機動戦艦ナデシコ

 

〜ILLEGAL REQUEST〜

 

 

 

 

 

 

第6話      お気楽な「運命の選択」

 

 

 

 

 

 

 

格納庫は慌しい。って言うかこんな事してていいのか?

 

「お、おまえら!なにするんだ!」

 

「無断でエステちゃんに乗っちゃいけないんだよ!」

 

ドロップキックが鮮やかに決まった。地面と平行する綺麗なフォームだった。

(こらこら止めてあげなさいよ、あんたたち)

どこか言葉使いが一ヶ月ぐらい前にしばき倒した某キノコ(椎茸だったっけ?)と、似たようなものだと気付か

ないぐらいに錯乱していた。

 

「やっちまえ!」

 

「フクロだフクロだ!」

 

3人でまだ頭の包帯の取れきっていない全身タイツもどき男、いやパイロットスーツを着こんだパイロットを

ぼこぼこにしていた。

その見事さと言えばスラム街などで観光客などが決定的なミスをやらかした時などに酷似していた。

 

「・・・・俺達は忙しいのだ」

 

俺は視線を明後日の方に向けた。現実(お仕事)に向き合う事でさっき見たものを忘れるように努めた。

 

「や、やめ!がふ!おが!・・・・・・」

 

目標、完全に沈黙しました。

 

「マ、マガジンの換えは持たせたか!?」

 

「は、はい!ぜ、全機用意完了です!」

 

「ふ〜。いい汗かいたぜ〜」

 

「・・運動不足解消にはなったわね」

 

随分な言い草の人達だった・・・・・。

 

「テンカワが一足先に行ってるんだ!あんた達も早く行け!」

 

こういう時はカッコいいんだよな、ウリバタケ班長は・・・・。こういう時、だけは・・・・・。

 

「「「了解」」」」

 

「ふふふ・・・。戦場が私を呼んでるわ・・・」

 

「イ、イズミ・・・。何か悪いものでも食べた?」

 

「何をそんなに好戦的になってるんだか・・・・。と、ともかくテンカワの手助けに行くぞ!」

 

「「テンカワの〜?」」

 

(ブリッジにこの事が知れたらまた問題が起こるんだろうな・・・・・。)

 

何だかんだで2分後に全機発進した。

 

「・・・・・・どうする、あれ?」

 

「クサナギの奴も気付いてるんだろ?」

 

「班長気付いてるのかな?」

 

「ほっといたらどうせ俺達が運ぶ事になるんだろうな?」

 

「「「「「はぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜」」」」」

 

ヤマダジロウ。魂の名前はダイゴウジガイ。

 

・・・・・・もうすぐ架空の名前が本名になりかけていた・・・・・・。

 

「お、俺は・・・・ダイ・ゴウジ・・・ガ・・・イだ・・・」

 

骸はそれ以上喋らなかった。・・・・って言うかヤバイじゃないか!!

 

「・・・・拙い。このままでは刑事裁判必至だ・・・・。

 隔離された戦艦で何があったのか!?密室(大違い)で行われた殺人のトリックは!?

 大勢のメカニッククルーの前で大胆にも犯行に及んだ理由とは!?

 ○川文庫より‘ナデシコの殺人’!皆見てくれよな!って違〜〜〜〜うっ!!!!!」

 

精神があっちの世界に行きかけた・・・・。本当にやばかった。

 

「ええっと、そこの・・。名前も覚えていない整備員A、B!」

 

「「名前も覚えてもらっていなかったっすか!?」」

 

「そんな事はどうでもいい。いいから医務室に。慌てず騒がず揺らさずに急いでそいつを連れて行け!」

 

俺は担架を投げ渡した。

 

「「そんなの出来ませんよ!!」」

 

「早くしろ!でなければ・・・」

 

(・・・・でなければ?でなければどうなるんだ?急がない場合は・・・?)

 

「・・・・死ぬぞ」

 

(もう手遅れかもしれないけどな)

 

「「わっかりました〜〜!!」」

 

う〜ん。ルイスまで後1秒ってとこだな。

 

「・・・・・ここはここで最前線か」

 

実に情けない認識に俺は思わず苦笑していた・・・・。

 

 

 

「・・・・どうしよう」

 

カスミは研究所の分析室で仮眠用の毛布を頭から被りポツリと呟いた。

 

「これって・・・・」

 

モニターに映る情報から推測した、ゼラニウムの異常なまでの設計思想に呆然としていた。

 

「宇宙間戦略兵器・・・・」

 

戦術の域を越えた、戦略のレベルまで引き上げられた破壊力。特にあの大型ライフルなど・・・・。

 

「トウヤに、あのモンスターマシン・・・・」

 

鬼に金棒どころではなかった。考え得る最強のカードが揃っていた。

 

「・・・・・もう連絡も出来ないしね」

 

ナデシコの航行速度を考えると既に火星圏内である。

 

「暴走しなければ良いけど・・・・・」

 

トウヤの悪癖を思い出して嫌な予感をむくむくと膨れ上がらせるカスミであった。

 

 

〜2173年火星ユートピアコロニー〜

 

当時トウヤ7歳、カスミ8歳。カスミの方が一ヶ月ほど誕生日が早いのでこうなった。

 

「本当に行きたいの?」

 

「うん。だって面白そうじゃない?」

 

「大人の人がいっぱいいて食堂のご飯が安いだけだよ?」

 

「それでも!私が見てみたいって言うんだからそれで良いじゃない?」

 

「まあ、ね。せっかくの八歳の誕生日だからこれぐらいいいか・・・・」

 

軍の駐留基地のコンピューターをハッキングにより支配する。

 

「なんだかわくわくするね?」

 

「僕はバレやしないかってびくびくしてるよ。一応部外者は侵入禁止だからね」

 

「別に良いじゃない。誰に迷惑かける訳じゃないんだから」

 

「(僕は良いのか?)・・・・そだね」

 

彼は後年テンカワアキトとミスマルユリカの二人を見た時にアキトに心底同情したらしいが完璧な余談である。

 

ドンッ!

 

「あ、すいません」

 

目つきの妖しい軍人にカスミがぶち当たり謝っている。

 

「なんだこのガキ共は?・・・お嬢ちゃんどこから来たんだい?」

 

何やらカスミの顔をしげしげと見まわしたかと思うと急に猫なで声に変わった。

 

「ボーイフレンドのエスコートで市街地からです」

 

「そうかい・・。そこのラウンジでお茶でもいかがかな?」

 

断わっておくがカスミは8歳である。

例え他の子供より発育が良くてもいい歳した大人がナンパするような女性ではない。

 

「お断りします」

 

ぴしゃりと跳ね除ける。

 

「そ、そうかい。じゃあ少しお兄さんに付き合ってくれよな!」

 

突然ポケットからハンカチを取り出してカスミの口元を押さえるとカスミが意識を失う。

 

「後はお楽しみだ・・・・」

かなり危ない性的趣向の持ち主だと、ちびトウヤが認識したのはカスミを抱きかかえて男が逃走し始めた時で

あった。

 

「こら待て!!」

 

大人と子供の追いかけっこが始まったのだった・・・・・。

 

「ここまでのようですね」

 

基地中を走り回り肩で息をし汗をだらだら流している男と、静かに汗の一つもかいていない少年。

傍から見れば異常だろう。

 

「カスミを返してもらいます」

 

それは命令だった。抗う事の許されない断定。

 

「くそっ!」

 

男が殴りかかってくるのを醒めた瞳で見ているトウヤ。

男の動き自体は訓練されたものだが今一つ鋭さがない。

半身だけ残して避け、足を元の場所に残すと男が足に引っかかって転ぶ。

 

「このガキ!」

 

ローキックを後退しながら避けると男の蹴り足を両手で掴んで股間に回し蹴りを食らわす。

 

「☆!¥*+@」

 

嫌〜な感触が蹴り足から感じられた。

 

「・・・成敗」

 

ただそれだけだった。

 

「こちらの相手もしてもらおうか?」

 

突然に背後から声を掛けられる。

 

「正当防衛ですよ?(って言うか僕のじゃないけどね)」

 

「そいつは嫌な奴でも一応仲間なんでな。

 そいつが高々子供に負けたとなると地球連合軍のエリートである俺達特殊部隊の面子が丸つぶれだ。

 悪いと思うが病院送りは覚悟してもらう」

 

数は・・・12人。

 

「子供相手になに言ってんだか・・・・・それにしてもカスミに関るとなんでこうなるんだろ?」

 

ポツリと呟く。彼の目前の‘目標’をしっかりと見据えたまま・・・・・・。

 

「・・・・・・・饗宴の始まりだ」

 

風が舞った・・・・。悲鳴をBGMに・・・。

少年は身体の、心の赴くまま45秒で、12人の男を一人残らず呼吸器が必要な状態にした・・・。

・・・・彼は怒っていたのだった。

 

カスミが目を覚ましたのは死屍累々といった広場にトウヤが壁に背を任せて天井を仰いでる時だった。

 

「・・・何があったの?」

 

トウヤは視線だけカスミに向けるとがくっと首を垂らした。

 

「・・・・トウヤ?ちょっとトウヤ!?」

 

カスミが慌てて駆け寄り、トウヤの異常を理解すると泣きながら他の人を呼びに行った。

 

「・・・・信じられませんね」

 

トウヤを見た軍医が発した最初の言葉がそれだった。

筋肉組織の酷使でズタズタになった筋肉繊維。靭帯断裂は数知れず。内臓にも異常があったらしい。

 

「どうやったらこんな状態になれるのやら・・・。トラックに轢かれたってこうはなりませんよ」

 

「・・・・息子を、お願いします」

 

トウヤの父、クサナギミツキ少将は深深と頭を下げた。

 

「ええ気長にやりますよ・・・」

その言葉とは裏腹に3ヶ月と言われていた症状を僅か2週間で完治させ、解剖してみたいと軍医に言われた

時は流石に恐怖に襲われ、トウヤは音速に近い拳で軍医を撃沈させた。

 

カスミの得た教訓は・・・彼だけは怒らせないようにしよう・・・だったりする。

 

後日談ではあるが親ばか根性丸出しにしたクサナギ少将の決定により全員減俸に加え、相当きっつい後始末が

あったらしい。トウヤが病院送りにした13人の内、8人が転職希望を出したそうだ。

 

 

 

「じゃあ行くかね?」

 

既に敵艦隊は殲滅されていた。ノーマルエステで5分間に戦艦3隻というアキトの撃墜数には素直に拍手した。

俺はといえば仕事を放り出して宇宙服を着こんで非常用のハッチから宇宙空間に出ている。

ナデシコはもう大気圏に突入してるところだ。

呼べば出てくる機動兵器がこんなに便利だとは知らなかったけど。

 

素早く機器類のチェックをする。

 

「D・F使用可能・・。対艦ミサイル残弾12発・・。ブレードはまだ、か・・。シールドは完成済み。

 ライフル・・・使用禁止?」

 

お茶目に差し押さえとモニターに映る。

 

「なに考えてんだか・・・ステルス装甲もちゃんと取りつけてあるし何とかなるか?」

 

あくまで俺は艦隊戦をやるつもりはなかった。

スタンドアローンが可能で、ほぼ無尽蔵に稼動可能なのだから不意を突いて単機で攻撃を仕掛けるつもりで

あった。ナデシコに乗り込んでるという都合もあったし。

ゼラニウムはといえば蒼く磨かれたステルス装甲にウイングユニットを固定されていて拘束された天使の

ようだった。

 

「・・・・・ミッション・スタート!絶対査定に響くよな〜。プロスさん見逃してくれてるかな」

 

バリュートが広がり、彼らもまた火星に降下した。

 

「ネルガルはたぶん知ってるよな、遺跡のことは」

 

たぶん火星攻略はボソンジャンプ技術の独占を狙っての事。

俺らがネルガルの社員に聞いた‘人助け’を、市民を護る事を目的とする連合軍と敵対してまでする理由は

それしか考えられない。

 

「あれは・・・パンドラの箱なのに」

 

一路、オリンポス山に向かった。途中に点在していた廃棄コロニーの残骸にやるせなさを感じた。

 

 

対艦ミサイルをチューリップに向けて2発ずつ撃つ。チューリップはあくまでゲート。

入り口がなければ意味がない。

 

      チュドドドドンン!!!!!

 

3つを破壊して残るは・・・・・4つ!

 

「こんなもんでいいかな?」

 

たぶんナデシコもここに来るんだろうな〜。

負担は少なければ少ないほど良い。俺はどうせ参加できないんだし。

バッタとジョロは撒き散らしたデコイをゼラニウムと誤認して無駄弾使ってるし、戦艦と護衛艦に至っては

ゼラニウムのスピードとステルス装甲のレーダー破壊によってもはやただ浮かんでいるだけに過ぎない。

 

「無人機の能無しがっ!!」

 

シールドユニットを分解して戦艦に向けて投げ放つ。

ユニットはD・Fを発生させながら飛んでいくので当然延長線上にあるものはフィールドの切り裂かれ、爆発四散

する。それが戦艦であろうとも・・・・。

 

武器として使うもので、効果があるものは厭くまでD・Fが貫けることが前提である。

方法は三つ。

一つはフィールド自体を消してしまう事。

二つ目はより大きなフィールドで強引に破壊すること。

三つ目はD・Fの弱点でもある物理的力。

トウヤの考案したフィールドブレードは一つ目に、後にアキトの発案するD・F・Sやゼラニウムのシールドに

使われているD・Fの収束は二つ目、核ミサイルや反応弾といった戦術核。

尤も四つ目として相転移砲等のフィールドに関係なく空間に直接作用する物もあるがトウヤの感性はそれを

拒否した。

 

いい加減面倒くさくなったのでフィールドの展開範囲を広げ、歪曲率を上げたある種の結界を俺達を中心に

放つ。

 

「機動兵器の残数ゼロ。護衛艦全艦稼動不能。戦艦は大破。こりゃ一対多数の方が得意なのか?」

 

ユニットを元のシールドに戻して地に降り立つ。

 

「これで楽に逃げられる」

 

胸部装甲をスライドさせてコックピットが露出する。

 

「どうしてこんな物の為に誰かを犠牲にする事が出来るんだろ?」

 

オリンポス山。ナデシコの始まり。遺跡ユニットを護るために壊れた戦艦たちの墓場・・。

俺が、思兼オリジナルを造った所。相転移エンジン。ディストーション・フィールド。グラビティブラスト。

謎は幾つもある。それが偶然か、必然か・・・・・俺には分からない。

 

「馬鹿げてる。人が幸せになるための技術が、人の悲しみによって作られるなんて」

 

戦争なんか好きでやる奴なんかいるもんか。誰もが戦いたくなんかないと思いたい。

 

「後は避難している人たちの探索か・・・」

 

生体レーダーを広範囲で使って人を捜して行く俺だった。

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

〜堕作者のあとがき〜

 

とりあえず第7弾ぐらいかな?どーも久遠の月です。

本当は核融合エンジンを使った何かを出したかったんですけどナデシコと言う事で相転移エンジンに統一して

しまおうか?などとものぐさな事を考えるバカ作者でした。

 

まあ、これでもう少しずつ分岐しているのが分かる(笑)

 

それではこれで!

 

 

 

 

 

 

管理人の感想

 

 

 

久遠の月さんからの投稿第七話です!!

う〜ん、ガイの不幸が身に染みるな〜(意味不明)

この時期はただのお邪魔キャラだったしな。

今後の成長がどうなるか楽しみにですね。

・・・もう直ぐ、イネスさんが合流するし(爆)

更なるドーピングを得て、強化されたガイが見れる日も近い?

 

それでは、久遠の月さん投稿有難うございました!!

 

さて、感想のメールを出す時には、この 久遠の月さん の名前をクリックして下さいね!!

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