司狼は…手の内にある刀身が無くなった柄を見下ろした。

そう…砕け散った刀身は、司狼の刀の方だったのだ。

 

 

(スピード、技のタイミング、そして威力。全て揃っていた。

俺は、リカルドの剣をこんな刃のないなまくら刀でも確実に斬れたはずだった。

そう、確信していた…少なくとも、刃が接触した寸前までは……)

 

 

刀と剣が接触した時、司狼は『勝った!』と直感した。それほど、確かな手応えだったのだ。

だが―――――剣と刀が衝突した瞬間、リカルドの剣は角度を変え、司狼の技の威力を受け流したのだ。

 

角度を変えたといっても、それは僅か数度…

たったそれだけで威力をいなし、死に体となった司狼の刀を逆に打ち砕いたのだ。

 

刃が接触した刹那の瞬間―――――そのタイミング以外では、逆にリカルドの剣が斬られていた。

頭でいちいち認識しているようでは間に合わない。本能と直感、そして経験によって得られる凄まじい『技術』だ。

そこまでゆくと、まさに―――――神技かみわざ―――――と賞するべきかもしれない。

 

 

(こんな刀じゃなく、美雪本来の刀だったら…いや、それは言い訳だな。条件はリカルドさんも一緒だ。

今回の敗北まけは、『刀の有利』と『一日の長』があると思いこんだ、俺の慢心だ)

 

「見事です、リカルドさん。俺の完敗です」

 

「いや、何。私が勝てたのは半分は偶然のようなものだ。

もし、君の”刀”が万全の状態だったのなら、勝負はわからなかった」

 

「なんだ、ばれてたんですか…」

 

 

リカルドの言葉に、苦笑しながら頭を掻く司狼。

 

 

「前の試合でのアレは、普通の刀で使用するには少々荷が重かったようだね」

「ええ、ちょっとばかり無理がすぎたみたいです」

 

 

封神剣・絶対零度…司狼が扱う封神剣の基本技。全ての技、奥義はソレを起点にしている。

故に、力の加減はもっともやりやすい…のだが、鋼鉄製の刀では荷が重かったらしい。

司狼もできる限り威力を抑えたつもりだったのだが…それでも耐えられなかったようだ。

 

 

「精一杯手加減したんですけどね。これが一級品の刀ならなんとか保ったかもしれませんけどね」

 

「そうか。では、君が愛刀を持っているときには、抜刀術勝負を受けない事にしよう。

私の愛剣では、かなり分が悪いからな」

 

「確かに、リカルドさんの本来の愛剣エグザンディアは抜刀術に向いてませんからね」

 

 

リカルドの愛剣『エグザンディア』は水晶クリスタルの大剣(もどき)。

抜刀術になどは向いてはおらず、”斬る”よりは”叩き潰す”というのが正解の代物だった。

 

 

「アレなら勝てますよ。速さスピードだけなら…ですけどね」

「その時を楽しみにしよう」

「思いっきり遠慮しておきます。疲れることと面倒事は嫌いなんで」

 

(面倒…か。理由はともあれ、ノイマンさんも表に立ちたがらない。本当によく似た親子だ)

 

司狼の即答に、リカルドは楽しげともとれる苦笑を浮かべる。

 

 

「それはそうと、今の技は凄かったですね。とても人間技とは思えませんよ」

 

「なに、大戦中、幾人もの刀使いと闘った事があるのでね。その際に身に付けた小手先の技術だよ。

それに、達人相手になると、一度見られれば破られる一回限りの奇襲技だ」

 

「確かにそうかもしれませんけど…一体どれだけの経験を積めばあんな技術が身に付くんですか?」

「なに簡単なことだ。襲いかかってくる刀を百本ほど真正面から砕けば自然と身に付く。君もやってみるといい」

 

「それこそ遠慮しておきますよ。俺のモットーは日々平穏で、毎日をそれなりに楽しく。ですから」

 

 

司狼は軽く肩をすくめると踵を返し、あ〜あ、負けちまったなぁ…と、ぼやきながら退場する。

 

リカルドも、剣を納めると司狼に続いて退場した。

一時間の昼の休憩後に行われる、アキトとの試合…決勝戦に備えて……

 

 

 


 

 

 

そして一時間後…リカルド、アキトの両者が、闘技場の真ん中で対峙するように立っていた。

闘気をぶつけあっているわけでも、睨みあっているわけでもない。

街角で出会ったような、なんの変哲もないいつも通りの雰囲気を纏いながら……

 

だが、第三者からすれば、この場合、その場にそぐわない雰囲気が異質に感じ、

別の意味で緊迫しているように感じる。

 

 

『とうとう決勝戦。この次はディフェンディング・チャンピオンのマスクマンとの試合です。

はたして、どっちが勝利するのでしょうかね。今から私はドキドキしています!』

 

『そうですね…常識で考えれば、『剣聖』リカルド・フォスターに決まっていると思われますが、

対するテンカワ選手も、今までの試合から、尋常ならざる相手ということがわかります。

公平な目から見て、リカルド選手の方が実力は上でしょうけど、

戦いの場…戦場ではなく、規則ルールのある試合が、どちらを有利にするのかが勝敗の分かれ目ではないでしょうか』

 

『二人がどのように戦い、如何にして状況を有利にするか、楽しみですね。

両者とも、頑張ってほしいです!』

 

 

 

レティシアの言葉に続き、二人を激励するかのように、観客は大きな声援を上げる。

ただし、比率としては8・2でリカルドの声援が多い。

やはり、一回戦の出来事ケビンとのやりとりが今だ尾を引いているのだろう。

 

ただ…コロシアム中央に立つ二人はさほど気にしてはいない。

それよりも、目の前に立つ強敵との戦いに備える方が余程大事だからだ。

 

 

「…君とこうやって闘うのは初めてだね、アキト君」

「そうですね。俺としては、できるだけこういった事態を回避したかったんですけどね」

 

 

本当に闘いたくないと言わんばかりに溜め息を吐くアキト。

そんなアキトに、リカルドも同じく溜め息を吐いた。

 

 

「司狼君といいアキト君といい…揃いも揃って私と闘うのを嫌がるとは。

君達ほどの手練れで、しかも血気盛んであろう若者なら、進んで闘おうとすると思うのだがね」

 

 

と言いながら腰に下げてある剣を抜くリカルド。

鈍い銀色の刀身が、中天を通り越した太陽光を反射する。

 

 

「相手の実力がわかる者なら、進んでリカルドさんと闘いたいとは思いませんよ」

 

 

アキトもリカルドと同じく、腰に下げてある剣”黒翼”を引き抜き、自然体で立つ。

リカルドの視線は、自然とアキトの漆黒の剣に引き寄せられた。

 

 

「見事な剣だ。私も色々と名剣や魔法剣を見てきたが、それほどの剣はなかなか無い」

「そうですね…使ったのはさっきの試合が初めてですけど、本当に使いやすい剣です」

 

 

目の高さまで持ち上げ、嬉しそうに剣を眺めるアキト。

アキト自身も、この剣…黒翼をかなり気に入っているのだろう。

 

 

「それはなによりだ。ところで、体の方は大丈夫なのかな? 先程の試合でも無理をしていたようだが…」

「ああ、そういえば…前の試合の後のこと、ありがとうございます。許可を取るのに色々と面倒だったでしょう?」

「いやなに、気にすることはない。結局は間に合わなかったのでね」

 

 

アキトの言葉を苦笑で受け取るリカルド。

 

そう、前の試合の最中に、アキトが赤竜の力を使う許可をリカルドは運営委員会にとろうとしていたのだ。

しかし、委員が許可を出し渋っている間に試合が終了し、許可が下りたのは試合が終わってからだった。

 

あのタイミングでリカルドがアキトの申請に答えられたのは、そういう事情があったのだ。

 

 

「それでも…です。それと、体の事は気にしないでください。もう万全の状態ですから」

 

 

アキトは左手に剣を持つと、二、三度ほど剣を振るう。

その素早い素振りに、ヒュヒュンッという風切り音が軽快に鳴り響く。

 

先の時、赤竜の力を解放した際、力がアキトの体内の異常…毒を消し去ったのだ。

元々、赤竜の力は宿主…主人の怪我や毒などの異常を自動的オートで癒す効果がある。

あの時までは、アキトが意図的に力を封じていたため、その効果が発揮されなかったのだ。

 

その為、今のアキトにあるのは肉体的な疲労のみで、外傷などは全く無いほぼ万全な調子に戻っている。

 

そこまでは知らないリカルドだが、アキトの調子が戻っていることに微笑を見せる。

無論、全力で闘えるという嬉しさからだ。

 

 

「そうか。それを聞いて安心したよ。それならば―――――」

 

 

『では決勝戦―――――リカルド選手対テンカワ選手、試合開始!!』

 

 

「私も安心して全力で闘えるというものだ!」

 

 

大地を強く蹴り、一足飛びにアキトに斬りかかるリカルド!

アキトはその攻撃を半歩下がって避ける。

そして目の前をリカルドの剣が通り過ぎた直後、一歩踏み込んでお返しとばかりに袈裟懸けに斬りかかる。

 

すぐさまリカルドは剣を翻し、アキトの攻撃をしっかりと受け止めた。

 

 

「タイミングはバッチリだと思ったんですけどね」

「それでやられるのなら、私は戦場で百回以上死んでいたよ」

 

 

両者は弾かれるように後方に跳ぶと、すぐさま間合いをつめ、激しい攻防を繰り広げ始める!

 

 

『凄いです! 両者とも、一歩も譲っていませんね!』

『確かに凄まじい攻防! あまりの凄まじさに、剣の風切り音がここまで聞こえるかのようです』

 

 

アナウンサー達の言葉と観客の感想は一致していた。

 

リカルドが凄まじく強いと知ってはいるが、実際に闘ったところを見た者はほとんどいない。

正確には、リカルドがこれ程闘っているのを見たことがないのだ。

今まで幾度か試合に出たことはあるのだが、その殆どが秒殺、長くて一分少々。

今大会の試合…一撃勝負をした司狼、弟子であるアルベルトの試合も凄かったのだが、

今この瞬間―――――アキトとの闘いはその比では無い!

 

 

二人は闘技場中央で幾度となる剣を打ち合うと、最初の時と同じく弾かれたように後方に跳ぶ。

そして、アキトは剣を真横に、リカルドは大上段に構え―――――

 

 

「ハァッ!!」

「ヌンッ!!」

 

 

裂帛の気合いと共に剣を振るい、アキトの剣からは真空波が、リカルドの剣からは衝撃波が放たれる!

そして二つの力は二人の中間で衝突し、相殺して消え去った。

 

その光景に、レティシアを含め観客は興奮に手に汗握り、ジッと見つめていた。

 

そんな数多の視線を注がれながら、二人は一旦構えを解いた。

 

 

「うむ…そろそろ良いだろう」

「そうですね。様子見はもう充分です。では……」

 

「「本気で闘おういましょうか」」

 

 

そう言うや否や、二人は再び闘い始める。

ただし、先程よりも桁違いにスピードで―――――だ。

 

 

はたしてどれだけの者が、アキトとリカルドの闘いを把握しているだろうか。

おそらく、観客のほとんどは、アキト達の姿を視認するのでやっと…振るわれる剣に到っては正確に確認できず、

二人が近づいた直後に複数の甲高い金属音と火花が発生しているぐらいにしか解っていないだろう。

 

 

数少ない例外…アレフやシーラ達といったアキトに鍛えられている者達(魔法使い組マリア達は除く)や、

司狼はアルベルトを初めとする自警団の実力者の一部は、息をすることすら忘れて二人の戦いに魅入っていた。

 

それぞれの最強同士の闘い、というのもあるが、

なにより、この様な戦いなど生涯でもそうそうお目にかかれない…瞬きする一瞬ですら勿体ないほどだ。

 

 

本気マジですげぇ…頭では理解できてたけど、アキトって素のままでもここまで強いのかよ」

 

 

拳を握りしめながら呟くアレフ。その言葉は、仲間内の心情そのままと言ってもいい。

アレフを始め、仲間全員は今までアキトの闘いをまともに見たことが無かったのだ。

 

いつもモンスター退治に同行しているリサとて同じ。最近は頻繁に手伝うクレア達も同じだ。

アキトも戦いはするのだが、それは戦いと呼べるかどうか怪しい。

なにせ、今まで一分とかかったことがないのだから。

ゴブリン一ダースなぞほぼ秒殺。オーガーでも一匹だけならば瞬殺だ。

 

例外は、以前の目薬茸を採りに行った際のシャドウとの闘いなどだが、その時はじっくりと見ている暇は無かった。

時間をかけて闘っているアキトの姿など、これがほぼ初めてだと言ってもいい。

 

 

「アキトの奴、赤竜と昂氣ってヤツの力を使ってないんだろ?」

 

「うん、アキトさんは使ってないよ。もし使っていたら目に見えてわかるし…

それに、力を使っていたら、アキトさんってとんでもなく強いんだから。絶対みんなの想像を上回ってるよ」

 

「この闘いを見ながらでもそう言うのかよ…本気マジでとんでもねぇな」

 

 

この中で唯一、アキトの限界近い神竜王との闘いを見ているトリーシャの言葉に、アレフは苦笑しながら返事をする。

想像以上と言われても現実味が無く、今実感できるのは目の前での闘いから解る、アキトの強さのみだからだ。

ただ、アレフ自身はこの前の人狼との闘いを垣間見ていたので、なんとなくは予想していたのだが。

 

 

「お父さんもいい歳なんだから、無理して闘わなきゃいいんだけど……」

 

「リカルドもトリーシャにとってはただの父親だな」

 

 

父親リカルドを別の意味で心配するトリーシャの言葉に、突如後ろから返事が返ってくる。

皆がそちらに振り向くと、そこには父親リカルドの親友で司狼の上司、ノイマンが立っていた。

 

 

「ノイマンさん、どうして此処に?」

「なに、リカルドが本気で闘うと言っていたんでな。それを見に…それと、私もテンカワ君に興味があるのでね」

 

 

トリーシャの隣の席に座りながら返事をするノイマン。

トリーシャは後半の返事…アキトに興味がある、の部分について質問をしようとしたが、

それよりも先にノイマンが皆に向かって口を開いた。

 

 

「トリーシャ、父親リカルドの顔をよく見るといい。あれは無理をして闘っている顔に見えるか?」

「………お父さん、微笑わらってる?」

 

 

動きが止まる瞬間、剣を打ち合わせた時に見えるリカルドの顔は、トリーシャの云う通り微笑わらっていた。

そして、アキトもリカルド同様、純粋に…楽しげに微笑わらっている。

 

 

「あの二人は本当に楽しそうに闘っている。無理なんかはしていない証拠だ」

 

 

ノイマンの一言に、トリーシャ達は一様に納得した。その後の、

 

 

「それと、まだ本気を出しきっていない証拠でもある」

 

 

という言葉も。

 

 

 

 

そのアキトといえば―――――闘技場の端近くでリカルドとの鍔迫り合いに持ち込んでいた。

 

 

「リカルドさん、本当に強いですね」

「伊達に歳と経験は重ねていないのでね」

「そうですか。でも、無理のさせすぎですよ。そろそろ限界じゃないですか?」

 

「そうかもしれん―――――なっ!!

 

 

リカルドの腕の筋肉が膨張し、鍔迫り合いの状態からアキトを弾き飛ばす!

無茶苦茶な力業で、普通なら誰も予測できずに大地に転がるところだが、

無茶苦茶な事をする相手と幾度となく闘った経験のあるアキトは、自ら後ろに跳び、さほど苦もなく着地する。

 

 

そしてそれが―――――数メートルほどの間合いを空けることと、数秒の時間がリカルドの狙いだった!

 

 

「はぁぁっ! ファイナル・ストライク!!

 

 

剣を袈裟懸けに振るうリカルド!

それによって生じた衝撃波と奥義ファイナル・ストライクの闘気が融合し、凄まじい奔流となってアキトに襲いかかる!

 

闘気の奔流は衝撃波などと違って避けにくく、しかも避けきれるタイミング、距離ではない。

咄嗟にアキトは剣を盾のように構えて受け止めるが、激しい奔流に吹き飛ばされた!!

 

それを見たアレフ達を初めとする観客は、闘技場の壁に叩きつけられるアキトの姿を予想した。

 

 

だが―――――

アキトは空中で身を翻し、叩きつけられるはずだった壁に着地・・する!

 

 

そして、壁を蹴り、反動を利用してリカルドに向かって一直線に跳んだ!!

 

 

 

「オォォォッ! 剣技 輝竜八閃!!

 

「ヌンッ!!」

 

 

アキトの輝竜八閃を回避するのが不可能だと察したリカルドは、

八連続攻撃・・・・・の全てを剣で受け止め、防御する。

 

だが、その代償は―――――

 

 

バキンッ!

 

 

柄の根元からバラバラに折れた、リカルドの剣だった。

 

 

「なるほど、これが狙いか」

「ええ」

「回避不可能な技を繰り出し、わざと防御させて武器を破壊する…やられたな」

 

「司狼の一撃でその剣はもう限界間近でしたからね。それに、剣自体がリカルドさんの実力に負けていましたし。

剣を打ち合わせる度に感じましたよ。剣が悲鳴をあげているのに……」

 

「フム。見事にしてやられたというわけか」

「武器は破壊しました。いくらリカルドさんでも剣無しでは闘えないでしょう」

 

「ふむ……そうだな」

 

 

刀身が僅かしか残っていない剣の柄を見ながら肯定するリカルド。

意外なまでにあっさりとした態度だ。

 

 

「剣がない状態…徒手空拳では君に勝てないだろう。

それに、今は試合。殺し合いではないので、この時点で負けを認めてもいい…のだが、

この程度で敗北をすれば、今まで闘ってきた者…私に敗北した者達に失礼だ。故に、まだ闘わせてもらおう」

 

 

その気持ちはアキトも理解できた。

自分と闘い、負けていった者達…その者達の誇りプライドを勝者である自分は背負っているのだ。

情けない負け方をすれば、自分だけではなく、その者達の誇りプライドすら傷つけることになる。

 

アキトにとって『情けない負け』は、自分の強さを信じるルリ達やルナ達、

そして、自分を宿敵ライバルと認める北斗を裏切る行為に他ならない。

 

 

 

「それに…私はまだ十二分に闘えるのでね」

 

 

リカルドはそう言うと、刀身の折れた剣を両手で持ち、正眼に構える。

 

 

 

 

「ほう…リカルドめ、アレをするつもりだな」

「アレ? アレってなんなの、ノイマンさん」

 

 

ノイマンの呟きにトリーシャが質問する。

皆も気になるのか、一様にノイマンに注目する。

 

だが、ノイマンはそれに答えることなく、皆に注意を促す。

 

 

「皆もよく見ておくといい。リカルドの奥の手の一つが見られる機会など、そう滅多にないからな」

 

 

 

 

 

「世の源たる四元の精霊よ 汝等が象徴せしその大いなる力 我に貸し与えよ! エーテル・バースト!!

 

 

リカルドが魔術を発動させると、大地より黄色の…ともすれば金色に見える宝玉が姿を現す。

それと同時に、空中に発生した炎の渦からは紅い宝玉が、水からは蒼い宝玉が、

そして旋風からは翠色の宝玉が発生する。

 

そして、その四つの宝玉は吸い込まれるようにリカルドの体内へと消えた。

 

その直後、リカルドの身体から闘氣でも魔力でもない、凄まじく強い力の波動が放たれる!!

 

だが、それで終わったわけではない。リカルドはさらに―――――

 

 

「炎の精霊よ その荒ぶる破壊の力 我に貸し与えよ  イフリータ・キッス!

  風の精霊よ その大空を舞う飛翔の力 我に貸し与えよ  シルフィード・フェザー!

    大地の精霊よ その不動なる硬の力 我に貸し与えよ  イシュタル・ブレス!

      水の精霊よ その命の源たる癒しの力 我に貸し与えよ  ウンディーネ・ティアズ!

 

 

 

今度はそれぞれの宝玉を、それぞれ別の魔術で喚んだ。

それを見たトリーシャやクリス達、魔術師の見習い達は、リカルドの行動が理解できずに不審な顔をする。

 

 

 

「お父さん、なに考えてるんだろ?

せっかく”エーテル・バースト”を使ったのに、それじゃあ打ち消しあってまったく意味無いじゃない」

 

 

トリーシャの言葉にノイマンを除いた皆が一様に頷く。

 

精霊魔法とは、精霊の力を召喚、体内に取り込むことによってそれぞれ特性とした力を上げる魔法だ。

”火”なら攻撃力、”風”なら速さ、”地”なら防御力、そして”水”なら治癒力を上げる。

ならば、四つとも召喚して取り込めば良い…と、普通なら考えるが、そうは簡単にはいかない。

違う属性の精霊の力は基本的に同時に宿せず、後の術が優先され、効力を発揮するのだ。

 

しかし、何事にも例外はある。それが最初に発動させた”エーテル・バースト”

本来同時に宿せない四つの精霊の力を宿すことができる、最高位の精霊魔法だ。

だが、これも後の基本法則…『後の術が優先される』事に外れていない。

 

故に、この法則性に順当に従うと、最終的にリカルドに影響を及ぼすのは、

一番最後に発動させた水の精霊魔法”ウンディーネ・ティアズ”だけ。ということになるのだ。

 

 

「いっぱい精霊魔法を使ったって、ただの魔法力の無駄になるだけじゃない」

「そうだよね。でも、僕にはリカルドさんがそんな初歩的な失敗ミスをするとは思えないんだけど……」

 

 

トリーシャの言葉を、気弱な声で反論するクリス。

トリーシャの意見も一理あるが、また、クリスの意見も一理ある。

 

 

「その子の言うとおりだ。よく見るがいい、アレがリカルドの”奥の手”だ」

 

 

観客達の視線が集まる最中、四つの宝玉が召還主であるリカルドの元に集まる。

だが、それは体内に…ではなく、リカルドの身に纏っている防具にだ。

 

黄色の宝玉は衣服に、蒼い宝玉は籠手などの防具に、翠の宝玉はブーツに、

そして、紅い宝玉は刀身のない剣の柄に宿り、それぞれの力を発揮する。

 

衣服は鉄よりも高い防御力を、防具は傷が消え新品同然に、

ブーツは風を纏い、大地より数センチほど浮かび上がり、

そして剣は、鋼の刀身に代わり、炎が新たな刃となって発生した!

 

目の前の出来事に、トリーシャ達…いや、観客全員が呆然とする。

 

 

「アレがリカルドの奥の手の一つ…精霊の力を武具に宿す術だ」

 

「そんな事ができるなんて知らなかった…」

 

「誰でもできるってわけじゃないからな。生まれつきの精霊との相性もある。

そして、リカルドも相当苦労し、並々ならぬ努力を重ねたと聞いた。その結果が…あれだ」

 

 

 

リカルドから放たれていた力の波動がさらに強くなったのをアキトは感じた。

それはエーテル・バーストをかけた時の倍…下手をすれば三倍以上だ。

アキトは知る由もないが、それは武具と体内の精霊の力が共鳴しているからだった。

 

 

「待たせたね、アキト君…では、闘いを続けようか」

 

 

その場から忽然とリカルドの姿が消え、一瞬後にアキトがその場から真横に吹き飛んだ!

アキトの背後に回ったリカルドが剣をなぎ、アキトはそれを受け止めたのだが、耐えきれずに吹き飛んだのだ。

 

 

(力がとんでもなく上がっている。それに何より、凄まじく速い!!)

 

 

滑りながらも大地に着地するアキト。そのアキトの目の前に、再びリカルドが姿を表す!

あまりの速さに、観客はまるで瞬間移動しているかのような錯覚すら覚える。

 

 

「クッ!!」

 

 

再び振るわれたリカルドの剣を受け止めるが、やはり同じ結果―――――後方に弾き飛ばされた。

 

アキトは数メートルほど滑って体勢を立て直すが、すぐさま横に跳ぶ!

その一瞬後―――――超スピードで間合いをつめたリカルドの炎の剣が振り下ろされ大地に一筋の傷をつける。

 

 

(攻撃は受け流せばいいが…あの速さは厄介だな)

 

 

先程の攻撃はかろうじて回避に成功したアキト。

アキトの目はリカルドの動きを捉えているのだが、如何せん身体が追い付いていないのだ。

”氣”で身体能力は上がっているのだが、それでもまだ少し足りない。

 

 

(昂気さえ使えれば圧されることなんか無いのに…

こんな事なら、俺もこの世界の精霊魔法シルフィード・フェザーを習っておけば良かった)

 

 

再度、超スピードで接近してきたリカルドと斬り合いを始めるアキト。

力、スピード、共にリカルドはアキトを上回っており、明らかに劣勢な状態だった。

 

しかし、そんな劣勢な状態でもアキトの目は光を失っていない。

冷静に、勝つための方法、手段を計算している。

 

 

 

(まずは動きを止めるのが最初だ)

「地破・鎖縛陣!!」

 

 

鎖縛陣とは”地破”系の補助技で、大地の氣が一定範囲内にいる敵を束縛する術。

早い話、見えざる重力の鎖により相手の動きを止める氣功術だ。

 

 

「グラビティ・チェインか!?」

 

 

アキトの技を魔法『グラビティ・チェイン』と勘違いするリカルド。

効果も性能も全く一緒のため、勘違いしても仕方がないだろう。

 

さすがのリカルドも、いきなりの重力増加に動きを止める!

 

 

(今だ! 今度は本気の”輝竜八閃”を直接ぶつけて倒す!)

 

 

全身の氣を漲らせ、極限まで身体能力を向上、同時に黒翼に氣を纏わせる。

”氣”を纏った黒翼は自重を軽減し、さらには紫電を発生させて攻撃力をアップさせる。

 

この状態の輝竜八閃なら、たとえ純粋なドラゴンでもバラバラに斬り刻むだろう。

 

 

 

剣技 輝竜「カァッッ!!」―――――なっ!?」

 

 

リカルドの裂帛の気合いと共に放たれた闘気の衝撃波が、鎖縛陣重力の鎖もろとも接近したアキトを吹き飛ばす!

 

 

(気合いでアレを吹き飛ばすなんて、本当に人間か!?)

 

 

素早く着地しながら悪態をつくアキト。だが、リカルドの反撃はそれで終わったわけではなかった。

 

今度は、周囲の大気が―――――正確には先程放たれた闘気が再びリカルドの集まり始めたのだ。

咄嗟に回避行動をとろうとするが、闘気の流れがアキトの動きの邪魔する。

 

そのたった数秒の妨害が、リカルドが技を完成させのに充分の時間だった。

 

 

 

「奥義―――――闘魔 爆流破!

 

 

リカルドの闘気と剣の炎の魔力が混じり合って発生した奔流が、アキトを巻き込んで闘技場の一部を破壊する!

結界に阻まれて観客には被害が及ばなかったが、それ以外…

闘技場の壁や抉られた大地の破片などは高エネルギーの激流に巻き込まれて粉々に砕け散る!

 

 

 

 

『……………』

 

 

あまりの凄まじいリカルドの奥義に、観客は本気でアキトの死を予想する。

 

凄まじい奔流の後には、粉々になった破片が粉塵となり、周囲からの視界を妨げているため、

アキトの生死が解らず、その疑念がより一層深まる……

 

 

そんな中、リカルドは粉塵の中に向かって話しかける。

 

 

「見事だ、アキト君。よく今の技を防いだ」

「それはどうも…正直、思わず昂氣を使いそうになるほど危なかったですけどね……」

 

 

粉塵が徐々におさまってゆくと同時に、身体のあちこちに傷を負ったアキトの姿が周囲にさらされる。

岩などを粉塵にする闘気の奔流に巻き込まれたにしては軽傷だ。

 

 

あの闘気の奔流に巻き込まれる直前、アキトは全ての氣を使って防護壁をはったのだ。

だが、それでも防ぎきれず…否、なんとか被害を最小限に抑える事しかできなかったのだ。

 

先程も述べた通り、外見上は軽傷だが、中身…体内はかなり傷ついていた。

 

打ち身はそれこそ数えきれない程、腕や肋骨にも幾つかヒビが入っており、

体内の医療用ナノマシンが回復に務めているのが現状だった。

 

 

「しかし、まさか精霊魔法を使ってもいないのに今の私と互角に戦えるとは…

この状態となった私とここまで渡り合える者など数えるほどしかいなかった」

 

「そうですか…(リカルドさんもそうだけど、渡り合える人物がいる事も正直驚きだな…)」

 

「そうですね。こんな事になるのなら、この世界の精霊魔法を学んでおけば良かったって思っているところです」

「私にとっては幸運だな。アキト君が精霊魔法シルフィード・フェザーを併用すれば掛け値無しに脅威だからな」

「正直、昂氣が使えれば―――――とも思っています」

 

 

アキトの言葉に苦笑するリカルド。

この前の人狼との闘いじゃれあい?を見て、昂氣を使えばアキトが今の自分と同等以上の動きができることを知っているのだ。

 

実戦ギリギリの闘いが売りのこの大会…強力な魔法すら使用可能なのに、アキトのみ禁止事項が多い。

その事に、一番憤慨しているのはリカルドなのだ。

故に、リカルドは愛刀を用いず、鋼鉄製の剣を用意したのだ。

 

 

「さて…どうするかね? アキト君。満身創痍の状態で、私に勝てるとは思ってないだろう?」

「そうですね…でも、俺は負けるわけにはいかないんで。最後まで足掻かせてもらいますよ」

「ふむ…それは、くだんの教会の事かね?」

「そうです。ケビン君と約束したもので…今回は、是が非にでも負けられないんですよ」

 

「そうかね…ではこうしよう。この試合で私が勝っても、優勝賞金を全額教会に寄付しよう。

マスクマンにも話をすれば、彼も協力は惜しまないはずだ」

 

「なるほど…それはいい提案ですね。少なくとも、教会は無事存続しますから。

でも……俺は、ケビン君の”想い”も背負っているんです。

ケビン君に言いましたからね『後は兄ちゃんに任せておけ』って。その約束を、破りたくないんですよ。」

 

 

身体に走る痛みを精神力で抑え込みながら立ち上がるアキト。

そんなアキトを見て、リカルドは油断なく炎の剣を構える

 

 

「君の覚悟はしかと受け止めた。だが、現実はそれほど甘くないのは君もよく知っている事だ。

満身創痍の上、二つの力の封印大きなハンデを負っている君に勝ち目はない」

 

「別に…力が使えないなら使えないで、今使用できるすべを駆使してなんとか勝ちますよ。

そして、これが勝利を決定的にする鍵です」

 

 

アキトは黒翼を鞘に仕舞うと、何時の間に拾ったのか、

左手に持っていた砕けたリカルドの剣の一部(切っ先から二十センチぐらいの刀身)を、

元の持ち主リカルドにもよく見えるように、目の高さまで持ち上げた。

 

 

「(一体何時の間に……)それ使って私に勝つのかな?」

「ええ。決まりさえすれば…いえ、決めてみせます」

 

 

アキトは左手をゆっくりと胸の辺りまで下げると…一気に折れた刀身を上空に投擲する!

リカルドは思わず投擲された刀身を目で追う。

 

しかしそれは一瞬だけ、すぐにアキトに視線を戻す―――――が、

 

 

「地破・天衝っ!!」

 

 

突如、大地から氣の奔流と大量の土砂が噴き上がり、リカルドに襲いかかる!

咄嗟に炎の剣で噴き上がった氣と土砂を薙払うリカルド!

 

その一薙ぎで土砂は散り散りに吹き飛ぶ。

そして、その土砂の影に隠れて接近したアキトの姿を露わにした!

 

地面すれすれまで身を屈めていたアキトは、リカルドの腹部めがけて拳を突き上げる!

 

 

「空破・天昇っ!」

 

 

リカルドはアキトの拳を反射的に剣の柄で受け止めるが、

空破による竜巻にも似た上昇気流まではどうにもならず、はるか上空へと飛ばされる!!

 

 

「クッ!」

 

 

きりもみしながら上空に飛ばされるリカルド!

 

だが、頂点にさしかかったところで体勢を立て直し、すぐにアキトのいる位置に視線を向ける。

 

しかし―――――そこにはアキトの姿はすでになかった。

すぐさまリカルドはアキトの気配を探すが、

 

 

「上かっ!」

 

 

その必要はなかった。

なぜなら、アキトの”氣”が凄まじいまでに高まっており、探すことなく位置がわかったからだ。

 

リカルドがそちらに振り向くと、そこには自分よりも上空で右の拳を引くように構えているアキトの姿があった!

 

 

(アキト君の状態、力の高まりを考えて…この一撃で決めるつもりだ!)

 

 

右の手首辺りに左手をそえ、全ての”氣”を拳一点に集束させるアキト!

もしこの場に氣を視認できる者ルナやニースがいれば、アキトが集束した氣が通常とは違い、

輪郭がぼやけている―――――否、無いことに気がついただろう。

 

それは、アキトが学んだ氣功術の中でも『最高の破壊力』をもつ最凶の魔技―――――

 

 

「全てを壊塵に帰せ―――――砕破!!

 

 

超振動する氣を纏った拳を、そうとは知らないリカルドは炎の剣で受け止めた瞬間、

刀身を構成する魔力の炎が一瞬撓み、

 

ズパンッ!

 

という炸裂音と共に小さな飛沫となって散り散りとなる!

 

そして、アキトの拳はそのままリカルドの胸元に吸い込まれるように接触し―――――殴り飛ばした・・・・・・!!

 

 

まともに喰らったリカルドは恐ろしい勢いで大地に叩きつけられるが、服にかけられていた地の精霊魔法イシュタル・ブレスと、

リカルド自身に施したエーテル・バーストにより、殴られたダメージも、落下の衝撃もほとんど無い。

 

(ダメージが軽い、さしものアキト君も限界と云うことか……)

 

最後の攻撃には大した威力が無かったことに、アキトに限界がきたと察したリカルドは、

試合に決着を…アキトの最後の一太刀をくわえるべく立ち上が―――――ろうとした瞬間、

 

 

ヒュッ―――――!!

 

 

上空からリカルドめがけて何かが落下してきた!

リカルド咄嗟に身をよじり、飛来した銀色の何かを避ける。

 

 

そして、リカルドはその体勢のまま、硬直したように動きを止めた。

 

否―――――動きが止まってしまった。

 

 

 

「身体が…動かない!? まさか―――――」

「俺の勝ち……で、いいですね。リカルドさん」

 

 

何かに気がついたのも束の間、アキトに黒翼の切っ先を突き付けられるリカルド。

リカルドはその切っ先を数秒ほど見た後…溜め息を吐きながら、

 

 

「ああ。私の負けだ」

 

 

自らの負けを宣言した。スピーカーからも、審判のアキトの勝利宣言が発せられる。

 

 

それを聞いたアキトは、黒翼を天に向かって掲げた。

この武器を作ってくれた者の約束を果たすために―――――

 

 

そして―――――エンフィールド大武闘会、優勝者を皆が改めて認識した瞬間だった。

 

 

 

観客のほとんどは、エンフィールドの英雄リカルド・フォスターが倒されたことに、半ば呆然としていた。

少数…アキトの応援に来ていた仲間や、教会の孤児…ケビン達は、大喜びでアキトに声援を送っていた。

 

 

「まったく…私としたことが、アキト君の策にまんまと引っ掛かってしまったな」

 

 

立ち上がりながら苦笑するリカルド。

アキトの手には、先程までリカルドの影に突き刺さっていた金属…折れた剣の先が握られている。

 

 

「わざわざ宣言し、私の注意を”折れた刀身それ”に向け、上空に投げることによって一瞬だけ気を逸らし、

次に、あの大地からの衝撃波により私の動きを一瞬止めた。

その二つの一瞬…心と体の隙をつき、君は私を上空へと飛ばした。」

 

「………」

 

 

リカルドの先程の一連の攻撃の解析を黙って聞くアキト。

反論する必要がないからだ。リカルドの読みは当たっているからだ。

 

 

「上空に押しやられた時、私は君が最後の攻撃に出ると判断した。事実、そうだった。

ただ違ったのは、君の目的はその攻撃で私を倒すことではなく、地面に叩き落とすこと。

それもある一点…上空に放り投げた剣が落ちるあの場所に…だ。

そして私は、その事に気がつくことなく、あの剣に影を貫かれ…身動きが封じられた。違うかね?」

 

「いいえ、その通りです。普通に”影縛りシャドウ・スナップ”をかけようとしても、かかってくれる相手リカルドさんじゃないですからね。

まさかリカルドさんも、あんな方法で動きを止めるとは思ってなかったでしょう?」

 

「ああ、予想外だった。君が搦め手でくることを含めてね」

「今のままで真正面から闘っても勝てませんから。それに、約束もありましたしね」

 

「ふむ…次は、制約無しの君と闘いたいものだな」

 

「俺はごめんです。どう考えても洒落にならない闘いになりそうですし。

それにあの大きな剣…『エグザンディア』でしたっけ? アレはなんだか危険な気がしますからね」

 

「そうか、それは至極残念だ。では、私は次の試合を…マスクマンとの闘いを観客席でゆっくりと見学しようか。

気をつけたまえ、アキト君。マスクマンは強い―――――ある意味、私よりもな」

 

「ええ。そうみたいですね」

 

 

リカルドの真剣な顔に、マスクマンの強さの程をなんとなく察したアキトは忠告を素直に受け取る。

あのリカルドが『強い』と掛け値無しに賞するのだ。マスクマンは本当に強いのだろう。

 

 

「辛いだろうが…頑張ってくれたまえ」

「はい、わかりました」

 

 

そんなアキトの反応に満足したのか、リカルドは一回頷くと闘技場から退場した。

 

 

 

次は…”無敗”の男。リカルドとは別の道で最強のマスクマンとの闘いだ。

アキトの闘いは…まだ終わらない。

 

 

 

―――――三十話に続く―――――

 

 

 

(あとがき)

 

 

どうも、ケインです。

かなり投稿が遅れまして、申し話ございません。

仕事が色々と忙しく、それとなかなか筆が進まなかったんです。

正直、アキトはリカルドとの闘いで負けさせる予定だったんですけどね……

やはり、アキトの優勝で終わらせるのも良いのでは? と云う意見があったため、色々と考えていたんです。

 

ついでに言えば、リカルドですけど、百二十パーセント実力は出していません。

彼の本気は、愛剣を持つことにより発揮されます。

と云っても、剣技云々ではなく、最大攻撃が…なんですけどね。

 

次はマスクマンとの闘いです。

彼は本当にリカルド並に…ある意味、リカルドより強いです。

どういった闘いを得て、どちらが勝つか…まだ未定です。本当に悩んでいます。

(最近悩んでばかりですけどね……)

 

 

それでは、感想をくださった皆様方、まことにありがとうございます。

その感想を励みにして、一生懸命書かせてもらっています。

 

次回もまたよろしければ読んでやってください。ケインでした……