平凡
(名・形動)[文]ナリ
特にすぐれたところや変わったところがなく、ありふれている・こと(さま)。
三省堂提供「大辞林
第二版」より
ずずずずずーーーーーっ・・・・・・
「平和ねぇ、孝之」
「ん、そうだな」
部屋の中にそよ風が吹き込み、窓に添えつけてある風鈴が涼しげな音を奏でる。
そして、俺と俺の彼女である速瀬水月は昼食後のお茶を楽しんでいた。
ちなみに昼食は素麺。
たまには冷麦を食べようよと水月に言われているが、夏の昼食の麺類は素麺。
俺のこだわりである。
ちり〜〜〜ん♪
夏特有のちょっと湿気の含んだ暖かい風が部屋の中に流れてきたが、そんなことはことは気にせずテレビを見る俺たち。
テレビでは長寿番組である『午後は○○ おもいっきりテレビ』
伏字になっていない? そういうツッコミはいりません。
ついでに若者っぽくないというのもノーサンキューだ。
こうして、俺たちは海の日の祝日をのんびりと過ごしていた。
3年前のあの日、俺の人生は一転した。
日常、たまに起こる自動車事故。
それが彼女、俺の恋人だった涼宮 遙の全てを奪った。
植物状態になってしまった遙。
全て、俺のせいだ。
デートを約束していたあの日、偶然速瀬と出会い、誕生日プレゼントをせがまれて露店で指輪を買ってあげていた。
そして少し遅れて待ち合わせの場所に行くと、目の前には回転灯と人垣が見えた。
そして耳にしてしまった、警察官の言葉。
事故に遙が巻き込まれた。
俺は、その場から動けなくなった―――――
ただ、後悔と自己嫌悪をし続ける日々。
ただ、遙の横に寄り添うだけの日々。
ただ、自分に向けられる全てを拒否して、自分自身を否定し続ける日々。
進学も失敗した。
周りの人達にも心配をかけさせた。
でも、励ましの言葉なんて耳障りなだけだった。
自分の心が黒くなってゆくがわかる。
それでも蜘蛛の糸のように儚すぎる希望に縋るように、眠り続ける遙に笑顔で話しかける。
速瀬や慎二がお見舞いに来たよ。
茜ちゃんが綺麗なお花を持って来たよ。
今日はいい天気だ。
目が覚めたらまたデートに行こう、みんなで遊びに行こう。
あんまり寝坊すると、また茜ちゃんに遙伝説と言われてバカにされるよ。
遙の手を摩りながら、思いつく言葉を話しかける日々。
少しずつ痩せてゆく遙の姿を見ながら、最後に零す言葉は―――――ごめん。
1年も過ぎた頃だろうか?
俺と速瀬と慎二は、遙のお父さんに言われた。
「みなさん、特に孝之さんには孝之さんの人生があります、もう遙の事は忘れてください。
いままで、ありがとうございました。
遙のことは私たち家族で面倒を見ていきます。
ですから、もう病院には来ないでください」
言っている意味がわからなかった。
速瀬と慎二に引きずられるように病院を後にした俺は、ただ呆然としていた。
見舞いに来るな?
自分の人生?
遙の事を忘れろ?
自宅に着き、理性に感情が追いついた瞬間、俺は泣いた。
ただ、泣き続けた。
なにも果たせなかったことを悔やんだ。
なにも出来ない事を呪った。
それからは、ただ俺と言う存在がそこにいるだけの日々。
速瀬と慎二、特に速瀬は俺のことを励ましてくれた。
ずっと続けていた水泳を辞めて、俺の世話をしてくれた速瀬。
献身的に俺を支え、時には強引に俺を自宅の外へと連れ出していった速瀬。
ほんの少しずつ、俺の中でも止まっていた何かが動き出しているような気がした。
「ほら、孝之!
掃除の邪魔なんだからたまには散歩でもしてきたら?」
追い出すように速瀬は俺に散歩をさせた。
思えば、一人で外を散歩なんて最後にしたのはいつだっただろうか?
ただ、なんとなく歩いた。
吹く風に背を押されるように気の向くままに街を歩いてみた。
ほんの少しだけ、気が晴れるような気がした。
散歩に出て1時間、そろそろ速瀬の掃除も終わる頃だろう。
【選択肢】
1.自宅に戻る (←ゲーム『君が望む永遠』(age)をプレイして脳内補完してください)
2.なんとなくインターネットカフェに行ってみる (←以降をお読み下さい)
街を歩いていると、新装オープンのインターネットカフェを見つけた。
最近、インターネットカフェどころか喫茶店も行っていないことを思い出して、なんとなく入ってみる事にした。
速瀬の性格なら、一度掃除を始めると気の済むまで徹底的にするため時間が掛かるのは知っている。
時間を潰すにはちょうどいいかもしれない。
「いらっしゃいませ」
入り口には好青年なウエイターが立っていた。
「本日はオープン記念としまして、無料でインターネットのご利用とコーヒーのサービスとなっております。
ごゆっくりとおくつろぎ下さい」
久しぶりの散歩なのにラッキーだった。
・・・・・俺は、そのサービスのコーヒーを前もって注文して、空いている席に向かった。
ただ、席に向かう途中に見た他の客の反応が異様に感じた。
「ほ、北ちゃん。ハァハァ!」
「おのれ、アキト! 貴様こそ漢の天敵なりッッッ!!」
「メティちゃんが! チハヤちゃんが!
ひどい、ひどすぎるわよ大魔王!! しくしくしくぅぅぅ・・・・・」
「わ、わしにも神が見えたのじゃああああ!!!」
―――――入る店を間違えたかな?
いや、あきらかに連中の反応が怪しいし!!
しかも老若男女問わず、自分の世界にイッちゃってるし。
「お客様?」
「うおぉあっ!?」
いきなり背後からぬぅっと現れたウエイターに、俺は驚いておもわずたじろいだ。
「コーヒーのご用意が出来ました。
どうぞ、お席にお着きください」
「ちょっと待ってください!
ここって普通のインターネットカフェですよね?」
「もちろん、そうでございます」
「でも、なんか他のお客さんの雰囲気がちょっと・・・・・」
「・・・・・(にやぁり)」
俺が言い終わる前に、ウエイターはなんとも言えぬ笑みを残して去っていった。
誰も座っていない席に俺のコーヒーを残して。
「最近のネットカフェはこういうところなのかな?」
ものすごく嫌な予感はしたものの、俺は上着を脱ぎ、席についてコーヒーに口をつけた。
目の前にはパソコン。
パソコンはそこそこ使える俺はとりあえず、インターネットエクスプローラーを起動させた。
初期設定されてあるサイトは・・・・・『Action』?
普通はYahoo!!とかなんじゃないのか?
とりあえず、Yahoo!!に行こうとアドレスバーにURLの直接入力を試みた。
「な、なぜ入力できない?」
アドレスバーは俺の事を馬鹿にしているかのように入力を拒否し続けた。
「なんなんだ、このパソコンはッ!」
おもわず他の席に移ろうと周りを見渡すと、とある掲示板が目に付いた。
『当店は『Action』オンリーなカフェです』
「なんだそれは!?」
『尚、一切の苦情は受け付けませんのであしからず』
なにも言う気力はなかった。
帰ろうかとも思ったが、まだ全然減っていないコーヒーを残してゆくのももったいない。
とりあえず、この『Action』というサイトを見てみることにした。
「うひゃ〜っはっはっはっはっは!
忙しいのである、
見つけたのである、
逃さないのであるっ!
我が名はBen!
世紀の大天才、
ドォクタァァァァァァァァッ!
Beェェェェェェnッッッッ!」
「・・・・・・・・・・意味が分からん」
ど、どうやらトップページのメッセージは更新事に変わるようだ。
今回は、どうも俺の範疇外のネタを基にして書かれているのだろう。
次に、『はじめに』の項目を読んでみる。
ふ〜〜〜ん、普通の注意事項だ。
そして、トップページに戻った。
・・・・・あれ、『はじめに』の紹介にないコンテンツがある。
俺はそのコンテンツ『「時の流れに」』というところをクリックしてみた。
『機動戦艦ナデシコ
連載 時の流れに 』
「ナデシコ?
ああ、懐かしい名前だなぁ」
昔、学校から帰ってヒマだったからそんなアニメを見たなぁ。
それからしばらくして劇場版まで公開されたらしく、レンタルビデオでなんとなく借りて見た覚えがある。
懐かしさから、俺はその序章を読み始めた―――――
「・・・・・・・・・・あの、お客様、本日はもう閉店なのですが」
ウエイターにそう言われ、俺はハッとなって外を見た。
すでに夜。
店の中の客は俺だけになっていた。
冷静になって、今までの自分のことを思い出した。
懐かしいなぁと思って読みはじめたSS。
時に笑い、時に泣き、時に作者に殺意を抱き。
そして『時の流れに』を読み終えて、他の投稿作家の作品を読み、管理人であるBen氏の日記を読み、
今はその他のコーナーを読んでいた。
それも、猛烈なスピードでたった数時間のうちに!
「目、血走っていますけれど、大丈夫ですか?」
心配そうに語りかけるウエイターを押しのけ、俺は席から立ち上がった。
「・・・・・俺は」
「はぃ?」
「俺は、、、、、俺はッ!」
「あのぉ、お客様?」
「俺は平凡に生きていくんだーーーーー!!!
うがぁぁぁあああああ!!!!!」
俺は心の中の全てが吹っ切れたかのように叫びながら、インターネットカフェ『大蒲鉾』を後にした。
「・・・・・ふっふっふ、これでまた一人堕ちましたね(にやぁり)」
一人、店で佇むウエイターは俺が見ていたディスプレイを見た。
そこには、過去の表紙の言葉コーナーで―――――
大、代、台、玻璃。 そしてまだ見ぬ蒲鉾たちをヒロインにして繰り広げられる人間ドラマ。 君は、人生芸人達のただ平穏に生きたいと願う 不可能な望みを叶えることができるのか・・・・ あの、「君が望む永遠」をも越える史上最強の鬱ゲーム 「君が望む平凡」 ActionSoftより発売未定! ※なお、クリアできなくても当方はそれに関する一切の責任を負いません。 |
ドタドタドタドタドタッ! ガチャ!! バタンッ!!!
「速瀬!!」
「孝之!?
どうしたのよ、大声出して。あまりにも帰ってくるのが遅いから心配したじゃない!!」
俺の騒がしい帰宅に、水月は驚きながらも俺に詰め寄ってきた。
「いったい、今何時だと思っているの?
久しぶりに散歩に行ったと思えばなかなか帰ってこないんだから!
そんなにわたしを心配させたいの!??」
「速瀬、俺は決めた!」
「き、決めたって、、、なにを?」
「これから、俺は平凡に生きる!!」
「・・・・・はぁ?
ちょっと孝之、だいじょうぶ?」
「人っていうのは平凡な人生が一番なんだよ!
ただ平穏に生きることこそ難しいことであり、人としての在るべき姿なんだとわかった!
だから速瀬―――――いや、水月!
俺と一緒に平凡な人生を生きていこう!!!」
「――――――――――うん♪(瞳:うるうる)」
ひしぃっ!!!(抱き合い)
人生とは波乱万丈な事が多い。
でも、俺は前に進まなければならない。
それが棘の道となろうとも、俺は水月と共に生きてゆく。
遙、見守っていてくれ。
俺たちは生きてゆく。
―――――――――― ただ、平凡に ―――――
【 君が望む平凡 】
――――――――――完?
※注意
・本SSとゲーム『君が望む永遠』は一切関係がないとお考え下さい。
・『君が望む平凡』は過去のActionのトップページ『表紙の言葉』をお借りいたしました。
・作者はActionにハマッても平凡な人生を歩もうと思う人がいるのは稀だと認識しております。
・続きなんぞ期待しないでください。全てはきっと『ActionSoft』ががんばってくれるでしょう!!(爆)
・今回、作者はいろんな意味で覚悟を決めて投稿しますッッッ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・びくびくっ(怯)
どうも、きーちゃんです。
うわっ、投稿する前からプレッシャーを感じる!!
いやいや、皆様の殺意は十分わかるのですが、おれっちの言い訳だけをさせてください!!!
全ては、おれっちの友人から借りたCDが始まりでした。
『ドラマシアター 君が望む永遠
涼宮 遙 編 & 速瀬 水月 編』
ゲームもプレイした事があるので、借りてみました。
で、車の運転中に聞いていました。
・・・・・車で聞くもんぢゃねぇ!!!
逃げ場ないよ、ママン!
ハンドルを右に切っても、左に切っても、アクセル全開でも逃げられないよ、ママンッ!
思わず、窓締め切って叫んだよ、ママンッッ!!
遙、そんなに純粋に想わないで!!!
水月、痛ましいほどに支えないで!!!
茜、そんなに責めないで!!!
千のナイフが胸を刺すよ、パパン!!!
(・・・・・ん?)
みなさん、もしこれから聞く機会がありましたら、ご注意を。
聞く場所は選びましょうね。いや、マジで。
そんなわけで、いろんな意味でガラスのハートに傷を負ったおれっちが、鬱の境地でこれを書くことにしました。
・・・・・・・・・・しっかし、今回のSSは無茶苦茶だなぁ、おれっち(激ヘコミ)
それでは、またお会いしましょう。
では!!!
最後に、『君が望む平凡』を引用させていただいた『Action HomePage』に感謝を。
BGM:涼宮 遙&速瀬 水月『君が望む永遠 Rumbling Hearts (twin-vo.ver)』(←やっぱ、これでしょ(笑))
代理人の感想
ノーコメントだっ!(爆死)
つか、何を言えと。