Bパート
「すみませーん」
「あら、ホシノさんじゃないの、どうかしたの?」
ネルガル技術開発部第7課(オモイカネの改良をしている部署ですね)の扉を開けると、
白衣を着た研究員のナガトさんが笑顔で迎えてくれました。
しかしいいんですかね?ここは関係者以外立入禁止なのですが。
「いえ、今日はラピスの勤務終了時間が私の講義終了時間と同じだったので、途中まで一緒に帰ろうかと」
「あっそうなんだ、でも彼女ならもう帰ったみたいだけど?」
「そうなんですか」
残念です、最近あまり話していないから、久しぶりに会いたかったのですが。
「ちょっと待って、ホシノさん」
「はい? なんでしょう」
出ていこうとした私をナガトさんが呼び止めてきました。
あ なんかやな予感、
「ちょっっっっと、手伝って欲しいところがあるんだけど ・ ・ ・ いいかな」
少し済まなそうに、そしてかなりの期待を込めた眼差しがメガネの奥で輝いてます。
「また ですか?」
少しジト目、
「あ〜〜〜ん、そんなこと言わないでぇ〜〜 ほんの少しオモイカネにアクセスしてくれるだけでいいから、
ねぇ〜〜〜」
長い黒髪をブンブン振り回しながら駄々っ子のようにわめいています、まるで艦長ですねこれじゃ、
艦長より年上なのに ・ ・ ・
「はぁ、わかりましたでもこれで最後にしてくださいね」
「本当っ! ありがとうっ 助かったわ〜 今日中に終わらせないとならないのが有ったんだけど、
私だとオモイカネあまり言うこと聞いてくれないしラピスちゃん帰ちゃってたからどうしようかと思ってたのよ」
「あの、これで最後にして ・ ・ ・ 聞いていませんね(はふ)」
小躍りしながら行ってしまいました、
はぁ 今日は早めに帰ってアキトさんに料理を教えてもらおうと思っていたのですが、無理ですね。
『ご苦労様です、ルリ』
ギロッ
『 ・ ・ ・ ゴメンサナイ』
思わずオモイカネのウインドウを睨み付けてしまいました、
まっいいでしょう、もとわと言えば言うことを聞かないオモイカネがいけないのですから。
数時間後
「ふぅ」
特に疲れた訳ではないのですが、思わずため息が、
取り敢えずナガトさんに泣きつかれた分は何とか終わりました、それにしても。
『オモイカネ』
『はい、なんでしょう?』
リンクしたままオモカネに話しかけます、
『どうしてこのプログラム嫌がったの?』
『いえ、プログラム自体は別に問題有りません』
確かに、オモイカネが拒否しそうなモノはラピスが担当している筈ですから
(本当にオモイカネが嫌がるのは手を加えるか作り直しますが)、
『それなら』
『 ・ ・ ・ ナガトさんのせいです』
『?』
『あの人は時々、ミスをするんです』
『それくらいなら ・ ・ ・ 』
『はい、それくらいなら私も何も言いません、しかし、』
オモイカネが息をつくように、いったん句切ると、
『あの人はミスをするたびに、とんでもない所にアクセスしたり、
時には私の自意識部分に入ってきたりするんです』
『そ、それは、 確かに ・ ・ ・ 』
オモイカネにとっては嫌な人ですね、
『だからと言って、いつも嫌がっていたら』
『大丈夫です、最近はいったん壁を通していますから』
『壁?』
『はい、あの人の作業がミスしていないか確認しているんです』
・ ・ ・ プログラマーを監視するプログラムって、いったい ・ ・ ・ さすがはオモイカネと言った所でしょうか、
『それでナガトさんの作業が遅れ気味になっている訳ですか』
『スミマセン ルリに迷惑をかける気は無かったんですけど』
『はぁ、 仕方ありませんね さてと、これで終了です』
『はい、今日はお疲れさまでしたルリ』
オモイカネからの挨拶を受けるとIFSのコネクトをカットし、
それに伴って手の甲に浮かんでいたナノマシーンの光が消えていきます。
「ナガトさん、終わりましたよ」
「えっ もう終わったの? 速い ・ ・ ・ さすがは元ナデシコオペレーターね」
「ナガトさんが遅いだけです」
「グサッ ホシノさ〜ん(うるるっ)」
「それでは、失礼します」
涙目になっているナガトさんを後目に、私は技術開発部第7課から出ていこうとすると。
『ルリ、ちょっと待って』
「っと どうしたんです?」
『 ・ ・ ・ ガンバッテ』
「???」
なんだかわかりませんが、オモイカネに励まされたようです。
時間を確認しながら、ホウメイさんの日々平穏に向かいます、
すでに日課になっているアキトさんのお出迎えです、
「それにしても ・ ・ ・ 」
オモイカネの最後のセリフはなんだったのでしょうか? らしくない歯切れの悪い感じでしたし、
「今度会ったときにでも、もっとよく聞いてみましょうか? っと」
いけません、考え事をしている間に通り過ぎてしまうとこでした。
からからから〜
引き戸を開けて中に入ります。
「あっ いらっしゃいませ〜 っとホシノさん」
いつもの通りシラクモさんの声が迎えてくれました。
「こんばんわ、シラクモさん」
「テンカワくんのお迎え? いつも大変ね」
「いえ、もう馴れましたから」
っと私の答えにシラクモさんは悪戯っぽい笑みを浮かべると、
「くすっ 馴れたって言うよりも毎日それが楽しみって感じね」
「はい、否定しません」
「あらら ・ ・ ・ 」
あっさり言い返されて、少し間の抜けた声をあげているシラクモさんを後目に店内に入っていきます。
「おやおや、ルリ坊も言うようになったねぇ」
「ホウメイさんっ」
あっさりと言い返しはしましたが、かなり恥ずかしいです、多分今の私の顔は真っ赤です。
「ハッハッハッ まっいいじゃないか、ここじゃ有名だからね」
「?」
有名?ってなんでしょう。
「あら? ホシノさん知らなかったの、まぁテンカワくんも気づいていないみたいだから仕方ないわね」
後ろからついてきたシラクモさんも、ホウメイさんと同じようなことを言っていますが、なんでしょうか?
「まぁ 知らないなら知らないでいいんだけどね、 よっと」
手にしていたお皿を棚にしまうと、次のお皿を磨きにかかるホウメイさん、
今はお客さんがいませんから暇なんですかね。
「はぁ、でもそう言われると気になりますが」
「大丈夫よ、私達は気にならないから」
シラクモさん、さっきあっさり撃退したこと根に持ってますね。
「 ・ ・ ・ (じぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ〜〜〜〜〜) ・ ・ ・ 」
「そ、そんな目で見ても ・ ・ ・ 」
「 ・ ・ ・ (じぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ〜〜〜〜〜) ・ ・ ・ 」
「えっと、 」
「 ・ ・ ・ (じぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ〜〜〜〜〜) ・ ・ ・ 」
「う゛う゛」
「 ・ ・ ・ (じぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ〜〜〜〜〜) ・ ・ ・ 」
「ごめんなさい」
素直でよろしい。
「ルリ坊も変わったもんだね〜」
ホウメイさんが何か言っていますが、取り敢えずいいでしょう。
「それで、何が有名なんですか?」
あらためてシラクモさんを正面から見据えてっと、
「そんな顔をしなくても教えてあげるから」
仕方ないわねっと言った感じでため息を1つすると、
「ここ『日々平穏』だと、それはもう有名な話よ」
「はぁ そうなんですか?」
ここには、開店して以来ずっと来ていましたが、そんな話 私は聞いたことがありません。
「そうよっ それはあなた達なんだからっ!」
「ヘ!?」
私、ですか!?
「そりゃそうよ、毎日のようにコック見習いを迎えに来る美少女なんて、いい噂のモトよ」
「はぁ、 美少女 ・ ・ ・ ですか?」
そう言うものでしょうか? 私にはあまりピンときません、
「最初のうちは、妹が兄を迎えに来てるって言われていたんだけど」
いもうと、ですか? まぁ 無難なところですね、でもなんか ・ ・ ・ 残念
って 何が残念なんだろう、妹に見られていることが残念なのでしょうか?
なら どういうふうに見てもらいたいのだろう?
やっぱり ・ ・ ・ 恋人、 でしょうか?
年齢差がありすぎてそうは見えませんよね、やっぱり。
「でも、兄弟にしては全然似ていないし、どう見ても妹と兄って雰囲気ではない」
「それはそうでしょうね」
見ての通り、アキトさんは純日本系(火星生まれですが)なのに対して、
私はIFS強化体質の証である瑠璃色の髪に琥珀色の目、どう見ても兄妹には見えません。
「 ・ ・ ・ ふぅ 判ってないわね〜」
? 何でシラクモさん額に手を当てているんでしょう?
「どうかしましたか」
何か言いたそうな表情をしていますが、なんでしょう、
「はぁまったく、 いいわ、なら ここで問題ですっ」
「はい?」
いきなり私に向かって指をびしっと立てて突きつけてきました。
「今、ここ『日々平穏』の常連客の間ではテンカワくんとホシノさんはどう見られているでしょうか?」
「 ・ ・ ・ 居候とその大家」
・
・
・
シラクモさん、頭抱えてます、私そんなに変な事言いましたか? 客観的事実を言っただけなのですが。
「テンカワもだけど、ルリ坊もいい加減ボケボケだねぇ」
あ、ホウメイさんが少し呆れています、
「ホシノさん、本気で言ってるの?」
「はい、と言うより客観的事実です」
「本気で言っているは、この子 ・ ・ ・ 」
なんだか、思いっきり呆れられているみたいですね、ちょっと不愉快です。
「不正解っ もう答えは」
? なんでしょう。
「テンカワくんの所に押しかけてきた、幼妻・ホシノ ルリっ!!」
「は い!?」
え〜〜〜〜〜〜と ・ ・ ・
その ・ ・ ・ 幼妻、 つまり幼い妻
私が、アキトさんの 妻!?!?
「☆×*!♪¶♯+?−っっ!?」
あうあうあうあう ・ ・ ・ 言葉になっていませんっ!
こ、こんな時は深呼吸して、気を落ち着かせて ・ ・ ・
スー
ハー
スー
ハー
「な、な、なん、ななななななっっっっ」
駄目です、まだ混乱しています。
「何でそんな噂が立つのかって言いたいの?」
「(コクコクコクコク)」
「あれだけ毎日毎日嬉しそーにテンカワくんの事迎えに来ていたらねぇ、そんな噂も立つわよ」
「だからと言って!」
「それに、ホシノさんもそう言われて嫌じゃないでしょ?」
う゛っ 確かにそうなれたらいいなとは思っていますが ・ ・ ・ って、私 何を考えているんでしょうか!?
「か、からかわないでくださいっ!」
「まぁ 真っ赤になりながら言っても説得力ないわよ」
「あぅ ・ ・ ・ 」
「くすくすくすっ 可愛いわねホシノさん」
駄目です、今は何を言ってもシラクモさんに勝てません ・ ・ ・
「はいはい、そこまでにしてやりな」
「はーい」
「ほら、ルリ坊もあまり本気にするんじゃないよ、あくまでウチによく来る連中が悪ふざけで言ってることだからね」
そ、そうですか、そうですよね、そうに決まっています、
いくら何でも私がアキトさんの妻だなんて ・ ・ ・ ボン!!
だ、駄目です、考えただけで ゆでだこ状態です ・ ・ ・ はぅ
「でも店長、その噂を聞いて卒倒したお客さんや、
『アキト殺して、私も死ぬ〜!』ってわめいていたお客さんとかいましたけど?」
「ハッハッハッハッ〜」
ホウメイさん脂汗流してますよ、多分それはメグミさんや艦長なんでしょうね、
そのときの情景がまざまざと浮かびます。
ナデシコを降りてからもう2年、それでも相変わらずでなんですねあの人達は、
「 ・ ・ ・ ホウメイさん、ご苦労様でした」
「ああ、まったくだよ」
その時のことを思い出したのか、げっそりとしたように呟きました。
でもおかしいですね、そんなことがあったなら、間違いなく家の方に押しかけてきそうなものですが ・ ・ ・ ?
「ああ、心配しなくてもいいよ、テンカワがしっかり説明させられていたから」
「少し気の毒だったけどね」
シラクモさんの表情を見る限り アキトさん、ご苦労様でした ・ ・ ・
っと、
「そう言えば、アキトさんは?」
今までまったく出てきていませんけど、何かあったんでしょうか?
「ああ、テンカワなら、」
ホウメイさんが言おうとする前に、
「テンカワくんなら、奥で不倫の真っ最中よ♪」
ビキッ
なんですと。
「こらこらっ シラクモ! 妙なこと言うんじゃないよっ」
「は〜い」
ホウメイさんの声を背にしながら、シラクモさんは厨房へと姿を消していきました。
「まったく、ルリ坊もあんまりほんきいいいいいいいいいいいいっっっっっっ!!」
途中で声が裏返ってますよホウメイさん、何か変なものでも見たのですか?
「どうかしましたか? ホウメイさん」
「(ブンブンブンブン)」
何故か引きつった顔をして首を壊れんばかりに横に振っていますが、何故でしょう?
「ところで、ホウメイさん」
「な、なんでしょう」
「テンカワさん、どこにいらっしゃいますか(ニッコリ)」
「 ・ ・ ・ うまく、 いかない」
「最初は誰だってそうだから 焦らない、ほらっしっかり持って」
「 うん」
「確かにラピスですね」
扉の隙間から中を覗いてみると、確かにラピスとアキトさんが一緒にいますね。
「何でも、『自分で料理がしてみたかった』そうだ」
同じようにその様子を覗きながらホウメイさんが、説明してくれます。
ちなみに、ここは日々平穏の2階、ホウメイさんの住居部の台所です、と言ってもそこはホウメイさん、
一般家庭の台所とは格が違います。
「自分で料理 ・ ・ ・ ですか」
「そっ まぁ仕方ないんじゃないかい、ルリ坊にもあっただろ? そういう時が さ」
「 ・ ・ ・ そう、 ですね」
改めてラピスに視線を戻します。
「うんっと、 あ ・ ・ ・ この」
一心不乱に、ラピスが使うには(私が使うにも)大きすぎるフライパンと格闘しています、
多分、野菜炒めでも作っているんでしょう。
「あっ そんなにしちゃ駄目だよ ラピスちゃん」
「え? あ、うん ・ ・ ・ 」
ホウメイさんの言うとおりです、私もそんな時がありました、
いえ今もそうです、アキトさんに私の料理を食べてもらいたいから ・ ・ ・
「それから、あんまり材料を強くかき混ぜると痛むから、もっと軽くしないと」
「うーーーん こう?」
「うん、そんな感じで」
「わかった」
それにしても ・ ・ ・ アキトさんとラピス、どうしてあんなに仲がいいのでしょう?
アキトさんはああいう人ですけど、ラピスはハーリーくんまでとは言いませんが、
どちらかと言えば人見知りをするタイプです、それなのに ・ ・ ・
2人が会ったことがあるのは、私が知る限り、以前一緒に昼食を食べた1度きりな筈ですが?
それに、いくら自分で料理がしたくなったと言っても、
ネルガルの宿舎からかなり離れている日々平穏まで来るのはかなり妙な気が ・ ・ ・
「どうして、あの2人が仲がいいかわからないってところかしら?」
ひょこっとシラクモさんも覗きに加わってきました、いいんですか?下(日々平穏)留守にしていて。
「はい」
「ホシノさんが初めて連れてきた日以来、ラピスちゃん毎日来てるわよ」
エ? ・ ・ ・
「はい?」
「だから、毎日来てるのよラピスちゃん」
「そ、そうなんですか?」
あわててホウメイさんを見上げます。
「ああ、定休日以外は昼時に毎日来てるよ」
し 知りませんでした、最近会ってなかったとはいえ同じところで働いていたのに ・ ・ ・
それとも、ラピスが意識的に私を避けていたのでしょうか? でも何故、
「それも決まって、テンカワくんのつくったチャーハンを注文するのよね」
ピクッ
「まるでいつもテンカワくんのチキンライスばかり注文するホシノさんみたいに」
「”そう”なんですか」
「ええ、それにしてもわざわざここまで来るなんてね、何かあるんじゃないかしら?」
ピクッ
「今日だって、料理がつくりたいからって理由だけで来てるのかしら?」
ピクピクッ
「そう思わない?
ほしのぉぉおおおぉぉぉぉおおおおおぉおおぉおおぉぉぉぉぉぉ!?!?!?!?」
”そう”だったんですか、ラピス ・ ・ ・ 貴女も”そう”だったんですね、
「ヒィィッ ア、アタシは店があるからっ」
「て、店長っ 私も!!」
ドタドタドタ ・ ・ ・
考えてみれば、”そう”なっても不思議でわありませんでしたね、迂闊でした。
テンカワさんはそういう人だって事は十二分にわかっていたのに、
無意識のうちにイロイロとイロイロと引きつけてしまう人だって事は(私も引きつけられた1人ですが)、
しかもテンカワさんはそのことに、いつものごとく気づいていない。
「 できた」
「はい、よくできました っと」
「ホント? ちゃんとできてる?」
「うん、 初めてなのに上手にできていると思うよ」
「(ポッ)」
「ハァ ・ ・ ・ 」
照れたラピスなんて初めて見ました、同姓同年齢の私が言うのもなんですが可愛いです。
それにしても、まだ会ってからそんなにたってないはずなのに、ここまで変わるなんて ・ ・ ・
さすがテンカワさん(ヒクッ)
「アキト 食べて」
「んっ それじゃ ・ ・ ・ 」
「ちがう」
「え?」
「食べさせる」
ビキィィィィィィィィィイイイィィイィィン ・ ・ ・
ラ ラ ラ ララ ラピスッ! なんて羨ましいことをっ!!
2年も一緒に暮らしている私も、まだやったことがないのに!!
アキトさんここは断固拒否してください!
「え〜と ・ ・ ・ 」
「アキト、 食べてくれないの?(ウルル)」
「ラ、ラピスちゃん ・ ・ ・ 」
「アキト、 口あけて」
「う゛ぅ あ〜ん」
あ、あ、あ、あ、あああぁ〜〜〜〜
テ、テンカワさん ・ ・ ・ そんな(グスッ)、
らぁ ぴぃ すぅぅぅぅぅぅぅっっっ!!
いったいどこからそんな知識を仕入れてきたんですかっ!
それともただの天然? いえっ ラピスに限ってそんな筈ありません、
最近まで(悪い意味で)無菌培養状態だったんです、人間そんなに速く変われるものではありません。
と言うことは、誰かがラピスに吹き込んだ? いったい誰が ・ ・ ・
ラピスに近い人物で、テンカワさんの事に詳しく、私のスケジュールを熟知している人 ・ ・ ・
そして最後に、愉快犯である、
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 考えるまでもありませんでした、そんな事するのはあの人しかいません、
ついに三十路突入し名実ともに『説明オバサン』となったあの人。
同時刻・ネルガル研究所
「ハックシュン!! ぶあっくしゅん!! げほげほぉぉ くちゅんっ あらら? 風邪かしら?」
「 どう?」
「うん、おいしいよ ラピスちゃん」
「ホント?」
「料理に関して
嘘は言わないよ、料理したのがはじめてとは思えないよ」
「嬉しい(ポポッ)」
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
テンカワさん、
あなたを
殺します ・ ・ ・
「それじゃ、ルリとどっちがおいしい?」
「え?」
「 ・ ・ ・ どっち」
「えっと、そうだな〜 やっぱり ・ ・ ・ 」
「うん」
「ルリちゃんの方かな」
えっ アキトさんっ(ポッ)
「そう ・ ・ ・ 」
「あっ、いや ラピスちゃんが美味しくないって言ってるんじゃないんだ」
「うん、わかってる」
「だ、大丈夫、初めてルリちゃんが料理つくったときよりは上手だから」
ムッ アキトさん後でお仕置きです、私のはじめてつくった料理は ・ ・ ・ 、えっと ・ ・ ・
確か、最初は ・ ・ ・ あ゛っ
そ、それでも艦長やメグミさん達よりは ・ ・ ・
やめましょう、あの人達の料理と比べるなんて虚しくなるだけですから。
アキトさん今回は許してあげます、ラピスちゃんに気を使っている部分もあるでしょうから。
「わかってる、アキト ルリの事悪く言えないから」
「あっと、別にそういう訳じゃ」
「それに、初めて料理したワタシがルリに勝とうなんて、ルリに失礼」
「 ・ ・ ・ ラピスちゃん優しいんだね」
「そんなこと ない」
その時私は見ました、アキトさんの言葉に照れたように俯いたラピスが一瞬鋭い視線でこっちを見たことを。
ラピスに気づかれている!?
いえ それよりも問題なのは、私が居ることを知ったうえで、さっきまでの行動を!?
・ ・ ・ ラピス、意外といい性格していたんですね。
いいでしょう、あなたからの宣戦布告、確かに受け取りましたよ。
あっ オモイカネの『ガンバッテ』ってこの事を言っていたんでしょうか?