アキトが死んだ・・・

 

病院でその言葉を聞いて以来、私の世界からは光が消えた。

 

 

目の前のものが、全て灰色になった。

 

絶望・・・

 

初めて経験した。

 

戦争中には何度も絶望的状況というものに対面した。

 

だが、そんなものとは比べ物にならないほど大きな衝撃だった。

 

今の私は涙が出ない。

 

心が凍ってしまったから・・・

 

「す、すす、するぞ。結婚・・・」

 

その言葉を聞いたとき、涙が出そうだった。

でも、今は、そのときのことさえも良く思い出せない。

 

あなたの優しさ・・・

あなたの温もり・・・

 

全て、覚えている。

 

だが、それも、今となってはどうでもいい・・・・

今の私には、全くと言って良いほど意味をなさない・・・

 

 

それから一月が過ぎた。

 

わたしはまだびょういんにいる。

いま、そのびょういんのおくじょうにいる。

きょうはとてもいいてんきだ。くもひとつない。

でも、わたしには、そのそらのあおさをみることができない。

だって、あきとがいなくなってから、すべてはいいろにしかみえないんだもん。

 

 

アキト・・・

 

わたし、もうつかれた。

つかれちゃったよ。

あきとがきえて、ひとつきもたった。

あなたがきえて、ぜつぼうとともにひとつきもいきた。

 

もうやだよ・・・

もう、らくになりたいよ・・・

ぜんぶわすれたい。

 

ゆめも

げんじつも

かこも

みらいも

 

もういいよね?

らくになっていいよね?

 

ゆっくりと、くるまいすをこぐ。

いまのわたしには、あるくちからすらない。

 

かなあみのまえまできた。

 

そのあみをのぼろうとする。

 

がしゃん

 

しっぱい。

 

がしゃん

 

また、しっぱい。

 

いまのわたしじゃこのかなあみはのぼれないみたい。

でも、いいもん。

まだほうほうはあるから・・・

 

こんなこともあろうかと

 

あれ?どこかできいたことがあるような・・・

 

まあいいや。

 

こんなこともあろうかと、くだものないふをもってきた。

このまえ、おみまいにきたひとがわすれていったのだ。

 

はいいろのせかいのなかで、それだけがゆいいつひかりをたもっていた。

それを、くびにもっていく。

たしか、てくびだと、しぬのにじかんがかかるらしい。

だから、はやくあきとにあえるように、こうしないといけない。

くびすじにもっていったてをひく。

 

ぷしゃぁ

 

めのまえがまっかになる。

 

きれい・・・

 

ひさしぶりに、はいいろじゃないいろをみた。

もっとみていたかったけど、めのまえがまっくらになっていく。

とおくで、だれかのこえがする。

 

「だれか、先生を呼んできて!!」

 

うるさいな。

せっかくらくになれるのに・・・

 

また、べつのところからこえがきこえる。

 

「ユリカ・・・」

 

うるさい・・・

 

「ユリカ!!」

 

うるさいな!!

 

「ユリカ、俺だ!!」

 

もしかして・・・アキト?

 

「ああ、そうだ。」

 

迎えに来てくれたの?

 

「ああ。」

 

寂しかったよ、アキトがいなくって寂しかったよ!!

 

私は、枯れたはずの涙を出しながらアキトに抱きついた。

 

「ごめんな、寂しい思いさせちまって・・・」

 

本当だよ!!

 

「でも、これからは一緒だ。」

 

うん!!

 

ひさしぶりに、私は笑った。

そして、アキトに連れられて、灰色の世界から、虹色の世界へと旅立っていった。

 

 

後書き

う〜ん、何故こんなものができたんだろう? 

もしかして妖精さんの仕業?(笑)

 

 

代理人の感想

・・・・・・・・・・・・・大蒲鉾菌に冒されたさっぱり妖精の仕業でしょう(爆)。

それにしても、どんどんこちらの方面が上達してきているような。