無数に分岐する平行世界、そして数多の異世界・・・・・・

科学万能の世界もあれば、剣と魔法を主とした世界もある・・・

それらすべてを含めたモノを神々や力ある者達は世界樹、またはユグドラシルと云った・・・・












気まぐれ男の世界樹の旅  真ナデシコ編  



プロローグ   新たなる旅の予兆








ある次元にある広大な宇宙・・・・・



その中には、1000億を越すと云われている島宇宙が存在した。

そんな島宇宙の一つ、銀河。

さらに、その銀河の辺境に位置する一星系、太陽系において、

二隻の宇宙艦がそれぞれの想いを交錯させつつ、シーチェイスを繰り広げていた。





追う者は今や太陽系では知らぬ者がいないのではないか云われる、<電子の妖精>・・・・・・


一方、追われる者は、以前は大量虐殺者として指名手配を受けていた、<黒い王子>・・・・・







「アキトさん!!

 どうして帰ってこないのですか!!

 それにユリカさんの事、どうするのですか!!!!」


<電子の妖精>ホシノ・ルリは、自身のわずかの間だった義父に、

銀色の髪を激しく振りながら、かすかに胸の痛みを憶えつつ、必死の声で尋ねた。



「・・・・・・・・・。
 
 ・・・・どの面下げてユリカに会えと言うのだ・・・・」


<黒い王子>テンカワ・アキトは、かつての義娘の問いに、冷めた口調で返した。

彼は自分が妻ユリカを救う為とは云え、多くの命を奪ってしまったために、

血に濡れた己の手で天真爛漫の妻を抱く事に、激しい抵抗を感じていた。



「あのコロニーの件でしたら、あれは火星の後継者の仕業です!!!」


ルリはコロニー爆破が襲撃したアキトの仕業ではなく、

火星の後継者の証拠隠滅のために起こされた事であるという、裏付けの取れた証拠を得ていた。



「・・・・・だが、襲撃したのは俺である事には変わりない・・・・。

 ・・・・・・・もう、話す事もあるまい・・・・・・」


アキトは以前、火星の後継者達によって受けた人体実験の際に、

失った五感をサポートしてくれている桃色髪の少女に、次の指示を出した。


「ラピス、ジャンプだ」

「わかったよ、アキト」


ラピスと云われた少女はジャンプの準備に入った。


やがて、ナデシコとチェイスをやっていたユーチャリスが、ジャンプ・フィールドを形成し始めた。



だが・・・・・・・



「行かせない!!!!

 絶対に!!!!!」



ドガァァァァァァァァン!





ルリのその声に応えるようにして、

ナデシコからアキト達の乗ったユーチャリスにアンカーが打ち込まれた。

銀髪の少女の執念だった。




だが実際にはそんなモノはいないが、運命の女神のようなモノは、

悪夢から今だ醒めぬ事の出来ない者達に、新たな試練を与えようとしていた。






ビィービィービィービィー



ユーチャリスの艦内に警報が鳴り響く。



「どうした!!!!」

「それがナデシコに打ち込まれたアンカーによって、ジャンプ・フィールド発生装置が直撃を受けて、

 暴走を始めちゃったよ!!!」

「何だと!!!!」


アキトは最悪の事態すなわち、ランダム・ジャンプを艦が行ないつつあると感じた。


ランダム・ジャンプとは、行き場所を定めずに行われるジャンプの事で、

何処に行き着くか、下手をしたら、通常空間に戻ってくる事も出来なくなる可能性のあるモノだった。


だが、彼はすぐに自分の置かれた状況を確認すると、

ナデシコもユーチャリスのジャンプの暴走に巻き込まれようとしているのが判った。



「ルリちゃん!!!!

 急いで、アンカーを外せ!!!!

 ランダム・ジャンプに巻き込まれるぞ!!!!」

「アキトさんは如何するつもりですか!!!!」

「どうやら、もう遅い!!!

 とにかく、巻き込まれてしまったら、

 そちらのジャンパー処理を受けていない人間は死ぬぞ!!!!」


だが、アキトのそんな決死の声に、ルリはその整った顔に柔らかい笑顔を浮かべた。


「アキトさん。

 ナデシコには私しか乗っていません」

「な!!!」

「私一人で追ってきたのです」

「何故・・」

「だって・・・」


ルリが自分の胸の内を語ろうをした時・・・・


「アキト!!!

 ジャンプしちゃう!!!!」


ラピスの逼迫した悲鳴が響いた。


「クッ!!!」


そんなアキトの苦痛のような声が漏れた。

刹那!

二隻の戦艦は光り輝きながら、何処とも解からぬ次元へと消えていった。










少し時は戻る・・・・





〜異世界 2020年 ジオフロント〜




ここはかつて赤い世界を経験した碇シンジが時を遡り、第二特務機関を作って仲間達と共に、

再び使徒戦を戦い、そしてゼーレを叩き潰し、サード・インパクトを防いだ平和な世界。

だが、平和においては碇シンジ達の強大な力は危険視されていた。

その事をすでに計算していた彼らは、異世界に移住する手筈を整えていた。

そのためにジオフロント内にある、白亜のビルでは引き揚げ準備で慌だしかった。




ボリボリボリ・・・クチャクチャ・・・・ボリボリ・・・




そんな音が慌ただしい筈のビルの一室、畳敷きの部屋から聞こえた。

部屋にはダンボールが山済みになっていたが、その隙間に腹ばいになり、

一人の少女が京都の老舗の煎餅を齧りつつ、水晶に映っているモノをぼけ〜と見ていた。

その水晶には異世界のアキト達のチェイスの様子が映っていた。

この少女の名前はアヤノ・スチュアート。

この少女は碇シンジにとっては妻の姉、要するに義理の姉にあたる。

普通の人間ではないために、年齢は本人でもよく憶えていない。

確か、この世界のアウストラロピテクス(400万年前)より年上であるらしい。

容姿は、大きな目をした金色の瞳に、蒼い髪をポニーテールにして、

顔は、何処となくの愛くるしさと美しさの中間のような造作である。

そして、腹ばいになっているためによく解からないが、発育途上らしいスタイルをした美少女だった。


その部屋をたまたま通りかかった黒髪の二十歳前後くらいの美女が、

この施設からの引き揚げ準備を怠けているアヤノに、怒鳴り声を上げた。


「ちょっと!

 アヤノ、手伝いなさいよ!」


黒髪の美女は碇・イオリ・スチュアートという名前であった。

この世界に戻ってきたシンジのある意味において、同じ歳の実の愛娘であった。

ちなみに母は碇・シレン・スチュアートといい、元はエヴァゲリオン初号機だった存在であるが、

赤い世界に偶然やって来た異世界の破壊神であるアヤノの実父が、

自身の遺伝子を使ってヒトとして再構成した女性だった。

やがてサードインパクトの起こった赤い世界の二年間の生活で、シレンはシンジと結ばれて、

2001年に戻ってから娘イオリを生んだ。

そのためにイオリは、時を遡り、再び碇ユイの胎内に転生した父シンジと、

肉体的には同じ歳という訳である。


イオリは黒い髪をポニーテールにしていて、顔は美しいと言うしか言葉がないくらいに整っているが、

彼女の最大の外見的特徴は左右の瞳が別々の色をしていることだった。

そう、右が金色で、左が黒色。すなわち、金銀妖瞳である。

そして、スタイルも非常にバランスがよく、彼女は快活明朗な感じの美女だった。

そして、彼女はアヤノの双子の姉妹といってもいいほどに顔の作りが似ていた。



「うっさいわねーーー。今、いい所なんだから」

「何を見ているのよ!」


イオリは腰に両手を当てて、自分の母方の伯母兼親友を睨んだ。


「愛憎劇よ」


アヤノは自分の姪に至極当然といった感じで答えた。


「また〜〜〜」

「何よ、またとは!」

「あんたは本当に好きね」

「ちょっと!自分の伯母に対する口の聞き方ではないわね!」

「だって、見た目が私の方が年上に見えるからしょうがないでしょ」

「・・・・まあ、いいわ。

 とにかく、僕は他人の愛憎劇を見るのが、生きる糧なのよ!」


アヤノはきっぱりと言い切った。ちなみにアヤノは自分の事を「僕」と言う。

それを聞いたイオリは軽く溜め息を吐いてから言った。


「はぁ〜、ろくな糧ではないわね」

「おだまり!大きなお世話よ!」

「で、その生きる糧の状況は?」


それに対して、アヤノは少し考えてから、話し始めた。


「う〜ん、要約すると、この映像の中のテンカワ・アキトという男が、

 自分と妻を誘拐し、人体実験をした連中に復讐して、一応は妻は奪還したの。

 だけど、その過程で、多くの命を奪ってしまったために、その罪の意識から、

 助けた妻の下に帰れなくなったのよ」

「・・・・それで」

「うん、そのテンカワ・アキトは昔、ホシノ・ルリという少女を義娘にしていたんだけど、

 ホシノ・ルリは罪の意識から逃げているテンカワ・アキトを彼の妻に会わせるべく、

 宇宙船まで繰り出して、彼の乗っている船と宇宙でチェイスをやっているのよ」

「・・・・・詳しい話はよく解からないけど、それの何処が愛憎劇な訳?」


イオリには今の話は悲惨な男の人生にしか聞こえなかった。


「そのホシノ・ルリがテンカワ・アキトに義父以上の感情を持っていたら」


アヤノは可愛らしい顔を少し右に傾げるようにして、

右の人差し指を一本立てて「ね!」という感じのウインクをした。

イオリはあまりにも様になっている伯母の可愛らしい仕草に、少し引きながら言った。


「・・・・・・そ、そうなの。ま、まあいいわ。

 ・・・・・ねえ、ところで、何か水晶が異常に光ってない?」

「へ!?」


イオリの指摘にアヤノは振り返って水晶を見た。

すると、水晶から凄まじい光が溢れ出していた。


「計算外だわ!!」


アヤノはこの世界に三つの魂の波動が次元転移して来るのを感じた。


「どういう事?」

「あちらの世界には時空間移動の手段があるのよ!

 その手段をキーに、あちらの世界と繋がっているこの水晶をナビゲートとして、
 
 この世界の次元ゲートを開いたのよ!

 だから、あちらの世界の人であるテンカワ・アキト達が、こちらに次元転移しようとしているのよ!」

「それって!?」

「来るわ!!」


その時、畳敷きの部屋にボース粒子の光が満ちて、三人の姿がこの世界に顕現した。



ドサ!ドサ!ドサ!バリバリバリ!!!



丁度、積み上がったダンボールを避けるようにして、気を失っていた三人は落ちて横たわった。

さらに、アヤノが食べていた煎餅の袋をアキトが押し潰していた。

それに関して、アヤノとイオリはやや斜めな見方をして、事態を評した。


「・・・・・・上手い具合にダンボールの山を避けたわね」

「・・・・・そうね」

「煎餅・・・・・・・」

「諦めた方がいいわ」

「あれ、京都で買ってきたんだよ・・・」

「碇本家の、斜め向かいのお煎餅屋さん?」


イオリは幼い頃、頻繁に母方の祖父でアヤノの実父でかつ、

気まぐれな異世界の破壊神であるカイン・スチュアートに連れられて行った、

セカンド・インパクトでも潰れずに残った老舗の店を思い出した。


「うん、それに限定商品なんだよ・・・・・」

「煎餅の限定って・・・・」

「だって、東方の三賢者連中があの店の煎餅を買い尽くすから・・・・」

「お気の毒に・・・・・」


イオリは父方の若い祖母である三賢者の一人、碇ユイの悪戯娘のような顔を思い浮かべて、

深く溜め息を吐いた。


それから、アヤノはルルーと涙を流しながら、

イオリと一緒に意識のないアキト、ラピス、ルリの三人を、この施設の医務室に運んだ。










後書きです・・・・



いきなりですけど、御免なさい。

前に載せた作品はオリジナル色があまりにも濃くなり過ぎてしまいました。

ナデシコでは無くなってしまった為に・・・・・

その作品にも感想をくれた読者の皆様、および、お忙しい時間を削りながら、

小生の作品を載せて頂いた代理人様、本当に済みません。




この作品は次回にはいきなり過去に行きます。

では・・・・・・・


 

 

 

代理人の感想

これはこれでナデシコではないよーな気がひしひしとするのは気のせいでしょーか(核爆)。