「テンカワ君達は無事にたどり着いただろうねぇ。」
「はい、そろそろ分離した後だと思います。」
「それにしても・・・」
アカツキは少し顔が青くなっている。
「ぷっ・・・」
エリナが思わず吹き出す。
「エリナ君、君は何か僕に恨みでも有るのかい?」
アカツキの専用機にさらわれた子供達を乗せているが
当初おびえていた子供達も段々環境になじんでいき
今ではアカツキをダシにして遊んでいる・・・
「お、お似合いですよ・・・会長・・・」
エリナは肩を震わせながら後ろを向く。
―テンカワ君との事を散々からかったことに対する報復かい?
確かに社内報に載せたりしたけれどそれくらい・・・
「ねぇ、次はお馬さんをやってぇ。」
「はいはい。」
子供には甘いアカツキであった。
機動戦艦ナデシコ Re Try 外伝 第4話 『修羅』たちの宴
「カズマ、起きろ。」
アキトは気絶しているカズマを揺するがカズマは目を覚まそうとしない。
『あ、それじゃぁダメですよ。』
ウィンドウ通信に現れた少年がアキトを制する。
少年は栗色の髪の毛につぶらな瞳。
ニコリと笑えばショタの気が無い人でも
クラリとくるであろう程の美少年であった。
「そうか?」
『思いっきり殴ってみてください。』
そう言われ半信半疑でカズマを殴る。
「あだっ!なにすんねん!」
「本当だ・・・」
『ねっ、言った通りだったでしょう。』
「なんや、ユキヲかいな。」
『なんだは無いでしょう。アヤさん達のいる場所が判明しました。』
がばっと身を起こすカズマ。
「で、どこや!」
『つい30分前にシンジュクから大井埠頭をめがけて
爆走する車を見た人がいたそうです。』
「・・・アヤ・・・やな・・・」
『はい、目撃者の証言では若い女性が
鬼気迫る運転で爆走していったと・・・』
カズマとユキヲが青い顔をして話しているのを聞いたアキトは
「そんなに凄いのか?」
「凄いなんちゅうもんやない・・・
まぁ、乗ってみればわかる・・・」
遠い目で語るカズマであった。
「くそっ、事務所の連中とはまだ連絡が取れないのか!」
「はい、若頭。」
ラピス誘拐とプルセル暗殺の実行部隊でもある龍政会の
若頭はタバコに火をつけようとライターの火をつけようとするが
上手く付かずイライラは益々深まっていった。
「最後の連絡はゲキガンガーが・・・でした。」
「何だ、それは!ふざけているのか!」
火をつけようとしていたタバコを握りつぶし、はき捨てる。
「それにもう時間が過ぎてるぞ!」
そばにいた男はとばっちりを避けるため既にいない。
倉庫の中には既に若頭と呼ばれた男と数人の部下がいるだけだ。
「おい、ちょっと外の様子を見て来い!」
そばにいた男にそう命じたその時、先程若頭と話していた男が血相を変えて倉庫に転がり込んできた。
「わ、若頭!ここは完全に包囲されています!」
「何だと!一体どう言う事だ!」
男の言う言葉が理解できない若頭は男の胸倉をつかむ。
「り、烈一族の手のものがこの倉庫の周りを囲んでいるみたいです!」
「な、何ぃ!」
「ま、間違い有りません。既に他のものは・・・」
「ば、バカな・・・」
その時倉庫の大扉が開かれる。
「その人の言っている事は本当アルよ。」
チャイナドレスを着た女性が言う。
「ふ、ふざけてんのか!」
若頭が怒鳴る。
それもそのはずで、チャイナドレスを着た女性・・・メイファンは
顔にセルロイドのお面をつけていた。
それは、水をかぶると猫になってしまう
中華娘であったからだ。
「に、似合いすぎてる・・・」
血相を変えて転がり込んできた男が呟くが
その頭を小突き若頭が言う。
「た、たった一人で何ができる!」
「一人では無いアルよ。」
「そうだ。」
ゲキガンガーのお面をつけた紺色の道着を着た老人が言う。
「ゲキガンガーだと!」
「私もいますわ。」
ナチュラルライチのお面をつけた巫女装束の女性が言う。
「てめぇら・・・」
「拙者も居るでござるよ。」
流浪人のお面をつけ、日本刀を手に持っている女性が言う。
「そうだよ。」
若頭は目を見開く。そこには自分達が確かに誘拐したはずのラピスが居たからだ。
しかし、ラピスはカードを集めてまわる魔法を使う少女
カードキャプターのお面をつけていた。
「て、てめぇら・・・まさか、事務所を襲ったのは・・・」
若頭がハッと気付く。
「その通りよ。」
最後に現れたのはプルセルであったが、やはり顔にお面をつけている。
そのお面は・・・女子寮で東大を目指している女性のお面であった。
「て、てめぇら・・・
おい!こいつらを生かして返すな!」
若頭が部下達に命令する。
「あら、あなた達だけで私たちに勝てると思っているのかしら?」
ナチュラルライチが若頭に言う。
「うるせぇ!その女を殺っちまえばこっちの勝ちだ!」
若頭の言葉で一斉に動き出す男達・・・
「愚かな・・・」
「降伏しておれば骨を折る程度で済んでいたのでござるが・・・」
ゲキガンガーと流浪人が呟きながら男達の相手をする。
飛び交う銃弾の中、神速の動きで男達を翻弄し
次々と斬られていく・・・
ナチュラルライチも逃げ出そうとする男達を次々に屠って行き
中華娘も蟷螂拳と思われる拳法を使っている。
東大受験生もカードキャプターを守っている。
若頭は自分がとんでもないバケモノと戦っている事に気が付き戦慄した。
このままでは、こんなふざけたお面をかぶった連中に全滅してしまう・・・
そう思った若頭は走り出していた。
ネルガルの社長より供与されたエステバリスを起動するために・・・
「どうやら、助けに入る必要は無いかもしれないな・・・」
エステバリスに搭載されている超高感度カメラの映像を見ながらアキトはそう呟く。
「あほ、助けなあかんのは奴らの方や。」
げんなりしながらカズマが呟く。
「・・・確かに・・・」
映像ではアヤが男の腕を切断したり
シュウサクが体中を切刻んでいる。
「・・・なっ、あいつらが居れば東京壊滅なんてあっという間や・・・」
「人間凶器・・・いや、人間兵器だな。」
その時、突然エステバリスのコックピット内に警告アラームがなる。
「な、なんや?」
「・・・木星蜥蜴だ・・・」
「何やて!」
「まずい!ラピス達の居るところに向かっている!行くぞ!」
そう言うとアキト達はエステバリスを発進させた。
―何やラピスの事になると必死になりよる・・・
ひょっとしてアキトの奴・・・ロリ?
「むう、まだ足りんな・・・」
ゲキガンガーが呟く。
「お師匠様が一番斬っていましたよ。」
流浪人が答える。
「次はアヤさんですけどね・・・」
中華娘が言う。
その時、耳を劈くような轟音が倉庫の中に響き渡る。
『てめぇら、もう許さん!』
エステバリスから聞こえてきたのは先程逃げ出していた若頭であった。
「アヤ、お主がやるか?」
「いえ、ここはお師匠様に花を譲ります。」
エステバリスがラビットライフルをアヤ達に向けている。
『な、何言ってるんだ!これが見えねぇのか!』
ジャキッとライフルを構えなおす。
シュウサクが一歩、前に出て手にしていた仕込杖から
白銀に輝く刃を抜く。
プルセル達はハッと息を呑む。
シュウサクの姿は、まるで巨大な怪物に立ち向かう勇者を思い起こさせる。
しかし顔に付けたお面はゲキガンガーで何とも言えない違和感を
かもし出していた。
『ふ、ふざけんな!刀なんかで、こいつが壊せるものか!』
「ふむ・・・確かに、この刀でそいつを壊すのは骨が折れるな。
斬鉄剣でもあれば別だろうがな。」
あくまでも余裕の表情を浮かべるシュウサク・・・
『なら、死ねぇ!』
エステバリスのライフルが火を吹く瞬間・・・
「・・・『残月』・・・」
シュウサクが何時の間にか刀を振りぬいており
額にはびっしりと汗をかいている。
「お見事です。師匠・・・」
「うむ。」
プルセルとラピスはぽかんとしている。
少しして、エステバリスが意思の無い人形のように崩れ落ちる。
「何をしたの?」
ラピスがアヤに尋ねる。
「お師匠様。」
アヤは説明をシュウサクに任せる。
「・・・いかに鋼の鎧を纏おうとも中にいる人間は生身だ。
たとえ刃が届かずとも気魂の刃であれば相手の精神を断ち切ることが可能だ。」
感心する一同。
「凄い・・・」
プルセルは自分が取った行動は誤りであったと認識せざるを得なかった。
アヤにはたくさんの親友がいる。
師匠もいる。
兄もいる。
居場所がある・・・
プルセルはアヤをとても、まぶしく感じていた。
そんなアヤに対する劣等感からかふと目をそらすと
倉庫の奥に怪しく光る赤い光点が見えた。
―あれは、木星蜥蜴の!
しかも、ラピスの方を向いている。
そう思ったときプルセルは何故だかわからないが走り出していた。
そして、倉庫の中で爆発が起こった。
「・・・う・・・」
ラピスが最初に目を覚ましたとき
自分を覆い隠すようにプルセルが、かぶさっていた。
「・・・あ・・・だ、大丈夫だった・・・」
消え入りそうな声でラピスに問い掛けるプルセル・・・
ラピスは何が起こったか必死に思い出そうとした。
―あの時・・・この人が走りよってきて・・・
それから目の前が真っ白になって・・・
ハッとなりラピスは周りを見る。
アカネとメイファンは気絶している。
顔に生気があるので生きているようだ。
アヤとシュウサクは・・・
腕から血を流している・・・
プルセルは・・・
改めてプルセルを見るラピス。
「!怪我してる・・・」
「大丈夫・・・だった・・・見たい・・ね。」
背中にガラスの破片が突き刺さり
頭から血を流している。
「私を・・・庇って・・・」
「良い・・・のよ。・・・これは・・・約・・・束だから。」
少し荒い息を吐きながらも、ニコリと笑うプルセル。
そんな痛々しい姿にラピスは目から涙が溢れ出ていた。
「でも・・・血が・・・」
「良い・・・のよ・・・あなたを・・・守る・・・ためなら・・・」
そう言うとガクリと倒れこむ。
「アヤ!」
ラピスはアヤを呼ぶ。
アヤとシュウサクはバッタからミサイルが発射されたときに
持っていた棒手裏剣でミサイルを迎撃したが
さすがに爆風までは避けられなかったようだ。
爆音で耳が一時的に難聴になったみたいで
少しくぐくもった声だったがラピスの声ははっきりと
アヤの耳に聞こえた。
「プルセル!」
アヤはラピスを護るためにプルセルが盾になっていたのを見ていた。
いかに武術を会得しているとは言え相手は無人兵器
普通なら相手からは気が出ているのだが無人兵器では気の出ようが無い。
アヤはミサイルの発射音でようやく敵が近くに潜んでいる事を察したのだ。
―私もまだまだ未熟と言うわけね。
彼女の祖先はスパイ衛星の気配すら感じ取ったと言うけれど・・・
しかし今はプルセルの事が心配だ。
プルセルに慌ててかけより、ラピスは無事である事は確認できた。
しかし、プルセルのほうはかなり酷いダメージを受けているようだ。
「しっかりして!」
アヤはプルセルの心臓の音がまだ聞こえている事を確認すると
応急手当をしていく。
その間にもバッタが次々と現れていく。
その時、ようやく気が付いたメイファンとアカネは絶体絶命のピンチを迎えている事を悟った。
「斬鉄剣さえあれば無人兵器など訳無いのだがな。」
「私の薙刀でも破壊するのは 無理ですわ。」
「部下達が皆まだ意識が戻っていないのよね。」
シュウサク・アカネ・メイファンがそれぞれ口にする。
自分達の力で無人兵器を素手で相手にできない事を
悟っていた。
絶望的な闘いに身を置く事になる・・・
そんな事を誰もが考えていた。
その時・・・
「ワイの拳が真っ赤に燃える!
おんどれをしばけと轟き叫ぶ!
ひぃっさつぅ!
炎の虎ぁ!」
聞きなれた声がしたと思うと無人兵器の一体が吹き飛んだ。
「こ、これは・・・」
メイファンが声の聞こえてきた方向を向く。
そこには、エステバリスの手に乗った良く知っている男がいた。
やはり、その顔にはセルロイドのお面がつけられており、
ファイト用に作られたモビルスーツのお面を付けていた。
『ここは危険だ。早く逃げろ!』
エステバリスからはアキトの声が聞こえてくる。
「アキト!プルセルが怪我をしてるの!」
アヤはプルセルを抱きながら叫ぶ。
『カズマ!時間を稼いでくれ。
俺は皆の脱出を手助けする。』
「了解や!久々に暴れられるで!」
そう言いながらカズマは本日2発目となる炎の虎を
バッタが集中していたところに叩き込む。
アキトはプルセル、ラピス、アカネ、メイファンとその部下達をエステバリスの手に乗せて飛び立っていった。
「アヤ、ではやるとするかのぅ」
「はい、お師匠様。」
二人は不敵な笑みを浮かべるとバッタの中に切り込んでいった。
「いやぁ、今回は死ぬかと思ったで。」
喫茶店でオレンジジュースを飲みながら目の前にいる
厚顔の美少年・・・カミヤ=ユキヲに言う。
「でも、よく無事でしたね。
今までも何体か木星蜥蜴を叩き壊してきましたが
群で行動していた木星蜥蜴をわずか3人で完全破壊するなんて・・・」
学生服を着てフルーツパフェを食べながらユキヲは言う。
学生服には四葉中と書いてあるバッジがつけられていた。
「途中からアキトがエステバリスで援護してくれたからな。」
アキトがプルセルたちを安全な場所に避難させてからすぐに
カズマ達を救援に向かったのだ。御陰でカズマ達は無傷とは行かないまでも
無事に生還する事が出来たのだ。
「ところで・・・アヤさんを探し出した報酬はこれでお終いですか?」
「なんや、脅すっちゅうんか?」
「いえいえ、そんなつもりはありませんよ。
ただ最近うちの学校の女子生徒たちが痴漢にあっているらしいのですよ。」
カズマは乗せられている事に気が付くと
「あかん、ただ働きはするなってアヤの奴に言われ取るんや。」
「でも、これは報酬の内ですよね。」
ニッコリと笑い言うユキヲ。
「大変やな、生徒会長っちゅうんも。」
「いえ、僕には心強い協力者がいてくれる御陰で、随分楽をさせていただいていますよ。」
しれっと言うユキヲにカズマはがくりと肩を落とし
「その協力者にドブさらいや痴漢退治をさせとってよう言うわ。」
と呟いた。
コンコン
病室のドアを叩く音がしたのでプルセルは
「どうぞ。」
と、訪問者を招きいれた。
病室に入ってきたのはアヤとその手に繋がれたラピスだった。
「良くなってきたみたいね。」
「ええ、アヤさんの応急処置が適切だったからです。」
ラピスはトコトコとプルセルの傍に歩いて行き
「これ・・・」
とプルセルに千羽鶴を渡す。
恐らくラピス一人で作ったのであろう。
「ありがとう。」
プルセルはラピスに礼を言う。
この一週間、ラピスは毎日のようにプルセルのところを訪れていた。
あれからスズキ社長の行方を探したのだが結局、アカツキが日本を離れている間に
何処へとも無く姿を消していた。
社長派の面々にも行き先を告げていなかったらしい。
「ところで、アキトさんは?」
「どうもアカツキ君と何か企んでいるみたいなのよね。
最近ずっとアカツキ君の所に行っているみたいだから。」
少し不満気に言うアヤ。
時々、アキトに稽古相手になってもらっているのだが
つい、稽古が実戦になってしまうことが、しばしばあり
それこそがアヤの望んでいる事なのに途中で止めてしまうアキトであった。
それが最近はアカツキの用事で出かける事が多く、
泊りがけの事が多くなっていた。
「そうですか。」
少しガッカリした表情を浮かべたプルセルに
少し意地の悪い笑顔を浮かべたアヤは
「アキトが来てくれないから不満でしょう?」
「いえ、そんな事は・・・」
慌てて取り繕うプルセルを見てアヤは一枚の紙を渡した。
「これは今回の依頼に対する請求書よ。」
それを見てプルセルは目を見開く。
「な、何ですか・・・この倉庫一式って言うのは・・・」
「もちろん、大井埠頭の倉庫よ。」
「この助っ人代一式って言うのは・・・」
「もちろん、お師匠様やアカネにメイファン達に支払うお金よ。」
そこに書かれていた金額はプルセルに支払える金額では
桁が4桁違っていた。
「こ、こんなに払えません。ただでさえ失業中の身ですよ。
ここの入院費だって払わないといけないのに・・・」
少し涙目で訴えるプルセルに
「しょうがないわね。払えないものは体で払ってもらうわ。」
ビクッと体を引き寄せ
「ま、まさか・・・アヤさんってズーレだったんですか!」
プルセルの頭の中では妄想モードに突入していた。
―アヤさん・・・私・・・初めてなんです・・・
優しくしてください・・・
あっこんな・・・
あっ、そこは・・・
プルセルの頭の中では自分と睦み会っているアヤの姿があった。
ガクッと倒れこむアヤ。
「ち、違うわよ!」
慌てて否定するアヤ。
「ズーレって何?」
ラピスは不思議な顔をしている。
「じゃあ、いかがわしい所に放り込むなんて・・・」
顔が青ざめていくプルセル。プルセルの頭の中では
またもや妄想モード爆裂中であった。
―いらっしゃい、アキトさん。
今日はお仕事でしたの?
あ、そんなところを触られては・・・
でもそんな・・・
あっ・・・
顔が真っ赤になったり真っ青になったりしているのを見て
「いかがわしい所?」
またもやラピスが不思議な顔をする。
アヤは少し脅かしすぎたかなと反省しながら言う。
「プルセル。あなたには家で住み込みで働いてもらうわ。」
パッと顔を上げるプルセル。
「え・・・良いんですか?」
「ええ、それにアカツキ君から正式にあなたを派遣するって連絡があったわ。」
「もしかして・・・」
プルセルの頭の中が急激に回転し始める。
「辞表は取り消しだって。」
ラピスの一言でプルセルはすべてを理解した。
アカツキ会長は自分の辞表を認めず
社長秘書の任を解きネルガルからの派遣社員として
アヤ達と一緒にいられるようにしてくれた・・・
むろん、平地に乱を起こす男であるアカツキとしては
そのほうが面白そうだったからそうしたまでなのだが・・・
プルセルは嬉しくて泣き出してしまった。
「あなたにはどんどん働いてもらうからね。」
アヤが言うとプルセルはただ頷くしかなかった。
ちなみにプルセルが背負っていた借金は
ラピスからの歓迎プレゼントと言う事で
すべてアカツキの借金になっていたことは余談である。
そのためにアカツキはエリナから散々責め立てられたのだった。
「テンカワ君、どうだい?」
「まずまず、と言ったところか。」
ネルガルの実験場で新型のエステバリス・・・サレナタイプから降りてきたアキトが言う。
アカツキはアキトにサレナタイプのテストパイロットをするように要請していた。
アキトとしても、かつての自分の愛機を蘇らせる事が出来るとあって快く了承した。
「では、意見を聞こうか。」
アカツキはネルガル会長としてアキトに尋ねる。
アカツキは二つの顔を持っている。
ネルガル会長としての顔・・・冷酷で企業人としてネルガルの利益を追求する。
会社のためには自分を殺してでも会社を優先させ非情になる。
もう一つの顔はアカツキ=ナガレ個人の顔だ。
ネルガルにいるときには他人に滅多に見せない顔だ。
エリナですら会社にいるときにはアカツキ本来の顔はみせない。
だが、この二つの顔は誰でも持っているものだ。
もしかしたら人間は様々な顔を使っているのだろう。
企業人として、家庭人として、個人として・・・
そういった微妙な関係を自分の中に作り上げる事によって社会が成り立っている。
しかし、アカツキの知合いは皆自分に正直に生きている。
カズマなどは完全に裏が無い。正直に生きている。
ありのままの自分を受け入れている。ある意味、辛い生き方であろう。
自分が受け入れきれない事態が起きたとき、カズマはどう行動するのであろう・・・
アヤは純粋に己の中の正義を信じて行動している。
もしアカツキがアヤの正義に背くような行動を取れば即、斬られるであろう。
そして、アヤ自身は自分の正義を貫くために厳格に生きている。
あの兄妹はなんと辛い生き方をしているのだろう・・・
そして・・・目の前にいるテンカワ=アキトという青年だ。
とてつもなく深い闇を背負いながら
それでも自分の感情のままに生きている。
不思議な魅力が彼には備えられている。
カリスマとでも言うべきであろう。
皆がアキトを中心に動いている。
「もう少し腕の反応速度を上げたほうが良い。」
アカツキが考え事をしているとアキトが先程のアカツキの質問に答える。
「まだ他にもあるかい?」
アキトはタオルで軽く汗を拭きながら言う。
「追加装甲をつけたらどうだ?」
「しかし、これ以上追加装甲をつければ重たくなりすぎる。」
「追加装甲をフィールドジェネレーターにすれば良い。」
アキトはアカツキに自分の案を提示する。
それは、まさにアキトが復讐鬼となって自らが駆った
黒いエステバリス・・・ブラックサレナの事であった。
「こ、これではパイロットに負担が掛かるんじゃあ・・・」
「心配ない。俺なら乗れる。」
さらりと言うアキト。
「それでは製品にならないよ。」
苦笑するアカツキに
「だがデータは取れるだろう?」
とアキトは言う。
ブラックサレナを使ってデータを取り廉価版としての
エステバリスを造る・・・ネルガルとしても貴重なテストパイロットだ・・・
「それじゃあ早速、技術部に連絡しよう。」
アカツキは技術部と連絡を取り先程のアキトが提示した案を
検討するように連絡する。
「さて、今日はこれで終わりにしようか。」
「ああ、帰って夕食の支度をしないといけないのでな。」
今日、プルセルが退院するからと付け加えるアキト。
その言葉に、少し離れたところにいたエリナがピクリと反応する。
そんなエリナの仕草を目敏く発見したアカツキは一計を案じる。
「テンカワ君、僕らも夕食にお邪魔させてもらっても良いだろうか。」
「ああ、別に構わないが・・・」
アキトとしても5人分作るのも7人分作るのも変らない。
ナデシコでは毎日数百人分といった料理を作っていたのだから・・・
「エリナ君も良いね。」
ニヤニヤしながらアカツキが言う。
「い、良いわよ。」
そっぽを向きながら言うエリナ・・・少し顔が赤くなっている。
―これは面白くなりそうだ・・・
アカツキは自分の企みが成功した事を喜んだ。
まさにお祭り男である。
作者:と言うわけで機動戦艦ナデシコReTry外伝第4話をお届けしました。
カズマ:ワイの出番が少ない・・・
作者:カズマは少し書いているとすぐに暴走しちゃいそうなんで押さえつけたらこうなってしまった。
カズマ:ふっ、ワイは存在感が有るからな。
作者:まぁ今回の目玉は素手で機械を叩き壊すところかな。
カズマ:おう!炎の虎やな!アレは燃えるからなぁ。
作者:思いっきりGガン入ってるからね。
カズマ:原作でもやっとったからな。
作者:お面シリーズもカズマが一番最初に決まったんだ。
カズマ:アキトだけ、かぶっとる描写が無かったな。
作者:実はエステのコックピット内でエステバリスのお面をかぶっていた。
カズマ:ほんまか?
作者:と言う設定。
カズマ:ところでいつ本編に戻そうとしとるんや?
作者:次回が外伝最終回。
カズマ:今度こそワイが活躍するんやな。
作者:まだ途中までしかプロットが完成していないから・・・
カズマ:もう新しいキャラクターは出ないな。
作者:そんな事をしたら私の頭が混乱してしまうから出ないと思う。
カズマ:せや、そうなってしまっては益々ワイの出番が減ってしまうからな。
作者:それでは次回、機動戦艦ナデシコ Re Try 外伝最終話をお楽しみに。
・・・ゲームをやっているヒマが無い・・・
代理人の感想
もう十分以上にキャラが多いですって(笑)。
まぁ外伝で出てきたキャラの半分くらいはスポット参戦なのかもですが。
追伸
お馬さんのアカツキというのは中々良かった(笑)。