始まり ２
繰り返される歴史。人もまた、先人の道をたどる。
その善悪を区別することなく、繰り返す。……………
ユーチャリス・通路
「ハハハハハハッハハッハハハッハッハアアアアァァッァァァァァッッ。………………………
これで、やっと終わる。俺の復讐は終わるんだ。…長かった。あいつの身勝手な復讐で殺された沙羅の仇が討てたんだ。」
時たま激しく揺れる通路で、男は、己が成し得た事に、深い喜びを覚えていた。
男の名は、リン＝マーキス。
「やっと、やっと…お前の元にいけるんだな、、、」
ユーチャリスの整備士の一人。そして、自分の整備した物で、婚約者を殺してしまった哀れな男。
ここは、火星と木星の間。
普段は、耳鳴りのするほどの静けさを持つ宙域。
しかし、見渡す限り、数十の戦艦と数え切れない、そう、まさに無数の機動兵器に満ちていた。
そして、この場所にいるほぼ全てのものの敵となる戦乙女の名を持つ戦艦と、呪いの意味を持つ機動兵器は深刻な被害を受けているのが見て取れる
今回の航行は、火星の後継者らの残党をつぶすために行われ、
この事は、ルリやユリカを狙う者どもの掃討をするためのものであった。
黒い王子様は失念してしまっていた事がある。
自分が、犯した罪。
…………大量殺戮者であることを…………
そして世間は広い様で狭いということを
男には婚約者がいた。
男は腕のよい技術者でも有った。
婚約者と出会ったのは、一年前の夏。
ネルガルの機動兵器及び、戦艦の開発部という女っ気のない職場であった。
同期との合コンで知り合った。
何度かのデート、ちょっとしたこと、でも、限りのない幸せな日々。
二十九になる前に、ありふれた言葉。でも伝えたい言葉を言えた。
この人ならと思えたから。
しかし、先立つものがたりない。
そんな折、プロスペクターからスカウトを受けた。
きな臭い仕事でもあったが、その分ギャラも良い。いろいろ、行動に制限はつくが、二つ返事で応えた。
同じ社内での移動、転勤の一種だと考えてきたからでもある。
ナデシコとは別のコンセプトを持った戦艦と、一騎当千の機動兵器の開発であった。
その手の事は専門の人間が関わっているのに如何して、この男に声が掛けられたのか？
答えは、通常とは異なりかなり急を要するからであった。
多少のリスクを覚悟で下された決断であった。
順調に進んでいた道のり、しかし、この決断は、道を踏み外した始めの一歩といってよかろう。
「沙羅……会いたいよぉ………………」
いくつかの爆発の起きた後、その場にあるのは、悲しみと喜びを混ぜたような表情をした哀れな屍骸のみ
遡る事一時間前
ユーチャリス・ブリッジ
＜アキト、ツメタイロ。
ナニヲカンガエテイルノ？
ツナガッテイルノニ、ハナレテイル
「ポプラ、アキトハナニガシタイノ」
繋がっているだけでなく、大切な人であるからこそ、多少な変化を敏感に感じ取ってしまう。
「ラピス。その質問は、十八回目になります。」
「オネガイ」
「マスターがしたいことは、今までの行動理念及び、性格を考えますと
火星の後継者の壊滅させる事が、今回の航海の主題になる確率が、８５％となり最も高いものになります。」
「ホントウ？アキトノココロハ、モットチガウコトヲ、カンガエテイル」
「スイマセン。私の出来る回答はこれが限度です。」
黒い王子が、幼き妖精に後を任せ、振るう剣の整備へと出てから、ずっと繰り返されている光景。
「ラピス。私に聞くよりも、マスター本人から、聞かれたら如何でしょう」
さすがに、この事態を変えたいのか制御ＡＩが、一つの提案をする。
「アキトハ、コタエテクレナイ。……キラワレタクナイ」
「立止まっていたら前に進むことは出来ませんよ。
そんなのでは、ホシノルリに負けてします。
アキトさんを取られても良いのですか？」
「イヤ。ワタシハ、アキトノメ、アキトノミミ、アキトノテ…………」
「なら、何時までも、人形でいてはいけません。
共に歩ける人間と成らないと、『お嫁さん』になることは難しいですよ。」
「ヨクワカラナイ。デモ、アキトヲトラレタクナイ。」
「なら、聞いてみることです。
マスターにとってラピスは、掛替えのない存在からです。
こないだ練習した『お願い』をやってみれば、教えてくれると思いますよ。」
「ワカッタ。アキトノ、トコロニイッテクル。アト、オネガイ」
オペレータシートから離れ出口へと駆け出す、ラピス。
ふと立止まり、振り返る
「どうかしましたか？」
「ポプラ。………アリガト」
再び、アキトの元へと駆け出すラピス。
＜この位なら、約束の内ですね。
まったく、マスターは、自己嫌悪、自己憎悪が強すぎるんですよ。
この世の不幸は全て自分のせいだとさえ思っているんじゃないですかね。
もう少し、御自愛して下さると良いんですけど…
それにしても、ラピスのマスターへの愛は素晴しいものですね。
この時間か、永遠に続けばよいと思う、私は、ＡＩとして異常なのでしょうか
……………………ッ………………………………………………………………………………………………
＜この感覚、過去二回ほどあったものですが、センサー類の故障でしょうか？
チェックをし直さないとなりませんね。
自己診断プログラムを走らすポプラ。
もし、彼女が、親ともいえるオモイカネと同一の経験をしていたの、ならば別の結果が生まれていたのだろう。
いや、その経験をデータとして引き継いでいたなら黒き王子が、その命を落とすことにはならなかったはずだ。
ユーチャリス・格納庫
一人黙々と愛機の整備をする黒い王子
ポプラにとっては理解し難い行為の一つである。
専門のものが、整備して半日を経たない物を何故、態々するのか。
これは、黒い王子がネルガルを信用していないという事を言うのではない。
自らの危険性を自覚しているということである。
「サレナ、これが最後の戦いとなる。」
＜そうこれが、最後だ。
総てを、清算する。
彼は、光を失ってしまっていたのだろう。
視力でなく、生きる糧としての光を………………………
寝ても覚めても想い続けたことを成し遂げ、彼は本当の盲目となり果てたのだ。
従って、護るべき者も見失い、刺されなければ、敵を知り得ず、望んだ道すらも誤ってしまったのだろう。
＜？………………………
「ラピス………………ッ」
鈍く焼け付くような腹部の痛みに顔を歪めるアキト
＜これは………
＜＜ラピス、何があった。何処にいる？
＜＜イタイ、、アキト、イタイ、イタイ…………………
「パニックに陥っているのか？」
ブリッジへと走りはじめる黒衣の王子
「ポプラ、侵入者だ。ラピスの所在を教えろ。」
「マスター。私のセンサーには、その様な者は、確認できません。
？！っ。ラピスをロストしました。
…センサー各位に異常は認められません。」
ドン
「チッ。ネルガルか、思った以上に早かったな。
推測で、ラピスの位置は分かるか？」
「Ｄ−２ブロック、72％。その近辺、5.5％。」
「わかった。
ポプラ，船内外に、ジョロとバッタを展開しろ。
俺と、、いや、ラピス以外の反応があれば、警告無しで撃て。
艦のセンサーは制御コードによって狂わされているようだ。」
「了解。後、九分で、目標宙域に突入しますが。」
「………近辺の暗礁へ、コース変更。
ステルス機能最大展開、損傷は、気にせずに慣性航行に切り替えろ。
あとサレナを船外へ射出、その後、ワイヤーにて船外に固定だ。」
「了解。何か用意するものは？」
「医療セットと麻酔を頼む。
ラピス用のだ。」
「イエス、マイマスター。」
＜＜ラピス。今往く。
＜＜アキト、アキト、アキト………………
黒衣の王子は直走る。
二度目の悪夢を避けるために…………
始まり 2 終
補足：何故アキトの復讐に知人が巻き込まれた人間がドッグにいたのか
：結論から言えば、予測不可能な事故であったから。
アキトの行動は、ネルガルのＳＳや、アキト自身の諜報活動によって綿密な計画の下に、
行われていたものである。
火星の後継者らの行動を掴み、より効果的な目的地に対して、戦乙女が出されていたのである。
戦闘行為に至る可能性がある場合、現地にいるネルガルの関係者に対して、何らかの理由をつけ、
退避または、進入の制限を行っている。
それ故、彼が出した数万にも及ぶ死者の中で、ネルガル系列の関係者は、二桁に満たない。
しかし相原沙羅の場合、彼女とリン＝マーキスとの関係は、公式な記録（仕事や、血縁、同棲など）には無く、
婚約自体、当人同士で行われたものでしかなく、職場仲間にからかわれる事を嫌った彼が、話さなかった為、
ＳＳが、彼女存在を、知人程度のものとして、余り注意を払っていなかった事と、
彼女が、知人との旅行による、イレギュラーに当地へ行っていた為に起きたものである。
したがって、ＳＳもこの時点で彼女の死亡を知らず、
彼自身も、知ったのは、黒き王子が、電子の妖精に会いに行ったときである。
当然、加害者自身は、何も知らない。
リン氏が重役たちに近づけたのは、相原氏の死亡原因を知って、態度に不審な所が出た為、
彼らの息のかかった者達に目を付けられたからである。
後書きの様なもの
？？？＞随分間が開いたな。(-.-)
くらげ＞えー。すべては、レポ−トの為です。すいません
？？？＞まあ、消えなかったから良しとするか。で、出たな、不幸な人間が(^o^)
くらげ＞ええ、前回お約束していましたので……
？？？＞で、奴は、『道を誤ったものたち』に、なるのか(・・?
くらげ＞………………………
？？？＞如何なんだ(?_?)
くらげ＞何とも言えない所なんだけど、リン氏や、これから出てくる不幸な人たちとは、違う意味でする予定だよ。フフフ
？？？＞まあ、楽しみにしとくか。で次回は、何時ごろ出す予定だ(・・?
くらげ＞一週間後になる予定です。
？？？＞フム、やや短いが閉めるか(-.-)
くらげ＞ええ、これから、レポート残りをやらなければならないので…………では、最早恒例の
その２＞カンソウ、ゴジ、ダツジ、ソノタ、チュウショウガアレバ、メールヲクダサイ。
くらげハ、ワタシニ、ナマエモツケラレナイ、無能デスガ、ミステナイデクダサイ<(_ _)>
くらげ＞ええっと。それは誰が考えたのかな？？
その２＞？？？ダヨ(・・?
くらげ＞そうですか……………
（今回は、何もしないと思ったら。しかも間違ってないし。）ブツ、ブツ………………………
？？？＞作者が落ち込んでいますが、こんな作品を呼んでくださった皆さん有難うございます。
それでは、また次回お会い出来る事を願います。さようなら。(^_^)/
その２＞サヨウナラ(^_^)/
追伸：ウィルスに感染しているメールが、五通ほど着ましたが、
検疫の結果内容が、読めなくなってしまいましたので、メールを出したのに返事が来ないという方がいらっしゃいましたら
その為です。
代理人の感想
ふむ、動きましたね。
次回は佳境でしょうか？