機動戦艦ナデシコ
皇子と修羅と超能力者と
プロローグ
〈それぞれの別れ……そして出会い〉
異空間の中……
ロンド=ベル対エアロゲイターの戦いは最終局面を迎えていた。
一条の黒い光がジュデッカと呼ばれる起動兵器を貫く。
その直後ジュデッカはすさまじい光を発し辺りをそめる。
光がおさまった後には何も残っていなかった。
「終わったの……リョウト君?」
「うん……そうだね」
とまどった様な声でリオがリョウトを呼ぶ。
万感の思いを込めてリョウトは返す。
「みんな……よくやった!
それぞれ母艦に帰還してくれ!
この亜空間を脱出する対策を立てる!」
『了解!』
グローバル艦長の言葉に従ってロンド=ベル隊員が母艦に帰還していく
「リョウト君戻りましょう」
「うん…そうだね」
そういってリョウトはリオとともに母艦に向かう………
ドゴォォォォン!!
「!? きゃぁぁぁぁぁ!!」
「リオ!?」
リョウトが驚いてモニターを見るとリオのグルンガスト弐式の背面部が小爆発を起こしていた。
「リオ!大丈夫!?」
「……どうやらスラスターが駄目になったみたいね。
自力では戻れそうにないかも……」
「じゃあガンナーでマクロスまで押していくよ」
そういうとガンナーは弐式の後ろに回り弐式を押し始める。
「お願いね……あ、一応みんなに報告しておかないと」
「そうだね」
「私がやるわ……グローバル艦長、弐式のスラスターが壊れたみたいなのでリョウト君のガンナーで押して……ッ!?」
「な、何だ!?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……
突如として亜空間内に振動が走る。
戸惑いの声を上げるリョウト。
さらに焦った声でマクロスから通信が入る。
「みんな急いで母艦に戻れ!
空間が揺らいでいて何が起こるかわからん!
計算ではあと三十秒ほどで何処かしらにワープするみたいだ!」
「そんな!」
ガンナーと弐式は母艦からかなり離れたところにいた。
リョウトが母艦の方を見ると二人以外の機体は全機母艦に帰還していた。
「リョウト君……私はいいからあなただけでも戻って……」
「……!!」
その時リョウトの脳裏に以前の出来事が思い出される。
自分ではリオを助けることができなかった時を……
(どうする!? このままじゃ二人とも間に合わない……そうだ!)
「リオ……今度こそ助けるから」
「どういうこと……ッ!?」
リョウトはAMガンナーのスラスターを全開にしてからAMガンナーとマークVを無理矢理切り離した。
それに押される形で弐式はマクロスまでたどり着く。
「くっ!」
弐式は何とか体勢を整えるとガンナーを腕で弾き飛ばす。
弾き飛ばされたガンナーパーツはすぐに爆砕した。
「リョウト君早く戻って!」
リオの叫ぶ声がマークVに響く。
「……どうやら無理矢理はずしたためかマークVの方もスラスターの一部が壊れたみたいだね……
どうやらそっちに行くのは無理みたいだ」
「そんな!?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……
さらに揺れが激しくなってきた。
やがて亜空間の全てが光に包まれていく。
リョウトは目の前が光に包まれる時にリオの叫び声が聞こえた気がした……
球体の内側に地面があって外側に向かって重力が働いている世界……ボルテクス界……
ボルテクス界の中心で輝く光……カグツチ……
そのカグツチの目の前に一人の少年が佇んでいた。
「……愚かな……コトワリ無く我が力を解放しようとは……
……また新たな苦しみの世界を生むだけというのに……
……何故だ?何故お前はそれぞれの『コトワリ』の創世を阻んだ?
『コトワリ』を啓くことのできぬ悪魔が何を望んだ?」
そういいながら新たな世界を作る創世の要たるカグツチが崩れ始める。
「……『何故?』か……幼馴染や友をこの手で殺してまで……俺はただ……」
そう呟いた瞬間カグツチが崩れ落ち全てが光に覆われていった……
「ダッシュ……もういないか?」
宇宙空間に多数の残骸の中黒い機体が漂っていた。
アキトがブラックサレナに搭載されているAI、ダッシュに話しかける。
【敵の反応無し……しかし追加装甲に損傷が見られます】
「そうか……ここも終わったな。ジャンプで帰還するぞ」
【了解……!! 何者かがジャンプアウトしてきました!】
「なに!」
突如何もない空間に一隻の戦艦が姿をあられる。
出現した戦艦は漆黒の機体と対峙する。
(ルリちゃんか……)
「アキトさん帰ってきてください! ユリカさんも私も帰ってくるのを待ってるんですよ!」
金の目をした少女が戦艦から黒い機体に叫び続ける。
「何度もいっただろう。
いまさらどの面下げて帰れっていうんだ?」
「ラピスという子はどうするんですか!? 一生その世界にいさせるつもりですか!?」
「ラピスは記憶を消してユーチャリスから下ろした。
もう俺のことを思い出すこともあるまい。
この世界に入れといて勝手なことだがな」
「…………」
その返答に押し黙るルリ。
それを見ながらアキトは指示を与えていく。
「ダッシュ、ジャンプの準備を」
【……いいんですか?】
「ああ」
【……わかりました】
そういうとジャンプの準備を進めるダッシュ。
「させません!」
ドガァァァァァ!!
「くッ! 何が起こった!?」
【機動兵器……エステバリスが体当たりしてきた模様です!】
アキトが外を確認してみるとブラックサレナに一機のエステバリス取り付いていた。
「もう何処にも行かせません!」
「な! ルリちゃんか!?」
接触通信で話しかけてきたのは戦艦に乗っていたはずのルリであった。
さらにサレナにアラームが鳴り響く。
「どうしたダッシュ!?」
【大変です! ジャンプイメージが崩れました!
このままでは私達はランダムジャンプします!】
「な!? ルリちゃん離れるんだ!」
「いやです! ここであなたを離したら……」
アキトは何とかルリをはがそうとするがルリのエステバリスはしっかり掴まって離さない。
そうしている内に周りが光に包まれていく。
【マスター! 今からルリさんをジャンプ外に脱出させるのは不可能です!】
「くそ! あの時も今も俺は大切な人一人護れないのか! くっそおおおおおおおお!!!」
やがて二つの機体が虹色の光に包まれそこから消えていった……
「あれから二年か……」
何かの作業をしていたリョウトは一人呟く。
彼はあの亜空間での戦いのあとになんと敵の本星に飛ばされていた。
ところがエアロゲイター、正式にはゼ=バルマリィ帝国というのだがその本国はすでに滅んでしまったらしい。
不幸中の幸いか機械などのシステムはほとんど生きていて様々な知識が手に入った。
また、食料なども確保でき生きていくには困らなかった。
そしてまずは生存者を探したのだが一人としていなかった。
「うーん……これで終わりかな?」
リョウトはある施設の中でしゃがみこんでなにかの機械の修理をしていたが汗を拭きながら立ち上がる。
そして外に出ると体を伸ばしてからマークVに乗り込む。
出てきた施設は大きくリョウトが乗っているマークVも楽には入れるぐらいの大きさがあった。
「これを使えば地球に戻れるはずだ」
この二年間でリョウトは残っていたエアロゲイターの様々な知識を手に入れていた。
また少し壊れていたヒュッケバインマークVの修理も行っていた。
「さて……今日はもう終わるか」
リョウトはそうつぶやくとマークVを起動させ寝床に戻って行った。
その夜更け……
カッ!!
リョウトが修理をしていた施設のはずれにすさまじい光が発し辺りを包み込んだ。
しばらくすると光は消えていきそこには一人の少年が倒れていた。
同時刻……
リョウトはすでにベッドで横になっていた。
「……ん?」
窓から光が差し込みリョウトは目を覚ました。
目をこすりながら上半身を持ち上げ窓から外を見る。
「光り……?……まぁいいか……眠い……」
が、すぐに体を横にして夢の世界に旅立った。
翌日
「ふぁぁぁぁ……よく寝た」
欠伸をしながらリョウトは起き上がった。
洗面所にいき顔を洗って身支度を整える。
「そういえばなんか昨日の夜外で何か光ってたな。
いく前に見てみるか……まぁそのまえに食事だね」
上着をきながら食事を取るために部屋を出た。
「さてこっちだったかな?」
食事をとったあとリョウトは昨日の光がなんだったのか調べに来ていた。
記憶では施設の方で何かが光っていたので施設の近くをマークVで空から見ていた。
「ん……あれは……人?」
空からみているとリョウトは施設のはずれに人が倒れているのに気づいて機体から降りた。
近づくとそれが少年だとわかる。
「……凄い刺青だな」
上半身が裸の少年の体には刺青があった。
それも体中といっても過言ではなく背中はもちろん腹部や腕、果ては顔に掌にまで及んでいた。
「とりあえず起こしてみるかな……」
少年は少し揺さぶるとすぐに反応を返した。
「……う……ここは?」
「あ、気がついた?」
少年はゆっくりと起き上がると少し頭を振った。
「ああ……ところであんたは?」
「僕は……
ズゥゥゥゥゥンン……
その時遠くで何かが墜落したような大きな音が響き、リョウトと少年はそろって音のしたほうに首を向けた。
「何か落ちてきたのかな?」
「みたいだな……ともかく行ってみるか?」
「そうだね。あ、その格好じゃなんだからこれでも着ててくれる?」
そういうとリョウトは着ていた上着の一枚を脱いで少年に手渡す。
「ああ、すまない」
「気にしないで。じゃあちょっと待ってて」
そういうとリョウトはマークVに乗り込んで動かすと少年の近くにきて手を少年の前に置いた。
「な……巨大ロボット!?」
「見たことない?」
「ああ」
「うーん……とりあえずこの手の上に乗ってくれる?」
言われたとおり少年はマークVの手に上って座り込んだ。
「じゃあ行くよ。
あ、しっかり掴まってないと飛ばされるから」
言うが早いかリョウトはすぐにマークVを飛行させた。
「うお!? ちょっとまてぇぇぇぇぇぇ!!」
二つの機体が空中に現れ地面に激突し辺りに轟音とともに砂塵が舞い上がる。
落下したときの衝撃でアキトは目を覚ました。
「う……生きてるのか……それにしてもここは何処だ?」
「っ! ルリちゃんは無事か!?」
【落ち着いてください! ルリさんの機体はすぐそばにあります!】
「そうかよかった……ダッシュ、ルリちゃんはまだ目覚めてないのか?」
【そのようですね……ルリさんを起こされてはどうです?】
「そうだな……ルリちゃん?」
アキトはルリの機体に近づくと揺らし始める。
程なくしてルリが目覚める。
「……ッ! アキトさん!?」
「大丈夫?」
「はい……アキトさん、ここは何処ですか?」
「何処だろう……」
【待ってください……どうやら機動兵器と思わしき物体がこちらに向かっています】
「……! 機種は!?」
【わかりません……大きさは約二十メートル前後です】
アキト達がすこし待つと目の前に一つの起動兵器が目の前に降り立った。
マークVをしばらく飛行させると二つの起動兵器らしき物体佇んでいるのが確認できた。
「起動兵器が二つ……戦わなければいいんだけど……」
少し考えたリョウトだったがとりあえず二つの機体の近くに着陸する。
「落ちてきたのはあの二つの機体か……誰か乗ってるのかな?」
「そ……その前に俺を心配しろ……」
「あ……」
少年は荒い息をしながら必死になってマークVの指に掴まっていた。
リョウトは少年がマークVに掴まったかどうかの確認を忘れていたことを思い出し冷や汗を流す。。
「えっと……ごめん」
「ごめんですむかごめんで!確認とる前に発進するなんて俺を殺す気か!?」
「そ、それはともかくあれってやっぱり誰か乗ってるのかな?」
何とか話題を変えようとリョウトは二つの機体に注意を促す。
「さぁ……とりあえず話しかけてみたらどうだ?」
「それもそうだね……とりあえず話しかけてみようか」
『誰か乗ってるのか?』
リョウトが話しかけようとした時に向こうから通信がつながった。
『そちらも誰か乗っているんですか?』
『そうだ』
『えーっと、そちらのもう一機にも誰か乗っているんですか?』
リョウトはアキトの傍らにたたずんでいるもう一機を指差す。
『ええ』
もう一つの機体から通信が入る。
『ここで話すのもなんですからついてきてください』
『ああわかった』
『わかりました』
「じゃあいこうか……あ、今から発進するからしっかり掴まっててね」
リョウトはマークVの手に乗っている少年に話しかける。
そしてアキトとルリはリョウトに先導されていった。
「さてここでいいかな。とりあえず座ってください」
リョウトは自分の住処に三人を連れてきていた。
そこは少し開けた場所で椅子とテーブルがあり三人をそこに座らせた。
余談だがそれぞれが機体から降りるときにアキトとルリがマークVの手に少年が乗っているのに驚いていた。
「まずは自己紹介から。僕の名前はヒカワ リョウトといいます」
「俺はテンカワ アキトだ」
「ホシノ ルリといいます」
少年は『ヒカワ』という名を聞いて表情を変えたがすぐに直して
「……シンだ」
と答えた。
「それで、ここは何処なんだ?」
三人を代表してアキトがリョウトに尋ねる。
「ここは……ゼ=バルマリィ帝国の跡地です」
「「「ゼ=バルマリィ帝国?」」」
「知りませんか?」
三人ともそろってうなずく。
「まぁ宇宙のどこかにあった帝国です。僕もここに流されてしまったんです」
「君もか?」
「ええ。ここに来てもう二年ぐらい経つと思いますね」
そういってリョウトは笑う。
「それはともかくあなた方は何でここに来てしまったんですか?」
「…俺とルリちゃんはボソンジャンプの事故でここに来てしまった」
「「ボソンジャンプ?」」
「まぁ一種の空間移動法だ」
「…なるほど。ではシンさんはどうやってここに?」
「………」
本当のことを言って信じてもらえるかわからないのかシンは俯いて黙り込んだ。
「まぁ話したくないんだったら別にいいですけど……」
「………すまない」
しばらく黙っていたシンが口を開く。
「訊きたい事があるんですがいいですか?」
ルリはしばらくの間アキトのことをじっと見ていたがリョウトに話しかけた。
「なんですか?」
「あなたが乗っていたロボットはなんですか?」
「ああ、あれですか。
あれはヒュッケバインマークVといって地球という惑星で作られたものです」
「「「地球!?」」」
三人は驚いて声を上げる。
「え、ええ。
地球の企業、マオ・インダストリー社で作られたPT(パーソナル・トルーパー)です」
「PT?」
「……PTを知らないんですか?」
三人そろってうなずいた。
「PTを知らないなんて……そういえばあなた方二人が乗っていた機体はなんていうんですか?」
「あれはエステバリスといってネルガルで作られた起動兵器です。
数年前から地球の軍でも使用されているんですが」
リョウトの質問にルリが答える。
「数年前……だいたい何年前ぐらいからですか?」
「約五年ほど前でしょうか」
その返事にリョウトが下を向いて考え込む。
「おかしい……五年前に地球でそんなのが作られたなんて聞いた事がないぞ…
それにネルガルなんて企業も聞いたことないし……」
リョウトの様子を見ていたアキトとルリも顔を合わせ声を小さくして喋り始める。
「アキトさん、なんか様子がおかしいですよ」
「うん、それはそうとルリちゃんはマオ・インダストリーっていう会社知ってる?」
「いえ……聞いたこともありませんね。
あのようなものを作るからにはたぶん軍と関係していると思うんですが」
「ルリちゃんには知らさなかったとかじゃないか?」
「この前暇つぶしに軍とネルガル、クリムゾン、アスカインダストリーなど軍に関わっているもの全てにハッキングしたんですがそんな会社見ませんでしたよ」
「ルリちゃん……」
ルリの言葉に少し冷や汗をたらすアキト。
「もしかして……」
顔を上げながらリョウトは呟く。
「どうした?」
「いや……でも……」
「もったいぶらないで言ってくれないか?」
「……わかりました」
リョウトが話したことはアキトたちが違う世界から来たのではないかというものだった。
そして自分がここに来る前に過ごしてきた世界と起こった戦争を語った。
輸送船の事故
地球人との戦い
地球にいた人類以外の知的生命体との戦い
異星人の侵略。
さらにSTMCという知的生命体の抹殺を目的とした敵…
異星人のほんの一部分との協力の成功
星一個を破壊することによるできたSTMCの殲滅
その帰りに起きた異空間内での帝国との最終決戦
そして帰還中に起こった事故
「で、僕はここにいるんです」
「なるほど確かに俺が知っているのとは違うな」
話し終わった後にすぐに反応したのはシンだった。
「やっぱり……ところでそっちのお二人は?」
しかしアキト達の反応はなかった。
「あれ?」
不思議に思ったリョウトが二人をよく見てみると
「「…………………」」
「固まってるな」
シンの言葉どおりアキトとルリの二人は唖然とした表情で見事に固まっていた。
三分後………
「二人ともまだ固まってるな」
「まぁ信じられないだろうしね。
理解するにも時間がいるんじゃない」
アキトとルリの二人はまだ固まっていた。
「でも君は異世界とか信じられるの?
普通はこんなことを言ったって信じられないと思うんだけど」
「まぁ俺も色々あったからな……そういうお前は異世界とか信じられるのか?」
「まぁ思い出してみれば僕がいたところでは異世界からの来訪者っていうのもあったしね」
昔を懐かしむようにリョウトは話す。
「そんなことがあったのか?」
「まぁね。そういえば君は僕達二人といた世界とはまったく違う世界から来たの?」
「ああ。俺がいた世界にはあんなロボットはなかったからな」
外においてある三つの機体を見ながらシンは話す。
「そういえば何か飲み物はないか? 悪いが少しのどが渇いたんだ」
「じゃあ今もって来るよ。 固まってる二人の分も持ってくるから」
そういってリョウトは立ち上がる。
「俺もいこう」
シンも立ち上がりリョウトの後についていった。
「ちょっといいか?」
「どうかした?」
シンとリョウトは少しはなれた場所にある部屋に入っていた。
「ここって滅びた帝国って言ったよな?」
「まぁそうだけど」
シンの問いにリョウトが答える。
「しかし結構物が残ってるもんだな」
周りを見渡すとかなりの量の保存食品とみられるものが所狭しと並んでいた。
「そうだね。 ああ、そういえば僕のことはリョウトと呼び捨てでいいから」
「なら俺もシンでいい………ッ!!!???」
「ど、どうしたの?」
シンは目を見開いてちょうど隣にあった鏡を凝視していた。
その鏡にはシンの姿が映し出されている。
特に変わったところはない様だったが……
「角が……ない?」
「角?」
「ああ……確かにあったはずなんだが……」
シンは首の後ろを触りながらかすれた声でつぶやいた。
「何でなくなったか心当たりは?」
「いや……」
「僕が君を見つけたときは角なんてなかったよ」
「そうか……」
シンは俯いて黙りこむ。
しばらくそうしていたがやがて顔を上げる。
顔を上げたシンはリョウトの足元にあるいくつかの荷物を見た。
「……持っていくのはそれか?」
「え? そうだけど」
「……先に戻る」
「あ……ちょ……」
そう言ってリョウトが止める間もなく荷物を持って部屋から出て行った。
リョウトが戻った時には二人とも気づいていたが理解するのにかなり頭をつかったらしく疲れ果てていた。
シンも何かを考え込んでいて話しかけられる状態ではなかった。
そこで今日はもう休むことにして三人をそれぞれの部屋に案内した。
リョウトはいつも寝ている部屋で横になっていた。
(まさか僕以外にも事故でここに来るなんてなぁ。 さて……これからどうしようかな)
明日からのことを考えながら眠りについていった。
アキトは部屋で一人考え込んでいた。
(……まさか別の世界だか時間に来てしまうなんてな)
立ち上がりテーブルに置いたリョウトから渡された飲み物を飲む。
(俺はともかくルリちゃんをどうにかしないとな……彼女にはまだ待ってる人たちがいるからな)
そう考えながらベッドに腰掛けるアキト。
だが彼は気づいているのだろうか?
彼女のように彼自身にも待っている人がいるかもしれないということを……
(どうしたらいいんでしょう……)
部屋に入ったルリはベッドに横になって天井を見つめていた。
(まったく別の世界なんて……いえ! なんとしてもアキトさんを連れて元の世界に戻らないと!)
決意を新たに固めると目を閉じて眠りについていった。
シンは部屋の中でアキトと同じようにベッドに座って考え込んでいた。
違うところはアキトが電気をつけているのに対しこっちは暗闇の中というところだろうか。
(何でうなじの角がなくなったんだ? それに……)
うなじをさすりながらシンは自分の体中にある刺青らしきものを見つめる。
(暗くなっているのに蒼く発光していない……何故だ?)
彼の刺青は暗闇の中で光らずただそこにあるだけであった。
「それに異世界か……俺はこれからどうしたらいいのかな……」
暗闇の中で呟いた言葉は誰に聞かれることもなく部屋に溶けていった…………
この出会いは偶然か……あるいは運命か………
彼らが出会いこれからどうなっていくのか………
それは神のみが知っているのかもしれない………
後書き……………………という名の言い訳
作者:知っている人はお久しぶりです、知らない人は始めまして。
駄目SS作家のマダでございます。
アキト:ほう……わかってるじゃないか。 (ガチャ)
作者:……アノーアキトクン、ナンカツメタイモノガワタシノコウトウブニアタッテルノハキノセイデスカ?
アキト:ああ、気のせいじゃないか?
作者:いや嘘! ぜってぇなんか当たってる! 具体的に言えば銃とか銃とか銃とか!
アキト:黙れ駄目作家。 何ならすぐにでも撃ち殺してもいいんだぞ。
作者:やっぱ銃じゃねぇか! いきなりなにしやがんだ!
アキト:半年近く放置しといてそういうか、ああ? (グリグリ)
作者:モウシワケアリマセンデシタ。 デキレバソノジュウヲドカシテモラエナイデショウカ?
アキト:で……何か言い残すことは?
作者:処刑決定!? せめて釈明を!
アキト:……よし、早くしろ。
作者:では……まずは以前のものを読んでくれた皆様 申し訳ありませんでした!!
いやほんとごめんなさい。
二十話前後まで書いておきながら最初から書き直すという愚行をしてしまいました。
「何てめぇ最初から書き直してんだ」とお思いの人もいるでしょうが言い訳だけはさせてください。
何で最初から書き直したかですがこのたび友人がサイトを開くことになりました。
そしてそのサイトで私が副管理人をやることになりました。
そこで私のSSを副管理人の作品として掲載させてもらえることになったのですが、
結構書き直したいところがあったのでそのため一回最初から書き直したいと思ったのです
そのため一度全部下げたあとに改訂してだそうと考えたのです。
んで、これですがかなり変わってしまいました。
タイトルも変えましたしねぇ。
とりあえず改悪にはならないようにしたいとは思っていますが何処まで出来るやら…………やっぱ無理かなぁ。
ま、まぁこれからどうなるかは長い目で見ていてください。
では……この辺りで。
アキト:逃がすか。 (ガシィ!)
作者:何故に!? 何故私の頭を掴む!?
アキト:釈明は許したが処刑をやめてやるといったか?
作者:なッ!? だましたのか!? 謀ったなアキト!
アキト:読者の皆様への釈明は済んだだろう? 今度は閻魔に釈明してこい。
ガゥンッ! ガゥンッ! ガゥンッ! ガゥンッ! ガゥンッ!
作者:…………(穴だらけになり血の海に沈む作者)
アキト:死んだか……さて、それでは皆様また次回お会いしよう。
作者:……よ……よろ……し……く……おねが……い……しま……す……
アキト:……まだ生きてたのか……
代理人の感想
うーん・・・・別物ってほどでも(苦笑)。
手元に残っている旧版と見比べないと違いが分からないレベルでしたよ?(爆)