赤き力の世界にて

 

第7話「修行・・・」

 

 

次の日。朝食をとった後、俺とルナさん、そしてリナちゃんとガウリイは
町からやや離れた湖に来ていた。



「さて・・・リナ、修行の前に確認しておきたいことがあるのだけど」

「な・・・なに?姉ちゃん」


リナちゃん・・・そんなに怯えなくても・・・


「あなた、一度その体に金色の魔王(ロード・オブ・ナイトメア)を
降臨させたことがあるわね」

「う・・・うん」


あー!!思いっきりばれてる!!
お仕置きはイヤー!!!!


「別にお仕置きしたりはしないわよ。
もう済んだことだしね・・・」

「な・・・なんで」


たぶん、何で考えていたことが?って所だろうけど・・・
そんな顔していたら俺でも分かるよ・・・


ちなみにその顔は、ルリ達に連れて行かれるときのアキトと似ていたそうな・・・


「今度は制御してみせればいいのよ。
あなたなら大丈夫よ、私の自慢の妹だもの」

「姉ちゃん・・・」


姉妹っていいものだな・・・少し羨ましい・・・


「と、ゆうことで・・・はいこれ」

「なにこの鉄球?」


その鉄球はというと、鎖がついており
腕などにつけることが可能のように見える。
昔の囚人等が腕や足に付けているような物と考えていただきたい。

ちなみに大きさはというと、10センチくらい、
鎖の長さは1メートルほどだった。

一体どこに持っていたんだ?


「それをね、こうして・・・こうするの」


それをリナちゃんの手首につける。

ルナさんが鉄球から手を離した瞬間、


ズドム!!


やたら大きな音をたてて地面にめり込む。


「お・・・重い〜・・・というか、
まったく動けない〜・・・見た目の倍以上は重さがあるような・・・」

「どれどれ・・・・うお!半端じゃないぞ、この重さ!」


倍どころじゃないような気がするが・・・
というか・・・軽々持ってきたルナさんの方が不思議だ・・・


「その玉の表面をよく見てみなさい」

「これは!?」


よく見てみるとその玉の表面に何か文字が書かれていた。

俺は始めて見る文字だ。


「前に見たことが・・・そうだ!前にミルガズィアさんが
ガウリイの剣に書いた紋様に似ている・・・」

「正解。少し前に来たときに作ってもらったの」


つまり、姉ちゃんがやたら事情に詳しかったのは
あの二人の所為だったんかい!!

あの二人・・・今度あったら覚えてろよ!!


「ちなみに事情を聞くまでもなく、この世界の大きな事は分かるわよ。
私自身の因果が絡まってなければ動けないけどね」

「そんな事より・・・重いんですけど・・・」

「その球に手をそえて、魔力を集中させて」


とりあえず言われたようにしてみる・・・

みるみるうちに書かれていた紋様が隠れてゆき、
代りに新しい紋様が浮かんでくる。


「おっ?軽くなった?」


しかし・・・これはかなりの集中力と魔力が必要だ、
現にこうしているだけで徐々に疲れてくる・・・


「その紋様は最初のは重さを倍増するものよ。
後に出てきた紋様は魔力に反応する様になってるわ。
後の紋様が浮かび上がることによって先の紋様をうち消しあってるの」

「あの・・・解説はいいんですけど・・・
なぜに私がこの様な目に・・・」


やたら腰が低いリナちゃん・・・そんなに怖いのかな?


「あなたは一度『金色の魔王』という大きな存在を
その身に宿したことにより、魔力キャパシティが広がってるのよ、
だけど、それに気付かずに放っておいたからまったく活用できてないけどね・・・」

「それで、この特訓によって集中力と魔力を引き上げようと・・・」

「その通り、とりあえずそのままで生活するように」

「ちょっと姉ちゃん!このままじゃあ家に帰るのも辛いんですけど・・・
こんなに魔力バカ食いしてたら翔封界(レイ・ウィング)も使えないし」


それはそうだろうな・・・家まで道のりは歩いて約2時間、
普段ならそう気にする事もないぐらいだが・・・


「そうじゃなかったらトレーニングにならないでしょ?
ちなみに生半可な呪文じゃ壊れないわよ。
頑張りなさい、お昼までには帰ってくるのよ」


鬼だ〜!!あれから何にも変わってない〜!!

あたしは心の底からそう思った。

 

 

 

「あの〜俺はどうすれば・・・」

「ああ、ガウリイさんにはこれ」


ん?何の変哲もない包丁に見えるが・・・
魚でも捕まえてさばけとでも言うのか?


「あの〜、これで何を?」

「ちょっと待ってね・・・」


なにやら袋からやたら大きい生肉を取り出した。


「まさかそれを切れと・・・」

「まさか!これを・・・こうするの!」


そう言ったが早いか、ルナさんは肉を湖の真ん中に投げ入れた、
そうすると投げたところから泡が立ち上がる!?



キシャアアァァァァ!!


泡立った所から青色の竜が現れた!


この世界で驚くのも疲れてきたな・・・


それが俺の正直な感想だった・・・


「まさか俺にアレを倒せと・・・」

「そうですよ、何か不都合がありますか?」


ガウリイにとってはありまくりだと思うが・・・


「こんな包丁一本だけで無理に決まっているでしょう!!」

「大丈夫、大丈夫!!コツさえ掴めばね、
私だって出来るんだから!」


コツという問題か?


「アキト君も出来るんじゃない?」

「さあ?やって出来ないことはないような気もしますが・・・」


どんどん人間離れしてゆくアキト・・・
ここで伝説を築くのもそう遠いことではないかもしれない・・・


「わかった!やってやろうじゃないか!!」

「はい、頑張って下さいね〜」


がんばれよ、ガウリイ・・・
骨ぐらいは拾ってやるからな・・・ま、大丈夫だろうがな。


「うまく倒せたら、アレでお料理作ってあげますから」

「美味しいんですか?」


肉が堅そうだけどな・・・


「美味しいですよ、ドラゴン料理といってねかなりの高級料理なのよ、
その中でもあのレイクドラゴンは最高の食材ね」

「そうなんですか・・・後でレシピ教えて下さいね」

「ええ!一緒に作りながらお教えしますよ」


話している風景を見れば、ほのぼのとした恋人同士に見える・・・
ただし、後ろの包丁持った兄ちゃんの死闘とか、
囚人よろしく鉄球でつながれた少女が恨みがましく見ていなければ・・・




「じゃあ私達はアルバイトにでも行きましょうか」

「良いんですか?放っておいて?」


リナちゃんが俺の方を見て、
(いいぞ!もっと言え!!)
と目線で語っていたりする。


「いいんですよ、手を抜いたら明日は折檻フルコースですから」


そう言ってルナさんは綺麗な笑顔を見せた。
しかし俺には背中に鳥肌が立っていたが・・・

リナちゃんを見ると顔が真っ青だったりする・・・

ルリちゃん達の折檻とどっちが凄いかな?
俺は想像しただけでお花畑を見そうだった・・・


「さあ行きましょうか」

「・・・・そうですね」


すまないリナちゃん・・・ルリちゃん達に培われた俺の本能が、
この人には逆らうなと言っているんだ・・・

 

かくして、俺達はゼフィールの町に引き返した・・・

目的のルナさんのアルバイト先、レストラン『リアランサー』
家から徒歩15分程の所にあった。


「おはようございまーす!店長、ちょっと話があるんですけど」

「?なんだいルナちゃん、お?そこの男の人は?彼氏かい?
そうか〜、とうとうルナちゃんも彼氏が出来たのか〜」

「ちょっ!ちょっと待って下さい!!私達はまだ・・・」

「ほう・・・まだなのかい、でもなかなか似合ってるよ」


余り勘違いしないで欲しい・・・ルナさんに迷惑がかかるから。


「まったく・・・アキト君はアルバイトですよ、ア・ル・バ・イ・ト」

「何だそうなのか・・・てっきりデートだから休ませてくれって言いに来たのかと・・・」

「何言ってるんですか・・・アキト君、この人がここの店長よ」

「どうも、テンカワアキトです」

「それはどうも、私がここ『リアランサー』の店長だ」

「店長はね、名前を教えたがらないのよ」


何だかプロスさんを思い出すな・・・相変わらず苦労してるんだろうか?


「私のことは店長とでも呼んでくれ」

「わかりました・・・」


深く考えるのは止そう・・・疲れるだけだ。


「じゃあ私準備しますから・・・」

「ああ、わかった・・・」

 

 

 

「しかし、アキト君もやるな〜」

「?何がですか??」

「ルナちゃんのことだよ、今まで男性と一緒に歩くことでさえ珍しかったのに、
同じアルバイト先を紹介するとはね〜・・・」

「ここにルナさん以外のアルバイトはいないんですか?」

「いないよ。そう大きい方じゃないからね。
男が『アルバイトに雇って下さい』なんて言ってくるけど下心丸見えでね、
雇う気にもなれんよ・・・その点、君は合格だ!!」

「はぁ・・・」

「そんな気の抜けた返事しないで、お仕事お仕事!!
そんな事じゃあルナちゃんのファン倶楽部の人達に刺されるよ」

「刺されるって過激な・・・それより、ファン倶楽部があるんですか?」

「まあね、近づいて来る男達に目を光らせているそうだ。
まあ、ここで食事をとりながらルナちゃんのアルバイト姿を
見るのが主な活動みたいだがな・・・
ナンパなんてしようものならすぐさま連中にフクロにされるな・・・」


どこの世界でもいるんだな、そんな人・・・


「どうかしました?」


ルナさんが奥から出てきた。
どうやら着替えていたようだ。メイド風のおしとやかな感じの服を着ている。
たぶんここのウェイトレスの正装なのだろう。

・・・・店長の趣味か?


「いや、何でもないよ。さてテンカワ君、
君はウェイターと厨房、どっちがいいかい?」


この問いに対して、俺の答えはもう決まっている。


「厨房の方でお願いします。ルナさん、店長、
色々と手数をかけますがよろしくお願いします」


俺はこの世界で料理を作るきっかけをくれたルナさんと、
詳しく事情を話さなくても雇ってくれた店長に感謝した。
そして嬉しかったから笑顔で接した。


「う・・・うん、こちらもよろしくね」

「あ・・・ああ、こちらこそよろしく・・・
(あの笑顔は既に凶器だな・・・あ〜あ、ルナちゃん顔を真っ赤にしちゃって・・・)
さあ!!もうすぐ開店だ。今日も頑張ろうか!!」

「「はい!!」」


二人はそろって笑顔で返事をした。
それを見た店長が、『すでに夫婦みたいだな』と思ったとか・・・

 

 

(第8話に続く)




あとがき

どうも、ケインです!

・・・う〜ん、ルナさんもうちょっとインパクトが欲しいかな?
文章って難しいと思う今日この頃です・・・

店長・・・決して名前を考えるのが面倒だなんて意味じゃありません。
いやホントに・・・ゼフィーリアは個性が強い人が多いのらしいので
これくらいは許容範囲でしょう。


さて、今回の答えなんですが・・・『リアランサー』
難しかったでしょうか?スペシャルは余り読まれてないのかな?


まあ次の問題行ってみましょうか!!

・・・・といいたいところですが・・・ありません・・・
だってアキト君のアルバイト風景だけで終わりそうだから・・・

まあ早めに書きますから勘弁して下さい。


最後に、八影さん、カルマさん、涼水夢さん、感想いつもながら有り難うございます!!


ではまた次の話で会いましょう!

 

 

代理人のまったりした感想

 

ん〜、なんかほのぼのしてますね〜〜〜〜。

後ろの二人? 無視無視(笑)。

でもリナはともかく、包丁でドラゴンを倒すのが修行になるんだろうか(爆)?