3回目を語ろうか

【プロローグ】

 

 例えば、だ。

 世界は一枚の布だと考えればいい

 縦糸は時間を司る。一本隣は過去か未来か、1秒違うか1分違うか、兎に角別の時間である。

 そして、横糸が世界だ。自分の糸の一本隣は……あまり変わらないかもしれないが、異世界だ。

 例えよう、君は今日朝食を食べたかな?

 一本の糸が司る世界に存在していた君は、朝食をきちんと食べた。しかし、その糸のすぐ隣の糸の司る世界に存在していた君は、ほんの気紛れで朝食を取らなかったとしよう。

 これだけでは世界はあまり変わってないかもしれない。が。

 その日の昼食前、君は大変な危機に見舞われたとしよう。どんな危機でもいい。命に関わる人生最大級の危機だ。とんでもない事が君に降りかかってきた、そう仮定する。

 朝食を食べた君は命辛々危機から脱出。

 朝食を食べなかった君は途中で力尽き死亡。

 これだけで隣の世界の君は消滅したことになる。これで結構世界も変化したのではなかろうか?

 縦糸と横糸の交わる地点が少し違うだけで、異世界は簡単に誕生する。ただし、隣の世界はあまり今の世界と変わらないかもしれない。

 なら、もっと離れた世界は?

 もしかしたら日本はまだ鎖国中なのかもしれない。ドイツが第二次世界大戦の勝利国かもしれない。科学が発達していないかもしれない。巨大ロボットが闊歩してようが、ドラゴンが闊歩してようが、誰も不思議に思わない世界かもしれない。無論、人間のいない世界もありだ。

 人は、そんな世界を平行世界と呼んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







 例えば、こんな世界がある。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






 火星の大地。火星の空。

 殺風景もここまできたかと思うほどの砂漠地帯。

 そこで、ブラックサレナCと夜天光二之型が対峙していた。

 ブラックサレナCは、前のブラックサレナよりもより重装甲になっている。殺人的な出力を誇るブースターを増築させ、機体の重さをブースターで帳消しにし、代わりにパイロットの事など検討に入れていないアンバランスな機体となった。

 夜天光二之型は、前の夜天光よりも装甲を削り、各部の駆動モーターの精密度を極限まで引き上げ、軽装甲の機体には本来使われない程の出力を持ったブースターが丸出しとなっている。こちらもやはり、パイロットの事など考えられていない。

 両者とも、互いに手加減など出来ないであろうことは分かっている。むしろ、さらさらする気もない。

 そして、パイロットへの過負荷を要求する機体を用いた手加減なしの戦いは、敗者には死を、勝ったとしても寿命は縮むであろう。

 もっとも、ブラックサレナCのパイロットであるテンカワ アキト、夜天光二之型のパイロットである北辰、両者とも残りの寿命などあってないようなものだ。はっきりと言わせてもらえば、二人とも生きているほうが不思議であった。

 アキトは体の中に多量注入させられた様々なナノマシンによって。北辰は火星の後継者と名乗る集団の反乱時にアキトとの戦いによる傷により。

 火星の後継者と名乗る集団は、二ヶ月前にナデシコCによる火星全土とその周辺コロニーに渡るコンピューターシステムの掌握によって一時的に組織としての機能がストップ。その際、主導者である草壁は捕まり、地球へ向かった兵士達はとある人物の説得により大半が裏切る。事実上、火星の後継者は壊滅した。

 そして、その火星にて二人は対峙する。

 復讐をするため。

 復讐を、されるため。

「北辰……っ」

 ブラックサレナのコックピットにてアキトが低く唸る。

「……」

 夜天光のコックピットに身を沈めている北辰は、何も答えない。

 アキトの顔に銀色の幾何学文様が浮かび上がる。

 北辰はIFSコンソールの上に掌を乗せる。

 夜天光二之型はその構造上より手動操作による操縦は不可能であった。正確には、北辰の体が既にナノマシンの力をなくして生きる事が出来なくなったために自分の体に注入したIFSナノマシンがあるからこそ、夜天光二之型が生まれたのだ。

 アキトはブラックサレナの“目”を通して夜天光を睨むように視る。夜天光は軽量型のために装備が少ない。右腕に持つ錫杖と、両肩に装備された小型の機関砲。それから腰に装備されてる数本のナイフ。古典的な接近戦用である。

 北辰はモニター越しにブラックサレナを眺めた。重装甲の重装備に似合って、肩・二の腕・膝・背中、あらゆる所に小型の電磁レールキャノン・ミサイルポッド等が装備されている。漆黒の手には大口径のマシンガンを持っている。

「決着をつけるぞ」

「……心得た」

 アキトが冷静ならば違和感を覚えたであろう。だが、そんな違和感など今の彼にとっては大したことではない。

 真っ向からの勝負を北辰が受けたのも、狂気と言っても過言でもないあの雰囲気が消えているという事も。

 

 刹那、黒と赤が弾けたように飛び上がる。

 

 ブラックサレナの各砲身が火を噴く。

 狂ったように飛んでくる弾丸を、夜天光は機体のディストーションフィールドと錫杖に内蔵されているディストーションフィールドを巧みに使い全ての弾丸を叩き落し、時には交わしながらブラックサレナに肉薄する。

 アキトとて馬鹿ではない、夜天光を近づけないために腰ポットに詰まったミサイルを全弾発射する。そのミサイルを音で確認した北辰は、足と肩のブースターを全開にして回転しながら全てを避ける。全てのミサイルが通過した瞬間、北辰は無意識に夜天光に錫杖を振るわせた。

 めきっ

 潰れる音。

 空になったミサイルポットだった。空になった途端に夜天光に投げつけるようにパージしたのを錫杖で殴ったようだ。

 そして、ブラックサレナが肉薄していた。

はぁぁぁっ!!

 遠距離からの射撃をしても夜天光には当たらないと分かっているアキトは、一瞬の隙さえ見逃すつもりはない。

 両膝にマウントされている電磁レールキャノンと手に持ったマシンガンが火を噴く。もらった、と思った至近距離の射撃は、夜天光の足の裏に装備されたブースターにより上に避けられる。機体が軽い分初速が速い。

 夜天光は腰から二本ナイフを外すと同時に電磁レールキャノンに向かって投げつける。

 きっ!

 奇妙な音がしたと同時に両方の電磁レールキャノンが砕ける。アキトは砕かれる寸前に電磁レールキャノンを外し、爆発の衝撃を殺す。爆風により一瞬だけ視界が悪くなり、慌ててバックブースターを使って状態を逸らすようにブラックサレナは回避行動をとる。

 爆風の中から、錫杖が飛び出してきた。

「ちぃっ!」

 舌打ちをしてからブラックサレナは飛び出してきた錫杖にマシンガンを投げつける。

 炸裂。

 爆風に逆らわないようにしてブラックサレナはそのまま降下する。重なった爆風から夜天光が飛び出してきたのを確認すると、ブラックサレナは漆黒の右腕を構える。

くらえっ!!

 炸裂すると同時に夜天光を目掛けて一直線に右腕が飛んでゆく。ワイヤードフィストは一見使えなさそうに見えるが、場合によっては不意打ちにもってこいの攻撃方法である。

 全速でブラックサレナに接近しようとしていた夜天光は回避を不可能と踏んだのか錫杖で飛んできた腕を殴りつけ、一瞬の内に抜き取ったナイフでワイヤーを切断する。

 その行動は一瞬であったが、その一瞬は隙となる。

 アキトはその瞬間を計って、ブラックサレナに装備されているミサイルを全弾発射、及び生き残った両肩と二の腕に装備されている銃火器を掃射する。 が。

「未熟者が」

 おそらく宇宙屈指のエステバリスライダーでさえ回避不可能の状況を、北辰は一笑に伏せる。

 弾速が早い銃弾を錫杖で振り払ったブラックサレナの右腕を盾にし、さらにナイフを投げつけナイフの小さな面積さえも盾にして僅かな活路を開く。錫杖を振るときの反動を全て生かしながら今度は夜天光が真横に吹き飛ぶかのような加速度で回避運動を行う。再び腰から四本目のナイフを引き抜くと続いて群がってくるミサイル群へ突き刺すかのように投げつける。

 ナイフが先頭のミサイルの先端へ突き刺さる。

 その衝撃により爆発したミサイルは、周りのミサイルを巻き込んで次々と自爆させる。

 そして、ミサイルの爆風を振り切るかのようにブラックサレナが突っ込んできた。左腕を正拳のように構えて。

「北辰っ!!」

「滅!!」

 ブラックサレナが繰り出した拳を叩き潰すかの勢いで、夜天光は錫杖を振るいブラックサレナの左拳を殴る。

 左手に纏った高密度のディストーションフィールドと、錫杖の纏った圧縮されたディストーションフィールドが激突する。火花は散らないが、強力な変異重力磁場によって風景が急速に歪みだす。

 ブラックサレナのコックピットの中で、アキトがにやりと笑った。

 瞬間、ブラックサレナの左肘から火薬が炸裂する。

 二発目のワイヤードフィスト。

 ブラックサレナは一瞬前にブースターをストップして、ワイヤードフィストを叩き込むと同時に逆噴射をかける。左拳には高密度のディストーションフィールドを纏ったままのため、そのまま錫杖に砕かれることはなかったが、夜天光は急激に手応えがなくなったために空振りしたように状態が崩れる。

 アキトの手の甲に描かれたIFSの紋様がより強く輝いた。

 ドゴッ!!

 それに応咆するように本体から離れた腕が爆発した。

 初めから左腕は爆発させるように火薬を詰めていたようだ。

 何かを感じた北辰は一瞬で錫杖を捨てると判断し、夜天光が錫杖から手を離した瞬間に錫杖が爆発しながら砕け散る。過負荷がかかり過ぎたようだ。

 さらに追い討ちをかけるアキトは、ロックオンをせずに火器を乱射する。正確に飛んでくる弾を避けるのは困難ではないが、初めから目標を定めていない弾を避けるのは困難であるからだ。

 錫杖という最大の武器を失った夜天光は、肩の機関砲を乱射しながらブースターを使って回避運動に入る。しかし、流石に夜天光へ数発の弾が当たるが、全てディストーションフィールドに弾かれる。

なっ!?

 想像以上に夜天光のディストーションフィールドが強力だったことにアキトは驚く。これでは残された火器では対抗できないことが証明されたようなものだからだ。

 ディストーションフィールドは重力を固めた壁のようなもので、強固な壁と言うよりも強力なゴムのようなものである。重力壁に当たった攻撃は、ゴムに当たったかの如く外に押し出す力によって攻撃を弾く仕組みとなっている。破るには強力な武器か、ディストーションフィールドを中和するか、もしくは同じ箇所へ連続で銃弾を当てる必要がある。

 だが、今の攻撃により強力な武器で破ることは不可能と判断される。連続で銃弾を撃ち込むだけならばアキトの腕を持ってすれば可能だが、相手が北辰では不可能であろう。

 どすん

 ずん

 ブラックサレナが着地し、暫く遅れてから夜天光が着地する。距離は最初に対峙していたときよりも開いてしまった。

 夜天光は既に両手に最後のナイフを構えている。錫杖は失ったが、機体は完全に無傷。

 一方、ブラックサレナは両腕を失い、度重なる爆風に晒されて機体事態にもダメージが蓄積されている。さらに射撃武器は無駄だと分かったので肩と二の腕の武器を外す。

 形成はアキトの方が不利であった。

 だが、まだ負けたわけではなかった。例えブラックサレナが丸腰であっても、諦める訳にはいかない。そう思えば思う程、体から発せられるナノマシンの輝きが増してゆく。

 勝機は、十分にあるのだ。

 夜天光がナイフを構える。

 遅れてブラックサレナが突撃の準備に入る。

 夜天光に強力なディストーションフィールドがあったのは驚いたが、単純な出力ならば増築装甲のブラックサレナの方が強力である。

「捨て身か……」

「笑止、か?」

「いや、おもしろい」

「……………………行くぞっ!!

 再びブラックサレナが弾けるようにブースターから火を噴く。

 両腕が既にないブラックサレナは体当たりしか手段がなくなったと踏んで、夜天光も応じるように直線的に砂煙を上げながらブラックサレナへ突っ込む。

 

 そして、突如ブラックサレナから白い煙が吹き出る。

 

「なにっ!?」

 初めて北辰が動揺した。

 一瞬にしてブラックサレナを覆い隠すかのように勢いよく白煙が噴出したため、実際にブラックサレナがモニターからロストする。

 正確には、ブラックサレナ自体はこの時点でロストしたことになる。

 突然の出来事に夜天光は加速の勢いを殺すような動作をしてしまった。北辰は機体が故障したのかと思ったが、不覚にもそれが命取りとなる。

 アキトの攻撃はこれからなのだから。

 白煙を切り裂くように飛んできた物体を北辰が確認したときには全てが手遅れであったと悟った。

 飛んできたのは漆黒の機体ではなく……スラッグガンのように細かいミサイルの雨だったのだ

「くっ!」

 格闘用にナイフへ収縮させていたディストーションフィールドを防御壁用に展開して、突如として飛んできたミサイルの雨を防ぐ。

 ……一体どこにミサイルを隠し持っていたのだ!?

 ディストーションフィールドに接触して次々と爆発してゆくミサイルに対して疑問が浮かんだ。だが、戦場において疑問が浮かぶなど思考の隙を持つのは最大の命取りである。

 夜天光のレーダーが一瞬にして狂った。

 ……妨害電波だとっ!?

 IFSを使用して夜天光の外側へ感覚を広げていた北辰にとって、ジャミング弾程厄介なものはない。

「ほくしぃぃぃぃぃぃんっ!!!!」

 アキトの声は、夜天光のすぐ後ろで聞こえた。

 次の瞬間、夜天光の左肩が砕け散る。

 ピンクの色をした、エステバリスカスタムのパンチで

「ぐっ」

 急速反転をしようとした夜天光を押さえつけるようにエステバリスカスタムが夜天光の右肩を反対のディストーションフィールドを纏わせたパンチによって砕きながら押し倒す。

 テンカワ アキトがナデシコAの時代から愛用していた機体は、ブラックサレナの中に詰まっていたのだ。エステバリスカスタムがブラックサレナを装備していたのではない、ブラックサレナの中にエステバリスカスタムが詰まっていたのだ

 ブラックサレナC。

 決戦用に仕上げられた機神の、奥の手である。

「逃がさんっ!!」

 夜天光が下半身部ブースターを使いエステバリスから逃れようとしたのを感じ取ったアキトは、まだパージしていなかったブラックサレナの下半身部分を強制排除する。

 

 ブラックサレナの内側の装甲と、エステバリスの外側の装甲の隙間に無理やり詰め込んでいたミサイルが零距離で夜天光に炸裂した。

 

「隠し玉か」

 先程の白煙から飛び出してきたミサイルは、上半身のパーツを解除すると同時に発射される仕組みだったのか、と、北辰は納得した。

 夜天光の下半身の大半が使用不可能になったと、IFSを通して北辰へ伝えられた。夜天光自体、エステバリスの全推進力を使って火星の地面へ押さえつけられているのでフレームが悲鳴をあげている。

 だが、ここは砂漠であった。

 下が硬い地面ならばエステバリスの推進力のみでも装甲の薄い夜天光を砕く程度は出来るだろう。しかし、砂漠ならば後一歩力が足りない。

 かと言って殴ろうにも腕を振り上げた瞬間、夜天光は逃げられるだろう。下半身は夜天光同様に零距離射撃により逝かれてしまっている。

 それに、色々と無茶苦茶な設計をされているブラックサレナCには、エステバリスカスタムにまで相転移エンジンをつけられなかったためにバッテリーで稼動している。

 もたもたしていると確実にエネルギー切れを起こしてしまう。

 力も、そして時間もない。

 だが、攻撃手段なら残っていた。

 ……ユリカ、ラピス、ルリちゃん、皆ごめんっ!!

 アキトは脳裏に浮かび上がる様々な人々に心の中で謝った。

 

 ユリカは無事だろうか。幸せにすると言っておきながら、結局、何一つしてやれなかった。彼女のために復讐に走り、全てを捨てたのだ。いつも盲目的に自分を信じてくれていた彼女へ、最後に一目会いたいという気持ちは強い。

 

 ラピスは何をやっているのだろうか。北辰を倒すためにリンクは切っていないが、ネルガルのエリナの下へ置いてきた。彼女には血生臭い復讐に付き合わせてしまった。せめて、これからは自分の為に生きて欲しい。

 

 ルリはこんなになってしまったアキトを追っていた。ユリカに会って欲しいと、彼女の言葉にはどれ程心が傾きそうになったか。だが、自分の命が燃え尽きてしまう前に北辰は倒さねばならない。彼女には最後まで苦労をかけた気がする。

 

 他にも、他にも。エステバリス三人娘には二ヶ月前に少しだけ会っている。変わってなかった。ウリバタケさんは相変わらず危ない発明品を作っているのだろうか。メグミちゃんやミナトさんは何をやっているのだろうか。ジュンは幸せにしているだろうか。

 

 本当、俺はナデシコAのメンバーばっかりしか思い出せないや。

 アキトは心の中で苦笑しながら、IFSコンソールの下にあるスイッチを足で蹴り上げるようにして押した。

 その瞬間、エステバリスと夜天光を虹色の光が包みだした。

「これは!?」

「ボソンジャンプの装置さ……旧式の、失敗作だがなっ!!

 驚きの声を上げる北辰に対して、アキトは引き攣ったような笑みを浮かべながら更に夜天光を押さえつける事に専念しだした。

 ドックを出発する前にアカツキ ナガレからの通信があった。

 

 ――エステバリスのコックピットのすぐ近くに面白いのを付けさせといたよ。うちの会社が造ってボソンジャンプ実験に使用してた旧式の装置さ。ま、ほとんど何も分からなかった時代のだからねぇ、100%ランダムジャンプしちゃう自殺機械で処理に困ってたんだよね。君が残りの人生を心中に使うのは勝手だけど、できれば破片一つ残さないで死んでくれよ。――

 

 アカツキは笑いながらそう言っていた。鋭い奴だと思ったが、彼の行為には正直、頭が下がった。

 彼はアキトの寿命がもう一週間もないというのを知っていた。決して顔にはしないが、彼は優しき人であった。それこそ裏の世界に関わらなくて良いほどのやさしさを持った人であった。

 どれ程悩み抜いたのだろう。

 死に行く昔の戦友のために。

 どんどんと膨らんでゆく虹色の光に包まれながら、アキトは今頃ネルガル本社の会長室で茶でも飲んでいるであろうアカツキにそっと心の中で礼を言った。

 ふいに、残ったブースターを最大出力で噴かしていた夜天光の動きが止まった。

「テンカワ アキト……共死にでもするのか」

「ああ、残った俺の寿命、全部貴様に捧げてやろうっ!!」

「その心、見事」

 どこか疲れたような北辰の声。

 ここまで来て、ようやくアキトは違和感を感じた。

 真っ向からの勝負を北辰が受けたのも、狂気と言っても過言でもないあの雰囲気が消えているという事も。

 それでも夜天光を押さえつけるのを止めない。

「言い忘れていたことがある」

「……命乞いなら、とても聞きたいぞ」

 にやりと口元を歪ませる。

 北辰が命乞いをするというのを、どれ程想像したのだろう。命乞いのその言葉こそ、アキトにとっては最高の餞である。

 だが、北辰はまったく違う言葉を紡いだ。

 

「感謝を、するぞ」

 

 一瞬だけ、夜天光を押さえるエステバリスの腕が緩まった。その瞬間で逃げ出すことも出来たはずなのに、北辰はそれをしなかった。

「北……辰?」

「血の盟約により縛り付けられ、自由を奪われ、微かな幸せさえ剥奪され、影となりて外道と化す」

 呟くように話す北辰は、外道でもなく、暗殺者でもなく、狂気を纏った男でもなく、ただの中年の男であった。

 アキトは、自分の人生は地獄だと思っていた。自分の思いなど無視して時代が動く、それを体感させられるだけの人生であったと思っていた。

 ならば、目の前の男はどうだ。

 最後の土壇場で、アキトは鬼に成りきれていなかった。

「血に溺れる事が出来ず、罪のみが我を責める……ああ、テンカワ アキトよ」

 自分の犯した罪。

 アキトは数万の命を奪い、その意識はまさに悪夢である。眠っていても、五感が鈍くなっているにも拘らず鮮明に自分を攻め立てる声が聞こえる。吐きそうになる事もある。

 だが、二年だ。

 その意識に心が潰されそうになったのは、まだ二年だけである。

 目の前の男もそうだとしたら。

 北辰も同じだったら。

 幼少より人を殺めていた、北辰ならば。

 どれ程の悪夢であっただろうか。

 ふいに、夜天光を押さえつけるエステバリスの力が弱まってきた。まるで浮き上がるかのような感覚。

 ジャンプする直前の現象である。

 最後の最後で、土壇場の土壇場で、アキトは自分自身へ疑問が沸き起こっていた。

 俺は何をしてるんだ?

 モニターの北辰は俯いていて表情も分からない。

 鬼に成りきれなかった復讐人と、全てに疲れたかのような外道。

 アキトは熱血漢であった。北辰もまた熱血漢であった。

 両者とも、己の信じた道を進む人間だった。

 似ている。

 似たもの同士だったんだ。

 そう思えた瞬間、一気にバイザー越しの視界がホワイトアウトしだす。

 跳ぶ。

 二度と帰って来れない、ランダムジャンプ。

 

 

「汝のような者に、我は仕えたかったぞ……」

 

 

 何故か、彼の言葉が耳に残った。



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 








 例えば、こんな世界がある。




 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまーっ!!」

 玄関を勢い良く開いて、私は声高々にそう言った。

 だけど、意外にも誰の返事も返ってこない。

「あれ〜、お母さん、帰って来てると思ったんだけどなぁ」

 周りを見渡しても特に何も見当たらない。いつもの通り、小さい間取りの見慣れた部屋。

 ちょっとだけ落胆の溜息を吐いてから、私は背負っていたランドセルを降ろしてから靴を脱ぐ。通学用の靴だから別に気に入ってないんだよね、これ。

 靴を脱ぎ終わってから顔を上げると、髪の長い女の人が目の前にいた。

 ………

「アキナ〜!!おかえり〜〜っ!!」

「うひゃぁぁっ!お母さんっ!!」

 どこから沸いたの!?

 私の悲鳴などお構いなしに、いきなり出現したお母さんは私に飛びついて抱きつく。その反動で押し倒されるような形で体が大きく傾いたけど、どうにか持ち堪える。

 腰がごきって悲鳴あげたけど。

 とっさの事態には慣れてるけどさ、お母さんのおかげで。でも体鍛えてて良かったー。

 むしろ、鍛えてなかったらお母さんに押しつぶされるし。

 お母さんはこっちの苦しい姿勢など気が付いていないのか――気付いてないんだろうけどさ――遠慮なしに思いっきり頬擦りをする。

「ちょちょっ!お母さん、どっから!?」

「隠れてたー♪」

 子供かいっ!?

 上体を無理やり起こして姿勢を安定させてもなお、お母さんは離れようとしない。本当に、タッチコミニケーションが好きなんだよね。

 ただ子煩悩なだけかも。

 ……しまった、否定できない。

「お、お母さんっ、とりあえず離れてよっ」

「なんでー?」

「重いから」

「………」

 

 

 20分も理不尽に怒られた。

 

 

「そう言えば、お仕事で色々あるって言ってたけど、何だったの?」

 ようやく説教タイムが終わって、今時珍しい畳が敷き詰まっている部屋で安息の一息をついてから、ふと、お母さんが朝に言ってた言葉を思い出した。

 私お手製の朝ご飯――お母さんは料理が壊滅的だから――を食べてるときに、お母さんが『今日でお仕事変わっちゃうんだよねー』と唐突に言った。

 何の前触れなく。

 とても誤解しちゃうような言葉を。

 素敵なほどの笑顔で。

 ……本気で転職するのかと焦ったよ、ありゃ。

 ちなみ、お母さんは一見ほのぼのしている天然ボケの人だけど――実際そうだけど――軍人だったりする。いまだに不思議でならないけど、軍人の中でもかなり偉い人らしい。

 お母さんの仕事っぷりを見てみたいよ、すんごく。

 一番驚くのが、今じゃ歴史の教科書にも出てくるような伝説の『ナデシコA』という機動戦艦の艦長をしていたってこと。

 ナデシコAを立派に指揮し、その後お父さんと結婚。そして、えっと、名前なんだったか……なんとかって言う反乱軍に捕まって一時死亡扱いされちゃってから軍に入隊。

 ……改めて考えると、お母さんって波乱万丈な人生を満喫してると思うよ、うん。

 なんだか一人で納得している私の隣に座ってたお母さんが、本当に何も考えていないかのような顔で私の質問に答えてくれた。

「うん。今日付けで艦長降ろされちゃった」

「へぇ……」

 ……………………はい?

 その場のノリで軽く受け流した言葉を改めて思い返してみると、物凄く不穏な響きがあった。

「あの、お母さん?」

「うん?」

 にこにこ。

 何が嬉しいのか、いつものように笑っているお母さんの方を向きながら私は質問をした。

「艦長、降ろされた?」

「うん」

「……クビ?」

「うん。艦長さんクビになっちゃった♪」

 間。

 完璧に私は硬直した。

「な、ななななっ!!」

「どうしたの、アキナ?」

「どうもこうも……クビって、これからの生活どうすんの!?

 娘が生活の心配をしている図。

 歳の割にはとても所帯染みてると思うよ、私。12歳なのに。

 じゃなくって。

 いきなりお母さんは職なしになりましたって?ちょっと待ちなさいお母さん。

 確かにお母さんは天然ボケ世間知らず生活能力が欠如して基本的にダメっぽそうな人だって言うのは重々理解してるし、否定しないけどさ。この世を渡るの最終的にお金なんだよ!?

 ……なんか、言ってて若さが失われてく気がする。

 お母さんは私の言葉を理解してるのかしてないのか、きょとんとして私を見つめる。

「どうするって?」

「どうするって……だから、お母さんが艦長クビになっちゃったらお給料が入らないでしょ!?」

「なっちゃったら、じゃなくて、なったんだけど」

それは置いといて。艦長は高給取りだからヘソクリ貯金はいっぱいあるけどさ、お金なくなったら困るでしょ!?」

「困るね〜」

「でしょ?ただでさえお父さんが……」

 お父さん。

 その単語を言った途端に、ニコニコと笑っていたお母さんの顔が一瞬で曇った。

 なんだか色々と失言を言ったような気もするけど、たぶん最大のタブーを踏んでしまった。少なくとも、お母さんにとっては。

 私は、お父さんを知らない。

 顔も見たことがない。

 小さい時にお母さんに色々聞いたけど、決まってお母さんは困ったような、悲しそうな、それでいて懐かしそうな、凄く複雑な表情をしながら名前すら教えてくれなかった。

 いや、違う。ずっと前に、少しだけ語ってくれた。

お父さんの事教えないのはね、アキナを困らせようとしてるんじゃないんだよ

 それでも、それを語るお母さんは悲しそうな顔をしている。

お父さんはね、すっごく優しい人だったんだ。私の事、いっぱい、いーっぱい好きな人だったよ。アキナの事だって絶対に好き

 嘘だ。そう思っても口には出さなかった。

でもね、教えちゃいけないの。アキナがもっともっと大きくなって、大人になるまで、絶対喋っちゃダメなんだ

 そう言ってから、お母さんは私を抱きしめた。いつものように力一杯ではなく、優しく、包み込むように。

 お母さんが泣いてるのを見たのは、それが初めて。

 それから、私は一度もお父さんのことを言わなくなった。

 たった今まで。

「あ……その……」

 顔を伏せてしまったお母さんに向かって、私は言葉というのが出てこなかった。

 生きているのか死んでいるのかさえ分からない人の事なんて、いくらでも言える。でも、お母さんにとって大切な人を、わざわざ傷つけるなんて出来ない。

 気まずい。

 だけど、お母さんはいきなり笑顔で顔を上げた。

「ねぇアキナ?」

「え、なに?」

「なんか勘違いしてるようだから言っとくね」

「うん」

 先程の雰囲気など嘘であったかのような笑顔。逆に怪しくも思っちゃうけど、この際気にしない事にした。

「私、艦長降ろされちゃったけど、軍はクビになってないよ」

「……………は?」

 にへら〜っと言うのは我が母。

「本日よりテンカワ ユリカ大佐は宇宙軍機動戦艦部隊総司令となりました、ぶいっ

 目の前にピースサインを出しながら堂々と言ってのけた。

 なんら悪びれる様子もなく。

 自信満々に。

 これでもかと言う程に。

 満面の笑みで。

「ふ……ふふ……」

 一方、私はつい口から低い笑い声がでてきた。

「あ、あれれ?アキナ?艦長さんの上司になったんだよー、今までよりも偉いんだぞー。もしもーし、聞いてるー?」

「聞いてる……よーく聞こえちゃってる」

 そこで私は思いっきり息を吸った。

「紛らわしい言い方するなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 夏も夏。

 これから夏休みが始まるって日の、とっても嫌な日常の一コマ。

 

 

 ちなみに、通知表の内容で30分は有難くも足の痺れる言葉を頂いた。

 

 

 そして、嬉しい嬉しい夏休み。

 明日から何をしようかと胸を弾ませながら、私は押入れの中を漁っていた。

 目下捜索するべきは来週友達と行く約束をしているキャンプの用具かと。

 来年からは中等部に上がって大変になるだろうからな〜。

 私は色々と詰まってる押入れの中から目当ての物を探して発掘作業を続ける。なんと言うか、これは二世紀ぐらい前までの化石発掘作業みたい。

 ごそごそ、ごそごそ

「見つからないなぁ」

 一人ボヤキながら手は休めない。

 しばらくしたら、押入れの隅まで辿り着いた。どうやら違う押入れに仕舞いこんだのかもしれない。やれやれ。

 Uターンをしようかと思い、体を後ろに下げようとして、ふと腕に何か当たった。

「?」

 小さな薄っぺらい箱だった。

 何だろ?

 私は特に何とは思わないでその箱を持ち上げて、そのまま後退して押入れの荷物トンネルから脱出する。体に埃が付いちゃったけど、洗えばいっか。

「さ、オープーン」

 少しだけ期待しながら箱を開ける。

 すると、中には黒い布が丁寧に折り畳まれて入っていた。

 ……違う。

 その布を手にとって、箱から引きずり出してみた。結構ずっしりしていて、その割には意外と薄い布。手触りがつるつるしていて気持ちいい。

 てか、これ、布じゃなくてマントだ。

「わ、わわわ、かっこいー」

 そのマントを広げて確認する。

 うん、かっこいい。なんか漫画とかに出てきそう。

 主に悪役で。

 それを手に持ちながら数瞬だけ私は考え込んで、それからすくりと立ち上がる。

 持っていたマントを目の前で広げてみると、私よりずっと大人の人が着ていたのが分かる。幅も広いし、内側のポケットの位置がずっと下。それ以前に背伸びしながら腕を思いっきり上に上げないとマントが床についてしまう。

 試しに羽織ってみた。

 ……暑い……

 冬だったら良いかもしれないけど、こんなの夏に羽織ってたら神経おかしいんじゃないのかと思うね。

 私は薄くて重いマントを引きずりながら、近くにあった姿見の鏡の前に立ってみた。

 当たり前だけど、鏡の中には黒いマントを着た私が映っていた。

 銀色の髪と金色の目。見紛う事なき、私の姿。

 セミロング程度に伸ばしてるこの髪は染めてないし、目だってカラーコンタクトじゃない。

 この色は私の地色。

 お母さんの青みがかった目と髪の色からは程々遠いけど、別に大して気にしてるわけじゃない。色自体は周りの人たちから変な目で見られることはあるけど、今時髪の毛染めてる初等部生徒なんて沢山いるし、なにより私はこの色が好きだったりする。

 よく分からないけど、劣性遺伝がなんとかってお母さんが言ってた。どうやらこれは祖父母からの色、らしい。

 現実に、お母さんの妹のルリさんも私と同じ髪と目の色をしてる。

 でも、ルリさんってお母さんとは血が繋がってないらしいけど……これ以上はなんだか複雑だから全然覚えてない。

 あ、でも昔、お母さんが私を小さなパーティーに連れて行ってくれたとき、お母さんの友達がしかめっ面をして色々言ってた。

 おりじなるなのましん、とか、いせき、とか、ましんちゃいるど、とか。

 全然分かんなかったけでさ。

 くっ、なんだか自分が馬鹿だと遠回しに言われてる気分。

 ……それはともかく。

 鏡に映ってた自分の姿を見ながら、私はその場でくるりと一回転をする。マントが邪魔で上手く出来なかったけど、回った瞬間だけふわりとマントが浮き上がるのを見るととても格好よく見える。

 うん、まるであの伝説の悪党みたいだ。

 名前なんだっけ……確か……

 The promce of darkness

 そう、これだ。

 私が生まれる前に連続で四つものコロニーを破壊して沢山の人の命を奪った大悪党。人間の中ではそれはもう最低最悪な人。

 あ、でも、あんなのに似てるって……嫌だなぁ。

 心内で嫌な顔をしてから、私はマントを少し持ち上げ、改めてしげしげと見る。

 これって誰のだろ?

 お母さんかな……?

 いや、それは絶対にない。ていうか、絶対に似合わないって、こんなの。見るからに怪しさ爆発じゃん。

 一瞬だけ、このマントを羽織っているお母さんを想像してみて即座にその考えを却下した。

 ふいと、マントの内ポケットに何か入ってた。

「何だろ?」

 そう一人で呟いてからポケットに入っていたのを取り出した。

 出てきたのは、蒼い石と、よく分からない小さな機械。

「これって……チューリップクリスタル?」

 蒼い石には見覚えがあった。確か学校の科学室に展示されてたような気がしないでもない。

 でも、何でこんな所にチューリップクリスタルがあるんだろ?

 お母さんは世界的にも稀な先天性のA級ジャンパーだって聞いてる。

 って事は、このマントってお母さんの?あの天然ボケの?

 似合ってないよ〜。

 

「アキナッ!!」

 

 心臓が飛び出るかと思った。

 いきなり真後ろからお母さんの大声がして、私は反射的に肩をすくめてから慌てて振り返る。

 振り返った先には、珍しく酷く狼狽しているお母さんがいた。

 虹色の光に包まれて。

 

「うぇえいっ!!!???」

 

 何で!?じゃなくて、いつから!?

 むしろこれ、お母さんが虹色の光に包まれてるんじゃなくって…… 

 私が包まれちゃってません!?

 なななななななな、何事ぉぉぉぉぉぉ!?

「アキナッ!落ち着いてっ!!」

 んな無茶な!

「ここに居る事だけ考えてっ!」

 ここに?

 ええええっと、考えてって。そうだ、確か学校で習ったよね、ボソンジャンするときジャンパーは行き先をイメージするんだっけ。だからジャンプをキャンセルするには現在位置を行き先にすれば良い訳であって……

 って、ジャンパーかどうかも分からないのに出来るかぁっ!

 てか、シャトルのジャンプもしたことないんだぞ、私は!!

 頭の中がごちゃごちゃしていて、何も考えられなくなってきた。

 唐突に、体に微かな浮遊感。

 慌てまくってる私の視界の片隅に、お母さんがこっちに走ってくるのが見えた。手を伸ばして。

 私も反射的に手を伸ばそうとした。

 伸ばそうとして。

 間に合わなかった。

 お母さんがあと少しで触れる距離で、私があと少しで手を伸ばせる距離で、とんでもない浮遊感が襲ってきた。

 ランダムジャンプ……!!

 最悪な単語が頭の中を過ぎる。

 その瞬間、視界が真っ白になった。

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 お母さんの悲鳴が聞こえた。

 最後の最後で、私は飛んだ親不幸な事をしちゃったみたいだった。夏休みだって始まったばっかりなのに。キャンプだってあるのに。

 こんな、こんな、こんな……

 

 

 お父さんっ!!

 

 

 

―― つづく ――


 あとがき

 こんにちは、はじめまして、クロガネです。

 文章能力低いのによく書けたなと、自分自身が驚いていたり。それはともかく。

 まぁ、分類はよくある逆行物です。ただし、最強じゃありませんけどね。

 最初考えたとき、北辰は思いっきり変態外道にしようかと思っていましたがプロットの時点で頓挫。しかたなく中途半端に善人っぽくしました。

 ちなみに、後半のアキナと言うキャラクター、しばらく出てきません。厳密に言うと違うのですが……。

 それでは、次の話に続きます。

 

 

 

代理人の感想

ふむ。

ふむふむふむふむふーむふむ。

ふむふむふむっ!

 

期待度A。

 

以上、感想終り!(爆)