「ふう、疲れた。」
ぼふっ
そう言って、千沙はベッドに倒れこんだ。
「舞歌様、人使い荒いんだから・・・」
ベッドに横になりながら呟く。
その表情には疲れがありありと浮かんでいた。
「ふ〜〜〜〜・・・」
着替えなければいけないとはわかっているのだが、睡魔が襲ってくる。
その睡魔に何とか抗いながら、どうにかクローゼットから着替えを出し着替える。
普段ならきちんと整理などするのだが、今日は疲れていたのでそのままにしてすぐにベッド戻っていった。
「ふふ、明日はアキトさんとデートだ。
お休みなさい、アキトさん。」
枕もとの写真に声をかけて、そのまま千沙は眠りへと落ちていった。
・・・・
・・・・・
「う、う〜ん。」
声を上げながら千沙が目を覚まし、体を起こす。
見た感じ、まだ完璧には起きていないようだ。
わかりやすく言うと、まだ寝ぼけている。
そのまま、またぽてっと横になって眠り始める。
「・・さん、お久しぶりです。
・・・え?千沙ですか?千沙は昨日よほど疲れたみたいで、まだ寝ているみたいなんです。
ええ、いいですよ。そうしてもらった方が千沙も喜ぶでしょうし。」
部屋の外から、隣の部屋に住んでいる舞歌の声が聞こえる。
誰かが来ているようだ。
ぷしゅ
扉が開く。
しかし、千沙はその音で目を覚ましていない。
よほど昨日疲れたようだ。
「千沙さん。」
優しい声で、千沙を起こそうとしている。
「千沙さん、もう朝すぎてますよ。」
「へ?」
「起きましたか?」
「え、ええぇぇ!!」
千沙を起こそうとしているのはアキトだった。
いきなり起きたら思い人がいたので千沙はビックリする。
ばっと枕もとの写真を倒してアキトに見えないようにする。
「はは、もう遅いです。見ちゃいました。
それにしても嬉しいな。千沙さんが俺の写真を部屋に飾っていてくれてるなんて。」
その言葉に千沙は真っ赤になる。
何もいえないでいる千沙に、アキトはさらに言葉を続ける。
「それにしても、珍しいですね。千沙さんが寝坊するなんて。
よっぽど昨日の仕事がきつかったんですね。」
寝坊。
その言葉を聞いて、千沙は今日アキトとデートに行く約束をしていたのを思い出す。
すぐに枕もとの時計を見る。
約束の時間は10時30分だったはずだ。
現在の時刻は
・・・・1時45分。
「す、すいません!!」
「いや、別に良いですよ。千沙さんの仕事も大変なんですし。」
頭を下げる千沙。
その千沙にアキトは気にしていないという。
その優しさと寝坊していたことの恥ずかしさで千沙は真っ赤になる。
そして・・・
「きゃーーーーーーー」
とても大きい声で悲鳴をあげた。
「貴様、千沙に何をした!!」
どこかで北斗がアキトに詰め寄っている。
かなり大きい声を出しているのだが、その声もどこか遠く聞こえる。
その目は虚ろだ。
部屋に備え付けてある鏡を見つめる。
「ううっ。」
泣きながら今の自分の姿を認める。
そこには、女をまったく感じさせないすがたがうつっていた。
いや、女を捨てているといわれても仕方のないような姿だ。
髪の毛はぼさぼさだ。
それはまだいい。
まだいいが、今の千沙の格好!!
その格好は緑色のジャージ!!
ぢゃーぢだ!!
左胸には「○年○組○番 各務 千沙」というのが縫い付けてある。
俗に言う「中学ジャージ」だ。
「いやぁぁあ!!」
そこまで認め、千沙はさらに悲鳴を上げた。
思い人にこんな格好を見られるなんて!!
「大丈夫よ、千沙。私がいるわ。
テンカワ殿は北斗が罰を与えているから。」
部屋の外のドアをたたきながら、舞歌は声をかける。
しかし、その声は千沙には届かない。
いや、届いてはいるのだが、全く意味をなさない。
だって、今の千沙の格好はジャージだから(笑)。
「わ、私、もう二度とアキトさんに会えない。」
「ち、千沙、落ち着きなさい。
私に何がおきたのか教えてくれない?
大丈夫、誰にも言わないわ。」
「貴様ぁ、千沙をあんなにするとは、もう許さん!!」
「俺が何をしたって言うんだぁ!!」
「いやぁ、もうこんなのいやぁあああああああ」
終劇
後書き
あ〜すっきりした。
やっぱこういうのの方が楽です。
代理人の感想
・・・・・ちょ〜っと、「投げっぱなし」の気がしないでもないですね(苦笑)。
しかし、結局の所一番悪いのは舞歌では(爆)?