俺が中尉に会ったのは、彼女が死にそうになっている時だった


自分が死にそうなのに、それでも黒い機体のパイロット、テンカワ・アキトのことを心配していた


その必死な様子に、まっすぐな瞳に惹かれた











俺は正義という言葉を使わなくなった


理由は簡単


単に信じれなくなっただけだ


今まで、盲目的に信じてきたことが、先の戦争で全て崩れ去ってしまった


そして、それは、俺自身への自信も砕いていった


それから俺は、地球に来てから、可能なかぎり昔の自分を捨てていった


髪を伸ばして染め、女遊びに興じた


酒にも手を出した


それらは、思ったよりも楽しかった


そうすることで、少しは昔のことを忘れられた


だが、それらは一時的なもので、すぐに何倍にもなって自分にも帰ってきた


それから逃れるために、また遊びまわる


悪循環だ


だが、俺がぶっ壊れる前に引き上げてくれたのは、艦長だった


艦長といっても、木連時代の艦長、秋山源八郎のことだ


あの人は、熱血クーデターで、指導者として祭り上げられた


俺は、あの人と共にそのクーデターに加わった


そこで見た正義は、俺が、いや、俺達が信じていた正義とは全く異なっていた


そのことは、今でも思い出したくないほど酷いものだった


あのクーデターに参加した者ならその気持ちがわかるだろう


実際、そのことで自殺していた奴だっている


だが、あの人も俺達と同じ物を見たのに、俺とは違ってその身を粉にして働いている


とても強い人だ


あの人は、とても繊細だ


それを俺は知っている


だが、その繊細さを持ちながら、それ以上の強い心をもっている


そのような人から、宇宙軍に俺の力が必要だと言ってくれた


こんな俺がだ


そんな事を言われて、仮にも木連男児である俺が断れるはずがなかった


それから腐るのをやめた


吹っ切れたわけではないが、俺にできることをしようと決めたのだ


俺にできること


あの、折れてしまいそうな今の艦長であるあの女性を支えることだ


それからは、驚きの連続だった


艦長は、俺が思っていたような見た目通りのやわな女性じゃなかった


さすがはあのナデシコAのオペレーターだったことだけのことはある


俺は本当に上官に恵まれている


そして、今も昔も仲間にも恵まれている


そうだ、俺には仲間がいた


上の奴らのことなんてどうでもいい


大事なのは、大切な仲間だったあいつらのことを信じることだ


正義なんてそれこそ人の数だけある


そんな事を、今更ながらわかった













だが、それでも俺は自分に対する不信感をぬぐえなかった


仲間のことは信頼できるが、自分のことは信じれなかった


そんな思いがあり、結局俺は、遊びから抜けることはできなかった


もちろん、 自分を壊すようなヘマだけはしないように気を使っていたが・・・


だが、それが余計俺から物事に全力でぶつかることを恐れさせていた


上辺だけ適当に繕っていれば、自分も相手も傷つかない


それが事実なだけあり、俺は本気を出すということを忘れていった


だから、真っ直ぐな目のハーリーのことがうらやましかった


そして、そんなあいつに本当の俺を知られるのが怖くて、あいつにだけは絶対にばれないよういつもよりもふざけ、からかった。










そんな俺に全力を出させてくれたのは中尉だ


俺に似ている


初めて見たときそう思った


そんな彼女が、とても欲しいと思った


これが、戦争が終わってから、初めての本気だった


そして、次に本気を出す機会はすぐにやってきた


火星の後継者たちをぶっ潰すことだ


彼女たち、元ナデシコクルーにとって、彼、テンカワ・アキトと、その妻ミスマル・ユリカはとても大切な人らしい


中尉も元ナデシコクルーだ


だから、この戦いが終わるまでは、口説き落とすことはできないだろう


・・・まあ、おとなしくはするつもりもなかったが


それにしても、女一人でここまで本気を出すとは、俺はやっぱり単純だ


少しは変わったつもりでいたが、大元の所は変わってないらしい


だが、それは好都合だ


俺は昔から、こうと決めたら必ずやり遂げてきた男だ


だから、今回の時もあきらめるつもりはない


優人部隊に入った時以上に、ハードなことになりそうだ


だが、それも望むところだ


障害があるほど燃えるってもんだ


中尉の友人の二人に頼めば、ことを有利に運べそうだが、そんなことはしない


俺一人の力で何とかしてみせる


そうしたほうが、喜びもひとしおってもんだ


だから、待ってて下さいね、リョーコ♪





後書き

仮面って長い間つけてると地になりますよね。

というわけで、三郎太は軽いままです。

ちなみに現在のBGM、「BUCK−TICK」の「地下室のメロディ」、「タナトス」、「極東より愛をこめて」

「SOPHIA」の、「forget」、「赤い青春と虫けら」、「Hard Worker」、etc・・・

などの、激しい曲を集めたMD。

激しい曲を聴くと、逆に落ち着いたのになる。

落ち着いた曲を聴くと、シリアスになったり、ギャグになったりする。

これって俺だけ?


あと全然関係ありませんが、ポップスを聞かない友人が「地下室のメロディ」を知っていたので、何処で知ったのかを聞いてみました。

すると、ここでよく聞く「月姫」のヒロインの一人のイメージソングだというのです。

他にも、Swinging Popsicleの「サテツの塔」も出てきました。

あいにくと俺は「月姫」を知りません。

そこで、そのヒロインの予想。

「地下室のメロディ」・・・えげつない事を平気でする、北辰やテツヤの女版。

「サテツの塔」・・・主人公の無茶を心配しながら、結局サポートしてしまう。主人公が振り向いてくれるのを一途に待つ。

こんなとこかな?他も聞いたけど忘れました。

それにしても、この曲センスには少し惹かれるものがあるな。

 

 

 

代理人の感想

どこの蒲鉾とは言いませんが、

「ヒーリングミュージックで心を癒しながら執筆するとダークさが増す」

と公言する御仁もいらっしゃいますので、まぁ、そんなもんかと(笑)。

ちなみに私は執筆時はBGMをかけません・・・まぁ、元々余り音楽は聞かないというのもありますが。

 

 

>ヒロイン予想

「地下室のメロディ」と「サテツの塔」・・・・・・あの二人のテーマだよな(汗)。

「地下室のメロディ」の方は・・・容赦無用の殲滅者とのんびりほのぼのした人格者の

二面性を持った人だからまぁ、間違ってはいないとして。

「サテツの塔」の方は・・・まぁ、一途には違いないですわな。

一途過ぎて、まぁ色々とあるわけですが(汗)。

 

 

ちなみに一覧にしますと

ナーヴ・カッツェ 『クレイジー・ドリーム』 アルクェイド・ブリュンスタッド

BUCK TICK(?) 『地下室のメロディ』 シエル

Swinging Popsicle 『サテツの塔』 遠野秋葉

ソフトバレエ 『パレード』 翡翠

こっこ 『柔かな傷跡』 琥珀

原田知世 『文学といふことで使われていた歌(名称不明)』 さっちん

 

です。

修正やツッコミがあるかたは情報提供ぷりぃず。