公園には深々と雪が降り積もっていた…そんな所に集まる影が4つ…どうやら内緒話の最中のようだ。
「…な訳なんだが…どうする?」
「話は分かったが…しかし、なんでこんな所を集合場所にしたんだ?寒いぞ?」
「この状況なら誰かに聞かれる危険性はないだろ?すぐだから我慢してくれ…話を戻すぞ」
「…お姫様たちを怒らせるのは得策じゃないね」
「そうなんだ、だけど…」
「…当日までは隠しておくべきでしょうね」
「そうだな…そこでだ、具体的には……という訳だ」
「「「了解!!」」」
「では、各人解散としますか…」
そんな呟きを残すと皆、闇にまぎれるように消えていった…
証言1
「ぽややんの様子?…そういえば変やったかな?編み物が忙しくて覚えてへんわ」
速水厚志は今、猛烈に忙しかった。
なぜならば、今日中に仕上げなければならない書類が山のようにあるのだ。しかし、量が多い…まるで二・三日分のような量だ
いつもなら、加藤も手伝って効率よく処理していくのだが今日は仕事を半ば放棄して編み物に夢中になっている…おそらく、刈谷のためのプレゼントなので特に注意もしなかったのだが…間違いだったようだ。
しかしなぜこんなにも急いでいるのか?それは…秘密だ…ただ彼の
「急がないと…間に合わないと皆に申し訳ないな」
という呟きにすべては集約されている
証言2
「その日のアキトさんは明らかに変でした。なにか、鬼気迫る感じで仕事をこなしていました」
12月22日、明後日にクリスマス・イブが迫りピースランドでも皆、パーティーの準備に余念が無い。
しかし、王様たるアキトにはいろいろとすることがあるのだ、忙しいのだ。よって仕事中の筈だった。
「アキトさん!明日のパーティーで着るドレスなんですが…」
執務中と書かれたプレートも気にしないでルリが中に入ろうとすると鍵が掛かっているのか、扉はうんともすんとも言わない。
しかしそんな事では諦めずに勝手に鍵を解除して中に入ってみると…誰もいなかった。
「あ、アキトさん?どこですか?」
混乱しているのかクローゼットの中などいる訳が無いところまで探して、ふと机の上を見ると
「二・三日出かけます。心配しないでください」
とだけ書かれた紙がのっているだけだった。(ちなみに仕事は全部片付いているようだ)
「た、大変です!アキトさんがいなくなりました」
ピースランドは大騒ぎになってしまった
証言3
「シンジ?そういえばやけにそわそわしてたわね」
彼は前の二人とは違って、まだ学生なので仕事はない…はずなのだが、別の意味で忙しいようだ。
「綾波!リースはここに飾って!アスカ〜ツリーはそこじゃないって!」
クリスマスの飾り付けの真っ最中のようだ。しかし、恋人達は大分うきうきしながら飾り付けをしているのに対し彼はあまり乗り気ではないように見える。
「シンジ!何ぼ〜っとしてんのよ。これはどこにおくのよ」
「え?う〜ん、アスカに任せるよ、それは」
他にも指示をだすとシンジは部屋に入っていってしまったが皆、飾り付けに夢中でそれには気付かなかった。
10分後
用意もほとんど終わったところでシンジがいない事に気がついたので部屋に行ってみると…いなかった。ついでに言うと壁に立てかけてあったはずのチェロもなくなっている
「ちょ、た、大変よ〜シンジがいないわ」
「碇君…どこかに出かけたのかしら?」
「それだったら誰か気付くでしょ?それにチェロが無いわ、あんな大きな物持って出歩かないわよ!ん、これは…」
やっぱり紙に
「ちょっと出かけてきます。」
とだけ書かれていた。
こうしてシンジもチェロと共にいなくなってしまった
証言4
「慶一郎?やけに急いで出て行きおったぞ」
いつもの様に境内でケンカをしていた静馬と涼子を仲裁してクリスマスの準備の手伝いをさせ、もの凄いスピードで飾り付けを済ませていく様子はなかなか壮観な物だったが…いかんせん早すぎる、「何か用事でもあるのだろうか」と二人が思い始めた頃、突然「二人とも道場の雑巾がけを頼む」と言い残してどこかに行ってしまった。
慶一郎の向かった先、それは鬼塚家の主である鉄斎の所だった
「鉄斎先生、すいませんが2・3日家を空ける事になりそうなのでその間の食事を頼みます」
「うむ、それはいいが…急にどうした?」
「はぁ、まぁいろいろありまして…では、お願いします」
というとどこかに行ってしまった。
某所
「こんにちは、アキトさん…僕が最後でしたか?」
「やぁ、シンジ君。よし、これで全員揃ったね。じゃあ、行こうか」
「どこでやるんです?」
「着けば分かるよ。ヘルプも一人頼んである」
そんな会話を交わしながら、どこかに行ってしまった…
12月24日・クリスマスイブ
奥様方はある店の前まで来ていた。
「本当にここにアキトがいるの?」
「えぇ、信頼できる筋からの情報ですから…では、行きま…」
とまで言ったところで何かが屋根から飛び降りてきた。
「すいませんがルリさん…今は中に入れる訳には行きません」
「ハーリー君?何でこんなところにいるんです?」
そう、降りてきたのは「不死身の体を持つ男」マキビハリだった、しかし何でわざわざ屋根から下りてくるのか理解に苦しむ行動だ。
「アキトさんに周囲の監視を頼まれてましたから…他の方々もすいませんが後…」
なぜかインカムを使って誰かと話をすると
「後1時間は中に入れる訳にはいかないそうなので、どこかで時間をつぶしてきてください」
なぜ1時間なのか?とかなんで中に入れないんだ?という質問をなんとかやり過ごして、ほ、っと息をつくハーリー君。
さっきから他の世界の奥様方も同じ様に追い払っていたために少々疲れていたのだ…毎回屋根に上って…
しかしなぜ1時間なのか?それは…店内がこんな有様だからです
「シンジ君、チキンは?」
「できました、後は…」
「南雲さん、ケーキはこんなもんでいいですかね?」
「ん?…いいんじゃないか?速水、テーブルクロスは?」
「津田沼君に聞いてくだいさいよ!彼が持ち主なんですから」
こんな感じで一種の戦争になっていたためだった…ユリカ達を入れたらまず「手伝う」なんて言って毒を造るに決まっているためにハーリーが雪の中、監視をしていたのだ。
1時間後
奥様連合はまだ開かないのかとブーブー言っていた。
「待ってくださいって!…はい、はい…そうですか。わかりました。皆さん、用意が出来たそうです。中にどうぞ」
ハーリーの声なんか、もはや聞いてはいないだろう奥様方に向かって一応最後に「店を壊さないように」と言うと彼も中に入っていった。
店の中に入ると
「「「「メリークリスマス」」」」
と、はしゃぎながらクラッカーを鳴らす4人の姿…そして料理の数々…それだけで今回の趣向が分かろうというものだ
なにも言わずにまた急にいなくなったので皆、最初は怒るつもりだったのだがこんなもてなしをされては気迫をそがれるというのもだろう…その点は考えてやっているのだろうけど。
店の中の料理の数々はそれは見事なものだったという…均整が無かったが(洋・中・デザート)…まぁ、各世界の名料理人の合作だから不味いはずは無かったのだが…(ちなみにラーメンは頼めばアキトが目の前で作ってくれるし、ケーキに関しては速水と南雲先生の合作。そして店の主人の方針でキノコ料理はなぜか一切無い)
そんなこんなでクリスマスの夜は更けていく…
余談になるがこの後、アキト達にはののみ等のちびっこの枕元に「プレゼントをそっと置いておく」という大仕事が待っている…実際にはこれが一番大変なのかもしれないが…
あとがき
…なんか、実際のクリスマスの風景が全然無いですね…キャラが一人歩きしすぎました…反省
代理人の個人的な感想
ん〜〜〜〜〜〜〜〜〜と。
ほのぼのものにしたいんでしょうか?
だとするなら「お客さん」達の喜ぶ様子とか、和気あいあいと進むパーティの様子とか。
そんなものを描写せずにどうする、って感じなんですが。