黒き貴公子と赤き戦士

第５話：赤き星への道筋を




「テンカワ、ちょっと来て欲しい。」
厨房の後片付けを終えて食堂を出るとゴートさんとプロスさん、そしてリョーコちゃんが待っていた。

「何の用かと・・・・聞くまでもなさそうですね。
　大気圏での出撃とサツキミドリでの戦闘ですね？」

正直、大気圏での戦闘で来るとは思っていた。
あそこまでやらかしたからなぁ・・・

ミサイルの合間を掻い潜り、ランスと言った男と共に縦横無尽に暴れまわった。
サツキミドリでも一般のライダーよりも上回った働きをしすぎた。

それに関しても問い詰める気であろう。
誰も居ない個室に案内された。

「いやぁ・・・戦闘記録を拝見させてもらいましたが、
　大したもの、というのを越えてますな。」

プロスさんがいつも通りの表情ではあるがその影を見過ごさなかった。


「全く信じられん、こんなのは素人には無理な事だ。
　単刀直入に言う、テンカワ、そしてスバル、お前ら二人は何者だ？
　テンカワのような操縦技術を持った者が普通は居ない、居る筈がない！
　そんな技術を持ったお前、そしてその知り合いのお前もただものではあるまい。」

ゴートさんも表情はいつも通りではあるが警戒しているのがわかる。
だが、それより抱いている小さなゴートさんらしき人形が気になるが・・・


「その前にそのゴートさんが持ってるその人形は何ですか？」（汗）
傍らのリョーコちゃんも気味悪がっている。


「むっ、これか？これは我が神より頂いた【初期ゴート君人形】だ。」


「し、初期ですか・・・」

・・・・・少し頭痛がしてきた。（滝汗）
プロスさんも頭が痛そうにしている。
リョーコちゃんは呆れかえっていた。


「うむ、お前達もほしい？
　先日、起きると我が傍らにこの人形があり頭の中に我が神が言った。
　【ゴートよ、この人形を作り、そして他人に授けよ。】とな。」


どんな神様なんだか・・・・
これについては以後聞かない事にしよう。








「とりあえず脱線はそこまで、本題に入りましょう。」

収拾がつかなくなりそうな状況をプロスさんが止めた。
このまま誤魔化せればどれほど楽か・・・・






はい、そこのゴートさん、恨めしそうな目を俺に向けないで下さい。

怖いし、俺のせいじゃありませんから。
お願いですから訴えるならプロスさんにしてください。



さて、じゃあ考えた言い訳を言わせてもらいますか。

「実は俺が火星出身だという事は２人とももちろん知ってますよね？」

ていうかプロスさんに出航時に調べられているがな。

「えぇ、ゴート君にも話してありますよ。」

いつも通りの表情だが、その目には怖い物がありますよプロスさん。

「テンカワと聞けばたぶんプロスさんたちには見当はついてますよね、火星で
　死んだテンカワ夫妻と聞けば。」

「あぁ、お前があのテンカワ夫妻の息子だとわかった。
　だが、それが何の関係があるんだ？」

「俺の両親のおかげってやつですよ。
　火星で必死に俺は戦闘訓練をさせられた。
　つまり俺の両親からこんな戦闘能力をもらったんですよ、護身用にってね。」

少し俯く。
なんとなくだがこのほうがいいかと思ったからだ。
リョーコちゃんも辛そうな顔してくれているのはありがたい。

「ほほう・・・・テンカワ夫妻が・・・」

プロスさんが呟く。
彼にはこの言い分が果たして通じているのか・・・？

「ふむ、２人とも優秀な方達でしたからなぁ。
　自分の身は自分で守れというのをテンカワさんに教えたかったのでしょうかねぇ・・・
　彼らはネルガルでも重要な方々、その息子のテンカワさんに何かあってはと思ったのでしょう。」

・・・・どうも騙されたという感じはしないが一応この場は見過ごしてくれそうだな。

「ふむ、ではテンカワさんにはコックとパイロットを兼任してもらいましょう。
　いろいろとパイロットは多いほうが安全ですしね。」

・・・さすがはプロスさんか。（汗）
こうして俺は前回と同じくパイロットとコックの両方をすることとなった。
う〜ん・・・・こりゃ騙せなかったようだな。














「そりゃ騙せませんよアキトさん。」

「うぉ！？ル、ルリちゃん！？」













・・・・・・あれ？
ふとブリッジから帰り何気なく艦内の夜の散歩をしてるとトレーニングルームに誰かいます。


「・・・・・・こんな時間に誰だろ？」

私は不思議に思い覗いてみるとそこには
熱心にトレーニングをするアキトさんの姿があった。
その表情は真剣そのもので声をかけ辛くなり私はそこから覗くことしかできません。


「あれ？メグミちゃん、どうしたの？こんなとこで。」

気付かれた私はアキトさんの横に行き、邪魔にならないように座りました。


「いえ、単なる散歩です。
　アキトさんこそ、なんでトレーニングなんてしてるんです？
　しかもこんな夜遅くに・・・・・・」


「いやさぁ、昼間は昼間でコックとして忙しいからね。
　トレーニングは夜しかできないんだよねぇ・・・
　理由については・・・まぁやっぱりナデシコを守る為だね、うん。」

なんか自分にも言ってるように見えましたけどそこがアキトさんらしいですね。
うん、私はそう思う。


「凄いんですねアキトさんは・・・・・
　私にはそんな風に誰かや何かを自分の身で守る事なんてできませんよ。」

本当に私は凄いと思っていた。
そして逆に私は守られているだけの存在では無いかと思ってしまう。

凄い力を持ったコックさん。
単なる通信士。

私はやっぱり守られているだけなのかなぁ・・・


「でもね、メグミちゃん。
　俺は自分だけの為にはこんなことはできないし、する気も起きないと思う。
　みんなが居てくれるから俺はこうしてみんなのために力をつけることができる。
　それでしか俺はみんなのためになることはできない。
　メグミちゃんだって通信士としてみんなをしっかり守ってるじゃないか。」

「え・・・？」

「俺はそう思うよ。
　パイロットのガイやリョーコちゃん、
　艦長のユリカ、副長のジュン、操舵のミナトさん
　オペレーターのルリちゃん、整備のウリバタケさん
　食堂のホウメイさんたち・・・・・・
　みんなこの船を守ってこの船の人を守って戦ってると思う。
　自分にできることで。」

自分にできること・・・

私にしかできないこと・・・


「俺は少なからずそう思ってる。」


そんなアキトさんの笑顔を私は見れません。

だって眩しすぎるんです。

「そうですね、私にしかできないこと、通信士としての私の仕事、きちんとしなくっちゃ。
　それでいいんですよね、アキトさん。」

私は俯いたままそう力強く自分にも向けて言った。

そうよ、私にはまだまだできることがある。

アキトさんにはアキトさんのできること。
私には私ができることがある。

それをやりとげなくちゃ・・・



「ありがとう、アキトさん。
　おかげで元気が沸きました。」

アキトさんに向けてお礼の意味を込めて頭を下げる。
アキトさんは照れたように頬をかきながら

「よかった、元気になってくれたようだね。」

と言った。

やっぱりアキトさんは素敵です。





でもアキトさん、そんなあなたをどうして私は何かに耐えてるように見えてしまうんでしょうか？

私の錯覚、気の違いだと思いたいですけど・・・



アキトさん、あなたは何に耐えてるんです？

私は・・・・・・あなたの力になりたいです。












「アキト〜アキトはどこぉ〜！！！」







「ユリカ〜！！！どこにいるんだ〜！？は、はなしがあったのにいない・・・」












「憐れですね二人とも。」
「あ、あぁ・・・本当に憐れだな。」（ルリ、こえぇよその顔・・・）

（くっ、遂にメグミさんを落としましたねアキトさん・・・
　これは後でよく問い詰めないといけませんね・・・）

（ルリがここまで怒ってるって事はテンカワ関係か？
　まさか誰か落としたってんじゃ・・・）

















「ふぇっくしょん！！！
　だ、誰か俺の噂でもしてるのか・・・？」








　









「ルリちゃ〜ん・・・暇。」

艦長、もう少し艦長としての自覚持ったほうがいいですよ？
そういえばこの時期は忙しくてだれてましたね。

はぁっ、今ブリッジにいるのは私と艦長とメグミさんだけ。

他の方は暇のあまりどっかに行っちゃいました・・・
というか、逃げられた？
私に艦長押し付けて逃げたんですか？






・・・・・・まぁジュンさんは違いますね、確実に。

大方、人生の先輩の人たちに女性の落としかたでも教わっているんでしょう。

「ルリちゃ〜ん？どうしたのぉ？」

「いえ、なんでもないです艦長。
　・・・・・・そろそろですね。」

「何がかな、ルリちゃん？」




「ちわ〜っす、出前届けに来ましたってブリッジほとんど人居ないし・・・」

「あ、アキト！！！」
「アキトさん！！！」

時間にして８分ピッタリ。
私の目の前にアキトさんお手製のオムライスが届きました。

アキトさんの情熱が篭った・・・


「お〜い、ルリちゃん？
　どうしたの？」

「ルリちゃんは考え事をしてるだけだよ。
　それよりアキト〜私全然アキトに会えなくて寂しかったの〜
　ね、暇だからこれからどこかいこっ！」

「あ〜ずるいです艦長！
　アキトさんは私とヴァーチャルルームに行くんです！！！」


「「・・・・・・・・・」」


「あ、あのさ・・・ここじゃなんだからどっか違う所で・・・」

「うん、じゃあアキトの部屋で・・・」

「いぃ！？いや俺まだ食堂で仕事が・・・」

「そうですよ艦長！アキトさんを困らせちゃ駄目です！」

「「・・・・・・・・・」」（怒）

「と、とりあえず食堂に行こう、ね？」













・・・・・・・・・・はっ！
あ、私は何を・・・？

あれ？皆さんどこに行ったんですか！？

ブリッジには何時の間にか私一人でした。

・・・・・・・・・・・・・・なんだか凄い疎外感を感じます。（怒）

アキトさん、後で御説教をしてあげます。








「・・・なんだ？今の悪寒は・・・あぁ！２人ともそう睨みあわないで。
　なんでこの２人睨みあってんだよ・・・」















「あ、テンカワ、ちょっといいか？」

なんとか仕事を終えてユリカとメグミちゃんから逃れると廊下でたまたまリョーコちゃんと会った。
その表情は何かを悩んでいる様子だった。
どうしたんだろうか？

「あぁ、全然まったく。
　じゃあ展望室で話そうか。」

「あぁ。」





「で、どうしたんだいリョーコちゃん。
　何かを悩んでるようだけど・・・」

「・・・・・・あのな、テンカワ。
　嘘つかずに言ってくれよ。
　俺ってさ、テンカワの役にたってるのかな・・・」

「え？」

「・・・昨日、たまたま夜に聞いちまったんだ、
　テンカワと・・・」

「メグミちゃんとの話を聞いたと？
　でもそれだったらなんでそんな事を・・・」

「俺ができることはエステバリスに乗る事だけだ。
　でも、お前より正直うまくはない。
　俺はお前みたく料理も上手くできない・・・
　なぁテンカワ、俺は本当に役にたってるのか？」

正直驚いた。
目の前のリョーコちゃんには全くいつもの調子が感じられない。
俯いているその表情はわからないが見当はつく。
ここまで彼女を落ち込ませるとは・・・

「リョーコちゃん、元気を出して。
　俺やみんなはリョーコちゃんが役立たずなんて思ってないさ。」

「・・・・・・」

「俺やリョーコちゃん、ガイ、ヒカルちゃん、イズミさん・・・
　エステバリスに乗って一つでもナデシコへの危険を減らすのが俺達の役目だろ？
　俺がいくら力を持っていても守れるものは限られる。
　俺は人間だ、ミスもするし、力が及ばない時もある。
　でも、みんながいてくれればなんとかなるさ。
　それが仲間、じゃないのかなぁ・・・」

「・・・仲間・・・」

リョーコちゃんが顔を上げた。
その瞳は少し赤かった。

「あぁ、俺はあの時、ユリカが攫われて、遺跡に融合された時、何もできなかった。
　ただただ見てるだけだった・・・」

「それは・・・」

「仕方がない、だろ？
　俺は無力だったから。
　でもね、気付いたんだ。
　結局俺は力をつけても一人じゃ無力だってことにね。
　だからアカツキや月臣、ラピス達に手伝ってもらった。
　でもそれでユリカを助けて終わりだったんだ。
　俺はそこで己の作ってきた屍の山を見なくてはいけない、
　己の罪を見続けてなくてはいけない。
　そんな中に仲間も、ユリカも共に行かせる訳にはいかなかった・・・」

「テンカワ・・・」

「ごめん、個人的な事言い過ぎたね。
　だからさリョーコちゃん、
　メグミちゃんにも言った通りリョーコちゃんにもできることはたくさんある。
　俺なんかが全然できないことだってあるさ。
　リョーコちゃん、まだまだナデシコは出航したばかりだよ。
　この旅の中で見つけられるさ、リョーコちゃんができること、
　リョーコちゃんしかできないことを。」

「・・・そうだな、俺は俺のできることをすればいいんだよな。
　わりぃなテンカワ、変なこと言っちまって。」

目を腕で擦って笑ってリョーコちゃんは答えてくれた。
よかった、と思う。
俺は昔の自分を垣間見た気がしたから・・・




過去の俺か・・・


俺はここで絶対に歴史を変えてみせる。
あの時の無力な思いだけを引き摺っていくわけにはいかない。

俺にはまだやれることが残っている。
やるべきことが残っている。

リョーコちゃん、俺は絶対にナデシコを守ってみせるよ。

たとえ自分の命を失ってでも。


「どうした？テンカワ。」

「ん、いやなんでもないよ。
　さて、部屋に帰る？」

「・・・もうちょっとここで一緒にいてくれないか？」

「・・・了解、付き合うよ。」

俺とリョーコちゃんはその後１０分ぐらい展望室で映像の星を見ていた。
お互い何も言わなかった。
気恥ずかしさはあったけどなんだかとても落ち着いていた。

ふぅこんなことルリちゃんにバレたら大変だな・・・



















「もう既にお仕置きは決定してますよ、アキトさん。」（怒）

「お、お手柔らかに頼むよルリちゃん・・・」

「嫌です。」


　
　













第６.５話に続く

後書き

何を書いてるんだか私は・・・（苦笑）
しかも微妙に長いし。
さぁて・・・徹夜でゲーム三昧でもしますかねぇ。


今月の組合内情

「あ〜書類の山、山、山、山山山山山山山山山山山山山山、山梨県。」

意味不明な独り言と共に今日も書類に目を通す黒子。
それもそのはず、
ここ数ヶ月音沙汰無しならそりゃあ書類も溜まりに溜まる。
・・・・・・・ナデひなのアカツキ達より多いかもしれない山は全く減らない。

「開発部に頼んでお仕置きへの対処物【リョーコ閣下人形】で
　お仕置きはどうにかなったが・・・・・・・・・・・・・・・これはこれできついで、マジで。」

とか言いながらまた判子を押す。
ちなみに内容は【今月の目標決定！とりあえずおにぎりを喰え、中身は鮭、以上。】


・・・・・・・どんな目標だか。

現在D三昧の代理人の感想

あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。

なんか、全編通して甘ったるいですねぇ（苦笑）。

こう、ラブラブとは言わないまでもその一歩手前のこっぱずかしい空気が漂っているというか（爆）。

こう言うときに言うべき言葉は一つ！

はい、ごちそうさま（笑）。