連合海軍物語
第五話 葛城ラボ
− 沖田の宿舎 −
「うっ・・・頭痛てぇ」
「どうした、二日酔いか?」
俺は「海人」を出た後、近いという事でオヤジの宿舎に泊まった。
オヤジは居間で新聞を読みながら軽い朝食を取っていた。
ううっ、今はできるだけ固形物を見たくない気分だ。
「オヤジは・・・全然平気そうだけど・・・うぷっ」
いつも通りの表情をしたオヤジを見て不思議に思う。
俺も酒は弱くはないけど・・・でも俺の2倍は飲んでいたはずなんだが。
「ああ、ワシか? 予め二日酔い防止のウコンを飲んでいたからな」
「ええ? なんで俺にもくれないんだよ」
「ま、若い奴は二日酔いの経験も必要って事だ。自分の限界を知る為にな(笑)」
「二日酔いの経験なんて何ど・・・うぶうっ!」
込み上げてきたモノを吐き出すべく全速でトイレに駆け込む。
「ふっ、お前も経験すれば分かる、ワシの気持ちがな。
「あの薬」を飲むくらいなら・・・幾らでも先に手を打つさ」
遠くを見つめ呟く沖田だった。
− 汐海医療室 −
「こ、こんちわ〜」
「あら、隼人くん。どうしたの・・・って酷い顔しているわね」
呆れたように俺を見る愛さん
「オヤジ・・・いや、提督と夕食兼飲みにいって・・・ちょっとハメが外れたみたいです」
「あらあら、久しぶりの家族の食事だったんでしょう? しょうがないわ」
「エエ、愛さんが二日酔いにすぐ効く薬を持っているって提督から聞いたんで」
「そうなの? じゃあちょっと待ってて?」
と言いながら薬棚を見ている。
「ん・・・あ、これね」
そう言って薬棚から取り出してきたのは怪しい緑色をした薬だった。
「何ですか? コレ(汗)」
「コレって・・・失礼ねえ。
医療に携わる久遠家に伝わる、由緒ある二日酔いの薬よ。それがどうかしたの?」
「なんか・・・怪しい色していませんか?」
俺は二日酔いだけじゃない冷汗を流しつつ聞いてみる。
「そりゃ民間療法の無認可薬だもの、仕方ないわ」
「民間療法は仕方ないにしても。一応・・・聞きますけど何が原材料なんです?」
「一子相伝の薬だから内緒。どうする、飲んでみる?」
「・・・一子相伝って・・・一体」
どうする? この状態のまま葛城博士に逢う訳にはいかない。
かと言ってラボへ行くのを延期する訳にもいかない。
普通の薬では時間がかかるし。
どうする?どうする?・・・(以下100回ほどリフレイン)
俺は人生最大の岐路に立った事を悟った。←大げさすぎ(笑)
「沖田提督や葛城博士も飲んだ事あるから心配しなくても大丈夫よ?」
そんな俺の悩みが分かっているのか先に飲んだ事のある人間の名前を出す。
「え、提督や博士も?」
「ええ、良く効いたみたいで飲んだ後はさっぱりした顔をしていたわ」
「そうなんですか、じゃあいただきます!」
「一口で充分だからね」
言われた通りもらった薬を一口飲む。
どろっとした感覚で・・・
「もがぁ〜〜〜〜っ!」
にっ、苦い、いや苦いなんてもんじゃない!
あまりの刺激で口の中が痺れ、その刺激を残しつつ飲んだ液体が胃の中へ落ちていくのがハッキリ分かる。
おまけに飲むと同時に湧き上がるこの異臭! 某らっぱのマークが可愛く思える〜〜!
うっ、意識が・・・。
− 愛 −
「これって・・・文字通り「良薬口に苦し」で良く効くけど、刺激が強すぎるのが難点よねえ」
妙に冷静な愛の視線の先には七転八倒する隼人の姿が映っている。
「あら、動かなくなっちゃったわ。
しょうがないわねえ、沖田提督は立ち上がって文句を言ってきたんだけど」
隼人を抱きかかえベッドに寝かせる愛。
その顔は何故か嬉しそうだったりする。
− 葛城ラボ −
「やあ双岳くん、いらっしゃい」
ボサボサ長髪によれよれの白衣、銀縁メガネというお約束な格好をした中年男がやってきた。
「ごぶざだじでまず、がづらぎはがせ」
二日酔いは綺麗に治ったんだがあの刺激で口内が痺れ上手く舌が回らない。
「双岳くん、口調が変ですけど?」
「ま゛な゛み゛ざんのふづがよいぐずりをのんで・・・」
「ああ、久遠女史のヤツですか?
君も若いですねぇ、二日酔いであの薬を飲むなんて(汗)」
「じらなかったんでしょうがないでず」
あ、痺れが取れてきたか。
「まあ、私も飲んだ事ありますが想像を絶する薬でしたからね。
さすがに良く効きはしましたが」
「知ってれば絶対に飲まなかったですよ」
俺は頬をさすりつつ正直な感想を言う。
「はっはっは、そうでしょうね。
それはともかくきちんと造船の勉強してますか?」
「なかなか時間が取れませんがやってます」
「あの沖田提督の愛弟子なんですから頑張ってくださいね。それと大尉への昇進おめでとう」
「ありがとうございます。そうだ宿題で出ていた5000トン艦の設計が出ているんで見てもらえますか?」
「ええ、構いませんよ、じゃあ預かりますね」
通称「葛城ラボ」はナーウィシアの首都・水都より40キロ離れた洋上に浮かぶ「風雅島」にある。
周囲400キロ(ニホン国の佐渡島の半分くらい)の島の中に軍関連施設が集まっており、
新鋭艦を揃えた一個艦隊、一機動艦隊、一個航空艦隊が常駐している。
戦艦用建造ドックが4つ。中小型艦用8つをはじめとしたドック群の他、
燃料タンクやら艦を建造するのに必要な工場群なども揃っており、
ナーウィシアの建造する艦の7割はここで作られている。
「葛城ラボ」は沖田提督の肝煎りで作られ、対ウィルシア用の新兵器開発や戦略・戦術研究が基本の仕事だ。
ナーウィシアは連合海軍の一員でもあるのでそれ用の艦艇の設計・改良も行っており、
我が国の軍事施設の中でもトップクラスの重要度を誇っている。
この島はそういった施設が集まっているので何回か超兵器の強襲・襲撃も受けたが、
破壊されたのは大した価値のない地上部分のみで、重要な建造ドックを含む重要施設は
地下深くに造られておりその攻撃でほとんど被害は受けなかった。
そのせいもあり地上部分に大規模な防衛兵器が設置されつつあるんだが・・・。
「博士、先日の作戦の時ですがウィルシアの凄い兵器と遭遇したのですが」
「すごい兵器ですか? 未確認を含む超兵器のデータベースがありますから調べてみましょう。で、どんなヤツでした?」
「黒い大型戦艦です。黒または濃いブルーかグレーが光の加減で黒く見えた可能性もあります。
それとかなりの大口径砲を積んでいるようです」
「黒い戦艦ですか・・・北海で活動する為の迷彩でもしていたんですかねえ。あ、これかな?」
モニタに出てきた写真は若干艦型違っているように見える。
だが全体的な印象はあの戦艦に間違いない。
「ええと北海戦線で2回確認されている超兵器ですね。
スティルス戦艦マレ・ブラッタ、コードネームは「異形の黒」です」
「異形の黒?」
「スティルス戦艦という名前通りレーダーに反応しづらい特異な艦型からきているようですね」
「性能は?」
「主兵装が50口径56センチ3連装3基9門、誘導奮進砲、各種機銃、
まだ他に兵装がありそうですが確認されたのはこれだけです。
速力は40ノット以上と戦艦としてはかなり高速ですね。それとスティルス効果ですか」
「速度は50ノットを超えてましたよ」
「わかりました。では後でデータを更新しますね」
「それに主砲が56センチですか。それでいて50ノットも出るとは」
そんなデカイ砲を積んでいたのか、あの戦艦は。道理で瀑布と言っても過言でない水柱ができたのか。
「たぶん、高出力機関の搭載と装甲を集中防御にしていると思われます」
「でしょうね、あまり薄いと主砲の反動に耐えられないし。
奇襲かヒットアンドアウェイ的な使い方をする艦でしょうか」
「だとするとゲリラ的な使用にはうってつけ、レジスタンスとかは喜びそうな艦ですが」
俺は遭遇した、もう一つの超兵器の事を聞いてみる。
「もう1種ですが、とてつもなく速い巡洋艦とかは?」
「うーん、ヴィントシュトーシュという超高速巡洋艦というのがいます。コードネームは「蒼い突風」。
蒼いは艦の色からですね。最高速度は80ノット以上です。
通常動力のガスタービンとジェットエンジンを組み合わせています。
これは量産艦らしくけっこう報告があります」
「あんなのが量産艦ですか、頭が痛くなりますよ」
「でも蒼い突風は超兵器の中では下位なんですよ」
「あれで下位なんですか?」
「ええ、あの艦はこの世界の技術で作られていますから」
「この世界って別世界があるって事ですか」
SFやアニメじゃあるまいし異世界という言葉に違和感を覚える。
「どうも何隻かは異世界から転移してきたとしか思えない艦があるんですよ」
「異世界からの転移艦ですか?」
「ええ、こちらでは実用化できてないレーザー兵器満載の戦艦や重力を無視したようなUFO型の爆撃機などですね。
明らかにこの世界の技術では実現不可能なシロモノばかりです」
「じゃあ本物の転移艦は」
「数は10隻程度だと思われますが、なにしろ神出鬼没な艦ばかりですので正確な数は分かりません」
俺は超兵器のデータベースを閲覧させてもらう。
「まず未確認の艦ですが何隻かいるようです。
艦種と名前は遭遇報告にあった物をそのまま使ってます」
巨大潜水艦「レムレース」
大型原子力航空母艦「アウルス」
超大型戦艦「ナハト・シュトラール」
「こちら世界の技術で作られた艦・現世型超兵器だと思われるのは以下の艦です。幾つかは量産艦になってます」
超高速巡洋艦「ヴィントシュトーシュ」
超高速巡洋戦艦「ヴィルベルヴィント」
超大型強襲揚陸艦「デュアルクレイター」
超巨大潜水戦艦「ドレッドノート」
超巨大ドリル戦艦「アラハバキ」
超巨大氷山空母「ハボクック」
超巨大爆撃機「アルケオプテリクス」
「上位・・・いや、転移型超兵器と認定されているのは以下の艦です。こちらは単艦のみで量産艦はありません。
もっとも量産されたら簡単に世界征服も出来てしまう艦ばかりですが」
超高速巡洋戦艦「シュトゥルムヴィント」
超大型潜水戦艦「ノーチラス」
超大型レーザー戦艦「グロースシュトラール」
超大型双胴戦艦「ハリマ」
超大型航空戦艦「ムスペルヘイム」
超大型スティルス戦艦「マレ・ブラッタ」
巨大円盤形攻撃機「ヴィリルオーディン」
超巨大ドリル戦艦「アマテラス」
そして最後にあったほとんどのデータが不明な
超巨大戦艦「ヴォルケンクラッツアー」
「最後に出てくるヴォルケンクラッツアーっていうのは?」
「これが今回の大戦の元凶です。この艦をウィルシアいや、アメリカが手に入れた事で始まりました。
そしてこの艦のデータを元に現世型を作り出しているようなのです」
「でも他の超兵器はそれなりにデータがありますが、この艦がないのはどうしてなんですか?」
「この艦だけは前線に出ず、ウィルシア本国にあるようです。
現在、ウィルシア上空を飛ぶ人工衛星や航空機は正体不明の兵器で全て破壊されるので
衛星偵察はおろか航空偵察もできません」
「そうなんですか」
「ええ、ですのでほとんど空白という訳です。
そうそう転移型と言われる超兵器で特に要注意なのはヨーロッパ戦線にいるアマテラスと太平洋戦線のグロースシュトラールです」
「どういうところが要注意なんです?」
「ほとんどの超兵器は単独、または数隻の護衛艦を連れているだけで活動しているのですが、
アマテラスは余程堅実な指揮官が乗っているのか常に大型航空母艦4隻を擁する機動部隊と共に活動しています。
航空戦力で戦艦の補助兵器や補助艦艇を徹底的に痛めつけた後、アマテラスの砲撃とドリルでカタを付けるという方法ですね。
「それは・・・堅実ですが戦う方としては嫌な戦法ですね」
「グロースシュトラールは圧倒的な攻撃力を誇るレーザー兵装です。
出合った艦はほぼ一撃で撃沈されています。
そのレーザー兵器を防御する為、DFが実用化されたんです。
本来は光学兵器の防御機材、実弾兵器の防御はおまけみたいな感じですか」
「DFのデータは・・・あのアラハバキからですか?」
「ええ、双岳君に協力してもらった零号艦の元となったあの艦のデータを大幅に改良して使っています」
俺は零号艦を作る時に葛城博士とかわした会話を思い出していた。
「しかし凄いデータですね。このデータがあれば無敵艦も作れるんじゃないですか?」
「かもしれません。
このデータですがね、ウィルシアの超絶兵器をサルベージ、解析したデータなんです」
「え? サルベージって。このデータは・・・」
「アラハバキ級戦艦1隻と駆逐艦数隻を沈めるのに1個艦隊(戦艦4・重巡3・軽巡2・駆逐艦8隻)を投入しました。
生き残ったのが重巡1隻、軽巡1隻に駆逐艦3隻だけです」
「壊滅じゃないですか!」
「そう、本当に壊滅してしまったんですよ、1個艦隊が。
しかも戦艦は最新鋭の筑後級2隻を投入して惨敗です」
「筑後と言えば世界でもトップクラスの砲撃力を持っていたはずですよね?」
「ええ、乗組員もベテランばかりを揃えて望んだんですがね、速度も砲撃力も・・・完全に向こうが上で一蹴です。
最後には艦隊総がかりでサルベージ可能な浅深度に追い込こんだところで
早瀬提督が座乗する旗艦・筑後が特攻、相打ちに持ち込んだんです」
そういって葛城博士は悔しそうに顔をゆがめる。
「このデータは戦死された乗組員たちの命の結晶なんですよ。
だからこのデータを使って建造した艦はあの兵器たちに負ける訳にはいかないんです」
「そうなんですか・・・俺も全力で設計しますよ!」
「そうですね、ぜひ力を貸してください。お願いしますね。
あとの歴史は双岳君が知っている通りあまりにも被害が大きすぎてナーウィシア、
いや太平洋条約機構だけでは戦線維持できないのが分かりました・・・」
「じゃあ、そろそろ双岳くんの仕事をしましょうか」
「ええ。沖田提督から大体のお話しは聞いたんですが」
「そうですか。汐海の改装ですが、まずはより高出力の機関に載せ替え、ネオンアーマーが使えるようにします」
「ネオンアーマーってディストーションフィールドの事ですね」
「おっと、そうでしたね。DFです。
主兵装を65口径12.8センチ連装対空対艦速射砲、魚雷兵装は56センチ誘導魚雷とそれを防御する囮の搭載、
爆雷兵装は広域投射型、他に簡易誘導ですが8センチ30連装噴進弾、レーダーとソナーは最新型に変更します」
「なんか・・・ほとんど汐潮級とはベツモノになりませんか」
ここまで手を加えた場合、本来なら別の級名を与えるほどの改装だ。
「そうですね、ここまでいくとね。本来は装備に見合った船体を造るべきなのですが、
汐騒級はキャパシティが充分取られているので搭載が可能なんですよ。
さすが沖田提督が設計した艦です」
「艦はどうしますか?」
「大型艦ドックで4隻同時に改装をやりますから第3ゲートから地下ドックに移動してください」
「分かりました」
それだけ大きな改装をやるとなると2〜3ヶ月はドック入りだな。
その間は新兵装の勉強で手一杯になるんだろうな。
− ウィルシア・ノーフォーク海軍基地 −
「止まれ! 許可証を」
「大統領閣下だ」
SPが身分証を見せ、短く乗っている人間を説明する。
「し、失礼しました! お通りください」
黒塗りのリムジンが基地のゲートを通りすぎる。
「おい、いきなり大統領が来るなんて何かあったのか?」
「さぁな、俺たち下っ端にゃ、知らされないくらい大事が起きているんだろ」
司令部の前にリムジンを横付けし、まずSPが降りて周囲を警戒する。
その後、後部座席から大柄な壮年が降り立った。
アーノルド・フォスター・ハルハート
世界の半分を支配する元アメリカ合衆国、現ウィルシアの大統領。
髪は半ば銀髪となっているが動きは機敏でかなり若く見える。
オーダーメードされたグレイフランネルのスーツを隙なく着こなし、
典型的な上流階級層出の人間だと分かる。
大統領は屈強なSPを引き連れ司令部内に入っていく。
その最も奥にあった質素なドアを静かにノックする。
「入れ」
「失礼します」
「良く来たな」
「はっ、閣下もご壮健そうで」
最高権力者であるはずの大統領が下手に出るこの男は?
大統領の眼前の男は年齢50代後半、目つきは鋭くどこか狂的な光を宿している。
顔は端正といって良いがワシのような鈎鼻が目立った。
髪を短髪に切りそろえウィルシア海軍の提督服を着てゆったりと椅子に座っていた。
その両隣にはサングラスをかけ、黒いコートを着たSPが2人が立っている。
「世辞はいい」
「申し訳ありません。で、今日はどういった事で?」
「私の暇潰しに付き合ってもらおうと思ってな」
世界の半分を支配し多忙なウィルシア大統領を呼びつけ暇つぶしに付き合わせる男。
「暇つぶしですか?」
「忙しい君に気張らしをさせてやろう」
「気晴らしですか、どういった物が出てくるのか楽しみです」
大統領のほんの少し嫌味の混じった返答を聞き流す。
「ああ、面白い物を見せてやる、ついて来たまえ」
そう言い捨てスタスタと歩いていく。
その後ろには両隣に居たSPが続く。
一人は長髪、もう一人は短髪でコートに隠れて目立たないが鍛え抜かれた肉体が見え隠れしている。
まとう雰囲気もただものではなく、近づいただけで首筋に冷気が当たるような殺気を発散していた。
この2人を見てしまうと大統領が連れているSPなどガタイの良い素人にしか見えない。
2人の技量が分かるのか大統領のSPたちの顔色は青い。
自分との差が分かるだけさすがSPという所だろうか。
だが大統領のSPたちは2人の雰囲気だけに怯えていた訳ではかった。
眼前の2人以外に10人の気配を感じている。
姿は見えないがわざと気配を洩らして感じさせられているというのが正解か。
その気配は大統領を含め瞬時に自分たちを殺せる場所から発せられていた。
大統領を引き連れエレベータに乗りこむ。
地下1・2・3・・・・・・20階で止まる。
何重にもガードされた扉を幾つも通り抜け格納庫と思われる広い部屋に辿り着く。
「こ、これは!」
驚く大統領やSPの視線の先に大きな人影が映る。
男が連れていたSPの一人がライトを点けるとスポット光の中に巨人の姿が浮かび上がった。
色は白。その巨人が12体。
巨人はシンプルなデザインながらも人間に近いバランスを保っていた。
男は大統領たちを引き連れ巨人が並ぶその間を歩いていく。
背中には2枚の板状の物と各種スラスターが装備されている。
武装は乗り手の得意武器なのか、銃以外にそれぞれ剣や槍、戟など様々な物を装備している。
人間に模したシルエット、頭部には人間と同じように1対の眼を持っている。
ただその眼に光はなく起動していない事だけは大統領にも分かった。
「どうだね?」
「素晴らしいです。我が国で開発している物が木偶に見えてしまいます」
「おいおい、彼らをあんな木偶どもと比べるな」
かなり気分を害したようで言葉尻が鋭くなる。
「し、失礼しました」
慌てて大統領が頭を下げる。
「まあいい。こいつらは私の切り札だからな」
「切り札ですか」
「ああ、まだ使う訳にはいかんが、いずれ・・・な」
巨人を見上げる男の目が冷たく、そして鋭くなった。
「閣下、この機体の名前は何と言うのです?」
その鋭い表情を消し楽しそうに大統領を見る。
「知りたいか?」
「是非」
男はニヤリと笑いその名を告げた。
「エステバリス」
− あとがきという名の戯言 −
瑠璃:・・・・・・皆さん、こんにちは(ぺこり)。
戦艦「和泉」オペレーター暁 瑠璃です。
最後まで読んでくださってありがとうございます。(再度ぺこり)
隼人:今回はって・・・ちょっと瑠璃ちゃん、登場が早すぎない?
瑠璃:・・・・・・やっぱり隼人さんもそう思いますか?
隼人:せめて本編で登場してからの方が
瑠璃:・・・・・・そうですか。
黒檀のような漆黒の瞳に涙を浮かべる瑠璃。
隼人:・・・・・・・うっ。あ〜、ごめん! 言い過ぎた。別に大丈夫だよ。
瑠璃:・・・・・・・本当・・・ですか?
隼人:たぶん
瑠璃:・・・・・・・うっ(じわ〜)
隼人:ああ・・・だから大丈夫だよ(微笑)
ショートカットにされた瑠璃の頭を撫でる隼人。
瑠璃:・・・・・・もぅ、コドモ扱いしないでください(赤)
隼人:ごめんごめん、瑠璃ちゃん可愛いから(良かった、泣き止んでくれたか)
瑠璃:・・・・・・(赤)。でも・・・・・・私の出番遅くありませんか? 未登場の彩さんよりずっと遅いですし。
隼人:確かにそうなんだけど、瑠璃ちゃんの重要性を考えるとあまり早い段階から出せないって作者が言っていたよ?
瑠璃:・・・・・・・そうなんですか、ちょっと寂しいです。
隼人:瑠璃ちゃんが出てくれると日常の話が書きやすくて良いらしいけど。
瑠璃:・・・・・・そうなんでしょうか?
隼人:実際書きあがっている分のエピソードには瑠璃ちゃんが出ているからね。
瑠璃:・・・・・・だとすると私が登場するまでそのエピソードも載せられないって事ですよね?
隼人:それが作者にとって悩みどころみたいだけど。
和泉と瑠璃ちゃんはワンセットだからそう簡単に登場時期が早められないみたいだよ。
瑠璃・・・・・・・確かにこの役割では動かせないですね(プロットノートを見てる)
隼人:でも瑠璃ちゃんは良い方なんだよ? この連合海軍物語の真ヒロインの黒・・・(以下検閲によりカット)
瑠璃:・・・・・・その方、本当に真ヒロインなんですか?(汗)
隼人:そう、あのシーンの為だけに選ばれた真ヒロインだから。
瑠璃:・・・・・・そうなんですか? でも・・・・・・そんなシーンなら私が・・・出たかったな。
隼人:瑠璃ちゃんの名前と同じ某天才美少女艦長なら出られたんだけど。だからって気を落とさないでね。
瑠璃:・・・・・・はい、ありがとうございます。
隼人:で、話は変わるけど最後の最後で・・・
瑠璃:・・・・・・ついに出てきましたね、エステバリスが。
隼人:それと黒幕もね。
瑠璃:・・・・・・でもこのままいくとエステって悪の手先になりません?
隼人:まあ・・・・・・このままならそうなるだろうけど。
瑠璃:・・・・・・エステがいつも正義の味方というのも味気ないので良いのかもしれませんけど。
隼人:そうだね。あとは何時活躍するかだけど。
瑠璃:・・・・・・いつなんですか?
隼人:さぁ?
瑠璃:・・・・・・・さぁ?って。結局エンディングを迎えるまで動かないって事、ないですよね?
隼人:それはないと思うけど(汗)
副長:瑠〜璃ぃぃぃぃぃ!
瑠璃:・・・・・・・あ(汗)。すみません隼人さん、読者の皆さん。私はこれで失礼させていただきます(ぺこり)
急いでいるのが分かるが、それでもとてとてと歩いて消える瑠璃。
隼人:あ、瑠璃ちゃん、ちょっと!
副長:はぁはぁはぁ、艦長、ここに瑠璃がいませんでしたか?
隼人:ああ、今までいたんだけど。どうしたんだ?
副長:どうしたも何も登場がまだまだ先じゃないですか。
隼人:そうだけど
副長:だぁ〜、そんな事したら読者の楽しみが減ってしまうじゃないですか
隼人:瑠璃ちゃんが副長の○さんだって事か
副長:だから言っちゃダメです!
隼人:バレバレだと思うんだがなあ
副長:それでもです!
隼人:わかったわかった。
それじゃ読者の皆さん、次は外伝1「異形の黒」の戯言でお会いしましょう。
副長:るぅりぃ〜〜〜〜〜!(涙)
代理人の感想
いやあなた、そんなさらりと「異世界」とか言われても(爆)。
もうちょっとそれらしいアクションとリアクションがあるんじゃないかと思いますけど。
「実は、敵の艦の中には異世界から来た艦が存在するんだよ!」
「な、なんだってーーーー!!!!」
「俺たちの真の敵はウィルシアの技術者ではなく、異世界の技術だったんだ!」
「なんてこった! 俺たちはとんでもない勘違いをしていたのか!」
まぁ、これは冗談としても。
・・・・・・いや、MMR的に表現したほうがむしろピッタリ来るかなぁ、このトンデモ世界は(爆)。
追伸
ゲリラ的に使用する戦艦ってどんなのよ?(爆)