せっかく助けた火星の人達・・・
ナデシコと共に運命をともにする人達・・・
アキトさんを思う人達・・・
皆の思いを乗せてチューリップへ突入していきました。
アキトさんの願いとともに・・・
機動戦艦ナデシコ Re Try 第8話 温めの冷たい『方程式』
やはり今回も私が最初に目を覚ましました。
私の体はやはり特殊なのかもしれません。
ブリッジに残った人たちは気絶しています。
とりあえず私はフィールドの出力を全開にして皆を起こしに掛かりました
「みなさーん、起きてくださーい。
朝ですよー。やっほやっほー。起きて下さい。」
ふっ・・・私の呼びかけにも、目を覚ます人は皆無ですね・・・
私はおもむろに耳栓を取り出し、オモイカネに最大級の目覚ましをお願いしました。
<じりりりりりりりりりりりりりりりりりりり>
みんな何事がおきたのかと思い飛び起きます。
やはり効果がありましたね。
ユリカさんは・・・やはり展望室に跳んでいました。
『なぁに?ルリちゃん?どうしたの?』
ユリカさん、まだ寝ぼけているようですね。
「通常空間に出ました。艦長、どうしますか?」
『ほへ、どうして展望室に居るんだろう?イネスさんまで・・・』
「艦長。」
『あ、とりあえず外の様子を見せて。』
「はい。」
私は現在行われている戦闘をユリカさんの前面に見せました。
『どしぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!』
ユリカさん・・・驚きすぎです。
「どうしますか?現在ナデシコのフィールドは48%です。
グラビティブラストのチャージは出来ていません。」
『とりあえずこの場を離脱、とっとと逃げちゃってください。
すぐにブリッジに向かいます。』
「はい、ミナトさん。いい加減起きて下さい。」
「う、う〜ん。・・・ルリルリ、一体何が起きてるの?」
「とりあえず逃げちゃってください。話はそれからです。」
「わ、解ったわ。」
皆さん続々と目を覚ましていっています。
私は艦内の状況を把握していきました。
「ごめんなさい!状況は?」
「ユリカ、何処に行ってたの?」
「よくわかんないんだけれど気が付いたら展望室に居たの。」
ジュンさんの問いかけにまだ状況を理解していないユリカさんが答えます。
「全艦、異常なし。チューリップ突入前と人員代わらず。」
「じゃあ、やっぱりアキトは・・・」
「艦長、落ち込んでる場合じゃあない。
この状況を何とかしないと。」
フクベ提督がユリカさんを叱咤します。
「そうですね。ルリちゃん状況は?」
「よくありません。現在全力で逃げていますが
チューリップ突入前からの無理がたたったのか
相転移エンジンの出力が上がりません。」
「メグちゃん、各エステバリス隊に出撃命令。
目的はナデシコの防衛。」
「了解。エステバリスの各パイロットは準備でき次第発進。
繰り返す・・・」
随分スムースになりましたね。
命令を受けてからの反応が出向時と比べても格段と上がっています。
「各エステバリス発進完了。」
「ルリちゃん、敵木星蜥蜴に対して最適の攻撃ポイントを計算して。」
「了解。」
「ミナトさんは、ルリちゃんが割り出した攻撃ポイントに、艦を移動させてください。」
「は〜い。」
「ジュン君は、私の代わりにエステバリス隊の戦闘指揮を!」
「え?僕が?」
「そうよ、今までジュン君が頑張ってきたのは何のため?
ユリカが知らないとでも思っているの?」
「ユリカ・・・」
ジュンさんは今までシュミレーションで
エステバリス隊の効果的な運営を研究していました。
「解った、ユリカはナデシコの指揮をとってくれ。」
こうして私達は戦闘を開始したのですが・・・
『え〜、10機中3機だけ〜?』
『バッタ君のフィールドも強化されてるみたいね。』
『おもしれぇ、拳と拳の勝負だ。』
『そのと〜り!くぅぅぅぅ!
やっぱり最後は拳の勝負だよな〜!』
敵のフィールドが強化されているみたいで
エステバリス隊は苦戦しています。
それでもジュンさんからの的確な判断による指示のもと
現場の指揮権をゆだねられたリョーコさんや
最近めっぽう腕を上げてきたヤマダさんの活躍で
何とか持ちこたえている状況です。
アキトさん・・・早く来て・・・
『ぐわぁぁぁぁぁ!』
ヤマダ機が被弾しました。
幸い致命傷にはならなかったようですが戦闘続行は不可能に近いですね。
『ヤマダ!大丈夫か!』
『ダイゴウジ=ガイだ!』
必死に回避運動を取りながら叫んでいますが
絶体絶命のピンチです。
「ヤマダ機回収まで、スバル君とイズミ君は敵を近づけるな!」
『やってるよ!』
『数が・・・地方競馬をするところ・・・大井』
リョーコさん達も少なからずダメージを受けており
ナデシコも最早、グラビティブラストを放つまでの余裕はありません。
ヤマダさんの機体をバッタが囲んでいたその時・・・
ヤマダさんの周りを包囲していたバッタが次々と爆発していきました。
私達が見たものは・・・
黒い・・・
追加装甲をつけた・・・
アキトさんの復讐鬼の象徴でもある・・・
ブラックサレナでした。
『みんなすまない!
助けにくるのが遅れてしまった。』
ウインドウ通信に映し出されたのは・・・
間違いなくアキトさんでした。
・・・でも、黒いマントとバイザーは
ブラックサレナに乗るときには基本なんでしょうか?
「アキト!無事だったのね?」
「アキトさん!でもどうやって?」
『アキト!てめえ、新型機に乗りやがって!
後でいじらせろ!』
みんな好き勝手言っています。私は・・・
「お帰りなさい、アキトさん。」
『ただいま・・・ルリ。』
とびっきりの笑顔をアキトさんは見せてくれました。
『再開の喜びに浸っているところ申し訳ないが・・・
とっとと敵を殲滅しないかい?テンカワ君。』
青いエステバリスに乗ったロン毛の人がウインドウ通信に現れました。
プロスさんとゴートさんが少し青い顔をしていますね。
「あんた誰?」
ミナトさんがみんなの質問を代表してくれました。
『アカツキ=ナガレ。コスモスからきた男さ。』
キラリと歯が光りました。
どうやっているんでしょうか?
ここはやはり・・・ナデシコ7不思議に登録ですね!
その後、多連装のグラビティブラストを装備した
コスモスによって木星蜥蜴は殲滅されました。
格納庫に戻ってきたアキトさんを私達は迎えに行きました。
あ、ついでにアカツキさんも・・・
「みんな、ただいま。」
アキトさんが変わらない笑顔で言います。
ついさっきの出来事がまるでウソのようでした。
「アキト君、どうやって生き残ったの?それにこの機体・・・」
ミサキさんがアキトさんに質問します。
さあ、どんな言い訳をするんですか?アキトさん。
「あの後・・・ナデシコがチューリップの中に入っていくのを確認した後
ナデシコを追ってバッタたちがチューリップに入っていこうとするのが見えたんだ。
そこでバッタを追いかけてチューリップに突入したら・・・
突然、ヨコスカシティの近くに出たんだ。
その時、ヨコスカシティは木星蜥蜴に襲われていたから木星蜥蜴を撃退して、
バッテリーが切れたところをネルガルに保護されたんだ。」
ちらりとアカツキさんを見るアキトさん。
「そして、彼はネルガルが作り出したブラックサレナの
テストパイロットとして僕と一緒にきたと言うわけさ。」
アカツキさんが乗ってきたのはスーパーエステバリス。
アカツキさんの性格からしてブラックサレナに乗ろうとしたはずですが・・・
「彼の乗るブラックサレナは普通のパイロットに扱う事が出来なくてね。
でも彼のおかげでだいぶデータが取れたよ。」
アカツキさんも乗ったんですね。
でもブラックサレナの運動性能についていく事が出来なかったようですね。
「ちょっと待った!
俺達がチューリップに突入してから、まだそんなに時間がたっていないはずだ!
なんでそんなに短期間で色んな事が起こりえるんだ!」
リョーコさんが、もっともな質問をします。
「みんな、落ち着いて聞いてくれ・・・
みんながチューリップに乗り込まれて
すでに地球では8ヶ月経過している。」
みんな頭が硬直しています。
ボソンジャンプの事を知っている私にとっては
当前の結果なんですけれどね。
「どうしてそんな結果になったの?
誰か説明できる人っているの?」
メグミさん、どうしてそんな簡単に召還呪文を唱えるのですか?
そんな言葉を言うとあの人が・・・
「説明しましょう!」
ほら・・・やっぱり・・・
「チューリップを通ればワープが出来る。
このことは間違いないと思われています。
しかし火星で見たクロッカスの氷の付き具合から見て
少なくとも2ヶ月は経過していたと見て間違いないわね。
そして、お兄ちゃんより少し前にチューリップに入った私達が
お兄ちゃんに遅れて8ヵ月後に現れた・・・
このことから導き出される結論は、空間を越えるだけではなく時間までも超える・・・
つまり時空転移と見て間違いないわね。」
どうでもいいけどイネスさん・・・
いつ復活していたんですか?
私達は傷ついたナデシコを修理するためにコスモスにドッキング。
これでしばらくナデシコは動けません。
何もすることが無い、私達は食堂にやってきています。
もちろんアキトさんに会うためです。
「アキトさん。」
私は厨房にいるアキトさんに声を掛けます。
「ああ、もうちょっとで終わるから・・・」
私は嬉しそうに料理をしているアキトさんを眺めていました。
「やっぱりアキトさんは、料理をしている姿が一番似合いますね。」
「そうね、パイロットとしてのアキト君、
格闘家としてのアキト君を見てるとつい忘れがちになりそうだけどね。」
私の言葉にミサキさんが答えます。
「そうですね。でも、やっぱり一番輝いているのは料理をしているときです。」
あ、自分でも顔の表情が緩んでいるのが解ります。
でも、その時・・・
「お父さん、お腹すいた。」
厨房から出てきたアキトさんの腕を引きながら
さりげなく爆弾発言をする薄桃色の髪をした少女・・・
「アキト君!誰?その子!アキト君の隠し子!?」
「アキト!信じてたのに!」
「たとえアキトさんに子供がいようと私はアキトさんと一緒に!」
「おい!テンカワ!おめぇ俺達を騙していたのか!」
「ねえ、アキト君。その子は誰との間に出来た子?」
「アキト君もやるわね〜」
アキトさんの周りに食堂に居た艦長を始めとする人たちが詰め寄ってきました。
「い、いや・・・これは・・・その・・・」
アキトさん、はっきり言ったほうが良いんじゃあありませんか?
「お母さん。」
私の手をつかむ少女・・・
いい加減にしないと私も怒りますよ。
「テンカワさん、失望しました。
まさか・・・あなたが犯罪者だとは・・・」
「テンカワ、お前のした事を俺は許せん。」
「ルリルリに子供を産ませるとは、おめぇやっぱり鬼畜だな!」
「こんなかわいい子が居るのに、さらにユリカ達に手を出そうなんて!」
皆さん大混乱ですね・・・流石に私も困ってしまいました。
アカツキさんを見るといたずらが成功した子供のような目をしていました。
「皆さん落ち着いてください。
いくら私がアキトさんのことを愛していても
まだ子供を産むなんてことは出来ませんし
この子が生まれたとき、一体私は何歳ですか?」
私が冷静な声で訴えると皆さん落ち着いてきたようです。
「そ、そうですね。
いくらアキト君が見境無しに手を出しているとしても
ルリちゃんに子供を産ませるなんて不可能よね。」
ミサキさん・・・アキトさんの事をそんな風に見ていたんですか・・・
あ・・・アキトさんが隅っこの方でいじけています。
「そ、そうよね。いくらアキトでもそこまではしないよね・・・」
ユリカさん・・・さっき散々疑っていたじゃあないですか・・・
「そ、そうです。
いくらテンカワさんといえどもルリさんを
妊娠させるなんてことしないですよね。」
プロスさんまで・・・
「くっくっくっくっくっくっく・・・
いやあ、思った以上に面白いねぇ。
ナデシコって・・・」
アカツキさんがお腹を抱えて笑っています。
「アカツキさんの仕業ですね?
ラピスがこんな行動に出たのは・・・」
「知り合いだったのか・・・
ま、当然といえば当然か・・・」
そう、先程から爆弾発言をしていたのはラピス=ラズリ・・・
私と同じマシンチャイルドで実力は私の次ぐらいです。
「ラピス・・・自己紹介をしなさい。」
私の言葉を受けるとラピスは頷きました。
「ラピス=ラズリ、オペレーター。
アキトの存在は私のすべて・・・」
ラピス・・・あなたも敵に回ると言うのですね。
「彼女は8ヶ月前からテンカワ君のサポートをしてもらっている。」
ほう、8ヶ月間ずっと・・・。
私の思いはみんなの思いと言うべきなのでしょうね。
みんなアキトさんを睨んでいます。
「・・・ラピス・・・8ヶ月もの間アキトさんの側にいられてよかったですね・・・」
私が密かに怒気をはらんだ言葉でラピスに声をかけます。するとラピスは
「そうでもなかったよ。
だってアキトの周りには色んな女の人が居たから。」
ほほう・・・皆がアキトさんの周りを囲みます。
「アキトさん・・・じっくりと聞かせてもらいましょうか?」
私の拳から水色の神気が立ち込め始めました。
「アキト・・・あの別れの言葉は一体なんだったの?」
ユリカさん、目をウルウルさせています。少女漫画みたいです。
「アキト君・・・氷付けになってみる?」
あ、ミサキさんも神気を練っています。
「アキトさん・・・納得のいく説明をしてくれるんでしょうね?」
メグミさん、声がいつもの明るい声じゃないですね。
「お兄ちゃん・・・まだ愛人の数が足りないの?」
イネスさん・・・それはちょっと・・・
「テンカワ・・・俺はお前を信じている・・・」
リョーコさんはアキトさんの味方をしています。
でも人間磁石に対してそれは甘い認識です。
そのときでした。
「あ、アキトさん。やっぱりこっちにいましたね。」
金髪で少しウェーブが掛かった髪を一つに束ねた女性が現れました。
・・・メグミさん・・・その目は同類としてわかります!
かなりプロポーションがいいですね。
イネスさんといい勝負でしょうか・・・ちっ。
「お、ここや無いか?」
「そうみたいね。」
そう言いながら入ってきたのは赤銅色をした
野性味あふれる男性と長い黒髪をポニーテールにした
可愛いというより美人、美人というよりハンサムという表現が
よく似合う女性でした。その手には朱鞘の日本刀が握られています。
「あ、み、皆に紹介しておくよ。
こっちの暑苦しいのがクサナギ=カズマ。」
「暑苦しいっちゅうんやない!野性味あふれる言うたってや!」
インチキくさい関西弁を使うヤマダさん?
「一応、アキトの奴には散々世話になったさかい
今度はワイが手助けしちゃろうっちゅう訳や。」
「あんたねぇ、いつも世話になったんじゃなく
いつもアキトに迷惑掛けてたんでしょう?」
ポニーテールの女性がカズマさんに突っ込んでいます。
「アヤも相変わらず苦労してるみたいね。」
え・・・ミサキさん・・・知り合いなんですか?
皆がミサキさんとアヤと呼ばれた女性を見ています。
「あ、彼女の名前はクサナギ=アヤ。
この暑苦しいのとは双子の兄妹よ。」
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・
「「「「「「「に、似てない」」」」」」」
たっぷり10秒後に出した結論は皆一緒でした。
アキトさんもうんうんと頷いていますし
ラピスもクスクスと笑っています。
ずいぶん表情が明るくなったみたいですね。
アカツキさんもゲラゲラ笑っています。
「じゃかぁしい!」
「そうよ、私もこんなのが兄だとは思っていないわよ!」
「なんやて!アヤ、もう一遍ゆうてみい!」
「何度でも言ってやるわよ!
大体、あんたが私に対して兄らしい事をしたことがあるの!」
「お前かて、ちぃとは妹らしゅう兄の事気遣わんかい!
それに、毎回毎回木刀でシバキまわしよって・・・
九九の8の段が思い出せへんようになってもうたやないかい!」
「それは、あんたが馬鹿だからでしょう!」
「なんやて!アヤ!今日こそ決着付けたる!」
「望むところよ!」
そう言うとカズマさんからは炎を思わせる赤い神気が吹き出ます。
この人も神威の拳の使い手みたいですね。
アヤさんのほうを見ると先程から手にしている朱鞘の日本刀を
腰だめに構え抜刀術の構えをしています。
この二人・・・ミサキさんとほぼ同程度の実力があるみたいです。
ユリカさん達はいきなり始まった勝負にオロオロしているみたいですが
アキトさんやラピス、ミサキさんは平然と見ています。
どうやら、いつもこんな事をしていたみたいですね・・・この二人。
「アヤさんもカズマさんも・・・
仲が良いのは皆さんわかりましたから・・・」
先程の金髪の女性が間に入ります。
武術家の間合いに入るのは相当覚悟がいるのですが・・・
現に私も二人の実力に圧倒されて動けなかったんですけれど・・・
二人の殺気がみるみる萎んで行き、二人は同時に
「「今度、このナデシコで保安部兼エステバリスパイロットとなりました(なった)
よろしくお願いします(よろしゅうな)」」
・・・仲が良いと言うのは本当みたいですね。
「それで、あなたは?」
私が先程の女性に質問します。
「私はプルセル=キンケード。今度ナデシコの
副通信士をやらさせていただきます。」
「彼女はラピスを助けに行くときに銃で撃たれていたところを
俺達が助け出したんだ。」
「その時の恩返しをしようと思って
アキトさんに付いて来ちゃいました。」
・・・またですか?アキトさん・・・
私のアキトさんを見る目がどんどん冷たいものになっていっているような感じです。
「あら、ハッキリ言ったほうが良いわよ。
アキトの事が好きだから追いかけてきたって。」
アヤさんがさらりと言います。
ふふふふふふふ・・・そう言うことですか・・・
「ア〜キ〜ト〜さ〜ん〜、じっくりとお話したいのですが〜。」
「ル、ルリ・・・目が怖いよ・・・」
アキトさんがおびえています。
私を筆頭にユリカさん、メグミさん、リョーコさん、ミサキさん、イネスさんがアキトさんを囲みます。
『敵接近』
オモイカネが敵の接近を知らせてくれました。
「アキトを問い詰めるのは後にして総員第一級戦闘配置!」
ユリカさんの言葉で私たちは一斉に走り出しました。
ブリッジに到着した私たちは各部の点検を行なっています。
「ルリちゃん、エステバリス隊の発進状況はどうなってるの?」
私はすぐさま格納庫の状況を確認します。
リョーコさん、イズミさん、ヒカルさん、ヤマダさんは既に発進しています。
「アカツキ機発進完了。」
アキトさんは・・・
「ブラックサレナ出撃不可能。」
「えぇー!どうして?」
「ウリバタケさんがブラックサレナを洒落にならないくらい分解しています。」
私は格納庫の映像をスクリーンに映し出しました。
現在のブラックサレナの状態では出撃することなど不可能に近い状態です。
『ウリバタケさん、予備機はないんですか?』
『有るには有るんだが・・・』
『何処にあるんです?』
『あっちだ。』
ウリバタケさんが格納庫の隅を指差します。
アキトさんはダッシュでエステバリスに乗り込みました。
『おい!テンカワ!』
『なんです?』
『そいつは』
セイヤさんがそう言ったと同時にアキトさんが乗るエステバリスは発進してしまいました。
『スラスターの調整が不完全だぞー!』
・・・・・・
・・・
アキトさん・・・見事に歴史通りですね。
「アキトさんの機体は月方向に流れていってしまいました。」
ちなみに戦闘自体はすぐに終わってしまいましたけど。
「私がアキトさんを迎えに行きます。」
そういうと皆が反対しました。
「ルリちゃん宇宙艇の操縦免許持ってたっけ?」
ユリカさんが尋ねてきます。
「いえ、エステバリスで行きます。」
「しかしエステバリスではバッテリーが持たないぞ。」
ゴートさんの言葉は皆さん思っていることでしょうが一つ忘れています。
「エステバリス強行偵察型を使うんだろう?」
「はい、行けますか?」
「おう!ただしバッテリーを余分に積んでいるから
戦闘になっても武器はナイフしか装備していないぞ。」
「しかし宇宙用への換装は・・・」
「こんな事もあろうかとってね、もう換装済みだよ。」
流石ですね、セイヤさん。
「じゃあ、行って来ます。」
「ちょっと待った!エステで行くんだったら俺も行くぜ。」
「ダメです。」
リョーコさんの提案をあっさり却下します。
「何でだよ!」
「リョーコさんにはエステバリス隊の指揮官としての自覚が無いのですか?
もしその自覚が無いのであればアキトさんに会う資格はありません。
アキトさんはエステバリス隊の指揮は
やっぱり、リョーコさんに任せたほうがいいと言っておられました。
つまりリョーコさんはアキトさんから信頼されているんですよ。
その信頼をリョーコさんは裏切るんですか?」
「・・・わかった・・・」
リョーコさんは渋々納得してくれました。
「じゃぁ、ワイが行ったろうか?」
カズマさんが言いますが
「見習いにそんな事はさせるつもりは無い。」
リョーコさんがにべもなく言います。
「何やて!」
「カズマ、あんた人の話をちゃんと聞かなければ・・・
私達はあくまでも保安部兼任なの。
いい?保安部としての実力は買ってくれたけれど
まだ、パイロットとしては認められていないのよ。
そんな私達に任せたら二重遭難になってしまうことだってあるのよ。」
「せやかて・・・」
アヤさんの説教は途中からミサキさんも加わり、カズマさんは納得したみたいです。
カズマさんはこの二人には弱いみたいですね。
「でも、どうしてあなたが行く必要があるの?」
アヤさんは私に尋ねます。
「アキトさんは、私の大切な人だから。」
そう言い残すと私はセイヤさんに
アキトさんのブラックサレナの整備をお願いして
ナデシコを後にしました。
ナデシコを後にしてすぐにバッタが襲ってきましたが
これを何とか振り切りアキトさんが飛んでいった方向を目指してエステバリスを動かしています。
と言っても他のエステバリス隊の皆さんのように
パイロット用のIFSを持っていないのでエステバリス強行偵察型に
搭載されているAIをナビゲートしているだけですから
単純な命令しか与える事が出来ません。
しばらく飛んでいるとアキトさんのエステバリスが
アサルトピットだけになってこちらに飛んできているのを発見しました。
私はアキトさんを回収するとアキトさんに操縦系を任せて
私は本来の策敵・通信任務に就くためナビシートに座りました。
「周囲に敵影ありません。
さて、アキトさん。」
「な、何かな?」
「8ヶ月間の出来事を話してください。」
「わかったよ。
しかし、いくら二人っきりになる必要があるからって
こんな事までして・・・」
「でも本当にエステバリスが故障しているなんて・・・
ご都合主義にしては、出来すぎですよね。」
「そうだな。」
私は策敵をAIに任せ通信を受信モードに設定して
アキトさんの側に行きました。
「俺がジャンプしたヨコスカシティでは
丁度バッタの攻撃が始まっていたからな。
幸い火星の装備があったから一瞬でバッタを排除し
その後バッテリー切れを起こしていたから
ネルガルのシークレットサービスが来るまでエステの中にいた。
そして連れて行かれたのがネルガル会長の部屋、
つまりアカツキに対面したと言うわけだ。
俺はアカツキに火星からジャンプしてきた事を伝えた。
そして有人ボソンジャンプの情報をある程度彼らに渡した。
もちろん、ボソンジャンプをするためには
火星出身で無ければならないと言う情報をね。」
アキトさんは過去に火星の後継者達に脳の中を掻き回された事があります
そのことを思い出したのか少し怖い顔をしています。
私はアキトさんの手を握りました。
「それまでに、ネルガルはボソンジャンプを無人で行っていたんでしょう?」
「ああ、しかし俺が指摘した事を彼らは漠然とではあるが掴み掛けていたんだろう。
今考えるとよく納得してくれたよな〜。
ま、人体実験によって貴重な人材が失われるのを防いだんで
結果には満足しているがな。」
アキトさんは笑顔を浮かべています。
「ラピスの事は?良くアカツキさんが納得しましたね?」
「まぁ、ラピスは社長派の研究施設で育てられていたからな。
アカツキと社長の反目は歴然としていたから
天災なら仕方ないってことでラピスを救出して、
そのまま俺がラピスを引き取ることを承認させたんだ。」
「それで?そのときに先程のプルセルさんを助けた・・・」
「ああ、彼女は社長に裏切られて銃で撃たれていた所を助けたんだ。」
「そうですか。ずいぶん劇的な助け方ですよね。
道理でアキトさんのことを好きになる訳です。」
アキトさんは少し意外な顔をして
「俺も彼女の事は好きだよ。」
プチ・・・
私の中で何かが切れる音がします。
「プルセルさんだけじゃなく、カズマもアヤも
エリナさんも皆が好きだから、こうしてナデシコに乗っているんだ。」
あ・・・そう言うことですか・・・
天然なのも、時には心臓に悪いですね・・・
「・・・あ、あの・・・アキトさん・・・わ、私の事は?」
少し顔が赤くなっているのが自分でもわかります。
心臓の音が大きくなっています。
「ああ、愛しているよ。ルリ・・・」
その言葉・・・信じて良いんですね?アキトさん・・・
私は目から涙が零れ落ちるのを必死で止めようとしましたが
あふれ出る涙は簡単に止まりそうにありません。
私はアキトさんの胸に顔をうずめて
ひとしきり泣いた後、ようやく落ち着くとアキトさんの顔を見ます。
「ルリ、大丈夫だ。みんな幸せになれる。
もうあんな未来はゴメンだからな。」
「はい、そのためにアキトさんと共に私がいるんですから。」
そう言うと私達は軽くキスをしました。
「でも、カズマさんとアヤさんが、ミサキさんの知り合いとは・・・」
「ああ、俺もさっきまで気が付かなかったが
考えてみれば神気を使う者同士だから、知り合いでも不思議じゃないさ。」
「ラピスもずいぶん明るくなったみたいですね。」
そう、私の知っているラピスはずっと心を閉ざしていました。
「学校に通わせていたのと、カズマ達がいたおかげ・・・かな?」
「学校・・・ですか・・・」
そういえば私は学校に行った事がありませんね・・・
「どうした?学校に行ってみたいのか?」
アキトさんが私に笑顔を向けながら言います。
「ええ、とりあえずこの戦争が終わったら行ってみたいですね。
アキトさんは?」
「そうだな・・・高校は戦争のおかげで中退してしまったから
もう一度、今度は大検でも受けて大学にでも行こうか。」
「なら、私は飛び級をしてアキトさんと同じ大学に行きます。」
ふふふふ、アキトさんと同じ大学に入って楽しい大学生活・・・
その内学生結婚だって・・・
はっ!久しぶりに妄想モードに突入していたみたいです・・・
気をつけなくては・・・
「でも、俺の場合・・・大検を受けても通らないだろうな。」
「大丈夫ですよ。私が教えてあげますから。」
「ははっ、そのときは頼むよ。」
そう言うとアキトさんは優しく微笑んでくれます。
「あ、フクベ提督の件ですが・・・やはりナデシコを降りるそうです。」
「そうか、決断したんだな。」
アキトさんは遠い目をしています。
「はい、でもアレが戻ってきますよ。」
「・・・まあ何とかなるだろう。」
そう言ったアキトさんの顔は少し引いていました。
「うふ・・・」
エステバリスから降りてきた私は、思わず笑みが零れ落ちました。
「・・・ルリ・・・てめぇ・・・」
リョーコさんが怖い顔をしています。
「なんですか?リョーコさん。」
あ、まだ笑顔のままですね。
「ルリちゃん、アキトを犯したって本当!」
「ユリカさん、普通逆なんですけど。」
私が詰め寄ってきたユリカさんに答えます。
「お兄ちゃん、ご褒美・・・忘れてないわよね。」
「え・・・」
すっかり忘れていたみたいですね。
無理もありません。アキトさんの時間では8ヶ月前の事ですから。
「アキトくん、ルリちゃんと何してたの!」
「ルリルリに手を出した以上、責任をとってもらうわよ。」
ミサキさんとミナトさんがアキトさんに詰め寄っています。
「なんや、アキトの奴・・・やっぱりナデシコでもモテモテやないか。」
「あんたとは違うわよ。」
パイロットスーツを着たカズマさんとアヤさんが言います。
・・・アヤさん・・・あなたも敵です!
パイロットスーツを着ているとボディラインがくっきりと浮かび上がりますが・・・
それは反則です!
リョーコさん達も結構スタイルが良いのですが
そのライン・・・リョーコさん達より良いじゃないですか!
「あの・・・」
プルセルさんが私に近寄ってきます。
「あ、そう言えば皆さんには、まだ自己紹介していませんでしたね。
ホシノ=ルリ・・・じゃなくてテンカワ=ルリ、オペレーターです。」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
沈黙が格納庫を支配します。
私は先程からの笑顔の原因を皆に見せました。
それは、私の左手の薬指にはめられた指輪です。
「ル、ルリルリ・・・それ・・・」
「はい、アキトさんから頂いた婚約指輪です。」
「「「「「「「「「「何〜〜〜!」」」」」」」」」」
みんなの声が格納庫に響き渡りました。
どうしてこんな事になったかというと・・・
「さて、アキトさん。」
私はアキトさんに詰め寄ります。
「本当に浮気はしていないんですね。」
「何を言ってるんだ。さっきも言っただろう?
それに・・・」
そう言うとアキトさんはゴソゴソと何かを取り出します。
「これ、ジャンプする前にもらったマフラーのお礼。
ジャンプのおかげでマフラーは無くなったけれど
お礼はしておかなきゃって思ったから。」
そう言ってアキトさんが差し出したのはシルバーの指輪でした。
・・・はっ、最近何だか涙もろくなっています。
何時の間にか私の目から涙が零れ落ちています。
「・・・あ、ありがとうございます。」
「いや、それよりつけて見てよ。
指輪なんて滅多に買わなかったし
サイズも判らなかったから・・・
あ、サイズは後から直せるってお店の人が言ってたから。」
そういうアキトさんを横目に私は迷わず
左手の薬指に指輪をつけました。
「あ、そ、そこは・・・」
アキトさんが慌てています。
「計ったかのように、ぴったりですね。」
それは見事にぴったりとはまりました。
「こういうことでしょう?アキトさん。」
そう言うとアキトさんは困ったような顔をして
「あ、いや、その・・・」
ふふふ・・・慌てています。
でも本当にピッタリだったんで自分でもビックリしちゃいました。
私はアキトさんの傍に寄り添い
「もう、何があっても一緒ですよ。アキトさん。」
私の呟く声にアキトさんは
「ああ、ずっと一緒だ。」
力強く答えてくれました。
「と言う事があったんですよ。」
ブリッジでミナトさんに報告します。
「そう、良かったわね。ルリルリ。」
ミナトさんも嬉しそうです。
そう言えばこの頃はミナトさん、ゴートさんと付き合っていたんですね。
でも、もうじき白鳥さんが現れて・・・
大丈夫です。ミナトさんの幸せは私が守りますから。
「ん?どうしたの?ルリルリ・・・私の顔に何かついてる?」
「いえ、何でも有りません。」
慌ててオペレート業務につく私・・・
と、そこへ
「皆さん、新たな補充人員を紹介します。」
そう言ってプロスさんがブリッジに入ってきました。
「はぁい、今度提督になったムネタケよ。」
「副操舵士として乗込む事となったエリナ=キンジョウ=ウォンです。」
ブリッジに現れたのは全然変っていないキノコと
ネルガル会長秘書のエリナさん。
でもネルガルって凄いところですよね。
会長と会長秘書がそろってナデシコに乗り込んでくるなんて・・・
よっぽどヒマなんですね。
「それからナデシコは宇宙軍と協力する事になりました。」
ユリカさんが皆に宣言しています。
「え〜、それじゃ軍人さんになっちゃうって事〜?」
ミナトさんが皆を代表する形で質問しています。
「いえ、あくまでも協力と言う形で皆さんはこれまで通りわが社の社員と言う事で・・・
まったく、何で会長秘書まで乗り込んでくるんですか・・・」
プロスさん、そういった呟きは本人に聞こえないように言うべきだと思うのですが・・・
ま、とりあえず今は様子見ですか・・・
私は・・・これから起こるイベントに向けて準備をしておかないと・・・
ルリ:・・・
作者:や、やぁ・・・
ルリ:・・・
作者:あ、あの・・・そんな目で見られても・・・
ルリ:まぁ、今回は許しましょう。
作者:ほっ・・・
ルリ:でも!何なんですか!あの女は!
作者:え?プルセルの事?アヤの事?それともラピスの事かな?
ルリ:全員のことです!大体、当初のプロットではラピスだけ登場予定だったのに!
作者:何時の間にか全員出ちゃったからねぇ。
ルリ:そうです!
作者:でもちゃっかり指輪貰ってたじゃないか。
ルリ:えっ・・・そ、それはその・・・
作者:しかも婚約指輪なんて当初のプロットではまったく存在しなかったんだから。
ルリ:式はやっぱりジューンブライドで・・・新婚旅行はやっぱり月かしら
作者:落ち着いた(妄想モードに入った)ところで次回 機動戦艦ナデシコ Re Try 第9話 奇跡の作戦『キスか?』 お楽しみに!
ルリ:子供はやっぱり男の子一人に女の子二人が理想かしら
・・・やはりキャラクター全員が喋るのは無理があるのだろうか・・・今回の犠牲はゴートさん・ホウメイさん・ホウメイガールズでした。
代理人の感想
なるほど・・・・・ルリには
メインオペレーターとしての自覚は
全く無い訳ですね(爆笑)
あるいはアキトに信頼されてないから
彼の信頼を裏切ることは無いとか(核爆)
重要度で言えばリョーコよりルリの方が余程上なんだから・・・ツッコみなさいよ、誰か(笑)。