「ねえねえ、アキト、とっても独特のメニューがある喫茶店があるってルリちゃんから聞いたの。
 一緒に行こ!!きっといい勉強になるよ!!」

いきなりユリカが言ってくる。
現在ナデシコは休暇中だ。そのため朝からひっきりなしでお出かけの誘いがかかってくる
それにしても、少しこの誘いには惹かれるものがある。
変わったメニュー?どういったものなんだろう。
行ってみて食べてみたい気もする。
でもこの誘いを受けたらお仕置きものだろう。
どうしよう?
迷っているとユリカから声がかかる。


「大丈夫、他の人もちゃ〜んといるからお仕置きはないよ。」


俺の心は決まった。
お仕置きがないのなら一料理人としてその料理を食べに行こう。
・・・デートだったとしてもね。






今その喫茶店に向かっている


「それにしても楽しみだわ。アキト君一緒にお茶をすることができるなんて。」


これはエリナさんの台詞だ。

「そうですね、アキトさんと一緒にお茶ができるなんて夢のようです。
 ああ、頑張って評判がある店を探してよかったです。」


これはルリちゃんの台詞。
そうか、俺と一緒にお茶をする為に頑張って俺の料理の勉強になるようなところを探したのか。


「そうだよねっ、頑張って探したかいがあったよ。」


これはラピスの台詞。
なるほど、ラピスも一緒に探したのか。


「それにしても、ジュン君に仕事を任せられてよかったよ。
 それじゃなかったら休暇返上でアキトとお茶どころじゃなくなってたからね。」


ジュン・・・お前・・・


うう〜〜〜、ユリカ〜〜〜


どこからか、ジュンの泣きそうな、というか泣きながら言っているような声が聞こえたような気がした


「ほんと、ミスターに仕事を頼めて本当に良かったわ。」


ちなみにその頼まれている時のプロスさんは珍しく慌てた様子で顔を真っ青にしていた。
どれだけの仕事があったんだろう・・・


「ほんっと、こういうときにハーリーって役に立つよね。」

ハーリー君、君もか・・・かわいそうに。


「それにしても先輩、どういったお店なんです?  変わったメニューってどういったものがあるんですか?」


これはイツキちゃん。
ユリカが行くようなのでついてきたのだ。
実はこの五人で全員、他の人はくじで外れたり、暇がなかったりしたためだ。
この一緒に行けなかった人たちは、ナデシコから出てくる時にすさまじい視線でこちらを見ていた。
ううっ、思い出したら寒気がしてきた。


「う〜〜ん、実はアキトと一緒にお茶ができるかもって聞いてそういったのは聞いてないんだ。
 ルリちゃん、どういったのがあるの?」


「さあ、あまり詳しいデータがなかったので・・・
 ただ、ナゴヤシティが世界に誇る喫茶店らしいです。
 少し聞いてみたところ、行ってみればその凄さがわかるらしいです。」


「へえ〜、そんなに凄いんだ。きっと、とってもおいしいんだろうね。
 楽しみだね、アキト。」


「そうだな。」


ほんとに楽しみだ。
何かどことなく嫌な予感がするが、きっとそれほどまでに凄い料理が待ち遠しいんだろう。










・・・着いた、着いたんだが・・・・


「か、変わった外装ね・・・」


エリナさんが言ってくる。


そう、そうなのだ!!
とても喫茶店には見えないのだ!!
横にみすぼらしい看板があるので間違いはないと思うのだが・・・
まず、第一に変なところは、その外観そのものだ。
周りを木々に囲まれてとても薄暗く、建物自体もかなり古い。
はっきり言って情緒があるとかそういうのではなく、ただ単に不気味だ。果てしなく不気味だ。

第二に、店の前にある「営業中」と文字が書かれている看板だ。
とても古く、今の時代になぜこんなものが?と思わせる。

第三に「氷」がの文字がかけられていることだ。
それは薄汚れていて、どう見ても一年中干してあったとしか思えない。

そして最後に、サボテンだ!!
見間違いでも何でもなく、ただ単に大きなサボテンが駐車場の横に咲いているのだ。
ちなみにここは日本だ。砂漠でもなんでもない。
単なる普通の閑静な住宅街だ。
なのに、なのになぜこんなところにサボテンがあるんだ!!


「ま、まあこういった所こそ知る人ぞ知るって感じでおいしい料理があるんですよ。
 見た目で決め付けちゃいけません。」


イツキちゃんが、固まっている皆に言う。


「そ、そうだよな、  見た目が悪くても料理までまずいなんて決まってないよね。  ありがとう、イツキちゃん。」


そう言って笑いかける。


「は、はいっ、ど、ど、ど、どういたしまして。」


赤くなりながら、どもって言うイツキちゃん。
変だな?お礼を言っただけなのに。


じぃぃぃぃぃぃ
はっ、背後から視線を感じる
何もしてないはずなのに・・・


「アキトさん、これ以上浮気をするつもりですか?」


「ぷんぷん、イツキちゃん、アキトに手を出したらだめだよ!!」

「そ、そんなことないよ、ルリちゃん。
 ねえ、イツキちゃん。」


「そ、そうですよ。信じてください、先輩。」


「まあ、いいでしょう。
 それよりも早く入りましょう。」


二人で顔を見合わせほっと一息ついて、俺たちは、その喫茶店へと入っていった。







・・・暗い、とてつもなく薄暗い。
内装までがこんなのとは・・・
いや、さっきイツキちゃんが言ってたじゃないか。きっと料理はおいしいはずだ!!


みんな、席につき、メニューを決める。




・・・なんじゃこりゃ?

甘口イチゴスパゲッティ

甘口抹茶小倉スパゲッティ

しるこスパ

サボテンスパ(店の前にあったのを使うのか?)

クリームメンタイコスパ

鍋スパ

カントリー

オリエンタル

コスモスパ(コスモって何?セットまであるし・・・)

みそ納豆ピラフ

アボガドピラフ

ヤングハラペーニョ(何がヤング?)

マンゴースペシャル辛口(なぜマンゴーが辛い!!)

エトセトラ、エトセトラ・・・


わからない、ここが何処なのかわからない。
誰か、教えてくれ。ここは喫茶店なのか?


今度は流石にイツキちゃんも黙っている。
あのユリカでさえも一言も発していない。
どうしよう?
黙っているとイツキちゃんがとんでもないことを言い出した。


「う〜〜ん、どれもおいしそうで迷っちゃうな。」


何ですと?

よりにもよってこんなわけのわからないメニューを見ておいしそう?
他の皆も唖然としている。


「皆さんは何を頼むんです?
 せっかくここまできたんですから普通のものを頼むのはもったいないですよね。」


そうだった。
せっかくここまで料理の勉強をしに来たんだ。
呆けているわけにはいかない!!
他にはないここ独特の料理を頼まなければ!!









皆メニューが決まった。
ユリカは甘口イチゴスパ
ルリちゃんは甘口抹茶小倉スパ
エリナさんはしるこスパ
ラピスはマンゴースペシャル辛口
イツキちゃんはヤングハラペーニョ(ハラペーニョとは唐辛子のこと)
そして俺はコスモスパを頼むことにした。











頼んできた物がやってきた。
何それ?

運ばれてきたものの全ては、異様なほどに量が多かった。
二、三人前はあるだろう。
特に凄いのが氷だ。
ラピスの、いや俺の顔よりもでかい。
下の皿よりも胴の部分が太い。

量に関しては氷が一番だ。
だが、他の部分では俺らが頼んだのも負けてはいない。
ユリカ、ルリちゃん、エリナさんが頼んだスパゲッティからは
甘ったるい匂いがそれぞれ干渉しあってさらにパワーアップしている。
俺が頼んだコスモスパからはみそ煮込みうどんとすき焼きを足してそのままのような匂いがする。
イツキちゃんが頼んだヤングハラペーニョからは辛い匂いが・・・(これが一番まともかも)
それらが複雑に絡み合って、なにやら異界の風のような匂いが漂っている。
どうしよう、でも・・・食べるしかない!!
とりあえず皆で見合わせ一口目を一緒に食べる。
・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「いやぁぁぁあああああああああ」(ユリカ)

「きゃぁぁぁぁあああああああ」(ルリ)

「助けてぇぇぇぇええええええええ」(エリナ)

「辛いぃぃぃぃいいいいいいいいいい」(ラピス)

「おいしぃぃぃいいいいいいいいいい」(イツキ)

「時が見えるぅぅぅううううううううううう」(アキト)






・・・結局頼んだ料理を全部食べられたのはイツキちゃんだけだった。
それと、ルリちゃんとラピスは、あの店を見つけた罰として、次もお仕置きには参加できないそうだ。
最後に、あの料理を食べたせいで舌が馬鹿になり、まともに仕事ができず、ホウメイさんに怒られたのを追記しておく。


ここで有名な言葉を一つ


「そこに山があるから登るのだ。」


おわり


後書き
どうも、ラルです。
『山』を皆さんはご存知でしょうか?
名古屋が世界に誇る喫茶店です。
近くの大学の生徒が後輩いじめに使っているようですが・・・
とりあえず、名古屋による機会があれば、一度訪れてみることをお勧めします。
最後に・・・これはほとんど実話です。俺を含む六人でいき、このメニューを頼みました。
結果は惨敗でした。

 

 

代理人の感想

 

・・・・・・絶対にいくものか(爆笑)。