Bパート
連合軍ルクセンブルグ本部
ルクセンブルグ基地が見下ろせる丘の上でダッシュが、静かに立っていた。
「これだけの攻撃を受けても、まだ降伏の知らせはないか、カワグチ准将 ・ ・ ・
なかなかしぶとい人だね」
砲撃による爆煙や爆発による煙で、黒や赤に染まっているルクセンブルグ基地を見ながら今だ抵抗を続ける敵将を思う。
すでに、クリムゾンの部隊は基地を囲むように展開しており、退路は断っている、同じ理由で外部からの補給や増援なども入ってこれない。
だが、流石に連合軍本部、その程度でまいるほど簡単ではない。
今展開中のクリムゾン部隊数ではルクセンブルグ基地を正面から攻略できない、かと言って増援が来るまで待っているほど暇では無い。
その状況を打破するためにために、今ラピス達が此処に来ているのだ。
「だけど、憎らしい男であってほしいな ・ ・ ・
でないとラピスの気持ちが鈍る」
キッとした視線をルクセンブルグ基地、その司令部ビルがある辺りを向ける。
ルクセンブルグ基地 指令官室
窓の外、基地を包囲するクリムゾン軍を憎々しげに睨み付ける、いかにも軍人と言った面もちの男が立っていた。
「ふざけたことをっ この連合軍本部がそう易々と墜ちると思っているのか!!」
ガンッと拳を執務机に叩きつける。
「クリムゾンなどこの基地に一歩たりとも入れさせるものかっ!!」
その決意に嘘などは微塵も入ってはいなかったが、
ガチャ
「確かに、この本部の警戒は完璧でした」
「誰だっ!!」
扉が開く音と女の声に、カワグチ准将は慌てて振り返る、
コッコッ
軍靴を響かせ部屋に入ってくるのは、
「ですが それを使う人物にスキがあれば その城もやがて墜ちるでしょう ・ ・ ・ 」
「ラ、ラピス・ラズリ」
入ってきた人物を見た准将がうめくようにその名を呟いた、それは敵に侵入され驚愕したものとは違う響きが混ざっていた。
「やはりご存じでしたか」
ジャキッ
准将の反応にラピスは予想通りと言いたげに頷くと、銃を向けた。
「連合時代、貴方の私に対する警戒が異常に強いので、そうではないかと思っていました」
普段のラピスを知る者が聞けば耳を疑うような丁寧な口調で、准将に向かって言葉を紡ぐ、が彼女からは鬼気とした重いプレッシャーが放たれていた。
「時代なのだっ!! 戦争と言う状況が私にそうさせたのだっ!」
恐怖に染まった顔でじりじりと後ずさりながら弁明する、そこには先ほどまでの連合軍准将の面影は無い。
「サンクキングダムへの攻撃は私の意志ではなく、連合全体の意志だったのだ!!」
ギリッ
その言葉にラピスは唇を強く噛む、
「サンクキングダムには連合に反抗する意志はなかった!!だが貴方は攻撃し、滅亡させたっ」
バイザーの下から准将を睨み付ける、
「当時ッ 地球圏統一連合の、拡張する軍事力を否定する国家が多かった、サンクキングダムもその1国、
近隣諸国に影響力のあった王族を一掃することで、反抗の芽を潰すことが出来ると公言ッ
自らその指揮を執ったっ!!」
一気に言い切ると、拳銃を准将に突きつける。
「ハァ ・ ・ ・ ハァ ・ ・ ・ はっ!?」
ラピスの気迫に押され、窓際まで後ずさっていた准将はあることに気づいた、今目の前にいるラピスがある人物の面影を持っていることに、
そしてそれが誰か気づいた時、自分がとんでもない勘違いをしていることにも同時に気づいた。
「き、貴様 ・ ・ ・ テンカワ・ルリ!!」
記憶の底のあったその人物とは、かつて自らが発案指揮をして滅ぼした国の王族の1人、生死不明とされているテンカワ・ルリ。
ラピス・ラズリとは、サンクキングダムの臣下の1人ではなく、彼が抹殺しようとしていた王族の人間だったのだ。
「うわぁぁぁぁっ!!!」
緊張の糸が切れたかのように叫ぶと、准将は執務机の引き出しから護身用の銃を取り出そうとするが、
ガァァァンッ!
「がっ ・ ・ ・ 」
それより速くラピスの放った弾丸が眉間を貫いた、
ズズッ ・ ・ ・ ドサッ
一度机の上に倒れた元准将の体は、ゆっくりと床の上にずり落ちた。
「静かに眠って ・ ・ ・ 私の中の怒れる”テンカワ・ルリ”」
その様子をどこか冷めた目で見ながら、ラピスは呟いた。
洋上 クリムゾン艦隊
艦隊の旗艦である空母の艦橋で、ユキ・キクノは彼女(?)にしては珍しく深刻な顔で考え込んでいた。
『クリムゾンを ・ ・ ・ 学べ、私はハーリー様のことを理解していないと言う事なの?
そんな、まさか』
幾度も反芻される問いに、明確な答えは浮かんでこない。
だが、今回ユキの行ったナデシコ殲滅作戦がハーリーの望んでいた物ではなかった事は間違いないのだ。
『あの方は、私に何を望んでおられるのだろう?』
ユキとしてはかなり珍しく落ち込んでいる、どのくらいかと言うと、その影響で艦橋要員の誰1人として、一言も話せなくなっているほど、
ピィーッ ピィーッ ピィーッ
「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
ハッ! え〜と か、艦長っ 505輸送中隊のMS輸送機2機が着艦許可を求めておりますが」
雰囲気に飲まれて、しばらく呼び出し音に反応出来なかったオペレータが慌て艦長に報告する。
やはり、艦橋要員以外の人間がいると運航上問題があるようだ。
「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 」
反応無し。
「艦長っ!!」
「!! す、すまん どうした?」
我に返った艦長が慌ててオペレータを振り返る、普段ならまだしも今はユキ特佐が居るのだ、下手な事をすれば即降格。
もっとも、その原因を作っているのはユキなのだが ・ ・ ・
「505輸送中隊のMS輸送機が2機、コンタクトを求めています、どうしますか」
もう一度同じ事を艦長に向かって、報告する。
「識別信号は?」
「我が軍のエアリーズ輸送機のモノです」
「よし、許可する」
「了解、こちら『ビックローズ』、着艦を許可する」
この時、艦長は疑問に感じるべきであった、何故予定でもない輸送機が着艦を求めてきたのか?と、
クリムゾン総帥ハーリーを護衛するためのこの艦隊の航路は一部の者を除いて、味方にも知らせていなかった筈なのに ・ ・ ・
しかし、先ほどの失態の為に咄嗟の判断が出来なかった、そしてそれはオペレータを含めた艦橋要員全員に言えることでもあった。
が、そうではない人物も存在している、
「【着艦? 許可? ・ ・ ・ 】
!! 待てっ その輸送機の所属基地は!?」
コォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオ
爆音を響かせ、着艦体勢で接近してくるMS輸送機、
「ハ!? はい ・ ・ ・ 所属は2機共にニューエドワーズ基地です」
いきなり飛んできたユキの質問に、戸惑いながらもオペレータが答え同時に凍り付いた、ニューエドワーズ基地と言えば ・ ・ ・
「馬鹿者!! それは敵だ!!!」
ユキの怒声が艦橋内に響きわたるが、もう手遅れだ。
ゴオォオオオオオォォ ・ ・ ・
ゴガアアアァァン!!
先頭の1機が低空飛行で空母をかすめると、隣を航行していた巡洋艦に激突、爆音と炎を上げた。
「くっ!」
窓に駆け寄り、激突の様子を見たユキが顔をゆがめる、輸送機は巡洋艦の艦橋部を直撃していた、あれでは艦長以下艦橋要員は全員死亡しているだろう。
「もう1機っ 本艦に突っ込んできますっ!!」
裏返った声でオペレータが絶叫する。
「撃ち落とせぇぇぇ!!」
接近してくる輸送機のエンジン音を斬り裂きユキの声が艦橋内を走った。
ドバババババババッ ガガガガガガガガガッガガガガッ!!
ダララララララララ!! ズガガガガガガガガガガガッ
空母の対空機銃が一斉に鳴動を開始し、突っ込んでくる輸送機を撃ち落とそうとするが、もう遅すぎた。
ガガガガガガッ ドンッ ゴォォッォオオオォ ・ ・ ・
右の第3エンジンを撃ち抜かれ、輸送機は大きく機体を傾け失速したがそれでも十分に空母を直撃するコースを保っていた。
が、パイロット席にいたエリナはそれでは満足していなかった。
「 ・ ・ ・ もう燃料もあまりないし、体当たりしたところでたいした被害は与えられない、
ここは、ナデシコで出るのが妥当ね」
そう呟くと、エリナは素早く貨物室のナデシコヘビーアームズに走った。
ゴオォオオオオオォォ ・ ・ ・
ゴガアアアァァン!!
エンジンから炎を上げながらも、エリナの乗っていた輸送機は空母の飛行甲板中央に墜ち爆炎を上げた。
「きゃっ!」
「くっ 各部被害報告!!」
爆発の衝撃で壁に叩きつけられるユキ、床に投げ出されながらも即座に指示を出す艦長。
が、オペレータから帰ってきたのは、被害報告ではなく更に悲劇的な状況を告げるモノであった。
「ナ、ナデシコです!!」
「なにぃ!?」
慌てて視線を向けると、確かに飛行甲板上で炎上する輸送機の残骸の中から、赤と白のカラーリングのナデシコが進み出てきていた。
「くっ リィオーで応戦しろ!!」
「了解っ」
間髪入れずに数十機のリィオー部隊がナデシコ迎撃に現れるが、
ギュゥィィィンッ ドババババババババババッ!!
リィオーが攻撃を始めるよりも速くヘビーアームズのビームガトリングが火を噴いた。
遮蔽物のない甲板上での戦闘、そうなればものを言うのは攻撃力と防御力、だがそのどちらともヘビーアームズが圧倒的に高かった。
ドドドドドドドッ ガガガガガガガッガッガガガッ!! ドガァァァ!!
ズガァァンッ ダラララッダラララララッ!! ゴガァァン!!
たいした反撃も出来ずに破壊されていくリィオー部隊、まさにヘビーアームズの猛攻に手も足もでない。
「甲板上のリィオー20機破壊!!」
オペレータの悲鳴に似た叫びが響く。
「何をしいる!! ナデシコを海に落とせ、キャンサーで仕留めろ!!」
苛立たしげに怒鳴りつける、すでに海中ではヘビーアームズを仕留めようと水中用MSキャンサーの部隊が展開を完了していた。
指示を出し終えると、別のオペレータを振り返り、
「ハーリー様の船は!?」
「ハ、この船団より離脱しました」
「よし ・ ・ ・ 」
その報告にほっと息をつくユキ、だがそれを待っていた者がいた。
ピピピピピピッ
「これねっ」
モニターに表示されている艦隊陣形の中から、離脱する動きを示している1隻を見つめ、舞歌は呟いた。
この艦隊はハーリーの護衛艦隊、ならば敵の襲撃を受ければどうするか? 答え、他の戦闘艦で迎撃している隙にハーリーは脱出する。
ならば、そのハーリーが動き出すまで身を潜め、相手が動き出してから一気に仕留める、それが舞歌の描いた作戦だ。
どの艦にハーリーがいるかわかっているならば、こんな手のかかる事をしなくてもいいのだが仕方ない、それに今は敵の注意を引いてくれる絶好の囮役がいるのだから。
「もうしばらく注意を引いていてもらうわ」
空母の甲板上でわざと目立つように戦っているヘビーアームズの姿を確認すると、舞歌はシェンロンナデシコを輸送機の残骸から立ち上げさせた。
ドガァァァアァァァァン!!
いきなり隣を航行していた巡洋艦が爆炎を上げ沈み始めた。
「どうした!?」
驚きの声を上げるユキ、輸送機の体当たりを受けていたとは言えその程度で沈むほど柔な造りはしていないはずだ。
「ナ、ナデシコです!! もう1機 先ほど巡洋艦に激突した輸送機から現れましたっ!!」
もう何度目かわからない絶叫で答えるオペレータ
「なにっ!!」
慌てて窓から見ると、炎を上げ沈んでいく巡洋艦から別の艦へと跳び移るシェンロンナデシコの姿があった。
バシュッ キュィィィィッ ドゴォォォオォォオ!!
跳び移った駆逐艦のブリッヂをドラゴンハングで破壊し、更に別の艦へと跳ぶ。
「駆逐艦上のナデシコ、ブリッヂを破壊!! 続いて巡洋艦『クロッカス』に向かっていますっ!!」
ダラララララララララッ ゴガァァァァンッ
チュインッチュインッチュインッ! ドッ!! ズガァアァァアン!!!
「リィオー部隊、損害70パーセント!!」
甲板上ではヘビーアームズが、その攻撃力を遺憾なく発揮し続けている。
「クッ! エアリーズは出せんのか!?」
艦長がたまらずに叫ぶ、空中からの攻撃が可能なエアリーズならばと思ったのだが、
「無理です! 全ての昇降エレベータを狙い撃ちされます!!」
返ってきたのは否定的な答え。
「フッ ・ ・ ・ こんな晴れの門出になんという様だ」
炎に照らされながらユキは自嘲気味につぶやく、その表情は先ほどまでの物とは違いどこまでも冷め切っていた。
「ユキ・キクノ特佐っ 甲板上のナデシコの攻撃、衰えません!!」
報告してくるオペレータに、スッとした視線を向けると、
「言ったはずだ、海に落とせとっ いちいち経過報告なんかしなくていい、私の指示通りにやれ」
「は、はい!」
感情と言うのもがいっさい感じられない声に、オペレータの背筋に冷たい物が走った、
「流石に、クリムゾン所属艦だけのことはあるわね ・ ・ ・ でも、まだまだだわ」
行動範囲が極限まで限定されている、艦上の戦闘を苦もなくこなしながら1人つぶやくエリナ、
元々、揚陸艦ではなく空母である『ビックローズ』に搭載されているのは空中戦用MSエアリーズがほとんどであり、陸戦用のリィオーは警備用の僅かな数しか搭載されていない、そしてそのリィオー部隊ももはや壊滅状態となっていた。
幾度かエアリーズを発進させようとしたが、発進させるには飛行甲板下の格納庫から昇降エレベータを使って甲板に上げる必要があり、その昇降エレベータは全てヘビーアームズから狙撃できる位置にある、
つまり、甲板上に姿を現した瞬間に撃破されると言うことだ、更に言うなら爆発の影響で昇降エレベータは使い物にならなくなっている。
「弾薬は ・ ・ ・ ちょっと心許ないけど、問題ないか」
モニターに表示されるデータをチェックしながらも、確実にリィオーを破壊していく、ニューエドワーズ基地から補給なしの連戦で弾薬は底をつきかけていた、
が、残りの敵機も少なく弾切れを心配する必要はなさそうだ。
ドガガガガガッッ!!
「!っ 自分たちの旗艦に攻撃するなんて、何考えてるの?」
空母と併走していた巡洋艦からの砲撃を交わしながら、その行動に悪態をつく、
いくらこちらを倒すためとは言え、それは味方を破壊するのと同意義なのだから。
だが、その攻撃はヘビーアームズを倒すために行われたモノでは無かった。
「ナデシコッ カタパルトライン上に移動しました!」
巡洋艦からの攻撃を交わすために、飛行甲板の中央部あたりに移動したのを確認したオペレータが叫ぶ、
「よしっ リィオーをカタパルトで打ち出せ!!」
間髪入れず艦長が命令を出す。
キュゥィイイィイィィィィィィイイィィィ・・・
わずか3秒で数十トンの機体を300キロ近くまで加速させるカタパルトが、その上に載せたリィオーをヘビーアームズに向け、放つ!!
「なにっ!?」
予想外の攻撃に避けるまもなくリィオーに組み付かれ、そのまま海に落ちる。
ざばぁぁぁん ・ ・ ・ ゴボゴボゴボ
「くっ 油断したわ」
ザンッ!
組み付いてきているリィオーを右腕に装備しているアーミーナイフで切裂く、
「これは ・ ・ ・ 」
海中に視線を走らせるとあたりには、クリムゾンの最新型水中用MSキャンサーが大量に待ち構えていた。
「援護もここまでね、しっかりやりなさいよ」
もう1機のナデシコのパイロットに軽くエールを送ると、キャンサーを迎え撃つようにヘビーアームズはアーミーナイフを構えた。
『ビックローズ』MS格納庫
その中を足早に進んでいくユキ、
と、大型のバックパックを装備している1機のリィオーの前に立ち止まると、険しい顔で見上げる。
「お待ちしておりましたユキ特佐」
「で、用意できているのか?」
「ハッ この高機動オプション装備のリィオーならば、エアリーズ並に行動できます!」
整備員が少し誇らしげに言うが、ユキは気にも止めず、
「フンッ もう1機のナデシコの処にまで跳べればよい!!」
そう言い切ると、コクピットに乗り込む、
「狙いはハーリー様の船だと! ふざけた事を!!」
素早い手つきでリィオーを起動させながら呟く、その顔はさながら夜叉の如くであった。
ドォォン!! ドォォン!! ドグシャ!
八艘跳びの如く戦艦やら駆逐艦やらを踏み台にしてシェンロンはハーリーの船に向けてジャンプを繰り返していた。
もちろん、着艦のたびにその艦の戦闘能力を奪いながら、
「目標を肉眼で確認、行くわよナタクッ」
艦隊から離脱しようとするハーリーの船を確認し、その船に向けて最後の跳躍をしようとした時、
ピッピッピッピッピッピッピッピッピッ
警告音が鳴り響き、何かが急速に近づいてきている事を知らせる、
「なに!?」
接近してくるモノを確認しようと、シェンロンを向けた瞬間、
シュゴォォオオォォォォオオオォオオオッ
ドガアァァァッ!!
「あぐっ!」
凄まじい勢いで突っ込んできた高機動オプション装備型リィオーの体当たりを受け、艦橋部に叩き付けられる。
その衝撃で一時的に舞歌は気を失うが、リィオーは更に押しつぶそうとするかのように、バーニアを全開にする。
ギギィィィッ ギギギィィイイイィ ・ ・ ・
押し付けられている戦艦の装甲が軋み、戦艦自体もリィオーに押され大きく傾いていく、
キュイィイイィィィ ・ ・ ・ ガシャッ ガコォンッ!
推進剤を使い果たした高機動オプションを切り離すと、リィオーはゆっくりと立ち上がる。
『フンッ いい気になるなナデシコ!!』
左腕に装備している盾の裏からビームサーベルの柄を取り出し、ビームを刃を創り出す、
「っ痛 ・ ・ ・ !!」
『これ以上、先に 行かせはしない!!』
ブゥゥゥン!
振り下ろされるビームサーベルを、寸前のところで掻い潜り、そのままリィオーを突き飛ばす、
「その程度で、私は止める事は出来ない!!」
背中のビームナギナタを引き抜く、
グオォォッ! ギュイィン!!
『くっ!』
その攻撃をバックステップしてかわし、態勢を崩しているシェンロンに再び斬りかかる、
ガキィィンッ!!
がしかし、振り下ろされるリィオーの腕を左腕一本で受け止めると、そのままじりじりと押し返す、
『わ、私をここまで梃子摺らせるとは ・ ・ ・ 』
ユキの顔に焦りの色が浮かぶ、
『だがそれもここまでだっ!!死ねぇぇ!!』
一気にリィオーの出力を上げ押し切ろうとするが、
メキッ
シェンロンに掴まれている腕の装甲に亀裂が走る、
「 ・ ・ ・ 酔ったね、己の戦いに」
そう呟くと、舞歌はサーベルを持つリィオーの腕を引きちぎった。
『!? このぉぉ!』
一瞬の間を置いて、残った左腕でシェンロンのコクピットを殴りつける、
通常のMSなら十分にパイロットを押し潰せるのだが、シェンロンは何事も無かったかのように左腕も一瞬にして引きちぎる、
『なに!?』
「退きなさい!!
もういいでしょ、貴方では私に勝てない」
『くっ』
両腕を失いながらも、ユキはシェンロンに対して戦闘態勢を取っていた、が両腕を失っている以上、武装はすべて使えなくなっている。
『 ・ ・ ・ ナデシコのパワーがこれほどとは だがっ!!』
ボォォ〜〜〜〜〜〜 ボォォ〜〜〜〜〜 ボォォ〜〜〜〜〜
『え?』
近くから聞こえてきた霧笛に、ユキが驚愕の表情を浮かべて振り返る、
『そんな ・ ・ ・ ハーリー様危険ですっ離れてください!!』
自分たちが乗っている戦艦と並ぶように航行しているのは、艦隊から離脱した筈のハーリー専用艦、
それを見て、舞歌はユキのリィオーを押しのけると、
「貴方の上官は、私と戦いたいようよ、
いいわ ここで仕留めてあげる」
そう言ってシェンロンをハーリー専用艦にジャンプさせる、
『くっ ハーリー様の所には行かせないっ!』
慌ててユキもシェンロンを追おうとするが、外部からの強制停止命令を受けリィオーはその機能を停止させた。
「これは ・ ・ ・ 」
いきなり停止したリィオーのコクピットの中で呆然としているユキに、ハーリーからの通信が入る、
『心配しないでくださいユキさん、後は僕に任せてください』
「 ・ ・ ・ ハーリー様」
ゴオオォォォオォォォォォ ・ ・ ・ ズンッ!
ハーリー専用艦の甲板に、響を上げて降り立つシェンロン、
それを確認するように、ハーリーは艦橋最上部の執務室の窓に歩み寄る、
「!? ・ ・ ・ マキビ・ハリ 本物かしら」
モニターに映るハーリーの姿を確認し、ズームアップさせる。
クァッ ギュィイィィイィイ ・ ・ ・ ドゴォオオオンッ!!
シェンロンのドラゴンハングが、ハーリーの直ぐ傍に突き刺さる。
ドラゴンハングは執務室の中ほどまで破壊し、豪華な調度品類をガラクタに変え、衝撃でハーリーも吹き飛ぶ、
が、何事も無かったように(汗)立ち上がると、足下に転がっていたサーベルを手に取る、
「 ・ ・ ・ ?
生身で戦おうと言うの、いいは相手になりましょう」
ハーリーの様子を見て、そう判断した舞歌はパイロットシートの下から2本の短杖を取り出すと、コクピットから飛び出した。
タッタッタッタッタッタッタッタッタッ タンッ
シェンロンの機体の上を走り、執務室に飛び込むと短杖を構える、
「私は、東 舞歌」
「マキビ・ハリです、ハーリーと呼んでくださ ・ ・ ・ 」
ハーリーが最後まで言うのを待たずに、舞歌の短杖が唸りを上げて襲いかかる、
めきょっ!
ドガシャァンッ!
「え?」
綺麗に、まるで吸い込まれるように入った一撃で瓦礫の山に頭からめり込むハーリー、
不意打ちとは言え、ここまでまともに決まるとは思っていなかった舞歌は思わず硬直する。
「え〜〜 と 終わり?」
ティアドロップ型の巨大な汗を張り付かせながら、瓦礫に上半身をめり込ませているハーリーを短杖でつつく、
「(モガモガモガ)」
一応まだ生きているようだ、
「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ふぅ」
どことなく情けないような気分に陥りながらも、止めを刺すべく短杖を振り上げ ・ ・ ・
「!! ・ ・ ・ 」
ガキィィン!!
振り下ろされた日本刀の一撃を、寸前でかわすと間合いを取る、
「マキビ・ハリ上級特佐専属ガード 月臣元一郎、ナデシコのパイロットお手合わせ願おう」
「 ・ ・ ・ 面白い」
日本刀を構えた月臣に正対すると、短杖で軽く刀を弾く、
「フッ!」
「はぁっ!」
それを合図に2人は動いた、
キィッィン!! カンッカッカッ!
「ふっ!」
「くぅぅっ」
ギャッギャッギャッ カンッ!
「たぁぁ!」
「っ!!」
ズザァァァッ ガキィィィン!!
「あっ」
「もらったっ」
弾かれバランスを崩し片膝をつく舞歌、それに追い討ちをかけるように月臣は刃を振るう、
その一撃を真上に跳躍してかわし、無防備になっている頭部目掛けて短杖を振り下ろす。
ブンッ! ガッ
「なっ!」
が、その攻撃はかわされ短杖は床を叩き硬い音を立てた、かわりに舞歌の首筋に刃が突きつけられる、
「 ・ ・ ・ 」
そのままの態勢で舞歌は月臣を睨みあげる、がその表情は死を覚悟している。
「この状況になっても失わない闘争心、流石はナデシコのパイロットだ」
舞歌の様子に完成された戦士の姿を見み、一種感銘を受けるが、それと戦いは別だ、
チャッ
日本刀を持つ手に力が入る、
「元一郎さん、そこまでです」
「! ハーリー様」
いつの間にか復活したハーリーが、月臣に刀を引くように言う、
「 ・ ・ ・ 何故?」
立ち上がりながらハーリーを睨む、何故自分を助けるのかと。
「なかなかすばらしい戦いでしたよ」
が、ハーリーはその問いに答えことなく、舞歌に賞賛の言葉をかける、
月臣もこれ以上戦う気は無いのか、刀を鞘に収めハーリーの後ろに立っている、もちろん舞歌が打ってくれば迎撃できるような態勢で、
「ここで私を殺さなければ、何度でも貴方を狙うわ」
「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 」
思案しているハーリー、
「 ・ ・ ・ ?」
何を思案しているのか、気になる舞歌、
やがて、ハーリーが口を開く。
「それは楽しみです、今度はボクがお相手できるように訓練しておきますね」
「っ ・ ・ ・ 」
驚きと悔しさで顔を歪めた舞歌は手にしていた短杖を、床に叩きつけた。
ズシンッ ズシンッ クァザバァァァァァァァン ・ ・ ・
シェンロンはゆっくりと背を向けると、海中へとその身を沈めた、
「ハーリー様、何故あのパイロットを逃がすのですか?」
シェンロンを見送っているハーリーに、月臣特佐が尋ねる、
「あの人はMSのパイロット、だからもう一度チャンスをあげてもいいかと思ったんです」
どことなく、晴れ晴れとした表情で答えると、
「MSを降りて戦うなんてなかなかの人物です、流石はナデシコのパイロットと言ったところですね」
「 ・ ・ ・ 次はMSで手合わせしますか?」
「もちろんです」
また瞬殺されますよ、とは言えない月臣であった。
「ハァァァァッ」
ザンッ! ドガァァァァァァ!!
「これで最後ね ・ ・ ・ あれは?」
全てのキャンサーを破壊し終わったとき、ヘビーアームズのモニターにキャンサーとは違うMSの影が映った、
ゴボ ・ ・ ・ ゴボゴボゴボ ・ ・ ・
ゆっくりと、まったく動くことなくシェンロンは海底を目指して沈んでいく、
「ちょっと 貴方!! 作戦は成功したの!?」
慌ててエリナが通信回線を開くが、舞歌は答えることは無かった、
「 ・ ・ ・ そう、わかったわ もういいわよ」
何も答えない様子に全てを悟ったエリナのその言葉には、なぐさめるような響が含まれていた。
to be continued
次回予告
地球圏統一連合が崩壊し、世界は混乱の一途を辿っていった
その原因であるクリムゾンに、ルリとリョウコはあくまで対抗し続ける ・ ・ ・
一方、ラピスはテンカワ家の故郷である、サンクキングダムを奪還するためにトールギスで出撃する!
だが、トールギスはあまりに危険なMSであった。
次回 新機動戦記 ナデシコ W
第09話 「亡国の肖像」
あ(と)がき
めるう゛ぃる:あはははははははははははは ・ ・ ・ 『ナデW』書くの一年ぶりだ(汗
何も言いません、ごめんなさい(大反省
追伸:いきなりですが、ここでナデシコのどのキャラクターにガンダムWのどのキャラクターをあてはめるか募集したいと思います。
キャラクターの範囲はナデシコ本編キャラ+ここActionHomePageに投稿されているナデシコSSのキャラです。
他の投稿作家さんのオリキャラにリクエストがくれば、めるう゛ぃるが責任を持って、交渉しますので、何でもいいです、思いついたらリクエストしてください、
お願いします。いやマジで ・ ・ ・
代理人の感想
取り敢えずアレックスとミューラー(ゼクスに喧嘩を売ったアホ二人)にバール少将とナカザトをリクエスト(笑)。
でもそうするとあれがダッシュの教え子になるのか・・・・(汗)。
現在のところだとシュン&カズシ、ゴート(団長)、レイナ(キャスリン)、ジュン(ラシード)、ミナトさん(サリィ・ポォ)、
イネス(Dr.J)、ホウメイさん(ハワード)、才蔵(ドーリアン外交次官)、プロスペクター(パーガン)、
サイトウ(ワーカー(^^;)、アズマ准将(基地司令)、グラシス&フクベ(ノベンタ元帥+1)、ムネタケ(セプテム)
あたりは使用済みだから・・・・。
まあ取り敢えず
ツバロフ=ヤマサキ
は決定事項として(爆)、
デルマイユ=草壁
ドロシー=枝織
あたりがオーソドックスなところでしょうか(^^;
いや、この話は基本的に男女逆転だから・・・・
デルマイユ=アクア・クリムゾン
カーンズ=メグミ・レイナード
ドロシー=北辰(超弩級爆)!?
あとは五人の博士の残りとカトルの姉と父、ヒルデとカーンズくらいかな?
「EW」を含むなら個人的にはマリーメイア=メティを押したい所ですが(爆)。
・・・・・何気にガイは出れそうにないな、「W」だと(笑)。
ちなみに代理人が完全新作で書くとすれば
ヒイロ=ブラックジュン
デュオ=サラ・ファー・ハーテッド・・・ちなみに乗機はナデシコエクスティンギッシャー(消火器)(^^;
トロワ=ルリ(キャスリン=ミナト)
カトル=ハーリー(ドロシー=ラピス、ラシードはシュンかカズシ)
ウーフェイ=ダイゴウジ・ガイ(核爆) いや、「正義=ゲキガンガー」と考えれば・・・(笑)
ゼクス=月臣元一郎&白鳥九十九
リリーナ=ユキナ
トレーズ=アカツキ
レディ・アン=メグミ
Dr.J=ユリカ(大爆)
・・・・・なんかそこはかとなくダメっぽいな(笑)。