オオイソシティ中心部から車で10分ほど行った小高い丘の上に巨大な屋敷がある。周囲を壁で覆われている中、正門には小さく『覇道』と表札が付いている。多少経済事情に詳しい者がそれを見たら、とある企業名を思い出すだろう。

 『覇道財閥』という名を。




 『覇道財閥』

 ネルガル重工とほぼ時を同じくして経済界にデビューした企業グループであるが、創設者『覇道鋼造』の素性が一切不明な事に加え、株式を全く公開しないという時代遅れとも言える企業姿勢は、投資家の興味を集めることは無かった。

 ネルガル重工がエステバリスやナデシコといった兵器等で先の戦争に積極的に関与した一方、覇道グループは戦争に関与せず、民需分野で収益を上げていたようである。株式=ひいては会計や財務、そして事業の詳細な内容を全く公開しない企業であり、アスカ・インダストリーやクリムゾンといった企業群が経済界を賑わす中でも、ひっそりと存続していた。

 このような財閥が再び名を世間に知られる事になったのは約1年と3ヶ月前のことである。

 覇道グループ内の一企業である『覇道重工』の社長夫妻が同盟の『戦闘』に巻き込まれたのである。その安否は未だ一般には知られていない。覇道重工の社長が覇道鋼造の息子であるという未確認情報も流れたが、その真偽も未だ不明である。

 これがきっかけとして覇道財閥は混乱に陥った。折りしもアカツキ・ナガレ会長からテンカワ・アキト同盟に経営者が変わったネルガルが、覇道財閥に属する企業を積極的に買収し始めたのである。

 何故か創設者たる覇道鋼造はこの事態に何も手段を講じなかった。その結果同盟が完全に経営権を掌握したネルガルによる合併・吸収の後に、覇道の名を冠する企業は覇道重工のみになったのである。

 「当方にとって有益と思われる会社は全て買収させていただきました。当社と同時期に設立された企業を全て吸収するのは、当社にも覇道側にとっても不利益となりますし。勿論、覇道鋼造氏と話は付いております。」

 当時記者会見に応じたテンカワ・ユリカのコメントである。その後覇道鋼造がどうなったかは結局世間に知られる事は無く、覇道重工の社長の地位は社長夫妻の令嬢が継承したという噂が流れたが、その真偽も定かではなかった。覇道重工もまた、企業内容等を一切世間に公表しなかったからだ。

 同盟が様々な企業を傘下にし、経済界を掌握していく中、業界からは地位を無くしたと評されたアカツキ・ナガレを経営顧問に迎えた覇道重工は、社長夫妻の令嬢をトップにしたことを世間に公表し経営を再開した。同盟が錬金術によって世界経済を変貌させていく中、オオイソシティの戦後復興に一役買ったようである。

 推定される財務内容等は巻末に掲載しております。

 <インペリアル・データ・バンク刊 『年刊 非上場企業概要 219×年版』より抜粋>

 

 上記資料にあるように、同盟に良くも悪くも翻弄される経済情勢の中、覇道重工とオオイソシティは全く見向きもされずに今までやってきたのである。

 世間は未だ、この企業が持つ真価を知らずにいた。








 ジュン達がドクター・ウェストを一旦撃退したのと概ね同時刻。

 「ふう。さて、今日の仕事は終わりかな?」

 覇道邸内、

 自分にあてがわれた部屋でアカツキは一息ついた。手に持っていた書類をテーブルに投げてイヤホンを手にし、耳に付ける。部屋のドアに視線をやり近づく気配が無い事を確認してから、引き出しの中に仕舞ってあったプライベート用の通信回線を開く。自分が通信に出れなかった時の相手からのメッセージを音声だけで聞き始めるアカツキ。にこやかに、真剣に等、様々に表情を変えながらアカツキは通信相手が残したメッセージに耳を傾ける。いつの間にかそっちに意識を完全に向けていたアカツキは、ドアを開け入ってくる足音に気づかなかった。

 「アカツキ様。」

 黒のスーツを完全に着こなし、右手には円形のトレイ、左手にはタオル(というには豪華過ぎるが)を手にした男がアカツキを呼ぶ。その身体は何かの武道を嗜んでいるのか、全く隙を感じさせない。その姿に動揺することなく、アカツキはごく普通の仕草でイヤホンを仕舞う。

 「……ん、ああ、ウィンフィールド君か。」

 「お仕事中の所を申し訳ありません、アカツキ様。」

 眼鏡越しにアカツキを見るウィンフィールド。口調は丁寧であるが、眼鏡越しに見える彼の瞳は、抜き身の日本刀を髣髴させる。

 「瑠璃お嬢様にご報告をお願い致します。例の『魔導書』探索の件で。」

 「うーん、その日の実績を上司に報告するか。何だか自分が一営業になった気がするねェ。」

 「それだけお嬢さまには重要な件ですので、アカツキ様におかれましてはしっかりとご報告頂けると助かります。」

 「まあ、彼しか居ないからねー。僕らの状況を理解してくれて、かつ協力してくれる人っていったら彼位なモノだと思うよ?」

 淡々と口にするアカツキ。

 「その辺の事情は当方には分かりかねます、故にアカツキ様に置かれましては、是非お嬢様に経過を報告頂きたく存じます。」

 「うーん、今のところは何の連絡も無いけどね。あ、そーいえば魔導書の探索を別の人に頼んだのって言ってなかったけ?」

 首を下に動かす事で肯定を示すウィンフィールド。

 「分かったよ、それじゃ早速報告に……」

 そう言ってアカツキが椅子から立ち上がろうとした瞬間、

 警報が覇道邸内に響き渡った。

 「!?」

 「どうしました!」

 驚くアカツキを尻目に、ウィンフィールドは素早くアカツキの執務机の端末から状況を確認している。

 「……そうですか、分かりました。私はお嬢様、いえ司令とすぐそちらに向かいます。その間、近隣住民の避難をお願いします。……ええ、マニュアルに基づいて下さい。頼みますよ、マコト。」

 そう言ってウィンフィールドは会話を終えた。アカツキの方へ向き直る。

 「アカツキ様。」

 「まさか?」

 「はい、破壊ロボがこの街に出現しました。我が覇道重工は軍と連携してこの撃退に当たります。」

 「同盟がここにも目を付けたのかい?」

 「ええ、さきほど市外の工場跡で火器を使用した戦闘があったとの報告がありました。おそらく同盟の関係者が侵入し、破壊ロボを召喚して戦闘行為に入ったものと思われます。」

 淡々とウィンフィールドはアカツキに話す。だが、

 (やはり、社長夫妻が被害に遭われたことを相当に怒ってるなぁ。)

 アカツキはウィンフィールドの瞳に抑えようも無い怒りの感情を見た。

 「で、僕はどうすればいいのかな?」

 「私は司令の元に参ります。アカツキ様におかれましては、非常ルートAにて地下司令室までお越し頂きたく存じます。」

 「あ、あのルートを使うのかい?」

 「はい、それが一番早いですから。」

 狼狽するアカツキに対し、にこやかに答えるウィンフィールド。

 「ど、どうしてもかな?」

 「事態は一刻を争います。お急ぎを。」

 ウィンフィールドの表情と姿勢は揺るがない。交渉の余地無しと判断したアカツキは自分の執務机に戻った。椅子に座り肘掛のスイッチを押す。途端に

 座っている椅子ごとアカツキの姿は部屋から消えた。

 自分の悲鳴をドップラー効果で残しつつ。

 「問題無さそうですね。」

 一言呟き、ウィンフィールドもまたアカツキの部屋を後にした。




 「失礼致します、お嬢様。」

 とある部屋の前にウィンフィールドは居た。ノックをして部屋に入る。

 「……とうとうこの日が来たのですね、ウィンフィールド?」

 「は。」

 目の前の人物に一礼するウィンフィールド。


 艶やかな黒の髪

 そのまま社交界のパーティーに出席できそうな気品溢れるドレス

 そのドレス以上に纏いし気品

 瞳には確固たる意思を宿す少女

 彼の主にして覇道重工の現社長

 『覇道 瑠璃』を


 「状況は?」

 「破壊ロボがオオイソシティ南西部に出現いたしました。軍には出動要請を、『あの方』達には住民の避難を依頼してあります。」

 てきぱきと答えるウィンフィールド。

 「結構。それでN−デモンベインは?」

 「申し訳ございません、魔導書は未だに発見されておりません。」

 「起動は無理という事ですね?」

 それは何度も彼女達の間で交わされた質問であった。同盟が『出動』する度に交わされる質問であったが、

 「は。」

 ウィンフィールドからの答えは変わらない。

 「……分かりました。私も地下で指揮を執ります。万一、起動するのであれば……」

 「お任せ下さい。私が指揮を代行させて頂きます。アカツキ氏もおりますれば。」

 「あの方に任せられると?」

 「はい。ナデシコ時代の実績は並みの軍人以上ですから。それにN−デモンベインは彼のお祖父様と大旦那様の残された物ですから。」

 「あの方のお祖父様の事は分からないのですよね?」

 「申し訳ありません。覇道の情報網をもってしても、経歴その他は一切不明です。ネルガル側にも彼に関する情報は残っていないようです。」

 「相変わらず不明なままですか。普段のあの方並みに分からない事ばかりですね。」

 溜息をつく瑠璃。しかし直ぐに立ち直り、

 「分かりました。あの方をスカウトしてきた貴方を信用します。」

 「恐れ入ります、司令。」

 彼女の信頼に一礼するウィンフィールド。瑠璃のアカツキに対する信頼は少なげであるが。

 「では司令。『正装』にお着替えを。」

 「いいえ、ウィンフィールド。既に準備は整ってますわ。」

 そう言って瑠璃は自らのドレスを勢い良く脱ぎ捨てる。


 黒のニーソックス

 白のミニスカート

 身に纏う黒を基調とした外套には『覇』の一文字

 『覇道を往く』という姿勢を忘れぬために瑠璃が入れたただ一文字


 覇道重工の社長ではなく、同盟と戦う司令として装いを新たにした彼女がそこに居た。

 「おお! 良くお似合いでございます司令。大旦那様にも是非このお姿を見て頂きたかった……!」

 何処からかハンカチを取り出し感涙に浸るウィンフィールド。

 「感傷はそこまでですウィンフィールド。早く行きましょう。」

 「は。」

 自らの執務机に戻る瑠璃。傍に立つウィンフィールド。その一角だけが音も無く地下にゆっくりと沈んでいく。

 「覇道の名に懸けて何時までも好き勝手はさせませんよ……! お父様とお母様の仇……!

 瑠璃は呟く。

 彼女達もまた地下の司令室に向かう。同盟との戦いの舞台へと。

 切り札たるN−デモンベインが『勝手に』起動し、出撃する直前である事を知らぬまま。








 「ふう、これはどうなっているんだ?」

 「ふえー、中はこうなってるんだ。」

 ジュン達は巨大な鉄球の中にぶつかることなく居た。N−デモンベインを運んできたキャリアーから切り離されてである。中は様々な魔術紋様で満たされている。

 「『虚数展開カタパルト』の中だ。」

 「は? きょすう…… 何だって?」

 自分の周囲の機材をあれこれ操作しながらアル・アジフがぽつりと口にする。ジュンの疑問を無視してアル・アジフとユキナは話をする。

 「ここから外に出るの、アル?」

 「そうだ、って何だその呼び方は、小娘?」

 「だって一々アル・アジフと呼ぶなんてめんどくさいよ。うん、アルで十分!」

 あっけらかんと断定するユキナ。

 「こ、この小娘! 妾を愚弄するか……!」

 「そっちだってバカにしてるじゃない! 私は小娘じゃなくて白鳥ユキナ! 将来はアオイだけどね♪」

 「二人とも喧嘩している場合か! 早く往くぞ! ユキナ、どさくさまぎれに妄想を口に出すな!」

 「分かっておる! 後で決着をつけるぞ!」

 「ぶう、分かった。」

 不平たらたらではあるが二人はとりあえず矛を収めた。

 「ならば往くぞ、主!」

 「ああ! ……ってここからどうやって奴の居るところに行くんだ?」

 「こうするのさ。」

 アル・アジフがそう言うのと同時に、周囲の魔導紋様に光が宿った。球体内の壁から巨大な瞳が複数発生し、N−デモンベインに迫る。瞳の周囲は岩で囲まれているがある。それらが

 「せ、迫ってくるーっ!」

 「お、オイ!」

 狼狽するユキナとジュン。

 「案ずるな。」

 アル・アジフがそう言った瞬間、N−デモンベインに迫っていた瞳達は動きを止めた。

 「演算終了、妾等を導け!」

 「う!」

 「うわぁ!」

 N−デモンベインが立っていた足元に穴が開き、重力の法則に従ってN−デモンベインは物凄い勢いで落下運動を開始した。

 「案ずることはない。」

 「「どこがだ(よ)ー!!」」

 自信に満ち溢れるアル・アジフの台詞にツッコミつつ、N−デモンベインは垂直落下を続けた。








 「何ですって?」

 覇道邸地下、極秘裏に建設された司令部に着いた瑠璃を待っていたのはN−デモンベインの出撃の報告であった。

 「どういうことですか、マコト?」

 「はっ。先程虚数展開カタパルトの起動が確認されました。N−デモンベインが発進した模様です。」

 マコトと瑠璃に呼ばれたメイドが返答する。金色の長髪とクールなモデルを髣髴する容姿が印象的である。

 「チアキ、プロテクトはどうしたのです?」

 「はい、元々N−デモンベインは魔導書無しには稼動する事は無いと大旦那様からも言われております。加えてウチ等でも魔術的にプロテクトを施しております。単なるハッカーごときにどーにかなるモンでは無い筈ですが。」

 ポニーテールと眼鏡が印象的なメイドが怪しげな関西弁風に報告する。

 「あー、見つけたですぅー。」

 「何をです、ソーニャ?」

 「N−デモンベイン格納庫に微弱ですが魔力反応を三つしましたぁ。うーんとぉ、数値からして残留した魔力のようですー。」

 緑の髪をした少女メイドがやや舌足らずな口調で瑠璃に報告する。

 「! まさか魔術師の侵入を許したのですかっ!?」

 瑠璃の表情に極度の緊張が走る。

 「こちらでも確認しましたわ。……こちらの警戒レベルぎりぎりまで魔力を抑えて侵入したようです。道理で警報が鳴らないはずですわ。」

 「どうして警戒レベルを下げなかったのですかっ!」

 チアキに怒る瑠璃。そこへ

 「警戒レベルはお嬢様…… いえ司令の魔力レベルに合わせて設定しております。司令が格納庫に行かれる度に警報が鳴るのを防ぐ為の措置でしたが、今回は裏目に出ましたね。」

 ウィンフィールドがフォローに入る。

 「くうっ。とにかくN−デモンベインとの通信回線を確保しなさいっ。マコト!」

 「了解。ただ、N−デモンベインは現在転移中の模様。実空間に顕現後に接触を行います。」

 「あー、タキオンカウンターに反応があったですぅ。」

 「ソーニャ、データをこちらに転送して。出現位置を逆算します。少々お待ちを。」

 マコトが計算を始める。それを待つ瑠璃は焦燥感に身を焼かれていた。








 「くっ、何が起こっているんだ!?」

 「何だか目の前が歪んでるよー!」

 N−デモンベインのカメラアイ越しに見える空間は歪んでいた。ジュンとユキナの目に映るもの全てが壊れ、波打ち、渦を巻いている。

 「ユキナ、何処にいる!?」

 「う、うーん。ジュン君の声が近いような遠いようなぁぁぁっ。」

 自分達が居る場所が本当に『此処』なのか、それすら定かではない感覚を二人は味わっていた。

 「この程度でうろたえるでない! ただの空間転移ではないかっ。」

 二人を叱咤するアル・アジフ。

 「空間転移だと? ジャンプとは違うのか?」

 「ええ? フィールドでカバーしてないんじゃないの?」

 「じゃあ、俺たちは……!」




 「あ、そう言えばユキナ君にはカタパルトの事までは話してなかったなぁ。まァ、どうせアレに乗る筈もないし良いか。」

 落下による衝撃で意識を手放しかけそうな中、アカツキはそう呟いた。

 閑話休題、




 「『じゃんぷ』という物が何かは知らぬが、汝等が考えている物とは多分異なる。」

 アル・アジフはそう言ってから、

 「今『居る』我等をこうして『居るかもしれなかった』空間総てに拡げた後に……」

 朦朧としてくる意識の中、ジュンとユキナは辛うじてアル・アジフの説明を聞く。

 「何処なりと指定した座標に『居た』ことにする。まあ、そういうことだ。問題は無い、気にするな主。」

 「や、やっぱりジャンプの理論に似てるんじゃないかなぁ?」

 「そんな事はもうどうでも良い。」

 「何?」

 ユキナのツッコミを流すアル・アジフ。ジュンに対しては

 「実空間に顕現するぞ。衝撃に備えよ、主。」

 「ち、ちょっと待て!」

 「それは無理だ。もうじきだからな。」

 「ああ、ジュン君。来世でもまた逢おうね……」

 「本当にここから出れるんだろうな! ユキナ、違う世界を勝手に見るな!」

 そう言うジュンの視界が白く染まっていった……!








 「くそ、間に合え……!」

 サンダルフォンは猛スピードで空を飛びながら焦っていた。

 ドクター・ウェストの人型兵器をビルを一棟破壊することで足止めとし、自分は先程ジュンに依頼した場所へと急いでいた。先程の通信ではまだ避難が完了していない事が確認できたからだ。

 (アオイはやられたのか?)

 視界にエステバリスと戦う破壊ロボを確認する。破壊ロボが圧倒的に優勢な状況に歯噛みする。

 (あれだけの魔力を持った奴がそう簡単に負けるはずは無いと踏んだが。)

 そう考えつつも翼から漆黒のフレアを噴出し、彼は『仲間』の所へと急ぐ。

 『護る』ために。




 「避難状況はどうなってるの、白鳥君?」

 「80%まで終了しております、舞歌様。」

 オオイソシティ南西部市街地。

 東 舞歌は元優人・優華部隊を率いて住民の避難活動を行っていた。

 「後はこの地区の住民だけです。」

 秋山 源八郎が白鳥 九十九に続いて報告する。

 「高杉君、軍の状況は?」

 「……8割が壊滅しました。撤退を開始したようです。」

 悔しげに報告する高杉 三郎太。

 「まだこの地区は避難が終わってないのに! サンダルフォンは?」

 「敵小型の人型兵器との戦闘を一旦終了し、現在この地区へ移動中との通信が先程。」

 「そう、最後はあの子に頼るしかないのね。」

 白鳥の報告に下唇を噛み締める舞歌。しかし直ぐに

 「ジンはフィールドの展開を最優先しなさい! 間違っても攻撃なんてしちゃ駄目よ!」

 自分達を護る3機のマジンに通信機で命令を下した。

 (既に軍が撤退したとなれば、奴がここに気づくのも時間の問題ね。何とか時間を稼がないと……!)

 思案に耽る舞歌の鼓膜に、

 「すいません! 弟を、リューガを知りませんか!?」

 聞きなれた声が入ってきた。

 「! ライカさん!?」

 舞歌が声がした方向を見ると、

 「白鳥さんっ! リューガは、あの子は何処にいるんですか?」

 「うー、あー、それはですね。」

 ライカが白鳥に必死の面持ちで訊いている。返答に窮し、舞歌を見る白鳥。

 「大丈夫よ、ライカさん。」

 「あ、舞歌さん! あの子は今何処にいるんですか?」

 舞歌はライカの方にゆっくりと歩いていった。優しく彼女の肩に手を置く。

 「リューガには本部で今も働いて貰ってるわ。……だから此処には居ないの。」

 「そ、そうなんですか。良かったぁ。」

 それを聞いてへたへたと地面に座り込むライカ。

 「ふぅ、『自分達を助けてくれた人達に恩返しをしたい』って言って聞かないんです、あの子。」

 困った弟だと言わんばかりに呟くライカ。

 「今更ですけど、1年以上前の記憶を無くしてる私達姉弟に良くして下さって本当に有難うございます。」

 立ち上がり深々と舞歌に頭を下げるライカ。舞歌が何か言う前に

 「でも、あの子が役に立ってます? ホウメイさんのお店にいる時はほんとーに姉さんっ子なのに。」

 「……ええ。リューガは私達にとっても本当に大切な仲間よ。あの子のお陰で皆が助かっているわ。」

 「そうですか、なら私も姉として胸が高いです。えっへん。」

 ライカの表情に笑顔が宿る。それを見て逆に舞歌の心には深い罪悪感が浮かび上がる。

 (ごめんなさい、ライカさん。私達は貴女にとても大きな嘘を付いている。)

 「さ、さあ早く貴女も避難して頂戴? 貴女に何かあったらそれこそ一大事だから。」

 努めて笑顔を保ちつつライカを促す舞歌。その時、

 「「!!」」

 周囲を護っていたマジンの一体にミサイルが着弾した。爆風はフィールドをモノともせずに機体を蹂躙した。マジンはその場に崩れ落ちることなく姿勢を立て直そうとするが、機体の一部がビルと接触した。崩れ、丁度舞歌達の居る付近に落下を始める巨大な残骸。

 「総員退避! ライカさんも早く!」

 「あ、ああっ……!」

 指示を素早く出した舞歌であったが、ライカは酷く狼狽している。彼女に駆け寄ろうとしたその時、

 「!」

 舞歌は見た。

 ライカの右腕に魔術紋様が浮かび、次第に魔力を帯びていくのを。

 「駄目! ライカさん! 貴女―――!」

 舞歌が叫ぶのと同時に。

 「覇ァッ!」

 空を斬るかのごとき裂帛の気合が奔った。文字通り粉々になる残骸。

 「え!?」

 舞歌の見るその光景が瞬時に遠くなる。

 「失礼致しました、舞歌様。」

 自分を呼ぶ声に舞歌は周囲を慌てて確認する。

 黒き天使サンダルフォンが自分とライカを両手で抱えていた。その手から離れ地面に立つ舞歌。

 「ごめんなさい、危険な目に遭わせてしまったわ。」

 謝罪する舞歌。

 「大丈夫です、無事のようですし。」

 抱えたライカを見るサンダルフォン。その視線が自身の背後に移動する。

 「どうしたの?」

 「―――頼みます。」

 そう言ってやって来た白鳥にライカを託すサンダルフォン。その時、

 「何?」

 空から何か降ってきた。

 「ま、マネキンだってェ?」

 高杉が呆然と呟く。勝手に構えをとるソレ。

 「離れて下さい! コイツは!」

 驚異的な瞬発力で、マネキンは15メートルほどあったサンダルフォンとの間合いを詰めた。繰り出されるマネキンの拳を打ち払うサンダルフォン。

 「疾ィッ!」

 カウンターを仕掛けるサンダルフォンの拳をバックステップでかわすマネキン。

 互いに5メートルほど離れて向き合う二人。そこに地響きが発生した。

 「―――っ? 耳鳴りがする……?」

 サンダルフォンから生じる闘気とは別の力であった。舞歌はそう感じた。




 「計算が完了しました。」

 覇道邸地下司令室。マコトが演算を終えた。データをチアキ、ソーニャに転送する。

 「N−デモンベインの出現地点は、シティ88街区…… 何やてぇ?」

 「上空600メートルですぅ。」

 「破壊ロボのほぼ真上のようです。司令。」

 「何ですって!?」

 3人のメイドの報告に驚く瑠璃。

 「N−デモンベイン、実空間に事象固定化。……衝撃波、来ます。」

 マコトの報告と共に、オオイソシティはもう一人の役者を受け入れる事となった。人が造りし神、鬼械の神を。




 「な、何なんだ、アレは?」

 気を抜かれた様子で空を見る白鳥。思わず抱きかかえているライカを離しかけ、慌てて衛生兵を呼ぶ。しかし、それに答える者は居なかった。この場の全員が空を仰いでいた。マネキンですらサンダルフォンとの戦闘を中断してである。


 白い巨大な影が徐々に夜空を覆っていく。

 その白は巨大な魔方陣を紡ぎだす。

 その白は魔力を示す。常人にも見えるほどの力を持って。

 魔方陣が完成した。瞬間、

 魔力が何者かを喚ぶべく力を解放した。

 その波動は空間を蹂躙し、突風と稲妻を喚ぶ。

 その突風にビルの瓦礫や車は吹き上げられ宙を舞う。

 舞歌達は現状を忘れ、空を見続ける。魔方陣から生まれ出た

 破壊を纏いし、鋼鉄の巨人を。

 その圧倒的かつ理不尽な巨人は、上空からこれまた理不尽な破壊の象徴に向かう。

 『魔』を断つ為に。




 「このまま奴の先手を取る、衝撃に備えよ主。」

 「先手というか、単にアイツ目掛けて落下するというのが正しくはないか? ってうぉっ!?」

 地上より600メートル地点に顕現したN−デモンベインはそのまま自由落下を始めていた。

 「きゃあぁぁぁぁ!」

 ユキナの悲鳴に片耳を塞ぎつつ、ジュンは地上を見た。破壊ロボが緩慢な動きで回避動作を取っている。

 「避けるなぁッ!」

 片手で滅茶苦茶に操縦桿を動かすジュンの思いが通じたのか、N−デモンベインは足から破壊ロボに激突した。

 「ぬ、ぬおおおおおおおおおおおっ!」

 ドクター・ウェストの悲鳴と共に全長50メートルの鋼鉄の巨人の一撃を受け、全長80メートルの破壊ロボは後方に大きく吹き飛ばされた。ビル群を粉々にしながら転がり続ける。

 一方のN−デモンベインは、膝を突いて大地に着地した。その衝撃で周囲の道路のアスファルトや建物の窓ガラスは粉々に吹き飛ぶ。

 「……ふむ、オートバランサーが付いておるか。助かるな。」

 「何だと?」

 激突の衝撃にやられたのか、頭を振っているジュンにアル・アジフが呟く。ユキナもジュンの左肩で必死に頭を振っている。

 「こちらが操作せぬのにこやつが自分で立ち上がろうとしておるのだ。」

 彼女の言葉どおり、破壊ロボを吹き飛ばしたN−デモンベインはその場でゆっくりと立ち上がる。

 「お、おのれぇぇぇぃっ! よくも我輩の芸術作を! おとーさんにもぶたれた事は無いというにっ! エルザっ! 姿勢制御用ロケット起動であーる!」

 <イエス・ドクター>

 毒づきながらも破壊ロボを起こすドクター・ウェスト。背後に装備されたロケットエンジンが勢い良く火を噴き、破壊ロボは起き上がる。

 「この借りは10点、9点、8点、中略、10点、10点の合計97点返しにしてやるのであーる!」

 エレキギターをかき鳴らすドクター・ウェスト。

 N−デモンベイン

 破壊ロボ

 両者は改めて対峙した。

 「しかし、コイツは凄いな。」

 N−デモンベインのモニター越しに目の前の敵を改めて見るジュン。『逃げる事』だけを考えていた先程とは異なり、『戦う事』を選択した今では目の前のドラム缶としか相変わらず表現出来ないモノにナデシコ時代に何度も感じた強烈な緊張感を再び感じていた。

 (エステバリスを意に介さないほどだからな、コイツは。)

 ドクター・ウェストが乗る破壊ロボ付近には、パイロットは脱出したのであろうエステバリスの残骸が多数横たわっている。乗っているドクター・ウェストの人格はともかくとして、操るあの兵器は油断できないとジュンは考えた。

 (さて、奴はどう出るか? コイツが奴なんかよりも圧倒的に強い事を期待するしかない、か。)

 自身に生まれた緊張を解きほぐそうと前向きに考えてみるが、中々生まれた感情をねじ伏せる事は出来なかった。  

 「あの残骸は何だ?」

 「ああ、あれ? エステバリスっていう兵器だよ。」

 思案に暮れるジュンを他所に、アル・アジフがユキナに質問している。それに律儀に答えているユキナ。

 「どの位の性能を有しておるのだ?」

 「えーっと、よく知らないけど主力兵器のはずだよ? 軍の。」

 「この世界の主力を全く問題にせぬか。まあ、妾と主が駆るこのN−デモンベインならば問題はないだろうがな、ふふん。」

 得意げに話しつつも、アル・アジフの手は忙しく自分の操縦シート付近で何かの操作を続けている。

 「お前、何をやっているんだ?」    

 「うむ、中々にプロテクトが解除できんのでな。解析を行っているところだ。」

 「……何だと?」

 ジュンの疑問をさも当然かのごとく聞かれたかのごとく話すアル・アジフ。

 「虚数展開カタパルトは容易に掌握できたから問題無いと思ったのだが、どうやらこやつは起動はともかく、操作は特定の人間にしかできぬように設定されておる。人間が施したモノにしては中々だな。」

 「え、ってことは?」

 「うむ、現状では立っているのがやっとだ。ま、しばし待て。」

 「ち、ちょっとぉ! 話が違うじゃない!」

 「煩い! 作業の邪魔だ! 騒ぐでない!」

 (だからか。)

 自分付近の操縦桿を分からないなりに動かしながらジュンは内心で思う。

 (そういえば、アカツキの奴はパイロットを用意していると言ってたな。ソイツ専用なのか、この機体は。ちっ、だったら何でさっきは俺達に反応したんだ?)

 そう考えるジュンの前ではアル・アジフとユキナの口論は続いている。次第に一触即発の雰囲気を醸し出している。

 「……しかし、あいつも動かないな。」

 二人に関わるのは拙いと判断したジュンは呟く。

 「こっちの出方を待っているのか? としたら助かるけどな。」

 額に浮かんだ汗を拭うジュン。破壊ロボは沈黙を守っている。

 (あの変態科学者は今何を考えている? こちらが全く動かない今をチャンスとばかりに攻めてくると思っていたが、な。)

 そうジュンが思っている間も、破壊ロボは全く動きを見せなかった。時折、頭と思われる部分の二つの小さな(とはいっても馬鹿でかい本体に比べてであるが)二つのレンズが明滅していたが。




 一方、ドクター・ウェストはそんなジュンの考えとは別に焦っていた。あれこれコクピットのスイッチを操作しつつ、<エルザ>に命令していた。

 「え、えええええ、エ、エルザ! さ、サンダルフォンのデータ収集は中止である! し、至急あのロボットの解析に切り替えるのであーる!」

 内心を隠そうとはしたが、その声色は理性をあっけなく裏切っていた。

 (何なのであるか、あの巨大ロボは!? あの威圧感、あれでは鬼機神そのものではないか! 我ら同盟以外にこのようなロボが存在していたとでも!?)

 <『イニシャル”E”・ノ・セントウ・データ・シュウシュウ・ニ・シショウ・ガ・デマス>

 <エルザ>はドクター・ウェストの焦りとは関係なく淡々と警告を発する。

 <ゲンザイ・サイユウセン・ジコウ・デ・オコナッテ・イマス キャンセル・シマスカ? 『ハイ』・『イイエ』?>

 『ぴろりっ♪』と何故か昔流行った某大作RPGの効果音を伴って<エルザ>は尋ねる。

 「『ハイ』であーる、もしかしなくてもオラオラなのである! アレと対峙している我輩達の方がSOS・SOS カシン・カシン・カシン! 我輩達はドキドキするほど大ピンチ? かも知れないのであーる!」
 
 <リョウカイ モード キリカエ チュウ…… サーチ カイシ シマス ジバク シークエンス カイシ シマス>

 「急ぐのである! 先に仕掛けられる前にであーる! 解析すると思った時はッ! 既にその行動を済ませるのである!」

 かなり真剣な面持ちで命令するドクター・ウェスト。<エルザ>は作業を開始したようである。モニターに無数の文字が走り抜ける。   

 「…………………………うーむ。」

 ドクター・ウェストにとっては、ジュンより長く感じられたともいえる時間を経て、

 <カイセキ・カンリョウシマシタ ドクター>

 正面モニターに情報が表示された。急いでそれを見る彼。

 「ふーむ、装甲は『ヒヒイロカネ』であるか。それに内部には『水銀(アゾート)』が循環しているであるか。ってこれだけでありますか、エルザ?」

 <イエス ドクター。ナイブ・ノ・システム・オヨビ・ザイシツ・ニ・フメイ・データ・タスウ。 カイセキリツ・ハ・15パーセント>

 「ぬうっ。我輩の叡智を結集した<エルザ>をもってしてもこれだけとは! こういう時には解説役が欲しいのであるが。『そう言えば聞いたことがある』といって怪しげな解説をして下さるナイスガイが。」

 (とはいえ、この場にそんなご都合主義の方が居る訳はないである、か。)

 「分かったのであるエルザ! 弾薬を補充するである! 直ちに攻撃を再開するであーる!」

 <イエス・ドクター>

 破壊ロボの内部で消費したミサイルやガトリング弾がマガジン等に補充される。

 「さーて、先手必勝なのである! 天才科学者ッ、ドクターウェスト イズ サプライズド ジ エネミー! なのであーる!」   

 両腕のガトリング砲の照準をN−デモンベインに定め、ドクター・ウェストは間違った文法で高らかに宣言した。

 

 「撃って来たよ!」

 ユキナが叫ぶのとほぼ同時に、無数のガトリング弾がN−デモンベインを襲った。ミサイルによって機体の各部に爆発が生じる。

 「おい、まだか?」

 「……まだだ! 全く、妾をここまで手こずらせるとはな!」

 「あ、そーいえばさ。」

 「どうした、ユキナ?」

 N−デモンベインに施されたプロテクトと戦うアル・アジフとは別に、ユキナはとある事を思い出した。

 「これにネルガルが関わってるんなら、あのスケコマシさんならコレの事を知っていないかな?」

 「そうか! アカツキの祖父さんが遺したって言ってたな! おいアル・アジフ!」

 「何だ、主? 忙しいので手短に頼む。」

 「コイツに通信機は付いてないか?」

 「何?」

 「ああ、実は……」

 アカツキとの話をアル・アジフに告げるジュン。

 「なるほど、そ奴ならこのプロテクトのことを知っているかも知れん。そういうことだな主?」

 「ああ、現時点でのこっちの被害はどうだ?」

 「装甲は健在だ。あの程度の兵装でどうにかなるモノでもないようだが、このまま無抵抗なのは妾の好みではない。」

 「同感だ。で、どうだ?」

 「通信回線は先程見つけている。それにこちらの位置を発信しているビーコンもあった。」

 「その着信先にアカツキが居るかも知れないな。そこに接触する事は可能か?」

 「誰に尋ねているのだ主?」

 にやりと笑うアル・アジフ。

 「早速仕掛けるとしよう。何、魔術プロテクトをかけてはいるようだが、N−デモンベインのそれに比べれば!」

 「そう願いたいものよねー。」

 「……本っ当に汝とはどちらが上かをはっきりさせねばなるまいて。この後にな。」

 「後で幾らでもやって良いから、今は勘弁してくれ。頼む。(ミナトさんもこんな感じなのか、毎日?)」

 自分が中学校あたりの教師になった気分でこめかみを抑えるジュンであった。その一方では破壊ロボの攻撃は耐えることは無い。



 「作業急いで! サンダルフォン、そっちに瓦礫に埋まった人が居るわ、早く!」

 「了解。」

 サンダルフォンの戦いを見守るしか出来なかった舞歌達であったが、マネキンが突如自爆したため再び住民の避難作業を開始していた。ライカは衛生兵により運ばれ、既にこの場には居ない。

 「何で動かないの?」

 指揮を執る傍らで破壊ロボの為すがままになっているN−デモンベインに目を向ける。立ったまま銃弾を、ミサイルを受け続ける鋼鉄の巨人。着弾の衝撃で時折わずかに機体が前後するが、その姿に揺らぎはない。

 (まさか、瑠璃さん以外の人間が乗っているというの?)

 舞歌にもN−デモンベインの存在は知らされていた。従来の兵器では対処できない同盟の鬼機神を倒すために覇道重工が極秘裏に鍛えし魔を断つ剣。その為に覇道瑠璃以外では動かぬよう封印を施された人が作りし神。

 (アレに攻撃されている以上、同盟に乗っ取られたとは考えにくいけど)

 「舞歌様、このエリアの避難が完了しました。」

 「ご苦労様、秋山君。次は?」

 「105地区から支援要請が来ています。」

 「分かったわ、急ぎましょう。」

 部隊に命令しつつ、もう一度舞歌はN−デモンベインに目をやった。

 動くことなく立ち続ける巨人を。


 「まだ通信は出来ないのっ? マコト?」

 「向こう側で回線を切っています。チアキ、強制介入お願い。」

 「ハイハーイ、任せてーな。」

 覇道邸の地下司令室からもN−デモンベインをモニターしていた。

 「よっしゃあ! 司令、繋がりましたぁ! ……って向こうから通信して来てます! まさか、ここのプロテクトを破るなんて!」

 「こちらに回してっ!」

 チアキに言うが否や

 「不法にN−デモンベインを占拠する人に告げますっ! この機体は覇道重工の所有物です!」

 コクピット内にいるであろう者に怒鳴る瑠璃。だが

 『ふむ、汝等がこの鬼機神を管理しておるのか?』

 N−デモンベインとの通信回路の一つである水晶球に小柄な少女の姿が映る。

 『まあ良い。N−デモンベインが発信しているビーコンの着信先はここだな?』

 「! そこまで読んでるんかい!?」

 (N−デモンベインに乗ってわずかでここまで機器を使いこなせているというの? 

 相手の能力の異常さに改めて驚くチアキと瑠璃。ウィンフィールドと残りの二人は声も出ない。

 『沈黙は肯定と言った所か。ならばこちらの用件を話させて貰おう。―――N−デモンベインに施されたプロテクトを解いて貰おう。このままでは粗大ゴミに反撃も出来ん。』

 「「「「「!」」」」」

 驚愕が司令室を満たす。

 『今のところは問題ないが、これ以上の攻撃手段を奴が有している可能性は捨て切れない。その前にさっさと片をつけたい。』

 「あ、貴女は一体何者なのですっ!」

 『相手に名乗らせるなら自分が先と思うが、この際良いであろう。我が名は”アル・アジフ”。アブドゥル・アルハザードにより記された最強の魔道書だ。』

 「”アル・アジフ”ですって?」

 「あの最高と謳われた魔導書のですかっ!?」

 紛い物とはいえ(アル・アジフ視点)、鬼機神を運用しようとする瑠璃とウィンフィールドである。少女が名乗った名前の意味するところを瞬時に察した。

 「どうして魔導書が人間の姿をしているのっ?」

 『汝等の貧相な想像力では理解できぬだろうが、妾のような高位の魔導書ならば魂と肉体を持つのは当然のことよ。』

 さも当たり前の如くアル・アジフは告げる。

 『それに今の妾は主と契約しておる。ほれ。』

 『お、おい! そこで俺に振るのか!?』

 「! 後方に視点を移動しなさいっ!」

 アル・アジフの指がコクピット内の後方を指差す。それに併せるかのように瑠璃の指示も飛ぶ。

 「あの二人は一体?」

 ウィンフィールドが呟く。彼を含む司令部の総ての視線は困ったような顔をする青年とその肩に位置するマスコットサイズの少女を捕らえていた。

 「―――っ。誰なんですか貴方達はっ!」

 「あれ、アオイ君とユキナちゃんじゃないか。うーん、魔導書を探すだけって言ったのになぁ。」

 何時の間にか司令室に来ていたアカツキが瑠璃の質問に答える形となった。

 「アカツキ様、あのお二方をご存知なのですか?」

 「ああ、ボクが魔導書探索を依頼したのはあの二人だからね。アオイ・ジュンと白鳥ユキナ。二人とも―――」

 「ナデシコの元副長と白鳥九十九様の妹君ですか!」

 「ああ、そうだよ。」

 ウィンフィールドの答えを肯定するアカツキ。

 「そんな! 何でナデシコの関係者がN−デモンベインにっ!? まさか奪いに来たんじゃ……!」

 「大丈夫だよ、司令。」

 瑠璃の懸念をアカツキはあっさりと否定する。

 「アオイ君は同盟とは無関係だよ、むしろこっち側サ。某組織のね。それに結構有能だよ? ナデシコ時代には周りが異様だったからあんまり評価は高くないようだけどさ。」

 「しかしアカツキ様。アオイ様はあのテンカワ・ユリカに好意を持っていると聞きます。本当に問題は無いのですか?」

 「うーん、ウィンフィールド君。その情報は最早大昔の話だよ?」

 アカツキの答えを補足するかのように

 「人物データをネルガル提供のデータバンクにて確認しました。アオイ・ジュン…… ナデシコ元副長。ピースランドで出会ったカタオカ・チハヤと良い感じになりつつも、サツキミドリでブーステッドマン『カエン』により彼女を殺害された後は、世間との交流を断ち隠遁生活を送っている模様。」

 「白鳥ユキナ。先の戦争で木連側にて活躍した白鳥九十九の実妹。アオイ・ジュン(別項目参照)に好意を持っているようだが、当の本人は意に介してない模様。現在は兄と結婚した元ナデシコ操舵士と共に同居中。」

 マコトが淡々とデータを読み上げる。それに対し、

 「……今のネルガルはそんな事までネットで公表しているのかい? 何なんだ、その滅茶苦茶なデータは!」

 怒りを抑えきれない様子でアカツキが確認する。頷き一つで答えるマコト。

 「アカツキさんの個人的感想はこの際置きます。結局のところ彼らは信用できるのですね?」

 「あ、ああ。信用できなきゃいくらボクでもこんな大切な仕事を依頼しないよ。断言しても良いよ。」

 「とりあえずその件は分かりました。では、」

 『ふぅ、汝等があれこれ詮索する時間が確保できるほどにこのN−デモンベインは頑強なのだな?』

 瑠璃に淡々と話すアル・アジフ。戦場では、

 「司令! 破壊ロボの砲撃が止まりました! ―――って!」

 「破壊ロボの全身に新たな兵器群の発生を確認。」

 チアキとマコトの報告が新たな局面を告げた。




 <マスター ガトリングホウ・オヨビ・コガタミサイル・ノ・ダンヤク・ガ・ナクナリマシタ>

 「ぬうううううっ! 我輩の設計した都市制圧用の兵器をモノともしないとは! あのロボットはバケモノですか?」

 モニターに表示される『残弾:0』の表示を見るドクター・ウェスト。

 「だがっ! 先程からこちらに反撃しない以上、あのロボットはロールアウトしたばかりと推測するであーる! 故に脅えていやがるのであーる! エルザァッ!」

 <リョウカイ 180ミリキャノン・ダイコウケイレーザー・チョウハカイミサイル・ソノタ・モロモロ・ヲ・ヨウイ・シマス>

 「グゥッドである! ……だが超破壊ミサイルは取っておくのであーる。アレは最期の武器であるからして。」

 <リョウカイ・シマシタ・ドクター>

 <エルザ>が了承し、破壊ロボの機体から無数の兵器が生じる。

 <エネルギー・ジュウテン・オヨビ・マガジン・ヘノ・リロードチュウ>

 破壊ロボ内のジェネレーターや弾薬庫から敵に撃ち込むための力が供給される。

 「わーははのはー! 最早奴の命運は尽きたも同然! 例えるなら! 今の我輩は国士13面待ちなのであーる!」

 エレキギターをかき鳴らすドクター・ウェスト。その攻撃力は未知数である。


 『で、どうするのだ?』

 部下(メイド)の報告に呆然としている瑠璃にアル・アジフは再度促す。

 『妾等を撤退させるか? そうであれば一時的にN−デモンベインは守れるであろうが、あの粗大ゴミによってこの街は灰燼と化すであろうな。』

 「!」

 その台詞を聞く瑠璃の脳裏に祖父との会話の断片が蘇る。N−デモンベインを初めて祖父から紹介された日のことを。




 「瑠璃、これがN−デモンベインだ。アカツキ氏と私が鍛え上げた同盟を断つ剣だ。」

 「
―――これが、ですか?」

 「そうだ、これを以ってして誅を下さねばならん。世界を暴虐に巻き込む『悪』を……!」




 祖父と自分の込められた想いを反芻する。

 (ならば。不本意ですが、今日、この場だけ……!)

 瑠璃は決意する。

 個人の中では思うところが多々あるが、

 『覇道』は覇道を往く。

 その為に力なき人々を巻き込むわけにはいかない。

 その有する力を持って戦うが覇道の矜持。

 その為ならば……!




 「………………分かりました、アル・アジフを名乗る少女。この場は貴女方に託します。」

 「司令!」

 ウィンフィールドを片手で制し、瑠璃の口は命を下す。

 「マコト、司令権限によってプロテクトを解除。キーワードを彼女達に送信しなさい。」

 「了解。」

 その命を受けてマコトの両腕がコンソール上で動く。

 「お嬢様、いえ司令。良くぞご決断されました。」

 「いいえ、ウィンフィールド。あの方達に一時的にN−デモンベインの一部を委ねただけです。」

 そう言って平静を保つ瑠璃であったが、

 「『断鎖術式』のコントロールは渡さないように、マコト。」

 「了解。」

 「それとチアキ。」

 「分かっております。そーゆーことでしたら『第一近接昇華呪法』もですね? 尤も、作動させるためのもう一つのキーが発見できてない現状では問題無いとは思うんですが、あの魔導書ちゃんにはそれが通用せんかもしれないよって。」

 「結構。これ以上の被害を出さないためにも頼みます。」

 「了解。」

 「アカツキ様、これで宜しいですか?」

 「ん? あぁ、問題ないと思うよ。どちらもまだ実戦で使えるシロモノじゃないし。」

 (まァ、本当は自分が出たかったんだろうねェ。でも大丈夫と思うよ? アオイ君がこのまま乗り続けるとは思わないし。瑠璃クンの『努力』はボクが知るところだしね。)

 冷静さを取り戻し、内心で呟くアカツキ。何時の間にか炒れたコーヒーを啜りながら、

 「住民の避難状況はどうなっています?」

 他の部署へ確認を始めた瑠璃を眺めていた。




 「……これを俺達が唱える必要があるだと?」

 マコトから送られたメールを見てジュンは呆然と呟いた。モニターには3行の文章と若干の補足が書かれているだけである。

 「うん、良いじゃない! なーんか熱血ッ! って感じでさ。」

 「俺にその属性は無い。クソ、ヤマダの奴の方が合ってるじゃないか。」

 「必要な儀式であるならば問題なかろう?」

 「そーゆー問題じゃない!」

 「でも、急がないと拙いよジュン君?」

 「!」

 ユキナの警告を聞いて破壊ロボを改めて見るジュン。

 「……しょうがないか。本当にやむを得ないか。」

 大小様々の火器を見てではあるが。

 「覚悟を決めたか主。」

 「どうも自分の意思以外で物事が決まっている気がするがな、ここ最近は?」

 「運命だ。」

 「そこで流すか、お前は。」

 「もう、往生際が悪いなぁ。」

 「ふう、とりあえずお前とはもう二度と逢うことは無いなユキナ。今更だが。」

 「ぶう、絶対にミナトさんにあれこれ言ってやるぅ。」

 「そう言っている間に、拙い状況になっているようだが?」

 「「!!」」

 「充填完了! 喰らえっ! ジェノサイド・フルオープン・アタァァァックッ!」

 何故かコクピット内で半分に割れたピエロの仮面を持ってこなかった事を内心で後悔しながら、ドクター・ウェストは<エルザ>に命令した。

 レーザー

 キャノン砲

 ミサイル(中型)

 ありとあらゆる破壊の象徴がN−デモンベインに牙を向ける。

 「主!」

 「しょうがない、やるぞアル・アジフ!」

 「応!」

 「よーし!」

 ジュン、アル・アジフ、ユキナの3人は覇道側の指示によって言霊(パスワード)を口にする。


 「憎悪の空より来たりて」

 「正しき怒りを胸に」

 「我らは魔を断つ剣を執る」

 「「「汝、無垢なる刃―――N−デモンベイン!」」」


 その瞬間、コクピット内の魔方陣が淡く輝きだす。その輝きはジュンを包む閃光(ひかり)となった。

 (この感覚…… 俺とコイツが一つになる?)

 閃光の中でジュンはそんな感覚を味わっていた。同時に脳裏に浮かぶ文字。

 ”I’m innocent rage.”

 ”I’m innocent hatred.”

 ”I’m innocent sword.”

 ”I’m N−DEMONBANE.”

 (分かったよ、お前がユキナ達を守るための剣なら今だけは執ってやる。あんな想いは俺だけで沢山だ……! ならば!)

 「ふん、こうなればトコトンまでやってやるッ! 往くぞ! N−デモンベインッ!」


 魔術師

 魔導書

 鬼機神

 三位一体となった一切の邪悪と魔を断つために鍛えられし刃金(はがね)は遂に覚醒(めざめ)を迎えた。それを防ぐべく様々な兵器が襲い掛かるが、


 「は、はぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?」

 <ユウコウ・ダメージ イッサイ・カクニン・デキズ>


 「装甲に若干の被害が出た模様。」

 「そ、それだけかいな……」

 「ふぇー、やっぱりすごいですぅ。」

 「……凄いねェ。キミとボクの祖父さんが遺したシロモノは。」

 「―――。」


 全く屈することなくN−デモンベインはその場に立つ。


 「えええええエルザ! 超破壊ミサイルを喰らわすのでああああーる!」

 <イエス ドクター>

 破壊ロボの頭頂から巨大なミサイルが現れ始める。

 「あー! ジュン君! おっきなミサイルを出そうとしているよ!」

 「くっアル・アジフ! 何か武器は!?」

 「遠距離武装検索!……これだけだな、今は。」

 「バルカン砲? 頭部に付いてるだと?」

 「で、でもここで爆発させたら拙いよジュン君!」

 「ちっ、どうすれば良い!?」

 ジュン達が悩む間に、

 「行くのである! 我輩の勝利と夢と希望を乗せ! スーパー破壊ミサイルッ! ファイナル☆アタックである!」

 全長20メートルを誇るドクター・ウェストの最終兵器がN−デモンベイン目掛け発進する。

 「くっ、こっちがどうするか決める前に!」

 「案ずるな主、先程と同じだ。」

 「!?」

 「あ、そーか! ホラさっきミサイルを掴んだじゃない、その要領だよジュン君!」

 「……なるほどな。」

 アル・アジフとユキナのアドバイスに口元に一瞬笑みを浮かべるジュン。

 (やってやるさ、さっきも出来た。それに今はコイツがあれば……)

 両腕に意識を集めるジュン。N−デモンベインの両腕に魔力が集まってゆく。迫り来る大型ミサイルに対し、

 「やってやるッ!」

 N−デモンベインは両腕を前に出した。そこにミサイルの巨大な衝撃が襲い掛かる。

 「良し、魔力配分は上出来だ主!」

 「このまま上にやっちゃえー!」

 「―――!」

 コクピット内のジュンの動きに併せN−デモンベインは受け止めていたミサイルの方向を上に逃がした。上空へ飛翔するミサイル。

 「え?」

 「あの高度なら街に被害は出ないぞ主!」

 「いっけぇー!」

 「良し!」

 N−デモンベインの頭部に装備されたニ連装大型バルカンが咆哮する。結果、ミサイルは地上遥か上空で大爆発を起こした。

 「えええええええっ? またか、またしても我輩は失敗したのであるか? エルザ! 反撃である!」

 しかし、破壊ロボのコクピット内のモニターには『無理』、『撤退推奨』、『よくできませんでした』、『もっとがんばりましょう』等といった某ナデシコAIの如き文字の洪水状態である。

 「ぬおおおおっ! フ、我輩の信頼するエルザがそこまで言うのであれば!」

 緩慢な動作でN−デモンベインから距離を取り始めるドクター・ウェストと破壊ロボ。

 「今日はこの位で勘弁してやるのである! グッバイ! アディオス! さよーならーであーる!」

 短い2本足に装備されたローラーで逃走を開始する破壊ロボ。だが巨体の所為かその速度は遅い。

 「逃がすか!」

 ジュンはN−デモンベインに追跡させる。

 (そういえば、何で俺はコイツを自在に使えるんだ?)

 先程から難なく操作している自分に一瞬疑問を彼は感じたが、

 「追いつくぞ! 一発お見舞いしてやるが良い、主。」

 「そうだよ! 街をさんざんな目に遭わせてくれたんだから!」

 「ああ! とりあえず……!」

 右手を振り上げるN−デモンベイン。先程以上の魔力がそこに集中する。

 「拙いのである! エルザ、防ぐので……!」

 「コイツを受けて反省しろっ!」

 破壊ロボのガードより疾く、刃金の一撃が破壊ロボの胴体に深く突き刺さった。

 「魔力開放!」

 アル・アジフの言葉と共に右腕の魔力は解き放たれ、破壊ロボの内部を蹂躙する。各部で小規模な爆発が生じる。

 「おぉぉおのーれー! そこの巨大ロボ! このハイパー天才科学者! ドクター・ウェストは次こそ必ず勝つのである! 覚えておれぇぇいであーる!」

 破壊ロボの顔? 部分の小さなブロックが離脱した。プロペラが飛び出しそのまま回転、逃げていった。同時に破壊ロボも動きが完全に止まる。

 夜明けが戦いの終わりを告げるようであった。








 「ふう。」

 N−デモンベインのコクピットハッチを開け、ジュンは外に出た。既に『マギウス』とアル・アジフに呼ばれたスタイルではない。シャツのポケットからくしゃくしゃになった煙草を一本取り出し、火をつける。

 「…………」

 深く煙草を吸い、一息つくと次第に先程まで戦っていたという感覚が薄れていく。その背後でアル・アジフとユキナが話している。

 「さっきのパンチは凄かったねぇ。中の機械まで破壊したんだ?」

 「うむ、N−デモンベインの右手には魔力を精製し、相手にぶつける機能があったのでな。咄嗟に使っただけだ。まだ未知数だが、これを含めこやつは非常に興味深い。妾は気に入った。」

 「……ってちょっと待ってよ?」

 「どうした小娘?」

 「よく分からない状況で使ったの? その装置を?」

 「うむ。暴走する事は無いと妾の勘は告げていたし、敵を撃退できたのだ。何ら問題は無い、そうであろう?」

 「もう! 勘だけでジュン君を危険な目に遭わせないでよ! この三流パルプ娘!」

 「ふむ、思い出せば汝とは決着をつける予定だったな……!」

 「こっちこそ! 木連式柔を舐めないことね!」

 「ふん! 人間如きの浅知恵が妾に通用すると思うな!」

 コクピット内で始まった喧嘩に無視をしつつ、ジュンは一人で煙草を吸い続けた。短くなったフィルターを投げ捨てる。

 「ま、とりあえず俺の仕事は終わりだ。本当の持ち主と巧くやってくれ。」

 心の片隅にわずかに沈んでいる感情を無視し、ジュンはN−デモンベインの顔を見ながら呟いた。地上を見れば、周囲に次第にパトカー等の車両が集まってくるのが見えた。

 それを無言で眺めるジュン。朝日がほぼ完全に昇ろうとしていた。








 「ふーん、あれが覇道重工のロボットかぁ。」

 オオイソシティの北東部山中、テンカワ・ユリカは一連の一部始終を眺めていた。

 「でも、あの位だったら大した事は無いかなぁ。」

 値踏みするかのごとくN−デモンベインを見るユリカ。

 「ま、いいか。どーせメグミちゃんとルリちゃんが全部調べるだろうしね。……でも今回は全然『収穫』が無かったなぁ。」

 それだけ呟いて、ユリカの姿はその場から足を向け、自分を待つ『ひなぎく型』小型艇の元へ立ち去った。








 「うーん、余計な制約を付けたじゃないか覇道も。まぁ、ある程度縛りがあった方が面白い、かな?」

 ユリカを更に後方から眺める人影、ジュンとユキナが見れば彼らに『ナイア』と名乗った女性がワイングラスを片手に佇んでいた。グラスに艶かしく口をつけ、ワインを飲む。

 「とりあえず、最初としてはまずまずかな? もっとソレを使いこなしてくれよ? そうでないと楽しくないからね? ……ボクのデモンベインを、ね。あははははは!」

 楽しそうに、愉しそうに笑いながらナイアの姿は自身の陰の中に消えた。




 (第二話へ続きます)


















<後書き@やはり長いです>
 
 どうも、ナイツです。今回もお読み頂き有難うございます。そーいえば、先日敬愛する我がWRENCH師匠にデモンベインをお勧めしたら、こンなレスを頂きました。

>…ためしにHP行ってちょっとキャラを確認して来ました。
>なるほど、いじりようによってはいじりがいのあるキャラかもしれませぬ。
>特にライカさんって人(笑)

 流石我が師匠ッ! アレだけで既に見切るとはッ(殴打)! 師匠にデモベをお渡ししたらどンな事になるのか……! 資金に余裕があれば、また物々交換に踏み切りたい所ですが(汗)。

 それは一応置いておいて、やっと1話の完結です。。全15話と仮定するとめっさ時間がかかりそうですが(はふぅ)、とりあえず頑張りたいかと思っております。
 
 ンで、マイ☆コンセプト(仮)は『N−デモンベイン、大地に立つ』でした(汗)。ビームサーベルが無いので、バルカンと拳のみでしたが(爆)。まあ、かつてはスイッチ一つ&拳のみで最初の戦闘を潜り抜けた某機動戦士も居るって事でw。感想以外板のNo.24078を見て下さいませ。……ドクター・ウェストの台詞でまんまでしたね(撲殺)。勿論、これ以外にもデモンベインには各種兵装? やスーパーコンボ(違)は存在しますが、それはおいおい追加されていく事になります。なるべくその過程も書いていきたいところです。……ドクターの台詞に関してはベタ過ぎる(とコメントして良いかどうかの出来ですが)ネタだらけなのはご容赦下さい(土下座)。

 で、前回の代理人氏に頂いた感想どーり? 姫さんこと『覇道 瑠璃』は登場しました。元ネタではヒロインの一角でありますし、酔っ払いシーンを含めて見せ場を作ってあげたいですね。……鋼屋師のHPを拝見してマジで○○○バージョンにしようかと思ったのは秘密って事で(殴打)。

>「アオイジュン・人間失格劇場」も入れて欲しいところではありますが。

 1−1で引き篭りとゆー設定? を入れたンで、なンとかご要望に応えたいところっす(汗)。数少ないここのジュンを壊すチャンスかもですがw。

>サンダルフォン

 ……結局、捻りのないままの登場になります@中の人(汗)。彼には元ネタとは違った形で活躍して欲しいかと思っております。その分、北斗には別の形で登場して欲しいですが(他人事@タロス(クラッシャージョウ)のよーに)。

 と、いう訳で? 続きます。……今更ながらに連載モノを投稿されていらっしゃる他の作家氏には頭が下がる思いですが、負けずに頑張りたいかとw。作品を書くきっかけとなったYOH氏、管理人氏、BA−2氏、影人氏、そして感想を下さった方々といっつも長電話に付き合ってくださるかのしぐま氏とナイス☆アイディーアを下さるノバ氏に感謝を捧げつつ失礼致します。




 

代理人の感想

いやー、ちゃんと続きを書くだけでも大したもんです。

私なんぞは・・・・・まぁそれはさておき。

 

よーやく終わった第一話、まずは原作どおりアルアジフを見つけて魔を断つ剣に乗り込んだわけですが、

経緯は随分原作と違いますねー。

こう言う「原作にある程度沿いながら違う展開」はかなり考えるのが辛いでしょうが、頑張ってください。

同じ苦労をしている人間がここにいますから(笑)。

 

追伸

「アオイジュン・人間失格劇場」楽しみにしています(笑)。

女装ネタも是非(爆死)。