機動戦艦ナデシコ

 

皇子と修羅と超能力者と

 

 

第四話 

 

〈過去の自分と対面……あれ?〉

 

 

 


 

近くの喫茶店まで移動した一行は奥の席に座っていた。

「私はこういうものです」

「プロスペクター? 本名ですか?」

受け取った名刺に書かれた名前を見てリョウトは眉をひそめる。

「いえいえ、まぁペンネームのようなものですよ」

「つまりは偽名か」

「ははは、まぁこれで通りますからまったくの偽名というわけでもないですよ」

シンの言葉にプロスは笑って返す。

「僕はヒカワ リョウトといいます」

「カンナギ シンだ」

シンが名乗った 「カンナギ」 という姓は、まだ人だったころ使っていたものだという。

人ならぬ身に変わってからは自分で名乗ることも呼ばれることも無かったが、

一般社会では必要だろうということで再び名乗ることになった。

「えっと、私はアマボシ ルリといいます」

「え……ルリちゃングブゥ!!??」

突如アキトが奇声を上げテーブルに突っ伏す。

滝のように汗を流し腹部を押さえて悶絶していた。

「ど、どうしました?」

「いえなんでもありません。 こいつ朝から腹の様子がおかしいみたいなんでちょっとトイレまで連れて行きますね」

シンはプロスに答えるとアキトの襟をつかみトイレまでひきずっていった。

その姿を四人は冷や汗をたらしながら見送っていた。








トイレに連れ込まれたアキトは脂汗を浮かばせながら口を開く。

「っ……シ……シン、いきなり何しやがる……」

「おいアキト……お前店に入る前の話を聞いてたのか?」

「は、話って?」

「やれやれ……やっぱ聞いてなかったか……いいか」

眉間を指で押さえるとシンは喫茶店に入る前のことを話し出した。










プロスとゴートが近くにある座れる場所を探している中、ルリがリョウト達三人に話しかける。

「ちょっといいですか」

「ん? ホシノさんどうしたの」

「私の苗字なんですが……」

「苗字がどうかしたのか?」

首を傾げながらシンがたずねる。

「ナデシコには過去の私が乗っているので偽名にすべきかと思うんですが……」

「なるほどね、さすがに同姓同名じゃ怪しまれるか」

「しかし偽名は決めてあるのか?」

「ええ、私は アマボシ ルリ とします」

「アマボシね……わかった」

「んじゃこれからはそうするって事で……おいアキト、お前もいいか?」

「ん……ああ」











「ってお前だって返事してただろうが」

「あ、あれがそうだったのか……でも殴ることは無かったんじゃないのか」

腹部を押さえながら言うアキト。

まだ痛いのか脂汗はいまだに流れていた。

シンはその様子に苦笑いしながら返す。

「アマボシに言われてたんだよ、もしテンカワの名を出したらなんとしても止めろってな」

「そうか……」

「んで腹はどうだ? そんなに力は入れてないからもう大丈夫だろ?」

アキトはまだ腹部を押さえてはいたが脂汗は少なくなっていた。

「いや……もう少し休んだら戻るとするよ」

「まだ痛むか? 力を入れすぎたかな……まぁここにいても仕方ないし、先に戻るぞ」

そういいながらシンはトイレから出ていった。











(本当は私が止めるってアマガワは言ってたんだがな……寸鉄が握られていたから俺がやったということは黙っておくか)

一人で先に出たシンはドアを閉じて嘆息する。

(それにしても寸鉄なんてどこで手に入れたんだ? 普通に売ってる物でもないだろうが)

寸鉄を握りこんでいたときのルリの表情を思い出して身震いするシン。

あれは悪魔に変貌してしまった幼馴染の千晶に匹敵していたと思いながら席に向かい歩き出した。










トイレに残ったアキトは腹部を押さえてしばらくうずくまっていたが、

やがて痛みが引いてきたのでこれからの交渉について考えこんでた。

(さてどうするか……まさかプロスさんとここで会うとはな……)





(どうやってナデシコに乗せてもらう?)





(未来から来たことを言うか……いやそれだとな……)





(それともボソンジャンプの情報を……)





自分にある知識を並べ立て、その中から最適なものを探し、作り出そうと頭を回す。

アキトの頭の中にいくつもの案が浮かんでは消えてゆく。

やがてその中からひとつの答えを見出す。










(……やっぱりここはボゾンジャンプのことはいわないほうがいいな。

 よし、エステバリスを持っていることを話してパイロットとして乗せてもらおう)

アキトは考えをまとめ個室から出る。

「よし……いくか!」

手洗い場で顔を洗い両手で顔を叩くと外にでた。

















「あれ……?」

席に戻ったアキトが目にしたのはまったりとくつろいでいる四人の姿であった。

四人が座っている向かいの席には二人は居らず、ただ飲み終えたカップだけが存在していた。

ふと視界の端に先ほどの車が走り去っていくのが目に映る。

「……二人は?」

「先ほど帰りましたよ」

「交渉は?」

「私とヒカワさんでしましたが?」

返ってきたルリの言葉にがっくりと肩を落とすアキト。

「何で教えてくれないんだ……」

「そうは言ってもアキトさん帰ってきませんでしたし」

「最後には彼らがこっちのことを気にしてたしね」

「せっかくいろいろ考えてたのに……」

ルリとリョウトの言葉に顔を伏せる。

「まぁ、こういっちゃあ何だがまったくの無駄だったな」

シンの言葉がとどめになったのかアキトはその場に崩れ落ちた。

「……食べる?」

「…………うん」

ラピスが差し出したフォークについているケーキを口に運ぶアキト。

その姿は哀愁が漂っていた。















「あとどのくらいで着くんだ?」

「えーっと……もうしばらくかかりますね」

 シンの問いにルリが答える。

 現在、アキトたちはサセボシティに向かって車で移動していた。

「しかしリョウトは大丈夫かねぇ?」

「でもあの機体を置いていくわけにはいけないでしょうし、仕方ないでしょう」

 リョウトはここには居らず、ヒュッケバインマークVに乗ってサセボシティに向かっていた。

 当初はエステバリスで移動しようと考えていたのだが、

 サセボシティまでのエネルギーが持たないことがわかったため、プロスとの交渉で先にナデシコに送ってもらうようにしていた
 
 機体を持っていることにゴートが詰問してきたがプロスはその旨を了承した。

「ナデシコの構成員は前回と変わっていないみたいですね。

 ここまでの流れは私たちが乗り込む以外は変わってないみたいです」

「艦長はやっぱりユリカかな?」

「そうですね、ちょうど私たちと同じで今日に乗船予定みたいです」

「そういえば出航前にナデシコが木連に襲われてたたなぁ」

「ユリカさんがマスターキーを持ってましたから出航できませんでしたしねぇ」

 アキトとルリはのんびりと当時のことを思い出す。

「遅刻したんだっけ?」

「げ、大丈夫なのかその艦長は?」

 遅刻をすると聞いたシンは顔を顰めるが、苦笑したルリがそれに答える。

「いえ、あの時は遅刻じゃなくて出港前に襲撃があったんですよ」

「あれ、そうだったけ?」

「ええ、その時点で乗っているパイロットもヤマダさんだけだったので今思い返してみるとかなり危なかったですね。

 肝心のヤマダさんも事故で骨折して出撃できませんでしたし」

「そうだったなぁ……あいつも元気かなぁ……」

アキトが過去のことを脳裏に思い浮かべていると後ろで座っていたラピスはポツリとつぶやいた。











「じゃあ今ナデシコに乗っているパイロットは?」














「…………」

「…………」







車内の中が沈黙に支配される。






沈黙する車内でゆっくりとアキトが口を開く。

「……ルリちゃん」

「はい」

「ナデシコの構成員は変わってないんだよね」

「ええ」

「それで、今のところ俺たちが乗り込む以外あの時と同じ流れなんだよね」

「はい」

「で、ユリカが乗り込む日に木連の襲撃があったんだよね」

「そうでしたね」

「さて、ユリカが乗船する予定っていつだったかな」

「今日ですね」















「…………」

「…………」














 再び車内が沈黙に支配される。













「おーい二人とぉぉぉ!!??」

 シンの声が届くや否や、車が急加速しアキト以外は背もたれに体を強く打ちつけた。

「お、おいアキト?」

 シンは打ち付けられた体を起こし恐る恐るアキトに声をかける。


「急ぐぞ! 出航する前に撃沈されたらこれからの計画がパーだ!」

 アクセルを強く踏み、瞬く間に速度が上がり前方の車が目の前に迫る。

 爆走を始めたアキトが操る車は並走する他の車を縫うようにして回避しスピードを上げ続ける。

「アキトさん、ナデシコには過去のアキトさんが乗り込むから大丈夫じゃないですか!」

「あのときの俺は素人の上に戦いを怖がってたんだぞ! 生き残ったほうが奇跡だ!」

「だからってこの運転は無いだろスピード落とせスピード!」

 シンの言葉を無視してアクセルをさらに踏み込み速度を上げる。

 爆走する車の背後で次々にけたたましい音が聞こえてる。

 信号も無視しているため、衝突を避けた自動車が建築物に衝突していた。

 中には自動車同士で衝突しているものもある。

「……きゅう」

「あああ……後ろがすごいことに……」

「おい……どうするよ」

 ラピスは右に左に振り回される運転に気絶し、 ルリとシンが後ろの惨状に頭を抱える。

 そうしていると後方からサイレンの音が近づいてくる。

 さすがに警察が追ってきたようだ。

 後方から『止まれそこの暴走車! 現逮だ!』と声が聞こえる。

「ちっ! 排除して……」

 おもむろに懐から銃を取り出すアキト。

「ちょ! アキトさん!?」

「まて!んなことして捕まったらどうする気だ!?」

「二人とも心配するな! ブラックサレナに乗ってテロをやっていたときに比べればこれぐらいなんでもない!」

「アキトさん、これは自動車ですよ!」

「そういう問題でもないだろがぁ!!」

「ははははは! 国家権力ごときが俺を止められると思うなーーーー!!」









その日一日で彼らが引き起こした事故は数十にのぼり、運転していた車はすぐさま指名手配されたという。
















<ナデシコ格納庫>






「ったく、勝手に乗って行っちまいやがって」

ナデシコの整備班長であるウリバタケ セイヤはエレベーターで上昇していくエステバリスを見てぼやく。

「班長、どうします?」

「どうといわれてもな……もう動けるパイロットはいないからどうしようもねえだろ」

「何言ってるんだハカセ! このダイゴウジ ガイ様がいるじゃねえか!」

ウリバタケの言葉にすぐに反論する男……ダイゴウジ ガイが叫ぶ。

ガイのほうを見るウリバタケは怪訝そうな顔をする。

「おたく……ヤマダ ジロウじゃなかったか?」

「それは仮の名前! 魂の名はダイゴウジ ガイ!!」

「なんだそりゃ……大体、おたく骨折してるだろうが」

「ふっ、ヒーローにとってこんなものはなんでもない!

 むしろちょうどいいハンデだぜ! まってろ、俺様がかっこよく決めてやるぜ!」

「何言ってやがるこの馬鹿が! 頭冷やしてこい!」

ひょこひょこと足を引きずってエステバリスに向かうガイに向かってウリバタケは持っていたスパナを大きく振りかぶって投げつけた。

「グぉう!!??」

鈍い音が響きガイはその場に崩れ落ちる。

ガイが気絶したのを確認すると一人の作業員を見つけ声をかける。

「おい、こいつを医務室に放り込んでおけ」

「うぃっす!」

「まったく……ん? そういやありゃなんだ?」

気絶するガイをほうってウリバタケは辺りを見回す。

その視線は格納庫の隅に置かれていた2つの巨大なコンテナでとまる。

その疑問に整備員の一人が解説する。

「あれですか? ついさっき届いたものですよ。  なんでも個人所有のエステバリスだとか」

「個人所有ぅ? 誰だよそんな道楽者は」

「さぁそれ「ここかぁ!」は……?」

「んあ?」

 ウリバタケが声がしたほうに振り向くと、見慣れぬ三人が格納庫に飛び込んできた。

 言うまでも無く三人とはアキト、ルリ、シンである。

 アキトとルリが息を切らせていたがシンは息一つ乱していない。

 ちなみにラピスは気絶していたためシンにおんぶされていた。

 アキトとウリバタケを見つけ出し走り寄り、それにシンとルリが続く。

「すまん、コンテナを知らないか!」

「ああ? あのコンテナっておまえのか? 今からコンテナを開けるからちょいまってくれ!」

「ちっ、時間が惜しい!」

 そういうとシンはラピスをルリに預けコンテナを目指して走り出す。

「おい、何をして……なぁ!?」

 ウリバタケはその後を続けようとしたが響いてきた轟音と目の前の光景に絶句した。

 コンテナに目を向けると拳でコンテナに穴を開けるシンの姿があった。

 穴を開けたところにさらに手を突っ込み力任せに引き剥がし、すぐに人が通ることができる穴が開く。

「アキト、こっちがお前のだ!」

「わかった、起動させるから離れとけ!」

 驚愕するウリバタケをよそにアキトはコンテナに向かい開いた穴の中を通りコンテナに入る。

 その十数秒後、轟音とともにコンテナが内側から破壊されピンク色のエステバリスが姿を現した。


















 エレベーターに乗り込んだアキトは作戦を聞く為にナデシコに音声だけ通信をつなげる。

「ブリッジ、聞こえるか?」

 突如開いた通信にブリッジにいた全員がモニターに目を向ける。

 音声のみという状態に不審に思ったが気を取り直して艦長であるミスマル ユリカが口を開く。

『あのーいったい誰でしょうか?』

「アマガワ アキト、ネルガルに雇われたパイロットだ」

『アマガワさんでしたか! いつこちらに?』

 アキトの声を聞いてプロスが驚いた声を上げる。

「ついさっきだ、それよりも作戦は?」

『ええっと……艦長?』

 プロスに声をかけられたユリカは少しの間考え、口を開く。

『ナデシコが海底ゲートを通るまでの囮です。 それと、先にでたエステバリスの援護もお願いします』

「了解した」

 その言葉を聞き通信を遮断する。

 遮断とともにエレベーターが止まり、地上にエステバリスが出現する。

 辺りを見回すと遠方にバッタとジョロの大群から逃げ回っているピンクのエステバリスが見えた。

「先に出たってことは過去の俺か? 死なないように援護してやるか」















「ほう、みごとですな」

 モニターに映るアキトの機体はしっかりと囮として仕事をこなしていた。

 近づいてきたバッタにはライフルで破壊し、一定の距離を保ち徐々に海岸線へ誘導する。

 そうする一方で最初に出た機体にはバッタが接近しすぎないようにライフルで牽制していた。

「いやはや、アマガワさんから聞いてはいましたがパイロットの腕はいいようですな」

 お買い得でしたねといいながらプロスは電卓を操作する。

「プロスさん、あの人誰ですか?」

「おや、ホシノさん。 気になりますか?」

「……まぁ、乗員リストにも見当たりませんでしたし」

 そういってオペレーターであるホシノ ルリはモニターに乗務員リストを映す。

 あいうえお順に並べられたそれは、あ行の欄で拡大する。

「アサクラ……アベ……アミモト……あら? 本当ね」

「プロスさん、打ち込み忘れですか?」

 操舵手のハルカ ミナトはあ行を順に見ていたがアマガワが無いことを確認し、

 通信士のメグミ レイナードがプロスに非難のこもった声をかける。

「いえいえ、正式な手続きはこちらに乗ってからということになっているので……」

 プロスが答えた瞬間、ナデシコ内に警報が響き渡る。

「何事だ!?」

「木星蜥蜴の増援です。 数40、方向は9時」

「ちょっとどうするのよ!? 私はこんなところで死ぬのなんて真っ平ごめんよ!」

 ゴートの疑問に増援の数と方向をホシノ ルリが答える。

 それを聞いて副提督のムネタケ サダアキが甲高い声で叫ぶ。

 そのとたん、またも警報が鳴り響く。

「むぅ、これは……また警報!?」

「11時の方向から接近する未確認飛行物体あり、数は1。 映像出ます」

 モニターの一部に一機の機体が映る。

 それは木星蜥蜴と比べて明らかに異質だった。










 まずは大きさ。



 木星蜥蜴はほとんどが3メートル前後だというのにそれは明らかに大きすぎた。










 たった一機だということ。



 なぜ木星蜥蜴に地球連合軍が圧されているか。

 大きな要因はディストーションフィールドと物量の差である。

 数十から数百、時には千以上もの機動兵器が送られてくる。

 それなのにこの機体はただ一つで現れた。










 そして形が大きく異なっている。

 木星蜥蜴は形が昆虫に似ているから木星蜥蜴と呼称されるようになった。

 しかしそれは、ネルガルのエステバリスと同じ人型であった。











「大きさは約20メートル前後と推定、連合軍、およびネルガルの登録ありません」

「敵よ敵! さっさと撃墜しなさい!」

「大丈夫、あれは味方です」

 ムネタケが声を荒げて迎撃を命令するが、それはブリッジに入ってきた声によって否定された。

「む……君は?」

「アキトさんと一緒に雇われたものでアマガワ ルリです」

 よろしく、と一声付け加えるとユリカのそばに立つ。

 ヒュッケバインマークVが映っているモニターを指差し口を開く。

「あれに乗っているのはヒカワさんです」

「と、いうことはあれがヒカワさんが所有しているというものですか」

 「ええっとルリちゃん、あの機体と通信つなげられる?」

「はい……できました、通信開きます」

 ルリが少し操作すると回線が開く。

「すみません、ヒカワさんですか?」

『そうですがあなたは?』

「ナデシコ艦長のミスマルユリカです。 

 早速ですがナデシコの西側から襲来している木星蜥蜴の足止め、または撃墜お願いできますか?」

「わかりました」













「さて……使える武装は……と」

 モニターに武装の一覧を表示させる。

「ディストーションフィールドはビームを曲げるという特性からロシュセイバーは使用不可。

 グラビトンライフルは連射に向かないからあの大群には使わないほうがいいかな。

 ということは……ミサイルとバルカン、そしてファングスラッシャーか。

 ここに来る前に戦ったからミサイルも残り少ないし最悪白兵戦だな」

 はぁ、と溜息をつくとコクピット内に警告音が響く。

 レーダーをみると木星蜥蜴が映っていた。

「あれか……さて、やりますか」

 バッタの集団にマルチトレースミサイルをロックオンし発射する。

 発射された大量のミサイルは集団の中で爆発し多数のバッタを呑みこむ。

 爆発から逃れたバッタに素早くロックオンし、腕に装備されたファングスラッシャーを振りかぶり投擲する。

 その質量と勢いによってディストーションフィールドを破り

 回転するゾル・オリハルコニウムの刃がバッタの装甲を紙のように切り裂いていく。

 その間にも他のバッタがミサイルで反撃してくる。

 バルカンでミサイルを落とし落とし損ねたものはバーニアを噴かせて回避する。

「まったく、G・テリトリーが使えないのは面倒だね!」

 なぜG・テリトリーが使えないのか?
 
 それはG・テリトリーを発生させるグラビコン・システムを飛行させるために使用しているからである。

 とはいうもの、完全に使えないというわけではない。

 短時間なら前面のみにG・テリトリーを発生させるいわゆるG・ウォールを作ることは可能だ。

 バッタのミサイルを掻い潜り、時にG・ウォールでそらしながらバッタやジョロを破壊し続ける。

 数回ファングスラッシャーを投げるとほとんどのバッタがいなくなった。

 残されたバッタが向かってくるがバルカンで一つ一つ叩き落す。

「これでラスト」

 最後の一機をすれ違いざまに打ち落とし、ものの数分もたたないうちにバッタは全滅した。

「さて、向こうは」

 振り向いたときに二つの機体が海へと跳躍し海上に立つ。

 海上に立ったことに不審に思ったがその答えはすぐに出た。

 海中からナデシコが出現したからだ。

 二機はナデシコに乗っていたのだ。

 そして浮上したナデシコがグラビティブラストを発射した。

 黒い奔流がバッタ達を飲み込み残骸すら残らなくしていく。

「あれがグラビティブラストか……」

 黒い奔流が消えた後には一機のバッタも残っていなかった。

 サセボシティに襲撃してきた木星蜥蜴は完膚なきまでに殲滅された。











 ここに、ナデシコの初めての戦闘が終了するとともに長い航海が幕を開けたのだった。











「アキト、お疲れ様」

「お互いな、ところでウリバタケさんを知らないか?」

「ウリバタケさん?」

「整備の班長でな、眼鏡をかけた人なんだが」

「ああ……あれ?」

 苦笑しながらリョウトが示した先にはヒュッケバインマークVの脚部にほお擦りしているウリバタケの姿があった。

「まったく、変わらないなあの人は」

「そうなの?」

「そういや、遅かったな俺たちより早く出たのに」

「まぁちょっとね……ん?」

 戦闘後で騒がしい格納庫に一際大きな音が響く。

 リョウトが振り向くと、先に出撃していたエステバリスが固定されたところだった。

「あれに過去のアキトが乗っているんだっけ?」

「ああ、そうだ」

 そしてコクピットが開きパイロットがエステバリスから降りてくる。

 二人はもう一つの機体から降りてくる人物を見て愕然とした。

「ア……アキト、アキトって性転換した?」

「……馬鹿言え、俺は生まれたときから男だ」

「……それじゃああれって誰?」

「……俺が知るか」

 過去でこれに乗っていたのはアキトのはずだった。

 しかし降りてきた人物は明らかに違う。

 顔が違うとか髪形が違うとかそういうレベルではない。

 そもそも性別から違っていた。

 そう、降りてきた人物は女性だった。

「あ、あ………………!?」

 見てみると向こうの女性もひどく驚いている。

 いや、まだ女性と形容するには若すぎる。

 少女というべきであろうか。

 少女は驚愕しながらこちらに向かってくる。

 時折、足をもつれさせながらも転ばずに途中にいる整備員達を押しのいて近づいてくる。

 そして、アキトの前に立ち止まるとゆっくりと体を倒した。

「よかった……生きてた……」

ポスと軽い音を立ててアキトの胸に埋まる少女。

しばらくそのままの体勢でいたが、やがて涙ぐみながら口を開いた。


















「……心配したんだから……お兄ちゃん」

「へっ?」

















 突如言われた言葉に反応ができないアキト。

 おたおたしながら周りを見回すが助けの手はどこからも来ない。

 むしろ殺気が篭った視線が向けられるばかりだ。

 それどこらかやがて手持ちの武器(スパナ等)を構えてくる。

 しかしそれらの行動は一人によって止めさせられることになる。













「ずいぶんと嬉しそうですねぇぇぇアキトさぁぁぁぁぁん」

 








 地獄の底から響いてくるような怨念が篭った声。

 それによって人々は一斉に動きが止まる。

 アキトが恐る恐る振り向くと……


















 そこには夜叉がいた。










「ふふふふふ……浮気ですか、浮気ですねアキトさん」

「ちょ……ル、ルリちゃんこれは……」

「……アキトさんの……ばかぁ!!」

 大きく踏み込んで勢いをつけたルリの拳がアキトのジョー(顎)を的確に打ち抜いた。

 それを見ていた某超能力者の青年はこう語った。








「あれは世界を狙える右だった」














次の話に続く







 



リョウト:皆様こんにちは。

     皇子と悪魔と超能力者と、第4話をお送りします。

シン:最後の更新から1年半以上か……なにやってたんだ、あのアホ(作者)は?

リョウト:逃げたんじゃないの?

アキト:そうなるとどこに行ったか探さなくてはならんな、処刑もしなければいかんし。

ルリ:それなら大丈夫です、作者ならあれです。

アキト:……疲れてるのか、俺には桜の木の根元に赤い塊が見える。

リョウト:……もしかしてあれが?

ルリ:ええ、作者です。

シン:ってもう処刑済みかよ!!

ルリ:大丈夫ですよ、まだ生きてますし。

シン:いや、明らかに死んでるから! ハンバーグのタネ状態だよね!?

ルリ:来年にもなればそれはもう綺麗な桜が……

シン:咲いてたまるかぁぁぁ!! あんなん栄養素にしたって枯れるから! むしろ腐るよ!

リョウト:まぁそれはともかく作者の釈明どうしましょうか?

アキト:これじゃあ言い訳に連れてこれないしな。

シン:作者の安否を軽やかにスルーしたよこの人達。 何、俺がおかしいの?

ルリ:大丈夫ですよ、作者の手紙がありますし。

アキト:なら問題ないな。

リョウト:それじゃアマガワさん、読むのヨロシク!

シン:おまえらなぁ……

ルリ:コホン……ではよみます。

   

        『初めての方は初めまして。 
   
    方々、お久しぶりです。

    長く期間を空けてしまい本当に申し訳ございません。

    ここまで更新が遅れましたこと深くお詫び申し上げます。

    遅れた理由といたしましては、リアルで忙しかったこと。

    パソコンが二回もクラッシュして使い物にならなくなったこと。

    そのための作者のモチベーションダウン。

    そして作者が宗教っぽいものにはまっていた所為です。

    最近、ようやく落ち着きましてこうして細々と書いております。

    今後は一〜二月に一度程度のペースで更新していきますのでよろしくお願いします』


ルリ:だ、そうです。 本当にこのペースでかけるか疑問ですけど。

リョウト:これなら何とかなるでしょ。 

アキト:いや、最近ブログを始めたみたいだしできないんじゃないか?

シン:まぁ、仕事の休みに書くようにすれば何とかなるだろ。

ルリ:そういうわけで今後は一月か二月に一話のペースであげる予定なのでよろしくお願いします。 

四人:では皆様、またお会いしましょう!





感想代理人プロフィール

戻る







代理人の感想

ロシュセイバーってビーム兵器だっけ。

名前からするとDFSみたいな重力兵器っぽいのになあw

(分からない人は「ロシュの限界」でググって見よう)

 

それはさておき・・・前よりは文章がこなれたかなという印象。

後は店舗と展開、もといテンポと展開ですね。