赤き力の世界にて
外伝「アキトのアルバイト日記」・第二話
○月★日(晴れのち曇り)
《アルバイト十二日目。
今日はえらく物騒な人がやって来た。俺や北斗とは別の意味で人間凶器だ・・・
国が違えば道徳観念など価値が違ってくるのは理解していたが・・・
こういった人が堂々と往来を歩くこの世界に・・・・俺は馴れなくてはならないのだろうか・・・》
その来訪はアルバイトが始まってすぐにあった。
後から聞くとその時間帯を選んだのは以前、忙しい時間帯に出向いたとき
忙しいからと相手をしてくれなかったから必然的にそうなったそうだ。
俺はその時、料理の材料を倉庫から運び終わった時だった。
「貴方また来たの?全く懲りない人ね・・・」
「何度でも来るわよ!あの剣を譲ってくれるまでは」
「だから無駄ですって。あの武器は人に譲るとかそう言った物ではないの!」
何やらレストランの方で言い争いとまでは行かないが、それに近い状況が出来上がろうとしていた。
「ルナさん一体どうしたんですか?」
俺は言い合いを中断させるべく近づいていった。
俺はその時、相手を初めて見たのだが・・・・何というか・・・歩く武器庫・・・もしくは武器商人・・・
最初の印象はそれ以外なかった。
第一印象はそっちにのけ、ちゃんと見てみるとそれは剣士と傭兵が混じり合ったような女性だった。
髪をポニーテールにしている。鎧らしい物は着てはいないが、
その代わりといっては何か、背中に二本、腰にも二本、剣を下げていた。
その上、身体の至る所にナイフ等の武器を装備していた・・・重くはないのか?
「??どなたですか?以前は見かけませんでしたけど・・・」
「ああ、アキト君ね。十日前ぐらいに店長が雇ったコックよ」
「へ〜・・・とそれよりも!今日こそは譲ってもらいますよ!」
「本当に懲りない人ね・・・・少なくともあれから腕は上がったの?」
「ふっ・・・私を二ヶ月前と一緒にしない事ね!」
そして歩く武器庫さん(名前、まだ聞いてないし・・・)は意気揚々として店から出ていった。
「はぁ〜・・・アキト君、私一寸でてくるから後お願いね・・・」
「一体何がどういうことですか??」
「帰って来てから説明するわ・・・余り時間も掛かりそうにないし・・・」
「そうですか・・・一応気をつけてくださいね」
「ええ、わかったわ」
そう言ってルナさんは渋々と言った感じで先に出ていた女性についていった。
そして後に残されたのは訳の分からない俺と数名の客だった。
しばらく・・・・といっても5分くらいだが、リナちゃんとガウリイが店にやってきた。
最近・・・といっても三日前からだが・・・この二人はこの時間帯に来て腹ごしらえしている。
しかし腹ごしらえとは思えないほど食べているのにいっこうに太らないこの二人・・・・どうなってるのだか・・・
「二人ともいらっしゃい。今日は何にする?」
「そうね〜・・・よし!今日はメニューの左から五つまで行ってみようか!!」
「リナ!七つまでにしないか、夕飯まで保たないぞ」
「そうね、よし!んじゃあ十品目まで!!大急ぎでね」
十品目までって・・・この二人は・・・いや止そう・・・考えるだけ無駄なような気がする・・・
「はいはいわかりました。ちょっと待ってね・・・
店長!リナちゃん達がメニューを左から十品目まで!」
「わかった!」
「あらリナにガウリイさん。もう来てたの」
「ん?姉ちゃんってどうしたの?外から入ってきて・・・アルバイトじゃなかったの?」
「ちょっとね、野暮用があってね。大したことはないのよ」
大したことはないって・・・何かえらく物騒な話をしていた様な気が・・・
「って、ルナさん。さっきの女性はどうしたんですか?」
「ああ、彼女ね。まだ気絶してるんじゃあないのかな・・・」
「気絶ってのは穏やかじゃないな・・・何かあったのかアキト」
「いや、俺も何が何だかさっぱりと・・・」
「さあさあ!お仕事お仕事!リナにガウリイさん。注文は?」
「あ、それなら今、店長が作ってます。俺手伝ってきますね・・・」
俺は店長を手伝いに厨房へと入った。
リナちゃんは結局十品目どころか十五品目まで制覇した。
昨日の記録は十三品だから明日には二十近くまで行くのか?・・・まさかね?
出した料理を全部食べたリナちゃん達が食後のお茶を飲んでいる時、あの女性はまたやってきた。
以外に元気みたいで足取りもしっかりしたものだった。重い物をかなり背負っている割には・・・
「ルナさん!仕切り直しです!もう一度勝負です」
「あら?気がついたの?」
「当たり前です!さあ!もう一度!」
「でも一回だけという条件で受けたのよ」
「あんなの勝負の内に入る訳ないでしょう!」
またもやルナさんと女性は店の中で言い争いを再開した・・・
といっても女性が一方的に食い下がっているのだが・・・
しかし、今度はこの騒ぎを止めたのは俺ではなく、意外な人物だった。
「あれ?レミィさんじゃない!」
「ん?貴方は!・・・・・・誰でしたっけ?」
バタン!
リナちゃんはその言葉を聞いて椅子を倒しながらレミィといっていた女性に喰いかかる。
「あんたね!あれだけ私に迷惑かけといて忘れたというの!
何なら思い出させてあげましょうか!ショック療法で!!」
リナちゃんは胸ぐらを掴んだまま何やら呪文を詠唱をする。
ファイアー・ボール
これは一寸ばかりやばいような気がするな・・・何しろ 火炎球 みたいだし・・・
「リナ、この店でそんな事したらどうなるかわかっているわね・・・」
ピタッ!!
リナちゃんはその一言で動かなくなってしまった。顔も見事に真っ青になっている。
かなりの量で脂汗が流れている・・・何だかお仕置き前の俺を見ているようだな・・・・
「まあルナさん。途中で止めたんだからいいじゃありませんか。
リナちゃんももうしないだろ?」
コクコクコクコウ!!
リナちゃんは必死に首を縦に振っていた。
よっぽどお仕置きが嫌なのだろうか、目には涙さえ浮かばせている。
「それよりリナ・・・何だかその人気絶しているようなんだが・・・」
「あっ・・・・・」
ガウリイに指摘され、女性に意識を戻してみると完全に気絶していた。
何しろずっと首絞めっぱなしだったからな・・・・
とりあえず俺はその女性を椅子に座らせ、活を入れてみることにした。
「うっっっ・・・う〜ん・・・・・はっ!?私は何を・・・ここは?」
「大丈夫かい?気分は悪くない?苦しいところは?」
「え、ええ。大丈夫よ。何ともないわ。ありがとう」
そう言ってレミィさんは顔を赤らめた。
まだどこか苦しいところでもあるのか?
「そう?それは良かった」
「所でレミィさん。家の妹と知り合いみたいだけど・・・」
「妹さん??」
ルナさんの質問の意味が分からなかったらしく戸惑った表情を浮かべるレミィさん。
「ほらそこの・・・あの子がルナさんの妹のリナちゃん」
そう言って俺はリナちゃんを指差す。
「ん〜・・・・・・・・あ〜!そうだリナさん!久しぶりね〜」
「ええそうね。父の敵討ちを手伝った割りには綺麗さっぱり忘れ去られていたみたいだけど・・・」
「細かいことを気にしちゃ駄目よリナさん。そうじゃないと月のない晩に切っちゃうわよ」
「あんた相変わらずね・・・」
リナちゃんは呆れているみたいだ。やや苦手みたいな顔もしていたみたいだけど・・・
「リナ。この人誰なんだ?」
「ああ、ガウリイと一緒に旅する前にあった人だからね。
この人はレミィさん。一寸したことでこの人の父の敵討ちに巻き込まれたのよ」
「そうね、その節はありがとう。それはそうとさっきのはかなり効いたわよ・・・
川の向こう側で手を振っている父さんと兄さんに会ったわ・・・」
り・・・臨死体験・・・危ないところだったのか・・・しかしこの世界でも川なのか・・・
俺もルリちゃん達のお仕置きで何度かあっちに逝きかけたからな・・・・お花畑のときもあったが・・・
「本当に大丈夫?」
「ああ気にしないで。今は本当に大丈夫だから。心配してくれてありがと」
「そう。ならいいけど・・・」
俺の心配をよそに、レミィさんは何かを思いついたらしく急に真剣な顔をする。
「リナさん・・・いきなりで失礼なんだけど・・・ロッドという人に心当たり無い?」
「ロッド?・・・・・う〜ん・・・・」
「ロッド?ロッド・・・・・・・あ!」
ク ラ ゲ 頭
「どうしたの?ガウリイ。心当たりあるの?あんたの少ない脳細胞に残るなんてどんな人?」
「何言ってるんだリナ。ついこの前あの事件があった町に行った所じゃないか」
リナちゃんは記憶の中を探ろうとしているのか、思案顔になってゆく。
(どうやら穏やかなつき合いがあった人じゃないみたいだな・・・
しかしガウリイ・・・あんな事いわれて否定しないのか?)
「あの事件?この間立ち寄った?・・・・・・ああ!あいつ!」
「やっぱりあったことがあるのね・・・・」
「ええ、まあ・・・色々とあったわね・・・特にガウリイが」
「まぁな・・・」
二人とも何か辛いことでもあったのか渋い顔をしている。
旅をしていると良い事も悪い事も多くあるらしいからな・・・
「で?レミィさんとロッドの関係は何なの?」
「兄妹よ・・・」
「「―――――!!」」
リナちゃんとガウリイは何か気まずそうな顔をしていた。何があったんだ?
「リナさんにガウリイさん。風の噂でその事を聞き、あらかた調べました。
貴方達と兄が闘って・・・・そして負けた事を・・・もちろん死んだことも・・・」
「あの時は・・・」
「別に気にしないでください。兄がどんな人だったのかはよく知っているつもりです。
おそらくガウリイさんと闘いたがったんじゃあないかな?
それに兄さんは目的のためなら手段は選ばない人だったから・・・
逆に迷惑かけたんでしょう?ごめんなさいね」
レミィさんは二人に向かって深々と頭を下げた。
その顔には恨みといった負の感情はなく、まるでわがままな弟をもった姉みたいな顔をしていた。
「だからこそ聞いておきたいんです。兄の最後について・・・・直にかかわった人の口から」
「・・・・・わかったわ・・・でもその為にはアトラス・シティであった事件を話さなくちゃならないわね・・・」
そうしてリナちゃんは語った。
アトラス・シティという所であったある事件のことを・・・
亡くした恋人を追い求める魔導士協会長・・・白のハルシフォムがおこした顛末を・・・
紫のタリム、青のデイミア、二人の次期協会長の座の争い・・・その影で蠢く魔族・・・
そしてタリムに雇われるとき、レミィさんの兄、ロッドに出会い、勧誘されたことを・・・
ついでにランツともこの時出会った。
リナちゃんとガウリイはハルシフォムの策略にかかり、
封印されていたハルシフォムを解放。この時、ロッドもハルシフォムに付く・・・ガウリイと闘いたいが為に・・・
そしてガウリイとロッドの戦いは紙一重でガウリイが勝つこととなった。
「そう・・・やっぱり兄さん、無茶苦茶やってたのね・・・」
レミィさんの表情は呆れ顔になっていた。兄妹故にある程度はわかっていたのだろう。
「ところでリナちゃん。その後はどうなったの?」
「その後のことは・・・詳しいことは私の口からは言えないけど・・・
魔族は逃走。ハルシフォム自身のことはほとんど片がついたわ・・・」
そう言いつつも、リナちゃんの顔は悲しそうな顔をしていた。
「ロッドとの戦いは・・・正直言って二度とやり合いたくはないな・・・
あいつはまた闘いたいなんて言ってたけど俺はごめんだ・・・今度はこっちが死ぬかもしれないからな・・・」
「ガウリイにそこまで言わせるほどの相手か・・・もの凄い相手だったんだな」
「まぁな・・・」
そこまで話し終えたとき・・・そこはまるでお通夜みたいに暗くなっていた・・・・
(とりあえずここレストランなんだけど・・・まあ客が少ない時間帯だから良いけどね・・・」
「それはそうと・・・何でレミィさんがここにいるの?何だか姉ちゃんともめてたみたいだけど・・・」
リナちゃんはワザと暗い雰囲気を吹き飛ばすほど元気な声で言い放った。
「そういえば・・・まだ理由を聞いてませんでしたね。どうしたんですか?」
ルナさんはその事を聞かれるとうんざりとした顔をした。
「私が使っている剣を譲って欲しいって来ているのよ」
「姉ちゃんの剣?ああ!あの真っ赤なヤツ」
そういえばニースと同じ様な剣だってリナちゃんが以前、言っていたような気がするな。
「そう!コレクターとしては是非とも欲しいのになかなかくれないのよ」
剣のコレクターか・・・道理でかなりの数の剣やらナイフを持っているわけだ・・・
保管して
しかしコレクターならしまっておけばいいものを・・・なぜ持ち歩いているんだ?
その疑問に答えるようにリナちゃんとガウリイの話し声が俺の耳に入ってきた。
「なにいってんのよ。ただ危ない刃物マニアのくせして・・・」
「刃物マニア?」
「そうよ。レミィさんは刃物マニアでね・・・
しかも刃物で物を切る感触がたまらないって豪語している人なの・・・」
「似たもの兄妹か・・・危ない兄妹だな・・・」
その意見には同感だ。
・・・というかなぜこんな人が往来歩いていても何のお咎めもないんだ?
そんな考えに捕らわれている内に、レミィさんとルナさんの言い合いがまた始まっていた。
俺はすぐさま止めに入る。
「二人とも落ち着いて!」
「でも・・・・」
「しかしね、アキト君・・・」
「ルナさん。レミィさんもどうして駄目なのか言わないと納得してくれませんよ」
「それは・・・」
「それは何?ただの出し惜しみ?」
「ハァ〜・・・わかったわとりあえず剣を出すわ」
ルナさんはそう言うと、手を前にだした。
それと同時に突如としてルナさんの手に、赤い色をした剣が現れる!
(自分の身体から創りだした?というよりは力を具現させたといった方が適切か・・・)
単純に見ると、まるで実戦には向かない儀式用の飾り剣の様に見える。
しかし剣から発せられる気配というものがそれを明らかに裏切っている。
少なくともDFSと斬り合いができるほどの力を秘めているだろう。直感的にそう感じた。
取り立てて目を引くものといえば柄の所の埋め込まれた赤い宝玉の様なものだろうか・・・
まるでそれ自身が生きているかの様に輝いて見える。
「これが?」
「そう。これが私の愛用している武器『赤竜の剣』よ」
「・・・・欲しい!見れば見るほど欲しい!譲ってくれない!お金ならできる限りはらうわ!!」
「これはね、お金でどうこう言う問題じゃないの・・・
スィーフィード
この剣は先程見せたように私の力を具現化させて創り出した物。いわば 赤 竜 の力の一部・・・」
「それでどうして譲ってはくれないの?」
「話は最後まで聞いて。この剣・・・というか赤竜の力かな?
その力を受け入れられる程の器がないと扱いきれないの・・・と言うか拒否反応を起こすの・・・
早い話、普通の人間、もちろんエルフや竜でも扱えないモノなの」
「どうしてそんな事がわかるんですか?」
俺は何となく疑問に思っていたことを聞いてみる。
まるで既に試したかの様な話し方が妙に気になったりもしたが・・・・
「前にね、リナで試したの。お仕置きも兼ねてね」
「えっ!?そんな事あったっけ?」
「あったのよ。まあその後一昼夜ほど生死の境さまよっていたみたいだから
覚えていなくても不思議じゃないけど」
「そ・・・そんな恐ろしいことが・・・・私全然覚えてない・・・」
「私もちょっぴり悪かったなって思って付きっきりで看病したわよ」
お・・・お仕置きって・・・・ちょっと過激すぎるような・・・・
「だからねレミィさん。諦めて・・・」
「諦めるわけ無いでしょう!試してみてから考えます!」
そういうと、ルナさんにしては非常に珍しいことにあっさりと剣を奪われる。
「へ〜・・・これが赤竜のけ・・・ん!!」
レミィさんの様子が急に変わった。まるで重い物を抱えているかのように・・・
「お・・・重い〜〜」
本当に重かったのか・・・・
「だから無理だって言ったでしょう・・・さあ、今の内に返してください」
ルナさんは剣を取り戻そうと近づくと、レミィさんは剣を必死に持ちながらも同じ分だけ後ろに下がる。
「まだまだ!!これしきの事で!」
レミィさんは再び剣を目の高さまで持ち上げる。大した根性だ・・・マニア魂というモノなのか?
「コレクターの意地を見せて・・・」
バリバリバリバリ!!
突如として柄の赤い宝玉から電撃が走り出す!
まずい!レミィさんは避けようがないぞ!
「キャーーーー!!」
「―――――!!レミィさん!」
俺はすぐさまレミィさんの持っている剣を叩き落とす。
幸い剣から発せられていた電撃は床に落ちた途端にやんだ。
持ち手を選ぶ剣か・・・・防犯上はいいかもしれないが、間違って持った人は災難だな・・・
まあこの場合は自業自得かもしれないが・・・・
レミィさんは助け出すのが早かった所為か目立つような傷はないが多少、火傷みたいな痕があった。
「リナちゃん。回復呪文を頼めるかな?」
女性の身体に傷が付くのは基本的には悲しいことだと思い、リナちゃんに治療を頼む。
「わかったわ・・・全く・・・相変わらず人の話を聞かないというか何というか・・・
リザレクション
私こんな電撃受けてよく生き残れたモノね・・・・・復 活!」
リナちゃんの回復呪文のおかげでレミィさんはみるみるうちに怪我が治ってゆく。
「しかし物騒な剣だな・・・お?本当に重いぞ、これ・・・・」
そうか。ガウリイがそう言うのなら半端じゃないんだろうな・・・・
・・・・・・・・・・・・って、何やってるんだお前は!!?
「ガウリイさん!!」
「ん?」
ボウッ!!
ルナさんは注意をしようとしたようだが間に合わなかった。
しかも今度は電撃ではなく炎を発したからガウリイの災難もここに極まれりだ・・・
・・・・・もしかして男女で違うのか?
「あっちぃぃぃーー!!」
「暴れるなガウリイ!店が火事になる!」
「無茶苦茶いうな!!」
フリーズ・アロー
俺は多少、手荒になるが 氷の矢 の詠唱に入った・・・・直後
バシャァ!!
ルナさんがいつの間にかに持っていたバケツでガウリイに水をかけ、あっさりと火は消えた。
「まったく・・・・リナ。そっちが終わったらガウリイさんにも回復呪文かけておいてね」
ルナさんはそう言うとバケツを片づけ始めた。清掃用具入れの中に・・・
「わかった。こっちはもうすぐ終わるからすぐにかけるわ」
誰もガウリイに同情してくれない。まあ本当に自業自得だから仕方がないが・・・
「まったくこのクラゲ頭は・・・学習能力というものが無さすぎんのよ!」
リナちゃんはぶつぶつ文句を言いながらもガウリイに呪文をかける。
二人とも目が覚めたのはその十分後のことだった。
「わかった?この剣が譲れない理由が・・・」
「わかったというか・・・・無理矢理納得したわ・・・・」
まああんな目にあったのならそう考えてしまうかもしれないな・・・
「さようなら・・・私のレミアム君・・・・」
「何ですか?その名前」
「あの剣を譲ってもらった時につける予定だった名前」
「そ、そうですか・・・」
まあ・・・・愛着を持つと言うことはいいことだ・・・・たぶん・・・
「あ〜あ・・・じゃあ私は旅でも再開させるかな・・・次なる刃物目指して」
レミィさんがそんな事を言った直後、タイミング良く(悪く?)シンヤさんがやって来た。
その手には一振りの剣が握られていた。
「お!やっぱりここにいたな、ガウリイ。
ほれ、借りていた剣。返しに来たぞ」
「もういいのか?」
「ああ、じゅうぶん参考にさせてもらったよ」
そう言ってシンヤさんはガウリイに剣を渡した。
その時、俺は見た。レミィさんの目が剣を見た途端、獲物を狙うハンターの目になったのを・・・
「ねえガウリイさん?」
どことなく猫なで声・・・聞きようによっては甘えるような声にも聞こえる。
「な、なんだ!?」
ガウリイもどうやらレミィさんの様子がおかしいことに気づき、その顔に警戒の色を濃くする。
「ちょっとその剣見せてくださらないこと?」
「何でだ!」
「ちょっとでいいからさ〜」
「だ、駄目だ!」
ガウリイは身の危険を感じたのか剣をすぐさま腰に下げ後ずさりする。
その判断は正しく、よく見るとレミィさんは何時でも抜刀できるような気配を見せている。
「そんな事いわないでさ〜」
そんな気配を漂わせたまま甘えた声だしても逆効果になるのがよくわかる。
「リ、リナ!先に行ってるぞ〜!!」
ガウリイは店の外に飛び出し、かなりの早さで逃げていった。
「あ!まちなさ〜い!!」
レミィさんもガウリイを追うべく店から出て走り出す。
二人ともなかなかの走りだ。俺が外を見たときには既に姿は見えなかった。
「まったく・・・私をおいて行くんじゃないわよ」
そう言ってリナちゃんは歩いて店から出た。
今も鉄球を付けたままなので走ることもままならないのが実状らしい。
「俺・・・なんか悪いことでもしたのか?」
シンヤさんが呆気にとられた顔で俺に尋ねてくる。
「別にそう言うわけでは・・・まあちょっとタイミングが微妙でしたけど・・・・」
「そうか・・・まあいいや。俺も店があるんで帰らせてもらうぜ。ルナちゃん、またな」
「ええまた来てくださいね」
シンヤさんはルナちゃんに手を振りながら店を出ていった。
「なにか・・・最初から疲れてしまったような気が・・・・」
「そうね・・・・」
そうして俺とルナさんはアルバイトを再開させた。
そのあと、レミィさんがどうなったのか・・・・
リナちゃんに聞くところによると、剣をかけてガウリイと決闘したらしい・・・
結果は当然というかガウリイの勝利。レミィさんは修行すべく旅を再開させたようだ。
全くの余談だが、朝のルナさんとの決闘の内容は、
レミィさんがルナさんにかかっていく途中、石に足がかかり、転けて気絶したそうだ。
何ともはや・・・腕はそこそこ良い様に見えたのだが・・・結構そそっかしいのかもしれない・・・・
あとがき
どうも、ケインです。
最初に謝っておきます。どうもすみません!
九月下旬といいながらもギリギリに仕上げ、大幅に遅れました。
こんな私の作品を楽しみにしてくださる読者(いる・・・・はずだよな?)の皆様
次はもっと早めに書きます・・・書きたいと思います・・・・書きたいな〜・・・・
話は変わり・・・・今回のクイズは・・・・特にありません。
次回ではリナの出番すらないですから・・・・ルナさんは多少はあるかな?
外伝は一応第四話で打ち止め、その後本編に戻ります。
読者様からの質問で、『外伝にする意味あるのか?』との声がありますが、
外伝は本編との絡み的な要素がないからです。まあ多少は話し的にでてくるかもしれませんが・・・・
ご都合主義もかなりはいってますが・・・・とりあえず気楽に読んで下さい。
最後にMurasimaさん、八影さん、K・Oさん、悠久さん、綿貫さん、カルマさん、三平さん。
涼水夢さん、フィラさん、音威さん。感想ありがとうございます。
(実は感想メールを手違いで消してしまいました。送ったのに名前が乗ってないと言う方申し訳ありません)
では次の話であいましょう!
代理人の感想
くらげあたま。
いや、レミィさんもいいんだけど何故かガウリィが悪目立ちしてるから・・・・(苦笑)
他の印象が綺麗さっぱり消し飛んでしまいました(爆)。