─ 西暦2121年1月5日 日本三鷹 ─

ここは東京三鷹にある渡良瀬教授の家にある地下研究室。教授はナギさんと共同してプリムローズを作り上げた製作者の一人だ。彼の主宰する渡良瀬分子生物研究所が伐折羅バサラと呼ばれる狂女とリースをさらい、ナギさんを殺した相馬祐樹少佐こと因達羅インダラに襲撃され、教授は重傷を負っていた。そこに辛うじて間に合った俺が助け出したのだ。

その時受けた教授の傷の治療兼リースの再起動の為、この部屋にやって来たという次第だった。幸いリースの再起動は問題なく行われたが、その時のデータチェックで彼女が普通の軍事用レプリスプリムローズではないという事が分かった。

俺にしてみればリースは妹であり、普通のプリムローズじゃなくても問題ない。呼び方こそ“おにいちゃん”から“明人さま”に変わり昔の雰囲気とは少し違っていたが、彼女の根本は変わっていないと感じたので気にするほどの事はなかった。


ようやくメンテナンスが終わった今、彼女と話あい今後の身の振り方を考えるだけになっていた。

 


連合海軍物語


外伝8「明人の憂鬱」


─ 西暦2121年1月5日 日本三鷹 明人 ─


「あ、明人さま。そこにあるタオルと毛布をとって頂けないでしょうか?」


メンテナンスの終わったリースが培養カプセルから声をかけてきた。俺はリースを見ないようにして傍にあったタオルと毛布を彼女に投げた。彼女がメンテ中でもなるべく見ないようにしていたのだが、渡良瀬教授は頓着しないようだった。さすが歳の功なのだろうか?

それはさておき教授はリースのデータをチェックしてメンテナンスプログラムを作り上げ、それに沿って彼女のメンテが行われていた。さすが開発者の一人であり研究所を主宰するだけのことはあった。


「そういえばリースの着替えはどうするんだね? 私は独身だからこの家に女物の服はないんだが・・・」

「あ。そういえば・・・どうしましょう」


リース救出後、自分の着替えは暁泰山特務大尉に頼んで焼け残った俺の部屋から持ってきてもらった。だがリースの場合、さすがに小さなリースの物は着れないし、ナギさんの服を借りるにしても部屋が焼失したので無理だった。

仮に焼け残ったとしても暁大尉に服や下着を持ってきてもらう訳にはいかないだろう。そんな事をすれば末代までナギさんに祟られそうだし。


リースのサイズも分からず途中で買う余裕もなかったので現時点で彼女の着替えは何もなく、全くの手詰まりとなった。

俺の慌てぶりを横目で見ながら渡良瀬教授は出かける準備をしていた。


「すまん、これからアスカへ行ってくる。着替えの件に関しては君が何とかしてくれ。夜までには戻るよ、では」



「ちょっとッ! 教授ーーーーっ!!」





俺の絶叫と伸ばした手は虚しく空を掴み、無情にも閉められたドアを見て、力が抜けた身体はがっくりと膝をついてしまった。


(俺に・・・俺に女性の下着を買えというのか。普通の服ならともかく・・・いや、それだって厳しい。ともかくソレは・・・勘弁して欲しいんだが。なら俺の服をリースに着せて買いに行かせるのはどうだろう・・・リースはというか小さいリースは“はじめてのおつかい”を済ませている。自分で物を買うという事はできるはずだ。

いや駄目だ、下着を履かせないまま服を買いに行かせるなんて・・・兄としては絶対に許せん事態だ。だが俺が買いに行くというのも・・・一体、どうすれば良いんだ)


俺は堂々巡りの苦悩を続けていたが先ほど無情に閉められたドアがいきなり開かれ渡良瀬教授が顔を出した。


「そうそう、言い忘れていたんだが・・・すぐに水上みなかみ きょうという私の助手がやってくる。彼女に着替えや女性に必要な物は頼むといい、それだけだ」


教授はそう言うとドアを閉め出かけていった。


(・・・た、助かった)


俺は深々と息をつき教授の手配に心底感謝し、心の中で感涙していた。ああ“救いの神様”はいるんだ、ってね。


「あの、明人さま。どうかされたのですか? 先ほどからその状態で固まっておられますが」


リースは俺の苦悩も知らず毛布をまとった姿、のんびりとした雰囲気で俺を見ている。


(ふっ、リースよ。お前に俺の苦悩や歓喜は理解できないか)


つい黄昏てしまいそうになるが、それより前から気になっている点を直してもらう事にした。


「なあ、リース」

「はい、なんでしょう?」


俺の呼びかけにリースはにっこりと微笑んだ。


「呼び方なんだが・・・明人さまはやめてくれないか? それと言葉使いだけど・・・もう少し柔らかくならないか。違和感があって疲れる」

「言葉遣いですか? これは性分ですので。ですが、なるべく柔らかくするようにいたします」


そう言って先ほどと同じように微笑んだ。性分って・・・昔はもっと砕けた話し方が出来たはずなんだが・・・やはり覚醒が原因なんだろうか。ほんの少し疑問に思ったがリースがそう言うのではしかたなかった。


「呼び方ですが明人様はマスターです、こうお呼びした方が良いかと思っておりました。では、どのようにお呼びし・・・いえ、呼んだら良いですか?」

「お・・・」

「お?」


リースは少し首を傾げると途切れた俺の言葉に真面目に答えてくる。

聞きなれた“おにいちゃん”と言いかけたが止めた。ますます俺が危ない人間と誤解されそうだし。ここはひとつ、普通に明人さんで良いだろう。


「・・・いや、明人さんで頼む」

「了解しました、明人さん。これで宜しいですか」

「ああ、ありがとう」


リースはソファーへ歩いて行くと座り、疲れたように息を吐き出した後そのまま横向きになった。


「疲れたか?」

「はい、コンディションは悪くないのですが身体の変化もふくめて・・・少々」


リースは軽く目をつぶってそう言った。確かにそうかもしれない。覚悟もないまま母親ナギさんの死顔を見、いきなり自分の身体が10歳から18歳に変わっていれば俺だっておかしくなりそうだ。


「明人さん、母さんは・・・」


リースは顔を俺の方に向けるとナギさんのことを聞いてきた。ずっと聞きたかったのかも知れない。


「すまん、俺の力が足りないばかりに・・・ナギさんやお前を護り切れなかった」


俺は目を伏せた。今はリースの顔が見れなかった。声の調子から泣きそうな顔をしている彼女が想像できたからだ。今の俺はリースの泣き顔を真正面から見る勇気がなかった。

この事に関して今でも自分の無力さを悔やんでいる。もっと古流で鍛えておけば、〈プロト-オセラリス〉の操縦を完璧に習得していれば・・・。後悔は幾らしても足りないくらいだった。


「そんなことは!! 明人さんは精一杯私たちの事を護ろうとして・・・」

「そう言ってくれるのは嬉しいが、護れなかったのは事実だよ」


奥歯を砕かんばかりに噛み締め、拳を握りしめる。本当に俺ときたら・・・。


「・・・明人さん」


リースの悲しそうな声が聞こえた。


「私は貴方に感謝こそすれ、責める言葉は持ってません。あなた方2人に育てられて本当に幸せだと思っています。それに今でも明人さんが・・・傍にいてくれます。ですからそんなに自分を責めないでください」


彼女の言葉に俺は顔を上げる。リースの顔は泣いてはいなかったが、とても穏やかで澄んだ水のように透明感のある笑顔だった。その笑顔になんとなく救われたような気がした。


「明人さん・・・ずっと傍にいてくれますか?」

「心配するな、俺はお前が望む限り傍にいる」


俺はリースの傍にいき膝をつくと昔からしていたように頭をなでた。リースは嬉しそうな顔をして寝ていた上半身を起こす。そのせいで俺との距離が縮まった。見上げるようにして俺を見ている表情は微笑だったがほんの少し困惑が含まれている。潤んだ真紅の瞳がルビーのように輝いていた。


「明人さん、あの・・・」


「あの、自分たちの世界を作るのは良いんだけどね」




いきなり聞こえた女性の声に俺の心臓が跳ね上がった。いつの間にか俺とリースの距離が近づき過ぎていたようだ。


「後ろに女性の方が」


リースは少し困惑した顔をして俺の後ろを見ていた。


「そういう事はもっと早く言ってくれ」

「申し訳ありません」


その言葉にリースは頭を下げた。俺は溜息をついて振り返る。そこにはダークブラウンの髪をショートカットにした少しきつめの顔立ちをした女性が立っていた。


「貴方が水上鏡さんか?」


俺の問いかけを無視すると彼女は一言。



「最低」



「おい! いきなりソレか!」


彼女は俺とリースを見比べると冷ややかな声でそういった。振り返ると誤解されてもしょうがないというかなんと言うか・・・。上半身を起こした際にリースの巻きつけていた毛布がずれて胸元が大きくはだけ毛布からは白くて長い足が出ていた。後ろから見たら思いっきり誤解されてもしょうがない状況だった。


「先ほどの問いだけど、そうよ。水上鏡、よろしくね。教授の端末は・・・これね」


そういうとパソコンを使い始めた。モニタを見て傍にあったペンを取り上げるとメモ用紙にさらさらと書いていく。何やっているんだ、彼女は? 俺は彼女に近づいて何をやっているのか確かめようとした。

水上さんはモニタから顔を上げるとリースに聞こえないくらいの小さな声で俺に囁いた。


「お姉さん、感心しないな。プリムローズに欲情するのは」


「誤解だっ!!」


「リース、ちょっとこっちに来てくれない?」

「はい」


再びモニタに目を向けた水上さんは俺の主張を無視、少し顔色を変えるとリースを手招きした。そして俺を見ると溜息をついた。


「ちょっと、水上さん、誤解だッて!!」


リースは水上さんに呼ばれたのでソファーから起き上がりパソコンの傍までやってきた。

やっぱり俺の主張は水上さんに黙殺され、つい魂の叫びが。


「だから俺の話を聞けーーーッ!」





「明人さん、あまり大きな声をあげられては。ご近所の迷惑になってしまいます」


リースは俺をたしなめるように言う。


(おいリース、俺たちは誤解を受けているんだぞ、少しは・・・フォローしてくれよ(涙)


リースのこの台詞に目一杯・・・疲れた。


「それと桜樹さんですか、私は馴れているから構わないんだけど。血生臭いですよ、シャワーくらい浴びた方が?」


水上さんの言葉にようやく思い出した。渡良瀬研究所に行くのに顔や手に付着した血痕は拭ったが服に染み込んだ物はそのままだった。リースの着替えや身の振り方など頭が一杯でそこまで気づいてなかった。


「あ」

「はい、ちゃっちゃとシャワーを浴びてくださいね。その間にリースと必要な物を相談しますので。あ、それと貴方はトランクス派?」

「あ、ああ」


彼女のいきなりな質問に面食らいつい答えてしまった。


「そう分かったわ。じゃあ、お風呂場に行ってください。リース、服を買わなきゃいけないから念のため、サイズを測るわ。そういう事で・・・覗いたら・・・分かってますね?・・・・・・・・


彼女の眼光は凄まじく、そんなことをするか! という俺の主張は口に出せずに終わった。ただ頷き一言いうので精一杯だった。


「了解」


俺は風呂場へ退散する事にした。その俺の背後から追い討ちをかけるように水上さんの声が聞こえてきた。


「いい、リース。相手がマスターといえど無防備は駄目、貴女は女の子なんだから」

「はぁ・・・」



やっぱり・・・神なんていねえよ(涙)。






─ 同日午前 日本三鷹 水上鏡 ─

「どうだったね?」


車に戻ると渡良瀬教授が声をかけてきた。


「どう、と言われましても」

「実に自然な動きと表情をしていないか、リースは」


そうですね、と相槌を打つ。車をスタートさせ三鷹駅へ向かう。昨日の雪で道が滑りやすくなっているので慎重にハンドルを切った。


「ですが・・・私の考えは変わりませんよ? プリムローズに心や感情はいらないっていうのは」

「相変わらず頑固だ、君は」

「性分ですから」


先ほどのリースの台詞を真似てみた。悪趣味だけど彼らの行動を少し観察させてもらったのだ。教授曰くとても仲の良い兄妹に見えるという事だった。確かに彼らは自然すぎる、設計に参加した私ですら驚くほどに。


「あれは新城君が新しく開発した“揺らぎかんじょうプログラム”の結果だろうか」


私は先ほどのリースとの会話と表情を思い出す。少なくともバージョンを上げた“揺らぎ”だけの結果ではないように思えた。あるとすればあの子がナギと桜樹さんに愛されて育ったという事だろう。


「“揺らぎ”だけの結果とは思えません。彼女は・・・愛されているのでしょう」

「だからなのかな。リースは愛されているか・・・なら私としては開発者冥利に尽きるというものだね」


教授が嬉しそうに顔をほころばせ腕を組んだ。


「多分、ですが。ナギと桜樹さんがリースを人間として育てたと教授は言われてました。“揺らぎ”の結果だけではないように思えます。少なくとも桜樹さんはあの子を“人間”として扱うことを拒否しませんでした。“真紅の夜明けライジングサン”や日本海軍の上層部ときたら・・・」


私の不満を遮るように教授は疲れた声を出した。


「彼らの反応は普通だ。私から言わせれば桜樹君の方が特殊なんだよ。私たちから見ればプリムローズやレプリスは人間と変わりない。だが詳しく知らない彼らから見れば自分たちの存在を脅かしかねない生物だ。エイリアンと言い換えても良いくらいだろう」

「なら、そんな場所に送り込んだあの子たちは!」


教授の物言いについ声を荒げてしまう。

私は戦闘用に開発されたプリムローズに心はいらないと思っている。幾ら汎用型レプリスの試作を兼ねているとはいえ、“電子の海こころ”を与えられ自我を持った彼女たちの未成熟な心を傷つけるような事をしたくなかった。

それなら心や感情を全廃した個体を作った方がよっぽど良い。

だが予算という枷に縛られる私たちにはもう1体余計に造る余裕はなかった。アルファリース・ガンマ・ベータいずれの個体もレプリスの試作機として設計した上で、リースは汎用、ベータは航行・砲術用、ガンマは彼女専用のハッキングデバイスを組み込んだ通信・レーダーシステムを担当する電子戦のプリムローズとして完成した。

3人のいずれかに全てを集中させるというプランもあったがそれでは処理が複雑になりすぎトラブルがあった場合、原因が突き止めづらい。それにプリムローズの完成が早急に求められていた為、全てを統合したさらなる高性能個体を追求する余裕はなかった。


その為、私は個人で設計したB-5プランを準備している。4年の歳月をかけて設計したこの子、本当の意味でのプリムローズなら今いる3人を凌駕することができる。


「実際、奪われたベータとガンマがどう扱われるかはわからない。その先で人間として扱われるのか機材として扱われるのか」

「ならあの子たちは戦闘に不要な感情や心をもっているばかりに・・・教授、生体移植用の養殖個体を除いて全個体に心を宿らせるというのは傲慢ではありませんか?」


私のキツイ言葉に教授は目を瞑り何かをじっと考えていた。


「そうだな、君の言うとおりかもしれない。どのみち心を持ったプリムローズの開発はガンマで終わった。量産型のゴーサインが出ている、そちらは心や感情をなくすことにしよう。君の設計はプランB-5だったか」



「はい、コードネーム“ラピス-ラズリ”、遺伝子提供者は・・・私です」



それ以降、私と教授の間に会話はなかった。車は繁華街に入っていく。その光景を見て思い出したことがあった。


「あ、それと教授。話は変わりますが・・・」

「何かね?」

「彼女のプロポーション、行き過ぎではありませんか」

「そうかな」


教授は首を捻った。バランス的には良いはずなんだが・・・とブツブツ言っている。


(そういう問題じゃないんだけど)


私は内心で溜息をついた。今話しているのは人間として女としてのプライドの問題だから。自分の身体も数値的に見て悪いとは思わないけど・・・リースと比べると、ね。ますますプリムローズに不満が出そうだわ。


「ちょっとショックですね、女として。85、54、80って・・・こんな服、この辺りじゃ売っていません」

「・・・頑張ってくれたまえ」


教授は慌てて私から目を逸らしぼそりと言うと窓の外を見た。






─ 同日午前 日本三鷹 渡良瀬教授の家 ─

シャワーから上がり部屋に戻ると水上さんはおらずリースだけがいた。


「あれ? 水上さんは」

「買い物に行かれました」


さっきと違っているのはリースが俺の服を着こんでいるという事。白いセーターに黒いジーパンで、セーターの袖は長すぎ手首のあたりでたるみ、長すぎるジーパンのすそは折られている。えりぐりとウェストはぶかぶかで、ベルトで閉めてあったがそれでも緩そうだった。

机の上にはベルトの切れ端がある事から短く切ったのか。確かにリースのウェストは細いので俺のベルトでは長すぎるだろう。


「明人さん、洋服と下着をお借りしてますね。私は毛布で良かったんですが水上様がどうしても、と」

「そうか、別に構わない。そっちの方がずっと落ち着くって・・・俺の下着?」

「はい、ちょっとすーすー・・・・しますが履き心地は悪くないです」


リースは下腹部に手を当てて履き心地を確かめている。はぁ、だから水上さんはあの質問をした訳か。それにしても俺って信用ないんだろうか。


「どう・・・でしょう?」

「え?」

「似合いませんか?」


リースは俺の前でくるりと回る、銀の髪が舞って目の前を流れた。そしてにっこり。改めて見ると・・・バランスの取れたプロポーションや銀色の髪、整った顔立ち、落ち着いた物腰と雰囲気、絶世のとつけても良いような美少女だった。

もともと整った顔立ちをしていたリースだったが2度目の成長プログラムのせいで、可愛らしさと大人びた雰囲気が同居する不思議な感じをもっていた。


「あ、ああ。良く似合っているよ」

「そうですか、嬉しいです」


リースはにこにことしている。こういうところは昔というか小さなリースの時と変わってない部分だと思う。小さいリースも新しい服を買ってもらう度に何度も俺に聞いてくるのだ、おにいちゃん、どう? って。


そんな事を考えていたがマッタリした想いに浸っている余裕はなかったんだ。俺はリースに今後の方針を相談する事にした。幸い俺とリース以外にはいない。


「なあ、リース。お前はこれからどうしたい?」

「昨日もお話した通り、私は明人さんについていくだけです。そして足手まといになる気はありません」


ゆったりした笑みが消えリースの表情は引き締まり、キッパリと言い切った。


「平穏に暮らす、そんな選択肢はないのか」

「平穏に暮らせるならそれにこした事はないのですが・・・。ですが正直そういう暮らしが出来るとは思えません。妹たちが連れ去られた以上、再度私が狙われる可能性は高いと思われます。それに戦い始めた妹たちを止められるのは私だけでしょう。

私は今の段階では何もできません・・・このままでは明人さんに負担がかかってしまいます。それに私は明人さんと一緒なら平穏でなくても構いません」


確かに教授やリースの予測通り奴等が行動を開始した場合、真っ先に狙われるのは同じ力を持ったリースだ。それに敵は旧式とはいえ機動兵器を所有している。幾ら〈アルストロメリア〉が旧式でも軍装備だ、簡単に横流しが出来るサイズではないし、一般人やちょっとした・・・・・・犯罪者が手に入る代物ではなかった。

だとすれば軍に顔の利く、それなりの規模を持った組織が裏にいることになる。その組織に対して自分の身ひとつしかない俺たちが抵抗するのは・・・絶望的だ。少なくとも同レベルの力をもつ組織の援助を受けないと身を護るのは難しい。

あの二人、相馬にしても伐折羅バサラと呼ばれた女にしても気狂いとはいえつわものとしては凄腕である事には違いない。人間同士の戦いでさえ俺はあいつらにおくれを取った。次に相対して確実に勝てるとは言えないのだ、むしろ負ける可能性の方がずっと高い。あの二人が同時にかかってきたら・・・リースを守り抜くどころか自分の命すら危ない、それ程までに奴等は手練だった。


では俺たちはどうすれば良い?


真紅の夜明けライジングサン”を頼るという手もあったが、見当がついていた裏切者は殺され、他の誰が裏切者かが特定できてない以上、俺たちの行動は筒抜けになる。やはり今の時点では“真紅の夜明けライジングサン”は頼れない、取り合えず俺の手配書を何とかしてもらうくらいが関の山だろう。だとすると教授の手引きでアスカに頼るほかないのかもしれない。

問題は謎の敵組織がアスカという可能性もあるという事だ。もしそうなら俺たちは自ら囚われにいくようなものだ。ただリースのメンテの件も考えると教授がアスカを頼る以上、どうしてもアスカとは係わり合いにならざるを得ない。


俺は一体何を信じれば良いのか、今のところ全く見通しがつかない。ただひたすら自分とリースの身を護る、たったそれだけのはずなのに打開策というのが思い浮かばなかった。


「明人さん?」


考えに没頭していた俺にリースが心配そうに声をかけてきた。


「すまん、大丈夫だ。今のところ教授と一緒にアスカを頼ろうと思っているよ。もしそれが駄目だったら〈プロト-オセラリス〉の主任整備士だった三田さんにも縁がある、彼に連絡をつけてみるさ」

「そうですか」


俺の少し明るくなった顔を見て、ほっとしたようにリースは頷いた。本当にコイツには心配ばかりかけさせているような気がするな、俺は。


「心配するな、何とかなるさ」


俺は意図的に軽い口調で言った。根拠など何もなかったが暗い顔をしていればリースが心配する。考えて見ればコイツの方が余程大変なんだ、自分は狙われ、母であるナギさんは亡くなり、自分の身体の変化に戸惑っている。

なのに兄である俺が辛気臭くなってリースに心配されたら立つ瀬がない。俺は・・・こいつの前では格好良いおにいちゃん、頼れるおにいちゃんでいたい。それが俺を頼ってくれる“妹”に対する精一杯の出来ることだと思うから。




─ 同日午後 日本三鷹 渡良瀬教授の家 ─

しばらくすると渡良瀬教授と水上さんが帰ってきた。早速水上さんはリースを連れ着替えに他の部屋へ移動した。俺は教授にアスカの事を聞いていた。


「アスカは君たちを支援してくれるそうだ」

「そうですか。ですがアスカとしては何かしら見返りがないと」


アスカはあくまで企業だ、慈善でそんなことをするはずがない。だとすれば何かしら見返りを求めてくるのは必然だった。


「私が聞いている限りでは君は機動兵器のテストパイロット、リースはワンマンオペレート艦の建造について携わってもらうと言っていたが。君はそれで構わないのか?」

「向こうがそれで良いというなら構いません。できれば向こうの情報網を使って今回の事件の裏もとりたいと思ってます」

「その方が良いだろう。だが君の心は満足か?」

「・・・」


教授の言葉にドキリとする。満足な訳がない、俺とリースの大事な人を殺されたのだ。できればリースをアスカなり教授に預け、俺一人で相馬を追い、必ずヤツにナギさんが受けた痛みを与え復讐を遂げる。そういう気持ちがある事を否定できなかった。だが、そうなったらリースは必ず俺についてくるだろう、それが彼女の希望でもあるからだ。


「君たちの人生だ、後悔しないように考えたまえ」


教授の問いに答えられなかった俺の顔を見て彼はそう言った。


「明人さん!」


声をかけられ振り向くと着替え終わったリースが立っている。白いタートルネックのふわふわしたセーターにチェックのロングスカートというおとなし目の格好で長い銀髪は三つ編みにされ前に垂らされていた。いつもと違うその姿に少し動揺したが顔には出なかったようだ。


「終わったのか?」

「はい、どうでしょうか?」

「良く似合っているよ」


いつも通りの返事をする、リースもいつも通りのニコニコ顔。

俺たち2人を見ていた教授が声をかけてきた。


「じゃあ、私たちはすぐに荷物を纏めてアスカに行くよ。研究が奪取されている、一刻も早く研究を再開したいからね。それと君たちはどうする? 一緒だとアスカの担当にも会わせられるので良いのだが」

「そうですね、その方が手間がはぶけて良いかもしれません」


教授はすぐにでも研究を再開したいようで水上さんを助手にして早速荷造りを始めている。俺たちはほとんど荷物がないので教授の荷物の手伝いと機材の搬出を行った。

予め教授が呼んでいたトラックに地下室から運び出した機材を乗せると俺たちは一足先に千葉・新幕張にあるアスカインダストリー本社へ向かった。助手席に座ったリースは久しぶりに長時間乗る車に嬉しく思っているようで物珍しげに風景や街並を見ていた。





─ 西暦2121年1月5日 日本新幕張 明人 ─

途中、渋滞に巻き込まれもしたが首都高と湾岸道路を使い無事にアスカインダストリー本社に着いた。教授と水上さんはアスカの担当者に電話をかけ、これからの予定を聞いていた。話が終わったようで教授は電話を切ると申し訳なさそうに俺とリースを見た。


「どうも先方が立て込んでらしくてね、研究所の移設の件を先に片づけたいそうだ。君たちに会うのはその後で時間を取りたいそうだが・・・どうする?」

「そうですか、仕方ありません。俺たちも知り合いがいますのでそちらに連絡を取ってみます。機動兵器の担当者で三田さんと言うのですが」

「そうか、話が終わり次第君たちの所へ行くよ」

「分かりました」


教授は水上さんを伴うと本社ビルに入っていった。


「じゃあ明人さん、私たちも」

「ちょっと待ってくれ」


携帯を取り出し三田さんから貰った名刺に書いてある直通番号に電話をした。数回呼び出し音が鳴った後で受付が出る。


「はい、機動兵器開発部です」

「あ、桜樹明人と申しますが三田さんはいらっしゃいますか」

「三田ですね、少々お待ちください」


保留音が聞こえ、数秒もしないうちに目的の三田さんが出た。


「はい、三田です。大佐、家が火事にあったと聞いて吃驚しましたよ、ご家族の方は・・・残念です」


リースが誘拐された事件は“真紅の夜明けライジングサン”と日本政府がただの火事として処理している。ベータ、ガンマの誘拐にしても厳重に緘口令が引かれ内密にされていた。こういった処理になったのはプリムローズの存在を今、公表する訳にはいかなかったからだ。ましてやそのプリムローズが誘拐されたとなったら大騒ぎになるだろう。

そのため彼女の目には黒いコンタクトがはめられ真紅の瞳を隠している。


「心配してくれてありがとう、何とか命拾いをしました」

「で、今日はどうしたんですか?」

「いま、アスカ本社ビルの方にいるんです。今日からアスカにやっかいになります」

「あ、話は来てますよ! いや〜大佐に来ていただけると機体開発が進みます。じゃあ今から迎えに行きます。テストパイロットになるならうちの職場を見てもらった方が良いでしょう、開発主任にも紹介しないといけないですし」

「わかりました」

「では10分ほど待ってください、すぐ迎えに行きますんで!」


電話を切り近くにあった自動販売機で缶コーヒーを2本買い近くにあるソファーに座り、1本をリースに手渡すとカコンと蓋を開けて飲む。彼女は手の中にあるコーヒーよりもロビーの中を行き来する人を見て感嘆していた。


「珍しいのか?」

「ええ。いろいろな方の表情やファッションなどが見られますし。あ、あの色の服、綺麗ですね」


リースの言葉にその人を見る。どこかで見覚えのある顔だったが一瞬だったので確認できなかった。俺の記憶が確かならあれは・・・紗々羅ちゃんに見えた。

どういう事だ? 行方不明になっている桜樹周作おじさん一家がアスカにいるというのだろうか。俺がそんな事を考えているとリースが心配そうに声をかけてくる。


「明人さん?」

「いや、リースが指した女性なんだが・・・知り合いに似ていたんでな」

「そうですか、どういった関・・・」


リースが表情を改め俺に聞こうとした時、自動ドアを開き三田さんが入ってきた。油で汚れたつなぎを着て、スーツ姿の多いロビーで思いっきり浮いていた、受付嬢が何この人みたいな目で見ているし。

俺は手を挙げて三田さんに合図する。それを見た彼が小走りで俺たちの元へやってきた。


「大佐、お待たせしました。あれ? こちらの方は」


三田さんが惚けたようにリースの顔を見ている。


「ああ、知り合いの娘なんですが、いろいろと事情があって今は妹になっています。リースって言います」

「はじめまして」


リースはいつも通りのにっこり顔で会釈する。


「はぁ〜、めんこいおなごだなやぁ〜」


リースの顔を呆けたように見ていた三田さんだっが、出てきた声がいきなり方言になっていた。相当動揺しているのかな三田さん。


「めんこい? おなご?」


リースが不思議そうに首を傾げている。仕方なく俺は説明する事にした。


「めんこいは可愛いとか美しい、おなごは女性の事だ」

「そうなのですか? ありがとうございます」

「あ、いえいえ」


三田さんに賞賛されたというのが分かったリースが深々とお辞儀すると彼は慌てて視線を逸らして俺を見た。


「じゃ、じゃあ大佐。職場に案内しますので」


頬を染めた三田さんは慌てて顔を背けると俺とリースを連れ駐車場に向かった。



─ 西暦2121年1月5日 アスカ機動兵器開発部 明人 ─

明人とリースは三田が乗ってきたエレキカーに乗りアスカインダストリー本社から10分ほど離れた工場区画にやってきた。手前には東京湾が見え環境的にはなかなか良さそうな場所だった。沖合いには駆逐艦がゆっくりとした速度で湾外に向けて進んで行くのが見えた。


工場の駐車場にエレカを止めると明人とリースを連れ三田は工場棟にあるドアの前に立った。首から提げていたカードを使いドアの脇にあったスリットを通し、左手の親指をセンサーに当てると鈍い音と共に鍵が開く音が聞こえ工場の中につながるドアを開けた。

その途端、工場内部の騒々しい工作音や人の声が耳に飛び込んできた。リースは軽く耳を押さえたが数瞬で馴れたようで押さえるのをやめた。


「大佐、なるべく早くキーをお渡ししますんで」

「了解です」


明人は返事をして回りを見回す。工場内にはいたる所に工作機械が置かれパーツが作られている。三田は明人たちを誘導しながら一つ一つを丁寧に説明していった。明人とリースの2人は普段では見られない光景を興味深く眺める。

時々明人とリースが質問して三田が答える、そういう事を繰り返していく内に工場の最奥にやってきた。そこには明人がテストを勤めていた〈プロト-オセラリス〉があった。その姿を見たリースが感嘆の声をあげる。


「うわ、大きいし真っ黒ですね。明人さん、これが機動兵器なんですか?」

「ああ、〈プロト-オセラリス〉って名前だ」

「そうなんですか、格好良い名前ですね」


リースは初めて見る機動兵器に興味深々といった感じで足元に近づいていった。上を見上げながら足元をぐるりと回り、漆黒の装甲を恐る恐るといった感じで触っている。その様子を横目で見ながら明人は三田との会話を進めていく。


「大佐に行って貰ったテスト結果で〈プロト−オセラリス〉の操縦系を改修しているんですよ。電子変換リアクトは残念ながらお蔵入りとなってしまいましたが」

「そうなんですか、機体反応が速くて俺は良かったんですけどね」

「そう言ってくれるのは大佐だけですよ、普通の兵士ではとてもとても」


明人の言葉に苦笑した三田はハッチを開けコックピット内部を改修している胴体部を見上げた。そして彼は〈プロト〉の傍にいたリースに向けて歩み寄り色々と説明していく。


明人は漆黒の機体〈プロト-オセラリス〉を見上げた。鬼面を模した顔にある紅いデュアルアイに光はなく機体が稼動していない事が確認できた。


(あの時、コイツを乗りこなせていれば。最終テストで相馬の操る〈エステバリス〉の攻撃で左腕に被弾さえしなければ・・・左腕がいつも通り使えていたら俺は相馬に勝てたのだろうか? そしてナギさんやリースを護れたのか)


今更考えていてもしょうがない事が何度も明人の心を過ぎる。あの時ああしていればというIFが無意味だというのは分かってはいたがどうしてもその考えから抜け出せなかった。堂々巡りをしていた明人を正気に戻したのはリースを連れた三田の行動だった。


「今は機体設計が終わっている状態なので先に工場の方を案内していますが、今度は設計室の方を案内します。確か主任はそこにいたと思いますので」


三田は奥へつながるドアを開けようとした所でいきなり開いた。そのタイミングの良さに彼は慌てて手を引っ込めた。


「うわっ!!」

「お、三田じゃねえか、何処に行っていたんだ。〈プロト〉の整備が終わってねえぞ」

「す、すみません主任。あ、彼らを迎えに行っていたんですよ」


ドアから出てきた男はアスカのロゴが入った白いツナギを着ており腰には各種ツールをぶら下げている。メガネをかけた神経質そうな顔を明人たちに向けた。


「そうかアンタが。三田、ごくろうだったな」

「いえこれも仕事ですから。あ、主任。こちらが桜樹大佐、隣りは妹さんのリースさんです。じゃあ紹介します、この人が〈オセラリス〉シリーズの開発主任の・・・」

「ちょっと待った!! そこから先は俺に言わせろ」


つなぎの男は三田を黙らせズイっと押しのけると明人とリースの前に立つ。


「俺が瓜畑誠也だ。ところでそこのお嬢さん」

「はい?」


瓜畑と名乗った男は明人を無視しリースに声をかけ、値踏みをするように上から下まで眺めまわした。自分の顎に手をあてフンフンと言った感じで頷いている。その様子にリースは怪訝そうに彼を見ている。


「サイズは85、54、80か。すげえプロポーションだな。これなら・・・
あの衣装も似合うかもしれんな

「・・・あの。なぜ見ただけで分かるのでしょうか?」


リースの疑問も当然だろう、今の彼女の服装はゆったりとしており、シルエットを見てサイズを推測できないのだ。


「それはな、お約束だからさ」


ふっといった感じで気障に笑う瓜畑。これで歯が光ればどこぞの会長・・・・・・に匹敵するかもしれない。それに何がお約束なのか謎である。

そのやり取りを見ていた明人は頭が痛くなった。同じように隣で呆れて見ていた三田を肘でこづき聞いてみる。


「おい三田さん。この人はいつもこうなのか?」

「ハァ、まあ」


明人の問いに煮え切らない答えで返した三田の顔には“毎度の事です”としっかり書いてあった。


「失礼な事を言ってんじゃねえよ、三田。俺はな、“美”を追究するのに余念がないんだ! 俺のりりーち・・・」


瓜畑は高々と主張していたがリースが腕を組むように胸を隠し、じとーっとした目で自分を見ているのに気がついた。彼女の視線に気圧されたのか瓜畑は慌てて咳払いをし話題を変えた。


「げふんげふん。ま、それはおいといてだ。アンタは〈プロト-オセラリス〉に乗っていたテストパイロットなんだよな?」

「ああ、一応はそうなっている」


明人の曖昧な返事に顔をしかめた瓜畑は三田に詰め寄った。えり元を掴みガクンガクンと前後にゆする。


「一応? おい三田、大丈夫なんだろうな」

「だ、大丈夫ですよ。大佐の反応速度や技術はそこらへんのテストパイロットより上ですから。そ、それよりく、首を絞めるのはやめれ・・・」

「あの、瓜畑様? 三田様が酸欠状態なのですが。あと1分21秒で死亡されます」


見る見る青くなっていく三田の状態を見たリースが酷く冷静に状況を報告している。

その言葉に瓜畑は三田の首を絞めあげていた手を慌てて離した。

ぜいぜいという荒い息を吐きながら瓜畑に文句を言う三田。


「し、死ぬかと思った・・・ひ、酷いですよ、主任」

「お、わりいわりい」


さすがに悪いと思ったのか瓜畑は素直に頭を下げた。三田は喉をさすりながら持っていたバインダーを瓜畑に渡す。それには明人の運用実績が様々なデータと共に書かれていた。受け取った瓜畑は念入りにチェックしていく。


「へえ、良い数値じゃねえか。ウチのテストパイロットより良いな。これなら〈オセラリス〉を使いこなせそうか」


瓜畑の出した名前から〈プロト〉が抜けている事に気づいた明人が聞いた。


「〈プロト〉じゃないのか?」

「ああ、あれは間に合わせだからな。俺が言っているのはこっちだ」


瓜畑は明人達を連れ〈プロト〉の整備ブロックの反対側にあるハンガーへ向けて歩いていく。周りにいた整備の人間に合図し、用意されていた物に近づき、保護用の布を引っ張り中にあった物を見せた。


「こいつが本当の〈オセラリス〉だ」


瓜畑の言葉と共にはらりと布が舞い、同時にスポットライトが上から照射される。何気に演出が凝っていた。


〈プロト-オセラリス〉と同じ漆黒に染められた機体は、若干人型の比率を外れたデザインも変わっていない。試作機にありがちな、線が多いデザインは整理され〈プロト〉よりシンプルになっていた。〈プロト〉と違っているのは国を護る“正義の味方”には見えないと言われた刺々しいデザインが丸みを帯びたデザインを使用する事で弱められている点だ。

その中でもっとも違っているのは胸部デザインで、角ばったデザインから被弾係数を考慮した丸みを帯びた物に変えられていた。それと背後には高出力ジェネレータを搭載した為、必要が無くなった重力波受信ユニットが取りはずされ、代わりに大型重力波スラスターが取り付けられA D F Sアンチディストーションフィールドソードが占めている。

明人はその姿を見て先ほど見た〈プロト〉との違いを口にした。


「〈プロト〉よりシンプルになっているし悪役度が下がったな」

「ああ、日本政府のお偉方が“正義の味方”には見えないって言うんでな。“正義の味方”らしくないので兵の士気が落ちると言われちゃあな、変えざるを得ないだろ。俺としては不満だが仕方なくデザインを変えた」

「人を殺す兵器に正義などあるものか」


明人は軍首脳部の言っている主張を鼻で笑い飛ばした。


「分かっているじゃねえか。俺たちが造っているのは人殺しの機械だ、どんなに正義の味方らしいデザインにした所でその事実には変わりがねえ。そんなトコに拘られて選考から落とされたんじゃ洒落にならねえからな。まあ、軍の言っている事も一理あるのは分かっているんだが」


瓜畑はボリボリと頭を掻いて〈オセラリス〉を見上げる。そして明人の方へ顔を向けると真面目な顔をして聞いてきた。


「アンタはコイツを乗りこなせるか?」

「分からないな、取りあえず〈プロト〉との違いは?」


明人も〈オセラリス〉を見上げる。新しい機体を前に明人の心は若干浮き足立つ。


電子変換リアクトを外しちまったからな。機体の反応速度は〈エステバリス〉や〈アルストロメリア〉とさほど変わらねえが高出力ジェネレータからのパワーがある。ブースターなしでレールカノンが使える出力だ、多少ピーキーな機体だが無理がきくぜ。

それと〈オセラリス〉2号機は上からアンタ用にチューニング依頼が来ている。アンタ専用に合わせるから多少反応速度も上げられるはずだ」


瓜畑は先ほど三田から渡されたバインダーを覗き込んで言う。


「俺用に?」

「ああ、何をする気か知らねえが、貰った仕様書はほとんど実戦用だな」


明人は実戦用という言葉が気になった。テストパイロットの名目で雇われる自分に実戦ばりの機体が与えられる意味が分からない。そのままの意味で取れば〈オセラリス〉と共に戦場に送られるという事になる。まだ実戦は早いんだがとぼやいている瓜畑を見た後、さらに奥にあるハンガーにあった機体を見つけた。


「瓜畑主任、あの機体は?」

「ん? ああ、アレか。アレは俺が趣味で作ってる機体だ。一応〈オセラリス〉の試作3号機なんだが・・・相転移機関を積む予定でいじっている。アンタが〈オセラリス〉を完璧に乗りこなせるようになったらコイツを試してみてくれねえか?」


瓜畑が顎をしゃくったその先には6本腕・・・の異形がいた。ほとんどフレームのみだったが特徴的な多数の腕は確認できた。人型のメインの腕とその背後から出ている4本の長い腕。


「ま、お約束のMk2メカってやつで名前は〈ブラック-オセラリス〉。〈オセラリス〉と名はついているが全くの別物と言っていい。流用しているのはフレームだけだが、それも精錬したルナニウムに変えて強化しているから別物と言っていいだろうな」

「ルナニウム?」


聞きなれない単語に明人が瓜畑に問う。


「ああ、月で産出された鉱石を製錬した金属素材だ。宇宙戦艦用に開発された装甲材なんだが、量産が始まったばっかりでな、割当てが厳しいのと量が造れてねえんだ。ま、しばらくすればそれも解決するんだけどよ。そんなこんなで未だフレームのみだ」

「コンセプトは? それに何故6本の腕が必要なんだ」

「高速・重装甲・強武装」

「そういった機体は存在しないし、中途半端になるだけじゃないか?」


過去そういったコンセプトで作られた機体は多いが使い物にならない物が多かったのを知っている明人が指摘する。


「言ってくれるじゃねえか。〈エステバリス〉や〈オセラリス〉が“通常艦艇”だとしたら〈ブラックオセラリス〉は人型機動兵器の中の超兵器を目指しているんだ。腕が6本なのは〈オセラリス〉の設計を更に推し進めた結果だ。プリムローズの技術を転用した自立型AIがサブアームを制御し背面・側面から攻撃に対応することでパイロットは前面の攻撃に集中できる」


瓜畑は未だ白骨のようなフレームに近寄り愛着を込めてポンポンと叩く。その顔はリースにちょっかいをかけていた時とはまったく別人のようだった。



「主任、困りますね。そういう事を内密でやられては」




いきなり声をかけられた瓜畑はびくっと身体を震わせると恐る恐る声の方向を見た。それにつられ明人たちもそちらを向く。



「げっ、黒須に会長! なんでこんなトコに」

「別に貴方に用があった訳ではないのですけどね、そちらの2人にね」


瓜畑に“会長”と呼ばれた長い黒髪をした20代中頃の女性が答えた。仕立ての良いライトブルーのスリーピースを着、嫌味にならない程度の貴金属をアクセントにして品良くまとめていた。


「ですが瓜畑主任、説明はしていただけるのでしょうね?」


チョビ髭でメガネをかけ赤いベストを着た40代と思われる男がメガネを光らせ瓜畑に説明を求める。


「いや、なんていうか・・・はははは」


黒須と呼ばれた男の追い込みに瓜畑はじりじりと後退していく。このまま遁走に入りそうだった。


「黒須、それは後で良いでしょう。今はこの2人に用があるはずですが?」

「申し訳ありません、カグヤ会長」


2人の様子を見かねた会長と呼ばれた女性が間に入り、明人とリースを見た。

黒須はカグヤに向けて頭を下げる。


「貴方が“異形の黒”?」

「自分でそう名乗った訳じゃない」


カグヤの問いに明人はぶっきらぼうに答えた。その口調にむっとなるカグヤ。

会長の機嫌が悪くなったのを見てとった黒須がフォローを入れた。


「会長、まずは場を移しましょう。」

「・・・そうですね。瓜畑主任、応接室を借りますよ」

「あ、ああ。こっちだ」


瓜畑はそのやり取りを冷や冷やして見ていたがカグヤの言葉に、応接室へ案内をはじめる。明人とリース、カグヤ、黒須が後に続いた。





─ 同日 アスカ機動兵器開発部応接室 明人 ─

瓜畑に案内され応接室にやってきた明人、リース、カグヤ、黒須、瓜畑は各々ソファーに座った。

全員が着席したのを確認したカグヤが黒須に向かい、説明をするように促す。


「黒須、説明を」

「は、では手短に説明いたします。桜樹大佐ですが、一応テストパイロットという肩書きで貴方を採用します。ですが貴方とリースさんにはワンマンオペレート戦艦〈エグザバイト〉と機動兵器〈オセラリス〉を使用していただきます。仕事ですが傭兵としてテュランヌスの残党狩りを行ってもらいます」


黒須の言葉に瓜畑が割り込んだ。


「ちょ、ちょっと待てよ、黒須。俺は〈エグザバイト〉の技術アドバイザーもやってるが、アレはプリムローズ専用艦だ、リースちゃんじゃ動かねえぞ。って、まさかリースちゃんがプリムロー・・・」

「瓜畑様」


リースは瓜畑の言葉を遮り、両目にはめていた黒いコンタクトを外した。

瓜畑の目の前にあるのはルビーのように輝く真紅。


「なっ! 瞳が真紅だと・・・じゃあリースちゃんは本当にプリムローズだってのか!!」

「はい」


信じられないような面持ちでリースを見つめる瓜畑。その言葉にゆっくりと頷くリース。

メカに詳しく、鋭い観察眼をもつ瓜畑でも彼女が人工生命体という事に気づかせない、そのくらい自然に振舞っていた事に彼は驚愕したのだ。


「資料は読んでますが実物は私も会長も始めて見ますがね」


黒須とカグヤも多少の驚きをもってリースを見ている。

そのやり取りの間に明人は黒須の言葉の意味を忖度し理解した。


(テュランヌス相手に実戦で〈エグザバイト〉と〈オセラリス〉の真価を、命がけのデモンストレーションを行えという訳か。しかしテュランヌスは壊滅したはずだ、今更何を考えているんだ、アスカは)


「気に入らないな、俺たちの命を使って〈オセラリス〉と〈エグザバイト〉の実戦データを取ろうって訳か?」


明人は顔を顰め、彼の冷ややかな言葉に黒須はにこやかな笑みを浮べて頷く。その笑みは腹に一物も二物も持ってそうな油断のならない笑みではあったが。


「一つ聞く。なぜ今頃になってテュランヌスなんだ?」


明人は黒須に向かって問うた。

テュランヌスは影護四補との最終決戦で指導者のクルーガーを失い瓦解したはずだった。仮に代わりの指導者が現れたとしても、大部分の艦艇はレジスタンス連合に駆逐され、残党は残っているものの軍事組織としての復活は容易でないはず。なのにそのテュランヌスを追い、戦えという。


「実はですね、壊滅したはずのテュランヌスが活動を開始しているんですよ」

「なぜそんな事を知っているんだ?」


明人はいぶかしげに黒須を見る。アスカは日本最大、世界有数とは言えただの重工会社のはずだった。


「アスカは表向き重工会社になってますが、それだけではありません。内部には優秀な組織を持ってますのでね。それに世界各地に支店や工廠がありますから情報が舞い込んでくるんですよ。

ま、そういう訳で彼らが我社にちょっかいをかけてきているという訳で。おかげで我社の研究施設や工廠が幾つか襲われ破壊、優秀な人材が殺されたり誘拐されています。

おまけに背後にはマーストリヒの影がちらちら見えている。このまま放置しておくとアスカの権益が損なわれますので。我が社の新鋭兵器を用いて駆逐、さっさと歴史から退場していただこうかと。

貴方は超兵器大戦を生き延びたベテラン、テュランヌスに対してのスペシャリストです。おまけに機動兵器のパイロットとしても優秀。この人選には自信があるんですがね」


そう言って黒須はくいっとずれた眼鏡を押し上げた。


「それともう一つ。この情報を聞いたら貴方はこの提案にイエスと言わざるを得ない。それでも聞きたいかしら?」


黒須の隣に座って話を聞いていたカグヤが明人に追い討ちの情報を持ち出す。


「どういう事だ?」


明人はカグヤの思わせぶりな言葉にさらに顔を顰めた。



「【蜃気楼】」




カグヤは立ち上がりつつ短くその名を告げる。


「おい、その名は!」


カグヤの言葉の意味を理解した明人は大きく目を見張りガタリと音を立てて立ち上がった。


カグヤはふふんと鼻を鳴らしながら明人を見た。黒須とリースも後に続き立ち上がる。


「どう? 【蜃気楼】がテュランヌスの新しい総帥。この名前を聞いて貴方は断ることが出来るかしら?」


カグヤの挑戦的な視線と言葉がさらに続いた。明人に対して悪意とも言えるような口調だった。明人はギリギリと歯を噛み締め他人に操られる不快さに耐える。いつも自分は流され、いつの間にか事態にはまり込んでいる事を感じていたので尚更だった。


「大佐にとっては良い取引だと思ますけど? 貴方はご自分の復讐を遂げる為の“剣”と“鎧”が手に入る、私たちアスカはテュランヌスやマーストリヒ相手に〈エグザバイト〉〈オセラリス〉の実戦データを後の製品に反映できる。本当でしたらここまでして差し上げる義理はないのですが。

では色よい返事を期待してますわ」


カグヤはそう言い捨てるとドアに向かって歩きだすが思い出したように振り向き明人に声をかけた。


「それと貴方には罪を償ってもらいます、自身の命を賭けてね」

「罪・・・だと? どういう事だ!?」


明人はカグヤに言われている“罪”の意味が分からなかった。


「理由、ですか? 分かっているのではなくて? あの子を・・・瑞葉を守れなかった癖に!」


「・・・ッ!!」


カグヤの叫ぶようなその言葉に明人は愕然とした。

“瑞葉”という名前と共にカグヤがナギの、いや御劔瑞葉の大学時代の友人だった事を今更ながら思い出した。


「瑞葉から連絡が来た時、本当に驚いた。あんな事に巻き込まれてなお生きていたのが分かった時は本当に嬉しかった。その時に瑞葉が言っていたわ、あの子は貴方の事を・・・信頼していた。なのに! なぜ貴方はあの子を守れなかったのよ?」


カグヤの目尻には涙が溜まり握りしめられた拳は震えていた。アスカインダストリー会長ではなく私人として明人を責めたてた。明人は黙ってカグヤを見つめているだけだった。


「本当に貴方は異形の黒なの? 女一人、護れないなんて・・・情けない」


容赦のないカグヤの言葉にも明人は耐える。彼女の言っている事は事実であり、それを否定できるものを何も持っていなかった。あの時、〈プロト-オセラリス〉が使いこなせていたら、左腕が使えていたらという仮定は言い訳にすぎないからだ。


「何とか言ったら・・・」


何も言わない明人に苛立ったカグヤは明人の目の前にやってくると平手打ちをしようと手をあげた。



パァン!!



応接室に頬を張る音が響いた。


明人は目の前の出来事が一瞬だが理解できなかった。

それほどまでに彼女の動きは素早かった。


リースがカグヤの前に立ち頬を張っていたのだ。


深紅の瞳を燃え立たせてカグヤを睨みつけていた。


「に、人形風情がわたくしに・・・・」


その言葉にほんの少し眉をしかめたリースだったが、人前で頬を打たれるというあまりの恥辱に真っ青な顔をしてリースを睨みつけているカグヤに向かって言葉を続けた。



「貴女のおっしゃる通り私は人形かもしれません」

「おい! リー・・・」


リースは明人の言葉を首をふる事で遮るとさらに言葉を続ける。


「ですが自分の力のなさを痛感し、それでもなお自分の命をかけて誓約を果たそうとする人を責めるような事は私にはできません。それに貴女が幾らアスカインダストリー会長でも・・・」


リースは俯き加減だった顔を上げると凛とした表情でカグヤを見つめて言った。


「私のマスターを、明人さんを侮辱する事は・・・私が許しません!」




「くっ、言わせておけば・・・」


どこの馬の骨とも知らぬ、人形風情に平手打ちを受け説教までされたのだ。半分逆上しかかったカグヤは屈辱に唇を噛みしめ反射的に手を挙げた。

一方リースはその視線と行動を真っ正面から見据え身じろぎどころか瞬き一つしないで受け止めようとしている。

カグヤは燃える上がるような深紅の瞳と自分を見据えるその顔に一瞬だが慨視感を憶えた。


(・・・え、瑞葉?)


自分と喧嘩した時に見せたあの顔、どこか見覚えのある表情だったが振り下ろした手はもう止められなかった。


格納庫に再びパァンという平手の音に続いて硬質な音が続いた。


今度は明人がリースの前に出てカグヤの平手打ちを自ら受け、かけていたサングラスが飛び床に落ちた音だった。


「あ、明人さんッ!」

「大丈夫だ」


「ですが!」



明人はちらりとリースを見るとカグヤに向き直った。それでも不満があったのかリースは鋭い視線をカグヤに向け明人に言い募る。



「リース!!」




鋭い叱責にリースはびくりと震え明人の顔を見て・・・悲しそうに俯いて言葉を洩らした。


「・・・申し訳ございません、出過ぎた真似をしました」


明人がただ叱っただけではない事をリースは理解している。

彼の声は鋭かったが悲しい響きがあったから。4年という短い時間とはいえ、明人とリースは一緒に暮らしていた。自分の兄とも慕う人間の言葉からそれが読みとれた、だから素直に引いたのだ。


「アンタが言う通り俺はナギさんを守りきれなかった、それは認める」

「あ、当たり前です」


カグヤは明人の底冷えする声と迫力に対してアスカインダストリー会長や自らのプライドを護るべく必死に虚勢を張ろうとしたが声が上擦ってしまった。


「だが俺はナギさんとリースを、俺の全てをかけて護ると決めた。アンタやアスカがリースを害する気なら・・・俺がお前たちを潰す」


明人の凄まじい殺気と気迫にカグヤや瓜畑、黒須たちは周りの気温が急激に下がったような気がした。


カグヤは目の前にいる黒い男を過小評価していた事に今更ながら気づいた。幾ら親友が殺され心が乱れていたとしても見誤ったとしか言いようがない。目の前の男は超兵器大戦を常に最前線で戦い、生き残ってきた本物のつわものなのだ。


その彼ですら瑞葉を護る事ができなかった。仮に自分がその立場にいたとして守り切れたかどうかは自信がない。

だがその事を認めるのはアスカインダストリー会長という立場や意地っぱりという性格から出来なかった。何より人形風情リースに説教をもらった事が許せなかった。


「くっ!」

「か、会長!」


カグヤは明人に対して何も言い返さず背を向けドアを開けると去っていった。その後を黒須が慌てて追いかけていく。明人は2人の背中を見送るとリースに向き直り声をかけた。


「リース」


明人の手がすっと伸びてきたのでリースはピクっと震え身を縮めた。


「すまんな」


明人の声はぶっきらぼうだが先程とはうって変わって優しい口調でそう言い、小さいリースを褒めた時のように頭を優しく撫でた。その行動に嬉しそうに目を細めていた彼女だったが、はたと気づくと不満げな言葉を漏らした。


「もう! 明人さん、コドモ扱いしないでください!」

「すまん、そういう訳じゃないんだが」


リースは少しだけ唇を尖らせ不満を言った。明人はその顔を見て駄々をこねた小さなリースの不満げな顔を思い出し苦笑を浮かべた。


「いや、リースちゃんだっけ。アンタ、会長の頬を張るなんてやるじゃねえか」


ことの成り行きを呆然と見ていた瓜畑がリースに声をかける。


「・・・つい、勢いで」


リースは瓜畑の言葉に自分が行った事を思い出したようで恥ずかしそうに俯いた。




─ 同日夕刻 アスカインダストリー会長室 カグヤ ─

「黒須、お茶をお願いします」

「は」


カグヤは黒須にお茶を命じクッションの効いた会長椅子に深く身体を預けため息をついた。

人形に打たれた頬が熱い。


(お父様にもぶたれた事がなかったのに)


その間に黒須が白磁のカップとティーセット、それに濡れたタオルを用意してきた。

濡れたタオルを頬に当て、カップから立ち上る芳醇な香りで少し落ち着いた。


「会長・・・いえ、カグヤお嬢様。申し訳ございません」

「黒須、なんの事ですか」

「あのプリムローズの事でございます」


その途端、カグヤは眉をしかめプイとそっぽをむいた。大会社の会長とも思えない幼い反応に黒須はほんの少し苦笑をすると話を続けた。


「聞きたくありません」

「今回こういう事態になりましたのは全て私の責任です」

「は?」

「あのプリムローズは・・・いえ出自を考えると“あの方”とお呼びした方がよろしいでしょうか」


カグヤはその言葉と内容に訝しげに会長秘書兼、鬼切丸家の執事を兼ねている黒須を見た。


「どういう事でしょうか?」

「あの方はカグヤさまのご友人・御劔様と英雄・影護様の遺伝子を使われております」


「そ、そんな!」



黒須の内容にカグヤは目眩すら覚えるほど動揺し手に持っていたタオルが床に落ちた。自分が“人形”と罵ったプリムローズが親友・瑞葉の遺伝子を使って造られている? 瑞葉はリースの事を話してくれたけどそんな事、一言も言わなかった。


「プリムローズの開発者・渡良瀬教授に確認いたしました。アスカシークレットサービスでも情報は得ていたのですが・・・教授に確認するまで確証が得られず、今までご報告出来ませんでした。申し訳ありません」


黒須はカグヤに向かって深々と頭を下げた。


「で、ではあのリースって子は!!」

「はい、まぎれもなく御劔様の遺伝子を継ぐ娘さんです。それとリースさんは御劔様の長女として登録されていました」


カグヤはあの時見えた概視感にようやく納得いった。どこかで見覚えのある表情と雰囲気。リースに瑞葉の遺伝子が使われているなら十分ありえる事だ。

でも私は親友の娘を、リースを“人形”と罵ってしまった。知らなかったとは言え自分の罪は重い。泣きそうな顔をして俯いてしまったカグヤ。小さい頃からカグヤを見ていた黒須は慈父のような微笑みを浮べながら諭す。


「カグヤお嬢様、もし先程の事を気にされているのでしたらアスカの会長としてではなく、御劔様のご友人として謝罪すれば良いのです。この場合、自分の非を認める事は恥ではありません」

「そうなのでしょうか」


カグヤは自信なさげに黒須を見る。


「貴女様が御劔様の事を心配していたのは本当の気持ちでしょう?」

「も、もちろん偽りなどではないわ! 今のアスカや私があるのは彼女と彼女の父・省吾おじさまのおかげなのよ。それに瑞葉には・・・」

「では、リースさんに謝罪して貴女様の本当のお気持ちを話してみてはいかがでしょう」

「それで許してもらえるのかしら」

「自信がありませんか?」

「・・・はい」


カグヤは素直に頷いた。黒須はカグヤの頭を優しくなでるとまっすぐその目を見た。


「あの方は御劔様が大切に育てた娘さんですよ、大丈夫です。御劔様の事は貴女が良く知っているでしょう?」

「・・・そうですね。あの子は人を恨むような事しないし、いつも自分で抱え込んでばかりいたから」


カグヤは死んでしまった親友のことを思い出す。孤立していた自分を級友たちの中に引っ張り込み、いろいろ世話を焼いたのだ。つまらなかった大学を楽しく過ごせたのは、やはり瑞葉がいたから。そして今でこそ日本最大、世界有数の規模になったアスカグループだが、当時、傾いていた実家を支援してくれたのは瑞葉と彼女の願いを聞いた父だった。


「わかりました、黒須。少し時間をいただきますね」

「はい、後の事はお任せください。会長が散歩をするお時間くらい、不肖この黒須誠吾がお作りいたします」

「では」


カグヤは黒須に向かってにっこり笑うと会長室のドアを開け、小走りにかけていった。黒須はその後ろ姿を嬉しそうに眺めていた。


(御劔様が死んだと聞いてから塞ぎこみがちだったカグヤの顔が明るくなってくださったか。願わくばリースさんが御劔様と同じようにお嬢様の良き友人になれれば良いのですが・・・)


黒須はそんな事を思いながら会長が不在で止まっている書類決済を始める為、自分のデスクに戻った。



─ 同日夜 アスカインダストリー本社ビル屋上 リース ─

寒空の下、リースはアスカビルの屋上に出ていた。真冬で空気が澄んでいるせいか星の煌めきが良く見える。地上40階立てのビルは高く、手を伸ばせば月や星に手が届くのではないかと思えた。大きく息を吸い軽く吐き出すと吐息は真っ白になった。


(・・・人形、かぁ)


再び白い吐息、今度は溜息かもしれない。


(本物の人形だったら肌に感じるこの冷たさも白い吐息も出ないのだけど)


そんな事を考えていたリースだったがふいに背後から声をかけられた。


「リース、そんな格好でいると風邪引くぞ」

「明人さん、私はプリムローズです。風邪なんて・・」


明人はリースに全てを言わせず頭を撫でると自分の着ている黒いコートの前を開け薄着のリースを抱きしめるように包み込んだ。その暖かさにリースの顔に微笑みが浮かび、明人との距離を近づけるようにコートの前を軽く引っ張った。


「暖かいです」

「そうか」


明人はそっけなく答えるとリースが予想していた通りの質問がきた。


「なあ、やっぱり・・・ついて来るのか?」


結局明人はアスカ側の要求を飲むことにしたのだ。支援を断れば自分の身を護ることすらできないのが分かっていたのもあるが、テュランヌスを、【蜃気楼】を追っていけば、いずれナギを殺した相馬やあの狂女・伐折羅バサラと合間見える事になる。やられっぱなしは自分の趣味ではない、彼らに殺されたナギやプリムローズたちの無念を思い知らせ復讐する。

リースを知っている明人にとってプリムローズは単なる生体処理装置などではなく普通の人間と変わりがなかった。

そして影護四補やあの大戦で散っていった英霊たちがなしとげ、ようやく平穏が訪れた世界を戦乱に巻き込もうとする【蜃気楼】とテュランヌスを倒し、再び自分とリースが平穏に暮らせる時間を作る為だった。


だが明人は自分の復讐にリースを巻き込みたくなかった。自分の手は超兵器大戦やリース奪還ですで血にまみれている。今更、その事実は変えられない。だがリースは血に染まってない、わざわざ自分についてきて染まる必要もない。

幸い自分に与えられた〈エグザバイト〉はワンマンオペレート艦でスーパーAI【タケミカヅチ】を搭載している、プリムローズなしでも何とか動かすことができるのだ。だがリースの返事はきっぱりと、それはもう誤解のないほどはっきりしていた。


「私が彼らに復讐を望むのです、明人さん」


リースは毅然とした表情で言いきったのだ。それでもなお明人はリースを留めようとした。


「ええ、もう決めました。明人さんの足手まといにはなりません」


その言葉を聞き明人は溜息をついた。


「そうか、意志は固そうだな」

「はい、頑固なのは母さん譲りですから」


リースはそう言って軽く笑った。


(確かにこういうところはナギさんにそっくりなんだが)


明人はリースの横顔を見てさらに苦笑を浮かべ諦めるしかなかった。刹那、後ろから人の気配を感じ瞬時に表情を引き締める。2人の後ろから足音が近づいてきた。





─ 同日夜 アスカインダストリー本社ビル屋上 カグヤ ─


(───やれやれ、妬けちゃうわね)


カグヤは屋上の入口からリースと明人を見て肩を竦めていた。

リースに謝罪する為に探し回りようやく見つけたのは良いのだが・・・2人の雰囲気に出る機会を逸してしまった。だがいつまでもこうして出歯亀をしている訳にもいかなかった。他人のラブシーンを見てのんびりしていられる程、アスカインダストリー会長は暇ではないからだ。

人も羨むアスカインダストリー会長職だったがトップは常に孤独というのを嫌という程思い知らされた。今の自分には瑞葉と共に作った友人たちはいるが心底、心を分かち合えるような人間、または異性がいない事にカグヤは思い至った。会長職という地位につき毎日を忙しく過ごしているカグヤにはそういった立場の異性はいない。それ故にほんの少しだけリースが羨ましく思ったのかもしれない。

そんな事を考えていたカグヤだったが意を決すると明人たちのそばに歩いていく。


「こんなところに居たのね」


その言葉に明人はカグヤに鋭い視線を向けた。


「なんの用だ?」

「貴方に用はないの、私の用事はリースに対して。少し席を外してもらえないかしら?」

「俺がいたら話せない事か?」


リースを害しようというなら即座に排除するといわんばかりの明人の口調は殺気すら混じっていた。先ほどと違い冷静になったカグヤは明人の殺気を受け流すように言葉を続けた。


「野暮な人ね。女同士の話に首を突っ込みたいの?」

「明人さん、心配していただけるのは嬉しいのですが・・・私は大丈夫ですから」

「・・・わかった」


リースがそう言うと明人は渋々といった感じで入口に向かって歩いていった。


「申し訳ありません、カグヤ様」


リースは軽く頭を下げた。明人の心配は嬉しかったが今はカグヤの話を聞く事が重要だと思ったのだ。


「さっきの事を思えば桜樹大佐が心配するのも無理ないわ」

「そうかもしれません。それで私にお話しがあるそうですが」


リースはまっすぐにカグヤの顔を見る。カグヤもひるむ事無くリースの真紅の目を見つめた。


「ええ、貴女に謝罪したくて。貴女が瑞葉の遺伝子から作られた娘さんって事を知らなかった。知らなかったで済む問題ではないけど・・・」


カグヤの泣き出しそうな顔とその言葉にリースの顔に困ったような表情が浮かぶ。


「ごめんなさい、貴女の事を“人形”だなんて言ってしまって」


深々とリースに向かって頭を下げるカグヤ。

その行動にリースは慌てた。まさか人間が、大会社の会長が兵器として造られた自分に頭を下げるとは思っていなかったからだ。ましてや先ほど自分を“人形”と罵った人間ならなおさらだった。


「そんな事をしないでください。あの時のカグヤ様の気持ちも分かりますから。逆にこちらからお礼を申し上げたいくらいです。母さんの事、心配してくださってありがとうございました」


リースもカグヤに向かって深々と頭を下げた。お互い下げた頭を上に上げたところで視線がぶつかりあってしまった。その微妙なタイミングに2人は自然と微笑が浮んだ。


「いいのよ、ナギには随分お世話になったし親友だったから。じゃあ仲直りってことで」


カグヤは握手をしようと手を伸ばした。リースもおずおずといった感じで手を伸ばしカグヤの白い手を握った。軽く数度振るとリースとカグヤは手を離した。


「話は変わるけど・・・リースは彼についていくの?」

「はい、もう決めたことです」


リースの顔は晴れやかだった。その表情にカグヤの形の良い眉がひそめられた。


「彼についていけば、当然戦闘になるわ。直接人を殺すかもしれないのよ?」

「私は・・・明人さんにそう命じられたなら躊躇なく殺すでしょう」


言葉と共にリースの目がすぅっと細められた。

カグヤはリースの言葉にあの兄馬鹿・・・な男が彼女にそんな事をさせるはずがないのをなぜか知っている。ちらりと後ろにある屋内につながるドアを見てからリースの言葉を否定する。


「それは有り得ないわね。兄馬鹿なあの人が貴女にそんな事させる訳ないでしょう?」

「あ、明人さん、兄馬鹿なのですか?」

「思いっ切り(即答)」

「ですが・・・兄馬鹿って・・・なに?」


リースは人差し指を頬の当て可愛らしく首を捻りカグヤに質問をした。カグヤはあの黒い男の顔を思い浮かべておかしさを堪えてリースの質問に答えた。


「兄馬鹿っていうのはね、妹が可愛くて可愛くてしょうがないお兄ちゃんのこと」

「そ、そうなんですか。でもでも、ぶっきらぼうですし、いぢわるなのですけど」

「はぁ・・・照れているだけよ。リースはあの人の事、好きなの?」

はぅ! でもでも明人さんはおにいちゃんだし、歳も離れているし、アタシ、コドモっぽいし、母さんみたいに大人の魅力ないし・・・


カグヤの言葉にリースは顔を真っ赤にして俯き両手の人差し指をツンツンと合わせて何やらもしょもしょ言っている。普段の冷静な、オツにすませたリースとは思えない幼い反応にカグヤの顔に微笑が浮ぶ。


そんな幼い彼女を自分の会社の為に利用しようとしている。それがリース自身の願いであったとしてもカグヤには憂鬱なことだった。


それと同時に瑞葉に逢いリースが話題になった事を思い出した。

その時にナギが言っていた“リースはもう一人のアタシ”というのが比喩でも何でもないことにようやく気づいた。




─ 西暦2120年10月20日 アスカ会長室 ─

カグヤと瑞葉はアスカの会長室にいた。大佐とリースは水族館で遊んでおり彼女一人でカグヤに逢いにきたのだった。2人はカップを片手にここにはいない明人とリースの事に花を咲かせていた。


「リースはね、明人クンの事を好きになるよ」

「どうしてそんな事が分かるの? まさかそうなるようにプログラミングしているとか」


カグヤは訝しげに瑞葉の顔を見る。大学時よりやつれてはいたが浮かべる笑みは当時よりずっと優しかった。


「そんな事しなくてもあの娘は自分の意志で彼の事を好きになると思うから」

「でも大佐は貴女の事が好きなんじゃないの?」


明人の事をいろいろ聞いていたカグヤは呆れたように呟く。その手の経験が少ないカグヤだったが、どう考えても明人のナギに対する好意は疑いようがないからだ。


「どうかナァ? 明人クンちょっぴし天然な所あるからはっきりと断言出来ないケド。でもアタシの事を大切に想ってくれているのは良く分かるんだ。女冥利に尽きていると思う」

「じゃあ・・・」


瑞葉の幸せを望んでいるカグヤは身を乗り出したが瑞葉は顔を軽く振り彼女を押し留めた。


「待って。アタシはね、今でも四補さんが好きなの。でもその気持ちを持っているアタシは明人クンの想いに応えられない。だけどリースは・・・言ってみればもう一人のアタシだから」

「はぁ・・・相変わらず貴女は損な性格をしているわね」


カグヤは呆れたように溜息をついてカップを手にする。


「そうだね、分かっているケド」


瑞葉も苦笑を浮べカグヤと同じようにカップを取り上げ紅茶を一口飲んだ。


「でもね、明人クンがアタシを大事に想ってくれるようにアタシも明人クンの事を大切に想っている。だからもう一人のアタシ、リースは異形の黒明人クンの為に存在している、彼だけのPrincess of Darknessお ひ め さ まなんだヨ」




─ 西暦2121年1月5日夜 アスカインダストリー本社ビル屋上 カグヤ ─

リースは少し上目づいかいにカグヤを見る。


「あの・・・カグヤ様? 今の質問ですけど・・・お答えしないとダメでしょうか?」


ようやく動揺が収まったのか口調が元の調子に戻っている。


「カグヤ様はやめて、さんづけにしてね」

「分かりました、カグヤさん」

「ま、少し意地悪な質問だったかな。別に答えなくても良いわ。平手打ちのお返しだから」


そういってカグヤはリースに向けにっこり笑った。


「はぅ・・・申し訳ありません」


しょぼんとしてしてしまったリース。

本当に表情が豊かで彼女が本当に人造生命体なのかと未だに信じられない気持ちだった。もしかしたら皆で自分をからかっているのではないかとさえ思える。だが信頼するASSが調べた彼女は確かにプリムローズとなっていた。



─ 同日夜 アスカインダストリー本社ビル屋内 ─

「・・・兄馬鹿、だったんですか?」


ドアに背中を預けていた明人に向かって、同じような格好で隣にいた黒須が声をかけた。その声はおかしさでほんの少し震えている。超兵器大戦時には“異形の黒”と恐れられ、現在は黒いテロリストと呼ばれる男が実は兄馬鹿というギャップゆえに。


「さぁね」


明人は憮然とした表情で寄りかかっていたドアから離れると黒須に背を向けて去っていく。


「最後まで聞かなくて良いんですか?」

「大丈夫なようだしな」


黒須の見えなくなったところで明人は頭をガシガシと掻き毟り苦笑を漏らした。


「やっぱり・・・兄馬鹿なのかな、俺」


相変わらず自覚のない兄馬鹿な男は・・・やっぱり鈍かった。



─ 同日夜 アスカインダストリー本社ビル屋上 カグヤ ─

「ではプライベートな話はこれで終わりよ。お詫びといってはなんだけど・・・先ほどの支援の話以外に貴女の希望はある?」

「私・・・ですか? それではアスカシークレットサービスの中で一番射撃の上手な方を一人お貸しいただけないでしょうか?」

「ASSの?」

「はい、明人さんの援護をする為に射撃の訓練がしたいのです。渡良瀬教授に確認したところ、アスカにはスキルプログラムがあるそうなので」


リースは表情を引き締めるとかねてから決めていた事をカグヤに頼んだ。


「はぁ、本気なのね。それにしても教えてもらうのは大佐じゃなくて良いの?」

「ええ、私がこのような事をすると・・・きっと良い顔されないと思いますから」


リースは悲しそうに顔をそむける。カグヤはそういう素直になれないリースを見ているとナギそっくりだと思う。リースの本当の希望は大佐に教えてもらいたいのだ。ただ大佐の気持ちを考えるとお願いなどできない。かつ、このまま何もしなければ自分が足手まといになる事を憂えたリースが下した結論なのだろう。


「ナギにそっくりね、そういうトコ」

「え? どういう事でしょうか?」

「それはね、自分で考えなさい」

「??」


リースは小さく首を傾げた。


「じゃあASSの件は分かったわ。明日、貴女の元に行かせるから」

「はい、分かりました」


カグヤの物言いに首を傾げて考えていたリースだったが自分の頼んだ事が受け入れられたのが嬉しかったようでぱっと表情が明るくなった。


「じゃあね」

「はい、おやすみなさいませ」


カグヤを見送ったリースはまた夜空を見上げる。

さまざまな色に輝き、きらめく星光がリースの端正な顔を照らす。その柔らかな光とは対照的にリースの顔は無機質な白い人形のように見えた。人にあららざるヒト、人工生命体プリムローズは口元にほんの少しだけ無機質な笑みを浮べ、その煌く星々をずっと見ていた。




− あとがきという名の戯言 −

ども、作者っす。最後まで読んでいただきありがとうございます。

前回の第7話を投稿した時点で8・9話は70%ほど書き上がっていたんですが途中で話が進まなくなってしまいました。気分ばらしにパソコンの奥にあった昔のエロゲーを引っ張り出して遊んでました(笑)。ただ遊んでいた訳じゃなくキャラ作りや言い回しなどを気にしてプレイしていた訳で(言い訳)。そんなこんなでふと気づくと半月も更新せずにいましたm(__)m


で、ようやくアスカの内部にまで話が進みました。残り1か2話で外伝第一部、〈エグザバイト〉〈オセラリス〉を得た明人とリースの旅立ちとなり終了になります。


さて、初登場は漫画版ナデシコで登場したカグヤ・オニキリマルが若きアスカ会長、プロスペクターのパチ者(笑)でオニキリマル家の執事兼秘書である黒須誠吾、〈オセラリス〉シリーズの開発主任としてお馴染みマッドな技術屋・瓜畑誠也を登場させてます。


まあ瓜畑に関しては特に説明も必要ないと思うので割愛(笑)。

半オリキャラな黒須ですが連合〜本編では暁エリナが社長をしているネルガル造船のネゴシエーターとして存在しています。

カグヤは・・・なかなか難しいキャラっすね。本来なら明人絡みのキャラですが外伝1話で登場した桜樹紗々羅が再度出てくるのでリースのライバルとしては使えなくなってしまいました。まあリースの友達というような扱いになると思います。


削ってしまった裏ネタですが外伝世界のカグヤと瑠璃はナギの回想に出てきた2年先輩の双岳隼人を巡って大学時代に激烈な争いをしていたという設定でした。社長令嬢同士の一騎打ちに敗れ、瑠璃を選んだ隼人と決別したカグヤはキャリアガールとしてアスカ運営にのめり込んでいるという。そこに隼人に似た明人登場で・・・ってパターンでしたが今の明人は他の女に目もくれそうにないんで没(笑)。


2つの世界で同じ名前のキャラが生きているのでそろそろ本編と外伝を比較した改訂キャラ紹介ページを作った方が良いかもしれません。

本編では連合海軍の英雄である隼人は外伝世界では社長令嬢を得た逆タマのただの民間人だったりしますし。その辺りの関係は本編及び外伝第二部で説明されますが第二部はいつからはじめられるやら。


明人は相変わらず他の人間に流され誤解されっぱなしの兄馬鹿な人生を歩んでいますが作者が楽しいのでこのままでしょう(笑)。ただ普段は鈍くても決める時にはビシリと、格好良く決めるようなキャラにしないと変なシスコン男になってしまうので扱いが難しいです。

 

 

感想代理人プロフィール

戻る

 

 

 

 

代理人の感想

え?

外伝世界と本編って違う世界の話だったのかっ!?(爆死)

気づかなかったと言うか、どこかにそんな描写ありましたっけ?