機動戦艦ナデシコ  OVERTURN The prince of darkness

第二十話『あの日に見た夢の続きを』












 ざっぱ〜〜〜ん♪




「ふぅ、いい湯加減。

 こうやってルリルリと一緒にお風呂に入るのも久しぶりよね〜」


「そうですね。

 でも、改めて考えるとナデシコのお風呂って広いですよね」


「うんうん、今住んでいる家のお風呂はどうも狭いのよねぇ。

 ユキナは『火星に住んでいた頃よりは断然広い!』って言ってたけどね」


「そういえば、ミナトさんとユキナさんが初めて会ったのもここでしたね」


「そうねぇ。あれから色々と忙しかったから時間が経つのが早かったわ。

 でも、時間は流れているもんね。

 ルリルリもしっかりと成長して、でるところもでてきたしぃ」


「ちょ、ちょっとやめてくださいミナトさん!」


「うふふ、それってこんなことをやめればいいの?」


「あっ、だからやめてください。
くっ、いやっ・・・・・」
















 ぐぉくりっ!



「は、班長! 自分はもう死んでもかまいません!」


「ばかやろう、まだ声だけじゃねぇか!

 くそぅ、ナデシコを作ったときに風呂場の壁に穴を開けたまではよかったんだがっ!

 まさかこんなにも湯気が立ち込めるとはっ。おかげで何も見えねぇ!!」


「ヤバいです、こいつ鼻血の出血量がもう!」


「そんなヤツには鼻にボルトでも詰めて捨てておけ!

 おおおっ!?? 湯気が流れてゆくぞ!!!」


「そうですか。それはよかったですね、ウリバタケさん」



「「「「「!!!!!?????」」」」」





















「おいっ、てめぇら!

 詐欺じゃねぇか、こんなのよぉ!!」



 縄でグルグル巻きに縛られたウリバタケさん以下、整備班の連中は格納庫に転がされている。

 その周りを女性陣が冷たい目で見下ろしていた。

 いや、ルリちゃんだけは俺の傍で顔を真っ赤にして俯いているが。



「だってよぉ、結局は服着たまんまで演技していただけじゃねぇか!

 これは不法逮捕だろ、おいっ!!」



「なにをいっているのよ!

 マジメにジャンプ装置をつくっているかと思えば、こんなことしてて。

 大体、ナデシコの再建中から覗き穴を用意しとくってどういうこと!?」



 夜叉の面をつけたような表情でエリナさんが怒鳴る。



「ホント、最低だよな。

 こんなヤツらに整備されているエステがかわいそうだぜ」


「まぁ、ウリピーたちにはそれなりにお仕置きを受けてもらうからね」


「万死に値するから、覚悟することね」



 リョーコちゃん、ヒカルちゃん、イズミさんがそれぞれに死刑宣告を行う。



「なぁ、テンカワ。おまえなら俺たちを助けてくれるよな? な?」


「・・・・・骨くらいは拾ってあげますよ」


「テンカワ、てめぇそれでも男か!

 わからねぇのかよ、俺たちがしようとしていた男としてあるべき姿がよ!!」


「テンカワさんはそんなことしません!」



 俺の裾を握りながら、ルリちゃんが訴えた。



「さて、そろそろはじめないとお仕事もあるからねぇ」


「そうですね。では、みなさんお待たせしました♪

 世紀のお仕置き執行人、イネス=フレサンジュ博士のにゅ〜〜〜じょ〜〜〜〜〜!!!」



 ミナトさんにうながされて、いつのまにかマイクを持っていたメグミちゃんが高らかとマイクパフォーマンスをした。



 バシュゥゥゥゥゥゥ!



 格納庫の入り口からドライアイスの煙がはいってきて、一人の女性の影が見える。

 なんというか、、、、、いろいろな装備をして。



「「「「「きゃ〜〜〜〜〜、イネス先生〜〜〜♪」」」」」



 ホウメイガールズのみんなが黄色い声援でイネスさんを迎える。



「やめろーーー! なんでもするからそれだけはっ!」


「殺される、殺される!」


「人権はみとめられないのか!?」


「僕たちだって人間なんだ!!」



 整備班のみんなが騒ぐが、その声を聞いたイネスさんは邪悪に笑うだけだった。



「あんまり騒ぐと、わたしの代わりに未来のアキト君とシバヤマさんにお仕置き代わってもらうわよ」



 その言葉にすごい表情をして固まるウリバタケさんたち。

 たしかに諜報活動とかにも精通している二人だ。

 殺さずに苦痛を与える拷問法なんていろいろと知っているだろうな。



「はじめからそういうふうにおとなしくしていればいいのよ。

 で、艦長。どこまでやっていいのかしら?」



「はいっ、悪の芽ははやいうちに摘んでおかないといけませんから徹底的にやっちゃってください!

 あっ、でも明日の作戦に支障が無い程度におねがいしますね」


「ふっ、それは保障できないわね」

 キラーン☆(イネスさんの瞳)



「「「「「うぎゃあああああああああああああああああ!!!」」」」」



















 躯と成り果てた愚か者(整備班のみんな)を背に、俺は廊下を歩いていた。

 今回は未遂に終わったからいいものの妻子持ちだろ、ウリバタケさん。

 今の時間は午後十時、食堂も閉まっていて特にすることも無い。

 ユリカたちはいまだにウリバタケさんたちに付きっ切りだから一人で部屋に戻るとしよう。

 まぁ、部屋はユリカとは別々だけどね。

 さて、まだ眠くないけど部屋に戻って―――――



「なんか静かみたいだけど、他のみんなは?」



 その声に振り返ると、黒いバイザーをかけた未来の俺が立っていた。



「女性陣はのぞきをしようとしていたウリバタケさんたちのお仕置き中だ」



 意識していたわけじゃないけど、俺は未来の俺と目線を合わせなかった。



「セイヤさんも相変わらずだな。むこうじゃ新しいお子さんも出来るのに」


「へぇ、そうなんだ」



 苦笑するあいつを見ながら、俺はそわそわしてしまう。

 俺のそんな仕草に気がついたのか、あいつは肩をすくめた。



「まぁ、ちょっと気になっただけだ。じゃ、おやすみ」


「あっ―――――ああ、おやすみ」



 バイザーの下で少しだけ微笑んだ未来の俺は、みんなとは少し離れたところにあてられている自分の部屋に帰った。

 あいつの姿が見えなくなるまで、その後姿を見送った俺はため息をついて頭を掻いた。

 突然の事とはいえ、俺は何であんな態度を取ってしまったんだろう。

 別に話をするくらいなんでもないと思っていた。

 でも、ほんの少しだったとはいえ、初めて二人っきりで話した。

 なんの心構えも無かったって事もあるけど、思わず頭の中が真っ白になった。

 でも、いざとなったらなにを話したらいいのか―――――






「な〜に難しい顔してんだい、テンカワ!」



 その声にハッとして振り返ると、いまだにシェフの姿だったホウメイさんが立っていた。



「すまないね、テンカワ。盗み聞きするつもりは無かったんだけど、食堂の前での事だったから聞こえちまった」


「あっ、、、いえ、いいッスよ。別に聞かれて困るような事じゃないですし」



 きまりわるく指で頬を掻いている俺の顔を、ホウメイさんが両手を腰に当てながら覗き込んだ。



「なんであんな態度をとるんだい?」



 ホウメイさんの言いたい事はすぐに分かった。

 あんな態度とは未来の俺との時の事を指すんだろう。



「別に、わざとってわけじゃないッスよ」

「へぇ。じゃあ、わざとじゃなかったらなんだってんだい?」

「それは・・・・・自分でも分かりません」



 責めているような口調ではないホウメイさんの質問に、俺は正直に答えた。

 その俺の答えに納得したのか、ホウメイさんは俺の顔から離れた。



「まぁ、アンタの言いたい事も分かるさ。

 でも、やっぱりあっちのテンカワはアンタのことが気になるんだよ。

 たしかにあっちが勝手に押し付けているように感じるかもしれないけど、アイツにとってテンカワは希望なんだ」


「それは・・・・・わかっています」



 俯きながら答える俺の肩に、ホウメイさんがポンと手を置いた。



「まぁ、同じ自分だと思わなければいいさ。

 そうだね、兄貴って思ってみたらどうだい?

 この作戦が終わったら、一度ゆっくりと話してみればいいじゃないか」



 ―――――兄貴?

 たしかに、そういう存在に近いのかもしれない。

 いくら同じ人間とはいえ、向こうのほうが年上だし。

 もともと兄弟はいないけど、アイツを兄貴のように思うのは間違いじゃないかもしれない。

 少なくとも、そう考えれば少しは付き合いやすい。



「そうですね、、、たしかに兄貴だったらシックリきますね。

 なんか、少しだけ気が楽になりました。ありがとうございます」



 顔を上げた俺の目の前には、ホウメイさんの笑みがあった。



「なーに、いいってことさね。

 さぁ、明日は作戦開始なんだ。

 今からしっかりと休んで、明日はがんばるんだよ!」


「はい!

 それじゃホウメイさん、おやすみなさい」


「ああ、おやすみ」



 俺は頭を下げて、そして自分の部屋に戻った。







 ―――――少しだけ、肩が軽くなった気がした。























「あんなもんで良かったのかい?」



 腕を組みながらテンカワが帰るのを見送って、そして食堂の陰に立っていた未来の艦長に声をかけた。



「ありがとうございます。

 やっぱり、こういうことはホウメイさんに頼んで正解でした」



 満面の笑みで艦長が陰から出てきた。



「これで、少しはこっちのアキトも馴染んでくれると思います」


「やれやれ、うまくいくといいねぇ」


「うまくいくに決まっています!

 こっちのアキトだって昔はわたしと一緒にいたんだから、アキトのことだったらなんでもわかります!

 だって、わたしの旦那様なんだから♪」



 コブシをつくって熱弁する艦長を見て、ちょっとだけ苦笑した。



「でも、アンタのほうはいいのかい?

 こっちの艦長と仲良くしているわけじゃないだろ」


「わたしはこっちのわたしのことを信じていますから。

 いつか、絶対に仲良くしてくれます!

 それに今はアキトさえいてくれたら全然悲しくありません!」



 やれやれ、本当に意地っ張りばっかりだね。

 まっ、テンカワ同士がうまくやっていくようになったら、艦長たちも自然とうまくいくだろうね。



「そっか。

 じゃっ、あたしは帰って寝るよ。

 明日はいろいろと忙しくなるだろうからね。おやすみ」


「おやすみなさい。

 それと、ありがとうございました」



 頭を下げる艦長に手を上げて返し、あたしも自室に戻った。






 あたしはキッカケをつくっただけ。

 あとは、アンタたちががんばるんだよ!!






















次回予告(シバヤマ=リョウジ口調)


今回は俺の番か。
しかし、次回はそんなに楽しい話じゃないからな、なんて言えばいいんだよ?

・・・・・そうか、だから今回は俺の番なのか。

料理マンガ『美味しんぼ』の次は『クッキングパパ』に手を出し始めた作者が送る次回、機動戦艦ナデシコ OVERTURN The prince of darkness
『夜よ明けないで』で、また会おう。


こんちは、きーちゃんです!

予定ではこの二十話と二十一話は一緒にしようと思っていたのですが・・・・・・・・・・・・長くなってしまった(汗)
そんなわけで、分割です。

さてさて、最近就職活動をしています。
合同企業説明会とか行きますと・・・・・・・・・・・・・いますよ。おめぇら、ホントに仕事探す気あるのか?って言いたくなる連中!
おれっちの目の前を通り過ぎていったねーちゃん、、、さすがにここにゃ水商売の求人を出している企業は来ないと思うぞ?
う〜む、世の中をなめてやがる。

それはおいといて・・・・・
最近、また寒くなりましたね!
せっかくコタツをしまったのに、その翌日からいきなり冷え込むって、ひどくないッスか?
みなさん、風邪をひかないように気をつけましょう!

それでは、またお会いしましょう
では!!!

BGM:B'z『Queen of Madrid』

 

 

代理人の感想

就職かぁ・・・私もさんざん苦労したなぁ・・・・は置いといて。

 

ちょっとしたヒトコマって感じですね。短編っぽくてよかったです。