赤き力の世界にて

 

第9話「ファン倶楽部・・・」

 

 

 

「セ・・・・セイヤさん!?」


そう、そこの立っている人は俺がよく知る
ウリバタケセイヤにそっくりであった・・・・


「セイヤ?誰だそりゃ・・・
俺様はこの町一番の鍛冶職人にして
ルナちゃんファン倶楽部の創立者、

シンヤ・フェルフォート様だ!!」


あ・・・悪夢だ・・・
なぜに別の世界に来てまでセイヤさん(のそっくりさん)
に捕まらなくちゃならないんだ・・・

いっそのことここで全員抹殺した方が後腐れ無くていいかもしれないな・・・


「お前がここに呼び出された理由はわかるか・・・」

「・・・・・・ルナさんのことでしょう?」

「そうだ!どうやって近づいたかはわからん。
よく俺達に気付かれず近づいたものだ、そこだけはほめてやる」


ほめてやると言ったときの表情・・・
俺を追い詰めようとしていたときにそっくりだ。


「だが、今後ルナちゃんの事は今後俺達ファン倶楽部を通してもらおうか!」

「どうしてですか?」

「それがこの町の流儀だ!!」


腕組みしながら胸を張ってふんぞり返っている・・・
以前、新しく入ってきた新人に教えていたとき、

『これがナデシコの整備班の流儀だ!!』

と言っていたのを見たことがあるが、
何もこんなところまでそっくりじゃなくても・・・


馴染んだ顔で付き合いやすいということもあるが、
こんな表情の時はあまり近づきたくないな・・・
いつもこの後、無茶なことばっかりしていたからな・・・


「言うことを聞かなければ少し痛い目にあってもらう」

「痛いってどれくらい?」


俺がこんな質問をするのは予想外であったのだろう、
しばし考えているようだった・・・


「・・・とりあえず、明日のアルバイトをするのは多少は辛いかな?レベルの怪我から、
簀巻きにして大海原に旅立ってもらうまで色々とあるぞ」


・・・やっぱり抹殺しておいた方がいいか?


「ちなみに前者には毎日物陰から石をぶつけられるとゆう
特典までついているぞ・・・」


「どれもお断りします・・・」


いちいち付き合っていられるか!


「そうか。ならば・・・・行け!
ファン倶楽部害虫駆除及び攻撃部隊!!
奴を簀巻きにして川に放り込んでやれ!」

『おう!!』


俺を取り囲んでいた奴らが襲いかかってくる、
なかなかいい動きだ。

それなりの腕はしているだろう・・・一般の部類ではな。


俺が奴らを気絶させるのに30秒もかからなかった。


「何!!攻撃部隊が全滅!?
隊長がいないことを差し引いてもかなりの腕のはず!」

「おしまいですか?なら・・・」

「え〜い!次、魔術士部隊!
攻撃だ!ただし大怪我させるなよ」


残りの(シンヤ除く)5人ほどが呪文を唱え出す。

「「「「「「閃烈槍!(エルメキア・ランス)!」」」」」


やばい!この呪文は!





俺は思いだしていた・・・

リナちゃんに聞いた話だとこの呪文はこの世界とは紙一重にずれている世界、
もしくはこの世界のもう一つの世界という奴かもしれないが・・・
精神世界面(アストラル・サイド)からの攻撃なんだそうだ。

つまりディストーションフィールド等の物理的防御では防げなかった・・・

なぜ『かった』かというとゼフィーリアに着くまでの旅の間、
色々と試してみたのだ・・・

案の定、エルメキア・ランス等の系統は防げなかった・・・
つまり、物理的破壊力を持たない精神破壊を主としたモノや、
いきなりその場に発生するタイプなどだ。危うく死にそうになったが・・・

そうとはわからなかったので、エルメキア・ランスはまともに喰らってしまった。
まあ多少クラッとした程度だったが・・・

リナちゃん曰く


「あんたホントに人間!?」


だそうだ・・・その頃には怪しむよりも呆れていた方が強かったが・・・

 

 

 

(まあこの程度のモノなら十数本来たって避ける自信はあるけどね・・・)


飛んでくる光る槍をかわして、一気に接近。
魔術師達も気絶させる・・・


人を簀巻きにしようとしてこの程度なんだ。
感謝してもらいたいぐらいだぞ・・・

北斗だったら瞬殺しているだろうしな・・・


「あんた強いな・・・」

「まあ人並み以上は強いと思うけど・・・」

「参った・・・降参だ。この場は負けを認める。
ルナちゃんとのことも認めるよ・・・ただし友達までだ!!」


それ以上に何があるというんだ?


「それ以上になりたかったらファン倶楽部全員の屍を越えて行け!!」


いっそこいつら簀巻きにして川に流した方がいいのでは?

俺は半ば本気でそう考えていた・・・


「あのですね・・・それを決めるのはルナさんでしょう?
ルナさんの事を考えてやっていたというのはわかりました。
ただ、ルナさんの気持ちも考えて下さい」

「うっ・・・」


感情で物事を話している人に対しては正論をぶつけてみる。
それで駄目なら強制的に冷静になってもらう。(殺気をぶつける)

この場合は前者で収まったようだ。


「わかった・・・色々と考えてみるよ。
まさか自分より年下に説得されるとはな・・・」


そう思うなら大人げないことはやめて下さい。
あんた(たぶん)既婚者でしょうが・・・


「まだ名前を聞いてなかったな。
俺はシンヤ・フェルフォート、シンヤでいい」

「テンカワ・アキトです。俺もアキトでいいですよ」

「まあ今日のことはルナちゃんに黙っててくれや。
ルナちゃんが心配するといけないから早く帰りな・・・」

「はい、じゃあおやすみなさい・・・」

「ああ、おやすみ。
・・・行ったか。しかし大したもんだ、
この人数をあっという間に倒すとは・・・
さて、家族が心配するといけないから俺も帰るか・・・」


そういってシンヤは帰路についた。

気絶している者を放っておいたまま・・・

ちなみにゼフィーリアは北の方に位置する国・・・夜は冷え込むことが多いとか・・・


こいつらの結束って一体・・・紙より薄いのかもしれない・・・・

 

 

「ただいま戻りました」

「お帰りなさいアキト君」


たまたま玄関近くにいたんだろう、レナさんが俺を迎えてくれた。


「リナちゃん達は帰ってきたんですか?」

「ええ、ホンのちょっと前に・・・
ルナが迎えに行っていたんですよ」


そうか・・・やはり無理だったか・・・
結構きつそうだったからな。


「とにかく夕食にしましょうか。
みんなそろってますよ」

「はい、わかりました」

 

夕食後・・・俺はそれぞれの修行結果を聞いてみることにした。


「リナちゃん、その鉄球には慣れた?」

「こんなのに慣れるわけないでしょうが!
持っているだけでも魔力はかなり使うし、
歩こうとすれば集中が乱れて重くなるし・・・結構集中力がいるのよ!!」


俺自身、まだ魔導に関わってないからわからないが、
やはり色々とあるのだろうな・・・


「おまけに引きずって帰れるほど軽くないし、
鎖につながれた犬状態だったわよ!!」


それは・・・大変だったな。

俺は想像で鎖でつながれたリナちゃんが暴れているところを想像した・・・
下手な番犬よりも凶暴だな・・・


「まあ修行なんだし、頑張って努力してよ」

「わかってるわよ・・・」


未だぶつぶつ言っている。
お昼御飯を食べられなかった事を根に持っているのか?


「ガウリイはどうだった?」

「俺か?まだまだだよ。
動き自体は見えるんだが攻撃の方がな・・・」


まあ仕方ないよな・・・一家に一本ある普通の包丁だからな。


「隙が見えたから攻撃しても刃が立たないんだよ」


まさしく文字通りだな・・・


「隙が見えたから攻撃するんじゃなくて、
隙と相手の弱点が重なった瞬間を狙うのが効果的じゃないのか?」

「その弱点というのがな〜・・・わからん」

「じゃあ今まで倒していた時はどうやって?」

「今も昔も使っていた剣が良かったんでな、
もし出会っていたら首を断ち切る方法で倒しただろうな」


何とも豪快な・・・
なるほど・・・ルナさんは武器に頼りすぎることなく
敵を倒すやり方を学んで欲しかった訳か・・・


「まあ明日もあるんだ、頑張って倒してくれよ」

「まかせとけ!明日はちゃんと弱点をリナに聞いて
倒して見せるぜ!!」


・・・聞いても戦っている内に忘れそうな気がするのは俺の気のせいか?

 

 

 

 

その日の夜・・・


俺は何となく寝られなかったため、
二階のベランダに出て涼んでいた・・・


「どうしたの?アキト君」

「ルナさんこそどうしたんですか?」

「私?私はアキト君が起きているのに気がついて・・・
何をしているのかな〜と思って」

「別に何もしていませんよ、涼んでいるだけです。
・・・それよりも何か聞きたいことがあるんじゃないんですか?」


俺はなんとなくそう思った。
ルナさんの言動が何かタイミングをはかっているように見えたから。


「アキト君はそういうところだけ鋭いのね・・・
・・・聞きたいことというのはどうして帰りが遅かったのかよ」

「それは・・・・」


別に口止めされていた事ではないが、言うのは躊躇われた。
あの人達はルナさんの事を考えた結果、ああしただけだから・・・


「別に隠さなくても見当はついているわ・・・
今までも何度かあったらしいから」


やはりあったのか・・・
道理で手慣れていると思った。
脅し方なんて年期入ってそうだからな・・・


「その事であの人達を怒っているわけじゃないの、
極端な人達だけど私の事を考えてくれているみたいだからね」

「そうですか・・・シンヤさんそれを聞いたら喜びますよ」


その言葉を聞いてルナさんは驚いたようだ。


「知り合いだったの?」

「いえ、お互い自己紹介しましたから。
色々と話し合いもしましたし・・・」


まあ、話し合いではあるよな・・・
拳と拳を使った・・・と付きそうだが。


「そうなの、良かったわ。
迷惑かけたんじゃないかって心配だったの・・・」


そしてルナさんは黙り込んでしまった。
しばし何かを考えている様子だった。


「アキト君、少し私の話に付き合ってくれる?」

「ええ、いいですよ」


ルナさんはそう言った後、
多少辛そうな目で空を見上げた・・・


「私ね・・・『赤の龍神の騎士(スィーフィード・ナイト)』と呼ばれているの」


俺は口を挟むべきではないと思い、
黙ってルナさんの言葉を待った・・・


「私は『赤の龍神(スィーフィード)』の記憶と力の一部を受け継いでいるの。
物心が付く前からあったから違和感なんて無いわ・・・
この事がこの国の女王に伝わって、色々とあったわ。
幸い、女王は思慮深い人だから余計な諍いはなかったの・・・
その代わり、近くの国を廻って顔を見せることになったの・・・
余計なちょっかいをださないよう・・・そして戦争に関わる意志のない事を伝えるために・・・
力の一部を見せたこともあったわ」


その気持ちは俺には分かった。
元の世界に戻れば、俺も似たようなモノだろう事が予想が付くからだ。


「ある時、私は分からなくなったの・・・
みんなが見ているのはスィーフィード・ナイトとしての自分なのか、
それともルナ・インバースなのか・・・」

「・・・確かに・・・ルナさんに会ったこともない人は
スィーフィード・ナイトとしてのあなたに色々と期待をして、
自分の理想を元とした偶像を持っているでしょう・・・」


俺は静かに言った・・・・
その言葉はルナさんに向けていった言葉なのか、
俺に向かっての言葉なのか・・・・自分でも分からない。


「でも、いいじゃないですか」

「え!?」


ルナさんが俺の方を驚いたように見る。


「他の人がどう考えているか・・・どうでもいいじゃないですか。
少なくとも自分の事を理解してくれている人がいるのなら・・・
リナちゃんも、ロウさんも、レナさんも、店長やシンヤさんも
ルナさんの事を思ってくれているじゃないですか。
俺も、ルナさんが妹思いで両親を大事にしている
優しい人だという事を知っています」

「アキト君・・・」

「だから、他人のことを気にせず、自分らしく振る舞いましょうよ。
きっとルナさんの事を知っている人は受け入れてくれますよ」

「アキト君も・・・かな」

「ええ、受け入れますよ」

「・・・・ありがとう、アキト君」


そう言ったルナさんは俺に微笑んだ。
俺も微笑み返した。

静かな、そして暖かい空間がそこにはあった。


ただ・・・ルリ達某同盟がこの光景を見たら
嫉妬の炎が一万度を超える事は確実だった・・・



「冷えてきたわね、中に入りましょうか」

「そうですね、もう夜も遅いことだし」

「アキト君、今夜のことは内緒にね。おやすみ」

「はい、ルナさんもお休みなさい」


こうして俺がゼフィーリアについての二日目は終わった。




(第10話に続く)






あとがき


どうも、ケインです!!

どうでしょうね・・・ルナさんの心境・・・
自分に近い存在であるアキトに心境を語った・・・
うまく表現ができたかどうか心配です・・・


さて今回のクイズですが・・・その前に、次の話は外伝の話になります。
仮の題名で『アキトのアルバイト日記』と言う名前にしようかな?


さて、次回の外伝にて、今回出てなかった
ファン倶楽部の戦闘部隊・隊長さんがお目見えします。


ズバリ!その人は誰でしょう!!

ヒントは次の通りです。


   @スレイヤーズ本編の最初の方に出てきました。
   A実力の方は一応一流に分類される。
   B人間です
   C出番が過ぎた以降の巻は名前どころか存在すら出てきませんでした。


これだけあったら判るかな?
このクイズ簡単すぎると言うお言葉がありましてヒントは少なめにします。


最後に、川嶋さん、カルマさん、もっちーさん、Murasimaさん、
Sakanaさん、Shimbayashi Atuoさん(名前なんて読むのかな?)八影さん、鳳凰さん、
感想どうも有り難うございます!!


では次の外伝にて会いましょう!!では!!





どうしても分からない人には最終ヒント

  『ガウリイをアニキと慕う傭兵

です。では本当に次回の話で会いましょう!!

 

 

 

代理人の感想

 

戦闘隊長って・・・・

いつの間にゼフィーリアに流れてきたんだおまへは。