始まり 3
道を踏み外したものは、何処へ辿り着くのだろうか
道なき道を切り分け、目的地へと辿り着こうとするのだろうか
されど………目的地を失った旅人は何処へと行くのだろう
D−2ブロック
「さあ、叫べ。もっと、もっと、叫べ。
そして、アイツを、呼んでくれ。
キャァハハァァアァアァァァ」
鈍く光る小銃を持つ男は、血塗れでのたうつ少女を蹴り飛ばしながら叫ぶ。
男の目に宿るのもの………………それは、かつての黒き王子と同じもの
「アキト。アキト。アキト……………」
「ラピス!」
「フフ。。。やっと来たな、大量殺戮者。」
「貴様は、ドックにいた奴だな。」
「アキト。アイ、ケフォッ。ケホッ」
<<ラピス、遅くなってすまない。
もう少し我慢してくれ、すぐ済ませる。
<<アキト。アキト。アキト
男と数メートルのところまで歩み寄る
「テレパシーでのお別れは、済んだ様だな。」
嘲笑う様な男の言葉
「技術屋一人に、これだけの事は出来まい。ほかの奴らは如何した。」
「?!…センサー類は狂っているのに如何して俺一人と分かる?
…ハファァ…そうか、機動兵器を仲介させたんだな。
この艦全てのセンサーを狂わせているはずなのに…………
流石、何万の人間を殺してきただけの事はあるな、SSの奴らは、かなり混乱すると踏んでいたのにな。」
「……………答える気が無いか。」
<おかしい。この男の自信は何だ…
明らかに異状であろう。
目の前にいる黒衣の者のことを知りながら、正面きって対峙する事等正気の沙汰ではない。
ましてや、殺気を漲らせているのだ、そんなことを知らない軍人ですら逃げ出す、もしくは及び腰になる程ものなのに
この男は、平然としているのだから
<バッタや、ジョロのセンサーには、不備が無い。
現に、二体のバッタは、発砲してきた。
ならここ意外に、生命反応が無いと言う事に……
「あの衝撃は………お前が、SSを消した時のものか…」
「流石、流石だ。殺人鬼は見る眼が高いな。
いや、目が見えない貴様に言う事でもないよな。。。
ふぁぁぁははは………………………
そうだよ。奴らは、俺が始末しといたよ。
ネルガルの誇るSSもたいしたことがないよな」
男が、いい気味だよと自慢げに話す間も、
足元に倒れている少女からは赤いものが流れ落ちる。
「…貴様の与太話はそれだけか、なら…」
黒き王子が、流れるような動作で男の眉間を撃ち抜こうとした時、激しく揺れた。
「ポプラ、何が起きた」
男から標準をずらさずに確認をする
「二時方向からの砲撃です。只今確認中」
「ハハファォハアアアアアア」
「気でも狂ったか」
「いや、とっくに狂ってるさ。
………お前にも味わせてやれる、クックックッ
火星の後継者だったけな。
そいつ等が……………
気が付いたんだよ。」
「ポプラ!」
「確認取れました。
火星の後継者です。」
その声に、満面の笑みを浮かべる男
<気がそれた?!
一瞬の隙を突いて、歩法で間を詰め、男が反応できないほどの鋭い蹴りでぶっ飛ばし
赤い海に横たわる妖精を抱き上げ駆け出していく
<奴の自信の根拠が分からない以上下手に関わるよりも先に、
ラピスの手当てが先だ。
「ポプラ、サレナに飛ぶ。
外の状況をまわしてくれ。」
王子たちが、虚空へと消え去った数分後、
意識を取り戻した男は、よろよろと立ち上がった
「ハハハハハハッハハッハハハッハッハアアアアァァッァァァァァッッ。………………………
これで、やっと終わる。俺の復讐は終わるんだ。…長かった。あいつの身勝手な復讐で殺された沙羅の仇が討てたんだ。」
現在へと戻る
火星・木星間航路
華やかな彩りに飾られし宙
いくつもの戦艦。幾百にも及ぶ機動兵器
「ア…キト」
「いい。今は黙っていろ。直ぐに………」
<くそ、完全に裏を書かれたな
現在座標すら、合ってないとは。
この分では、あいつ等の所にも手が回っているな
………………………………………………………………………
…ネルガル以外に俺は、何処に行けるというのだ。
蟻が飴に群がるかのごとく無数の機動兵器が襲ってくる
いくら優秀な制御AIであろうともその耳と目を奪われ、
頼むべきオペレーターすらいない状況の中では機動兵器を統制しきることは難しく
混沌とし混然とした戦闘状態のなか
火星の後継者らがこっちに向かってくる
その中を縫うように、舞うように錯綜する黒い機体
舞手の中にいるのはそれとはかけ離れた光景
腹部に銃創がある少女とその血に塗れた男の、二人である
「アキト。ナカナイデ。ダイジョ…ブダカラ…」
<応急手当だけでは、止血すら儘らない……
俺は、今度も見ているだけなのか。
血にまみれた妖精を抱きながら、アキトはブラックサレナを駆っていた
「ポプラ、ラピスを救う方法は?」
男は、希望の名を持つAIに助けを求めた。感じないはずの血の匂いを嗅ぎながら
その全ての力を持って呪いの意味を持ちし者を破壊せんとしてくる
自分等の最大の敵は、戦艦などではなく、この黒い機体だということを知っていた。
「ありません。
すでに血液の五分の二が無くなっています。今から治療を受けたとしても間に合いません。詰り………………………
………手遅れです」
コクピットに響く、絶望的な事実
人は、悲劇の当事者となった時、
どんなふうに思うのだろう
「そんな。フザケルナ!貴様は」
「アキト。・・モウイイノ。」
<アキト…カナシンデイル……ナイテイル…
ワタシハアキトノメ、アキトノテ、アキトノ…………アキトノスベテ
デモ………アキトニトッテノワタシハ?…ルリノ…カワリ?…………
…チガウ、アキト…ナイテイル、トテモ…トテモカナシイキモチデ、アフレテイル。
アキトニヒツヨウトサレテイル………ウレシイ?……カナシイ?………………………
………………ナゼ?
<五感の等、殆んど残っていない筈なのに
こんな時に限って、死の近づきを…………………
確実に感じ…取れる。
その漆黒の機体には幾つかの被弾箇所を見て取れる
戦乙女は爆発を続けている
「ラピス、何がいいものか!お前は、俺のために死んじゃ駄目なんだ。お前は幸せになる権利を持っているのに、おまえは…」
血に塗れた手を、アキトの頬に添える
「アキト。ラピス…シアワセダヨ。アキ……ソバニイレルカラ」
<イツモトチガウアキト。
マックロイヤミ、イタクテ、クルオシクテ、コワレテシマイソウナ、イロノココロ。
ソレガイツモノアキトノココロ。
…デモ…
<俺は、俺は。何の為にこの力を手に入れたんだ?
大切な人を護るためじゃなかったのか?
もう二度と繰り返さないためじゃなかったのか?
これが…代償なのか?
なら…俺でなくラピスを傷つける!!
何故ラピスがこんな目にあわなければならない!!
これは換えられないのか?
<カナシクテ、イタクテ、クルオシイノニ、ワタシノタメニ、ナイテイル、アキト。
タマニシカナイノニ、イマハ、スベテガミエル。
アキトノホントウノ、ココロノイロ。
ルリトアッタトキトオナジ、アオイ、ソラノイロ…
アタタカイ。……イマ、ワタシハ、アキトト、ツナガッテイル。
<これは決定事項なのか?
…………俺に何が出来る?何ガ、ヤレル?…………
これが俺の『私らしく』の結果か…
?!
『ボソンジャンプとは、ただ、時空間を移動するだけじゃなく、多次元との移動も可能なはずよ。そのことは対象者に対して・・』
<!!!そう、あの時。迂闊にもボソンジャンプの説明を求めて、延々と八時間もされたあの時アイツはそう言ったんだ。
「ポプラ」
<俺は、迷わない。
「はい、マスター」
<最早ラピスを助けるにはこれしかない。
どんな犠牲を払ってでも、助けてみせる。
今出来る事をヤッテヤル
もし、ここに第三者がいて、この行為の向こう側に在る事を知れば何と言うであろうか
エゴイスト、殺人狂は狂人でしかないと蔑むか
それとも、正しい選択だと間違った事でないと述べるか…………
「ユーチャリスの自爆プログラムを作動させろ。
起爆と同時にユーチャリスに突っ込む。」
「!!マスター本気なのですか?」
「ああ、ジャンプフィールドユニットは動くか」
<たとえ動かなくても、やってみせる
「ジャンプフィールドユニットは、稼動可能。
サレナにはCCもあります。好都合な状態です。」
<長い付き合いになるAIポプラは、俺の考えに気が付いたらしい。
火星の後継者たちは、その数を段々と増やしていく
「どうする?止めるか?」
「ご冗談を。勿論お供します。
……私にとってラピスとマスターが全てです。他の事象には関心を持ちません。」
高度AIにとってもこの行動は善悪の範疇に留める事が出来なかったようだ
「なら、お前の性格データをサレナにコピーしろ。
………………………
ラピス、ポプラ。
俺は、お前達に出会えてよかった。」
<五感が遠くなるのを感じながら、言葉と共に想いを込めて言う
「アキト。ワタシハ、アキトノスベテ」
ラピスも想いと共に言う
「ポプラ、ジャンプフィールド展開。ランダムジャンプを仕掛ける。」
「……転送終了。ユーチャリス、自爆プログラム起動確認。ジャンプフィールド展開します。」
ドォーン
今までにない衝撃がサレナを襲う。
「!!今の衝撃でフィールドが暴走しています。
CCを補強にまわします。」
「好都合だ。全てを消す。」
「ラピス、マスター。今まで、様々な思い出を有難う御座いました。
AIである私が言うのは可笑しいですが、願わくは、又御一緒したいです。」
「アキト、ポプ………」
ジャンプフィールドを展開した漆黒の機体に見て火星の後継者たちはこの好機を逃さず、止めを刺しに言った。
明らかに、ランダムジャンプの様だからである。この広い宇宙で、壊れかけた機体でそれを行うことは、死を意味している。
しかし、リスクを覚悟で、万全を期する必要があった
いや、この手で仕留めたというものが欲しかったのだろう
「いまだ、機動兵器を体当たりさせても構わない。フィールドごと、あの悪魔を潰せ。」
『新たな秩序』という夢から覚めることの出来ない男が叫ぶ。
そして、漆黒の機体が、ジャンプしようとしたそのとき。
自分等の正義を阻む邪魔者を排除できたと、勝利を得たのだと思えた。
気の早いものは、自らの勝利を確信し、歓声を上げていた。
女神は彼らに微笑を浮かべてその手を差し伸べていった
この艦隊の司令官もこの世の春を迎えた自分を夢想していた
憎き敵、彼らの理想を幾たびも壊していった者
かのナデシコのエースであり、彼らの実験台であり、最強を恐れられていた北辰を倒せし者
その者を仕留めたという事は、その功績は火星の後継者の中では比類のないものである
つまり、次期総帥は自分であると
しかし………………………
「何者かがこの地点にジャンプアウトをしてきます。」
オペレーターの声を最後に、夢想は夢想で終わった
彼らは文字通りに消滅した。
いや、素粒子レベルまで分解されたと言うべきだろう。
閉鎖空間であったとしてもどれ程のエネルギーが必要なのであろうか想像すらつかない程のエネルギーによって
この日この時、人類初の有人ボソンジャンプを行った人物は、この世界より消えた。
一握りの塵すら残さずに…………
始まり 3 終
補足: 「?!…センサー類は狂っているのに如何して俺一人と分かる?
…ハファァ…そうか、機動兵器を仲介させたんだな。
この艦全てのセンサーを狂わせているはずなのに…………
流石、何万の人間を殺してきただけの事はあるな、SSの奴らは、かなり混乱すると踏んでいたのにな。」
:まず、センサー類が狂っているというのは、ユーチャリス船内外問わずに及んでいることが
本文中間のあたりに現在座標が狂っているということで表れています。現代、近代において、情報こそが、戦闘において最も重要ということがいわれています。
前回書いたように、AIの反乱に対して敏感になっているネルガルは、様々な、特殊コードを新造艦に対して設けているようです。
今回実行されたコードは、AIに情報が伝わる経路の部分に対するもので、ここを通る全ての情報の改ざんを行い、AIに虚像を見せるものです。
本来であれば、そのような行為に対して、自動診断プログラムが反応し、AIもしくは、オペレーターが気が付くはずなのですが、
事前に実行されていたRB0707によってセキュリティーを、潰されていたので、気が付けなかったという事です。
次に機動兵器を仲介されたという事ですが、この情報が、正確であったわけは、至って簡単で、情報の経路が、異なるからというものです。
これは、機動兵器を使用する上で、情報の受信と、送信を同一の経路で行うことで、より正確な操作を実行する為に、他の経路と、独立されていたので、改ざんされなかったということです。
それで、この艦全てのセンサーを狂わすと何故、機動兵器を使用した情報収集をしないと思ったのか?
これは艦自体の情報を狂わされているということは、機動兵器にも及んでいる可能性が、否定できないからであり、且つ、機動兵器のAIは柔軟性に乏しいからです。
この事は、単独で複雑な命令(似通った身体特徴を持つ人物の識別など)をこなすことを想定して作られていないことを示しています。
だからこそアキトは、明らかな身体特徴をもつラピス(身長が、際立って低い)のみを標的からはずして、自分も標的として行動させていたのです。
後書きの様なもの
くらげ>スイマセン。前回すぐに書くような事を書いといたのに、だいぶ間が、空いてしまいました。
その2>ゴメンナサイ<(_ _)>
くらげ>?アレ、???は、どうしたの
その2>ジカイノタメニ、ヨウイガアルカラッテイッテタ(-.-)
くらげ>あっそう。(良かった今回は、安心できるな)で、何で、機嫌が悪いの?
その2>ナマエ、イツニナッタラ、キマルノ(・・?
くらげ>その内(きっぱり)
その2>………………………(=_=メ
くらげ>あの、その手に持っているボタンは何でしょうか??
その2>???ガクレタ。駄目作者天誅ヨウ(^^)
ポチッ
くらげ>え?
BOooooooooooooooooooooooooooooooooooo
フュ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜キラッ
がさこそと、メモを取り出す少女
その2>ェェット 駄目作者ハ、ナガレミサイルニヨリ、セイバイサレマシタ。
駄目作者ニ、カワリニ、コンナヘタレ文ヲ読ンデイタダキ、アリガトウゴザイマス。
アト、カンソウ、ゴジ、ダツジ、アイディア、ソノタ、チュウショウガアレバ、メールヲクダサイ。
ヘタレ作者ガ、ヨロコビマス。
マタネ(^_^)/
代理人の感想
え〜、色々言いたい事はありますが取り合えず次の感想で。