……最初に2点ほど。以下の条件に合致される方はお読みにならない方が宜しいかと思われます。

一つ、時ナデ/月姫キャラを色んな意味でネタにされるのがお嫌いな方。


二つ、同盟お仕置きネタがお好きでない方。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
















三つ、「宇宙」を「そら」と読めない方。


あ、三つですね。それでも宜しい方にはご覧いただければ幸いです。







<前回のあらすじ>

部下の名前は『北辰』


そして上官の名前は『草壁 春樹』


ごく普通の二人はごく普通の出会いをし、


ごく普通に火星の後継者を設立しました。


でもただ一つ違っていたのは『
奥様は魔女北辰はソックスハンター』だったのです。








 「それで、被害と2人の様子なんだけど……」

 ピースランド王宮地下第13会議室にてエリナは出席者に『先日の事件』についての報告を行っていた。

 「地上部分の被害は相当なモノだったけれど、ここ2、3日中には復旧の目途が立ったわ。……『担当』の人はアキト君に外部の事を感づかれないように『全力を尽くす』ように。」

 その言葉を聞いて3人程が頬を桃色に染めるが、他の人間は我関せずといった様子である。そんな周囲の様子を伺いながらエリナは、

 「……それであの2人の事なんだけれど……」

 と一言口にする。





 その時、その部屋の中の時間は停まった……





 マーダーライセンス北XII
 

  〜すたーだすと☆くるせいだーず(前編)〜







 「……まずは今の2人の様子を見てもらうわね。」

 エリナがモニターのスイッチを入れる音とともに時は動き出し、全員が同じくモニターへと視線をやる。モニターには病室が写っており、2人のアフロ女性がベッドに寝ている。未だアフロが治らないルリは……




 ♪すすめー すすめー ものどーもー じゃまなー てきをーけちらーせー
  すすめー すすめー すすめー オーゴーレース たおすのだー♪

 かつてある国王が1人で味方を増やしながら、敵国へと攻め入る時に歌った歌を虚ろな目をしながら歌っている。一旦歌い終ると今度は、

 ♪はーちほーこう はーちほーこう 伝説の3号機2号機ついたらー ろーくほーこーう

 近未来の地球を管理する巨大コンピューターに敢然と戦いを挑んだ合体・変形型兵器のとあるテーマソングを歌っている。ちなみに『連射』、『レーザー』、『バリア』にも同様のテーマソングが存在する。


 一方のアフロイネスは……




 「ふふふ、説明しましょう。三つの国が戦うゲーム等を作っている事で有名な某会社は、昔『団地妻の誘惑』ってえちぃゲームを出していたのよ……」

 と知る人が少なくなった『黒歴史』を語っている。他にもオランダ人妻は電気ウナギの夢を見るのだろうか?とか、本命以外を「攻略」すると終ってしまう『点氏達の午後』シリーズとか、3枚目のCGを見見るのが容易でない『混沌の天使達』の説明を延々と誰とも無く行っている。

 「……FOJY社が出した『KFTVT』も良かったわねぇ…… さあ!『”ころな”に爆弾を仕掛けた』ってガセネタに釣られてエイリアンがやってきたわっ! ”かえるの歌”のメロディーで一気にEDを……!」

 プチッ!


 「……と言う訳なの。で、ここからが今日の論点なんだけれど……」

 延々と彼女達には理解不能な「説明」をするイネスを放置するかのようにモニターの電源を切り、皆に向き直るエリナ。参加者達の目が徐々に殺気を帯びてきた。

 「この2人が機能しない以上、『ローテーション』が2人分欠員になります。……それを誰にするかが今日の議題です……!」




 ピキィィィンッ!




 エリナが宣告すると、会議室内はバナナで釘が打つことが可能なくらいに凍りついた。某メーカーのエンジンオイルでさえ凍りつくであろう雰囲気の中、参加者各々は、忙しく周囲を見渡しながら、他者の動向を見守っている。ある者達は互いに睨み合い、それを油断無く見守る者、更にまたそれを観察する者…… 先に発言した者より優位を保とうとしているのか、発言する者がいない。

 (……くっ、皆が互いを牽制しあっている…… このままじゃ勝負がつかない…… これが伝説の『千日戦争』なのかしら……?)

 エリナがそう感じるほど、場の雰囲気は一触即発かつ動かない状態であった。雰囲気を無視する事ができる某士魂号2号機パイロット(2周目以降は無職)でも震えて逃げ出すであろうピリピリし過ぎる雰囲気を……!




 ガタンッ!




 複数の人間が椅子から勢い良く立ち上がる音が破った……!




 「あ、あなた達は……っ!」

 エリナの驚いた声に反応するかのように、残り全員の視線が立ち上がった人間達に集まった。








 ピースランド地下で緊迫した状況が繰り広げられている頃、

 (北よ……)

 「はッ! 師匠!」

 暗闇の中で北辰は何者かと話をしていた。その人物は北辰に背を向けており、顔は分からない。……その特徴的な『白髪のおさげ』だけが彼を知る手がかりであった。

 (ついに貴様も目覚めおったか、靴下に)

 「はい師匠ッ!」

 (だが、まだ真の意味で靴下の力を使いこなせてはおらんようだな……)

 「なんですと! お言葉ですが師匠……」

 (だからお前はアホなのだァッ!)

 「!」

 (2次元世界以外に守るものを持たぬ若造が戯言をッ!)

 「!!」

 (良いかッ! 『守るべきもの』を見つけ、『靴下に使われる』のではなく『使いこなす』位はやってのけィ! そうせねば、ワシの足元にも及ばんぞ……)

 「そ、それは一体?」

 (ふふふ、精進せいよ。と言いつつ私は闇の中へ消える、いないいないバババー……)

 「お、お待ち下さい! コン・コルドー会長師匠ッ!」
 
 
 ボコボコボコボコ……


 「……夢か……?」

 
 ボコボコボコボコ……


 北辰は自室でベビープールサイズのタライの中で座っての瞑想から目を覚ました。中では油が煮えたぎっており、天ぷらが余裕で仕上がるほどの温度となっている。しかも、御丁寧に蝋燭を載せた小船まで浴槽?内には浮かんでいる。が、北辰はただ平然とこの男塾名物『油風呂』に浸かっている。

 「何故今頃になって師匠が……?」

 先程の『夢』について考える北辰。そこへ、

 「北辰殿! 草壁閣下が……!」

 火星の後継者の軍服ではなく、黒いスーツに身を固めた南雲が入ってきた。

 「……そろそろ決着か。閣下の執念、見せていただきますぞ……」

 閉じていた目を開き、ゆっくりと立ち上がり湯船から出る北辰。もちろん、蝋燭の火は消してである。そこへ南雲が東野秋葉の使用人である翡翠の水着姿がプリントされた萌え萌えバスタオルを差し出す。無論、本人には無断で盗撮し、作成したものである。……彼女が知ったら暗黒翡翠拳で瞬殺されるであろう。
 タオルで体を拭きつつも、器用に冷蔵庫からドク○ーペッパー警部を取り出す北辰。それをコップに注いだ後に、ネス○フェゴールドブレンドをスプーン2杯注ぎ、そのままかき混ぜた。……様々な研究データから復刻された伝説の『アメリカン(笑)』である。

 「…………ふう。しゃっきりぽんと舌の上で踊るようなこの味わいが堪らんわ。体への油の浸透状況も良好だな。この輝きならば、いずれワセリンを使わずに済む日も近いやも知れん……」

 完成したそれを左手を腰に当てながら一気に飲み干し、油によって淡い光沢を放つ自分の体を満足げに見やる北辰。無論、タオルを肩に掛けている以外は何も身に付けていない。

 「……して状況は?」

 「はっ、あと二つという所まで来ております。……これを。」

 「ふむ、ならば見届けねばなるまいか。」

 思考を切り替え、閉じていた目を開き、ゆっくりと立ち上がり湯船から出る北辰。そして、自身の体(下部)を見て少し頬を赤くしている南雲が差し出した越中を装備した。そのまま自室のクローゼットに向かい扉を開ける。そこには








 大量に並んだ黒スーツ








 があった。それを一瞥する北辰。

 「今日はソニア・リキエルにするか……?」

 「ジバンシーも捨てがたいですな。このセクシーな腰のラインが堪りません。」

 傍からは全く同じデザインにしか見えないスーツの大群を目の前にして、どれを着ようか意見を交わす南雲と北辰。

 「……これにするか。」

 北辰はスーツの一つを手に取り、引出しからYシャツとネクタイを取り出した。それらを

 『ヤッターァァァッ……!』

 と叫んで宙高く放り投げた。自らもその後を追って空にジャンプする。空中で絡み合うように服類が北辰の体に装着される。




 スタッ!




 「相変わらずお見事です、北辰様。『アイちゃん』がいないのは残念ですが……」

 ヤッターマン1号に変身をスーツ姿に着替えを完了させて地上に降り立つ北辰に感服する南雲。ちなみに北辰が取った空中での着替え手法は、2号形式である。また『アイちゃん』なる人物は、イネスの幼少時代の事ではないことを明記させていただく。
 

  「問題無い。いずれ拉t……ゲフンゲフン、見つかるであろう。それよりも急ぐとしよう……」

 「ハッ!」

 ポケットにサングラスがあることを確認し、彼等はとある場所へ足を運ぶべく部屋を後にした……








 ざわ…… ざわ……






 北辰が入った部屋「エスポワール」では福本調の雰囲気が部屋を支配していた。草壁が手に何枚かカードを持ちながら、正面のモニターに写る男性と自分のカードを交互に眺めていた。左胸にはプレートがついており、そこには星の形をしたシールが……11枚貼ってある。 一方モニターに写る男性…… 長髪で顔の幅が異様に大きく、口元は草壁を小馬鹿にしているかのごとく歪んでいる。彼もまた、草壁同様カードを何枚か手に持っていた。彼もまた左胸にプレートをつけているが、そこには星のシールが1枚しか貼っていなかった。




 「……チェックッ!」

 「……チェックだ……」

 草壁とモニターの男性はしばし何かを考えた後に「チェック」と宣言して、自分達の手札からカードを一枚取り出した。

 「……鈴木北辰、頼む……」

 「……承知……」

 何時の間にかサングラスをかけ、草壁の背後にいた北辰に草壁は声をかけた。……北辰を初め部屋の中にいる火星の後継者達は、全員黒スーツとサングラスといういでたちである。何故か北辰を含め全員とも顎が三角形状にとがっており、顔には縦線が何本か走っている。髪形もほぼ同一であり、常人には誰が誰だか区別が付かない状況である。……この部屋に充満している『賭博黙示録な雰囲気』の中では、勝負を行う者以外は『黒スーツにサングラス、そして常人には区別がつかない程同一の顔つき』という姿になるのは世界の選択である……ッ!

 「……セット。」

 北辰が宣言すると、草壁と男は取り出したカードを各々の目の前のテーブルに置いた。無論、カードは伏せたままである。

 「悪いな、これで最後だ……ッ!」

 「芝村に敗北は無い。」

 草壁もモニターに写る男性、芝村準竜師双方とも不敵な態度を崩さない……ッ! 両者とそれを見守る周囲の緊張が頂点に達しようとする刹那……!




 「……ではッ! オープンッ!」

 北辰がそう宣言した。それを聞いてテーブルに伏せた自分の手札を裏返す草壁と芝村準竜師……!








 草壁の手札にはジャンケンの『チョキ』の絵が……




 芝村準竜師の手札にはジャンケンの『パー』の絵が描かれてあった……!




 「勝負あったな……!」

 「……ふん、手札の種類数を均一化するという『バランス理論』とやらも当てにはならんか…… バットとタイガーはスカウト(戦車随伴歩兵)に、後は5121小隊の奴等を阿蘇特別戦区( かつてのごっつい激戦区)に配置換えだな…… まあ、奴の働きでもう幻獣は出ないがな、こき使ってやるわ。

 ニヤリと笑いながら勝利を宣言する草壁と、なにやら呟いている芝村準竜師。

 「……!!」

 その二人の様子で改めて勝利を確信した木連側の部屋「エスポワール」内から歓声が沸いた……!




 「……では、約束のモノを……」

 「ああ、『アレ』1トンをそちらに譲る。それと……」

 草壁が賭けの対象としていた物について言及すると、芝村準竜師は横を向き顎をしゃくった。手を伸ばし、モニターの画面外から何かを受け取る。

 「これはおまけだ、『こちら』では使い手が居なくなったのでな。そちらの人間なら使いこなせる奴もいるだろう。」

 芝村準竜師が画面越しに何かを見せながら草壁に告げる。

 「……ほう、これが音に聞こえた『アレ』か…… あ奴なら『このブツ』を使いこなせるやも知れんな、北辰?」

 「御意。」

 北辰から回答を得た草壁が改めてモニターの芝村準竜師を見る。

 「ならば準竜師、それと1トンのブツ、双方受け取らせて貰おう。レフレックスポイント、いや……伝説の木の下……でもなく例の場所で待っているぞ。」

 「……ふん、了解した。」

 準竜師の言葉と共にモニターの電源はオフになった。

 「良いモノが手に入りましたな。折角なので奴に早速使わせましょう。……今は例の鉱山基地に派遣させておりますので、我が届けましょう。……同盟もそろそろあそこに気づくと思われますので。」

 「……そろそろ潮時か…… 分かった、準竜師からのブツを受け取った後に、直ちに脱出準備を整えるべくあそこへ向かってくれ。」

 「万一、その時に同盟が来た場合には?」

 「……兵の回収が第一だ、その後は『牙を突きたてようと』貴様の好きにして構わん……!」

 「クックックッ…… 御意。」

 愉快げに草壁の命を受けた後に、北辰の姿はその部屋から消えた。後には彼が着ていたスーツとサングラスのみが残っていた、何故かスーツはちゃんと折りたたまれていたが。

 「あそこに気がつくとは、同盟もまんざら愚かではないという事か……」

 そう呟くと草壁は部屋を後にした。彼に部屋の中の人間全てが続き、程なく『エスポワール』は無人となった。








 「……オレが行くぜ……」

 「「「「「私達が行きます!!!!!」」」」」

 草壁達が部屋を後にしたのとほぼ同刻、ピースランド内第13会議室ではテンカワ・リョーコとホウメイガールズの計6人がほぼ同時に席を立って名乗りを上げた。

 「……ふん。」

 「「「「「「……?!」」」」」」×座っているメンバー全員−北斗以外

 北斗だけはどうでもいいような表情でリョーコ達を一瞥しただけだが、残りのメンバーは驚きの表情でホウメイガールズを見た。

 「……『ローテーション』は二人分よ……?」

 いち早くエリナが驚きから復活し、ホウメイガールズ全員に問い掛けた。

 「ええ、分かってます。私達5人で『1回分』のローテーションを頂きます!」
 
 サユリがエリナに答える。

 「それに……」

 「皆でアキトさんに『足で挟むbyニーソックス@練炭の5倍』っていう伝説の奥義を前々からやってあげたいと思っていたんですが、それだと誰か 一人の日を使っちゃうことになるので今回の機会は丁度良いんです!」

 ジュンコとミカコも口を挟む。

 「…………(な、何かしら。『足で挟む』って…… そんな奥義、実家の秘伝書にも無かったけど……まさか、ホウメイさん直伝なの?)!?」

 自分の知らない『技』の存在に、場を取り仕切るものとしての自分を忘れて狼狽するエリナ。そこへ、

 「………………!!」

 ユリカが自分に向けて視線を送っている事に気がついた。その視線は黄色をしているようにエリナは感じた。

 (大丈夫ですよ、エリナさん。このまま許可しちゃって大丈夫です。)

 (……いいの?)

 (ハイ、ここの防衛なら北斗さんがいれば問題ないですし。ローテーションだって、2回程度の変更なら私やエリナさん達には影響ないです。)

 (でも……)

 (成功すればそれはそれでさほど問題ないですし、失敗したら私達のパイが増えるチャンスじゃないですか。)

 (……そうね、そうしましょうか。)

 時間にして約2秒ほどの間に視線と眼球の動きで会話をするユリカとエリナであった。会話を終えたエリナは改めてリョーコとホウメイガールズに向き直る。

 「じゃあ、あなた達に任せるわ。それで良いかしら、皆さん? …………沈黙は肯定とみなします。じゃあリョーコ達、これを見てくれる?」

 出席者から反対が上がらなかった事を見届け、エリナは手元のスイッチを押した。するとモニターには地図が映し出された。

 「オデッサ地方は知っているかしら? 先の戦争時にはあのクルスクを初め、各地の工業地帯に原料を供給してきた鉱山が多数ある地域なんだけど……」

 一旦言葉を切り、出席者を見渡すエリナ。リョーコとホウメイガールズ以外はどうでもいい様子である。

 「どうやら火星の後継者達がそこを占拠しているとの情報が最近になってようやくキャッチできたわ。元々は連合軍の管轄になっていたんだけど、色々あって統合軍が管轄するようになって今の状況に至っているわ。」

 そう言ってスイッチを操作するエリナ。画面が切り替わり、そこに駐留している敵戦力の予測図が現れた。

 「……敵の戦力は以上よ。他に質問は?」

 「っていうかよー。こいつ等が戦力としてアテになるのかよ? ま、オレ専用エステ『マルス』だけで十分とは思うけどな、こんな雑魚相手じゃな。」

 エリナの質問にホウメイガールズを見ながら別の質問を返すリョーコ。

 「「「「「フフフフフフフフフ……」」」」」

 ホウメイガールズはリョーコの問いに全員揃った笑い声で返した。

 「戦争は数だよですよ、兄貴リョーコさん。」

 「ハーリー君対策があるので、ここの戦力を割けないのは分かります、ですから……」

 「ここは私達の私兵に任せてください!」

 「そうです、頼もしい人たちですから!」

 「リョーコさんの専用エステと私達の戦力があれば、問題なく勝てます! じゃあエリナさん、私達は準備があるのでこれで失礼しまーす!」

 笑顔で話した後に、会議室を去ろうとするドズル・ザビサユリ、ジュンコ、ミカコ、エリ、ハルミ達とそれについて行こうとするリョーコ。しかし残された人間は、ホウメイガールズ達の笑顔に薄ら寒いものを感じていた。……北斗 ですら若干ではあるが寒気を感じた。

 「ちょっと待って下さい、皆。」

 部屋を出ようとする彼女達を呼び止めるユリカ。

 「気を付けて下さいね。我々は2人の仲間を失いました。しかし、これは敗北を意味するんでしょうか?

 突然皆に話し始めるギレン・ザビユリカ。リョーコ達は怪訝な表情である。

 「それは否です! 始まりなのです! 私達の『仲間』で諸君らアキトが愛してくれたガルマ・ザビイネスさんとルリちゃんは死んだアフロになっちゃいました。それは何故でしょうか? 」

 「「「「「「……」」」」」」

 誰もそれに突っ込む人間は居なかった。部屋に居る全員が沈黙を守っている。

 「……元ネタは長いので中略します。私達は今、『自分達に刃向かった者が居る』という怒りを結集し、火星の後継者に叩きつけて、初めて真の勝利を得ることができます! あなた達の勝利こそ、アキトとルリちゃん、イネスさんへの最大の慰めとなるんです。頑張ってくださいっ! この悲しみを怒りに変えて、立てよ! 同盟よ!」

 誰もイネスとルリの事を悲しんではいなかったが、次第に北斗以外の出席者のテンションは上がっていく。ユリカは何時の間にかこの種の演説が得意になったようである。

 「我ら同盟メンバーこそ、アキトに選ばれた人達であることを忘れないでほしいのです! アキトのよき理解者かつ妻である我々こそアキト、ひいては人類全体をも救い得るのであると信じます。ジーク・ジオン同盟!
 


「「「「「「ジーク・同盟!」」」」」」×北斗以外の全ての出席者




 「……宜しいです。では、準備に取り掛かって下さい。」

 テンションが落ち着いた所で、ユリカがそう宣言した。それを受けてリョーコ達は出撃の準備を、その他の者は自分のすべき事のために部屋を後にした。






 そこは機械とガラクタに満ちた10畳ほど部屋の中であった。その真ん中に薄汚れたテーブルと椅子があり、1人の男がウイスキーを飲んでいた。机の上にはラジオのような小さな機械があり、音声が流れている。

『……私達の『仲間』でアキトが愛してくれたイネスさんとルリちゃんはアフロになっちゃいました。それは何故でしょうか? 』

 「……坊やだからさ、じゃなくておめーら自身の所為だろーが。」

 そう言って男はグラスを呷った。髪の毛と髭は伸び放題となっているが、独特の眼鏡と話し方で、この男がウリバタケ・セイヤという事が彼を知る者には判別できる。
 ……アキト、シンジ、速水の女性遍歴抹消作戦同盟との覇権を賭けた最後の戦いの後、アキト共々捕らえられた彼はピースランドに幽閉された。
 それから彼は常春の国マリネラの警察長官の如く奴隷のように「同盟のために」働かされていた。現在は先の騒ぎで破壊されたルリとイネスの影武者用ロボットの修復をやらされている。

 「ウリ……いや、『US』様。」

 ウリバタケしか気配の無かった部屋に別の気配が生まれた。気配を感じたウリバタケが背後を見ると、






 

 

 

 

 



 石橋もしくは木梨全身白タイツの一目でマッチョと分かるアニキ




 が居た。

 「……キシリア『AN』の手の者か。」

 モジモジ君突然現れた男に動揺することなくウリバタケは話し掛ける。

 「はっ、ここの警備システムには『ち○AV(無○正Ver)』を流して混乱させてあります、お急ぎを。」

 
 「分かったよ……っと。」

 そう呟くとユリアン・ミンツウリバタケはテーブルの片隅に置いてあった携帯型コンピューターを手に取った。そこにキーワードを入力していく。

 『ロシアン・ティー牛丼を1杯。並でもなく特盛でもなく大盛りネギだくギョクで。』

 「これで良しっと。ま、俺からの餞別だから、せいぜい楽しんでくれよォ……!」

 そう呟くと、ウリバタケは白タイツの漢と共に部屋を容易に脱出した。テーブルの上の機械からは「ジーク・同盟!」とシュプレヒコールが聞こえている。

 「……ったく『こ、これが敵……』とでも呟けば良いのか、ええ?」

 部屋を出る直前にウリバタケはそう毒づいた。

 無論、ウリバタケが脱走した前後は、ピースランドの警備室は一時混乱に陥った。が、現在の警備担当のラピスが会議で不在だった上、警備モニター全てに流れた映像が『○ゆAV(○修正Ver)』だったので、男性だった警備主任がこの事実を同盟に報告せずに部下達に緘口令(全員で映像を共有)をしいた為、ウリバタケの脱走はしばらく同盟に知られる事は無かったという。……その後、彼等ピースランド警備部のメンバーは全員行方不明になるのだが……

 








 「……ふう。」

 ピースランド内での同盟の会合が終った2日後、彼女達が目標と定めたオデッサ鉱山基地内では火星の後継者の四方天の1人であるマ・クベ東野秋葉が自分の執務室でため息をついていた。

 「秋葉様、どうなされたのですか?」

 「……」

 そこへノックもせずにウラガンとエルラン二人の少女が入ってきた。1人は赤みがかかった髪に白のレース付カチュ−シャと身に付けているメイド服という三者の調和が漢の浪漫を刺激してやまない少女。
 もう1人は彼女と顔付きはほぼ瓜二つながら瞳の色や「断じて割烹着そのものではないッ!」和風のエプロンを身に付けている点、そして頭にはリボンを付けている所が異なっている。
 彼女達の名は前者が翡翠、後者が琥珀である。一応、東野秋葉は彼女達にとって『仮の』主人である。『魂の』主人は、1年前にお魚くわえたドラ猫追いかけてとある黒猫を庇ってトラックとの事故に巻き込まれて以来、意識を回復しない東野志貴=秋葉の兄である。

 「……秋葉様、体の調子が優れないのですか……?」

 翡翠は(一応)主人の体調を気遣う、が琥珀はというと、

 「あはー翡翠ちゃん。きっと秋葉様はTYPE−MOON第4回とある人気投票で過去3回保ってきた2位の立場を……


 ヒュッ!


   パシイッ!


 ……とある『元ナデシコの通信士と同じ声の人』に取られたのがショックなんですよー。っていうかその人って私なんですけどね♪」

 何かが飛ぶ音が琥珀の台詞を一旦遮ったが、彼女は笑顔のまま話し終えた。何時の間にか彼女は右手の人差し指と中指の間で、短刀の刃の部分を挟んでいた。短刀の柄には「七夜」と漢字で書かれている。

 「秋葉様、志貴様の持ち物を粗末に扱っては駄目ですよー。」

 「……あら、私とした事が。何だか聞き捨てならない発言を聞いた気がしたから……」

 「ふふっ、秋葉様ったらお茶目ですねー。きっと空耳ですよー。」

 「そう? 次からは『一応』気をつけるわ。」

 「それに秋葉様の二つ名であった『万年2位』も変えないといけませんねー。『にんげン十勝平野』とか『電撃鬼妹』っていうのは如何ですか ?」

 「……琥珀の心遣いは嬉しいンだけど、自分の事だから結構でございまするわ。」

 部屋の中はフフフとホホホという二つの笑い声で満ちていた。……何処からともなく『ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……』という80年代ジャンプめいた効果音も聞こえてくる。晴れていたはずの青空は暗雲に包まれつつあり、今にも雷光と豪雨が襲ってきそうである。

 「……」

 その様子を見ていた翡翠は二人に対し背中を向け、ここに来て以来3つ目となる胃薬の瓶を空け、個数を確かめもせずに一気に水無しで飲み込んだ。

 (前略 志貴様。翡翠は人外のモノとも戦える仮の当主様と、コンニャク以外は何でも斬ることができる姉との間でドキドキするほど大ピチンな日々を送っております。 どうか、私が巻き添えになる前に早く目をお覚まし下さい。後生ですから。)

 「……そう言えば秋葉様、先程北辰様が後ほどこちらにいらっしゃるとの連絡が入りましたー。『撤退準備を進めておくように』との事ですが……」

 「どうしたのかしら。特にこちらの落ち度はないはずだけど……」

 「はい、特に問題は無いと思います。一応、侵入者迎撃システムを起動させておきますか?」

 「そこまでしなくても良いわ琥珀、彼の弱点は前回で良く分かった訳だし。」

 「分かりましたー。お茶とお菓子位は用意しておきますね。……買収用に秋葉様の10日モノを用意してありますし……

 「そうね、後は撤退の準備をする旨を皆に伝えて頂戴、琥珀。」

 「りょーかいです♪ そうしたらこちらもお茶をいれますねー。」

 何時の間にか険悪な雰囲気は消え去り、北辰への対応と命令に対する手配について話している秋葉と琥珀であった。

 (志貴様抜きでこの二人の険悪なやり取りがあっさり終るなんて、命令があったとはいえ不吉な……)

 翡翠の思いとは裏腹に、外は先程までの青空が広がっていた。3人共同盟による襲撃準備が進行している等とは知る由もなく、のほほんとオデッサ鉱山基地の午後は過ぎていくのであった。








 ……1人の少女がコンテナの中で息を潜めていた。真っ暗闇のコンテナの中で彼女は何かに耐えながら、ただじっと待っていた。

 (『あそこ』にはもどりたくない…… だから我慢しないと……)

 先程から彼女はそのことばかり考えていた。


 ソックスハンター特定の人間以外には有害でしかない未洗濯の靴下の山に紛れ込みながら。


 「……これで最後ね。」

 「はっ、北辰様。」

 「では搬入を急いで、すぐにオデッサに向かいます。」

 「了解です。」

 少女の耳に外部からの会話が入ってきた。

 (ああ、もう大丈夫。ようやく『ここ』から……)

 そう思った瞬間、彼女の意識は闇の中へ沈んでいった。








 秋葉達がオデッサで緊張感に欠けた会話をしている頃、テンカワ・リョーコは自分専用のエステバリス「マルス」に搭乗を終え、モニター越しに外部の景色を見ていた。

 「……オイ、ありゃ何の冗談だ?」

 外の滑走路にはB−52爆撃機が発進準備を行っていた。リョーコからすれば、統合軍にいた時の授業で写真だけでしか見たことの無い、旧式の爆撃機である。

 「ああ、何でも『彼等』を乗せる為にサトル・ファリーナっていう武器商人からわざわざ買ったってホウメイガールズの方々からは聞いておりますが?」

 彼女の呟きを外部スピーカー経由で聞いたのか、機体を整備していたスタッフの1人がそう答えた。

 「……ま、良いけどよ。それよりあんな貧弱そうなボウヤ奴等が使えるのか?」

 スタッフが示した先を見ながら、リョーコはそう疑問を発した。各々統一性の無い私服姿で爆撃機にぞろぞろと乗り込もうとしている100人ほどの男達。何人かスキンヘッドの筋肉質の男がいる以外は、体格も貧弱である。数はいても戦力とはなりえない、そうリョーコは判断した。

 「どう見てもただの民間人だよな…… オレの足を引っ張らなきゃいいんだけどな。ま、そうなりゃそうなったで全部片付けて俺の総取りってことでも良いしな。」

 「その辺の判断は自分には…… っと、リョーコ様。発進準備完了いたしました。」

 「そうか、サンキュ。」

 整備スタッフに礼を言って、リョーコは機体をラピスが趣味で作ったカタパルトへ向ける。

 「よーし! テンカワ・リョーコ、リック・ディアス『マルス』出るぞ!」

 航空機用の滑走路の横に設置されたカタパルトは、リョーコ機に凄まじい加速を与えた。あっという間に飛び去る彼女の機体。

 「こないだはアキトの傍にいたんで暴れる事が出来なかったからな、今日は久々に運動するか……! オイ、ナイル川から拾い上げた恩を忘れるんじゃねェぞ……

 パイロットシートの側面に固定した二振りの刀に目を向けながら呟くリョーコ。その内の1本が微か震えた事に満足げな彼女であった。……それ故に正面ディスプレイの右下に一瞬浮かんですぐ消えた『瓜』の字には気付かなかった。



 「……ずいぶんと過小評価されてるわね、私達って。」

 「しょうがないわよ。ナデシコにいた時は、戦闘に参加しなかったんだから。まあ、これで私達への評価を改めざるを得ないと思うけどね……」

 サユリとジュンコは、B−52のコクピット内でリョーコ機にあらかじめ設置してあった盗聴器からのリョーコの声を聞きながら発進準備をしていた。

 「みんなを席に設置したよー!」

 「発進準備も出来たんで、滑走路へどうぞだってさ。」

 ミカコとエリがそう言いながらコクピット内へ入ってきた。

 「でも驚いたなー、サユリが飛行機の操縦が出来るなんてねー。」

 ハルミもまたそう言いながら入ってくる。

 「昔、とある中東の王国政府軍が作った傭兵訓練所でちょっとね。……紙切れより薄い己の命、燃え尽きるまでにわずか数秒、か……サキ司令達は元気かなぁ……

 遠い目をしながら呟くサユリ。

 「……女には色々あるものねー。」

 ジュンコの言葉に頷くミカコ、エリ、ハルミの三人。

 「ま、いいわ。とにかく発進します。せーのっ!」
 


 「「「「「『正義』は必ず勝つ!」」」」」
 


 サユリの音頭に合わせて唱和するホウメイガールズ達。サユリが操縦するB−52もまた、滑走路からオデッサへ向けて発進した……!








 ビーッ! ビーッ! ビーッ! ビーッ!

 「「秋葉様……!」」

 「分かっているわ、司令室へ行きましょう。」

 秋葉と翡翠、琥珀達の午後のお茶会は、突然の警報によって中断になった。3人は急いで司令室へ向かった。

 「ハァ ハァ ……状況は?」

 走って司令室へ入ってきた秋葉は、少し呼吸を整えた後にオペレーターに対し状況確認を行った。

 「エステバリスタイプの機動兵器1機が接近中…… 待って下さい、このエステバリスタイプ
 


 通常の3倍のスピードですッ!

 


 「……正面のモニターに映像を回せるかしら?」

 「了解! 正面、出ますッ!」

 一瞬『通常の3倍』という単語に眉を吊り上げた秋葉であったが、すぐに指示を出した。すぐさまオスカー又はマーカーオペレーターによって映像が正面に映し出された。そこには

 

 



 『赤い』リョーコのエステバリス しかも『角』付き


 が映っていた。

 「あはー♪ 敵さんにも酔k……じゃ無かった秋葉様の真似をする不届き者がいるんですねー。」

 「『通常の3倍』、『赤い機体』、『角』…… 機動兵器として必要な全ての要素を揃えています、隙がありません。」

 それを見て琥珀、翡翠が批評する。

 「………………」

 秋葉は何も答えない。ただ下を向いて肩を震わせている。

 「「秋葉様?」」

 う、うふふふふふふふふっ……!

 翡翠と琥珀の声に反応したのか、突然秋葉は笑い始められました。 ……なンだか台詞だけでなく髪の毛まで赤くなっておられます。

 「私の目の前でいい度胸をしているわね、あのパイロット……! 私以外の何人たりともシャア専用機の デザイン三種の神器は使わせないわっ!」


 バッ!


 精一杯(客観的には)貧弱な胸を反らし、正面モニターを指差しながら宣言する秋葉様。


 「翡翠! 琥珀! 


 『やぁーっておしまいッ!』」


 ドロンジョ様秋葉様は二人の使用人にお命じになられました。

 「…………あ、あらほら……」

 「はい、秋葉様 『あらほらさっさー』です♪ さ、翡翠ちゃん。 そうだ秋葉様、ビッグバリア介入準備は出来ていますから、後はパスコードを入力するだけですよー。」

 顔を真っ赤にしながら小声で呟く翡翠と琥珀が、部屋を出て行った。

 「秋葉様! 試作戦艦『斬時羽琉』の出航準備、整いました!」

 「よろしいです、支援パスコードを入力。ビッグバリアシステムに介入。」

 「了解ッ! コード、入力します!」

 秋葉の命を受け、オペレーターは『美容と健康のために食後に1杯の紅茶青汁』と入力した。

 「これで問題はないはずね、総員に告げる! 遺憾ながらこのソロモンオデッサを放棄します! 速やかに斬時羽琉に乗艦しなさいっ!」

 秋葉は基地内の兵にそう命令した。

 「私はあの二人と共に殿(しんがり)を務めます。皆さんは早くこの場から撤退を。」
 


 「「「「「「そんなッ! 秋葉様ッ!! 我々もお供しますッ!!!」」」」」」
 


 「だまらっしゃい!!」

 自分の命令に反しようとする兵達を横山三国志の諸葛孔明秋葉は一喝した。その剣幕に兵達は思わず息を飲んだ。

 「……皆さんの気持ちは嬉しいですけれど、戦いはこの一戦で終らないのですよ。」

 「「「「「「……!」」」」」」

 「考えても御覧なさい、私達が建設中の宇宙要塞『青葉区』に届けた資源の量を。……これでジオン我々は後10年は戦えます。」

 「「「「「「……!」」」」」」

 一喝した後、優しい口調で諭すマ・クベ秋葉。それを聞いて部屋の中の兵達の表情が冷静なものとなる。

 「宜しいですね…… ならば総員、直ちに乗艦しなさいっ!」

 「「「「「「了解ッ!」」」」」」

 (あの二人なら大丈夫だと思うけど…… 兄さん、何かあったら私達を守ってくださいましね。)

 部下に命令しつつそう内心で呟き、秋葉はそっと兄の短刀を握り締めながら司令室を後にした。それを見送った一般兵達は撤退に備え、司令部内の機密書類等の処分を始めた。








 「さーてと、ここまでは上手く来れたな。バッテリーも……満タンだな。」

 『マルス』のコクピット内でリョーコは呟いた。元々、同盟がアキト追跡・捕獲用に地球上の各地に建設した重力波エネルギー供給施設により、ピースランドからかなり離れたこのオデッサ地方でもリョーコ機は問題なく飛行していた。加えて、24時間地球上の全ての地域を監視しているスパイ衛星からの情報も随時リョーコに届けられている。

 「へっ、今更逃げ出そうなんて遅いんだよッ!」

 基地まで3キロほどの距離まで接近している自分の機体に恐れをなしているのか、慌てて撤退準備をしているオデッサ基地の映像をモニターで眺めつつ彼女は「敵」を小馬鹿にした口調で呟いた。


 ドンッ!!


 一瞬、大口径の弾丸が命中したようであったが、ディストーションフィールド(以下DF)が機体への到達を阻んだ。

 「……実弾なら貫通できると思ったみたいだな…… だがなァッ!」

 リョーコは反撃すべく自機に両手で180mmレールガンを構えさせトリガーを絞る……! と、その瞬間、




 『……乗客の皆様に申し上げます。只今上野駅構内におきましてフィールド発生装置に車両故障が発生した為、一時運転稼動を見合わせております。御迷惑をお掛けいたしますが、もう少々お待ち下さい。』

 J○東日○車掌機械的な男性の声で報告があった。声の主はリョーコ機のAI『ジャストミート』である。その途端、リョーコのエステのディストーションフィールド(以下DF)は突如その機能を停止した。その旨を伝える警告ランプに驚いたリョーコは慌てて狙撃体勢を中断した。

 「おいッ! ”ジャストミート”ッ! どーゆーことなんだ?」

 『問題、”不死身の人間”が住んでいる日本の町はどこ?』

 チキチキチキチキチキ……

 リョーコの問いに返答せず、機械音声は突然謎めいた問題を出題した! 加えてきわめて短い間隔で時間を刻む音がし始める。


 バンッ!


 ピロン♪


 「ふざけるなァ!」

 自分の理解を超えているAIの問いに対し、リョーコはコンソールを叩いた。何か別の音がしたようだが構わずに怒鳴りつける。


 ブーッッ!


 しかしAIからの返答は無く、代わりにモニターには『正解:富士見町』という文字と、大きく『−1』と言う数字が表示された。画面下部には『2ポイント勝ち抜け』とある。

 「………………へッ、そういう事か……!」

 何が勝ち抜けなのかよく分からないが、問題に正解しないと事態は改善されない。リョーコはそう判断した。

 「とりあえず、帰ったらイズミの奴を小一時間ほど…… オラッ! 次の問題をさっさと出しやがれ!」

 遠くの敵より近くのピンチ。後者を優先したリョーコは、無論オデッサ基地の動向を既に無視していた。








 「ちゃーんす、ですね。これは♪」

 双眼鏡で突然空中で停止した敵エステバリスの様子を観察していた琥珀は、敵の襲撃に遭った事を喜ぶ某2号機パイロットのように呟いた。

 「じゃあ翡翠ちゃん、私が仕掛けるまでにもう1回狙撃をお願いね♪」

 妹にそう言ってその場から離れ、琥珀はとある倉庫に向かった。

 「……」

 それに一つ頷いて、翡翠は

 「目標をセンターに入れてスイッチ、目標をセンターに入れてスイッチ……」

 と呟きながら、改めて狙撃姿勢に移行した。

 地面に寝そべり、全長が彼女の身長の2倍以上ある大型の銃というか巨大な『砲』と表現するしか作者に表現能力が無いない巨大な武器『ハルコンネン』の狙撃スコープを覗き、目標を中心に定める。そして引き金を引いた。


 ドンッ!


 『主力戦車以外の全ての地上・航空兵器を破壊可能』と謳われた性能であったが、3キロという長距離とリョーコ機の装甲の厚さによって命中はするものの、破壊までには至らない。

 「……まだ強化を必要なようです。」

 シンジ翡翠はその姿勢のまま呟き、後は姉に任せることにした。




 「とりあえず、テスト中ですが威力の程を試しましょうか。それじゃ『今週のびっくりドッキリメカ』発進♪ ぽちっとな☆」

 薄暗い倉庫の中で琥珀は誰ともなく呟き、右手に持っていたコントローラーの赤いボタンを押した。


 ♪パーパラパーパパーパラパッパッパー


 どこからともなく謎のファンファーレが鳴り響いた。そして倉庫の奥から……!


 『カミ、カミ、カミ……』

 と機械音声を発しながら、無数のメカが倉庫から出て行った。長さ2メートル、直径50センチの黒い鉄の棒状の形をしており、とって付けたような2本足で歩いている。

 『カミーッ!』

 倉庫を出た順番にそのメカ達は足のジェットエンジンを作動させ、リョーコ機向かって飛び出した……!

 「あはー、いずれ『犬』とか『ブル』、『ドジラ』、『パンダ/コパンダ』とか『キング』まで作成しないと絵になりませんねー♪ それとも、ジンシリーズの『逆転』版か『三冠』版ですかねー?」

 空を飛んでいくメカ達を眺めつつ、琥珀さンは謎の呟きを漏らしましたとサ。




 『問題、「山本山」を逆さに読むと?』

 自分に襲いくる脅威を知らずに、リョーコは次の問題をAIから出題されていた。問題の簡単さにほくそ笑みながら、彼女は自信たっぷりに


 「逆から読んでも『山本山』だッ!」


 と答えた。無論、



 




 ブブーッ!


 と不正解を示すブザーが鳴る。そして画面には『正解:マヤトモマヤ』と表示された。続いて……!




 ♪タララン タララン タララー



 と音楽が鳴り、画面一杯に『罰ゲーム』と文字が現れた。続いて、

 『テンカワ・リョーコ…… 君の生まれの不幸を呪うがいい……』

 何者かが通信を入れてきた。

 「て、テメエはウリバタケ!」

 『君はいい友人パイロットだったが、君の父上旦那がいけないのだよ。』


 「謀ったなッ!シャアウリバタケッ!」


 『では、ごきげんよう……!』

 一方的にウリバタケからの通信は切れた。その後に画面には


 装甲女装除装


 と表示された。それに伴い、『マルス』の装甲は次々と本体から脱落していく。無論、それを防ごうとするリョーコの操作は一切受け付けない。

 「な、何ィー――――ッ!」

 リョーコは叫んだ。エステの装甲が勝手に脱落している事と、何時の間にか自機の前に迫る無数の黒い棒状メカに……!




 『カミーッ!』


 棒状のメカ達はリョーコ機のとある場所に突撃した。目標ポイントにくっついた後は2メートルだったボディの長さを伸ばしてゆく…… その結果、










 見事なアフロエステ






 がそこにあった。ヒロ☆ツノダ……!! 無論、オデッサ基地はドリフ大爆笑の笑い屋の如き爆笑の渦だ。

 「……さて、幕と行きますか♪」

 自分もころころと笑っていた琥珀だったが、改まってコントローラーのドクロマークがついたボタンを押した。


 ドゴォォォォンッ!!


 『マルス』の頭部が吹き飛んだ。その衝撃でエステは地面に向かって墜落を始める。

 「まだだっ! まだ終るわけにはいかねェんだッ!」

 警告音がやかましくがなりたてるコクピット内で、リョーコは必死にオデッサ基地に向けて墜落方向を修正した……!








 「姉さん、こっちに落ちてきますね、あの機体。」

 「あはー、そうですねー♪」

 翡翠と琥珀はこちらに向かって落ちてくるエステバリスを眺めつつ、のんびりと会話を交わしていた。

 ぶるん、ぶるん

 「……来るわね、こちらに。」

 「ふ、増えてるーっ!?」

 「あはー秋葉様。」

 90台は優にあるバストを揺らしながら、秋葉が翡翠たちの所にやってきた。 翡翠はソレを見てうすた調に驚いたが、琥珀は平然としている。秋葉の手には兄の物である短刀が握られている。

 「……皆さんはどうされましたか?」

 「もうすぐ発進できるわ。介入プログラムも作動しているようだし。」

 琥珀と秋葉の会話の内容は無論、ビッグバリア等の防衛システムの事である。現在、関係部署がコントロールを取り戻すのに躍起になっていたり、アキトのところにいるラピスにどう連絡をつけるかを悩んでいる人間の存在等は彼女たちの知る所ではない。システムが停止しているという事実で十分であった。

 「……秋葉様、歪曲場を展開します。」

 そう言って翡翠がリモコンでDFを作動させた。その直後にリョーコ機が墜落し、衝撃波が彼女達を襲ったが、全てDFに遮られた。

 「……生きているかしら?」


 バカンッ!


 「あ”あ”、何とかな。」

 秋葉の独り言に妙にしわがれた声でコンバット越前リョーコは返事を返した。エステのコクピットドアをこじ開けながらである。二振りの刀を背負い、多少黒焦げになっている以外は大して外見に変化はない。

 「「!!」」

 それを見て翡翠は暗黒翡翠拳の構えを取り、琥珀は何時の間にか箒を持っていた。秋葉は二人を片手で制した。

 「で、あなたはどうするのかしら?」

 「知れたことだっ! オメー等を叩きのめしてやるっ!」

 背中の刀を一振り取り出して構えながら、リョーコは啖呵を切った! それに対し

 「うふふふふふふ……」

 「ほほほほほほほ……」


 
「おーっほっほっほっ!」

 秋葉様は豪快な三段笑いでお答えになられました。

 「……倒す? 男塾筆頭大豪院邪鬼四方天筆頭のこの私を? 貴女如きが?」

 笑いながら胸のポケットからこれまた兄から拝借した彼の眼鏡を取り出した。そして掛けたッ!

 


 ♪ぱらぱぱっぱっぱー

 あきは は めがねっこ に クラスチェンジした!

 
うちゅういもうとヒーロー に なった!

 ぞくせい に めがね が ついた!

 もえ が 255 あがった!

 きりょく が 50 あがった!



 
「……さあ、殺しあいましょうか……!」

 「望むところだ……!」

 髪の毛を改めて赤くして戦闘開始を宣言する秋葉様にリョーコが答え、戦いが始まりました。




 「おおおおおおッ!」

 先手はリョーコ側が切った。素早く秋葉との間合いを詰め、すれ違いざまに秋葉の胴体めがけ居合いを放つッ!


 スッ……


 その一撃を何故か秋葉は上半身をわずかに下に向ける事でかわした。


 「チィッ!」

 舌打ちしながらも素早く体を翻し、相手の顔面めがけ第2撃を放つリョーコ…… であったが、


 クイッ……


 何故か秋葉が首を左に傾けただけで避けられてしまった。

 「な、何ィッ!」

 「ふっ…… 正確な射撃攻撃ですね。しかしそれ故にコンピューターこの私には予測しやすいですわね。」

 リョーコとの距離を少し開けつつ、ランバ・ラル秋葉は優雅に呟いた。

 「今度はこちらから参りましょうか……!」


 とある金髪吸血姫を17に分割し、その他多くの人外の存在を『殺して』きた兄の短刀を腰の高さで構え、秋葉はリョーコに突進した……ッ!


 「ザク雑魚とは違いますわ、雑魚とは!」



 そう言って短刀を腰の高さに構え、古きジャパニーズ・マフィアの『命取ったらァァァッ!』スタイルでリョーコにぶつかる……がッ!






 リョーコの刀が秋葉の左胸に刺さっていた……!






 「へッ…… 心臓を一突きの感触ありだな……!」

 「……!!」

 リョーコの台詞を聞き、顔色が流石に変わる翡翠。だが、琥珀は平然と事態を見守っている。





 「……貴女、覆面レスラーが使う『オーバーマスク』って知っているかしら……?」

 刀が刺さった自分の胸を眺めながら、『秋葉』がリョーコに尋ねた。

 「……?!」

 『殺した』はずの相手が喋りだした事に激しく動揺するリョーコ。よく見れば、刀が刺さっている胸からは血の一滴すら流れていない。

 「……私はメインのボディの上にオーバーボディを身に付けていますので、悪しからず。」

 ビッグ・ザ・武道秋葉がそう話すと、秋葉の着ていたブラウスに無数のヒビが発生した。それが砕け散り、地面に落ちる。そこには……ッ!

 先程と同じ服装の秋葉。但し、胸のサイズは大幅ダウンであるが

 がいた。


 ピキピキ…… ガシャンッ!


 それとほぼ時を同じくして、スクリュー・キッドリョーコの刀の刀身は切っ先から半分が砕け散った!

 「……なッ! 壬生屋から『何かを賭けて決闘』でゲットした『鬼しばき』が砕けただと……!」

 リョーコは驚きながらも素早く後方へ退いた。右手に握った柄だけになった自分の刀を呆然と眺める。

 「あはー、私の自信作を砕いた点は十分評価できますけどねー。あれで砕けるようじゃまだまだですねー♪」

 横から琥珀が能天気に話す。

 「ふぅ…… それはともかくどうします? 私としては無駄な争いは避けたいんですけど?」

 敢えてそのようにリョーコに問う秋葉。無論彼女とて、まだ二振りの刀を背負った相手が簡単に退くとは思っていない。挑発に弱いのではという相手の性格を推測した上での発言である。

 「チィッ! やっぱこれを使うしかないか……?」

 舌打ちしつつも背中の刀を使うかどうか決めかねているリョーコであった。5秒ほど逡巡した後に、

 「しょーがねーか、ここで引き下がっちゃローテーションはゲットできねーしな……!!」

 「……あら?」

 何かの覚悟を決めたらしく、リョーコは不敵に笑った。その笑みに何か危険なものを感じた秋葉は、戦闘態勢に移行した。

 「オラッ! しっかり働けよ、『アヌビス』ッ!」


 シャキーン!


 そう背中の刀に話した後、片方の刀の鞘から抜刀した……!


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……


 「「「!!」」」


 先程からはうって変わった殺気を放ちだしたリョーコに、秋葉、翡翠、琥珀は思わず戦慄した。居合は諦めたのか、無造作に右手に刀を持ち秋葉達を睨むリョーコ。

 (人の持つ目ではないわね、何か人外のモノに精神を乗っ取られたかしら……?)

 ルートによっては兄と共に様々な『敵』と戦ってきた秋葉には、古代エジプト神話のアヌビス神が写った彼女の変貌がそのように見えた。

 「そう、貴女は変わってしまったのね…… 私が狩るべき存在へ……!」

 一瞬悲しみの表情になった秋葉だが、すぐに表情を改め

 勇気兄さん、勇気兄さん、勇気兄さん……」

 と呟き始めた。それを合図としたように、翡翠と琥珀が突然その場から消え去った。その前に煙幕弾を炸裂させる琥珀。辺りは煙だらけになり、何も見えなくなった。

 「くそっ!」

 急に視界が遮られ、動揺するリョーコ。その隙をついて琥珀は……


 プスッ!


 (こうしないと駄目なのかしら……?)

 秋葉の首筋に注射をした。現状に疑問を抱きつつ秋葉の意識は途絶えた。

 「翡翠ちゃん、用意を!」

 姉の指示に頷き、翡翠は姉と共に無意識状態の秋葉に、以下の処置を施した。

 1.翡翠による笛の練習

 2.琥珀作によるスタミナ料理を秋葉に食べさせる

 3.マッチョなアニキによる、秋葉への筋肉トレーニング(byダンベル等)

 4.最後に琥珀が秋葉に注射した麻酔を解除、目覚めた秋葉は所定のポジションに


 ……以上の過程が地球時間に換算して3秒ほどの間に行われた。無論、これはタイムボカンシリーズのお約束琥珀の仕業である。そして……!

 「くっ…… あいつ等はどこへ行った?」

 煙が晴れ視界が回復したものの、敵を見失い困惑するリョーコ。そこへ……!


 ♪ピャラリー ピーヒャーラーピラリー ピリリー


 何処からともなく、笛の音がリョーコの耳に届いた。

 「誰だッ!?」

 リョーコが笛の音が聞こえる方向に振り向くと……ッ! 倉庫の上に人が立っていた。


 「驚き、桃の木、山椒の木、一気に時を渡りきり、ついに出た出たやっと出た、地球後継者のアイドル、ヤットデタマン外道ハンターAッ!」


 赤を基調としたデザインの中にワンポイントで円形の模様の戦闘服

 膝まである白のブーツに、背中には白のマント

 頭には服同様の配色のヘルメットに水色のゴーグル……

 装いを新たにした秋葉がそこに居た……ッ!

 「とおっ!」

 名乗りを上げた後に、地上へと降り立つヤットデタマン秋葉。いつの間にか腰につけていたホルスターから兄の短刀を取り出し、身構える…… そしてッ!

 「さあ、第2ラウンド開始と行きましょうか……?」

 秋葉の台詞を発端として、再び戦いが始まった……ッ!

 (さっきの『アヌビス』とかいう存在があの人に介入しているのなら、先程の居合スタイルとは全く別の戦法で来るのでしょうね。)

 「ウシャァァァァァァーッ!」

 頭の片隅でそのような事を考える秋葉に構うことなく、リョーコは奇妙な掛け声と共に秋葉に向かって突っ込んできた。走りながら秋葉に向かって刃を振り下ろす!

 キンッ!

 ザッ!


 リョーコが「アヌビス」と呼んだ刀と秋葉の短刀がぶつかり、激しく火花を散らした。秋葉は力比べをすることなく、一旦後退した。

 「くっ(な、なんて力なの)!」


 「……今の力では斬り伏せられないか。『覚えた・・・』ぞ……ォォォォッ!」

 相手の力に驚く秋葉とは対照的に、リョーコはそう呟いた。そして再び秋葉との距離を詰め、斬りかかる!

 「……(さっきよりもスピードがある)!!」


 ギインッ! ギリ……ギリッ!


 リョーコの間合いを詰める足の速さと、秋葉に襲い掛かる斬撃の速度が彼女の予測を超えた! 辛うじて短刀で防ぐ秋葉であったが……!

 「さ、さっきよりも早さも力も上回っている!」

 「貴様の力と技はさっき『覚えた・・・」ッ!』

 秋葉を斬り殺さんとするリョーコの腕力が、秋葉のそれを上回りつつあった。

 ドカッ!

 このままでは勝てないと秋葉は判断し、素早くリョーコの胴体に中段蹴りを放つ事で再び距離を離した。

 「……足技は中々のモノか…… しかしその力、『覚えた・・・』……!」

 (まさか、戦闘中に相手の力を『学習』して『成長」しているの? だったらこのまま戦ったらいずれ私よりも強く……!)

 不気味にリョーコは又呟いた。一方の秋葉は、今の状況から導き出した仮説に戦慄した。

 「このテンカワ・リョーコ、コレを手にした以上、絶…………対に負けんのだーッ!」

 大袈裟に台詞を溜めた後、更に踏み込みの速度を上げてリョーコは突進した。秋葉めがけ3回目となる斬撃を放つッ!

 (速いっ! 受け流すしか……!)


 ガッキインッ……!


    グサッ!



 攻撃を受け流すどころか、秋葉の手から短刀が離れた。宙を舞い、秋葉の左10メートルほど先の地面に突き刺さる……!

 「「秋葉様……!」」

 「来ては駄目っ! あなた達は早く皆と共に脱出しなさい!」

 思わず飛び出しそうになった翡翠と琥珀を押し留める秋葉。

 「し、しかし秋葉様……」

 「こ、ここで私が背中を見せたら、全員殺されるわ…… 私が時間を稼ぐから今のうちに……!」

 「ウッシャァァァァァァーッ!」

 「!!」

 翡翠達を説得しようと試みる秋葉に迫るリョーコの刃ッ!








 パシィッ!





 「くっ……(に、人間死ぬ気になれば何でも出来るわね……)」

 『真剣白刃取り』で秋葉は辛うじて斬死から逃れた。が、最初とは比較にならないリョーコの膂力が、徐々に秋葉の体目掛け刃を押す……!

 「(蹴りは多分通用しない……) ならば!」


 ブワッ!


 体を沈め、巴投げの要領でリョーコを投げ飛ばした! どこへ飛んだか確認する手間を省き、秋葉は短刀めがけ走った。再び己が手にそれを取り戻し……!

 「!」

 先程の殺気を感じた秋葉は後ろを振り向いた。20メートルほど先にリョーコが平然と立っている。

 「真剣白刃取りとはな…… あとちょっとで仕留められた所だったのに、惜しかったぜ…… しかしそれももう『覚えた・・・』。」

 意外そうな表情で呟くリョーコに、秋葉は戦慄を禁じえなかった。

 「もう良いです秋葉様! 私がこの場は引き受けますから、翡翠ちゃんと一緒に逃げて下さい!」

 秋葉の説得に応じなかった琥珀が見かねて再び秋葉に避難を願った。

 「……ありがとう、琥珀…… でもね、これでも一応『四方天』なのよ、私。こういう時に『上として』責任を取らなくちゃ、普段好き勝手出来ないじゃない……」

 「「!」」

 「それに、こんな人外の存在を放置するなんて東野……いえ『遠野』家当主として認めるわけには行かないの。昔からこういうモノ達を狩る事を行ってきた家系の当主としては、ね。」

 「「秋葉様……」」

 淡々と語る秋葉。だがそれ故に彼女の『覚悟』を知った翡翠と琥珀は反論できなかった。

 「さあ、もう一度言うわ。『早く逃げなさい』。これは四方天と貴女達の当主としての命令よ。」

 「いいえ、秋葉様。その命令を聞く訳にはまいりません。」

 「翡翠!」

 秋葉の再度の命令に翡翠は首を縦に振らなかった。

 「……秋葉様にそこまでの覚悟がおありのように、私と姉さんにも『遠野』家の使用人としての『覚悟』があります。ここで秋葉様の戦いを見守らせて頂きます。そして万一の時には……」

 「私と翡翠ちゃんできちんと仇は討ちますからねー、御安心下さい。」

 「あなた達……」

 こんな状況にも関わらず、思わず涙腺が緩む秋葉。あくまで自分に従ってくれるという翡翠、普段通りの口調の琥珀、何故かそれが無性に嬉しかった。


 「……別れの挨拶はそれ位で良いか……?」

 「「「!!!」」」

 彼女たちのやり取りを黙って聞いていたリョーコが待ちくたびれた様子で3人に呼びかけた。

 「まあ、そっちにも理由があるみてーだが、こっちだって退く訳にはいかねェんだ。オレとアキトの為に……なァ!」

 そう叫ぶと、リョーコは再び『アヌビス』を構えて秋葉達向かって走り出した。走りながら大きく上段に振りかぶる。

 「「……!!」」

 秋葉は自らが斬りかかることによって、二人を守ろうと考えた。

 琥珀は妹と当主を守ろうと考えた。

 二人が『自分以外の人の為』と各々考えて起こした行動の結果……!




 ドシーンッ!




 「……チイッ!」


 数メートル走った所で、秋葉と琥珀は衝突した。ついでに双方とも転んでしまい、尻餅をつく。仮にどちらかが男性であったとしたら、学園モノラブコメの冒頭に使ってもおかしくないほどに見事なぶつかり方&転び方であった。秋葉を目標にしていたリョーコは、琥珀も自分に向かってきた時点で一旦退いていた。間抜けな状況に舌打ちを漏らす。

 「ち、ちょっと琥珀! 何で貴女まで来るのよっ!」

 「秋葉様こそ、実は翡翠ちゃんと逃げだすと私は思ったのですが……」

 「ね、姉さん…… シリアスな展開を、台無しです。」

 自分たちの置かれている状況を忘れたかのように口論を始める秋葉、琥珀、翡翠であった。

 「そうか、全員で掛かってくるんだな。……ならばこちらはダメ押しといくか。」


 ズザッ!


    バッ!


 このままでは話が進まないと感じたリョーコは一旦後退し、先程捨てた刀身が半分の長さになった鬼しばきを拾い、左手に持った。右手には無論『アヌビス』を持ったままである。


 「なかなかククク……いい感じだ。これぞ『アヌビスプラス鬼しばき!二刀流ッ!!』


 発音しづらい笑いをしつつ、二本の刀を構えながるポルナレフリョーコからは先程以上の殺気が放出されている。

 「このテンカワ・リョーコ、刀を二本手にした以上は絶っっっっっっっっっっ…………対に負けねェェェェンだァァァ!!」


 ドババババババババ!!


 凄まじい効果音と溜めを作った声を上げながら、リョーコの2刀が秋葉と琥珀に襲い掛かる……!


 「くっ!」

 「あはー、ちょーっときついですねー。」

 一撃ごとに速さ、威力を増す二本の刀の攻撃を辛うじて捌くだけしか出来なくなった秋葉と琥珀であった。そして……ッ!

 「バカめーーーーーッ! てめーらのオラオラ攻撃でオレの二刀流にかなうか! 胴がガラ空きになったぜーーーッ!!」


 ガシィッ!


 ドスゥ!


 「!!」

 「「くっ、秋葉様!」」

 「もらったぁーーーーーーッ!!」


 ズブ……


 秋葉の胸に突き立てられたリョーコの鬼しばきが、音を立てて押し込められてゆく。突き飛ばされた琥珀と、事態を見守るしかなかった翡翠の両名から悲鳴が漏れる。


 「やったッ! 勝ったッ! 仕留めたッ!!」


 すこぶるガンパレードなテンションでリョーコは勝利を確信した。更に突き刺す力を増していく……


 ……キインッ!


 「何……?」

 ……筈であったが、1センチほど秋葉の胸に食い込んだ刀身は、それ以上食い込むことはなかった。思わず訝しげに首を捻るリョーコ、そこへ……


 ドンッ! ドンッ! ドンッ!


 「くっ?!」

 銃声が3発分響いた時点で、リョーコは素早くバックステップをした。彼女が居た場所にきっちり弾は着弾している!

 「なっ! 何をするだァー――――ッ!」

 ジョナサン・ジョースターリョーコが姿の見えない襲撃者に叫ぶッ!


 ばばーん!


 まさかの時のスペイ……ではなく、効果音と共に

 「そこまでよ!」

 高野ボイスがその場に響き渡った……ッ! 

 「「「「!」」」」

 その場に居た4人が声が聞こえてきた方向を向くと……




 『エンフィールド改』という名の拳銃を持った黒いコートを来た金髪の女性




 が、50メートルほど先の弾薬倉庫の上に立っていた。その頭上には、双胴型の戦艦が浮かんでいる。が、ナデシコのような流線型ではない。もっと全体的に角張っており、左右には主翼が付いている。


 「帝国華撃団、参上!……」

 その女性は黙ったまま、何も話さない。

 「……誰なの、あの女性?」

 「……秋葉様、これ以上あの人が台詞を話すことも、容姿等を描写するのもいろんな意味で拙いんですよ……今更ですが。 」

 秋葉の問いに、琥珀は気力をごっそり吸い取られたような声で答えを返す。

 「?」

 「……秋葉様、あの方の足元を……」

 訳が分からない様子の秋葉に、これまた脱力をかけられた様子で翡翠が話す。その言葉に応じて、秋葉はその女性の足元を見た。そして理解した。いや、させられた。










 何故か素足

   +

 突然の風で女性のコートが一瞬はだける

   &

 素肌とビキニパンツだけが見える

   +

 普通の女性がそンな格好をするはずが無い。

   

 
そうか、そういう事かリリンッ!



 (((……何も、問題、ありません……)))


 今更、本当に今更であるが、3人の心は「ザンバード」、「ザンブル」、「ザンベース」が合体するかのごとく一つになった。

 

 「……」



 シュッ!

  パシイッ!


 

  「こ、これは……?」

 その金髪の女性は唐突に秋葉めがけ何かを投げた。とっさに秋葉はそれを手に取った。全長45センチほどの細長い布の包みである。

 パパン! パパン! バッ! パパン! パパン! バッ!

 金髪の女性は秋葉が自分の投げたものを受け取ったのを確認すると、自分の両手を2回胸の高さで打ち合わせ、上半身を90度前方へ傾けると同時に両手を前方へ突き出す。右足も地面と水平に上げる。以上の動作をもう1回繰り返した。

 「「……?」」

 「……秋葉様、『それを使って目の前の敵を倒すべし。』ってあの女性は言ってますよー。」

 秋葉と翡翠は女性の動きが何を意味するか分からなかったが、琥珀のみが理解できたようである。

 「あ、あなた…… あれが何か分かるの?」

 「何を仰っているんです、秋葉様? あれは『クックロビン音頭型ブロックサイン』ですよー。『♪ぱぱんがぱん。だーれが殺したくっくろびん っ♪』って奴ですよー。」

 「そ、そうなの……」

 「ね、姉さン……」

 辛うじてそれだけ口にする秋葉と翡翠。

 「そうですよー、その昔マリネラって国の……」

 「何だか知らねェが、これで終わりダァァァーーーーッ!」

 「「「!!」」」

 解説しようとする琥珀を遮って、突然リョーコが3人めがけて再度攻撃を仕掛けてきた……!

 「くっ!」


 パッキィィンッ!


  バサッ!



 とっさに秋葉は手に持っていた布包みでリョーコの『アヌビス』の刃を受け止めた。その衝撃で、『何か』を包んでいた布が破れる。そこには……




 柄の長さが15センチ、刃渡りが30センチほどのごっつく特殊っぽいカッターナイフ


 が現れた。

 「今更そんな武器を持っても無駄だァァッッ! とどめだァァァァァァッ!」

 「「!!」」

 残る手の『鬼しばき』を秋葉めがけ振りかぶろうとするリョーコ、翡翠と琥珀は間に合わない……がッ!?




 鬼しばきが自らの意思で攻撃を止めた。




 「ぐッ……! な、何だよおいッ!」

 秋葉の持つごっついナイフに怯えているのか、半分に欠けた刃の部分をガクガクブルブルさせる鬼しばき。リョーコの意思に反して、秋葉への攻撃を拒否しているようである。

 (あなた…… そこのあなた……)

 (な、何なの一体・・・・・・?)

 目の前の奇妙な状況と同時に、秋葉の脳裏に直接聞こえてくる声があった。

 (そう、そこのア・ナ・タよ(はあと)……!)

 「!!」

 聞いた事の無い女性の声が先程よりも大きく秋葉の脳裏に響くと同時に、秋葉の目の前が真っ白になっていった……!




 

 





 「う、うわァァァァァァァァッッ! シャアや、奴が来るゥゥゥッ!」


 「厚志、落ち着くのだ! 厚志!」

 秋葉が謎の声を聞いたのとほぼ同時刻、秋葉達のいる世界とは別の世界のとある病院に少年の絶叫が響き渡った。それをなだめる少女の声も聞こえる。

 「あァ、アレがぼ、ボクのお腹にサックリと……! はじめチョロチョロなかパッパ、ボクが泣いても刃を抜くな……! アア、ツキガキレイダナァ……」

 「お、落ち着くのだ厚志! アレは従兄弟殿に頼んで他の世界に追放した! 『彼女』も今は関東だ! お前を害する者はこの熊本に最早居ないから落ち着くが良い!」

 「ウ、ウフフフフ…… ドラゴンボールでも焼きもち状態は治せなかったなあ…… ぼ、ボカァ駄目なんだな、コレが。あ、究極!変態仮面じゃァないかァ…… 今日も 顔のぱんつがイカスね…… グッジョブッ!」

 厚志と呼ばれた少年は完全に少女の言葉など届かない様子で、壊れトークを何者かとしている。最後に右手の親指をぐっと立てた。

 「こ、こちら5121小隊の芝村舞である! 速水厚志が例の発作を起こした! 至急病室に来るがよい!」

 慌てて医者を呼ぶ少女=芝村舞であった。

 「しかし、アレを使える人間が他の世界にも存在するというのか……? 『絢爛舞踏』の厚志に重傷を負わせるほどの威力を秘めた『アレ』を……」

 彼女達のいる世界を脅かしていた『幻獣』と呼ばれた存在を駆逐し、一時は他の世界まで行き来した速水厚志…… その彼をここまである意味破壊追い詰めた武器が、今の秋葉の持つ武器であった……!









 (こ、ここは……?)

 秋葉の目の前には、何処までも白く染まった空間があった。

 (ここは、アナタの意識の中よ……)

 (!!)

 背後から何者かの気配を感じ、秋葉は振り向いた。そこには……

 黒髪をショートカットにした女性がいた。年齢は秋葉より少し上だろうか。どこかの学校での物あろう制服を身に付けている。……仮に北辰がその女性を見ることが出来れば、かつて彼に新たな力を与えた人物と似た服装であるという印象を彼は持つだろう。

 (あ、貴女は一体……?)

 (私の名前は原 素子(はら・もとこ)。アナタが今持っている道具の前の持ち主よ。)

 秋葉の問いに原と名乗る女性はそう答えた。秋葉を見つめる原の瞳には、バファ○ンの半分を占める成分である『やさしさ』があった。それを見て、秋葉は警戒の態度を緩めた。

 (では原さ……)

 (駄目、『お姉さま』って呼んで……)

 (……は、ハイ『お姉さま』…… 一体何故私の所へ?)

 原の声に何故か逆らえず、秋葉は彼女をそう呼んだ。

 (そうね、ソレを『使える』人が私以外に居るなんて思いもよらなかったから…… ソレはね、『絢爛舞踏』の血を吸っているの。)

 (『けんらんぶとう』……?)

 (そう。簡単に言えば呼吸するかのごとく容易に敵を倒し、ただの人間から『ヒーロー』になった人間。私たちの世界にあった脅威を取り払ってくれた人物の事よ……)

 (……そんな凄い人の血を……?)

 (そう、凄いけど女の子の気持ちは全然考えなかった男の子よ…… 色んな世界の女の子にちょっかいを出して、挙句の果てに『ある力』で私の機嫌を直そうとしたの、その子。可愛いけど、愚かだったあの子……)

 (そ、そんな! お姉さまみたいなステキな方の他に女性を?)
 


 ♪ぱーらぱりらりら〜



 何時の間にかHな雰囲気時の甘いサキソホンのメロディーが場を支配していた。秋葉は次第に原の視線から放射される妖艶な力に支配されていた……!

 (……そうじゃないのよ。良い? 男って勝手な人が多いのよ? そう、アナタのお兄さんのようにね……)

 (!! 何故その事を……?)

 (アナタの事だったら何でも分かるわ…… そう、パツキンでスタイルグンバツの吸血姫や、同じくボンッキュッボンッで眼鏡ッ娘の先輩、3人で『たなとす』したくなっちゃうメイド姉妹か…… あら、黒猫に化けた幼女の姿も見えるわね。……あらあら、足で挟むなんて斬新ね。……もてるわね、アナタのお兄さんって。)

 (もうっ、お姉さまっ! ……って黒猫って何?)

 原は秋葉の脳裏とそれ以外から知覚した秋葉にとっての『ライバル』をオヤジ臭い表現も交えながら的確に指摘した。それに対し秋葉は可愛らしい声で怒る事しか出来なかった。

 (うふふっ、大丈夫よ。アナタには他の人達には無い『妹』、『ナイムネ』っていうステキな属性を持っているじゃない。もっと自分に自信を持って良いのよ……?)

 (で、でも……)

 艶っぽく笑いながら秋葉の頭を撫でながら話す原。頬をうっすらと染めつつそれを受け入れる秋葉。

 (大丈夫、そのためにアナタの手元に『ソレ』があるんじゃない。)

 (こ、これが……?)

 (そう、ソレを使えば言う事を聞かない男を刺したり斬ったりとか、『彼女達』と戦って勝つ事だって容易になるわよ……)

 (!)

 ここで原は秋葉に禁断の果実ともいえる言葉を発した……! その言葉の魅力に逆らえない秋葉……!!

 (で、でも…… ああっ!で、でもちょっとそれも良いかしら?

 (戸惑う事は無いわ…… 女の子だったら欲しいモノは戦ってでも手に入れなくちゃ、ね? 民明書房の本にだってそう書いてあるんだから。)

 (そ、そうなのですか…… な、何なの…… この感じ……

 (そうよ(はあと)。ね、お姉さんに全部任せない。)

 なおも途中で巧みにウィンクまで混ぜながら説得を続ける原。既に秋葉の神経パルスは某ネルフのピンクの怪獣オペレーターが見れば驚くだけでは済まないであろう。

 (さあ、『私』と一つになりましょう…… それはとても気持ちのいい事なのよ……)


 秋葉の神経パルス、限界点突破&大反転。


 (お、お姉さまーッ!)


 綾波レイ原の甘い誘惑に乗り、秋葉は目を閉じ背筋を伝わってくる『何か』身を任せた……! サキソホンのメロディーはやったらめったらガンパレードだ……ッ!




 (さあ、もう大丈夫よ。行ってらっしゃい、アナタの未来の為に……!)

 ソレは一瞬だったのか

 それとも長い間だったのか

 それすら分からずに何故か息も絶え絶えな秋葉の脳裏に原の声が響いた。そして秋葉の意識は現実に引き戻されていった……ッ!


 

 







 「……ふふっ、『ご馳走様』……」

 とある部屋で原はほのかに上気した頬に手を当てながらそう呟いた。最後に非常に艶っぽい仕草で自分の唇を舐めた。

 「……! ……!!」

 その足元で




 ヒゲでメガネで足はスネ毛でかつ、半ズボンのみ履いている男性が何やら声を上げているようだが、とある特殊な形状の猿轡によって彼の口は塞がれている故に声が出せないようである。

 ちなみに今の原の姿は、詳細に書くと18禁行きな女王様スタイルである。まだだッ!まだ(多分)大丈夫ッ!

 「もうっ、心配しなくても大丈夫よ。勿論メインディッシュは貴方に決まってるじゃない。善……」

 「……ふもっふ!!!」

 呟きながら悪魔城に赴く戦士が使うメイン武器(しかも鎖版)を手に取る原、その語尾はボン太君男の悲鳴か喜びの声かを判別できない謎の言葉により、聞こえなかった。




 

 





 「「……秋葉様、秋葉様、秋葉様!」」

 「…………琥珀? それに翡翠……」

 自分を呼ぶ二人の使用人の声に引き摺られるようにして、秋葉は目を覚ました。一瞬、自分が何処にいるのか、何をしていたのかが分からなくなる。が……

 「……はぁっ……」

 先程の出来事はしっかりと脳裏に残っていた。ナニをしたのかは分からないものの、秋葉はまだ頬をわずかに赤らめながら艶っぽいため息を吐いた。

 「……どうされたんです、秋葉様(むーっ、ちょっとせくしーですね。これは。)?」

 「え……? い、いえ。何でもないの。」

 ジト目で自分を見る琥珀を見て次第に意識をハッキリさせてきた秋葉は辛うじてそれだけ言った。

 「そ、そうだわ! あの人はどうなったの?」

 「……秋葉様、あれをご覧下さい。」

 慌てて場を誤魔化すように尋ねた秋葉に対し、翡翠が律儀にとある方向を指差す。そこには




 未だガクガクブルブルしている鬼しばきに翻弄されてるリョーコ

 が居た。

 「秋葉様が意識を失われている間もずっとああでした。無論制圧を試みたのですが、流石に危険でして……」

 「良いのよ、琥珀。」

 申し訳無さそうに弁解する琥珀の頭にそっと手を置きながら秋葉は話す。

 「今の私なら、あの程度はどうという事は無いわ。だから二人とも下がっていなさい……!」

 「「はい、秋葉様。」」

 やけに強気な秋葉の言葉に従うべきものを感じたのだろうか、翡翠と琥珀は大人しく約30メートル後方まで退いた。

 (お姉さま、力を貸して……!)

 そう念じつつ、ごっつい士魂号作業用ナイフを胸の高さに構える秋葉。

 「……チィッ!」

 秋葉から異様な力をリョーコは感じ、鬼しばきを捨てたッ! 改めて『アヌビス』を構え、秋葉に備える……!

 (そう、その調子よ……)

 (! ハイッ! お姉さまっ!!)

 そんなリョーコには構わずに目を閉じて次第に大きく、強くなっていく力の流れを感じている秋葉…… そんな彼女の耳には、原の声が聞こえたような感じがした。その声に引きずられるかのように力は満ちていく…… そしてッ!


 カッ!


 秋葉はキッっと両目を開いた……ッ! そして、



 『我が名は”遠野”秋葉ッ!』



 気力が150になったかの如く力強く、高らかに名乗りを上げたッ!



 『兄さんとお姉さまを守る剣なりッ!』



 「「お姉さま……?」」

 翡翠と琥珀の疑問は意図的に無視する秋葉であった。そして30センチしかないはずの刃の長さが



 ピンク色の謎エネルギーに覆われて10mほどまで伸びる……ッ!



 秋葉はそれを水平方向に構えると



 『必ず殺すと書いて必殺! 斬艦刀モトコ・ブレード 一・文・字切りッ!』



 リョーコに向かってホバークラフトでも足に付いているかのごとくツィーンと接近した。そして……ッ!



 ガッキィィンッ!



 「クッ!」

 リョーコも負けじと自らに振られた相手の刃に『アヌビス』を合わせるがッ!



 パッキィィン……


  ズバッ!



 『アヌビス』の刃は簡単に相手の力に屈し、粉々に砕け散った。そのままリョーコに巨大な刃を振るいつつ、秋葉は彼女と距離を取った。






 そしてリョーコを中心に何故か起こる大爆発






 「兄さんとお姉さまの刃に断てぬモノ等有りはしませんわ……!!」

 爆発を背にしつつ、締めの台詞を忘れない秋葉。そこへ……

 「あ、あは〜秋葉様、『お姉さま』って誰ですか?」

 「こ、殺してしまわれたのですか……?」

 心なしか怯えた様子で琥珀と翡翠が秋葉に尋ねる、そうしている内に爆風は収まった。








 無論 リョーコは アフロだ(爆)






 「……殺してはいないわ、峰打ちよ。」



 あれで峰打ちDEATHか


 じゃあ「必殺」って何デスカ?



 翡翠と琥珀は謎の『お姉さん』の存在等、様々な思いを胸に抱いたが、何も口には出せなかった。すこぶるガンパレードなご様子の秋葉様を見ると、それを口にするのは死を意味するッ!

 (お姉さま、秋葉はやりました…… これからも頂いたこの刃で兄さんとお姉さまの為に戦い続けます……!)

 空に原の姿を浮かべ、手を胸の高さに上げ拳をギュッと握りながら秋葉はそう誓うのであった……!




 「フッ……」

 その様子を金髪の女性は、倉庫の上から満足げに眺めていた。しばらくして踵を返し、自身が乗ってきた戦艦『木馬』に戻ろうとするが……


 ドッガァァァァンッ!


 「!」

 突然船体の一部が爆発する『木馬』であった。

 「……!!」

 デビルアイなら透視力抜群の視力を誇る不確定名:?きんぱつのじょせいの目には、1キロほど先に次々と着地するパラシュート群が 見えた……ッ!

 「……!!!」

 慌しく警報が鳴り響いている戦艦を無視し、?きんぱつのじょせいは彼らめがけて走り出した……!





(後編へ続きます。)

 

 

 

 


<次回予定(声:ブライト=ノアの人(爆))>

 秋葉さン(+原姐さン)によって、リョーコは倒れた。だが、北辰にホウメイガールズ達が迫る……! 彼女達はどうやって戦うんだろう……? それは次回で明らかになるぞっ! 次回、
逆転イッパツマンマーダーライセンス北XU『 すたーだすと☆くるせいだーず(後編)』 絶対見逃せないぞ、な?




(長い後書き+謝罪+お礼+駄文)
どうも、ナイツです。



 申し訳ないです。


 まず最初に色んな意味で謝罪をば…… 前作の後書きには、「次は真面目な話を書く」と書いたのですが、『明日を信じて』を書いた時点のようなテンションを取り戻せていないので、敢えてこの作品を先に投稿させていただきました。……しかも、ネタを詰め込みすぎたので長くなったので、前編/後編に分けました。後編は「北」の戦い+αになります。

 ……一応「まあ、真面目だろう」と思われる作品も半分ほどは書いてあるのですが、執筆が止まってます(土下座)。無論後編を完成次第、再開する所存であります。……見捨てずに次回もお読みいただければ幸いです。まあ、ここまでやった以上、ルリ、イネス、リョーコのファンの方々の中には許して頂けそうにないですから(爆)。あ、秋葉ファンもでしょうか(核爆)。


 ……で、相変わらず古い作品のネタが大半を占めています(汗)。主要な元ネタを挙げると……
・月姫
・1stガンダム
 (先日『冒険王版』という漫画版ガンダムを入手しました。サイド7をミサイルで破壊する/アッガイに乗るシャア、「ジャイアントカッターもどき」を使うホワイトベース、『宇宙用モビルアーマー』のゾック……ネタとしては最高の作品でした)
・ガンパレード・マーチ
・タイムボカンシリーズ(ヤッターマン/ヤットデタマン/予告と序盤で逆転イッパツマン)
・ジョジョの奇妙な冒険(1&3部) が主でしょうか。あ、後某肉マンとかカイジもそうですね…… 他にも色々入れてます。

 こんな作品ですが、多くの方の知恵やネタをお借りさせて頂いてます。
元ネタ&作風は
・BA−2様(今回は『テンカワアキト・ネバーランドを行く:ラスト・オペレーション』の内容をお借りしました。)
・黒サブレ様&影人様(こちらが好き勝手やっているのを許可いただき恐縮です。)
WRENCH様(是非、左のリンクから行ってみてください。嫌と駄目、筋肉、アフロ…… それだけでなく徹底した取材や情報収集に裏付けられた極めて真面目な作品も多々あります。敢えて言えば『行け!朝高排球部!』、『シリーズ・「レイ」の残影』が自分のお気に入りです。ただ、ルリをネタにされるのが死んでも嫌な方はやめた方がいいです(爆)。まあ、ここまで読んで頂いた方にその様な方はいないと思いますが(核爆))
・広島県人様&アヤカ様(銀英伝を思い出し、ネタにしました。作品に感謝です。)
・彼のΣ(かのしぐま)様(あれだけしか使えませんでした。申し訳ないです。)

 加えて感想以外掲示板等でお世話になった
・カッパ様、緑麗様、F_sanct様、謎様(原姐さん関連と今回の戦闘に関するネタは皆様のおかげです。ありがとうございますッ!)

 そして、こんなナイツに感想を下さった皆様……! 更にはこんな作品群をサーバーに置いて下さる管理人様、圧縮ファイル倉庫の管理をなさっているであろう圧縮教授、最後で恐縮ですがこれをアップしてくださる代理人様ッ! 皆様に感謝を捧げます。

 で、序盤のルリ&イネスですが、ルリが歌っているのはFCの「ボコスカウォーズ」と「ヴォルガードU」というゲーム内の歌です。次に、イネスが言っていた「FOJY社が出した『KFTVT』」はアルファベットをずらします。FをE、OをNに…… ってな感じです。ぐーぐるで検索すれば、ヒットすると思います。
 一応、PC8801mkUFRとFC+ソフト(たけしの挑戦状等百本ほど!)を実家に置いてあったのですが、こないだリフォームしたようで、全て捨てられてました(滝涙)。イース1,2,3とかスナッチャーとか、バンゲリングベイとか、ドルアーガの塔とか上上下下左右左右BAのシューティングとか。特にFOJY社の『アンジェラス』のディスク4の部分を御存知の方とか(以下略)。……これが全て分かる方とは酒でも飲みながら語りあいたいものです(爆)。

 最後に『アメリカン(笑)』は「ラブやん」という漫画にわずかに出てきたネタです。……WRENCH師のHPを見て実験を試みましたが…… ドクペが発見できません。JR神田駅付近では(涙)。何とか後編終了段階までには見つけます。

 

 

代理人の感想

取りあえず一言。

 

なんだか知らんがとにかくよしっ!