Actionクリスマス記念


リョーコのクリスマス
















この作品を



リョーコ局長閣下と



大蒲鉾ことBenさま



及び鋼の城さま



そして



すべてのリョーコファンの人々に捧ぐ・・・











この作品は

機動戦艦ナデシコ

地球に優しい企業・ネルガルと

Action

リョーコ応援組合

の提供でお届けします。














「全くついてねえよなぁ・・・」

俺は読み差しの本を床に放り出してベッドに倒れ込んだ。
本の題名はクリスマス・キャロル。
中学か高校の頃に英語の宿題で出された気がするが、まじめに読むのはこれが初めてだぜ。

・・・とは言ってもただただ目が文字を追っているだけで、頭の中に話の内容なんて全く入ってこないが。
3分の1くらい読んだが、どんな話なのか全く覚えていないしよ。



今日はクリスマスイヴって日だ。
恋人達は甘い一日を過ごし、家族連れのものは幸せを噛みしめる一日。






・・・のはずだが、俺は現在ナデシコ内の自室で転がっているだけだ。
ヒカルもイズミもいねえ。
二人とも休暇をいいことに町に繰り出している。
特にヒカルはヤマ「ダイゴウジ・ガイだぁっ」の家にクリスマスパーティーに行く、とか言っていたっけ・・・



ケッ、アイツらラブラブじゃねぇかよ。勝手にイチャついてろッてんだ。





俺は日本人だ!!
さっさと風呂入って寝てやるぜ、コンチクショ〜〜!!






・・・寂しいぜ・・・



だめだな・・・。
どうも考え方が辛気くさい方向に向かってるし、悪い方向に思考が向けられちまう。
それもこれも・・・アイツのせいだ。



いや、違うな。
信じたくはないけどよ、今回ばかりは運が悪かった、縁がなかった、ッてことか?
俺は枕を抱きかかえてうつ伏せになると、『その日』のことを思い出した・・・





1ヶ月ほど前



「「「「「「クリスマス休暇?」」」」」」


同盟の会議室で俺を含めたほぼ全員が素っ頓狂な声をあげた。
エリナの発言に俺たちは呆気にとられた一瞬の後に、歓喜の声を上げた。

「やった〜!!これでアキトとらぶらぶな一日が過ごせる〜(はぁと)」

これは艦長。

「これを契機として、アキトさんとの仲を進展させないと・・・綿密に体を奪う計画を・・・」

これはルリ。

「アキトさんとクリスマス♪昼間はウィンドウショッピングとかを楽しんで、夜はベイブリッジを一望できる高級ホテルに・・・ディナーの時に『メグミちゃん・・・君の瞳に・・乾杯』なんて・・・キャァ〜〜〜〜!!!」

メグミは妄想の彼方だな・・・。

「アキトと一緒にマラソン・・・さくらがいいかお邪魔女にしよ〜かな〜♪それともやっぱりGガンダムかな〜?」

ラピスの言。お邪魔女?さくら?マラソンとなんの関係があるんだ?

「クリスマスケーキはやっぱり私の手作りケーキよね(はぁと)ちょっと腕をふるって七面鳥なんか焼いたり・・・」

サラも早速クリスマスに思いを馳せている。

「姉さん・・・今度こそ決着をつけましょう・・・どちらがアキトさんに相応しいかを!」

アリサは姉のサラに対して対抗心を燃やしてるし。

「これは・・何とか休暇を手に入れないと・・・整備の日に重なったらまずいわ」

レイナもその日の休暇を満喫できるように日程の調整をはかっている。

「「「「「アキトさんと一緒にクリスマス〜♪」」」」」

ホウメイガールズも大はしゃぎしている。
かくいう俺だって、

「やっり〜!そ、その日は俺もドレスなんか着てよ・・・ホテルのパーティー会場なんかでテンカワと・・・」

ってな風に浮かれまくっていた。

「でもここで問題が生じるのよ」

その雰囲気に水を差したのはやはりイネス先生だった。

「イネス先生〜、どうしてですか〜?」

脳天気な声で、艦長が質問する。あれ?まだトリップしてるもんだとばっかり思っていたが・・・まあ、トリップしているのが何人かいるけどよ。

「それはこういう「それでは説明しましょう!!」


エリナの言葉を遮ってイネス先生が説明しだした。
とても得意気に説明し出すが、いつの間にやらホワイトボードを背後に従えているぜ。相変わらず恐ろしいぜ・・・。

「既に休暇に関しては全員分が提出してあるから問題ないのよ。併せてヨコスカドックでの検査調整の日程と合わせたから、ここまでは問題なしよ」

おい、明らかに『チッ』て顔をしてたな?周りを見回してもそんな顔をした奴らばっかりだぜ・・・。
全員考えることは同じ、ってのか。・・そういう俺も半年も前から休暇申請してるけどよ。

「ところがここで問題が生じてくるわ。まず一つ、某組織の妨害工作を防ぐことよ」

エリナが紡ぎ出した言葉は別に大したものではなかった。今までに何度も奴らの妨害工作はあったけど、そのほぼすべてを撃退しているからだ。

「それは問題ありません」

ん?ルリが挙手して発言をしたがってるな?妨害工作が問題ないって言うのは既に何らかの策を講じているのかよ?

「どういう事かしら、『妖精』?」

議長兼司会役が完璧に板に付いているイネス先生が逆にルリに質問する形になった。

「クリスマスとヨコスカドック入りの日程が重なっていると気づき、みなさんの休暇申請がこれだけ重なっているとわかった時点で某組織への対策は練ってあります。そして、先日対策は完了しました」

会議場が小さくざわめくが、それを制してエリナがルリに問いただす。

「それはどういう事?内容によっては、あなたの休暇が取り消されることも・・・」

全部を言い終わる前にルリが答える。

「大丈夫です。法に触れるようなへまはしてませんから。ただ、オリエさんと、キョウカちゃんにクリスマスパーティーをしてもらうように頼んだだけ、ですから」


なかなかドぎついことをやるじゃねえか。
クリスマスパーティーをしてもらうように頼むって事はイコール、ウリバタケとハーリーが戦線離脱って事だからな。一挙に奴らの戦力減だぜ。よくやったぜ、ルリ!

「なかなか鮮やかな作戦ね『妖精』。この2名の不参加で組織内は相当に動揺するわ。久しぶりの休暇と相重なって、おそらく家族とのクリスマスというのを望む者が多くいるはずよ」

「そうですね。家族を持っている構成者に対しても、その作戦を行っておきます」

イネス先生の的確な判断の元、ルリは作戦のさらなる徹底化を図るみてえだな。

「私も会長に何らかの手を打っていたわ」

エリナもロン毛に対しての策を前々から練っていたようだ。

さて、これで某組織の抵抗はないに等しいものとすることができるわ」
ああ、その通りだ。これで敵勢力がいなくなったのだか・・ら・・・?

いや!!違う!!!
ここからが本当の敵との勝負だった!!!
俺としたことが全く迂闊だぜ!!

周りの奴らもクリスマス休暇と組織の排除の知らせに浮かれていたみたいだが、ここからが本当の勝負だって事に気づきやがった。
イネス、エリナ、ルリのほうを見ると明らかに『コイツラ気づきやがったよ、チッ』ってな顔をしていやがる。

だが、そうそうオメエらの好き勝手になるもんかよ!

「はぁ・・・気づかれたら仕方ないわね・・・そうここからが問題よ。誰がアキト君とクリスマスを過ごすか?この一点に尽きるわ!!」

流れるような手つきでホワイトボードに文字を書き、バシンとボードを叩くイネス。



そこから延々と議論が始まった。
乱闘直前にまでもつれ込む時もあったが、何とか12人が4時間ずつの持ち時間という配分となった。
24、25日の両日の48時間制限一本勝負!12人という事は3人がハズレということになる。
そしてそのハズレと時間帯の配分は、無難にくじ引きということになった。

「くじ引きなら恨みっこ無しですもんね」

とは艦長の言。12人という数は決して悪い割合じゃないからな。

「それでは、いきます!!!」

各自の手がくじに伸びた・・・






そして




俺は外れた・・・




時間帯を外すどころの話じゃなくって、運の悪い3人になってしまった。
つまりは居残り組だ・・・。これで自動的に外出許可も下りなくなっちまう。艦内で居残り休暇ってやつだ。
居残り組は俺以外に、レイナとラピスだ・・・。
他の奴ら、特に艦長とメグミは24かと25日のディナータイムを引き当てて、大はしゃぎだが俺たちは沈み込む以外になかった・・・。





「ちくしょ〜〜〜〜っ!!!テンカワのバカやろーっ!!」

俺は大声で叫ぶと、体を起こす反動とベッドのスプリングを利用して飛び上がり、そのまま床に着地した。
時計を見ると、午後1時を指している。
昼飯の時間だけど、ここしばらくはナデシコ食堂はやっていねえ。
なんてつっても、殆どのクルーはクリスマス休暇のためにナデシコを降りているからだな。まあ、これはルリの事前工作のせいだけどよ。

俺は廊下に出て、すっかり人のいない艦内を歩き回った。
自販機で昼飯を買わなきゃいけねえからな。ぼけっとしていても腹は減る。腹が立ったらなおさらに腹が減るしよ、俺の体質では。
でも、いつもならテンカワの料理を頼んでるのに、こんな時に自販機のさびしい昼飯ってのがなおさらに俺のイライラを募らせてくる。

コツコツコツと、俺の歩く靴音だけが響き渡って、それが俺のイラついた心にますます拍車をかけてくれる。
あ〜!全く何だってんだ!!何で俺はこんなにイライラしなくちゃいけねえんだよっ!!



ムシャクシャした心をどうにか抑えようと思ってシミュレータをやってみたが、すぐに撃破されちまってよけいに苛立ちが増えただけ。
くそったれめ!



シミュレータルームを出て歩いていると、ホウメイさんにあった。

「おや?リョーコちゃんかい。どうしたんだい?そんなにイライラしてさ?」

「ああ、やっぱりわかるか?どうにもこうにもな・・・」

正直にテンカワと一緒に過ごせないからなんて、言える訳ねえよな。
だけど、ホウメイさんは俺の心を見透かしているかのように笑って話しかけてきた。

「まあ、意中の男と一緒に過ごせないイライラはわかるけどさ」

やべ!?見透かされてるのかよ?何でだ?
別に俺は顔にも出してないし、態度もどちらかって言ったらテンカワに対してはつっけんどんだし、どこにそんな風に出てるんだ?(著者注:みなさんもご承知のようにそう思っているのは本人だけです。周りの人々にはバレバレです)

「そ、そ、そんなことねえよ!ただな、なんつうか手持ち無沙汰でよ・・・そう、それでイライラしてるんじゃねえかな、ははは・・・」

ちょ、ちょっと声がうわついてるか?笑い声も不自然か・・・?

「まいいさ。そうそう、今暇かい?」

ホウメイさんは、何かいいことを思いついたように俺の方を向いてウィンクをした。

「え?ああ、まあ暇だけどよ・・・」

「そうかい、それは良かった!ちょっと手伝って欲しいことがあるんだけどさ、いいかい?」

笑顔を浮かべながらそういうと、ホウメイさんは俺の手を引っ張っていく。

「ううわ、ちょちょちょっと!ホウメイさんよぉ!」

俺のささやかな抗議の声を無視してホウメイさんは俺をどんどん引っ張っていく。

「いいからいいから♪黙ってついといで♪」





「ここは・・・ナデシコ食堂?」

ホウメイさんに連れられてきたところはナデシコ食堂だった。

「そうさ!ナデシコで働く全員の胃袋を抱える、うちらの自慢の食堂だよ!
・・・まあそう言いたいとこだけど、ここ暫くはみ〜んな休暇で休業だよ」

そう言いつつホウメイさんは食堂の電気をつけて中に入っていく。
俺が入り口で二の足を踏んでいると、厨房の電気をつけてボウルや泡立て器といった器具を出しながらこっちに向かって叫んだ。

「何してんだい、リョーコちゃん。早く入ってきて料理を手伝っておくれよ」

勝手に連れてきといて料理を手伝え、ってのはちょっと納得いかねえよな?

「ほら、これ着な」

そういってナデシコ食堂お馴染みのエプロンを投げてよこす。

「『今年の』クリスマスの料理はあたしが作るけど、『来年の』クリスマスにはお前さんが作るんだよ?」

その言葉で俺はようやく気がついた。
ホウメイさんは俺に料理を教えてくれるのか、ということに。

「ま、まあ手伝ってやらねえこともねえな・・・」

俺はエプロンを手早くつけると、厨房の中に入った。
多分、俺の顔は照れて赤くなってるんだろうな。
ホウメイさんが微笑みを浮かべながら、俺の方を見ている。それでもてきぱきと下準備をやっている姿は流石だぜ。
ホウメイさんの顔をじかに見れないので、俺は料理の手伝いに取りかかった。

「で、俺は何をすりゃいいんだ?」

恥ずかしい話だが、俺はこの年まで料理の「り」の字も知らない。
テンカワに作った謎の物体とオニギリくらいなもんだ。
そんな俺に料理なんて出来るのかよ?
自問自答しながらも凹んでくるぜ・・・。

「いきなり本格的な料理なんてするから、へんてこなのが出来るんだよ、メグちゃんみたいにね。ま、チキンとシチューとケーキって位かね、簡単に」

か、簡単なのかよ?
俺にとっては遙かに遠い道のりのような気がするぜ?

「なに辛気くさい顔してるんだよ!自分がおいしいって思う料理は誰にでもおいしいものだよ。それにはほんのちょっとの技術と相手を思う心が大事なだけさ」

ホウメイさんに勇気づけられると、本当にそんな気がしてくるぜ!
よっしゃ〜!!やるぜぇ!!!








数時間後

何とか出来上がった料理は俺が作ったものだなんて信じられなかった。
中の具の形はいびつだけど、いいにおいが漂ってくるシチュー。
こんがりと皮が焦げて(ところどころ黒いけどよ・・・)いい感じのチキン。
これまた変な形だけど、なんとかケーキらしく見えなくもないケーキ。



殆どホウメイさんの言う通りに作ったんだけどよ・・・。
それでも、この俺がこれらを作ったなんて未だに信じられないぜ・・・。

「うんうん、上出来じゃないか?」

目をパチパチとさせている俺に向かって、折り畳んだメモを差し出してきた。

「これは今日の料理のレシピ。レストランで出すような専門なのじゃなくて、まあ家庭料理としての大まかなものだけどね」

レシピがあるならどうして今日みたいな事を?
俺は多分そんな顔をしていたんだろう。

「あたしはね、料理ってのはね一応理屈はあるけどやっぱり経験とカンってのが大事だと思うんだよ。やっぱり料理も数をこなさなくちゃ上手くなれない。そのレシピは今日の経験を思い出すための道具だと思ってほしいね」

俺はそのレシピを受け取ると、早速開いてみた。
確かに今日作った料理のレシピだ。
少ない行の中から、今日の調理課程が思い出された。

「あ、ありがとよ、ホウメイさん」

「こっちこそ『手伝ってもらって』助かったよ」

ホウメイさんはウィンクすると、はははと笑った。
照れでホウメイさんの顔なんてまともに見れなかったけど、俺もつられて思わず笑いがこみ上げた。

「じゃ、二人でクリスマスを祝うとするかい?」

時計を見ると5時。
ホウメイさんは棚をごそごそと漁って、ワインを取り出した。

「結構良いワインだよ。プロスさんに頼んで仕入れてもらった奴だからね」

ホウメイさんは鉛の封をナイフで切り、手慣れた手つきでコルク栓を抜く。
キュポン!といい音がしてワイン特有の芳醇な香りが流れた。
とっとっとっ、と二つのグラスにワインを注ぐ。宝石のような色をした美味そうなワインだ。
俺とホウメイさんはグラスを手に取る。

「かんぱ、って何に乾杯にするんだ?」

ホウメイさんはちょっと考えた顔をしたがすぐにいたずらっぽい笑みを浮かべて
破顔した。

「『リョーコちゃんの来年のクリスマスに』ってのはダメかい?」

俺は苦笑しながらも了承する。

「それじゃあよ・・・」

「「乾杯」」

グラスを手に持って軽くぶつけ合う。
ワイングラスの、チン、という心地よい響きが流れ、俺は一息にワインを干した。

「おや、いい飲みっぷりだねぇ」

そういってホウメイさんはワインを注いでくれる。
正直に言って美味いワインだ。流石にプロスペクター仕入れと言うべきか。

「それじゃあ、俺の料理でも食うとするか」

見た目やニオイはそれなりだったが、味はどうなのか正直自信がない。

「心配しなくていいと思うけどね。あたしが見てた感じじゃ、リョーコちゃんは作り方を知らないってだけだったんだと思ってね」

心配は無用だった。
一口目を食べてみて自分で本当に作ったのか?というのが信じられないくらいだった。



・・・美味い。

「信じられねえ・・・」

初めてテンカワの機動戦を見たときのような感覚。
でも恐怖や畏怖ではなく、自分に対する感動というか充実感というか・・・
そりゃあ、テンカワやホウメイさんなんかには及びもしないが、家庭料理の域には達していると思った。




突然部屋の一角が輝いて人の形をかたどっていく。
ボソンジャンプ?
まさか・・・敵か?
一瞬そう思ったが、次第にはっきりとしてきたその人物はテンカワだった。



「「テンカワ!?」」



俺とホウメイさんは突如として現れたテンカワに対し、素っ頓狂な声を上げた。

「こ、ここはナデシコ食堂か・・・?何とか切り抜けたな・・・」

何かに追われているみたいだが・・・?
そうか!今は艦長の持ち時間だったな・・・
もしかして手料理を出されたところをボソンジャンプで逃げてきたのか?

「あんな物体食えるかよ・・・そりゃ、アイツが料理へたなのは知っていたし、それを承知で前は一緒になったんだけど・・・ぶつぶつぶつ・・・

愚痴を言いはじめる。
テンカワは全く俺たちに気づいていないみてえだ。

「テンカワ」

「それに明日の夜はメグミちゃんだって聞いた気が・・・」

「て〜ん〜か〜わ〜!?」

「あはははは・・・俺には休暇無しなのかよ・・・」

全くこっちの呼びかけにも応じない。それくらいトリップしているみたいだな。



「テ〜ン〜〜カ〜〜〜ワ〜〜〜〜っっ!!!」



俺は精一杯の声量で叫ぶのと一緒に平手打ちを食らわした。

バチぃ

「あ、あれ?ホウメイさんにリョーコちゃん?何してんの」

叩かれてようやく気づいたみたいだ。
全く、「漆黒の戦神」と怖れられる人物と同一とはとても思えねえぜ。

「テンカワ、これ食って行きな。腹減ってるんだろ」

ホウメイさんはそういってテンカワを落ち着かせた。
でも、俺の料理・・・だぞ?

「そ、そうですね・・・それじゃあ頂きますね」

テンカワはそういって、まずシチューに手をつけた。

心臓がドキドキいっている。
テンカワの一挙一動で、俺の血圧はどんどん上昇していく。

「うん、悪くはないですね・・・でもホウメイさんの味じゃない・・・まさか?」

テンカワは、はっと気がついて俺の方を向いた。信じられない、といった顔をしている。
いい度胸してるよな、こいつは・・・

「ご名答!今日の料理は全部リョーコちゃんが作ったもんだよ。なかなかの出来だろ?」

テンカワは信じられないという顔つきをしているが、手と口はせわしなく動いて俺の作ったシチューを食べている。
テンカワがこんなに俺の料理を食べてくれているのを見ると、顔に火がついたように火照ってくる。恥ずかしさで顔から火が出そうだぜ。
俺はテンカワの顔なんてまともに見れるはずもなく、ちらりちらりと横目でテンカワの様子をうかがっていた。


そのうちテンカワは料理を一通り食し終わった。

「でででで、でよ、どうだった俺の料理はよ?」

妙な緊張で思ったように言葉が出てこない。
テンカワはこっちを向くと、そのまぶしい笑顔を浮かべながらいった。

「うん、おいしかったよ。野菜とかの形はいびつだし、チキンもところどころ焦げてたけど味には全然問題なかったよ」

自分の顔が自然にほころんで、いや、ニヘラ〜という顔になってしまっていくのがわかった。
テンカワに続けて話しかけようとした瞬間。
またも食堂にボソンジャンプの光が現れる。

「きききき来たぁぁ〜〜〜!!俺は逃げる!!!

そういって瞬時にボソンジャンプフィールドを展開して、再びどこかにジャンプした。
代わりに現れたのはやはり艦長だった。

「アキト〜〜〜!私のお料理食べてよ〜〜!って、あれ?いない」

アキトがいないのと俺とホウメイさんを確認すると、こっちに歩いてきた。

「艦長、どうしたんだ?」

俺は白々しく聞いてみる。

「リョーコちゃん、ホウメイさん?今ここにアキトいましたよね?」

「さ、さぁ・・・」

おいおい、ホウメイさん。目がちょっと泳いでいるぜ・・・
確かに艦長の手に持った鍋からは、紫色の煙が立っているし、謎の触手がはみ出しているけどよ・・・

「いましたよね、うんいた。二人しかいないのに三人分のお皿があるし。待て待て〜、アキト〜〜〜〜!!

そういうと艦長もジャンプフィールドを展開してジャンプしていった。
才能の無駄遣いだよな・・究極の。
俺とホウメイさんは顔を見合わせると、あはははは、と乾いた笑いを浮かべた。


でも。
俺はなぜか満ち足りた感じだった。



・・・テンカワに会えたから。
昼のイライラなんてどこかにいっちまった。



今までで最高のクリスマスだぜ・・・テンカワ。









「まてまてまて〜!!アキトアキト〜〜何で私のお料理食べてくれないの〜?」

そんな物体は料理というか〜!!と思いながらアキトは走り続ける。
がんばれアキト。
まだ丸一日以上は君の苦難は続くけど。


「何で俺がこんな目にあうんだぁぁぁっ〜〜〜!!!作者め、恨んでやる〜〜〜」



















〜あとがき〜

時間がない!!
もう23日の11時。
バルドバレットなんかに填ってるからだ!

かなり拙速で書き上げたものです。
ほとんど見直しもしてないんで、非常に拙いと思いますが。
それでも読んでいただいた方には感謝感謝。
もう一方のクリスマスSSも読んでいただけたらうれしいですね。

もうこれはない、ってくらいにリョーコSS。
肩持ちまくり。
これを機にリョーコ応援組合に入ってくれる人大募集。




 

 

代理人の感想

ん〜む、いい話でした。

ひょっとしてこう言うのが真っ当なファン・フィクションというものなのだろうかと思ってみたり(笑)。

 

 

 

>一応理屈はあるけどやっぱり経験とカンが大事
>数をこなさなきゃ上手くなれない

 

・・・なんか、文章やらなんやらについても当てはまる含蓄ぶかい言葉ですな〜(笑)。