「どうやら”ムボー”な事するしかないみたいだな」

「マジで?」

「大マジ」

 

 

 

 

 

機動戦艦ナデシコ ファンタジーストーリー

『Welsh』

 

第5話『曼珠沙華』

 

 

 

 

 

シュランッ

ユキナちゃんを手近な瓦礫の影に下ろすと、刀を抜き放つ、

エステバリスに刀が通用するとは思えないが他に武器が無いのだから仕方ない。

「ちょ、ちょ、ちょっと本気なの!」

「本気も何も、これ以外に方法があるならそうするけど?」

向こうは、こっちの事を敵か排除対象と認識してるだろうから見過ごしてはくれないだろう。

「うぅぅ 確かに他に出口無さそうだし、崩れた土砂除けるだけの時間も無いし ・ ・ ・ 

 ああもうっ 仕方ないわねぇ」

「?」

「なに不思議そうな顔してるのよ、私も戦うって言ってるのよ」

「なっ!? だけど ・ ・ ・ 」

「私は破魔巫女の端くれよ 誰かの影で護ってもらってるだけなんてガマン出来ないわ、

・・・無茶しようとしてる人を黙って見てられないでしょ

 ・ ・ ・ 駄目って言っても無駄、かな?

「無理しないようにねユキナちゃん」

「その言葉そっくり返してあげる、まっくろくろすけさん」

「テンカワ・アキト、だよ」

「じゃぁアキト、やるわよっ」

「おうっ」

ヴァッ

こちらの話がまとまるのを待っていたかのように、エステバリスが間合いを詰めてきた、

「破魔巫女見習いシラトリ・ユキナいざ参るっ」

ユキナちゃんが袖口から数枚の紙切れを取り出し、エステバリスに向かって投げつける。

「! 『符術』か」

「符よ、我が問いの答えよっ 汝の名は!」

『我は爆砕符、あらゆる物を吹飛ばす破壊の符っ』

「『爆砕符』って

 わぁぁっ ちょっと待ってユキナ ・ ・ ・ 」

ドガァァァアァァアン

ガラガラガラ ・ ・ ・ 

「ゲホゲホゲホゴホゲホッ」

「 ・ ・ ・ やっぱり崩れた」

「なんでなんでぇ? なんでこうなるのぉ」

「はぁ    こんな崩れやすい所で爆発起こしたら崩れない方がおかしいよ」

ええぇ〜〜〜! そんなぁ

 今回持ってきた『呪符』爆裂系がほとんどなのにぃ ウルウルウル〜」

えっと、そんな瞳で見つめられても ねえ

「お願い、生き埋めになりたくないから使わないでください いやマジで」

「ぶぅ〜〜ぶぅ〜〜」

「苦情は後で聞くからっ

 はぁぁっ!!」

土砂崩れを避けて下がったエステバリスに向かって、一気に跳躍っ

「せぇぇぇいっ!!」

ギィィン

ちっ 首の隙間でも無理かっ

ジャォ!

「アキト危ない!」

くっ!

振り上げられる腕の一撃を、エステバリスを踏み台に跳躍しかわす。

止まるな、止まったら狙われるっ動いてスキを突くんだ!

ジャッ!

ギュォンッ!

「は、疾いっ もう後に廻り込んだ」

エステバリスが対人用じゃなくて助かった、人間相手だと動きが大雑把になる。

まずはエネルギーの供給を止める、重力波ユニットを!

バギャッ

「よしっ」

一瞬エステバリスの動きが止まるが、再び動き出す。

バッテリーに切り替わったな、稼働時間は増槽が無いからもってあと30分か ・ ・ ・ 

エステバリスに乗っている時はバッテリーの短さにいい加減頭に来てたけど、

今はありがたい。

ジャオッ!

「のぁっ!」

「え? 関節が逆に曲がった?」

もう少しで直撃だった、そう言えばエステバリスの腕は逆にも曲がるんだっけ、

AIのエステバリスならではだな、人間だったらそんな発想はそうそう出ない。

ジャッ!

「アキトッ反対側から!」

右の次は左の裏拳かっ

「フィールド!」

ギャン! ギンッ

痛っ 流石にエステバリスの拳は個人用ディストーション・フィールドだけじゃ防ぎきれんか。

「うそぉ 刀で曼珠沙華の拳を受け止めた、

 アキトっていったい何者?」

「が、対応できなくもない か」

「 ・ ・ ・ あんな事言ってるし」

ジャオッ!

「ちぃっ」

機体を半回転させたエステバリスの右腕がオレの頭めがけ伸びてくる、

まだ、遅い!

「せあぁぁっ!!」

狙いはエステバリスの腹部、アサルトピットのすぐ下の継ぎ目っ

カッカッカッカアァン

そのまま脇を駆け抜け、同じ部を横薙ぎに振り抜く。

キィィン!

「三段突きに横薙ぎ ・ ・ ・ 凄い技量うでだわ」

「残念、四段突きだよユキナちゃん」

「どっちだっていいじゃないっ

 どーせ効いてないんだから」

「確かにな」

いったんエステバリスから距離を取る、

ユキナちゃんの言う通りだ、比較的脆かった重力波ユニット以外傷一つつけられていない。

斬ることに全力をかけないと無理か?

だけどそれじゃこっちの動きも止まる事になる、どうする。

ヴァッ!

「って、考える時間も無いか、

 えぇいっままよっ!」

文字通りの鋼の拳が唸りを上げて ・ ・ ・ そう言えばエステバリスの装甲って強化プラスチックだっけか。

ギュォオッ!

繰り出された拳を寸前でかわし懐へ潜り込み、

「ぬああぉぉ!」

 

 

木連式抜刀術

「死 閃」

 

 

 

 

 

ドジャッ

「ぐはぁっ」

「アキトッ!」

くぅ、なかなかいい反応だAIだとおもって舐めすぎたか?

技を放つのと同時に膝蹴りがくるとは。

「アキトッ 大丈夫!?」

「ああ、なんとか ・ ・ ・ 

 いってぇぇぇぇぇ!!」

「どこが”なんとか”なのよっ

 まったく ぷんぷんっ」

「い、いや  だ からって、蹴られたと こ  おもいっきり 叩かなく て も」

マ、マジで痛いんだから

「いいから黙ってって 符よ我が問いに答えよ 汝の名は?」

『我は治癒符、傷つき者を癒す回復の符』

「うごぉ! だ、だから蹴られたところを〜」

お札張るならもう少しゆっくりしてくれても ・ ・ ・ 

「まったく、あんたってどんな体してるの?

 曼珠沙華に蹴り飛ばされて打ち身だけだなんて、普通なら砕け散っててもおかしくないんだよ」

個人用でも流石はディストーション・フィールドといったところだけど、

言ってもわかんないだろうな。

「まぁ、それはともかく、

 ユキナちゃん」

「? なに」

「跳ぶよっしっかり掴まって!」

「え? きゃぁぁあぁぁああぁぁっ」

ゴガァァン!!

ワイヤードフィスト、距離があっても関係無しだな。

「ぐぅ!」

やっぱり動くとまだ痛みが、

「わああっ アキト大丈夫!?」

「ぜぇぜぇぜぇ ・ ・ ・ 多分」

ユキナちゃんのお札のおかげでだいぶ楽になってきてる、ん?

「あれは」

「アキトの一撃の結果じゃない、

  ・ ・ ・ あ、でも不発だったんだよね」

アサルトピットとフレーム本体との継ぎ目に斬撃のあとが刻みついている。

多少は装甲を削れたか、けど内部にダメージは無いみたいだな。

『斬る』より『突く』方がいいのか?

だが『突く』だと装甲を貫けたとしても、大したダメージを与えられない ・ ・ ・ 

どうする頭部のAIを狙うか?

「って、刀が無い!?」

蹴り飛ばされた時にどこかに飛ばされたかっ?

「あそこに落ちてるわよ」

「どこにっ ・ ・ ・ エステバリスの足元」

丁度エステバリスの手前3メートルほどの処に突き刺さっているな、また面倒な所に、

簡単に取らせてはくれないだろうな。やっぱり

「アキト、あの刀拾って曼珠沙華に打ち込むのにどれだけかかる?」

「 ・ ・ ・ そうだな、15いや10秒かな」

「わかった、10秒ね」

ヴゥンッ

「!! 来るっ」

「爆裂系は使えないのよね 符よ我が問いに答えよ、汝の名は!」

我は火球符、赤き力を宿す火炎の符』

撃ち出されたワイヤードフィストに直撃するが、軌道を僅かにずらしただけだ。が

「それで充分!」

背後でそれたワイヤードフィストが壁に直撃した音を聞きながら、一気にエステバリスに迫るっ

ザォッ

突き刺さっていた刀を引き抜き ・ ・ ・ 

ヴァッ!

くっ向こうが早いかっ

「させない! 符よ我が問いに答えよ、汝の名は!」

『我は雷光符、天駆ける紫電の符』

雷撃が装甲で弾ける、あの程度じゃなんの効果もないだろうけど、

目眩ましにはなるっ

ドォ!!

空振りしたエステバリスの拳が床を砕く、

「おおおおっっっ!!」

 

 

木連式抜刀術・突伎

「貫」

 

 

ギュギャギャギャッ!

「くっ」

ピキィィン

刀が折れた ・ ・ ・ やはりもたなかったか。

だがっ

グラ ・ ・ ・ ドゥッ

折れた刀の突き刺さった頭部が小爆発を起こし、

ドオォォン ・ ・ ・ 

土煙を上げ、エステバリスは地に伏した。

「やったぁぁ!」

「ハァァ ・ ・ ・ ふぅ、

 ユキナちゃん、援護助かったよありがとう」

「なに言ってるの、アキトこそスゴイわよっ」

 

 

 

 ・ ・ ・ リィン

「本当だわ

まさかエステバリスに勝てる人間が居るなんてね」

「「!?」」

 

 

 

 

 

 

第6話ヘ

 

 

代理人の感想

・・・短い(爆)。

この長さでちゃんと面白くて起承転結つけて、ヒキもあるってのは流石ではあるんですけど。

まぁ、小説でも新聞連載なら一話でこれくらいの長さが普通ですが・・・・・・・・・新聞連載?