・ ・ ・ リィン
「本当だわ
エステバリスに勝てる人間が居るなんてね」
「「!?」」
機動戦艦ナデシコ ファンタジーストーリー
『Welsh』
第6話『妖精』
「誰だ! ・ ・ ・
あ゛〜〜〜〜!!!」
「なになに?何が居たの?
あっ妖精じゃないのっ めっずらしいなぁ」
いや、まぁオレもホンモノの妖精なんて始めて見たけど、
「あらあら、私ってそんなに驚かれる存在なのかしら?」
4枚の透明な羽を羽ばたかせながら呟く、その妖精は ・ ・ ・
「イネスさん!!」
「あら?どこかで会った事あった?
私には覚えがないんだけど」
ハッ いかんイネスさんがいる筈ないんだ、それにイネスさんが妖精なんて反則だ ・ ・ ・
ゴキィィン!
「い、痛い」
「貴方、今失礼な事考えてたでしょう」
す、するどい 流石イネスさん・ ・ ・
「で? どこかで会った事あったかしら?」
「 ・ ・ ・ オレの記憶違いでした」
「? だけど私の名前知って ・ ・ ・ 」
「偶然の一致です」
「そう
じゃあ そう言うことにしておきましょうか」
っく、やはりユキナちゃんと同じにはいかないか。
「じろじろぉ アキトなんか失礼な事考えてない」
・ ・ ・ ユキナちゃんも鋭かったっけ、
「まっ 立ち話もなんだしついてきなさい、
ひさしぶりのお客だもの、お茶でもご馳走してあげるわ」
そう言うと、イネスさんは奥の方へ飛んでいった。
「 ・ ・ ・ どうするアキト?」
「う〜〜ん、取り敢えず大丈夫じゃないかな?
せっかくご馳走してくれるって言ってるんだから、御呼ばれしとこう」
「むぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
まぁいいか、じゃ行きましょアキトッ」
コポコポコポ ・ ・ ・ カチャ
「ミルクと砂糖は好みでいれてちょうだい」
「「 ・ ・ ・ 」」
30センチほどの大きさで器用にコーヒーを入れてくれたのはいいんだけど ・ ・ ・
「あら? どうかしたかしら?」
「あのぉ、妖精さん」
「イネスでいいわよお嬢さん」
「じゃぁ私もユキナって呼んで、
で、イネス、何でビーカーにコーヒー注いでるのかなぁっと」
そう、オレもそれが疑問なんだ。
「何言ってるの、研究室でコーヒーを入れるのはビーカーって決まってるじゃない」
決まってない決まってないぞイネスさん!
「へぇ そうなんだ」
お願い納得しないで、ユキナちゃん。
「そっちのまっくろくろすけクンは何か言いたそうね」
「えっと ・ ・ ・ いやぁその」
「じゃぁフラスコでいいかしら? それとも試験管の方が ・ ・ ・ 」
「ビーカーで文句ありませんですっ」
と言うか試験管でどうしろと言うんですか ・ ・ ・
「ねぇねぇイネスさっき『研究室』って言ってたけど、ここって『異跡』じゃないの?」
「う〜んそうね、じゃぁここはどうして『異跡』って呼ばれてたと思う?」
「え? それは大昔に造られた異文明のモノだからで ・ ・ ・ 」
ズズズ ・ ・ ・ ニガイ、コーヒーってこんなに苦かったんだな。
「それでは、造られた当時はなんて呼ばれていたのかしら」
「 ・ ・ ・ あっなるほどねぇ昔は研究室だったんだ」
「そう言うことよ、それで貴方達はここに何のようだったのかしら?
見たところ、『異跡荒らし』じゃないようだけど」
「近くの村からここの『遺跡』の調査を頼まれた」
「その話を横で盗み聞きしていてついて来た」
「 ・ ・ ・ そうだったの?ユキナちゃん」
「そうだったの」
「いや、そんなにあっけらかんと言われても ・ ・ ・ でもなんで?」
「だって『魔神窟』なんで名前なんだもんてっきり『遺跡』かと思って、
まさか『異跡』だったなんてねぇ」
「あらあら、それは残念だったわね」
・ ・ ・ はて?『遺跡』と『異跡』ってなんだ?
「説明しましょう」
・ ・ ・ 心の中読まれた!?
「コホン、
この世界には大きく分けて2種類の『遺跡』が存在しているわ。
1つは、今から2000年程昔に栄えた魔法文明が残した『遺跡』
ユキナちゃんが言ってる『遺跡』はこっちの方ね。
その名のとおり、現代の魔法技術を上回る魔法関連の遺物が眠ってる所、
稀にユキナちゃんが期待していた『魔神』―正確には高位魔族だけど―が封印されている事もあるわ。
そしてもう1つは、いつ頃の物なのか?誰によって造られたのか?まったく解っていない謎の『異跡』
魔法文明遺跡とはまったく異なった系統の技術で造られ現代の文明と何の接点も持たない、
まるで異世界から切り取られこの世界に組み込まれたような『遺跡』
異文明遺跡、『異跡』
ここはそんな『異跡』の1つよ」
・ ・ ・ わかったような、わからなかったような ・ ・ ・
「ふぅん ところでイネスはこんな所で何してるの?」
「何をと言われても困るけど、強いて言うなら此処から動けないから此処に居る ・ ・ ・ かしら」
「なんでまた」
「その理由は簡単ね、私はサイバネティックフェアリーだからよ」
「「サイバネティック?」」
「そう、私は黒百合の制御装置として造られた存在、だから黒百合本体からは離れられないのよ」
・ ・ ・ つまり、ルリちゃん達と同じで遺伝子改造を受けたって事か。
この世界までそんな事をしているのか!! クソッ
「くろゆり?セイギョソウチ? 何なのそれ」
「あれよ」
イネスさんが指差した先には、
「あれは ・ ・ ・ 剣」
「なんで水槽に入ってるかなぁ」
まぁ 確かに水槽の中に漂っている剣ってのは違和感ありすぎるけどね。
「でも、剣のセイギョソウチってなに?」
「あらあらわからないかしら、そっちのまっくろくろすけクンはわかったみたいだけど、
そうねぇコッチの言葉にするなら『剣に宿っている』って事」
「剣に宿ってるって、それじゃぁイネスって妖精じゃなくて剣霊なの!?」
「さぁ? 私を造った連中にそう言う区分は無かったみたいだから」
「ふぅぅぅん ・ ・ ・ 」
ユキナちゃん何か考え始めたのか?黙り込んじゃったけど。
「ところでイネスさん、オレにはテンカワ・アキトって名前があるんだけど」
「あらそう、でも聞いてなかったから知ってる筈ないでしょ」
「 ・ ・ ・ 此処に降りてくるまでの様子見ていた人の言うセリフじゃないですよ」
「何のことかしら」
あ、冷静な素振りしてるけど汗が流れてる。
「それはともかくとして貴方、興味深いわね」
「オレが?」
う〜ん、何かイネスさんの興味引くような事したかな。
「ええ、『かなり』ね
貴方のボディアーマーとそのバイザー、魔導の品じゃないわね」
スルドイ、世界が変わっても流石イネスさん。
「それにさっきのエステバリスとの戦闘、貴方の攻撃はエステバリスの急所を的確に突いていた、
ある程度の知識が無いとできる事じゃないわ」
・ ・ ・ 確かに。
「かと言って『異跡』に関して詳しい訳じゃないようだし ・ ・ ・
ホントに興味深いわ♪」
ずぃぃぃぃっと顔を近づけてくるイネスさん、なんか昔に似たような事があったような気がするなぁ
大きさが違いすぎるけど。
「わかったわっ、イネスも一緒に此処からでよう!!」
「「はい?」」
ユキナちゃん何をいきなり?
「だから、イネスも此処から出ようって言ってるの」
「あのユキナちゃん、話の前後が私には見えないんだけど?」
大丈夫ですイネスさんオレにも見えません。
「もぅ、しょうがないなぁ
イネスって剣霊なんでしょ、と言うことは寄り代の剣からそんなに離れられない!」
「そうね、離れてもせいぜい500メートルぐらいかしら」
「となれば当然イネスはこの『異跡』の外を見たことが無い!」
「失礼ね、まだ生きてる『異跡』のネットワークで情報だけは入ってくるわよ」
「更にっ此処が造られたのは少なくても数百年前!その間イネスはずっと一人で過ごしてきた!!」
「私が目覚めたときにはもう『異跡』化してたし、此処まで入ってこられる『異跡荒らし』もいなかったわね」
「この世に生を受けたのに外の世界を知らないなんて不幸はっ神が許してもこのシラトリ・ユキナが許さない!!」
神が許してもって ・ ・ ・
でも、言ってる事は間違いじゃないしオレもそう思う。
「う〜〜ん、それも楽しそうね
でも無理よ」
「ええぇ どうしてぇ!! 剣霊って事はその剣を持っていけばイネスも一緒についてこれるんでしょ」
「そうね、黒百合を持てる人が居るならね」
「ヘ?」
「イネスさん、持てる人ってどういうことです?」
「簡単なことよ、使う者を選ぶ剣だからよ」
「? 扱いずらいって事ですか」
どう見ても黒い日本刀にしか見えないけど。
「違うわ、黒百合には意思が宿ってるのよ。私とは別にね」
「なるほど、その意思に認めてもらわないと持つことも出来ないって事か」
「剣霊がついてるのに、それとは別に剣に意思が宿ってるなんて ・ ・ ・ なんて贅沢な剣なの」
「そう言うことで私は此処から動けないのよ、でも貴方達の気持ちだけはありがたく頂くわ」
半ば諦めたような口調でイネスさんが言う、本当は外に出てみたいんだな。
「なに簡単に諦めてるのよ!!そんなのやってみないと判らないじゃないっ」
・ ・ ・ ギシィィ
「いい娘ね、ユキナちゃん。でも」
「その前にやる事が出来たみたいだな」
「そう言うこと」
ギッギギッ
「? イネスもアキトもなに言ってる ・ ・ ・ 」
「来るわよ」
「跳ぶよユキナちゃん!!」
「えっえ?ええ!?」
ドガァァアアァァァ!!
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代理人の感想
は〜、さっぱりさっぱり。(謎爆)
・・・いやその、イネスさんの姿をした「説明妖精」なんてインパクトが、ねえ(爆)?