機動戦艦ナデシコ OVERTURN The prince of darkness
第九話『レベリオンに奉げる気持ち』
上空で佇むオシリス、突如ボソンジャンプしてきた戦艦とエステバリス。
どちらも、異なるモノとしか感じる事しかできませんでした。
「あれが………ユーチャリスとブラックサレナかよ」
横で呆然となったウリバタケさんが言葉を零しました。
「名前、知ってるんですか?」
「え? お、おうよ。俺が知らないロボットがあってたまるかってんだ!」
そういってウリバタケさんは笑いましたが、どうしてもカラ笑いにしか聞こえません。
そしてその視線はユーチャリスとブラックサレナと呼ばれた戦艦とエステバリスに釘付けです。
………また、隠し事ですか。
でも、その目に浮かんでいる怒ったような感じはなんですか?
すると、わたしの両肩に少し冷たい手が乗りました。
「ルリちゃん、良く見ておくのよ」
振り返ると、イネスさんが寂しげにわたしに話し掛けてきました。
「どういうことですか?」
わたしの質問にイネスさんは静かに首を振るだけでした。
ただ、これだけはわかりました。
これは、わたしたちナデシコクルーが見届けなければならない戦いだと言う事が。
思わず、笑みを浮かべてしまうな。
向こうは未来の技術満載でパイロットが慣れている機体、こっちは仕上がったばかりで起動実験が始まったばかりの機体。
まぁ、予想していなかったわけではないから覚悟を決めていたが、、、、、後から、カツミに絶対説教されるだろうな。
「『……………始めよう』」
同時の言葉を合図に起動したての核融合炉を全開に押し上げた。
猛烈な加速と共に、オシリスとブラックサレナが空を舞う。
予想通りとはいえ、やはり初速は向こうの方が速かった。
オシリスの上を舞うブラックサレナが方向を変え、距離を取ろうとする。
「簡単には逃がさんよ!」
俺は剣を持たない右手をブラックサレナに向ける。
同時に手首の部分から手を畳み、レールカノンを用意した。
その間にもブラックサレナは変則的な動きで狙撃マーカーから姿を逃がしている。
「ったく、あの反応速度。嫌になるね!」
俺は狙撃マーカーを消し、狙いをつけて一発打ち放った。
バリバリバリッ!!!
雷電のような轟音と共に放たれたレールガンは簡単にブラックサレナのディストーションフィールドに弾かれた。
『いい腕だな』
「遊びで当たるような奴に言われたくないね」
『大気圏内でのオシリスの交戦可能範囲は把握しているからな』
「なんでもかんでも未来の知識か、頭にくるな!!」
どうしても大気圏内でのレールガンの射程は短い。
それを知っているテンカワはこっちの射程外からハンドガンを打ってきた。
俺は右腕を戻し、両手で剣を構えて盾にしながらそれを捌く。
その間、俺はオシリスのスロットルを戻していない。
こっちは加速が乗ればブラックサレナ以上の速度を出すことが出来る。
接近戦にならないと勝機がない。
「威力はあってもこの距離ならおたくのハンドガンだってさばけるぜ。どうする?」
テンカワからの返答はなかったがブラックサレナは反転し、こっちに向かってきた。
お互いの速度は音速を超えている、相対速度を考えればとんでもないだろうな。
近接戦闘ならこっちが有利だ。さて、どうでる?
まったく、らしくないわね。熱くなっちゃって。
そう思いながら、わたしは二人の攻防を眺めていた。
どうでもいいけど、一撃でも喰らってフレームが変型でもしたらどれだけの損害になるかわかっているのかな。
「はぁ」
「おやおや、ため息ですかな?」
わたしの後ろに立っていたプロスさんが眼鏡に手をかけながら話し掛けてきた。
「わたし、聞いてなかったから。たしかに予想していたけど………なんか、ムカツク」
「はっはっは、それは私も同感ですよ」
「え?」
振り返ると、そこには圧倒されるような雰囲気を醸し出しているプロスさんがいた。
「いや、ムカツクじゃなくてむなしいですなぁ。私たちには見ていることしか出来ませんからねぇ」
そう言いながらメインモニタに映し出されている二機の機体を見上げている。
「未来を知らないと、昔の仲間を救う事が出来ない。未来を知っても守りたいものを守れない。世の中とはそんなものですかな」
寂しそうに語るプロスさんをにかける言葉が見つからず、わたしは正面を向いた。
「………あっ」
サブモニタを見ると、画面の端に小さい物陰が見えた。
あれは……………屋台?
あまりにも場違いなものを見つけ、わたしは慌てて映像を拡大する。
すると、たしかに屋台、、、そして呆然と空を見つめる二人の人影が見えた。
「か、彼らは!??」
プロスさんも気付いたらしく、驚いた表情でサブモニタを見た。
そしてわたしは、、、、、少しだけ笑った。
「来たわね、二人とも……………」
ガキィィィィン!!!
零距離から振り下ろされた剣を、俺は高圧縮したディストーションフィールドを纏わせた拳で受け止めた。
「くぅっ!」
しかし双方のスピードで衝突したおかげでコックピットにモロに衝撃が伝わり、モニタが一瞬ブレた。
それでも追撃は終わらない。
その間にもオシリスは剣から放した左手を畳み、レールガンを構える。
この距離での直撃を受けるわけにはいかない。
こっちもブラックサレナの右手にハンドガンを装着し、オシリスに向けた。
一瞬の静止。
『まだ、続けるか?』
シバヤマから通信が入る。
「続けたいのは山々だけど、これ以上やると本当に潰し合いになるな」
『俺はそれでも構わないが?』
「これ以上はアカツキたちに悪いさ。不意の登場で向こうも驚いているだろ?」
俺たちは臨戦体制を解除し、ゆっくりと地上に降下していった。
「十分だったよ、シバヤマ。これだけの実力ならナデシコを守ってもらえる」
ほっとしたため息と共に、俺はシバヤマに感想を言った。
『銃の打ち合いと、一度の接近戦だけでわかるモンなのか?』
「まぁね。こっちも伊達に修羅場を潜り抜けてきたわけじゃないからね」
『そう?』
苦笑しながらシバヤマが俺に応えた。
これでナデシコは守れる。
IFSを持つオペレータ、そして最強の守護神。
ユーチャリスのみでの火星の後継者を制圧するのではなく、この時代の力が制圧しなければならない。
未来に続く力を育てなければならない。
力での解決に意味がないという意見もあるだろう。
だが、銃を構えた相手に言葉だけで和平を勝ち取ろうとするのは難しい。
だからこそ、俺はこんな生き方しか出来なかった。
全てが終わったら、もう一度ユーチャリスで消えよう。
この時代の俺たちが、俺たちの存在を知る前に。
血塗られた俺たちを見てほしくないから。
ピーーーーーッ
おっと、着地点付近に誰かいるみたいだ。
「おい、起動実験中に屋外に人がいるもんなのか?」
、、、、、シバヤマは何も応えなかった。
俺は機体を操作し、着地点を少しずらして着地した。
プシューーーッ
ハッチを開き、ブラックサレナ用の鎧のようなパイロットスーツを瞬時に解除してマントを羽織って外に出た。
向側には同じく、剣を地面に刺し立てたオシリスのハッチにコートを羽織ったシバヤマが立っていた。
煙草を取り出して吸おうとしているシバヤマを一瞥して、俺は足元にいるはずの人間にむかって叫んだ。
「おまえら、どういうつもりだ!!? 戦闘中に屋外にいて巻き添えでも喰らったら………」
あ、あの人、、、、、
わたしたちの傍に降り立った二体のエステバリスのうち、黒マントを羽織った人がわたしたちに向かって叫んだ。
一瞬だけしか顔が見えなかったけど、なんだか似ていたような気がする。
わたしの隣に立っているアキトに……………
「どういうことだ、シバヤマッ!!!」
すぐにコックピットに座り、俺はブラックサレナのハンドガンを生身を曝すシバヤマに向けた。
俺の顔には多少の事では現れなくなったナノマシンの光沢が浮かび上がっている。
正面に捉えているシバヤマは悪魔の如く悠然と俺に向かって笑みを返している。
『………言っている意味がわからないな』
「なぜこの時代の俺たちがこの基地にいるんだ!!」
『さぁね、オモイカネの調整をしているホシノ=ルリの様子でも見に来たんじゃないか?』
煙草を咥えながら悪びれぬ態度でシバヤマが応える。
「ルリちゃん!? 待てよ、ナデシコの新しいオペレータはヒサイシ=カツミじゃなかったのか?」
そうだ、この計画にこの時代の俺たちは関わらせないということで話を纏めたはずだ。
それをシバヤマも了承した上で技術や情報の提供や計画の協力を交わしたはずだ。
なのにどうしてここに俺やユリカ、そしてルリちゃんがいるんだ!!!
「……………裏切ったな、シバヤマ」
すると、シバヤマは煙草を持っていない手を顔に当てて低く笑い始めた。
「なにがおかしいッ!」
『くっくっく、、、いやぁ、悪いなテンカワ=アキト。あくまで俺の雇い主はアカツキ=ナガレなんだ。現在でも未来でもな』
「どういうことだ!?」
俺の叫びに、シバヤマは指の隙間から俺の方を見た。
『俺の任務は火星の後継者の制圧にある。そのためには約束だの、決意だの、そんな安っぽいものは関係ないんだよ』
シバヤマは煙草を投げ捨て、言葉を続けた。
『おたくらも自分たちの為に生きているはずだ、少なくとも俺はそうだ。所詮世の中は弱肉強食、利用する者とされる者しかいない。助けてもらった事には礼をいう。だがな、テンカワ=アキト、、、、、俺は俺のやり方でしか協力しない、そして俺の目的のために俺は行動するのさ』
俺は思わず引き金を弾いた。
ズゥゥゥゥゥゥン……………
放たれた弾はオシリスの剣に当たり、その衝撃で剣はその巨体を地面に沈めた。
『無駄な感情なんて持ち込むな。奴等を追い込むためには、そしてナデシコがナデシコである為にはこの時代のおたくらが必要なのはわかっているはずだ。そっちの気持ちもわかる、だが現実の前に理想は夢でしかない。覚悟を決めろ、テンカワ』
「教えてください、彼らは誰なんですか?」
わたしの前には、オシリスから降りたシバヤマ=リョウジという人が立っている。
そしてわたしの後ろにはウリバタケさん、イネス先生、アカツキさん、プロスさんがいる。
「………君が知る必要があるのかい?」
シバヤマさんが冷たくわたしに言い放ちました。
「わたしたちのカメラは姿を映していませんでしたが、あなたは見ているはずです。敵なのか味方なのかわからない彼らの姿を」
「ふっ………いかにも天才少女の言いそうな台詞だね」
一笑して立ち去ろうとしたシバヤマさんの姿に、わたしは咄嗟に頭にきました。
「傲慢な言い方かもしれませんが、わたしがいなければナデシコは、オモイカネはまともに操作できません。これは脅しです。それでも話してもらえませんか?」
この言葉にシバヤマさんは立ち止まり、振り返ってわたしの前で片膝をついて顔を見ました。
「別に、君がいなくてもナデシコは飛ばすことは出来る」
「どういうことですか?」
「わからないかな? 君がいなければ別のIFS強化人間を使うだけさ。君よりも小さいが戦争をするだけの道具としてなら立派に使えるだろうからね」
パシッ………
乾いた音が響きました。
思わずシバヤマさんの頬を叩いてしまった右手の掌が少しだけ痛みました。
「あなた、最低ですね」
「………そうだな」
そう言って、シバヤマさんは立ち去っていくのをもう止めませんでした。
これ以上、あの人の顔を見たくありませんでしたから。
戦争が始まる、、、、、
真実の隠された戦争が、、、、、
逃げ道のないラビリンス、、、、、、
それは二人の堕天使に導かれるかのように、、、、、
誰かがいいました、、、、、
人の夢と書いて儚いと読むと、、、、、
わたしの夢は、、、、、、、、、、、
「おい、大丈夫かルリちゃん?」
ウリバタケさんが心配そうにわたしに声をかけました。
「ウリバタケさん、、、そして、みなさん!」
わたしは振り返ってみなさんの顔を見ました。
アカツキさんも、イネスさんも、プロスさんも、そしてウリバタケさんも真剣な顔でわたしを見ています。
いえ、見てくれています!
「わたし、逃げません。だから、、、だから真実を教えてください!」
次回予告(プロスペクター口調)
おや、今回は私の番ですかな?
次回はついにナデシコの完成ですよぉ!
隠された真実に立ち向かうルリさんの姿はなんとも健気で、オジサン、泣いちゃいそうです
そしてテンカワさんと艦長の取るべき道は、いったいどっち?
賞味期限が1年2ヶ月過ぎたビールを飲んでも平気な作者が送る次回、機動戦艦ナデシコ
OVERTURN The prince of darkness
『ボクたちの戦争が再びはじまる』を、みなさんで見てくださいよぉ!!
そんなわけで、きーちゃんです☆
ちょっと、そこの人、そんなわけってどんなわけ?って聞かないで下さい(涙)
えっと、、、、、戦闘シーン嫌いっっっ!!!(号泣)
以上、今回の感想でした(笑)
さて、予告でも触れましたけど最近、大学で1年2ヶ月賞味期限が過ぎたア○ヒビールを見つけたんですよ
飲んでみると、、、、、なんと、どっかの地ビールとおんなじ味なんですよ!(爆)
おれにはおれっちもびっくりしました
みなさんは、賞味期限が過ぎたものと拾ったものは食べないようにね☆
しかし、ホントに飲んでばかりだなあ・・・・・
それでは、またお会いしましょう♪
では!!!
BGM:B'z『MOTEL』
代理人の感想
ん〜〜〜〜む。
シバヤマ、言いたいことは分かるんですがもちっと言いようはあるだろうにw
丸い卵も切りよで四角、物も言いよで角が立つ、と。
意外なところでガキっぽさを見たような気がしましたね。