弾を遮断したのだろう。

大地も、光の膜を境に、その中身を剥き出しにさらけ出していた。

 

ガイウスは盾を背中に背負い直すと、指の関節をバキバキッとならした!

 

 

「てめぇら、覚悟はいいだろうな・・・・殺すつもりなら、殺される覚悟もしろよ・・・・」

 

 

その顔に獰猛な笑みをうかべるガイウス・・・

その時、ガイウスの知覚に、次々に魔族を駆逐してゆくアリスの氣を感じた。

 

 

(お?アリスも参戦か!なら・・・ここは一つ、年長者として見せ場を作るべきだよな・・・)

「てめぇ等ちょっと邪魔だ!」

 

 

ガイウスは空破で周りの魔族を吹き飛ばすと、再び氣を練り上げ、今度は大地の氣と呼応させる!!

大地の氣の流れが活発となり、ガイウスの足元へと集まり始める!!

 

 

「アリスにレニス!!魔族達こいつらの動き止めてやるから、思いっきり斬り込め!!」

 

 

氣を集束させた右の拳を振り上げるガイウス!

その動作だけで、何をするのか悟ったレニスとアリスは、その場から跳躍した!

 

 

「地竜式 氣功闘方術! 地破・爆衝撃!!

 

 

ガイウスが右の拳を大地に叩きつける!!

すると、ガイウスの足元に集まった大地の氣だけが爆発し、その衝撃が大地の上を走り抜ける!!

氣によって作られた衝撃波は、大地の上にいる魔族の精神に直接ダメージを与え、その動きを止める!

さすがに滅ぶまでには至らないが、下級魔族の中位以下には洒落にならない威力!

その衝撃波が駆け抜けた後に、上空に跳び上がり、退避していたアリスとレニスが降り立ち、

それぞれの得物を構えて魔族を駆逐し始めた!!

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

大地に降り立ったレニスは火竜の剣ヴラバザード・ソードを頭上にかかげた!

すると、剣の刀身より大量の真紅の炎が発生し、周囲を赤く染め上げた!!

 

 

「紅蓮の炎よ!魔を斬り裂く刃と化せ!!」

 

 

レニスの剣から発生していた大量の炎は、瞬く間に集束し、巨大な一本の炎の刃となった!!

その炎の刃の長さは、約2メートル半!威力も迫力も並々ならぬものがある!!

(ちなみに、以前、ルナが使っていた炎の刃は、これを参考に、自分なりに改良・強化し、作り上げたもの)

 

 

「灰となり滅せよ!」

 

 

巨大な炎刃を振り回すレニス!!

一振りにより、十数体の魔族が斬り裂かれ、まるで油を吸った紙のように、燃え上がって灰となる!!

 

だが、斬った数が百を超えたところで、魔族が動き出した!

 

(下級といえど、さすがは魔族。ガイウスの足止めが長く続かないとは・・・・・・)

 

動き出した魔族はレニスを引き裂くべく、上空を含めた全方位から殺到する!!

 

(多勢に無勢・・・数が違いすぎる!!久しぶりにやるか!!)

 

 

レニスは、刃となっていた炎の力を解放し、エネルギー波として密集していた魔族を消滅させると、

改めて剣を構え、半分ほど目を瞑りながら精神を集中し、再び刀身に炎を纏わせる・・・・・・

 

火竜の剣ヴラバザード・ソードは、レニスの集中力に比例するように炎を増してゆく!!

そして、発生した炎は、今度は集束せず、全て刀身が吸収してゆく!!

 

 

「ゆくぞ!!火竜式・護法剣術!!」

 

 

レニスが、炎を吸収して真紅に染まった火竜の剣ヴラバザード・ソードを大地に突き刺す!!

すると、大地にレニスを中心とした半径1メートル程の赤い線が浮かび上がる!!

 

 

奥義 火竜・炎舞陣!!

 

 

赤い線より巻き上がった幾重もの炎が螺旋を描き、一本の柱となる!!

 

 

「我が前に立ち塞がりし魔に属するものよ!神炎によって灰塵と化せ!!」

 

 

螺旋を描く炎でできた柱が爆発的に広がり、大地と空に居た下級魔族を次々に消滅させる!!

真紅の炎は三十メートル程広がった辺りで陰りを見せ・・・・すぐさま消滅した。

 

 

「クッ・・・・思っていたより疲れる・・・・やはり、久しぶりにやると勘が鈍るな。

もう少しは広がると思ったのだが・・・・・・欲をかいても仕方がない・・・・・」

 

 

レニスは大地に突き刺さった火竜の剣ヴラバザード・ソードを抜くと、再び刀身に炎を灯した。

少々息切れしているものの、その瞳にある戦う意志は少しも衰えていない!

 

 

「炎よ!集いて邪を打ち据える一条の鞭となれ!!」

 

 

火竜の剣ヴラバザード・ソードから発せられた炎はレニスの言葉通り、刀身より伸びて鞭のようにしなる!!

レニスは炎の鞭を操り、もの凄い勢いで下級魔族を消滅させる!!

 

そう、操っているのだ・・・・・・

まるで炎は意志を持っているかのように不規則に動き、鞭にあるまじき軌道で敵を焼き尽くす!!

それは、鞭というよりも、むしろ炎の蛇・・・・・いや、火龍というべきか。

 

 

「我が炎・・・・敵となりし者を燃やし尽くすまでは消すことなど不可能!!覚悟せよ!!」

 

 

次々と敵を斬り裂き、焼き尽くすレニス!!

火竜騎士団の強さの一端を現すかのような、一騎当千を超えた戦う姿だった!

 

そんな折、闘神の如く戦うレニスの耳に、仲間の声が聞こえてきた・・・・・・

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

時間は少し遡り・・・・

 

 

ガイウスが氣功術によって起こした衝撃波で魔族の動きを止めた時、

レニスと同様に、上空に避難していたアリスも、大地に降り立ち、魔族を短剣ダガーで斬り裂いていた!!

 

(まったく・・・ガイウスも無茶をするね・・・・いきなり地破・爆衝撃あんな技ををやるなんてさ)

 

アリスは心の内で愚痴りながら、動きの止まった魔族と魔族の隙間を疾風かぜのように駆け抜ける!!

その疾風かぜが通りすぎた後、魔族は破裂するようにはじけて消滅してゆく!!

 

しかし・・・・そんな快進撃とは裏腹に、アリスの顔は優れない・・・・・・

 

 

「ああーもう!次から次へと鬱陶しい!!あんたら分裂でもして増えてんの!?

下級とはいえ、こんなに魔族がいるんだったら神に喧嘩でも売って来いってーのよ!!」

 

 

どうやら、無尽蔵に近い程数の多い魔族に嫌気がさしてきたらしい・・・・・

 

だが、アリスの考えていることは、ある意味仕方がないのかもしれない・・・後半部分以外は。

倒しても倒しても終わりの見えない戦いなど、肉体疲労云々よりも、まず精神が疲労する。

今のアリスは、ただ単に面倒臭くなっているだけなのだが・・・いずれは疲れる。精神も、肉体も・・・・・

 

(アキトやルナ姉じゃないからね・・・・アタイ達はまともに一撃喰らえば、はいお終い。

こんな戦いじゃあ、精神が先にまいるよ・・・・まったく・・・・・)

 

アリスは立ち止まり、軽く溜息を吐く・・・・・・

そして、両手に持っていた蒼い光を放つ二本の短剣ダガーを、腰の後ろの鞘に戻した。

 

 

「仕方がないから、ちょこっとだけ本気を出そうかな・・・・・・

今回はアキトの為に戦っているようなもんだし・・・・・少しは張りきらないとね」

 

 

そう言うと、アリスは両手を胸の前で交差させ・・・・勢いよく左右に広げた!!

すると、左右の手・・・・・正確には服の袖口より、一目では数えきれないほどの鋼糸が現れた!

 

 

「さぁ・・・・バラバラになりたいヤツは前にでな!!」

 

 

アリスの両手が少しだけ持ち上げられる・・・・すると、周囲にいた魔族が細切れになる!!

前と左右はいうに及ばず、後方と上空にいた魔族ですら細切れとなって消滅した!!

 

アリスはそれを確認することなく、魔族達が一番密集している方へと足を進めた!

 

 

「コムスメガ!!」

「シネ!!」

 

 

アリスの余裕ある態度が気に入らないのか、魔族達は瘴気の衝撃波や魔力弾を放ち始める!!

だが、それらの攻撃はアリスにとどくことなく、ある一定の間合いではじけ、消滅する!!

 

 

「馬鹿な!!」

 

 

真っ黒いローブを着たような姿をした魔族が、しわがれた声で驚いた!

その間にも、他の魔族が攻撃を加えたりしているが、まったくとどくことはない!

 

 

「死ね・・・・・グハァ!!」

 

 

業を煮やした人もどきの魔族が空間を渡ってアリスの側に姿を現したが、

攻撃を繰りだすよりも先に、煌めいた風が魔族の身体をすり抜け・・・・細切れに変化した!!

 

 

「なぜただの鋼が魔力の塊を断ち、魔族我らを斬ることができる!!」

「ただの鋼じゃないから。ちょっと考えれば分かるようなもんでしょ?」

 

 

虹色に煌めく風が、アリスの周りにいた魔族をなでるように通り過ぎる!

その後には、細切れとなった魔族が、微かな痕跡をこの世に残している・・・・

 

 

(鋼糸一本につき、名のある魔剣一本・・・・・これほど贅沢な武器もないんだけどね・・・・)

 

 

そう・・・・アリスの振るう鋼糸は、一本につき魔剣一本を使っているという代物だった。

魔法剣の力を失うことなく、空竜騎士団の特別な精製法によって造り替えられた鋼糸。

ゆえに、魔族を斬ることができるのは当たり前、魔力弾だって断ち切る。

しかも、その鋼糸は元々の魔力の色を放つため、束ねられた場合、虹の如き煌めきを放っているように見える!

 

 

「さぁ!久々に吹き荒れるよ!死を呼ぶ虹色の風がね!!」

 

 

アリスは体重を感じさせない軽やかな歩調で戦場を渡り、舞っているかのように両手を振るう・・・・・

その度に、虹色に輝く風が吹き、数十の魔族が細切れになって消滅する!!

 

 

その時!アリスは自分を呼ぶ仲間の声を聞いた・・・・・

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

螺光衝霊弾フェルザレードッ!!」

 

 

エルネシアの放った白い渦巻く光弾が、魔族の頭を打ち砕く!!

一撃につき最低一体・・・・堅実に魔族を倒しているエルネシア。

 

すぐさま次の呪文の詠唱に入ろうとしたその時、

遠くで螺旋を描きながら巻き起こる炎の柱と、虹色の輝きが目に入った。

 

 

「あれはアリスとレニスね・・・・その前の衝撃波はガイウスの技・・・・・みんな派手にやっていますね」

 

 

一番最初に、竜破斬ドラグ・スレイブを2発も放った者とは思えない言葉・・・・・

しかし、エルネシアはそれでも抑えながら戦っている・・・・と、本気で思っているのだ。

 

アリス達も、エルネシアが全力で戦っていないことを知っていた。

事実、エルネシアは今だ『奥の手』を使っていないのだから・・・・・・・

 

 

「そろそろ私も、本格的に戦いましょうか・・・・・・・・その前に、この間、改良した魔術を・・・・」

 

 

エルネシアはそう言うと、呪文の詠唱を始めた・・・・・もの凄い早口で!

その早口にあわせて、精神、及び魔力の集中速度も、段違いに速くなる!!

 

 

「光よ 我が手に集いて 深遠なる闇を貫く 一条の閃光となれ!!烈閃弾エルメキア・ブリッド!!」

 

 

エルネシアの突き出した掌に発生した眩い閃光は、一瞬で集束し、光の弾となって放たれた!!

放たれた光弾は、もの凄い勢いで飛び、射線上に居た8体の下級魔族をいともあっさりと貫いた!!

 

 

「なかなかの威力ですね・・・・欠点は、術の制御が難しくなったことですね・・・

まあ、元となった呪文エルメキア・フレイムよりも強力となったので良しとしましょうか」

 

 

そう・・・・今、エルネシアがやったのは、烈閃砲エルメキア・フレイムを一点に集束し、光弾として放ったのだ。

元より遙かに強力になったのか、光弾に貫かれた魔族は全て塵と化している・・・・・

 

 

「では・・・・今度こそ本気で行きましょうか・・・・・霊王崩爆旋ガルク・ルハード!!

 

 

エルネシアの周りから、精神と肉体にダメージを与える爆風が放たれ、周りにいた魔族が吹き飛んだ!!

だが、本当に吹き飛んだだけ・・・一体も倒してはいない・・・

しかし、間合いをあけるという、本当の目的を果たすことはできたようだ。

 

それを確認したエルネシアは、右手で持っていた杖を両手で構えた。

 

その杖は、至る所に何やら複雑な紋様が金色で描かれており、先に透明な水晶クリスタルの球がついている。

紋様以外、特に変わったところはなく、ごく平凡な杖に分類されるだろう。

 

ただ・・・・その真の力・・・・使い方を知れば、その意見はすぐさま一蹴されるであろう。

 

エルネシアは、杖を構えたまま詠唱を素早くすませ、力を解放する!

 

 

烈閃矢エルメキア・アローッ!!」

 

 

力ある言葉カオス・ワーズ』を唱え、魔術を発動させるエルネシア・・・・・

しかし、本来なら現れる光の矢は発生せず、杖の先にある水晶クリスタルの中に小さな光が灯った!

 

エルネシアはそれを確認することなく、そして気にすることもなく、次の詠唱に入っていた!

 

 

「永久と無限をたゆとうし 全ての心の源よ 尽きることなき蒼き炎よ

  我が内に眠りしその力 無限より来たりて 裁きを今ここに!!崩霊斬ラ・ティルトッ!!

 

 

今度は違う魔術を発動させるエルネシア・・・

しかし、今度も先程と同じく、魔術は発動せず、杖の水晶クリスタルの中に、もう一つ光の球が発生した・・・

ただし、今度は青白く光ったものだったが・・・・・

 

そして、やはりそれにも気にせず、エルネシアは次の呪文を唱え終えた!!

 

 

崩霊斬ラ・ティルトッ!!」

 

 

そして、やはり水晶クリスタルの中に、青白い光の球が発生する・・・これで、水晶クリスタルの中には、三つの光が灯ったことになる。

三回とも、未発動・・・・・起こったといえば、水晶クリスタルの中に光が灯っただけ・・・・

 

だが、エルネシアの顔は、失敗して狼狽するといったような表情ではない。

エルネシアは空にいる魔族達に向かって杖をかざす!!

 

 

「内に蓄えられし魔術よ、混ざり合い、新たなる力を創り出せ!霊王光矢斬ティルト・アロー!!

 

 

エルネシアがかざした杖の水晶クリスタルの中にあった光の球が、円を描きながら絡み合うように一つとなる!

そして、出来上がった青白い光球が、眩い閃光を放つ!!!

 

すると、突き出した杖の先の空間より、十条の青白い閃光レーザーが放たれ、

空に浮かぶ魔族の群を消滅させながら、遙か彼方へと飛んでいった!!

 

 

「十本ですか・・・・・今日は調子がいいですね」

 

 

放たれた閃光レーザーによって描かれた、消えてゆく軌跡を見ながらエルネシアは呟いた・・・・

 

先程の呪文・・・・霊王光矢斬ティルト・アローとは、崩霊斬ラ・ティルト2発と、烈閃矢エルメキア・アローを、杖の水晶に蓄え、融合させて創り出した融合呪文。

ゆえに、その威力は崩霊斬ラ・ティルト2発を融合させたものに比例し、放たれる閃光レーザーの数は、烈閃矢エルメキア・アローの本数となる。

 

普段のエルネシアが烈閃矢エルメキア・アローを使った場合、放たれる光矢の数は六本。多くて七本。

アキトの十五本以上には到底及ばないものの、それでも人並み外れた集中力の証ともいえる。

そして・・・今回は自己最高である十本。エルネシアも、知らず知らずの内に力が入っていたようである。

 

それはどうしてか・・・・誰の為に力が入っているのか・・・それは今さら語るまでもないだろう。

 

エルネシアは、次の呪文の詠唱を始めようとして・・・・・戦場を駈ける虹色の風アリスに向かって声を上げる。

 

 

「アリス!ちょっと派手なのをやりますから、フォローしてくれませんか?」

「わかった。すぐそっちに行くから始めておいて!」

「ええ・・・・・では」

 

 

エルネシアはそう言うと、再び『水竜の杖』を両手で構え、詠唱に入った。

邪魔をしようとする魔族もいたが、素早く近寄ったアリスによって、ことごとく斬り刻まれた!!

 

 

大地の底に眠り在る 凍える魂持ちたる覇王 汝の青き力もて 我らが行く手を遮りし者に

  我と汝が力もて 滅びと報いを与えんことを・・・・・・覇王雷撃陣ダイナスト・ブラスッ!!

 

 

エルネシアの口から『力ある言葉カオス・ワーズ』が発せられると、杖の水晶に金色の光が灯った!

その光が発生したことを見ることなく、エルネシアは次の呪文の詠唱に入っていた!

 

 

「大地の底に眠り在る 凍える魂持ちたる覇王 我に与えん氷結の怒り!!覇王氷河烈ダイナスト・ブレスッ!!

 

 

今度は白い光が水晶クリスタルの中に発生する・・・・金と白の二つの光は、円を描きながら絡み合うように融合する!!

 

 

「内に蓄えられし魔術よ!混ざり合い、新たなる力を創り出せ!!覇王氷雷陣ダイナスト・ブラストッ!!

 

 

杖が一際輝くと、魔族の密集していた大地に、二重の五紡星・・・変形した十紡星が描かれ、

超巨大な氷塊がその内に十数体の魔族を取り込んだ!

 

その光景は、アメリアとゼルガディスが北のカタート山脈で行使した融合呪文に酷似している・・・・

しかし、術の発動方法の違いか、アメリアとゼルガディスの合成魔術よりも、

エルネシアが水竜の杖を媒介にした融合魔術の方が、やや氷塊が大きいようだ。

 

ちなみに・・・・エルネシアは、アメリアとゼルガディスがこれを使ったのを知って、使ったのではない・・・・

アメリア達が使うよりも以前に、先達である水竜騎士団の長が発案していたのだ。

四竜騎士団の秘匿する技術や知識は、他の何よりも深く・・・そして強力な武器なのだ。

それこそが、ゼフィーリアを守護せし力の一つであるのだ・・・・

 

 

エルネシアは、眩いほどの雷光を放ち始めた巨大な氷塊を見ると、仲間に向かって声をかけた。

 

 

「ガイウスにレニス!巻き込まれないように気をつけて!」

「「ちょっと待て!この状況下魔族に囲まれた状態でどうしろと!!」」

 

 

それぞれ別の場所から、まったく同じ様なことを口にするレニスとガイウス!

周りにいた魔族も、自分を圧倒していた人間の様子に戸惑い、仲間内を見やる。

 

 

「そこはそれ、頑張って下さいね。さ、アリス、お願いします」

「ほい来た!」

「あ!言い忘れていましたけど、この後も強力なのを放ちますから、気をつけて下さいね」

「「鬼!!」」

 

 

アリスとエルネシアは、男性二人の悲鳴混じりの苦情を完全に無視すると、それぞれ呪文の詠唱に入った。

先に完成したのは、比較的簡単であるアリス。

 

 

封気結界呪ウィンディー・シールドッ!!」

 

 

アリスは、風の結界を発動させると同時に、虹色の輝きを放つ鋼糸を結界と重なるように展開する!

風の結界と鋼糸を併用することにより、防御力を格段に向上させたのだ。

 

もっとも、見た目的には、アリス達は光の格子に閉じ込められたという感じになるだろうか・・・・

今現在、この中が一番の安全地帯であることを、男性陣二人レニスとガイウスはよく知っていた。

 

そうこうしているうちに、巨大な氷塊が凄まじい雷光を纏う!!

 

 

「チッ!もう時間がねぇ!!レニス、気張れよ!!」

「ガイウスもな!」

 

 

レニスは火竜の剣ブラバザード・ソードを・・・・ガイウスは地竜の盾をそれぞれ構え、次に起こるであろう現象に備えた。

魔族達は電撃を纏う氷塊から離れようと動き出す・・・・その矢先!

巨大な氷塊は炸裂四散し、周囲に頭の大きさほどもある氷塊を撒き散らす!!

 

その氷塊は一つ一つが電撃を纏っており、物理的にも、精神世界面アストラル・サイドにも破壊を及ぼす力を持っている!!

レニスは飛んでくる氷塊を叩き斬り、ガイウスは流れるような動きで避けつつ、時折盾で受け流していた!

 

だが、他の魔族はそういうわけにはいかない!ある者は体を貫かれ、またある者は頭を潰される!

その破壊の力は、大地に居る魔族だけではなく、空に浮かんでいる魔族にもおよんでいた!

 

 

(これを見たのも今回で三回目なんだけど・・・・今までと比べてダントツに派手だね・・・

もしかして、張りきってるとか?あり得る・・・・・・)

 

 

作り出した風の結界に当たる氷塊を見ながら、アリスは心内だけで呟いた・・・・・

氷塊の嵐は・・・徐々におさまりつつある・・・・・・

 

 

 

(その2へ・・・・)