現実では、正しい答えが出せない事がある・・・

この世の中は、悲しみに満ちている・・・

全ての人が、幸せになる事はない・・・

それは、決してイコールでは結ばれないの・・・

人の感情は、時と共にうつろう・・・

一度手に入れた幸せに慣れ、更なる幸せを求めようとしている・・・

幸福は、人を堕落させる・・・

だから悲しみの感情があると思う・・・

とても、残酷だわ・・・

怒り、悲しみ、憎しみ、ドウシヨウモナイ感情・・・

私は自分の中にある”はかなさ”が許されない・・・

世の中は、とても矛盾しているけれどね・・・

そんな矛盾した世界だからこそ・・・

全ての事象から永遠に旅立つ・・・

視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚・・・

時間、意識、肉体、空間・・・

全ての感覚を、時間を、存在を止めるの・・・

悲しみの感情を人は押さえる事が出来ない・・・

何も求めず、悲しみも持たず、安息の場所・・・

現実を超越する為、私は旅立つ・・・

喜びを感じながら・・・

うつろうモノに歯止めを掛けるには、どうすればいい・・・

 

 

答えは簡単・・・

 

 

悲しみにくれる前に、止まってしまえばいい・・・

 

 

悲しみたくないなら・・・止まってしまえばいい・・・

 

 

 

 

 

機動戦艦ナデシコ Re Try 第27話 青い『夏空』の下で

 

 

 

 

 

『蜥蜴戦争』と名づけられた戦争から、半年の月日がたった。

地球では、サツキミドリ落下事件の時に軍事政権の責任者達が

情報を握っておきながら、落下予測地点の民間人に情報を与えず、

自身は落下地点からの脱出をしていた件が明るみになり、

ついに、軍事政権の責任者達は自ら軍を辞職、若しくは降格処分となった。

この時、一応は軍の持ち物であったナデシコを、ネルガルをクビになったクルーが

勝手に動かした件で問題となったが、自分達の命を守ってもらったと言う事と、

ナデシコはあくまでもネルガルの所有物であるため、

軍及び政府は責任を追及しないと言う事で、処分保留となった。

その裏ではミスマル提督や、フクベ提督らの働きかけや

ネルガル内部の実権を取り返した、アカツキ会長の力が働いたためでもある。

一方の木連では、秋山、月臣、白鳥の優人部隊がクーデターを起こす。

『熱血とは盲信にあらず』から始まる檄文で起きた、いわゆる『熱血クーデター』である。

だが、一部の人間の間では冷やかし半分であるいは、

やっかみも込めて『愛のクーデター』と呼ばれていた。

クーデターは成功し、草壁一派が支配していた議会は解散した。

その後、草壁一派残党による『白鳥 九十九暗殺未遂事件』が発生する。

しかし、秋山・月臣の二人はこの事を予見していたのか、

狙われた白鳥 九十九は、月臣配下の護衛部隊に護られており、

また、白鳥少佐の義手と義足に装備された武器を使い、逆に犯人を逮捕する。

この時の様子は、本人及び警護していた護衛部隊はもちろん

犯人グループからも語られる事はついに無かった。

もっとも、義手と義足の製作者は『威力が少し足りなかったかな?』と言えば

設計者兼、手術担当者は『強度をもう少し見直さないと。』と周囲に語り、

皆を閉口させたと言うのは余談である。

ともかく、逮捕した犯人グループから、背後にいる軍のエリート将校の名前が挙がる。

秋山達は、彼らを容赦なく粛清または更迭した。

彼らには、草壁による地球圏支配後の利権が約束されていた者達であったと言う事が

世論を一気に移住計画の平和的推進へと移っていき、ついに木連市民は、火星や月、コロニー・地球に移住を開始した。

地球側も過去の過ちを認めたため、木連市民の受け入れは比較的穏やかに進められていった。

しかし、元木連の最高指導者であった草壁 春樹や北辰達の行方は、まったく掴めなかった。

地球政府と木連政府は、融和政策を実施し地球圏統合に向けての動きを加速していく。

その中で生まれた統合軍は木連、地球双方の軍を統合したものである。

世の中は一応の平和を手に入れ、地球、月、コロニー、火星は急速に復興していった。

 

 

 

 

 

 

 

そして・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

ネルガル付属病院・・・第3特別病棟707号室・・・

ベッドの上に、一人の少女が眠ってる。

そして、白衣を着た金髪の若い女性が見守っている。

少女は、まるで死んでいるかのように眠りつづけていた。

コンコン・・・

「はい・・・」

ノックの音に金髪の女性・・・イネス=フレサンジュが返事をする。

「イネスさん、皆・・・連れてきました。」

「良く来てくれたわね、艦長・・・みんな・・・」

普段は、明るいこの女性も、この部屋に来ると大人しくなるなと思いつつ

イネスは皆が来ている事を確認した。

「今日・・・皆に来て貰ったのは・・・ルリちゃんの事についてなの・・・」

イネスは、ベッドに眠る少女・・・ホシノ=ルリの髪を優しくなでながら言った。

「ルリちゃん、目が覚めたんですか?」

先程、皆の先頭を歩いて入ってきた女性・・・ミスマル=ユリカが真っ先に質問した。

「いいえ・・・その逆なの。」

「まさか、ルリルリ・・・」

長い髪をウェーブにし、腰まで伸ばした大人の女性・・・ハルカ=ミナトは青ざめた顔で言う。

「死んではいないわ・・・でも・・・それと同じ状態ね。」

「どういう事なんですか?」

そばかすが少し残っている女性、メグミ=レイナードがやはり青ざめた顔で言う。

「・・・心が・・・生きることを拒絶しているの・・・

脈拍は限りなくゼロに近い状態なのに、体内の機能に障害が起きない。

普通なら血液が送られなくなった脳は、いわゆる脳死状態になるわ。

でもね・・・この前、精密検査を行った時に出た結論は・・・体のどの部分にも異常を認められなかった・・・」

「しかし、実際にホシノ=ルリは目覚めないじゃないか。」

「そうよ、ジュンちゃんはともかく、ミナトさんやユリカさんの声だって届かなかったんでしょう?」

「なんだよ、そのともかくってのは・・・」

連合宇宙軍の制服を着たアオイ=ジュンと、木連の制服を着た白鳥 ユキナが言う。

「そうよね、私やカズマ、ミサキ、ラピス、ユウタの声も届かなかった・・・」

「やっぱ、アイツや無いと無理ちゃうんか?」

「カズマ・・・それは・・・」

長い髪をやや高めの位置でポニーテールにした女性、クサナギ=アヤと

野獣のような風貌で、普段トレードマークにしているトラ縞のバンダナを身につけた彼女の兄、クサナギ=カズマ

そして、ナデシコを降りてすぐショートボブに髪形を変えたナグモ=ミサキがつらそうな顔で言う。

「ルリ・・・まだ寝てる?」

「ユウタ・・・ルリ姉は・・・まだ起きられないの・・・」

何が起きているのか理解できていない少年・・・オカクラ=ユウタを見て

辛そうに・・・何と説明したら良いのか判らないと言った表情の

薄桃色の髪に金色の瞳をした少女、ラピス=ラズリが言う・・・

「あの時、俺が代わりに出撃していれば・・・」

「それを言うなら、俺がもうちょっと早くアキトを迎えに行ってれば、こんな事にはならなかった!」

「リョーコもヤマダ君も・・・それ以上は言わないで・・・」

「そうね・・・あの時、私達は見ている事しか出来なかったんだから・・・」

悔しそうに・・・本当に悔しそうに言うショートカットの女性、スバル=リョーコと

暑苦しい顔つきだが、どこか木連の白鳥 九十九と同じような顔つきのヤマダ=ジロウに

めがねをかけ、何時もはおちゃらけて場を和ませているアマノ=ヒカルと、

普段は皆を閉口させるギャグを連発しているマキ=イズミが二人を諌めている。

「テンカワの姿はどこにも無かった・・・」

「そうですなぁ、あれから全員で宇宙服を着て捜索したのですが、

形見と言えるのは・・・」

いつも通り、むっつりとした顔で言うゴート=ホーリーと

ちょび髭を手でさすりながら、眠っているルリの側に置いてある物を見るプロスペクター。

「ルリ坊が、テンカワの奴にあげた・・・緋色に染まったマフラーだけ・・・か。」

血に染まったマフラーを見ながら、リュウ=ホウメイが言う。

「ドクター、正直な話・・・ルリ君は回復する見込みはどの程度なんだい?」

戦争後、新生ネルガルの会長に収まったアカツキ=ナガレが、いつものポーカーフェイスでイネスに尋ねる。

「正直、判らないの・・・心臓は今にも止まりそうなんだけど・・・

こんな症例・・・見た事も聞いた事も無いわ。」

イネスは、目を落としていう。この半年、イネスはあらゆる処方を施してきた。

しかし、ついにホシノ=ルリが目覚める事はなかった。

「皆に今日集まってもらったのは、覚悟を決めといてもらおうと思ったからなの・・・」

イネスのその一言は、重く・・・本当に重く、皆の心にのしかかった・・・

「ルリちゃん・・・やっぱりアキトの所に行きたいのかな?」

ユリカは、ルリの手を握るがルリからの反応はまったく無い。

「ルリルリ、あんた私達と暮らそうって言ってたじゃないの。

なのに・・・何であんたはそこで眠ってるのよ。起きなさいよ。」

ミナトも懸命に呼びかけるが、相変わらずルリからの反応は見られない。

「艦長やミナトさん以上に、ルリちゃんとの関わりが深い人って居ないわよね。」

「エリナ・・・何、弱気になっているのよ・・・」

美しい金髪の女性・・・プルセル=キンケードが、皆から送られた花を生けて病室に入ってきた。

諦めたら駄目だと皆を励まし、自身もほぼ毎日ルリの病室に足を運んだほどだ。

そんなプルセルの親友、エリナ=キンジョウ=ウォンもネルガルの総力を挙げて

ルリの治療に当たってきた。もちろん、アカツキも了承済みの事だ。

「とにかく皆、これから先どう容体が変化するか解らないから、

コミュニケだけは身に付けておいて頂戴。何かあったら、連絡するから。」

イネスの言葉に皆、一様にうなずく。

そして、一人また一人と病室を後にする・・・ホシノ=ルリに近況報告をしながら・・・

最後の一人となったイネスは、優しく語り掛ける。

「ルリちゃん、卑怯よ・・・お兄ちゃんと一緒に行こうだなんて・・・

お兄ちゃんに会ったら、寂しがっていたって伝えて頂戴・・・

でないと、わたし・・・」

イネスの瞳から涙がこぼれ落ちた。

しばらく、イネスはルリの表情を見ていたが、やがて病室を後にした。

廊下に出るとイネスは少し身震いする。

ふと、窓の外を見ると雪が降っていた。

「ホワイトクリスマス・・・か・・・でも、お兄ちゃんもルリちゃんも居ない・・・

私は、どうしたら良いの?」

降り積もっていく雪を見ながら、イネスは一人廊下を歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして・・・

 

 

 

 

 

 

それは、ホシノ=ルリが最後に見た幻だったのだろうか・・・

 

 

 

 

 

 

 

それとも、眠りつづけている間に見ていた夢だったのだろうか・・・

 

 

 

 

 

 

 

または、死後の世界での出来事だろうか・・・

 

 

 

 

 

 

 

それとも・・・

 

 

 

 

 

 

深夜のネルガル付属病院、特別病棟707号室・・・

ホシノ=ルリが眠る病室だ。

そこに、青白い光と共に黒いマントにバイザー、ツンツン頭の青年が現れた。

何故か、マントは所々破れており、バイザーにも欠けが見える。

「ルリ・・・ルリ・・・」

青年は、ルリの体をそっと揺する。

反応が無いことに幾分戸惑いを覚えた青年は、バイザーを外しルリにそっと口付けをする。

すると・・・今まで、誰が声をかけようと、決して目を覚ます事の無かったルリの瞳がゆっくりと開いた。

「・・・・・・ア・・・キ・・・・・・ト・・・・」

ルリは、口付けの感触に浸りながらも、アキトと呼ばれた青年に目を向ける。

「ルリ、迎えに来た。ごめん、ちょっと怪獣退治をしてたら遅くなって・・・」

アキトは、ルリの髪をそっとなでながら言う。

「・・・夢じゃない・・・夢じゃないんですね?

もう、私の前から消えたりしないんですね?」

ルリは勢い良く半身を起こし、アキトに言う。

「ああ、これからはずっと一緒だ・・・」

力強く、そして優しくアキトは言う。

ルリは、アキトに勢い良く・・・今まで眠っていた事が、まるで嘘であるかのように、勢い良く飛びつく。

「アキト・・・」

ルリはアキトの胸に顔を埋める。その瞳には、涙が浮かんでいる。

「行こう、新しい世界。新しい生活へ。それが、俺からのクリスマスプレゼントだ。」

「はい、何処までもついていきます。

だって、あなたは・・・・大切な人ですから・・・・アキト・・・」

「じゃあ・・・・ジャンプ。」

そして、二人は光と共に消え去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

病室では、ルリの心拍数を測定していた機械が・・・

 

 

 

真っ直ぐな線を描き・・・

 

 

 

何時までも無機質なアラーム音を鳴らしていた・・・

 

 

 

 

 

 

 

翌日・・・ネルガル会長、アカツキ=ナガレにより、一連の蜥蜴戦争で活躍した

エースパイロットのテンカワ=アキトと『電子の妖精』ホシノ=ルリの死が正式に発表された。

ナデシコの関係者は皆、悲しみに暮れた。

ネルガルの社内規定で、葬式は本人の希望通りにとり行われる事となったが、

ホシノ=ルリの希望は、ただ一つ・・・テンカワ=アキトと一緒になりたい・・・その一言だけであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、2年と半年の月日が流れ・・・

 

 

 

 

 

 

 

深夜のイケブクロ公園・・・そこには、野獣を思わせる男が居た。

「カズマさ〜ん、これで今日はお終いみたいですよ?」

「ほうか、最近は質が落ちて来とんとちゃうか?」

「カズマさんが強すぎるんですよ。」

テーマ曲である『第九』が流れる中、クサナギ=カズマと

厚顔の美少年こと親友のカミヤ=ユキヲが話をしている。

ナデシコを降りてからのカズマは、相変わらず探偵事務所で浮気調査などをしながら

こうして、深夜のイケブクロ公園に出没している。

その強さは、すでに最強と仲間内では呼ばれており、噂を聞きつけた遠くからの挑戦者も後を絶たない。

「ワイは、まだまだや・・・」

カズマは公園の噴水を見ながら言う。

「また、あの人のことを考えていたんですね?

そう言えば、今日は何個か新しい技を試していましたよね。」

「よう見とるのう・・・せや、あいつに通用するか分からへんけどな。」

いまだに、カズマはアキトの背中を見つづけてる・・・

そう感じずにはいられないユキヲであった。

「お前が、クサナギ=カズマか?」

身長2mは有ろうかという大男が、カズマに話し掛ける。

カズマは、フフンと鼻で笑うと

「せや、ちゅう事はあんたが本日最後のチャレンジャーっちゅうことやな?」

「いい気になるなよ、小僧・・・」

「おっさんこそ、筋肉痛が二日目以降に出る歳ちゃうんか?」

あくまでも挑発的に言うカズマだったが、大男の所作には油断もすきも無い・・・

そして、拳と拳がぶつかり合う音と、ギャラリーの声援が公園内を支配した・・・

「アキト・・・待っとれや・・・必ずワイは強うなったる・・・誰よりも・・・」

―もっと強くなるんや・・・アイツよりも・・・

カズマは純粋に、そう思うのであった。

 

 

 

 

 

 

ステージの上には、スポットライトの光が照らされている。

そして、スモークと共に大音響が響き始める。

やがて、その中に現れたのは・・・

「皆さ〜ん、こんばんわ〜。メグミ=レイナードで〜す。」

その一言で、ステージ前に集まった彼女のファンは、大きな歓声と共に総立ちになる。

「今日は、皆と楽しい時間を過ごしてくれる友達が来ていま〜す。」

「皆さん、こんばんわ。ホウメイガールズでえす!」

「メグミさんと一緒に精一杯頑張りますので、皆さん一緒に楽しんじゃいましょう!」

「それでは、今夜のオープニングはこの曲!」

「YOU GET TO BURNINGです!」

ナデシコを降りてから、メグミは声優界に復帰した。

復帰後の彼女は、精力的に仕事をこなし、人気もどんどん上がっていった。

メグミに遅れる事、1ヶ月でサユリ、エリ、ミカコ、ジュンコ、ハルミの五人は

ホウメイガールズとしてアイドルデビュー。

メグミと一緒に仕事をする事も多く・・・もちろん裏ではネルガルによる

彼女達のバックアップを仕掛けていたからだが・・・一緒にコンサートを開催する事が多い。

やがて、彼女達のコンサートも終わりを告げようとしていた。

「今日は、皆ありがとう・・・」

メグミはファンに手を振っている。その笑顔は、大勢のファンに向けられていた・・・

「これから歌うのは、私達が大切にしている想いを込めて歌います。」

ジュンコは目を閉じて言う。

「私達がこのお仕事をする前・・・」

ハルミも目を閉じる。

「絶望を感じた時もあった・・・」

エリも目を閉じる。

「苦しい時もたくさんあった・・・」

ミカコも目を閉じる。

「それでも、人の可能性を信じて・・・」

サユリは会場を見渡し、そして目を閉じる。

「沢山の思い出を・・・夢を・・・信じていくために・・・

別れた友を想って・・・あの人たちに届くように・・・」

メグミは、ファンの前で精一杯の笑顔を見せる。

そして・・・

「「「「「「精一杯歌います。『私らしく・・・』」」」」」」

コンサートは最高潮を迎えるのであった・・・

想いは届いている・・・

きっと、あの人達に・・・

メグミ達は、確信していた。

 

 

 

 

 

 

オオイソシティ・・・夏になると、海水浴でにぎわう浜辺だ。

戦争のおかげで客足は遠のいていたが、和平によって活気が戻りつつあった。

「ミナトさん、ただいま戻りました。」

ガラガラと平屋建ての扉を開けて、木連優人部隊の制服を着た白鳥 九十九が入ってくる。

「お帰りなさい。随分早かったのね?」

「いや、ミナトさんに一刻も早く遭いたいと思いまして・・・」

「あら、嬉しい事言ってくれるわね。そんな事言っても

夕食からニンジンをのける事なんてしないわよ?」

意地悪くミナトが言う。

「い、いや・・・その・・・」

戸惑っている九十九を見て、ミナトは九十九の手を引っ張る。

「とりあえず、上がりなよ・・・自分の家なんだからさ。」

そう言うと、ミナトは九十九にキスをする。

玄関の表札には白鳥と名前があった。

九十九は木連と地球の橋渡しで、なれない交渉事を引き受けていたのだが

家に帰ると、仕事の疲れが一遍に取れたようだった。

ミナトも、昼間は近所の中学校で教鞭を振るっている。

優しい美人教師として迎えられ、人妻である事が知れ渡った今でも

彼女に思いを寄せて、日々悶々とした思いを抱いている男子生徒及び職員は大勢いるらしい。

ちなみに妹の白鳥 ユキナは、東京にあるネルガル付属高校に編入し、寮生活をしている。

「ミナトさん・・・これは・・・」

「言ってなかったっけ?あなたの大嫌いなニンジン料理よ。」

「しかし・・・」

食卓には、これでもかと言うくらいニンジンをふんだんに使った料理が並べられている。

「た〜んと召し上がれ。」

ミナトはニッコリとした笑顔で、九十九に料理を勧める。

「はぁ・・」

九十九はガックリと、絶望的な戦場に向かう決意をして、料理を口に運ぶ。

その横で、ミナトはそっと

「今夜は、眠らせないからね・・・」

耳元で囁くのであった。九十九の顔は真っ赤になる。

次の日・・・何故か目の下にクマを作ってフラフラと仕事に出かける九十九と

ニコニコしながら・・・しかも、妙につやつやした肌で学校に行くミナトの姿が、ある生徒によって目撃された。

「ルリルリ・・・私は幸せだよ・・・」

昇っていく朝日に向かい、ミナトはそう報告するのであった・・・

 

 

 

 

 

 

 

カタカタ・・・・

キーボードを叩く音が事務所に響く。

ここは、カズマ達が開いている探偵事務所だ。

プルセルは、この探偵事務所の事務員として働いていた。

カズマ達と初めて出会った時に関わった事件が元でネルガルを辞職。

その後、探偵事務所に転がり込んだのだが、扱いは探偵事務所に出向しているのだからと、

ネルガル本社に呼び戻そうとするエリナと6時間ほど大喧嘩をした挙句、探偵事務所に住み込みで働いている。

もちろん、エリナとしてはプルセルの事務処理能力は、新生ネルガルにとって

無くてはならない存在だったので、条件面も含めてかなりの待遇を提示した。

だが、プルセルは思い出の場所にもう少し居たいと言う思いが強く

また、そんなプルセルの気持ちがわかるエリナだからこそ、苛立ちがピークにまで達したのだった。

二人を側で見ていたネルガル会長、アカツキと探偵事務所所長のカズマはただ、見守るしかなかったのだった。

実際、二人を止めようとしたゴートが、エリナとプルセルの見事な連携攻撃をうけ、地面に沈んだのを見て

ヘタに手出しすると命の保証が無いという結論に達した為だったのだが・・・

その後、ネルガル会長が三日三晩、会長室に篭りっきりで仕事をする事となったのだが、それは別の話である。

プルセルは、深くため息をつき、コーヒーを飲む。

「ふぅ・・・今月も赤字だわね・・・また、エリナから仕事をもらわないと・・・」

そう呟いたその時・・・

「ただいま。」

ラピスとユウタが、勢い良く事務所のドアを開けて入って来た。

ラピスは、以前通っていた小学校に復学し、ユウタも今年から小学校に入学したのだった。

「おかえりなさい、早かったわね。」

プルセルは二人に笑顔で答える。

「ラピ姉、また先生に怒られていたよ。」

「ユウタ!内緒って言ったでしょ!」

ユウタは嬉しそうに、ラピスは少し慌ててユウタを制する、が・・・

「ユウタ、詳しく話して頂戴?」

プルセルはニコニコしながらユウタに尋ねる。

ラピスはその場から逃げ出そうとしたが、プルセルに襟首を掴まれていた。

「逃がさないわよ・・・」

ラピスは既に初等教育をクリアしているため、学校には友達に会いに行っているだけだ。

その為、授業中は大概寝ているか、端末から色々な所にアクセス・・・ハッキングとも言う・・・をしている。

以前、その事を注意した先生がいたのだが、ラピスによってプライベートから勤務評価まで

学校中に公開され、辞職にまで追い込んだ事があった。

この時ばかりは、ラピスに甘いアヤでさえ烈火のごとく怒り、ラピスのお尻を赤くはれ上がるまで叩いたのだった。

なんでも、代々受け継がれているクサナギ流お仕置きの術・・・だそうだ・・・

「で?今回は何をしたの?」

「ウリバタケさんが作ってくれたバスケットゴールを

ラピ姉が操作してたら、いきなり爆発したんだ・・・」

「ほほう・・・」

プルセルのコメカミがヒクヒクと動き出す。

「お仕置きはイヤ・・・お仕置きはイヤ・・・お仕置きはイヤ・・・

お仕置きはイヤ・・・お仕置きはイヤ・・・お仕置きは・・・イヤァ!!」

突然、ラピスがガタガタ震えながら呟く。

顔はすでに青ざめており、目の焦点が合っていない。

「その事で、アカツキさんから連絡があったわよ・・・」

事務所の入り口から、ポニーテールの女性が入ってくる。

手には赤樫の木刀が握られていた。

「アヤ、聞いてたの?」

プルセルは、ラピスをアヤに引き渡しながら尋ねる。

「ええ、アカツキさんはエリナさんに散々、絞られてたし

ウリバタケさんはオリエさんに連れてかれたわ・・・

ラァ〜ピィ〜スゥ〜〜〜!!

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

事務所にラピスの悲鳴が響き渡る。

スパァン!!!

・・・・・・・・

・・・・・・

・・・・

・・

ラピスのお尻が、赤くはれあがっている・・・

「クスン・・・」

「ラピ姉・・・だから、止めたほうが良いって言ったのに・・・」

ユウタは、うちわでラピスのお尻を扇いでいる。

不意に、アヤが立ち上がり、

「今日はもう良いわ、私も明日から学校に行く事になったから。」

「え?」

ラピスがビックリしたように言う。

「さっきね、エリナさんと相談して来たの。

私も今年で大学院を卒業するから、ネルガルで働こうと思ってたけど

学級崩壊どころか、本当に学校が崩壊する前に

手を打とうって話になったの。丁度、教員免許も取ったんだし。

ネルガルから手を打ってもらって、面倒な手続きはすべてやってもらったわ。

それに、今のままでは赤字なんでしょう?」

プルセルはコクリと頷き、帳簿をアヤに見せる。

実際、ナデシコに乗っていた時の給料と退職金でここまでやってきたのだが

カズマの飲み代でほとんど消えていって、今では時々プルセルが

ネルガルの仕事を引き受けて生活費を稼いでいる。

アヤは、大学院まで進んだため、その学費にナデシコ時代の給料が当てられていた。

「私のお金も少しは余っているから、当分の生活には困らないと思うわ・・・それより、あのバカは?」

「虎の巣で寝てるわ。」

昨日は随分遅かったからと、プルセルはカズマの寝室を指差す。

アヤは、ズカズカと部屋の前まで行きドアを開ける。

そして、皆にニッコリと笑いかけると、そのままドアを閉め中に入っていく。

ラピスとユウタは耳をふさぎ、プルセルはポケットから耳栓を取り出して装着すると

何事も無かったかのように再び仕事に戻る。

その後・・・カズマの悲鳴が1時間、絶える事無く事務所中に響き渡った。

その日の夕食で・・・

「「お仕置きはイヤ・・・お仕置きはイヤ・・・お仕置きはイヤ・・・お仕置きはイヤ・・・」」

ラピスとカズマの声がエンドレスで響いていた。

ちなみにカズマの顔はボロボロの状態である。

「だぁ!うっとうしい!」

「アヤが原因だと思うんだけど・・・」

「そうだよね・・・」

翌日から、アヤは小学校の教員になった。

アヤと、ラピスが巻き起こす騒動は・・・ラピスのクラス全員を、たくましく育てるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

シンと静まり返った神社の境内・・・

都会の中で、その一角だけが別の世界にあるような錯覚におちいる。

長い階段を、巫女姿で掃除している女性が居た。

「ミサキ、そろそろ飯にしよう。」

白髪、長身の老人が気配をほとんど感じさせず、ミサキに声をかけるが

ミサキは老人の気配を感じていたのか、ニッコリと微笑み

「シュウサク先生、もうそんな時間ですか・・・

じゃぁ、急いで作りますね。」

巫女姿の女性・・・ナグモ=ミサキはオニヅカ=シュウサクの横を通り過ぎる。

その瞬間、シュウサクは右手でいきなり手刀を上段からミサキに入れるが

ミサキは素早く上体を反らし、手刀を白羽取りしたと思うと

そのまま、シュウサクに蹴りを入れる。しかし、シュウサクの左手が

ミサキのケリを受け止めた。と同時に、気のぶつかり合った余波で

あたりに風が舞う。

「腕をまた上げたな・・・」

「はい、負けられない人が居ますから・・・」

「奴か・・・ワシもあと10年若ければ、互角の戦いを挑めたやも知れん・・・」

「アキト君は、強かったわ・・・あのバカも、必死になって追いつこうとしてたけど・・・

ダメですね・・・強くなろうとすればするほど、アキト君の凄さが分かるんですから・・・

私は・・・まだまだ、アキト君には勝てない・・・」

シュウサクとミサキは、お互いの攻撃を収めながら言う。

「そろそろ、夏祭りだな・・・今年も賑わうのう・・・」

シュウサクは目を細めて言う。

「ええ、去年はカズマ達が羽目を外しすぎましたからね。」

「ちょっと早い盆だと思えばそれで良いじゃろう。」

「ええ・・・」

ホシノ=ルリの死から、極端に連絡を取り合うことの無くなったナデシコクルーだが

飛天神社の祭りがあるときだけ、お互いが集まっている。

もっとも、ミサキがコミュニケの操作を誤り、本来はアヤ達やリョーコ達だけを呼ぶつもりが

全員に送信してしまったため、ナデシコのクルーは飛天神社で行われる夏祭りに集まる事になったのだが

同人誌や、やたらと改造した電化製品、ネルガル製品など、およそ祭りとは縁遠いものまで販売している。

しかも、昨年はメグミが酔っ払って、神社でゲリラライブを敢行したため

うわさを聞きつけたファンが殺到。ウリバタケの屋台が自爆するなど、散々な結果となった。

「それに、皆が集まってバカやってると、あの人たちが現れてくれそうですから・・・」

「幽霊になってもか?」

「ええ・・・」

「そのときは、ワシにもチャンスはあるの?」

「アキト君と戦うんですか?だめですよ。

私達が一番です。これだけは譲れません。」

「そうか・・・じゃが、勝てるかの?」

「勝てなければ、次の年も来てもらいます。

それでもダメなら、また次の年も・・・」

ミサキは踵を返し、颯爽と母屋へと向かっていった。

「となると、ワシが勝って成仏させてはいかん・・・という事か・・・」

シュウサクはゆっくりと母屋へと歩き出した。

 

 

 

 

 

 

室内に、カレーの匂いが漂う・・・

「ヤマダくん!カレーは超激辛でね!」

仕事場から、ヒカルの声がする。

「ああ、もう少しで出来るから、そうしたら一休みしよう。」

ヤマダは、鍋の具を掻き回しながら言う。

ナデシコを降りたヒカルは雑誌の編集部に原稿を片っ端から送り付け

その内の一つが採用となり、現在5本の連載を抱える売れっ子漫画家にまでなっていた。

一方のヤマダは、連合軍からの誘いを断り、パイロットを辞めヒカルの家に転がり込んだ。

当初、アキトを助けられなかった自責の念から、何もする気になれなかったのだが

ヒカルがナデシコに乗っている時、ルリに手伝ってもらった同人誌を見て

夜中に一人で泣いているのを見たヤマダは、それ以降ヒカルのアシスタントとして働いていた。

「このくらいで良いかな?」

少し味見をして、ヤマダは火を止める。

締め切り間際なので、他のアシスタントもピリピリしている状態だ。

しかし、空腹には勝てないのかヤマダがカレーを準備し始めると

自然にダイニングに集まってくる。

「ヤマダ君、準備は出来た?」

「おお、今日のは自信作だぞ!」

「ホウメイさん直伝だもんね。」

ヒカルは、そう言うと席につき

「いただきまぁす。」

その掛け声と共に、食事が始まる。

ヤマダは、すっかり主夫となっていた・・・

―アキト・・・料理をする喜びが解って来たぜ・・・

ヤマダは、皆が喜んで食べる姿を見るとそう思わずにいられなかった。

そして、ヒカルもそんなヤマダの気持ちがわかるのであった。

お互いの戦友は・・・もう永遠に自分達の姿を見せられないのだから・・・

もっとも、今のヤマダ君の姿をルリルリが見たら何て言うだろう?

やっぱり、バカの一言かな?

一人でクスクスと笑っていると、ヤマダは怪訝な顔をして

「俺の顔に何か付いてるか?」

至極真面目な表情で言うヤマダに

「うぅん、何でもない。」

「そうか?」

「さ、これ食べたら最後の追い込みよ!締め切りまで後3時間54分!

一人では無理でも皆で力を合わせれば大丈夫!張り切っていきましょう!」

ヒカルは、アシスタント達にはっぱをかける。

締め切り直前の異様な雰囲気が、再び作業場を包み込む。

―ここが新しい戦場・・・新しい仲間と一緒に・・・

「ヤマダ君、そこトーン51番ね。」

ヒカルの指示で、ヤマダは仕事に取り掛かる。

忙しいながらも充実した生活に満足しているのであった。

 

 

 

 

 

狭いコックピットの中・・・

自分なりの一番星を見つける為、ここに座っている・・・

リョーコは、発進準備中の機体の中で一人瞑想にふけっていた。

かつて一番星は、アキトに認めてもらえるだけのパイロットになる事。

背中を追いつづけるのではなく、肩を並べて闘える仲間になる事・・・

しかし、そのアキトが今は居ない・・・

リョーコは目的を失いつつも、アキトが・・・そしてルリが願ったこの平和を守りたいと願っていた。

あの時からさらに短く切った髪、ボディラインを強調させるパイロットスーツが無いと

リョーコの事を男と見る人が多数だろう。

「中尉、発進準備できました。」

「おう!行くぞ!てめぇら!」

リョーコは部下達に声をかける。

ターミナルコロニー『アマテラス』・・・ここで、リョーコ達は訓練に明け暮れていた。

クリムゾングループがこのコロニー建造の費用を出資しているとあって、

ネルガルの調査部も調査したのだが、未だに全容がつかめていないコロニーの一つだ。

しかし、リョーコはその事を知らない。ヘタに知ってしまうと、とても誤魔化せない性格だからだ。

扱う機体も、統合軍の使用している量産型エステバリスのジェネレーターを勝手に改造した物で

この手の改造には、ウリバタケが当然のごとく絡んでいた。

「しかし、あのオッサン・・・自爆装置なんか付けてねぇだろうな・・・」

ナデシコ時代からの付き合いでもある改造屋の顔を思い浮かべる。

『隊長、今日の訓練プランは?』

部下の一人が生真面目な顔で問い掛て来たので、リョーコは現実へと引き戻された。

「へへっ・・・俺とお前らで勝負するってぇのはどうだ?」

『隊長とですか?』

「ああ、もし俺に勝つ事が出来たら・・・そうだな、俺の手料理をご馳走するってのはどうだ?」

『遠慮しておきます。』

「何だと!」

『この前、隊長の友達から聞いた事があります。

隊長の料理は殺人料理だ・・・っ・・・て・・・』

リョーコは、ギロリと部下をにらみつける。

「誰だ?そんな事を言ってたのは・・・ヒカルか?

それともイズミか?」

『い・・・いえ・・・ロン毛でいかにも軽薄そうな奴で・・・』

「アカツキか?」

リョーコの目が益々きつくなる。

『いえ・・・その・・・高杉大尉です・・・』

リョーコの迫力に負け、白状する。

「ふっふっふっふっふっふっふっふっふっ・・・・

サブ・・・憶えてろよ・・・」

その後、リョーコの訓練は苛烈を極め、リョーコの部下は全員入院してしまった。

もちろん、うわさの高杉大尉は・・・

「サァブゥ〜!てめぇ!よくも!」

「ちゅ、中尉!お・・・落ち着いて話そう・・・」

「高杉大尉!匿名で投稿なんて何考えてるんです!」

「メ、メグミさんも・・・俺じゃないんだ!」

連合宇宙軍本部ビル・・・その中で高杉はリョーコ、メグミ、そしてユリカに捕まっていた。

「高杉大尉・・・ユリカの料理は食べられないってどういう事?

アキトは、涙を流して食べてくれたんだよ?」

「「「いや、それは別の涙じゃぁ・・・」」」

3人の声が見事にハモる。

「とにかく、高杉大尉!きちんと話してもらいますからね!」

「サブ・・・誰に喧嘩売ったかきちんと教えてやる!

「私達の料理も日々進化してるんですよ?」

「む、むしろ悪いほうに進化してるんじゃぁ・・・」

「何ですって!」

墓穴を掘った高杉にユリカは、死刑宣告を読み上げるように(後日の高杉談)

「と、言うわけで・・・たっぷりと私達の料理を味あわせてあげますからね。」

「た、助けて・・・・・・・」

脳は逃げる事を最優先事項としているのだが、体があまりの恐怖に言う事を聞いてくれない。

3日後・・・高杉の体重は10キロ減ってしまっていた・・・

もちろん、3人が食べさせたのはスタミナ料理であったのだが・・・・

「高杉・・・成仏しろ・・・」

「わが娘ながら・・・恐ろしい・・・」

秋山とミスマル=コウイチロウは、

自分達が犠牲にならなくてすんだ事を神に感謝していた。

 

 

 

 

 

 

 

ガラガラ・・・

『日々平穏』と書かれた店の扉が開く。

小さな店だが、常連客も多く繁盛している。

「すみません、お客さん・・・まだ準備中って、ウリバタケさんじゃないかい。

・・・また、夫婦喧嘩かい?」

ホウメイは、苦笑しながらウリバタケと妻のオリエにカウンターに座るよう促す。

「いや、ラピスちゃんに頼まれて・・・ちょっとね。」

「何がちょっとですか!大体、何処の世界に変形合体して

その後、自爆するバスケットゴールがあるんですか!」

ホウメイは、オリエの一言で全てを察知した。

―まったく・・・ここは何時から喧嘩の仲裁所になったのかねぇ・・・

時々、エリナとアカツキ、アヤとカズマ、ヒカルとヤマダ、リョーコとサブロウタ等

いろんな人が集まってくる。しかも、喧嘩した後は必ずだ。

「はいよ、水でも飲んで落ち着きなよ。ウリバタケさんは坦々麺でよかったんだよね。

オリエさんは・・・っと、赤ちゃんがいるんだったら刺激物は避けたほうが良いね。

・・・チキンライスで良いかい?」

「おう。」

「はい。何時も、すみません。」

「大体、ウリバタケさんもオリエさんに頼りすぎだよ?」

「う・・・」

「オリエさんも、赤ちゃんがいるんだから、こういう時は男がしっかりしなくてどうするんだい。」

ホウメイは料理を作りながら言う。

「それに、オリエさんも旦那さんの手綱をしっかりと握っておかないと、

すぐにどっか行っちゃうんだから。」

「はい・・・」

―やれやれ・・・解ってるんだろうねぇ・・・確か先月は修理を頼まれたテレビが

いきなりロボットになったって言ってたけど・・・

ホウメイは二人に料理を出しながら思いにふける。

―テンカワが生きてたらルリ坊つれて、ここに来てたかねぇ・・・

少し感慨にふけるホウメイであったが、ウリバタケ夫妻によって中断されていた仕込みを再開する。

小さいながらも、常連客の多い店でそれなりに忙しい。

「今度は営業中に来なよ。上手い料理ご馳走するからね。」

ホウメイは二人に言う。ウリバタケ夫妻は、ホウメイに礼を言いお金を置いて店を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

BAR『花目子』・・・イズミが経営しているショットバーだ。

そこに、一人の男がカウンターでウィスキーをロックで飲んでいる。

「久しぶりね、プロスさん。」

「ええ、2年ぶり・・・ですか。」

不意にかけられた声にプロスは笑顔で反応する。

イズミは、先程までステージでウクレレを掻き鳴らしていたのだが、

プロスの姿を確認し、早めにステージを切り上げたのだ。

もっとも、客の大半はイズミのステージに興味なさそうにしていたのだが・・・

「よくここが判ったわね。」

「これでも、ネルガルの諜報部ですよ。

死んでいなければ、見つけ出す事は容易です。」

プロスはウィスキーを一気に飲み干す。

「ドクター・・・見つからなかったの?」

ホシノ=ルリの死から1年後、イネス=フレサンジュは火星極冠遺跡へ調査に向かったが

その途上で、乗っていたシャトルが爆発。しかも、そのシャトルを操縦していたのは

初代オモイカネの自我でもある、ルビィだったのだ。

「ええ・・・火星航路上の事故・・・となっていますが・・・

彼女はA級ジャンパーです。よほどの事が無い限り

大丈夫だと思うんですけど・・・」

プロスは、その後の言葉を続けられなかった。

テンカワ=アキトのように不意を突かれていなければ

ジャンプに必要なイメージを作り出す事は可能だ。

しかし、あらゆる事実がイネスの生存を否定していた。

「最近ね、夢を良く見るの・・・」

イズミは、コルクボードに貼られている写真を見ながら言う。

ナデシコ時代に皆で撮った写真や、リョーコ達との写真、ナデシコ内でパーティをした時の写真

テニシアン島での写真等、所狭しと貼られていた。

「ほう?どんな夢ですかな?」

「アキト君とルリちゃんが現れる夢・・・

妙にリアルだったわ。二人で屋台を引いていたの。

ルリちゃんはチャルメラを吹いて・・・ちょっと音程が外れてたわ。

そして、その屋台には皆が居て・・・プロスさんも、もちろん居たわよ。」

「そうですか・・・実は、私も同じような夢を見た事があります。

正夢・・・何て事は無いと思いますが・・・願望ですかね。

テンカワさんとルリさんが生きていたら・・・さぞ、楽しい毎日だろうと思っています。」

普段夢など見た事がないんですけど、とプロスは言葉を続けた。

「あの、忘れ得ぬ日々・・・ね。」

「オモイカネの言葉ですね・・・」

イズミは、プロスのグラスにウィスキーを注ぐ・・・

「私も飲んで良いかしら?」

「ええ、久しぶりの再開に・・・」

「テンカワ君達の、あの世での幸せを願って・・・」

キンとグラスがぶつかる音がする。

二人は永遠に会えない友を思い、酒を酌み交わしていた。

ナデシコの思い出を肴に・・・

 

 

 

 

 

 

喫茶『アルファ』・・・連合宇宙軍本部ビルの近くにあり

時折、軍関係の仕事をしている人たちが訪れる。

アンティークな雰囲気と、今時レコードを使って店内に音楽を流している珍しい店だ。

時間帯がお昼を過ぎて、人気がなくなった店内だが二人の男女が席に座っている。

一人は女子高生、もう一人は連合宇宙軍の制服を着ている。

「・・・まったく・・・過剰防衛は止めろと何度も言ってるだろう?」

「だって、ジュンちゃん。私の財布を取って逃げたんだよ?

自分の財産を守るためには当然の処置じゃない?」

「だからって、後ろから鉄アレイを投げつけるのは良くない・・・

と言うより、よく鉄アレイなんかを持ってたし、命中させる事が出来たな。」

「インターハイが近いの。もう少しでメンバーに選ばれそうなんだから

トレーニングをしてたの。」

―何のトレーニングだ?

ジュンのコメカミに冷汗が流れる。

「だからって、カズマやミサキさんじゃ無いんだから、鉄アレイ攻撃を受けたら

普通の人は大怪我するんだぞ?」

「判ってるって。」

ユキナは、マスターが持ってきたパフェを食べながら言う。

「それに・・・何で、僕を呼び出すかな。」

「え〜、だってミナトさんだと迷惑がかかるでしょうし

お兄ちゃんだと警察官と喧嘩になっちゃいそうだし、

ユリカさんやアカツキさんは忙しそうな感じがしたし

カズマさんじゃ社会的信用がねぇ・・・

その点、ジュンちゃんだと社会的信用はあるし

信頼されそうな顔だもの。」

「なんだよ、それは。」

ジュンにしても、事務処理などの仕事で忙しいのだが

(ユリカから押し付けられた仕事がほとんどである)

ユキナを放っておくわけにも行かず、こうして警察からの呼び出しにも対応しているのだ。

「う〜ん、その若さで宇宙軍の中佐。

しかも、参謀本部付きだなんて、エリートコースまっしぐらって感じじゃない?

考えようによっては、かなりお買い得って感じよね。」

「おだてても、何も出ないぞ。」

ジュンはコーヒーを飲みながら言う。

「未だにユリカさんを狙ってるの?」

「ブハァ!」

その言葉にジュンは、思わずコーヒーを吹き出してしまう。

「や〜ん、きたな〜い。」

「い、言って良い事と悪い事があるぞ!」

ジュンはテーブルを拭きながら言う。

「だって、事実でしょう?」

「ユリカは・・・恐らくもう誰にも恋愛をしないんだろうな。」

ジュンは手を休め、小さい時から一緒にすごしてきた女性を思い浮かべる。

「それって、テンカワさんの事を今でも想い続けているって事?」

「ああ、ユリカの心の中には、まだテンカワが住み続けている・・・そんな気がする。」

「つらいわね・・・」

「ああ・・・」

ジュンは、マスターが気を利かせて持ってきてくれたコーヒーに

砂糖を入れスプーンでかき混ぜる。

コーヒーの香りと、レコードから流れるサックスの音が

ナデシコ時代の話題に花を添えていた。

「まぁ、いざとなったら私がお婿さんに迎えてあげるから。」

「え?」

ユキナが突然言う。ジュンは思いっきり戸惑ってしまった。

「冗談よ。・・・もしかして、本気にした?」

「い、いや。」

ジュンは、窓の外を向きながらコーヒーを飲む。

「冗談じゃないんだけどな・・・」

「何か言った?」

ジュンに尋ねられ、ユキナは慌てて

「あ、レコードの音じゃない?」

「そうかなぁ?」

「そうだよ。」

―マスター、お願いだから何も言わないでね・・・

ユキナは一人、怪訝な顔をしているジュンを見ながら思うのであった。

 

 

 

 

 

ネルガル会長室・・・

アカツキ=ナガレは何時も通り仕事を・・・と言うより

何時もの倍近くある書類に目を通していた。

「やれやれ、ほんの暇つぶしのつもりだったのに・・・

何でこんな目に会わなければならないんだ?」

アカツキは、手際よく書類をさばきながら呟く。

「はぁ・・・あなた、まだ自覚が無いようね。」

「エリナ君、休憩にしないか?いい加減、苦情処理は飽きてきたよ。」

その言葉にエリナは大きくため息をつき、ゆっくりと立ち上がる。

そして、アカツキの目の前に立つと、机を思いっきり叩く。

「あ・な・た・が、計画したんでしょう?」

「計画しただけで、実行したのはラピス君なんだけどねぇ。」

「小学生に罪をなすりつけるつもり?」

「だって、喜んでたよ?」

「自爆するまでは・・・ね。」

ジト目で睨むエリナ。

「まぁ、良いじゃないか。僕も久しぶりに楽しめたし・・・」

「あなたが楽しんで、どうするのよ!」

「それより、報告を聞こうか?」

エリナは、手に持っている報告書に目を落とす。

そこには、『ミスマル=ユリカ護衛報告』と

『ラピス=ラズリ護衛報告』と書かれている。

「ゴート君、これまでの戦果は?」

むっつりと会長室の隅にいた男性がアカツキの問いに答える。

「はい、現在までクリムゾングループの諜報員を96人拘束。

草壁の配下らしき男も目撃報告があります。

・・・この間の自爆騒ぎに巻き込まれたそうです。」

エリナは、額を指で押さえ首を振る。

「まさに、怪我の功名ね。」

「酷い言い方だねぇ。あれは、敵を油断させるためにやったんだよ。」

「あんたねぇ。」

「コホン・・・続けてよろしいですか?」

ゴートは、何時までも続きそうな漫才を咳払いで制する。

「そして・・・これをご覧下さい。」

ゴートは一枚の写真をアカツキに見せる。

「・・・監視を怠らないでくれ。それから、この事は内密にしてくれ。

ヘタに騒がれないほうが動きやすいだろう。」

アカツキは、エリナにも写真を見せる。

「・・・カザマ=イツキに・・・スメラギ=トオル?でも、彼らは・・・」

「彼らの死を確認したわけではありません。

それに、スメラギはA級ジャンパーです。

あと、カザマ=イツキはジャンパー処理を受けた形跡がありました。」

ゴートは資料を出しながら言う。アカツキは鋭い目でその報告書を読む。

「厄介な相手だね・・・ナデシコクルーの護衛は万全だろうね?」

「はい、でも人手不足は否めません。

我々も、全力を尽くしてはいるのですが・・・」

「会長、その件で報告があります。」

エリナはアカツキに書類を渡す。

「ふふん、アヤ君も良く納得してくれたね。」

「ええ、彼女としても渡りに船だったのでしょう。」

「ラピス君の護衛は、アヤ君に任せて大丈夫だろう。

カズマにも、それとなく話はしているんだろうね?」

「彼に回りくどい事をさせても無駄ですわ。

直球勝負でいきます。」

そう言うと、エリナはアカツキに書類を差し出す。

「・・・いいだろう。」

さっと目を通したアカツキは承認の印鑑を押す。

「僕もこんな学校なら行ってみたいね。」

「もう4人ぐらい増えれば完璧にナデシコ学園ですわ。」

エリナは、アカツキから書類を受け取りながらいう。

書類には、カズマとプルセルがラピス達の通う学校へ、教師として赴任する旨が書かれていた。

「お、いいねぇ。じゃぁ、僕なら何が似合うかね?」

「お惚け教頭ぐらいがお似合いよ。」

「酷い言い方だねぇ・・・っと、エリナ君・・・この後の予定は全てキャンセルしてくれないかな。」

アカツキは、自分の端末に届いたメールを見て言う。

「え?でも、この後はマーベリック社と業務提携の会合がありますけど・・・」

アカツキはこうして、何度も仕事をキャンセルしているのでエリナは慣れてはいたが、

自分に内緒で何をしているのか、気になっていた。

「そんなもの、僕が居なくても大丈夫だろう?こっちの方が大切なんだ・・・頼むよ。」

「・・・分かりました。マーベリック社には会長の体調不良を連絡しておきます。」

「助かる。」

アカツキは、そう言うと席を立つ。

「じゃぁ、後の事は頼むよ。」

「はい・・・会長?一体何をなさっているのです?」

エリナは、アカツキに疑問を投げかける。

ゴートにも、アカツキが何をしているのか知らされていない。

「秘密ってやつはね、秘密のままにしておいたほうが良い事もあるんだよ?」

「判っていますけど・・・せめて、何をしているか教えていただけます?」

エリナは、アカツキに問い掛ける。

「ははは、その内わかるさ。護衛は月臣君を連れて行くから。」

最近は、月臣と行動する事が多くなったアカツキをエリナは不審に思う。

「長髪同士、仲が良いのかしら?」

アカツキと月臣がトリートメントの事で相談している姿を思い浮かべて、苦笑するエリナと

何時ものむっつり顔で、部下に指示を送るゴートであった。

 

 

 

 

 

シークレットサービスの控え室。

そこには、何やら打ち合わせをしている月臣と斎藤の姿が見えた。

アカツキは、二人に近寄っていく。

「やぁ、またお願いしたいんだけど。」

「で?今度は何処だ?」

月臣は、ため息をつきながら言う。

「前回はトルコでしたよね。」

月臣の部下、斎藤は何時もの冷静な目で言う。

「今回はエジプトみたいだよ。」

「それは、また・・・」

「南下しましたね・・・」

例のトラブルが原因らしい・・・」

アカツキはニヤニヤしながら言う。

「はは・・・例の・・・」

月臣も何時もの事なので慣れている。と言った表情だ。

「詳しくは機内で聞きましょうか。10分で用意します。」

「頼むよ。」

斎藤は、アカツキ専用機の準備の為控え室を出て行く。

「・・・月臣君、短い平和は終わりを告げそうだよ・・・」

「では・・・」

「ああ、また騒がしくなりそうだ・・・」

アカツキは窓の外にみえる町並みを見ながら、感慨にふけっている。

―また、彼らの力を借りないといけないとは・・・今回ばかりは、辛い戦いになりそうだね・・・

「会長、準備が出来たそうです。」

月臣はアカツキに言う。心なしか、その顔はワクワクしているようだ。

「ああ、行こうか・・・」

その後、アカツキの足取りは急に途絶え3日後の夕方、ネルガルの会長室に突然現れた。

 

 

 

 

 

帰ってきたアカツキを待っていたのは、行方不明中の仕事だった。

山のようにある書類を処理するため、会長室に缶詰状態となったが

3日分の仕事を、僅か22時間で仕上げると言う快挙を成し遂げた。

「エ・・・エリナ君・・・明日は休暇と言う訳には・・・」

エリナはギロリと睨みつける。その目は完全に血走っていた。

「ええ、仕事が終わればの話ね。でも、あなたの休暇は当分取れないわよ。」

そう言いながら向こう一ヶ月のスケジュールを説明する。

「・・・この25時からと言うのは・・・」

「25時から『経済ジャーナル』の取材。26時から新型フレームの技術会議。

29時からはテレビの生番組出演です。」

「・・・一日って24時間だよね・・・」

「ええ、世間一般ではね。」

「労働基準法に違反しないのかな?」

「ちゃんと休憩時間を取っているから大丈夫よ。」

「・・・休憩時間5分というのは休憩に入らないよ。」

「トータルすれば2時間になるわ。」

冷たく言うエリナ。アカツキは、ガクリと肩を落とし書類に向かっていく。

「あ、それからナデシコCの建造に着手しました。」

「そっちの方は君に任せるよ。

オモイカネも、ラピス君に早く会いたいだろうからね。」

アカツキは、もう一人の電子の妖精を思い浮かべる。

「ええ、彼女に注入されたナノマシンの効果が消える日が近づいています。

アヤ達のおかげで、彼女にも人間らしさと思い出が沢山出来たようです。」

「良くも悪くも、人を成長させるのはやはり環境次第・・・と言う事か。」

「それと、ナデシコBの艦長は彼女にやってもらいます。」

エリナが出した書類には『ナデシコB艦長ミスマル=ユリカ』と名前が書かれていた。

 

 

 

 

 

 

青い夏空に、一条の飛行機雲が出来ていた。

その下の霊園で、かつて自慢にしていた長い髪を切り

連合宇宙軍の制服を着た女性・・・ミスマル=ユリカが、

手にした花を目の前にある墓にそっと置く。

その墓の周辺には、生前の人柄か若しくは人気だろうか、沢山の供物が置いてある。

ユリカは、皆がこの墓に眠っている者の事を忘れていない事を感じた。

その墓には天川家之墓と書かれていた。

「へへっ、アキト。私、連合宇宙軍の大佐さんになったんだよ。

でね、新しいナデシコの艦長さんなんだよ。」

ユリカは、アキトの墓に手を合わせる。

「・・・アキトが死んで、ルリちゃんも死んで、イネスさんも行方不明・・・

私だけ残されちゃったね・・・

皆、それぞれの居場所を手に入れてるのに

私の心は宙ぶらりんのままだよ・・・アキト・・・」

ユリカは、そっと隣に立っている小さな墓を見る。

「ルリちゃんと喧嘩してない?

もし喧嘩したら、ユリカ許さないよ。」

ユリカはしばらく、死者との対話をする。やがて、スッと立ち上がり

「じゃぁ、行って来るね。・・・アキト・・・」

そう呟くと、ユリカは霊園を後にした。

空は何処までも青く、澄み切っていた。

 

 

 


作者:と言うわけで最終回、青い『夏空』の下でをお送りしました。

ルリ:・・・

作者:って、その不満タラタラな表情は・・・

ルリ:前回、あんな引きを使っておきながら今回はこれですか。読者様をバカにしてませんか?

作者:いや、これで良いと思っている。

ルリ:なぜです?

作者:劇場版最初のシーンでむさいオッサンが登場したけど、それがうら若き女性だったら・・・

ルリ:・・・オヤジ・・・ですね・・・

作者:言うな!

ルリ:結局、アキトさんと私は死んでしまったのですか?あと、イネスさんの行方も気になりますし・・・

作者:ふふん・・・そういうと思って!

 

 

 

次回予告!

 

 

 

「あ、あれは・・・まさか!」

ジュンはブリッジで驚愕する。

 

 

「黒い王子様と・・・黒い妖精・・・地球に・・・来てる・・・」

大浴場でラピスは思いにふける。

 

 

「決着をつけよう・・・」

北辰はニヤリと笑う。

 

 

 

「これは、コロニー管理条約に乗っ取っての臨険査察です。」

ユリカの堂々とした態度に思わず首を縦に振る。

 

 

 

「どうして・・・生きてるって知らせてくれなかったの?」

ミサキは涙を流しながら言う・・・

 

 

 

「あの人に・・・任せます。」

そして・・・・

 

 

機動戦艦ナデシコ Re Try 第2章 制作決定!

 

 

「ま、ちょっとした同窓会ですよ。」

プロスはにっこりと笑った。

 

 

 

 

 

ルリ:・・・

作者:どうだい?この燃える展開!

ルリ:・・・

作者:感動して言葉もないようだね。

ルリ:・・・あきれて物も言えません。大体、決着を先延ばしにした結果でしょう!

作者:そうとも言う!

ルリ:開き直らないで下さい!大体、劇場版のパクリになるんでしょう?

作者:最後は違うと思う。

ルリ:・・・今度は誰か死ぬんですか?

作者:え?そ、そんな事は・・・

ルリ:知ってますよ、この間某スカパーで『ナディア』の劇場版を見た後TVシリーズをレンタルしたのを・・・

作者:ソレト、ドンナカンケイガ

ルリ:確かあの話って最後は一人犠牲になって残る人が居ましたよね?

作者:ギクギク・・・

ルリ:・・・その反応だけでわかりますよ。

作者:い、いやだなぁ・・・はははははは・・・

ルリ:まぁ、あの話の中で最後は子供が出来ていましたよね。

作者:え?

ルリ:子供といえば私とアキトさんの子供に決ってますよね?

作者:い、いや・・・その・・・

ルリ:違うんですか?

作者:そ、それでは次回 機動戦艦ナデシコ Re Try 第2章 にご期待ください!

 

―『やっぱりね』と言う感想が聞こえそう・・・

 

 

 

 

 

代理人の個人的な感想 

やっぱりねー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

なんて言う訳ないでしょっ!(爆)

 

 

全然予想してませんでしたってば、ホント。

つーか、一応戦争が終わって和平が成立してそれでアキトが行方不明って、

そこだけ聞くとまんま時ナデですやン(爆)。 

ご当人がおっしゃるようにまとめ切れなかったのか、

あるいは新しい話を思いついたのかはわかりませんが・・・・。

できれば一応のエンドマークは付けられるような区切り、

第一部は第一部で完結する話であって欲しかったかなァと。

そう思いました。