ドォォォオオォッ!!
「くっ 何処をやられたか!!」
「船尾に直撃ですっ!」
「消火作業っ防水処理っいぞげっ!!」
「はっ!」
「魔導師隊に連絡、『障壁強化セヨッ』だ!」
「無理ですっこれ以上は魔導師達が持ちません!」
「いいからやらせろっ 終わったらゆっくり休ませてやるっ」
「りょ了解っ」
『くそっ一体なんだって言うんだ!!』
部下に命令を出しながら船長は胸中で悪態をつく
今、彼の指揮する船【ピースサウザンド】は正体不明の船から攻撃を受けていた
公海上で襲ってくる正体不明の船、と言えば海賊船ぐらいだろうが、この【ピースサウザンド】は海賊船がよく襲う輸送船や旅客船の類ではない
『この船に仕掛けてくるんだ、ただの海賊船ではないな』
世界でもっとも美しい船の1つに数えられる【ピースサウザンド】どう考えても間違って襲ってきたとは思えない
初めからこの船だと知って襲ってきている、ならば当然相手は【ピースサウザンド】がピースランド王族の専用船だと言うことも承知の上であろう
どがぁぁっ!
再び直撃音がブリッヂに聞こえてくる
「敵船の位置は!?」
「右舷後方0.8海里にまで接近されてます!」
「くっ」
苦虫を噛み潰す、このままではそう遠くないうちに接舷されてしまう
「総員に白兵戦準備をさせろ!!」
「え!? 白兵戦 ・ ・ ・ ですか?」
「そうだ!」
「ですが船長、この船には ・ ・ ・ 」
「そんなことはわかっているっ!」
戦闘要員はほとんど乗っていません、と続けようとした副長の言葉を遮る
「いいから準備をさせろ!!」
「りょ、了解しました!」
機動戦艦ナデシコ ファンタジーストーリー
『Welsh』
第2章
『The princess of Lapis−lazuli』
第3話 『遭遇』
「う〜〜み〜〜は ひろい〜〜な おおきぃいなぁ〜〜♪」
「シエル、ご機嫌だよね」
「出航してからかれこれ3時間歌い続けてるな」
「どんな声帯してるのかしら?興味深いわ」
3時間くらいなら歌い続けてもそう不思議じゃないけど、ミスマル親子級ヴォイスでだと流石に脅威的だ
現実問題としても脅威だけど
「よっぽど『異跡』に行きたかったみたいね、彼女があそこまで執着する『異跡』 ・ ・ ・
いったいどんなものなのかしら?」
「? イネスさん知らないんですか?」
「『今』あそこがどうなってるかは知らないわ、あそこはかなり前に『異跡』のネットワークから外れてしまっているし」
「でも、元々なんだったかはわかるんじゃないですか?」
「そうね、残っていた情報によれば『研究所』だったようね」
研究所 か、また妙なものでも出てくるかも ・ ・ ・
「って事は、イネスのいた『異跡』と似たような所なの?」
「う〜〜ん、ちょっと違うわね」
「え? だって『魔神窟』は昔『研究室』だったって言ってなかった」
「ええ そう言ったわよ」
「だったらやっぱり似たようなものになるんじゃないの?」
「『室』と『所』の違い ってとこですかイネスさん」
「なかなかスルドイわね、そう言うことよ」
「???」
「簡単に言うと、規模のが違うってことだよユキナちゃん」
「ようするに、向こうの方が大きいってこと?」
「まっ そう言うことね『研究所』と言うより『実験プラント』と言った方がいいくらいよ
島の地下全部がそうだったらしいわ」
「島全体って、シャレにならない広さね」
ユキナちゃん顔が引きつってるな、でもそれだけ広いと調査にいつまでかかるか想像できないな
「そうねぇ 単純に計算して『魔神窟』の10倍以上はあるかしら?」
「10倍 ・ ・ ・ 」
ユキナちゃん固まっちゃった、気持ちはわかるけど
「セキュリティが生きてるとしたら ・ ・ ・ シャレにならないっすよ」
ようするに、無人エステバリスが10機は居るかも知れないって事だもんな
「シャレにならないなんて言うレベルじゃなかったわね、『魔神窟』みたいに警備の薄い場所じゃなかったようだから」
ピシッ
・ ・ ・ はい? 今 なんと?
「だから、警備の薄い場所じゃないって言ったのよ」
「薄くな「なんですってぇぇぇ!!」ぐぁっ」
「きゃぁ」
み、耳が ・ ・ ・ 結構効いたぁ
「ユキナちゃん ・ ・ ・ なんて声出すの」
「あ、ゴメン でもさっきのイネスの言葉は聞き捨てならないわよっ」
確かにそうなんだけど、ユキナちゃんの声も凄まじかったぞ飛んでたイネスさん撃ち落したんだから
「で、イネスどう言うこと!?」
「あ、頭がくらくらするわ
はぁ どう言うことって言われても、言葉通りとしか言いようがない むぎゅ」
「じゃあ何、イネスは『魔神窟』より遥かに手強い『異跡』に私たちを連れて行ってたって言う訳!? ねえっ ねえ! ねえぇぇ!?」
「モガ、モガモガッ」
イネスさんを両手でしっかりと掴んで振り廻したりなんてしてると何も答えられないと思うんだけど
「何か答えなさいよぉぉ」
ブンブンブンブン
「モ、モガ ・ ・ ・ 」
白目になりかけてる、そろそろ止めようか
「ユキナちゃん、それじゃあ答えたくても答えられないよ」
「え? あああっごめ〜ん」
イネスさんの状態に気づいたのか慌てて手を離す
「わ、私を殺す気なの? まったくぅ
う゛う゛ 目が回ってるぅ」
平衡感覚が狂ったのかふらふら〜っと飛んでオレの肩に倒れこむように着地、着肩? ・ ・ ・ どっちでもいいか
「ま、まったく人の話はちゃんと聞きなさい
いくら私だって死ぬかもしれない所になんて連れて行くわけないでしょ」
「だってぇ」
「だってじゃないのっ心配しなくてももうあの『異跡』は機能を停止しているのよ」
「ほえ? そうなの?」
「そ・う・な・のっ 言った筈よあの『異跡』はネットワークから外れているって」
「イネスさん、それだけで止まっていると判断するのは危ないんじゃ?」
「それだけで充分なのっ」
此処まで言い切るなら大丈夫なんだな、それにこれ以上聞くと『あれ』が始まる可能性が ・ ・ ・
「でもぉ」
ゲッ
「仕方ないわね、説明し「ものすごく良く判ったからもう大丈夫!!」 残念ね」
・ ・ ・
助かったぁぁぁぁ
「あ、危なかった」
「ユキナちゃん、不用意な事はやめようね」
「うん、そうする」
流石のユキナちゃんでも『あれ』は辛いのか、というか辛くない人なんているんだろうか?
・ ・ ・ イネスさんと同類でないと無理だなきっと
いや、似たもの同士だとかえって反発しあうかも知れない、となれば
「アキトくん、何を考えているのかしら?」
「い、いいえ 特に何も」
「ふぅん」
う゛視線が痛い
「まあまあ、イネスもそんなに不機嫌な顔しないでよ、せっかく初めての航海なんだからぁ」
「なんだかその『はじめてのおつかい』みたいな表現止めて」
「いいじゃなのぉ 実際はじめてなんでしょ」
「それはそうだけど」
「じゃあもっと感動しなさいよぉ 見なさいっ
晴れ渡った 蒼い空!
どこまでも広い 蒼い海!
そして遠くに見えるは 海賊船に襲われてる白亜の船 ・ ・ ・ え?」
ヘ?
「あらホント、始めて見たわ海賊船なんて」
「オレも始めてだけど、本当に帆に髑髏マークが付いてるんだ ヘー」
「私は何回か見たことあるけど、どの船も髑髏マークが付いてたような ・ ・ ・
海賊協会か何かで付ける事が義務付けられてるのかなぁ」
「それと、私の記憶が確かなら襲われているのは【ピースサウザンド】に見えるわ」
「偶然ですね、オレもそう見えます」
「って言うより間違えようがなく【ピースサウザンド】よね、あれって」
・ ・ ・
・ ・ ・
・ ・ ・
「は!?惚けてる場合じゃない サイゾウさんに報せないとっ」
「気づいてるよ」
「「「どわぁっ」」」
気づかなかった、いつの間に
「まったくあの王家は私にとって本当に疫病神かも知れませんね」
・ ・ ・ シエルも居たんだ、また気づけなかった
「さてどうしたもんかね」
「どうしたもこうしたもないでしょっ助けに行くに決まってるじゃないの!」
「ふむ、とお嬢ちゃんは言ってるがどうする学者さん」
「そうですね」
丸眼鏡をクイッと上げ
「ほおっておきましょう」
キッパリと言い切る
「「なっ」」
ユキナちゃんとオレが同時に声を上げる
「此処はクルスクからそう離れた海域じゃないです、心配しなくても緊急信号をキャッチした警備艦艇が直ぐにでもやってきます」
「それまでにやられたらどうするのよぉ」
「大丈夫です【ピースサウザンド】はただの海賊風情に沈められるほどヤワには造られていません」
戦艦クラスでないとまず無理です、と続ける
「むぅー でもぉ」
大丈夫って言われてもユキナちゃんの性格じゃ見過ごせないんだろうな ・ ・ ・ オレもだけど
「学者さんそれがな」
「どうかしたんですか?」
「おーいっ どうなってる?」
シエルに苦笑いを返してサイゾウさんが舵輪付近で何かしていた船員に声をかける
「駄目ですっ この辺り一帯に強力な魔導妨害がかかっているらしく通信不能です」
「って事みたいなんだな」
あ、通信機操作していたんだ ・ ・ ・ 通信不能?
「えぇーっ 通信不能って事はっ!!」
「当然。緊急信号なんてクルスクまで届いていないわね」
「だ、大丈夫です【ピースサウザンド】なら海賊船を振り切って港に戻るくらい ・ ・ ・ 」
「期待を裏切って悪いんだが、オレの見たところ襲ってるのはただの海賊船じゃないな、ありゃ多分巡洋戦艦クラスと見た」
「戦艦クラスって、それじゃ!」
「沈められるかもな」
「だ、だからと言ってどうするんですかっ?『雪谷』は戦闘艦じゃないんですよっ」
そう『雪谷』は戦闘をする船じゃない、戦艦の攻撃を受ければひとたまりもない だけどっ
「だからと言って、このまま黙って見ている事はオレには出来ない」
「そうよっアキトの言う通りよっ」
「アキトくんならそういうと思っていたわ」
「オレとしても船乗りとして見過ごすわけにはな」
「 ・ ・ ・ わかりました、私だって何とかしたいと思っているんですから
でも、実際問題どうするんですか?」
「『雪谷』自体に戦艦と遣り合う戦闘能力はないでしょうから、接舷してアキトくん達に乗り込んでもらうしかないわね」
「それしかないですね」
イネスさんの言葉に頷く、向こうに乗り込めないかぎりオレにはどうしようもない
「乗り込むって、海賊船の大きさからいって少なく見積もっても500人以上はいますよっ」
「大丈夫大丈夫っなんたってアキトは生身で『曼珠沙華』倒せるぐらいだもん、500人ぐらい何でもないって」
「え゛!?」
あ、シエルが固まった ・ ・ ・ 普通は信じられないだろうから仕方ないか
「 ・ ・ ・ テンカワさん本当なんですか?」
「えっと、一応」
なんだかシエルから妙なオーラが立ち上ってるような
「またまたぁ一応だなんて謙遜して、完全稼動状態の曼珠沙華をぼっこぼこにしたじゃない」
「曼珠沙華 ・ ・ ・ 完全稼動状態 ・ ・ ・ 」
「シ、シエル?」
「テンカワさんなんてことするんですかぁぁぁ完全な状態の曼珠沙華なんて滅多に有るのもじゃないんですよぉ私だってまだ見た事ないのに貴方はそんな重要文化財を破壊するだなんていったいどう言うつもりなんですかぁぁぁ!!いいですかそもそも完全な状た ・ ・ ・ 」
プスッ
「はう」
「イネスさん、助かりまし「私に断りもなく説明しようだなんていい度胸だわ」」
・ ・ ・ なるほど、やっぱり似たもの同士だと反発しあうんだ
「さて続けていいかしら?」
コクコクコク
「で、アキトくん達が乗り込むことが出来たならあとは問題無いでしょうから、さしあたっての問題は」
「発見されないように『雪谷』が接近できるかどうかって事か?
この『雪谷』をそこいらのトレジャーシップと同じに考えてもらっちゃぁ困るぜ妖精のねーちゃん」
そう言ってサイゾウさんは不敵な笑みを浮かべる
「なら、決まりね」
「よーし、『ピースサウザンド』救出作戦開始よ!!」
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あとがき
串刺しめるう゛ぃる(以下串め):う〜〜〜〜〜〜ん
ルリ:まだ出番が無いのは不満ですけど、
串め:う〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん
ル:ようやく出てこれそうな雰囲気になってきたのでよしとしましょう
串め:う〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん
ル:ってさっきからなに唸っているんですか、また血が吹き出しますよ
串め:(思うんだったら第七聖典使わないでよ)
いやね、どうも最近このままアキト&ユキナで進んでーって感想が多いからそうしようかなぁ〜っと ・ ・ ・