最初は・・・・物を見るような目で見ていたわ。





それから・・・・あの輝かしい場所で、どんどんあなたに惹かれていた。





「初恋って・・・・実らないものなのね。」

「どうしたの?お母さん?」

そこに、女性が二人いた。




母と娘だった。




母親は、黒く艶のある長い髪を切り揃え、キツイ目をしているのだが、母性が体から溢れ、優しそうな目をしていた。

スタイルは、子供を産んだ女性とは思えないほどで、一般よりは胸があった。

皺とかが目立つようになったが、そう、見た目としてはキャリアウーマンである。



ただ、口元のほくろが特徴でもあった。




娘の方は、父親が茶髪っぽかったのだろうか、黒いブラウンで、光に反射すると茶色く見えるセミロングな髪。

神に祝福されているのだろうか、顔は誰が見ても(一般ノーマル男性とちょっとその気の女性のみ)、う〜ん、好みなお顔。

母親からの遺伝か、体はとっても健康的で・・・大きい。ゆさゆさと。大体16,7歳位だろうか。




そんな親子が、墓場にいた。









あの場所で・・・・・縁 









「ううん、なんでもないわ。」

「・・・・・お父さんの事でしょ?」

母親の言葉に、娘はちょっと切なそうな表情で答えた。




そう、ここは母親の夫、娘の父のお墓だった。



山の奥の方に設置された、名前も彫られていないお墓。それが父親のお墓だった。




「・・・・・・・あれから・・・・もう17年になるのね・・・・・」

「うん・・・・・明日で私、18歳になるんだよ?教えてくれるんだよね?18歳になったらって・・・」

遠い目でお墓を撫でていた母親の姿を見て、切なさと好奇心と希望に満ちた表情で娘は尋ねた。



どうやらこの親子、母子家庭の様だ。



「・・・・・そうね。それじゃあ。教えてあげるわ。ちょっと一日速いけどね。」

ふふっと、母親は娘を抱き締めつつ言った。










あなたは優しい人。




優しいから、優柔不断な人。




そんなあなたに選ばれたくて、随分苦労したわ。




でも、それはもう過去の話。




楽しい、夢のような話。





「・・・・?・・・・お母さん?これ何?ペンダント?」

「ええ、プレゼント、18歳の誕生日プレゼント。」

娘は、自分の首に掛けられた、四角錐を上下にくっつけたクリスタルのペンダントを二つ貰った。




「さぁ、行きなさい。」

「え?行くって・・・どこに?」

突然の母親の言葉にきょとんとした表情で娘は尋ねた。




「お父さんの所よ。」

「えっ!?で、でもお父さんは死んだって・・・それは?」

母親の言葉に驚愕した娘だが、母親が胸元から数枚の写真を取り出し、娘に見せた。





若かりし母親の写真だった。


赤や青や黄色や白の服を着たいろんな人が写っていた。


楽しそうだった。


その写真は、どれも笑顔に包まれていたからだ。





「ここに写ってる・・・・・この人。この人があなたのお父さんよ。」

「へぇ〜・・・・・優しそう・・・・」

若かりし父親を指差して教える母親の言葉を聞き、娘は穴が開くほど若かりし父親を見て、そう呟いた。




「ええ、優しい人よ。その人があなたのお父さんよ。」

「うん・・・でも、どうやってお父さんの所に?」

微笑みながら言う母親に、娘は尋ねた。




「過去に戻るのよ。」

「過去に?」

「ええ、お父さんは・・・・・殺されたから・・・・」

「っ!?」

哀しそうに俯きながら言う母の言葉に、娘は驚愕に目を見開かせた。





「確かに・・・・あの人が悪かったのかもしれない・・・でも、あの人にはそれなりの事情があった・・・・
・・・・因果応報か・・・・いえ・・・・・だからこそ・・・・・アキナ。お父さんを助けて欲しいのよ。」

母親は、真剣な目で娘、アキナを見つめた。

「お父さんが・・・・・・どうすれば・・・・良いの?」

アキナはしばし茫然としていたが、意を決したようで、母親に尋ねた。




「そこで、そのペンダントが出てくるの。そのペンダントはCC、チューリップクリスタルと言って、
ボース粒子をジャンプフィールドに展開させ、ボソンジャンプするの。」

「えっ!?で、でも・・・・個人ボソンジャンプは法律で禁止されてるって・・・・」

「大丈夫よ。私の力で揉み消せるから。それと、ボソンジャンプ法が成立されたのは17年前、あなたには、22年前に飛んで貰うから。」

「に、22年前っ!?」

母親の答えに、アキナはまた驚かされた。






さて、このボソンジャンプ法だが、まず、ボソンジャンプとは、瞬間移動とは違い、ボース粒子を利用した時空間移動なのである。

この時空間移動なのだが、まず、先進波と遅延波があり、先進波が時間を逆行、遅延波が時間をそのまま経過する役割を持つ。

普段は遅延波が巨大な為、先進波は打ち消されているのだ。




ボソンジャンプは、人体などをボース粒子に変換し、先進波に乗せることで過去へ逆行する事が可能なのである。




ならば瞬間移動にはならないって?



今の自分がいる地点をAとし、目的地の地点をBとする。

点Aから点Bへボソンジャンプする時、過去に戻ったままならば、過去の時点で人が二人に増える事になる。

この時、タイムパラドックスが起きて滅茶苦茶になるのだが、このタイムパラドックスを解消、元の時間に演算する事が必要になる。



この演算する事なのだが、これは遺跡と言う巨大な演算装置が必要になる。



この遺跡によって、ボソンジャンプが可能となるのだ。
更に言うと、ボソンジャンプを行う為には、チューリップと言う巨大な物か、CCなど、他にも多くの物が必要になる。




(これの説明は面倒なので、大変迷惑なのですが、以下略とさせていただくので悪しからず。)






さて、ここからがボソンジャンプ法の説明に入る。


2196年、木星蜥蜴と地球連邦の戦争があった。これが蜥蜴戦争である。



その後、


木星圏ガニメデ・カリスト・エウロパ多衛星国家間反地球連合共同体、通称、木連(木星蜥蜴の正体)とネルガルとナデシコの三つ巴の戦いがあり、
火星で、この遺跡を巡る戦いがあった。



この蜥蜴戦争の後も、火星の後継者の乱があり、またしてもこの遺跡を巡る戦いになったので、
木連と地球連合、ネルガルとで新たな法律を作った。


それがボソンジャンプ法である。




その内容は、

1、個人でのボソンジャンプを禁止する。

2、ボソンジャンプを悪用しない。

3、遺跡は火星の極冠遺跡から動かさない。

4、ボソンジャンプする際、木連、地球連合、ネルガル、三つの許可を取る。

5、ターミナルコロニーからターミナルコロニーでのみ、ボソンジャンプを許可する。

6、戦艦、機動兵器でボソンジャンプをしない。またはボソンジャンプをする為の装置を組み込まない。

を、基本条項とし、細かに津々浦々と規制されていた。



大体こんな物であり、違反者には最大で死刑も求刑できるのだ。





上に説明していた通り、遺跡は火星の極冠遺跡にある。


ネルガルとは、一流企業の名前である。


ターミナルコロニーとは、チューリップを組み込んだボソンジャンプ可能な・・・・道路の関所といった物である。







「ええ・・・・蜥蜴戦争の真っ只中・・・・私がどうして、今まであなたにエステバリスの操縦を習わせていたかわかった?」

「うん・・・・戦争に出るんだったら・・・・もうちょっとまじめにやっとけば良かったかな?」

その驚き様がおかしいのか、母親はクスクスと笑いながら尋ね、アキナはちょっとすねた感じで尋ね返した。







エステバリス。


エステバリス(略してエステ。エステサロンにあらず。)はネルガルが開発した人型ロボットの事である。


これの操縦は基本的にIFS(イメージフィールドバックシステム)を使用した物だが、
近年、EOS(イージーオペレーションシステム)を搭載されて来る様になった。



なぜか?IFSを使用するには、パイロットにナノマシン処理を施さねばならぬからだ。

自分の体を弄繰り回される事に嫌悪を抱く人がEOS搭載のロボットに乗る事になる。



蜥蜴戦争の時には第一線で活躍したのである。







「何言ってるのよ。あなたはもう、同い年の子達じゃ相手にならないほどの才能がある癖に。」

「でも・・・・ねぇ?」

「そうね。もし、死にそうになったりとかしたら、CCはもう一個あるから、いつでも帰ってきなさい。アキナ。」

「うん・・・・でも、22年前なんて・・・・イメージできないよ?」

母親の言葉に、アキナは不安そうな顔で言った。






「その点は大丈夫よ。」

「久し振りね。ドクター。」

親子から離れた所から声が掛けられ、母親はその人物に挨拶した。




金髪の長い髪、美しい顔、大きな胸の、白衣を着た美女だが、もう年なのか、顔に少し皺ができていた。御婆ちゃんな感じがした。




「知り合いなの?」

「ええ、ほら、写真にも写ってるでしょ?」

「あ、本当だ。」

アキナの言葉にクスッと笑って母親は答え、写真の人物と見比べて、アキナは呟いた。




「初めまして、早速だけど、説明に入らせて貰って良いかしら?」

「あ、はい。」

ドクターの言葉に、アキナは頷いた。



「よろしい、では・・・・・・あれは良いわね。別に。・・・・・ごほん、さて、簡単に言うと、私がA級ジャンパーでナビゲーターだからよ。」

「えっ!?A級ジャンパーって、昔事件があって皆死んだって・・・・」

ドクターの説明に、アキナはまた驚愕した。





この事件と言うのは、火星の後継者の乱である。


火星の後継者達は、A級ジャンパーを拉致、人体実験をして、全員を皆殺しにしたのである。




余談だが、この時、幾つものコロニーがテロリストに襲撃され、その殆どが皆殺しになった。




A級ジャンパーとは、火星出身で、遺跡によってボソンジャンプが可能になった人を表す。


何がA級なのか。自分でジャンプ先を指定できると言う事だ。これをイメージと言う。

他にもB級ジャンパーなどがいるが、これはボソンジャンプに耐えれるという事だけである。






「それは嘘よ。ちょっとした報道管制。で、私があなたを、22年前に送ってあげる。」

「は、はぁ・・・・・お、お願いします。」

ドクターの言葉に、アキナはペコリと頭を下げた。




母親とドクターがふと目が合うと、無言で頷きあった。





「じゃあ、目を瞑って、深呼吸して、リラックス。」

「は、はい。」

ドクターの指示に、アキナは素直に従った。




「楽しい事、嬉しかった事、何でも良いわ。気持ちを楽にして・・・・」

「リラックス・・・・リラックス・・・・」

突如、アキナとドクターの体に幾何学的な紋様が浮かび、光った。









数秒後





「・・・・・・行ったわね。」

「ええ。」

母親はポツリと呟き、ドクターは頷いた。





私のかわいいアキナ。お父さんと会えたかしら?
















シュンッ!!



ドグッ!



「ふげっ!?」

「あっ!?だ、大丈夫ですかっ!?」

哀れ、頭上からアキナが落ち、下敷きになった少年がいた。





紅い自転車と、大きなリュック、たくさんの荷物が詰め込まれていて、おたま(調理器具)が飛び出していた。


オレンジ色のシャツにジーパン、髪は茶色っぽくてぼさぼさの、中々爽やかな顔をしている。



その顔を見て、アキナは茫然としてしまった。




「だ、大丈夫だけど・・・・ど、どうかした?って・・えっ!?」

少年はアキナを見て驚いた。



顔を紅くさせ、目尻からは止め処なく涙が流れていたからだ。



「や、やっと・・・」

「やっと?」

「やっと会えた・・・・・お、お父さ〜〜〜〜〜んっ!!うわああああ〜〜〜〜〜んっ!!!」

「えっ!?えっ!?ちょっ!?ちょっとっ!?」

アキナは感極まり、少年に抱きついて泣き、少年は戸惑っていた。

「うああああ〜〜〜〜〜んっ!!あ〜〜〜〜んっ!!」

少年の声に耳を貸さず、アキナはひたすら少年に抱きついて泣いていた。




「・・・・・・・・・・・」

少年は、子供の様に泣くアキナにどうしようかと悩んでいたが、




ギュッ


抱き締める事にした。そして、アキナが泣き止むまで抱き締めつつ、頭を撫でていた。





数分後



「ひっく・・・・うっく・・・・」

「落ち着いた?」

「うん。」

落ち着いたところで少年は話しかけ、アキナは頷いた。




「あの・・・・えっと・・・・・おれはテンカワアキトって言うんだけど・・・君は?」

「アキナ・・・・・・アキナ・キンジョウ・ウォン。」

二人は自己紹介をした。




「あの・・・・おれがお父さんって・・・どう言う事?」

「え・・・・それは・・・・信じて貰えるかどうかはわからないけど・・・・22年後の世界から来たから・・・・
お父さんは・・・・5年後に私を産んで・・・・死ぬの。」

アキトの問いにアキナは答えた。

「えっ!?」

アキトはその言葉に驚愕した。




そりゃそうだ。22年後の世界から来ただとか、5年後に子供産んで死ぬなんて話、信じられる訳がない。

無論アキトも信じる訳がなかった。




「・・・・・・わ、悪いけど・・・そ、そんな話・・・し、信じられないよ・・・それに・・・どうしてここに来たんだ?」

アキトはアキナに言った。

「っ・・・・・私、お母さんから頼まれたの。お父さんを助けてくれって・・・・だから・・・だからっ!!









一緒に帰ろうっ!!」








「えっ!?か、帰るってっ!?うっ!?」

アキナの言葉にアキトは驚くが、ギュウッと抱き締めてきたアキナにアキトは顔を紅くさせた。




「お母さんと一緒に、家族三人で幸せに暮らすのっ!!ジャンプ!!」

アキナの言葉と共に、周囲は閃光に包まれ、閃光が晴れたとき、そこには紅い自転車しか残されていなかった。








ブォ〜〜〜〜〜〜ンッ!!    グシャッ!!



その後、黒いリムジンがその紅い自転車を轢いて行ったが、運転手達は気づかなかった様だ。



急いでいたからかも知れない。














「・・・・・・行ったわね。」

「ええ。」

母親はポツリと呟き、ドクターは頷いた。





シュンッ!


ドタドタっ!!



「ふげっ!?」

「あっ!?お父さんっ!?大丈夫っ!?」

落ちてきて、またしてもアキトを下敷きにしたアキナであった。




「「・・・・・・・・・」」

母親とドクターは、その二人、いや、アキトを驚愕の目で見ていた。




「お父さん、お母さんだよ。」

「え・・・・あ・・・ど、どうも・・・・・・」

アキナの言葉に、周囲をキョロキョロと見回していたアキトは二人に軽い挨拶をした。



「「あ・・・・・・・・ああ・・・・・・アキト君(お兄ちゃん)!!」」

「え?っ!?」

母親とドクターも感極まって、アキトに抱きついたので、アキトは驚いた。




「「おっ!?お兄ちゃんっ!?」」

アキトとアキナ。仲良くドクターを見て驚いていた。




「あ・・・・ごほん。テンカワアキト君ね?」

「え・・ええ・・・・」

顔を紅くし、取り繕ってドクターはクールに話し掛け、アキトは茫然としたまま頷いた。



「あなた・・・・ナデシコって知ってる?」

「へ?ナデシコって・・・花の?」

ドクターの問いに、アキトは何を聞くんだ?と、言う表情になった。






母親とドクターは軽く見つめ、





「アキト君、アイちゃんって・・・知ってる?」

「あっ!?アイちゃんっ!?な、何であんたがアイちゃんを知ってるんだよっ!?」

ドクターの問いに、アキトは驚き、ドクターを見つめた。

「私の名前はイネス・フレサンジュ。イネスの頭文字は・・・・I(アイ)よ。」

「・・・・・・・っ!?・・・ま・・・まさか・・・・・あ、アイちゃんなのかっ!?」

「ええ、そうよ。お兄ちゃん。」

ドクター・・・イネスの意味深な言葉を理解したアキトはブルブルと震える手でイネスを指差し、イネスは頷いた。





「あ、アイちゃんが・・・こんな・・・こんな・・・・・・こんなおばあちゃんになってたなんてっ!?」 



ゴンッ!!



「ふげっ!?」

「失礼ね。本当ならまだ32歳よ。」

「さ、32っ!?」

イネスはアキトにげんこつをくらわせて言い、その言葉にアキナは驚愕した。




「ええ、アキト君が火星の避難所から地球にボソンジャンプする時に、10〜20年位過去の火星の砂漠に飛ばされてね。
だから、私が・・・お、御婆ちゃんになったのは、あなたの責任でもあるのよ。アキト君。」

頬を引くつかせながらイネスは説明した。




「うっ・・・・と、ところで・・・・あ、あなたは?」

「私の名はエリナ・キンジョウ・ウォン。アキナの母よ。」

イネスの説明に、アキトは話を変えようとして、母親に話し掛け、母親は自己紹介をした。




「あ・・・・えっと・・・・・」

アキトは言葉に詰った。



それもその筈、五年後にアキナが生まれた時には死に、アキナの育児をエリナに任せっぱなしだったと言う事に気付いたからである。




「ふふっ・・・・・ところで・・・・どうしてすぐに帰ってきたの?」

「それは・・・・お父さんと家族三人で仲良く暮らしたかったから・・・」

エリナの言葉に、アキナは人差し指と人差し指をツンツンさせながら答えた。



エリナにはその気は無いのだが、キャリアウーマンの性か何なのか、時々クールな詰問口調になるのだ。




「そう・・・・・・でも・・・・どうしましょうか・・・・・」

「そうね。これはこれでちょっと大変かもね。」

エリナの言葉に、イネスも頷いた。



「どう言う事なの?」

「忘れたかしら?この世界のテンカワアキト、つまり、あなたのお父さんは、既に死んでいるのよ?」

「「っ!?」」

アキナの問いにエリナは答え、アキナとアキトは驚いた。





自分は生きていても、この世界の自分は死んでいる、そう言われれば驚くと言う物だ。





「あの・・・・おれが・・・・この世界のおれが死んだって・・・・どう言う事なんですか?」

「・・・・・あなたには・・・・聞く権利があるわね。」

アキトの問いにエリナは頷き、イネスに目配せした。




「よろしい。簡単に説明するわね。アキト君。あなたはプリンスオブダークネス。暗黒の王子と呼ばれたテロリストなのよ。」

「「て、テロリストっ!?」」

イネスの言葉にアキトとアキナは驚いた。




自分が、父がテロリストだと言われて驚かない者は、初めから知っている人のみであるからだ。




「ええ、あなたは四つのコロニーを破壊したテロリスト。そして、火星の後継者の乱の後でも各地で暴れまわり・・・・
・・・・・衰弱した所を地球連合軍に捕まって、公開処刑されたのよ。自分達の失態を隠すと同時にね。」

「ど・・・・どう言う事なんだよ?」

イネスの言葉にかろうじてアキトは疑問の声を上げる事ができた。アキナは茫然としていた。




「まず火星の後継者の乱について・・・・いえ、全ての事の発端から説明しましょう。木星蜥蜴・・・・知っているわね?」

「あ・・・・ああ・・・・・火星をメチャメチャにした謎のエイリアンだろ?」

イネスの問いにアキトは答えたが、

「いいえ、木星蜥蜴は地球連合がつけた名前、
本当は木星圏ガニメデ・カリスト・エウロパ多衛星国家間反地球連合共同体、通称、木連と言う、れっきとした地球人との戦争だったのよ。」

イネスは首を横に振った後、答えた。



「なっ!?に、人間同士の戦争だったのかよっ!?」

「ええ、そうよ・・・・・続けるわね。
あなたはネルガルが開発した機動戦艦ナデシコのクルーとなり、まだ木連の正体を知らぬままに戦ってきた。
けど、ヨコハマドック、アトモ社がある所でテツジンとマジンが襲ってきたの。その時、あなたは二度目のボソンジャンプをした。」

「ちょ、ちょっと・・・・テツジンとかマジンってなんだよ?」

「そうね・・・わかりやすく言うとゲキガンガーVとウミガンガーよ。」

「えぇっ!?」

イネスの言葉にまたアキトは驚いた。



「木連ではゲキガンガーVが流行ってたのよ。娯楽が少なかったしね。って、話が反れたわね。
あなたは自爆しようとしたマジンと一緒にボソンジャンプし、二週間前の月へと跳んだ。
ナデシコの方では、壊れたテツジンを拾い、そして木連の兵士を捕虜とした。」

「えっ!?二週間前の月?ボソンジャンプって・・・・過去にいけるのかよ?」

「何言ってるのよ。ボソンジャンプは時空間移動。現にあなたは過去から未来へ、つまりここにいるじゃないの。」

「あ、そっか・・・・」

説明に驚いていたアキトだが、イネスにつっこまれ、納得した。



「あなたは月でダイマジンと戦い、木星蜥蜴の正体が人間である事に気付き、
ナデシコで、木星蜥蜴が木連であることが露呈する。」

「・・・・・・・地球連合は、最初から相手が人間だと知っていたのよ。
でも木連はバッタ達を送ってきてたから、木星蜥蜴って名付けたのよ。」

イネスはエリナを見て、その当時の状況を思い出し、少し顔が紅いが説明した。



「そして、ナデシコ艦長ミスマルユリカは、木連と和平を結ぶ事を決意した。」

「ミスマルユリカ?・・・・って・・・・まさか・・・」

「ええ、あなたの幼馴染のミスマルユリカよ。」

イネスの言葉から気になる項目があったアキトに、エリナは教えた。



「紆余曲折があって、木連との会談の場を設けたのだが・・・・・木連側の和平の使者が目の前で殺され、私達は終われる身になった。」

「なっ!?ど、どう言う事なんだっ!?」

「木連指導者、草壁春樹は端から和平なんて考えてないのよ。まぁ、以前は突っ撥ねられたからね。
それに、最初も次も、和平の条件が無茶苦茶だったのよ。私達を悪者扱いの内容だからね。」

エリナは肩を竦めて、アキトの問いに答えた。





「・・・・そして、私とあなたとミスマルユリカはネルガル三番艦カキツバタに乗り、戦艦ごと火星にボソンジャンプした。
三人は、火星出身で、遺跡のナノマシンによってボソンジャンプに耐えられる体になっていたからね。俗に言うA級ジャンパーだったのよ。
ナデシコも火星に来て、木連も火星に来て、遺跡を取り合ったのよ。」

「遺跡?」

「ええ、蜥蜴戦争は人間同士の戦争でもあるけど、遺跡の利権争いでもあったからね。
で、それが嫌になったミスマルユリカの提案で、遺跡はナデシコごとどこか遠い宇宙へボソンジャンプさせた訳なのよ。」

「はぁ・・・・」

「これが、蜥蜴戦争の真実、で、ここからよ。まず、あなたとミスマルユリカは結婚したの。」

「「ええぇっ!?」」

イネスの言葉に、アキトとアキナはまた驚愕した。




「お、お母さんと結婚したんじゃないのっ!?」

「お、おれが・・・・ユリカと!?」

二人は驚きつつ尋ねた。



「ええ、私は・・・・愛人だったから。」

「「あ、愛人っ!?」」

エリナの言葉に二人は驚いた。




(って事は・・・・・私は愛人の子って事?)

アキナは思った。




「で、結婚翌日のハネムーンに行く時に、シャトル事故で死ぬ。」

「「えっ!?」」

イネスの言葉に、二人は驚きっぱなしだった。



「シャトル事故の時、死んだと思われたあなた達は実は、事故に見せかけて誘拐されたのよ。
で、あなた達を誘拐したのが、火星の後継者。火星の後継者の指導者は草壁春樹。
蜥蜴戦争後の木連若手将校達による熱血クーデターで追われてたのが生きていた。
彼の狙いは遺跡だから、A級ジャンパーが欲しいし、邪魔だったのよ。
そして、ミスマルユリカは彼等の手によって、仮死状態で遺跡と融合させられた。」

「「ゆ、融合・・・・」」

「あなたは別よ。あなたは、体中を弄繰り回されて、五感の殆どを失ったのよ。」

「「っ!?」」

「そして、あなたは失った五感の代わりに、同じく人体実験されていた10歳の少女。
ラピスラズリとリンクする事で、動けるようになったわ。」

「「酷い・・・・」」

「あなたは彼等に復讐を、彼女を救う為にプリンスオブダークネスになった。
彼女がいると思われる所を破壊して、探していたのよ。
火星の後継者の乱は、あなたの養女であるナデシコC艦長、ホシノルリの手によって鎮圧。
あなたはあなたで復讐を果たし、彼女を助けた後、ラピスと共に彼女達の前から姿を消し、残党狩りをした。」

「そして・・・・・・捕まって処刑された・・・・か・・・・」

「お父さん・・・・・」

イネスの説明を聞き、哀しそうに俯いて呟くアキトを見て、同じく哀しそうにアキナは呟いた。





「ええ、地球連合は当時、木連とくっついた統合軍と言うのがあってね。
火星の後継者の乱の時、統合軍の3分の1が手を結んだ。
地球連合は規模が収縮していて、彼等を止めれなかったのよ。そう言う所の失態を、帳消しにする為にね。」

「・・・・・・・・・・・・・」

更なる説明に、もう無言になってしまった。





「だから・・・・・・」

エリナが話し掛けた。

「だから?」

アキトはエリナを見た。







「結婚しましょう?」


「えぇっ!?」

エリナの言葉にアキトは驚いた。



「戸籍よ、戸籍。結婚する事で、名前を変えれるでしょう?まぁ、私の力ならなんとでもなるわ。」

「あ、ああ・・・そっか・・・・」

エリナの説明に、アキトは納得した。

「まぁ、細かい事は私に任せなさい。あ・な・た。」

「・・・・・」

エリナの言葉とウィンクに、アキトは赤くなった。



年をとっても、色っぽさは変わらない様だ。












最初は・・・・物を見るような目で見ていたわ。




それから・・・・あの輝かしい場所で、どんどんあなたに惹かれていた。




あなたは優しい人。




優しいから、優柔不断な人。




そんなあなたに選ばれたくて、随分苦労したわ。




でも、それはもう過去の話。




楽しい、夢のような話。




だって、これからが楽しい夢の様な話を綴るから。




あなたと私と娘の三人で、書き綴られる話になるから・・・・・・・・ね?









数日後、エリナの知り合いの所に、結婚したとのハガキが送られた。







           結婚しました。



        エリナ・キンジョウ・ウォン


        アキト・キンジョウ・ウォン。

     
                                』











こんなところで終わる。






後書き


お久しぶりです。


エリナ×アキト・・・・娘のアキナですが、名前だけだとユキナの方が近い気がしましたが、決行しました。


地の文をなんとか増やしてみたのですが・・・・、アキトの過去を説明する所がまだまだ未熟で・・・・会話ばっかり・・・・


もうちょっと・・・・ひねりが欲しかったのですが・・・・感想、どんと募集しています!!




最後に一言、報われない愛を報わせましょう。エリナさんにもっと愛を。以上!!









コメント代理人 別人28号のコメント

 ツっこみ所は多々ありますが一つ一つにツっこんでるとキリがないので、今回は以下辛口です。
 SS内容にもかなり深く触れてますので、先にコメント読んでいるという一風変わった方もお気を付け下さい。
 伏字にしますので見る方は自己責任でどうぞ。


 ここで一つ問題です。このSSにおける中心となるべき主人公は誰でしょう?
 エリナ? アキト? それともアキナ?

 はっきりと結論から言いましょう。
 全員、SSの中心に据えるには問題有りです。

 このSSでは途中で舞台が過去へと変わり、更に未来へと戻ります。この流れの中心にいるのは、ボソンジャンプをしたアキナでしょう。この時点でエリナが主人公と言うのはなくなります。
 しかし、アキナが主人公だと言われても首を傾げてしまいます。
 彼女は恐ろしく存在感が希薄です。エリナ、イネスから与えられる怒涛の情報に対しての反応も薄く、心理描写も乏しく、そこにいるのに存在していないような錯覚すら覚えます。
 言葉が悪いですが、彼女は「話を進めるためのパーツ」となってしまっているのではないでしょうか?

 アキトもそうです。TV版一話の時点でのアキトを前提に考えれば、いきなり自分の目の前に現れた同年代の女性から「お父さん」と呼ばれればまず怪しむと思います。しかし、このアキトはすんなり受け容れ、戦争の実態を聞かされても憤る事もありません。はっきり言って「御都合」です。エリナの都合に対してでもありますが、一番は遅かりし未熟人さんの意図に対して御都合的だと私は感じました。自分のシナリオを進めるのに躍起になって、キャラクターを置いてきぼりにしていませんか?

 このSSの中心軸は遅かりし未熟人さんの意図であって、登場するどのキャラクターでもない。私はそう判断しました。


 文章についてはあまりどうこう言いたくはないのですが、小説の文章と言うより、全体的に語り口調の箇条書きの様に見えました。一行一行がぶつ切りになっているとも言えます。あと改行が妙に激しいです。
 地の文も増えているのでしょうが、「話を進めるための解説」に終始している印象を受けました。もう少しキャラクターの心理描写を増やしましょう。アキナの存在感希薄の原因はここにあると思われます。