思い
あの人たちは、私にたくさんのことを教えてくれた。
ナデシコに乗る前の私は、”人形”だったのかもしれない。
何にも関心を示さず、言われた事をするだけの”人形”
その私にココロをくれたのは、いろいろな事に怒って、泣いて、そして笑うあのヒト。
なぜ会ってすぐの他人の死を悲しみ、フクベ提督のことを怒り、そして何時も笑っていたのだろう?
その頃の私には、それが分からなかった。
そんな私が変るきっかけになったのはあのヒトが作ってくれた、たった一杯のラーメン。
そのラーメンは今まで食べたどんな料理よりも温かくておいしかった。
私が「おいしかったです。」と言ったら、今まで私がしたことの無いような笑顔で「よかった。・・・もしよかったらまた味見してくれないかな?」と言ってくれた。
私は何故か「いいですよ。」と答えていた。自分にもよく分からないココロの変化。
この日から私のココロは大きく変わりだした。
オモイカネを守ろうとしたあの日。
私があのヒトとピースランドを訪れたあの日。
私が生まれた場所に行ったあの日。
そのどれもが私にとって大切な、かけがえのない思い出。
もちろん悲しかった思い出、辛かった思い出もある。
木星トカゲの正体を知ったとき。
アカツキさんたちがユキナさんを殺そうとしたとき。
白鳥さんが殺されたとき。
でもそれらの思い出は決して忘れてはいけないものなのだと思った。
だから私はあの時に守ろうとした。ナデシコという名の絆を・・・そしてかけがえのない思い出を・・
「ナデシコの相転移エンジンを暴走させてこの遺跡ごと破壊します。うん、カンペキ!!」
「ナデシコを自爆させるってのかよ!?何考えてるんだよ、オマエ。そんなことしたら・・・」
「大丈夫。イネスさんに聞いたんだけど、この遺跡を壊しちゃえば、この遺跡が計算してきたジャンプが全部チャラになるかもしれないんだって。そうすれば、タイムパラドックスが起こって、戦争もなかったことになって、ぜ〜んぶ元通り。ねっ、いい考えでしょ」
「そんな保証がどこにあんだよ。ダメだ、ナデシコには俺が残る」
「ざ〜んねんでした。ナデシコを自爆させられるのは、マスターキーが使える私だけだもん」
確かにこの状況でできる最善策だと思った。
「確かに、他の方法はなさそうですなあ・・・・」
「この艦の指揮権は艦長にある。従うしかあるまい」
「戦争がなかったことになるってことは、死んだヒトも返ってくるってことか」
戦争がなかったことになれば、たしかに今までに死んでいったヒトたちそしてヤマダさんや白鳥さんが返ってくる。
それでも私は・・・・
「反対です」
「ルリちゃん・・・・?」
「私は反対です」
私がもう一度くりかえすと、オモイカネもウィンドウを開いて、反対の意思を表した。
「でも、ルリちゃん。他に方法が・・・・」
「艦長は、それでいいんですか?遺跡を壊せば歴史が変わる。戦争もなくなる。でも、大切なものも壊しちゃうじゃないですか」
ほんの1年あまりのナデシコでの生活。私が手に入れた、大切なヒトたちと過ごした思い出。それは、私にとってもっとも大切なもの。 忘れる事なんてできない大切な思い出。だから・・・
「もし、うまくタイムパラドックスが起こって元通りになったとしても、私たちがナデシコで過ごしてきた時間は消えてしまいます。思い出も何もかもなくなってしまうじゃないですか。艦長は本当にそれでいいんですか?」
「ルリちゃん・・・・」
「私は反対です」
もう一度、私は繰り返した。
"私達"の思い出を守るために・・・
あとがきっぽいもの
こんばんわ。玖堂 沖と申します。
今回はルリちゃんの成長を書いてみたのですが・・・
なんでこんなにも背中がムズムズするようなものになったんだろう?
やっぱりもっと勉強する必要があるみたいですね。
え〜最後になりましたが、この駄文に最後までお付き合い頂きまことにありがとうございました。m(__
__)m
管理人の感想
玖堂 沖さんからの投稿です。
TV版を基軸にしたルリちゃんの成長記録ですか。
最初は無愛想な彼女も、最終回までには結構表情が豊かになっていましたからねw
でもキャラの心理を書くという作業は、結構大変だったでしょう?