「来るわよ」
「跳ぶよユキナちゃん!!」
「えっえ?ええ!?」
ドガァァアアァァァ!!
機動戦艦ナデシコ ファンタジーストーリー
『Welsh』
第7話『再闘』
研究室の壁を突き破って鋼鉄の拳がそれまで居たテーブルを粉砕する。
「曼珠沙華!? なんでさっき倒したのに!!」
壁の向こう、頭部の無いエステバリスが立っている。
確かにさっき倒したはずのエステバリスだ。
「AIは破壊したはずなのに何故動く!?」
「頭部のメインAIはね、今はサブAIで動いているのよ」
的確な説明ありがとう、なるほどそう言うことか。なら、
「イネスさん、サブAIの位置は」
「機体中央部、アサルトピット内よ」
また、ややこしい所に ・ ・ ・ 武器も無いのにどうやって破壊する?
「ああっ入ってきたぁ」
本来護るべき施設を破壊してまでこっちに向かってくるの、こいつ本当にガードロボットなのか?
「サブAIだからね、そんなに複雑な事は出来ないのよ」
オレ今の声に出してないぞ ・ ・ ・ まぁいいか、それよりもっ
「イネスさん、此処の保安システムはどこですっ」
保安システムさえ解除すればエステバリスも止まる筈だ。
「残念だけど保安システム解除しても、あのエステバリスは止まらないわよ」
「どうしてですっ」
再び襲ってくるワイヤードフィストをかわしながら言い返す。
前に戦っていたホールと違って此処じゃ動きが取れない、そういつまでもかわせないぞ。
「さっき言ったようにサブAIは単純な行動プログラムしか入ってないのよ、
保安システム解除してもその信号を認識できないわ」
「 ・ ・ ・ なんて安物」
「まったくね」
頭痛くなってきた ・ ・ ・
「なに2人して訳のわからない事話してるのよっ今は曼珠沙華を何とかするのが先でしょう!」
その何とかする方法を話していたんだけどね、
「とにかく武器がないことには ・ ・ ・
イネスさん、此処に何か武器になる物は!?」
「研究室に武器なんて置いてるわけないでしょう、あるのは気難しい剣一本よ」
この際使えるかどうか怪しいものは削除だ。
あるのはユキナちゃんの符術のみか ・ ・ ・ 逃げる事を考えた方がいいのかな、
イネスさんなら塞がった入り口以外の出入り口を知ってるかも、
「残念だけど、無いわよ」
「まだ何も言ってないんだけど」
「こんな状況で考えそうな事は簡単に予想できるんじゃないかしら」
「ごもっとも」
「もぉぉぉっ なに落ち着いて話してるのよ!!」
確かに、落ち着いてる場合じゃないなっ
脱出は無理、バッテリー切れまで逃げようにも逃げれる範囲が狭すぎる、
「だったらっ」
「え?ちょっとっアキト!?」
「攻撃あるのみ!!」
「素手で!?無謀すぎるわっ」
背にユキナちゃんとイネスさんの声を聞きながら一気に首無しエステに迫るっ
「うまくいくかどうか ・ ・ ・ フィールド収束!!」
全身を包むように展開していたディストーション・フィールドを拳に収束するようにイメージする。
エステバリスに乗っているときはよく使ってる方法だが ・ ・ ・ 生身の状態でうまくいくか?
ギュゥン!
「っ よし はぁぁぁぁっっっっ!!!」
『ヴゥウウォォォオオォッ』
エステバリスが唸りのような音を上げ ・ ・ ・
ガシュッ!!
「うわぁ 凄い素手で曼珠沙華と殴り合ってる ・ ・ ・ 」
「確かに並みの体捌きじゃないわね」
エステバリスを格闘戦を始めてしまったアキトを半ば呆然と見ているユキナに軽く相槌を打つが、イネスの頭は別の事を考えていた。
『あれはディストーション・フィールドを圧縮してる? エステバリスを使わずにそんな事ができるなんて、
さっき一瞬見えた銀の輝線 ・ ・ ・ あれはナノマシンよね
ナノマシンを介してディストーション・フィールドを操ったのかしら?
出来ない事もないけど、そのためには尋常じゃない量を注入しないといけないわ
その前に、ナノマシンは遺伝しないのだからこの時代の人間が持っている筈ないし
テンカワ・アキト ・ ・ ・ だったわね、本当に興味深い人間ね』
・ ・ ・ ゴポッ
「 ・ ・ ・ そう、貴方もそう思うのね」
「イネス何か言った?」
「ん?別に何も言って無いわよ」
不思議そうな顔をしているユキナちゃんに手をパタパタと振って答える。
「でも、この様子ならアキトくんに任せて大丈夫そうね」
「そうかなぁ 大したダメージ与えてるようには見えないけど?」
ユキナの言うとおり、アキトの攻撃はエステバリスに対してダメージを与えていた。
が、アキトも素手で勝てるとは始めから考えておらず、時間稼ぎに専念していた。
「心配無いわ、後15分もすればバッテリー切れで止まる筈よ」
「『ばってりー』ってなに?」
「エステバリスの力の素よ」
「じゃぁ『えすてばりす』わ? さっきからイネスやアキトが時々言ってるけど」
「貴方達が『曼珠沙華』って呼んでる機械人形の正式名称」
「へぇ〜 勉強になるなぁ」
袖から取り出したメモ帳に聞いたことを書き込むユキナ、どこかで使うつもりなんだろうか?
「それにしても、さっきまで焦って逃げ回ってたのが馬鹿らしくなるね」
「 ・ ・ ・ 見ているぶんにはね」
あっけらかんとした感じのユキナにイネスがポツリと言う、
確かに充分に距離を取って見ているだけなら気楽なのだが、エステバリスと格闘戦をしているアキトは必死の形相だ。
時々、ナノマシンの光が浮き上がってるし ・ ・ ・
「まぁっ ゆっくりのんびり待って ・ ・ ・ られないか」
「どうかしたの」
それまでのんきな表情を浮かべていたユキナの顔が急に引き締まった。
その視線の先には通風孔から這い出してくるバッタが映っていた。
ブォンッ!
「くぅっ」
バッテリー切れまであと10分そこそこ、何とか凌ぎきれるか?
「!! フィールドッ」
ガガンッガンッ
砕けた床や机の破片か、流石これはかわしようが無いな。
・ ・ ・ フィールド発生装置のエネルギーはもつのか?
ブンッ
ッ よけいな事考えてる余裕は無いな、エネルギーが切れたら切れただっ
「符よ我が問いに答えよ 汝の名は!」
『我は雷光符、天駆ける紫電の符』
これはユキナちゃんの符術呪文!?
「ユキナちゃんどうした ・ ・ ・ バッタ!?」
通風孔からかっ ただでさえ余裕が無い時にっ
「大丈夫よ、飛蝗ぐらいなら私1人でも何とかなるわっ」
数匹まとめて符術で吹っ飛んだ ・ ・ ・
ユキナちゃんは1人で此処まで降りてきたんだ、あのくらいのバッタなら任せて大丈夫か。
「ユキナちゃんそっちは任せたっ」
「おっけー 任されたわ!」
緊迫感が無い返事だな、そのほうがユキナちゃんらしい ・ ・ ・ ッ!!
あれはっ!!
「ユキナちゃん後ろ!!」
「え?」
ユキナちゃんの背後、別の通風孔から這い出てきたバッタが背中の装甲を開いた。
駄目だっ あれじゃ直撃を受ける!
「くそっ!
間に合えぇぇぇぇっ!!」
ドガァアアァアァァァアァッッッ!!!
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代理人の感想
・・・・・・・全く根拠も脈絡も関連性も無いんですが、
「封印された黒い剣」というと某シリーズの「魔剣カ○ス」っぽく思えてしまうのは何故なんでしょうか(爆)
でもこの話のアキトだとイマイチ似合いそうにないかなぁ・・・・
「鬼畜王アキト」ならピッタリだけど(謎爆)。