赤き力の世界にて
第5話「それぞれの事情・・・」
やや昼を過ぎた、昼食を取るには遅い時間、
食堂はかなり空いていた。
「ふ〜ん・・・なるほどねぇ・・・
異世界からボソンジャンプとやらでこの世界に来た、と・・・」
「まあ、そんな所かな」
俺は差し障りのない部分のみ伝えた。
全部伝えるときりがないし・・・
なによりこの世界の科学レベルでは理解できないだろう。
しかし・・・
「何だか拍子抜けするほど素直に信じてくれたね・・・」
「まぁね、私達も色々とあったからね・・・
今更異世界だのなんだので驚くほどの価値もないわよ。
予想もついていたことだしね」
・・・・・まあ、疑われるよりましか・・・
そう思い、考え方をプラス思考に切り替える。
「それじゃあ、こちらの世界のことも教えてくれないか?」
「まあ、基本的に昔話になるけどね・・・」
そこで聞いた話・・・混沌の海より生まれたこの世界、
対立する二つの存在、
『赤眼の魔王 シャプラニグドゥ』
『赤の龍神 スィーフィード』
激しき闘いの末、スィーフィードは滅び、
シャプラニグドゥは体を七つに引き裂かれ、封印された。
それぞれ配下を残して・・・
そして千年前、魔王の一欠片が目覚めた、世界の一部を巻き込んだ闘い『降魔戦争』
結果は、スィーフィードの配下の一人、水竜王(アクアロード)・ラグラディアが滅び、
魔王はカタート山脈の奥深くに封印され、
共に戦った魔竜王(カオスドラゴン)・ガーブも人の中に封印され、この闘いは終わった。
世界の一画が、魔族の結界に閉じこめられたまま・・・
そして現在・・・とある聖人と称された人物が起こした事件、
その結果、魔王の一欠片が現世に復活した。
・・・色々な幸運と偶然が重なり合い・・・
リナ・インバースが魔王を倒した。
魔王を倒す要因となった禁呪『重破斬(ギガ・スレイブ)』
金色の魔王(ロード・オブ・ナイトメア)の力を借りたその呪文。
その為、それを操るリナ・インバースを中心とした、
冥王(ヘル・マスター)フィブリゾが計画した陰謀に巻き込まれることになった。
しかし、冥王(ヘル・マスター)フィブリゾの予想を超えた要因により、
結果的、魔竜王、冥王共に、滅びることとなった。
5人の腹心の長たる冥王(ヘル・マスター)フィブリゾが滅びた事に動揺する魔族達、
その様な中、腹心の内の一人、覇王(ダイナスト)グラウシェラーが、
千年前の『降魔戦争』の再現をおこそうとした・・・結果は失敗。
しかし何の因果か、下級魔族の暇つぶし的な行動により、
魔王の三つめの一欠片は目覚めた・・・愛しき者の死によって・・・
その目覚めた魔王、人間であった頃の知り合いであった
リナとガウリイとの闘いを望んだ・・・死に場所を求めて・・・
そして闘いには勝った・・・リナの心に深い後悔と傷を残したまま・・・
俺は長い物語を聞いていた・・・夕食を食べながら
仕方ないだろ!!イネスさんの説明並に長いんだから!!
外はもう夜になっているし・・・
「だいたい分かった。とすると昼に襲っていた魔族は
リナちゃん達が撃退した奴の部下とゆうことか・・・」
「ま、そ〜ゆ〜こと。巻き込んでしまってごめんなさいね。
・・・で?アキトはこれからどうするつもり?」
「どうしようか迷っている所なんだ・・・
帰る手段はあるけど、使える様になるまで時間が掛かりそうだし・・・」
「それってあのブローディアって奴のこと?」
「ああ、そうだけど・・・
仮になおっても帰れるとは限らないけどね・・・」
そう、遺跡が何らかの意図があって
俺をこの世界にジャンプさせたのだとすれば、
何かをやらない限り、元の世界には飛べないだろう・・・
「そうなんだ・・・」
「じゃあ俺達と一緒に旅でもするか?」
いきなりそんなことを言うガウリイ。
「いいのか?自分で言うのも何だが、
身元が怪しい俺を連れて・・・」
確かに怪しいな・・・俺の世界だったら精神病院に直行だな・・・
(精神病院って言ったら、ゴートさんあれから病院に行ったのだろうか?)
言っていて空しくなってきた・・・
「いいのいいの!!アキトは信用できるようだし!!
これでも人を見る目はあるつもりよ!!」
「ああ!!大丈夫だ、リナが仲間に入れてきた奴は
性格に難はあっても悪い奴は基本的にいなかったからな!!」
ナデシコの定義みたいだな・・・
「あんたね・・・言ってて空しくなんない?」
「・・・一寸だけ思った・・・」
いい人達だな、リナちゃんとガウリイは・・・
「本当にいいのか?二人きりの旅なんだろ?」
「気にしない気にしない!!この前まで4人だったし・・・
なんだかゴタゴタしているから、腕の立つ人が欲しかったし・・・」
「俺はこいつの保護者なんでな、気にすることはないよ」
保護者って・・・夫婦みたいに息がぴったしに見えるけどな・・・
「そうか・・・リナちゃんにガウリイ、よろしくお願いするよ」
「ああ!!よろしく、アキト」
「よろしく、アキト・・・って、そのリナちゃんってやめてくれない?
こう何だか、聞くたびに背中が痒くなるんだけど」
「じゃあなんて・・・」
「リナだけでいいわ、その方が慣れているし・・・」
「いいじゃないか、リナちゃんで・・・俺も呼んでやろうか?」
「あんたは・・・黙ってなさい!!」
スパーーン
「痛ッ!!」
どうでもいいけど・・・いつの間にスリッパなんて持ったの?
全然見えなかったよ?
「まあとりあえず・・・旅の行き先はゼフィーリアで良いわね?」
「ああ、異論はない」
「右に同じく・・・」
訳がわからんからな、俺はついて行くしかないよ・・・
「実家に戻ってのんびり・・・という訳にもいかなくなったけど、
早めにあの魔族、ニースに対する手を考えないとね・・・」
そして、俺は宿屋で、眠ることとなった。
もちろん金は持ってないので、リナちゃんに立て替えてもらった。
・・・何となく後が怖いような気がしたが。
翌日、早めに町を出てゼフィーリアに向かう。
「な〜リナ、何でこんなに早く出発するんだ?」
「早めに実家に帰って、対策考えたいのよ。
今度襲われて手も足も出ないなんて悔しいし、
それに次の町まで結構かかるからのんびりしてたら野宿になっちゃうわよ・・・」
「よく知ってるな〜、実家はもう近いのか?」
「まだよ・・・でもここは私が旅に出たときに通った道だから
覚えているだけ。」
「そうなのか・・・後どれくらいで実家につくんだい?リナちゃん」
「あと・・・遅くても1週間ぐらいかな?」
結構時間がかかるんだな・・・まあ徒歩だし・・・
「それより、アキトの持っているその光の剣みたいなモノって何なの?」
「??DFSの事?」
まあ光の剣に見えるかもしれないな・・・
「そうそれ、前に私が持っていた光の剣ってのがあったんだけど
何となく感じが違うし、魔族に効いて無かったようだし」
「これを説明するにはまず、ディストーションフィールドの事を
説明しなくちゃならないけど?」
「良いわ、異世界の技術について聞けるなんて滅多にないことだし」
まあ、そうだろうな・・・
同時刻、ネルガル研究室・・・
「誰か今、私を呼ばなかった?」
「どうかしたんですか?フレサンジュ主任?」
「今どこかで私を呼んだような気がして・・・」
「気のせいですよ」
「そうかしら・・・」
の様なことがあったとか・・・
「ディストーション・フィールドとは空間を歪ませて
防御するようなモノなんだ」
「要するに、一定の空間を隔離するようなモノ、
結界・・・と考えて良いのかしら?」
「まあ近いモノかな?
DFSとは正式名称『ディストーション・フィールド・収束装置』と言ってね、
つまり、その空間の歪みを一点に集中している物なんだ」
「なるほど・・・そのディストーション・フィールドは物理的なモノ、
だからいくら収束しても物理攻撃と言う訳なんだ・・・」
「そうゆう事かな?魔族には効かなかったし・・・」
「・・・ねえ、それ売ってくれない?
600ゴールド出すからさ!!おお、リナちゃん太っ腹!!」
そう言われても単価が分からないんだけど・・・
「ガウリイ、600ゴールドでなにが買える?」
「ロングソードも買えない・・・」
「はぁ・・・・」
思わず溜息でたよ・・思いっきり詐欺だな・・・
これからこの世界のこと覚えなくちゃな・・・
「使えない物、買っても仕方ないでしょう?」
「?どういうこと??」
「これはエネルギーを充電しなくちゃならないんだ。
つまり、売ってもエネルギーが切れたらこの世界じゃただの物、
調べようとしても何も分からず、分解したまま直せず、ゴミ箱行きになるだけだよ」
「ちぇ〜・・・」
拗ねたってだめだってば・・・
「それに、たぶん扱える人は少ないんじゃないのかな?」
「扱える人がいないって?」
「俺の居た世界でも、これを使えたのは知る限りでも二人、
俺と北斗という人しかいないんだ」
「やってみなくちゃわかんないでしょ?
ちょっと貸してみて」
「気をつけろよアキト、持ち逃げするかもしれないぞ」
「うるさいわね、しないわよ
さっきの説明聞いてなかったの?」
「はははっ!!こ〜いつ〜、俺が難しそうなこと聞くわけ無いじゃないか」
「爽やかそうに情けないこと言ってんじゃないの!!」
夫婦漫才か?仲がいいんだな〜・・・
「とりあえず!!チャレンジあるのみよ!!」
「わかったよ、はい」
俺は(多少心配しながら)DFSを渡す・・・持ち逃げしないでね・・・
「要点は集中するだけ、刃をイメージして・・・」
「ヌヌヌ〜〜〜・・・はぁ、全然だめ」
「次は俺の番だな!!」
「ガウリイ、私でも無理なんだからだめなんじゃないの?」
「馬鹿にすんなよ、これでも光の剣を使ってたんだぜ」
「そう?じゃあ、はい」
「よし、見てろよ。光よ!!・・・・・・・でないな?欠陥品か?」
スパーーン
「ぐあっ」
「アホかぁ!!集中しろって言ったでしょうが!!」
また見えなかった・・・北斗でも見えないかもな・・・
しかし、まだ持っていたのか?スリッパ・・・
「しかし、アキトって強いわね。
アキトの世界ってそんなに強い奴が多いの?」
「まあ・・・俺はちょっと特殊な方かな?
でも中身は一般的な何処にでも居るような凡人だよ」
この様なことをナデシコのみんなが聞いたら
「嘘をつけ!!」
と口をそろえて言うだろう・・・
「ふ〜ん・・・異世界ってのは恐ろしい所なんだな」
ガウリイ、それはどういう意味かな・・・
「まあ自分のことを凡人だって言う奴に限って、
とんでもないことやらかす奴だからね・・・
その点は余り信用できそうにないわね」
「何か嫌なことでもあったの?リナちゃん」
「ほっといて・・・」
かくして、多少?の騒ぎを起こしつつも、
一週間後、問題なく??リナちゃんの実家についた・・・
(第6話に続く)
あとがき
どうもケインです。
この話から当分の間、平和な話が続きます。
まあアキトがこの世界について勉強したり、馴染んでゆくまでの期間と言うところでしょうか。
ややリナ達の出番は減るかもしれませんが、おつきあい下さい。
さて今回の答え『スリッパ』でした。
いつもながら簡単すぎると思いましたが事実そうでしたね・・・
さて次のクイズ。今回も簡単なクイズです。
リナ達は次の話で実家につくわけですが、
そこで懐かしい?出会いが待っていました。一体誰と会ったでしょう。
ヒント・・・・@第一部の最初の方に出ていました
Aルナさんが拾いました(いいのか?)
B今は名前が変わっています
C飼われ犬
まあ分かる人にはヒントなど見なくても分かるでしょう。
ついでに、前回でディアがラグナランチャーを放とうとしたのは、
効く効かない等の問題ではなく、ただの鬱憤をはらしたい・・・まあ八つ当たりです。
余り深く考えないで下さい。
まあ取り合えず、これはおかしいのでは?と思うところがあったら教えて下さい。
最後に八影さん、涼水夢さん、感想どうも有り難うございます!!
掲示板の方は気をつけて見ているつもりなんですがね〜・・・すみません!!
では第6話で会いましょう。
追記・・・次回からルナさんが出てきますが、
「こんなのはルナさんではない!!」
と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、本編上出てないので
99%オリジナルになるかもしれませんので、先にお詫びいたします。
代理人の感想
どこが「ちょっと」やねん(笑)。
まあ、不死身の男やら幼児やらがうようよしている環境でならそうかもしれませんが。
「こんなのはルナさんではない!」って・・・・・そんなセリフを吐けるのは神坂一先生くらいなもんでしょう。
何せ作品に出てないんですから(笑)。