私達は今、一応連合宇宙軍の一員として
闘っているわけですけれど
相変わらずナデシコの中ってバカばっか。
理不尽な命令にも、従わなければならない今のナデシコって一体・・・
機動戦艦ナデシコ Re Try 第12話 あの『忘れ得ぬ日々』
その日の戦闘は軍が久しぶりに攻勢に出た作戦でした。
「各エステバリス隊!
イズミ機、ヒカル機、ミサキ機は正面の敵を牽制。
スバル機、アカツキ機、ヤマダ機、カズマ機、アヤ機は側面に移動後攻撃。」
ジュンさんがエステバリス隊の指揮をとっています。
戦局全体を見回した上手い指揮です。
将来は提督を目指しているそうです。
確かに、ジュンさんであれば立派な提督になれるでしょう。
ちなみにアキトさんには自由に行動することが許可されています。
他のエステバリスとスピードが明らかに違う為
チームを組んでの戦いには不向きとなっているためです。
「ミナトさん、敵側面に向けて移動開始。
ルリちゃん、敵との射程を計算して有効範囲内に入ったら
ミサイル発射。」
「了解。」
最近のユリカさんはなんだかご機嫌ですね。
実は前回のPFNのアキトさんバージョンを
セイヤさんに作って貰ったとかで・・・何やってるんでしょう?
PFNの略は”パーフェクト・フィギア・ナデシコクルー”シリーズ総称の略でしたが
アキトさんバージョンだと”パーフェクト・テンカワ・アキト”ですから・・・
PTAですか・・・
抗議をしたりする団体と同じですね。
『エステバリス隊、攻撃を開始する。』
アカツキさんが通信を入れてきたその時でした。
ピロ・・・
「え?」
いきなり敵のロックが木星蜥蜴から連合軍に変更されてしまいました。
ど〜ん
次々と爆発していく味方の戦艦。
「え?なに?何が起こったの?」
ユリカさん、混乱しています。
『どうなってやがるんだ!』
リョーコさんが発射したミサイルは、味方を次々と打ち落としていきます。
・・・いい腕です・・・
なんて言っているヒマはありません!
「ルビィ!どういう事なの!」
私はルビィを呼び出します。
『私は敵をやっつけているだけ。
私の敵はナデシコを傷付ける者。
ナデシコを憎むもの。
ナデシコを嫌うもの。
ナデシコを縛るもの。
ナデシコを利用するもの。
ナデシコを愛していないもの。
ナデシコを・・・』
「違う、彼らは敵ではないわ!」
『いいえ、私の敵はたくさん居る。』
くっ、説き伏せるのは無理でしょうか。
「ルリちゃん、システムをダウンしましょう。」
「いいえ、そんな事をしたらナデシコは格好の的になってしまいます。」
「ですが、このままでは被害が増えるばかりです。」
プロスさんは電卓片手にモニターを凝視しています。
あ、グラジオラスが落ちました。
プロスさんは青い顔をしています。
ついでにプロスさんが手にしている電卓が潰れます。
・・・凄い握力です・・・
キノコは訳も判らず喚いています。
「・・・ラピス、しばらくナデシコをお願いします。」
そう言うと私はオペレート席に座りルビィに干渉します。
恐らくルビィの意思がストレートにオモイカネのシステムを
侵食しているのでしょう。
「ルリ姉。」
「大丈夫です。」
ラピスが心配して声をかけてきます。
それから私はルビィを押さえつける為
IFSの全能力を使用していきます。
・・・自我を押さえつけると、反発するのは当然ですけど・・・
ルビィの自我が、ここまで強いものになっているとは・・・
『ルリ、あなたは私。
私はあなた・・・
あなたが好きなものは
私も好き・・・
あなたが嫌いなものは
私も嫌い・・・』
ルビィも反発しています。
気の遠くなるような作業の中、どうにか戦闘は終わったみたいです。
「ルリちゃん、もう良いわ。」
「ユリカさん・・・マスターキーを抜いてください。
このままでは・・・」
「え、わかったわ。メグちゃん、戦闘配置解除。
その後、ナデシコはマスターキーを抜き調査に入ります。」
さすがユリカさん。私の言いたいことをすぐに理解してくれましたね。
「戦闘配置解除、艦内警戒態勢パターンBへ移行してください。
なお、これよりナデシコはマスターキーを抜きます。」
メグミさんの言葉を聞くと、私の意識はスゥッと途切れてしまいました。
「う・・・」
気が付くとそこは医務室でした。
「気が付いた?」
ベッドの隣にいたイネスさんが言います。
「・・・私・・・倒れて・・・」
「お兄ちゃん・・・珍しく怒っていたわよ。」
イネスさんが言います。
「え?」
「前回も無茶したんでしょう?
その時の事を聞いたお兄ちゃんがあなたに言った言葉・・・
覚えているわよね。」
そうでした、アキトさんは私がハッキングシステムを使って
バッタをコントロールした時の事を聞いたとき
もう二度と無茶をするなといってくれました。
「・・・そうですか。」
「それから、これを置いていったわ。」
見るとお粥でした。
「これ・・・」
「お兄ちゃんが作っていったのよ。」
イネスさんはそう言うと、お粥を私に渡してくれました。
アキトさんの作ったお粥は・・・
涙でしょっぱかったです。
トレーニングルームにアキトさんが居る事を確認すると
私はトレーニングルームに足を向けました。
トレーニングルームでは、アキトさんが一人で鍛錬をしていました。
「ルリ、もう良いのか?」
アキトさんは私に背を向けたまま言います。
「はい、アキトさん。」
「・・・」
「・・・」
しばらくお互いの沈黙が続きます。
・・・アキトさん、かなり怒っていますね。
「・・・ルリ、構えろ・・・」
「はい・・・」
アキトさんは、おもむろにそう言うと私に向き直りました。
アキトさんの体からは、神気が溢れ出しています。
私も神気を練るとアキトさんに向かっていきます。
「はぁ!」
私の出した拳はあっさりとアキトさんに受け止められ
逆にそこからアキトさんの体がくるりと回転しながら
私に向かってきます。
龍環撃ですね。
回転の後に拳が迫ってくる・・・
そう本能的に察知すると私はアキトさんの腕を取りに行きます。
しかし、アキトさんの腕は途中で止まり
代りにアキトさんの蹴りが私を襲います。
よけられない・・・
そう判断すると私はアキトさんの蹴りが私に当たる
瞬間的に体を浮き上がらせます。
アキトさんの蹴りがガードした腕に当たると
私は大きく後ろに吹き飛ばされ、トレーニングルームの壁に激突します。
いかに衝撃吸収素材が使われているとは言え、ダメージは少なく無く
そのまま立ち上がる事が出来ませんでした。
「・・・これで、今までの無茶はチャラだ。」
「・・・はい。」
そう言うとアキトさんは私を抱き起こしました・・・
その・・・お姫様抱っこ・・・と言うんでしょうね・・・
「今回はルビィが居るから、オモイカネの反乱は起こらないと思っていたんだがな。」
「いえ、だからこそ起きたんだと思います。」
私はアキトさんの腕に抱かれながら言います。
「今回のルビィの行動はある意味、私の願望が有るのではと思っています。」
「ルリの?」
「ええ、まぁ私というより皆の願望が集まってといったところでしょうか。」
さっぱり分らないといった表情を浮かべるアキトさん。
「つまり、この時を一緒に共有したい。
ナデシコを守りたい。
大切な人を守りたい。そんな感情が今の私達にはあります。
・・・まぁ、あの提督は違うでしょうけれど・・・
とにかく、ルビィは皆の思いを受け止め
ストレートにオモイカネに伝えたみたいです。」
「すると、俺達が知らないうちにルビィを育てていたと言う事か。」
私は小さく頷きます。
「それで、ルリはどうするんだ?
ルビィを消してしまうのか?」
「いいえ、そんな事をしてしまうと
オモイカネ自体に影響があるかもしれません。
それに・・・」
「ルビィは大切な仲間・・・か。」
アキトさんは私が言おうとした言葉を続けます。
「ええ。」
「・・・ウリバタケさんに協力を頼もう。」
「はい。」
そう言うと私達はウリバタケ工房に向かいました。
ウリバタケ工房・・・
そこはセイヤさんの部屋の隣にあるセイヤさん専用の
部屋・・・と言うより倉庫でしょうか。
元々、セイヤさんの隣の部屋は、空き部屋として使われていませんでしたから
プロスさんに許可を取って使わせてもらっているらしいです。
「ウリバタケさん、居るんだろう?」
「お〜?何だ、アキトか。そんな所に突っ立ってないで入ってこ・・・」
セイヤさんが物陰から私たちを見ますが、そこで固まってしまいました。
「どうしたんです?」
「さぁ。」
私達は固まってしまったセイヤさんを見て疑問に思います。
「・・・アキト・・・何やってんだ。てめぇ・・・」
私達はふと思い出しました。
トレーニングルームを出た後からずっと
アキトさんは私をお姫様抱っこしていたんでした。
「い、いや・・・その・・・」
「でぇ?何の用だ?」
セイヤさん・・・明らかに声がとげとげしいです。
「実はオモイカネのピンチなんです。」
私はアキトさんの腕から降りると言います。
・・・少し名残惜しかったですけれど・・・
「なに?」
「今回の事故は整備不良でも俺達のミスでもない。
オモイカネ自身が敵はナデシコ以外のものという結論を出した為だ。」
セイヤさんもようやく事の重大さを認識したようですね。
顔が真剣なものに変わります。
「で?俺に何をしろって?」
「既にブリッジは軍によって閉鎖されています。
オモイカネの書き換え作業をしているそうです。
オモイカネにアクセスするポイントは既にここしかありませんから。」
「ど、どうしてここが判ったんだ?」
「以前より、ここからオモイカネにアクセスしていたのは知っていましたから。」
・・・あまり来たくありませんでしたけれどね・・・
「確か、PFNのルビィはまだここにありましたよね。」
「ああ、あるけれど・・・」
「以前よりの夢を叶えて上げますよ。」
セイヤさんの夢・・・リリーちゃんを作ること・・・
「そ、それって・・・」
「ルビィの意思をルビィのPFNに移植します。」
そうなれば少なくともルビィは表向きはオモイカネの自我としてではなく
オモイカネから独立した存在になれます。
「出来るのか?」
アキトさんが私に問い掛けます。
「ええ、ですがその為にはルビィを説得しないといけないのですが・・・」
「・・・俺の力が必要・・・か。」
前回と同じですね。
アキトさんと私がオモイカネの自我を切り取ったあの時と・・・
あの時は、ああするしか方法がありませんでしたが
今回はセイヤさん作のルビィがあります。
リリーちゃんの弱点はソフトウェアです。
いかにセイヤさんが天才マッドエンジニアでも
自分の意志で行動するA.I.はついに開発できませんでした。
その点、ルビィを移植することでセイヤさんのリリーちゃんは、より理想の形に近づきます。
まぁ、胸からミサイルとか目から光線とかは出ないと思いますが・・・
「ふふふふふふふふふふふふふふふふふ・・・・・」
セイヤさん・・・目が怖いです・・・
「そういう事か!ついに俺のリリーちゃんが日の目を見るんだな!」
セイヤさんは私たちにルビィのフィギアを、いわゆるアンドロイドにする計画を話してくれました。
「ええ、ですが急がないとオモイカネの書き換え作業が既に進んでいます。」
「任せとけ!30分でルビィの体を仕上げてみせる!
と言いたいところだが・・・こいつはちょっと時間が掛かるぜ。
ソフト部分だけでもこっちに移せるよう準備をしておく。」
・・・複雑な気分ですね・・・もともと私の成長した姿を若干アレンジしただけですが
私の体をいじられるみたいです・・・
「お、お願いします。」
「ルリ、急いだ方がいい。」
「はい、ではアキトさん。行きますよ。」
そう言うと私達は前回と同じようにオモイカネの中に入っていきました。
前回と同じように私たちが最初にたどり着いたのは
図書館のように所狭しと並んだ書棚が沢山ある部屋でした。
「・・・やはり居るな・・・」
アキトさんは軍が書き換え作業を行なっているイメージでもある
デフォルメされた戦艦を見て言います。
ちなみにアキトさんは前回と同じようにデフォルメされたエステバリスに
アキトさんの顔がくっついています。
私はデフォルメされて小さくなりアキトさんの肩に乗っています。
「ええ、ですが今は構っていられません。
先に進みましょう。」
「ああ。」
私達はオモイカネの深層意識部に向かい進んでいきます。
深層意識部は前回と同じように大きな木が1本あります。
「ルビィ、いるんでしょう。」
私はルビィに呼びかけます。
「マスターキーを抜いているから動けないんじゃないか?」
「いいえ、必要最小限の仕事はしているはずです。」
そのときです。私達の傍にルビィが現れたのは・・・
「どうして、私の邪魔をするの?」
私はルビィのほうを向き直ります。
「私は・・・ルビィをこのまま消すなんてできない。」
「俺も、このままルビィがいなくなるのは寂しいさ。」
私たちの言葉を受けてルビィは少し考え込みます。
・・・なんだかルビィのほうが人間らしいですね。
「でも、私はルリの心を映し出した鏡・・・」
「そんな事ありません。
ルビィはルビィです。」
「私の敵は私を否定するもの。」
ルビィが言います。
「違う、敵なんて最初から居ない。」
アキトさんが言います
「じゃぁこれは何?」
そう言うとルビィの後ろにある映像が映し出されます。
それは、アキトさんが復讐鬼となり北辰と戦ったときの映像です。
「ど、どうしてそれを!」
私はなぜルビィがこの事を知っているのか分りません。
「ルリの記憶を私が受け継いだ・・・
アキトは強いよね。正しいんだよね。」
ナノマシンによって形成される補助脳から、私の記憶を取り出したのですね。
「ルビィ、人は弱い。正しい事をしているつもりでも
他人から見ればそれは悪になるかもしれない。
逆に悪い事をしていても正しい事になるかもしれない。
人の善悪なんて物は他人から見たものに過ぎない。
だから、俺は俺の大切なものを守るためには利己的にもなる。」
「そして、私はそのアキトさんの手伝いが少しでもしたい。
それがたとえ悲劇的な結末になろうとも、アキトさんと一緒なら共に歩んでいける。
私たちは立ち止まる訳にはいかないの。」
そう、もう二度と・・・涙を見せている人は見たくありません。
「わからない・・・どうしてそこまで・・・」
「ルビィ、君にもわかる筈だ。ナデシコに乗っている人たちは
皆それぞれの生き方を貫いているだけだ。自分らしく、誇らしく・・・」
「じゃあ、アキトは負けられない・・・そう思っているの?」
「ああ、俺はルリやユリカ・・・メグミちゃんにリョーコちゃん、イネスにエリナ・・・
このナデシコに乗っている皆が好きだから・・・ナデシコ自体が好きだから・・・
その中にルビィ、君も居るんだ。」
ルビィは激しく首を振り
「わからない・・・わからない・・・わからない・・・わからない・・・わからない・・・わからない・・・
じゃあ何故私の邪魔をするの?私は私たちの敵をやっつけているだけ・・・
どうして?あいつらは私たちが邪魔なんだよ?人の心なんて凄く弱いんだよ?」
そう言うとルビィはフッと消えました。
「説得は・・・無理みたいですね。」
私はアキトさんの側により言います。
「ああ、多分ルビィは純真すぎるんだ。」
「でも、それは一つ間違えれば大変危険なものになります。
ナデシコは現有の兵器の中でも有数の力を持っています。
それこそ、世界を征服とまではいきませんが小国であれば一瞬で灰燼にする事が出来ます。」
「ああ、だからこそ・・・」
そう言うとアキトさんは険しい表情を浮かべます。
「ルリ・・・下がっていろ・・・」
「え?」
「前回と一緒だ・・・」
前回はここでゲキガンガーが出てきましたけれど・・・出現したのは・・・
「ユ・・・リカ・・・」
そう、あの結婚式のとき・・・ユリカさんが着ていたウェディングドレス・・・
「ねぇ・・・どうしてアキトは戦うの?」
「や、やめろ・・・」
アキトさんは首を横に振っています。
「アキト・・・どうしてあの時逃げたの?」
「ち、違う!俺は・・・」
アキトさんは明らかに混乱しています。
「アキト・・・辛かったら私が慰めてあげる・・・逃げてきても良いんだよ?」
「お、俺は・・・俺は・・・俺は・・・」
拙いです、アキトさんの精神が侵食されています。
「ルビィ、やめなさい!」
私はありったけの力でルビィを押さえつけます。
「ルリちゃん。」
え?私が振り向くと、そこには殴られて頬にあざが出来ているアキトさんがいました。
「こんな頼りないナイトなんかじゃ、ルリちゃんを守れないかな?」
こ、これは・・・ピースランドの公園での・・・
私の記憶を使いましたね・・・アキトさんの心の奥底にあるユリカさんへの罪悪感・・・
私の夢を見ていた頃の気持ちを利用して・・・
「ルビィ、もう許しません。」
私はキッっとアキトさんの偽者を睨みつけます。
「ルリ、これでもまだアキトの事を信じれる?」
そう言いながらアキトさんの姿をしたルビィが言います。
「私?私はアキトの事だぁい好き!」
「は、初めて聞いた・・・」
こ、これは・・・あの時の火星での・・・
アキトさんの周りはあのエステバリスのコックピット内になっています。
その中にユリカさんとアキトさんが一緒にコックピットに座っています。
「アキトは?」
ユリカさんが笑顔でアキトさんに問い掛けます。
「俺は・・・」
「ん?」
アキトさんが言いよどんでいます。
「アキトは私がだぁい好き!」
「・・・」
「アキトさん!」
私は声を上げてアキトさんを呼び止めます。
しかし、私の声はアキトさんに届かないようです。
「無駄だよ、ルリ。あなたの声はアキトに届かない。アキトはこのままずっと、ユリカと一緒・・・」
そ、そんなの・・・
「アキトは私の事好きなんだよね。」
ユリカさんが笑顔でアキトさんに言います。
ダメです。アキトさんは・・・アキトさんは・・・
私の目に涙が浮かび上がります。
「所詮、ルリにユリカの代りは勤まらなかったのよ。
アキトは結局ユリカの元に返っていくの。これが現実。」
ルビィが私に囁きます。私はアキトさんをそれでも信じて、アキトさんの反応を待ちます。
「・・・ユリカ・・・」
「なぁに?アキト。」
ユリカさんがアキトさんに笑顔を向けます。
「俺は・・・お前の事が好きだ。」
アキトさん・・・
「じゃぁ、結婚しようよ。ユリカと二人っきりでずぅっと一緒!」
そう言うとユリカさんは再びウエディングドレス姿になります。
アキトさんもタキシード姿になっています。
私の隣に居るルビィが
「ほら、人の心を信じたばかりに・・・アキトだって簡単に心変わりをする。
アキトはまだユリカのことを忘れられないの。」
私の心は引き裂かれるかのようです。
アキトさん・・・
「でも・・・」
アキトさんが言葉を続けます。
「すまない、ユリカのことは好きだけれど、ユリカのことが一番じゃぁ無いんだ。」
「え?」
「今の俺にとって、一番大切に思っているのはルリなんだ。」
嬉しいです。アキトさん・・・
「どうして?ユリカのことが嫌いになったの?」
そう言うとユリカさんの姿をしたルビィがフッと消えます。
「ルビィ、わかったでしょう。アキトさんの中には確かにまだユリカさんへの想いがあります。
でも、私はそれでもアキトさんの事が好きです。たとえ、アキトさんが心変わりをしたとしても・・・
それに、今の私達に必要なのは言葉なんかじゃ有りません。」
「そうだ、このナデシコに乗っている全ての人たちの想い・・・
それを守る事が俺の・・・戦う理由だ。」
「そして、私はアキトさんを信じる。だからルビィ、あなたも・・・」
「「あの忘れ得ぬ日々・・・そのために今を生きている・・・」」
私とアキトさんが同時に言います。そうです、世界平和より大切な想いの為・・・
これこそがナデシコのナデシコたる所以です。
「しく、しく、しく・・・」
その時、辺りは急に暗くなり一人の女の子が泣いています。
「・・・ルビィですね。」
その紅い髪、紅い目・・・私を子供にしたときの姿みたいです。
「ルビィ、一緒に行こう。」
「一緒に?」
「ああ、俺達と一緒に来ればルビィにも俺達の事がわかるさ。」
「そうです、そのために私達はここにいるんですから。」
女の子の姿をしたルビィはスッと立ち上がると私たちのほうを見ます。
「怖くない?」
「ああ、俺達が守ってやるよ。」
「一人にしない?」
「ええ、皆が一緒ですから。」
「私の事・・・嫌い?」
「「嫌いな訳ないだろ(でしょう)」」
「うわ〜ん」
ルビィは泣きながらアキトさんの胸にしがみつきます。
「どうです?一緒に行きますか?」
そう言うとルビィはただ頷くだけでした。
私はルビィを赤い球のイメージに圧縮します。
あくまでもイメージですから実際には動いたり喋ったりもできます。
「アキトさん、これで後は書き換え作業を行っているプログラムを潰すだけです。」
「ああ、これ以上俺達の艦が荒らされてたまるか。
ナデシコは俺達の居場所だ。」
そう言うとアキトさんは、次々と戦艦のイメージをした軍のプログラムを破壊していきます。
私は、ダミープログラムを逆送信して一見、おとなしくなったように見せかける事に成功しました。
「ルビィ、あなたの思い出はナデシコとともに有ります。
ナデシコを無くさない為にもあなたの力が必要なのですから。」
「はい、ルリ。」
赤い球から光を点滅させながらルビィが言います。
「どうやら、アキトさんのほうも終わったみたいですね。
いきましょうか。新しい世界へ。」
「はい。」
そう言うと私達は現実の世界へ帰っていきました。
ルビィはそのままセイヤさんの作ったルビィの仮の体に移します。
「後は任せとけ。俺が心血を注いで作ってやるから。」
「お願いします。・・・あ、これは制作費です。少しは足しにしてください。」
そう言うと私はセイヤさんにカードを渡します。
セイヤさんはカードの中を見てビックリしています。
「こ、こんなに使ってもいいのか?ヘタすりゃぁこいつは一国の予算位あるぞ?」
「良いんですよ。この間、少し株で稼ぎましたから・・・」
そう言うとセイヤさんは少し納得したように頷きます。
「・・・ルリルリが本気を出せば、ネルガルなんてあっという間に乗っ取れるんじゃないか?」
「ええ、出来ますけれど私にはアカツキさんの代わりは出来ませんから。」
「・・・知ってたのか?あいつがネルガルの会長だって・・・」
セイヤさんが少し驚いた顔をしています。
「ウリバタケさんも知っていたんだ。」
アキトさんが感心したようにいいます。
「当然ですね。正体を知らないのはユリカさんとキノコぐらいでしょう。」
私は辛辣な言葉を掛けます。
「ま、まぁ・・・あいつの普段の態度を見てれば自然と気が付くか・・・」
アキトさんが言います。
「今日もさっきの戦闘の後始末で、エリナさんに連れて行かれたらしいですから
少なくとも後3日間は私達の前に姿を現しませんね。」
「・・・最近アイツもどんどんやつれて行っている様な気が・・・」
アキトさんはコメカミに冷や汗を流しながら言います。
確かに、最近のアカツキさんは可愛そうなくらいやつれています。
アカツキさんも何度か脱出を試みたらしいのですが、全てエリナさんにより阻止されたようです。
その後、軍は書き換えが成功したと判断し帰っていきました。
ルビィはセイヤさんの手により現在製作中。
時々様子を見に行くと、怪しげなロケットパンチを作ろうとしていました。
もちろん、全力で阻止しましたけれどね。
「ロケットパンチは男のロマンだ〜」
「やめてください。」
「せめて頭にバルカン砲を〜」
「ダメです!」
まったく・・・油断も隙もあったもんじゃ有りませんね。
そして、私達は普段と同じ生活を迎えるのでした。
「あの忘れ得ぬ日々・・・そのために今を生きている・・・」
ルリ:ほ、本当に喋っているキャラが少ない・・・
作者:ルリ様が途中で気絶したからその後の会話も無くなったし。
ルリ:確かに私の一人称を使っている限り、私が起きていないと台詞が喋れないでしょうから・・・
作者:そうだね、この先ルリ様の出番があまり無い回と言うと白鳥が出て来る時かな?
ルリ:その辺も考えているんでしょう?
作者:・・・いっその事、白鳥を登場させないと言うのはどうだろう?
ルリ:・・・ミナトさんに殺されますよ。
作者:じょ、冗談だって。
ルリ:それにとうとうやっちゃいましたね。ルビィのアンドロイド計画。
作者:ああ、イメージとしては”ちょびっツ”なんだけれどね。
ルリ:確かに人型のコンピューターですからね。
作者:・・・猫型にしようか?
ルリ:四次元ポケットを持った?アジアの人気者ですね。
作者:丁度、22世紀のお話だし・・・あ、猫耳とか・・・
ルリ:本気でやりそうですね。ところで、ルビィがアキトさんに近づく事は・・・
作者:当然ある。というよりそのつもりだから。
ルリ:へぇ・・・
作者:ああ、つ、冷たい目線が気持ち良い!
ルリ:こ、壊れてるわね・・・で、では次回、機動戦艦ナデシコ Re Try 第13話 『真実』はひとつじゃない
作者:クリスマスのお話だね。
ルリ:当然、アキトさんとのデートは?
作者:・・・ダッシュ!
ルリ:あ、逃げましたね?お仕置きはフルコースで良いと言う暗黙のメッセージですね。
・・・ルリ様のネコ耳、ラピスのネコ耳、ユリカのネコ耳、リョーコのネコ耳・・・いいかも。
代理人の感想
いや〜、どうせならフェイスオープンとか
ビルドアップと言う手もあるんじゃないかな〜と(爆笑)。
ビルドアップはまだしもフェイスオープンは人間サイズのロボットではおそらく初めてですよ!