月が出ている。

とても綺麗な月だ。

まるで・・・血の色のような・・・・・




寝返りを打つ。

なかなか寝付けない。

こんな月の出ている夜はいつもこうだ。

そして、それ以上に喉が渇く。

まるで、砂漠を一昼夜歩き続けたかのように、俺の喉は、渇いている。

水分を取っていないわけじゃない。

つい先程、水を飲んだばかりだ。

なのに、いったいこの渇きはなんなのだろうか?

こんな夜は、体が疼く。

この渇きを癒せと、体が命令してくる。

それを拒む必要などない。

人間が水を欠かすことのできないように、戦いは、俺にとって、不可欠なものなのだから。

そうと決まれば話は早い。

まず、寝巻きから着替え、外出する準備をする。

着替え終わったら、誰にも気付かれないよう、防犯装置を避けて抜け出す。

夜抜け出したことが、舞歌や零夜にばれると後で五月蝿くなるからな。













街を歩く。

そして、誰か俺の渇きを癒してくれそうな奴を探す。

歩く。


ダメだ。


歩く。


こいつもダメだ。


歩く。


何処にもいない。



歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く
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ふと、俺をつけている奴らがいるのに気付いた。

気配から察するに、まあ、それなりの実力者だ。

よし、今夜はこいつらで手を打とう。

そう決めた俺は、どこか、適当な人気のない路地裏に入り込む。


「そろそろ出てきたらどうだ?」


俺の問いかけに、動揺の気配が漏れる。

ふん、くだらん。

何の用もないのにこんなところに来るはずがないのに。

そこでちゃんと気付いておけ。


「・・・真紅の羅刹だな?」


路地の陰から、黒いスーツに身を包んだ男たちが三人ほど出てきて、俺に確認をする。。


「だったら何だというんだ。」


「我々と共に来てもらおう。」


「嫌だと言ったら?」


「死んでもらう。」


俺の言葉に、男たちが殺気を纏う。

少しからかってみるか。


「なあ、この世で最も優れたコミュニケーションの手段は何だと思う?」


「!?」


俺の言葉に男たちが面を喰らう。

この局面で俺がいきなりこんなことを言うのが、そんなに予想外だったらしい。

しかし、ここまで素直に動揺を表すとは、本当に二流だ。


「答えは簡単だ。闘うことさ。」


「?」


俺の言ったことが良くわかっていないらしい。

仕方ない。もう少しわかりやすく言ってやろう。


「殺してやろうって言ってるんだよ。

 ほら、どうした、かかってこないのか?」


挑発するような口調で言う。

その言葉が頭にきたのか、先頭にいた男が銃を抜き打ちしようとする。


シュン


一瞬の光が通る。


ボト


そして、銃を撃とうとしていた男の手首が地面に落ちる。


「!!」


そのまま男は、悲鳴を上げようとする。

そのために、男は大きく口を開け、息を吸い込もうとする。

その一瞬。

いや、半瞬で、男の傍に駆け寄り、先程男の手首を切り落とした鋼線を、男の舌に絡ませる。


ビン


男の舌は、宙を舞う。

舌の出血が、喉の方に回ったのか、男はごぼごぼという音を立てながら、倒れていった。

その男が倒れてから、ようやく二人目の男がようやく銃を撃とうとする。

遅い。

その時には、もうその男の腰に、鋼線が巻きついていた。

そのまま鋼線を引く。

上半身と下半身がばらばらになり、その男が撃った銃弾は明後日の方に飛んでいった。



「ひ、ひぃぃぃぃっぃぃぃ!!!」


仲間を殺され、たった一人になった最後の男が、情けない悲鳴をあげながら逃げようとする。

もちろん逃がすつもりはない。

口元を吊り上げ、つま先で地面を軽く二、三度蹴り、俺も軽く走り出す。

空気がうねりを上げる。

瞬き一つ。

その間に、男に追いつく。

男の目が驚愕に見開かれる。

男が驚いている間に、、男の首に鋼線を絡ませる。

これでもう男は逃げられない。


「う、ぐぐぐぐ・・・」

男は、何とか鋼線を引きちぎろうと、自分の首の皮をえぐりながら、鋼線に爪を立てる。

男の首からは、赤い色をした液体がどんどんと溢れ出てくる。


「次来る時は、今回の10倍以上の人数で攻めてくるんだな。」


そう言って、わずかに鋼線を緩める。

助かりそうな気配に、男の顔に喜びの表情が浮かび上がりそうになり、体の力が抜ける。

その瞬間に、鋼線を引き抜く。


ぷしゃあああああぁぁぁぁあ


首から、おびただしい量の出血をしながら、男は倒れていった。


ぴちゃ


男の血が、俺の顔まで届いた。

その血を、親指で拭い去る。

満足のいく結果ではなかったが、体の疼きはそれなりに収まった。

これでしばらくは我慢できるだろう。

だが、渇きは収まってはいない。

むしろ、より深くなったようだ。


先程言った、最上のコミュニケーションは闘いという答え。


あれは、そのまま俺に当てはまる。


アキト・・・やはりお前しか俺の渇きは充たせない。

そして、お前の渇きを癒せるのも俺だけだ。


あいつも、俺と抱えている闇と、同じ物を持っている。

それに気付いているのは、今のところ俺だけだろう。

あいつ自身すら気付かない大きな闇。

それは、普通に見ているだけでは気付かない。

闘うことだけで見えてくる。

だから、あいつの仲間も気付いていない。

本気のあいつと戦えるのは俺だけだから。

くくく、あいつと戦うことを考えると、自然と笑みがこぼれる。

ああ、本当にあいつが帰ってきたときが楽しみだ。

あいつが帰ってきたら、まず始めに闘おう。

言葉なんかじゃいくら話しても物足りない。

何よりも優先して闘おう。

それまでは、このような雑魚で我慢するしかないだろう。

アキト、覚えておけ。

貴様との最初の戦いはとてつもなく激しいものになるだろうということを。

こんな雑魚ばかり相手にさせらられている、この俺の欲求不満は並大抵のものではないということを。

ふと、あいつが消えてしまった空を見る。

そこには、血の色のような赤色に染まった月が円を描いていた。

とても綺麗だ。


ほんとうに・・・


気が狂いそうになるぐらいに・・・


その夜の月は、綺麗だった・・・・・







後書き

う〜ん、北斗を書くのは難しい!!

格好良くかけない!!

しかも、鋼線なんて、どうやって使えばいいのかよくわからん!!

ちなみに、聞いた話ですが、満月の晩は、犯罪の発生率が高いらしいです。

みんなも気をつけようね♪

 

 

代理人の感想

うむうむ、久々に北斗が読めて嬉しいですねぇ。

後、何とはなしに月姫っぽかったり(笑)。

 

 

>鋼線の使い方

「魁! 男塾」か菊地秀行の「マン・サーチャー」シリーズでも参考にしてみては(笑)。